説明

車両の車体構造

【課題】サイドドアの侵入量を低減できるだけでなく、左右一対のサイドシル間に設けられる閉断面構造の上方のスペースが減少することを防止できる車両の車体構造を提供する。
【解決手段】横断パイプ28における端面の車幅方向外方領域に、サイドドアビーム36、キャッチャーピン35、クラッシュカン16を直列的に配置し、側突時に、サイドドア30に入力された側突荷重を、それらサイドドアビーム36、キャッチャーピン35、クラッシュカン16を介して横断パイプ28に伝達、分散する。その一方、横断パイプ28を、フロアパネル20とクロスメンバ24とが形成する閉断面構造27内において車幅方向に延びるようにして設け、閉断面構造27内を横断パイプ28の配設空間として有効に利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の車体構造には、特許文献1に示すように、左右一対のサイドシルが、閉断面を形成しつつ車体前後方向に延ばされ、前記左右一対のサイドシル間に、該左右一対のサイドシルを連結する閉断面構造が設けられ、該閉断面構造の上部に第1荷重伝達部材(閉断面構造)が該閉断面構造に沿うようにして設けられ、前記各サイドシルよりも車幅方向外側にサイドドアがそれぞれ配設され、該サイドドア内に、前記第1荷重伝達部材における端面の車幅方向外方領域において、第2荷重伝達部材が設けられたものがある。このものにおいては、側突時に、サイドドアに入力された側突荷重が、第2荷重伝達部材を介して第1荷重伝達部材に伝達され、その第1荷重伝達部材により側突荷重が分散されることになり、サイドドアの車室内への侵入量は低減される。
【特許文献1】特開平8−26144号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記車両の車体構造においては、閉断面構造の上部に第1荷重伝達部材が該閉断面構造に沿うように設けられていることから、閉断面構造の上方のスペースの利用が阻害される。
【0004】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、サイドドアの侵入量を低減できるだけでなく、左右一対のサイドシル間に設けられる閉断面構造の上方のスペースが減少することを防止できる車両の車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記技術的課題を達成するために本発明(請求項1に係る発明)においては、
左右一対のサイドシルが、閉断面を形成しつつ車体前後方向に延ばされ、前記左右一対のサイドシル間に、該左右一対のサイドシルを連結する閉断面構造が設けられ、該閉断面構造に対して第1荷重伝達部材が沿うようにして配置され、該第1荷重伝達部材における端面の車幅方向外方領域に、第2荷重伝達部材が設けられ、前記各サイドシルよりも車幅方向外方側に、サイドドアがそれぞれ配設されている車両の車体構造において、
前記第1荷重伝達部材が、前記閉断面構造内において車幅方向に延びるようにして設けられている構成としてある。この請求項1の好ましい態様としては、請求項2以下の記載の通りとなる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載された発明によれば、第1荷重伝達部材が、閉断面構造内において車幅方向に延びるようにして設けられていることから、閉断面構造の上部に第1荷重伝達部材を該閉断面構造に沿うように設ける必要がなくなる。その一方で、従前同様、第1荷重伝達部材における端面の車幅方向外方領域に第2荷重伝達部材が設けられていることから、側突時に、サイドドアに入力された側突荷重を第2荷重伝達部材を介して第1荷重伝達部材に伝達、分散できる。このため、サイドドアの侵入量を低減できるだけでなく、左右一対のサイドシル間に設けられる閉断面構造の上方のスペースが減少することを防止できる。
また、第1荷重伝達部材が、閉断面構造内において車幅方向に延びるようにして設けられていることから、側突時に、閉断面構造により第1荷重伝達部材の動きが規制され、閉断面構造の上部に第1荷重伝達部材が該閉断面構造に沿うように設けられる場合のように、第1荷重伝達部材が閉断面構造から剥離するおそれはない。このため、側突時において荷重伝達方向を適正な状態に保つことができ、側突荷重の伝達分散を確実に行うことができる。
