説明

車両の車体構造

【課題】エネルギ吸収部材とフレーム部材との結合部の結合強度を高めることができる車両の車体構造を提供する。
【解決手段】車両の車体構造1は、車両の車幅方向両側に、前後方向に延びる一対のフロントサイドフレーム2と、フロントサイドフレーム2の前端18に設けられたクラッシュカン20とを備え、フロントサイドフレーム2のクラッシュカン20との結合部であるフランジ部30には、車両前後方向に突出した突出部36が形成され、クラッシュカン20のフロントサイドフレーム2との結合部であるフランジ部32には、フロントサイドフレーム2の突出部36に対応する凹部46が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体構造に関し、特に、車両の車幅方向両側に、前後方向に延びる一対のフレーム部材と、各フレーム部材の端部に設けられたエネルギ吸収部材とを備えた車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に対する衝突時の衝撃を吸収するエネルギ吸収部材として、車両のフレーム構造にクラッシュボックスを設けたものが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1に記載のクラッシュボックスは、車両の前部に前後方向に延びる一対のフロントサイドメンバの前端にそれぞれ設けられ、これらのクラッシュボックスの前端には、車幅方向に延びるフロントバンパリインフォースが連結されている。車両の前突時にフロントバンパリインフォースに荷重がかかると、フロントサイドメンバが変形する前に、まずクラッシュボックスが変形してある程度の衝撃エネルギを吸収する。これにより、車両の前部に配置されたエンジンやラジエータ等の構造部品をある程度保護することができる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−238028号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クラッシュボックスのようなエネルギ吸収部材において、より多くの衝撃エネルギを吸収するためには、エネルギ吸収部材の長さを従来のものより長くすればよい。しかしながら、エネルギ吸収部材を長く形成すると、エネルギ吸収部材とこれが連結されるフレーム部材との間の連結部における強度が相対的に低くなり、エネルギ吸収部材が変形して衝突によるエネルギを十分に吸収する前に、フレーム部材とエネルギ吸収部材との結合部が折れてしまったり、通常の運転時の振動により結合部が節となって振動が助長される等の不具合が考えられる。そこで、このような不具合を防止するため、フレーム部材とエネルギ吸収部材との結合部の強度を確保することが重要となる。
【0005】
本発明の目的は、エネルギ吸収部材とフレーム部材との結合部の結合強度を高めることができる車両の車体構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、車両の車幅方向両側に、前後方向に延びる一対のフレーム部材と、各フレーム部材の端部に設けられたエネルギ吸収部材とを備えた車両の車体構造であって、フレーム部材のエネルギ吸収部材との結合部には、車両前後方向に突出した突出部または車両前後方向に凹んだ凹部が形成され、エネルギ吸収部材のフレーム部材との結合部には、フレーム部材の突出部または凹部に対応する凹部または突出部が形成されている、ことを特徴としている。
【0007】
このように構成された本発明においては、フレーム部材のエネルギ吸収部材との結合部には突出部または凹部が形成され、エネルギ吸収部材のフレーム部材との結合部には、フレーム部材の突出部または凹部に対応した凹部または突出部が形成されるので、フレーム部材及びエネルギ吸収部材の結合部における結合強度が向上する。したがって、車両の衝突時の衝撃力により、エネルギ吸収部材の変形より先に結合部が折れたり、結合部が節となって振動が助長される等の不具合を防止して、エネルギ吸収部材が衝撃力を十分に吸収することができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、突出部及び凹部は、フレーム部材の車幅方向中央部及びエネルギ吸収部材の車幅方向中央部に形成され、且つ車両の上下方向に延びる。
このように構成された本発明においては、突出部及び凹部が、車両の上下方向に延びるように形成されているので、結合部における車幅方向の結合強度を向上させることができる。また、フレーム部材及びエネルギ吸収部材の車幅方向中央部に形成されるので、エネルギ吸収部材が吸収しきれない衝突エネルギを車幅方向に関して偏りなくフレーム部材に伝達することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、エネルギ吸収部材の横断面形状は、車両上下方向寸法が、車幅方向寸法より長い矩形状