さらに、第1荷重伝達部材が閉断面構造内に設けられていることから、前面衝突、後面衝突等、車体前後方向の荷重が加わるとしても、閉断面構造の閉断面崩れに対する耐力を向上させることができる。
【0007】
請求項2に記載された発明によれば、第2荷重伝達部材がサイドシル内に配設されていることから、第2荷重伝達部材をサイドシル(サイドシルインナ)を介して第1荷重伝達部材に隣り合うように配置できることになり、サイドドア又はサイドシルから側突荷重が入力されても、その側突荷重を、第2荷重伝達部材を介して第1荷重伝達部材に的確に伝達できる。
【0008】
請求項3に記載された発明によれば、第2荷重伝達部材がサイドドアに設けられていることから、側突荷重を、第2荷重伝達部材に直ちに入力して該第2荷重伝達部材以外の他の部材に入力されることを抑えることができ、その第2荷重伝達部材に入力された側突荷重を第1荷重伝達部材に伝達できる。このため、側突荷重の伝達性能を向上できる。
また、第2荷重伝達部材が、側突荷重をその側突荷重の作用初期から受け止めて、その側突荷重を的確に伝達することから、それを捉えることにより、センサ類(例えばエアバッグ作動センサ等)の作動を適正且つ確実に行わせることができる。
【0009】
請求項4に記載された発明によれば、第2荷重伝達部材が、サイドシル内及びサイドドアにそれぞれ設けられていることから、サイドドアからサイドシルまでの範囲においてほぼ連なる荷重伝達経路が形成されることになり、側突荷重を、第2荷重伝達部材以外の他の部材に入力されることを抑えて該第2荷重伝達部材に的確に入力できると共に、その第2荷重伝達部材に入力された側突荷重を第1荷重伝達部材に的確に伝達できる。このため、サイドドアの侵入量を効果的に低減できる。
しかも、サイドドアからサイドシルまでの範囲においてほぼ連なる荷重伝達経路が形成されることから、側突荷重の伝達性を広い範囲で著しく高めることができ、それを捉えることにより、センサ類(例えばエアバッグ作動センサ等)の作動を、一層適正且つ確実に行わせることができる。
【0010】
請求項5に記載された発明によれば、サイドシルが、サイドシルアウタと、該サイドシルアウタよりも車幅方向内方側に配置されて該サイドシルアウタと協働して閉断面空間を形成するサイドシルインナと、からなり、第2荷重伝達部材が、サイドシルインナの内面に固定されていることから、予め、サイドシルインナの内面に第2荷重伝達部材を取付けておき、その後、サイドシルインナとサイドシルアウタとでサイドシルを組み立てることができ、第2荷重伝達部材の組付け性を向上させることができる。
【0011】
請求項6に記載された発明によれば、サイドシルインナの外面側に突出部が設けられ、その突出部が、第1荷重伝達部材の断面内に該第1荷重伝達部材の端面から入り込んでいることから、サイドシルにおける所定位置に対する第1荷重伝達部材の位置ずれを規制できることになり、第1荷重伝達部材への荷重伝達経路が途絶えることを規制して、第1荷重伝達部材への側突荷重の伝達を的確に行わせることができる。
【0012】
請求項7に記載された発明によれば、サイドシルインナの外面側にサイドパネルが該サイドシルインナを覆うようにして固定され、そのサイドパネルに、孔と、その孔の形成に伴って形成される筒部とが設けられ、そのサイドパネルの孔がサイドシルインナにより覆われていることから、突出部として筒部を形成できる一方、その筒部の形成に伴って形成される孔に関しては、サイドシルインナで覆うことに基づき、サイドパネルの剛性の低下を防止できる。
【0013】
請求項8に記載された発明によれば、第2荷重伝達部材が、サイドドアのインナパネル外面に取付けられるキャッチャーピンとされ、そのキャッチャーピンの先端部が、サイドドアが閉じられているときにおいて、第1荷重伝達部材の端面に向けられていることから、側突時に、そのキャッチャーピンに基づき、サイドドアが第1荷重伝達部材に対して位置ずれすることを抑制して、前記請求項3又は4の作用効果を具体的且つ確実に実現できる。
【0014】
請求項9に記載された発明によれば、サイドシルアウタに、第1荷重伝達部材における端面の車幅方向外方領域において、サイドシルインナ側に引っ込む凹所が形成され、キャッチャーピンが、サイドドアが閉じられているときにおいて、凹所内に入り込んでいることから、側突時に、サイドドアとサイドシルとの相対的な位置ずれを抑制して、側突荷重を的確に第1荷重伝達部材に伝達できる。
【0015】
請求項10に記載された発明によれば、第2荷重伝達部材が、サイドドア内に配設されて車体前後方向に延びるサイドドアビームとされ、そのサイドドアビームが、第1荷重伝達部材における端面の車幅方向外方領域を横切るように配置されていることから、側突荷重がサイドドアに対して、閉断面構造や第1荷重伝達部材よりも車体前方又は後方に位置する部位において入力される場合(荷重作用点が第1荷重伝達部材に対して車体前後方向にずれて作用する場合)であっても、その入力された側突荷重を閉断面構造や第1荷重伝達部材へ伝達・分散できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1〜図3において、符号1は、車体の左右両側部において、車体前後方向に延びる一対のサイドシルである(一方の図示を略す)。各サイドシル1は、サイドシルアウタ2とサイドシルインナ3とにより閉断面を形成しており、サイドシルアウタ2の上側フランジ部2aとサイドシルインナ3の上側フランジ部3a、サイドシルアウタ2の下側フランジ部2bとサイドシルインナ3の下側フランジ部3bとは、それぞれ接続されている。
【0017】
前記サイドシルアウタ2には、図2、図3に示すように、その下側フランジ部2bから徐々に上昇しつつ車幅方向外側に膨らむ下面部4が設けられ、その下面部4よりも上側部分は、下面部4から上方に向かうに従って車幅方向内方に向かうように傾斜されている。具体的には、下面部4よりも上側部分は、階段状に形成されており、サイドシルアウタ2には、下面部4から上側フランジ部2aまでの間において、湾曲しつつ立ち上がる立ち上がり部5、その立ち上がり部5の上端から水平状態となる段差面部6、その段差面部6から垂直に起立する縦壁部7、その縦壁部7から水平状態となって上側フランジ部2aに連なる上面部8が、順次、形成されている。このうち、縦壁部7には、サイドシル1内外を連通させる孔9が形成されており、その孔9には蓋体10が嵌合保持されている。この蓋体10は、凹所を形成する有底筒部11と、その有底筒部11の開口周縁部に設けられるフランジ部12とからなっており、有底筒部11がその底側をサイドシル1内に向けた状態で孔9に嵌合され、フランジ部12は、サイドシルアウタ2の外面側において、孔9周縁部に当接されている。このため、蓋体10における有底筒部11内(凹所)は外部に開放されている。
【0018】
前記サイドシルインナ3には、図2,図3に示すように、その下側フランジ部3bから徐々に上昇しつつ車幅方向内方側に膨らむ下面部13が設けられている。この下面部13の上端には、垂直に起立する縦壁部14が連なっており、その縦壁部14上端は、水平状態の上面部15を介して上側フランジ部3aに連なっている。
【0019】
前記サイドシル1内には、図2〜図4に示すように、クラッシュカン(第2荷重伝達部材)16が配設されている。クラッシュカン16は、その軸心が前記孔9の軸心と合致するように配置されており、そのクラッシュカン16の一端側開口に前記蓋体10の有底筒部11が嵌まり込み、そのクラッシュカン16の他端部は、溶接によりサイドシルインナ3の内面に固定されている。この場合、サイドシルインナ3内面に対するクラッシュカン16の他端部の取付けに関しては、サイドシル1の組み付け前に予め行われることになっている。
【0020】
前記各サイドシル1よりも車幅方向内方側には、図2、図4に示すように、サイドパネル17がそれぞれ配設されている。各サイドパネル17は、リヤピラーインナを構成する部材であり、そのサイドパネル17の一部は、サイドシル1に対する取付け部材として、サイドシルインナ3の外面を包み込むように配設されている。このため、サイドパネル17の一部には上側フランジ部17aと下側フランジ部17bとが備えられおり、その上側フランジ部17aはサイドシルインナ3の上側フランジ部3aに接続され、その下側フランジ部17bはサイドシルインナ3の下側フランジ部3bに接続されている。このサイドパネル17の一部には、サイドシルインナ3の縦壁部14の対向領域において、孔18が形成されており、その孔18周縁部には、該孔18周縁部から車幅方向内方側に向けて突出する筒部19が一体的に設けられている。この孔18及び筒部19は、その軸心が前記孔9及び前記クラッシュカン16の軸心と合致するように配置されている。但し、孔18は、サイドシルインナ3の縦壁部14により閉塞されており、これにより、サイドパネル剛性の低下が抑制されている。
【0021】
前記一対のサイドシル1間には、図1,図6に示すように、車両の床面を形成するフロアパネル20が配設されている。フロアパネル20は、リヤフロア部21と、リヤフロア部21の車体前方側において該リヤフロア部21よりも下方に位置するフロントフロア部22と、フロントフロア部22の後端部とリヤフロア部21の前端部とを連結する立ち上がり面部23と、を備えており、これらの車幅方向両端部は、立ち上がり面部23の背後側に前記筒部19が位置するようにしつつ、サイドシルインナ3の縦壁部14にサイドパネル17を介して接続されている。
【0022】
前記一対のサイドシル1間には、図1,図2,図6に示すように、前記立ち上がり面部23の車体後方側において、クロスメンバ(No3クロスメンバ)24が跨るように配設されている。クロスメンバ24は、一定幅を維持しつつ略水平状態に配置される水平板部25と、その水平板部25の後端部から一定高さだけ起立する起立板部26とからなっており、これらは一体的に車幅方向に延びて、その各端部はサイドパネル17を介してサイドシルインナ3に接続されている。また、クロスメンバ24の水平板部25の前端部にはフランジ部25aが設けられ、クロスメンバ24の起立板部26の上端部にはフランジ部26aが設けられている。フランジ部25aのフランジ面は車体前方に向けられ、フランジ部26aのフランジ面は上方に向けられており、フランジ部26aのフランジ面はリヤフロア部21に接続され、フランジ部25aのフランジ面は立ち上がり面部23の背面に接続されている。これにより、クロスメンバ24とフロアパネル20とは、閉断面を形成しつつ車幅方向に延びる閉断面構造27を構成している。
【0023】
前記閉断面構造27内には、図1,図2,図6に示すように、第1荷重伝達部材としての横断パイプ28が配設されている。横断パイプ28は、側突荷重を一方側から他方側に伝達、分散すべく、閉断面構造27内において車幅方向に延びており、その各端部開口内には、前記各サイドパネル17の筒部19が入り込んでいる。この筒部19と横断パイプ28との関係に関しては、本実施形態においては、筒部19が横断パイプ28の端部開口内に遊嵌されることになっている。これは、衝突時に横断パイプ28が位置ずれを起こすことを規制すると共に、走行時の騒音(干渉音)を防止し、さらには、組み付け誤差への対応をも図るためである。勿論、衝突時における横断パイプ28の位置ずれ規制を重視する観点から、筒部19を横断パイプ28の端部開口内に密嵌合してもよい。また、この横断パイプ28には、複数の取付け帯具29が間隔をあけて溶接により取付けられており(取付け帯具29を1つのみ図示)、その各取付け帯具29の端部は、クロスメンバ24に固定されている。これにより、横断パイプ28は、クロスメンバ24の水平板部25と起立板部26とに対して押し付け保持されている。
【0024】
前記各サイドシル1よりも車幅方向外方側には、図2、図3に示すように、サイドドア(リヤドア)30が配設されている。サイドドア30は、アウタパネル31とインナパネル32とにより形成されており、そのアウタパネル31とインナパネル32とは内部空間33を区画している。このうち、インナパネル32は、縦壁部34を有しており、その縦壁部34の下部は、サイドドア30が閉じられているときに、前記サイドシルアウタ2の縦壁部7に一定間隔をあけて対向することになっている。このインナパネル32における縦壁部34外面には、キャッチャーピン(第2荷重伝達部材)35が設けられている。キャッチャーピン35は、側突時にサイドドア30の侵入を規制するためのドア侵入規制部材であり、このキャッチャーピン35は、サイドドア30が閉じられているときに、そのキャッチャーピン35の軸心が孔18等の軸心に合致するように配置されていると共に、そのキャッチャーピン35の先端部は、前記蓋体10における有底筒部11内に入り込んでいる。
【0025】
前記サイドドア30の内部空間33には、図2,図5に示すように、サイドドアビーム36(第2荷重伝達部材))が配設されている。このサイドドアビーム36は、その幅方向両側にフランジ部36aを有しており、そのフランジ部36aをサイドドア30のインナパネル32の内面に接続することにより、サイドドアビーム36は、サイドドア30に取付けられている。このサイドドアビーム36は、上方に向かうに従って車体前方に向かうように傾斜配置されており、そのサイドドアビーム36の後端部は、インナパネル32を介して前記キャッチャーピン35に対向されている。
【0026】
このような車体構造においては、第2荷重伝達部材としてのサイドドアビーム36、キャッチャーピン35、クラッシュカン16のいずれもが、第1荷重伝達部材としての横断パイプ28における端面の車幅方向外方領域に配置されている。このため、側突時に、サイドドアに入力された側突荷重は、サイドドアビーム36、キャッチャーピン35、クラッシュカン16を介して横断パイプ28に伝達される。
【0027】
特に本実施形態においては、サイドドア30と横断パイプ28との間にサイドシル1が存在するにもかかわらず、サイドドアビーム36、キャッチャーピン35、蓋体10、クラッシュカン16、サイドシルインナ3、サイドパネル17、横断パイプ28等が、横断パイプ28における端面の車幅方向外方領域において、直列的で且つ連続的な伝達経路を形成することになり、側突時に、サイドドア30に側突荷重が入力されると、その側突荷重は、サイドドアビーム36、キャッチャーピン35、蓋体10、クラッシュカン16(伝達経路)を介して横断パイプ28に伝達され、その伝達された側突荷重は、その横断パイプ28により、側突荷重を受けていない側等に伝達、分散される。これにより、サイドドア30の車室内への侵入量を低減される。
【0028】
この場合、横断パイプ28の一端部開口内にサイドパネル17の筒部19が遊嵌されて、その横断パイプ28がサイドパネル17及びサイドシル1に対してできるだけ位置ずれしないようになっている一方、キャッチャーピン35の先端部が蓋体10の有底筒部11を介してクラッシュカン16に入り込み、そのクラッシュカン16が、その軸心を孔18の軸心に合致させた状態でサイドシルインナ3に固定されており、これら要素は、隣り合う要素と嵌合し合う関係を保ちつつ直列的に配置されている。このため、側突時には、各要素は、サイドドア30から横断パイプ28までの間において位置ずれを起こすことなく、側突荷重を的確に横断パイプ28に伝達することになる。
【0029】
一方、この車体構造においては、フロアパネルとクロスメンバ24とが形成する閉断面構造27内は、横断パイプ28の配設空間として有効に利用されており、フロアパネル20(21)の上方空間が横断パイプ28の配設に伴って減少することはない。
また、横断パイプ28が、閉断面構造27内において車幅方向に延びるようにして設けられていることから、側突時に、閉断面構造27により横断パイプ28の動きが規制され、閉断面構造の上部に第1荷重伝達部材(閉断面構造部材)が該閉断面構造に沿うように設けられる場合のように、第1荷重伝達部材(横断パイプ28)が閉断面構造27から剥離するおそれはない。このため、側突時において荷重伝達方向を適正な状態に保つことができ、側突荷重の伝達分散を確実に行うことができる。
さらに、横断パイプ28が閉断面構造27内に設けられていることから、前面衝突、後面衝突等、車体前後方向の荷重が加わるとしても、閉断面構造27の閉断面崩れに対する耐力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施形態を車体構造を示す一部破断斜視図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】サイドドアからサイドシルインナまでの取付け関係を示す説明図。
【図4】サイドパネルに対する横断パイプの取付け関係を示す説明図。
【図5】サイドドアにおけるサイドドアビームの配置を示す説明図。
【図6】図1のB−B線断面図。
【符号の説明】
【0031】
1 サイドシル
2 サイドシルアウタ
3 サイドシルインナ
10 蓋体
11 有底筒部(凹所)
12 フランジ部
16 クラッシュカン(第2荷重伝達部材)
17 サイドパネル
20 フロアパネル(閉断面構造の構成要素)
24 クロスメンバ(閉断面構造の構成要素)
27 閉断面構造
28 横断パイプ(第1荷重伝達部材)
30 サイドドア
35 キャッチャーピン(第2荷重伝達部材)
36 サイドドアビーム(第2荷重伝達部材)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対のサイドシルが、閉断面を形成しつつ車体前後方向に延ばされ、前記左右一対のサイドシル間に、該左右一対のサイドシルを連結する閉断面構造が設けられ、該閉断面構造に対して第1荷重伝達部材が沿うようにして配置され、該第1荷重伝達部材における端面の車幅方向外方領域に、第2荷重伝達部材が設けられ、前記各サイドシルよりも車幅方向外方側に、サイドドアがそれぞれ配設されている車両の車体構造において、
前記第1荷重伝達部材が、前記閉断面構造内において車幅方向に延びるようにして設けられている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2荷重伝達部材が前記サイドシル内に配設されている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2荷重伝達部材が前記サイドドアに設けられている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記第2荷重伝達部材が、前記サイドシル内及び前記サイドドアにそれぞれ設けられている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項5】
請求項2又は4において、
前記サイドシルが、サイドシルアウタと、該サイドシルアウタよりも車幅方向内方側に配置されて該サイドシルアウタと協働して閉断面空間を形成するサイドシルインナと、からなり、
前記第2荷重伝達部材が、前記サイドシルインナの内面に固定されている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項6】
請求項5において、
前記サイドシルインナの外面側に突出部が設けられ、
前記突出部が、前記第1荷重伝達部材の断面内に該第1荷重伝達部材の端面から入り込んでいる、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項7】
請求項6において、
前記サイドシルインナの外面側にサイドパネルが該サイドシルインナを覆うようにして固定され、
前記サイドパネルに、孔と、その孔の形成に伴って形成される筒部とが設けられ、
前記サイドパネルの孔が前記サイドシルインナにより覆われている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項8】
請求項3又は4において、
前記第2荷重伝達部材が、前記サイドドアのインナパネル外面に取付けられるキャッチャーピンとされ、
前記キャッチャーピンの先端部が、前記サイドドアが閉じられているときにおいて、前記第1荷重伝達部材の端面に向けられている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項9】
請求項8において、
前記サイドシルアウタに、前記第1荷重伝達部材における端面の車幅方向外方領域において、前記サイドシルインナ側に引っ込む凹所が形成され、
前記キャッチャーピンが、前記サイドドアが閉じられているときにおいて、前記凹所内に入り込んでいる、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項10】
請求項3又は4において、
前記第2荷重伝達部材が、前記サイドドア内に配設されて車体前後方向に延びるサイドドアビームとされ、
前記サイドドアビームが、前記第1荷重伝達部材における端面の車幅方向外方領域を横切るように配置されている、
ことを特徴とする車両の車体構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−62563(P2007−62563A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−251413(P2005−251413)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】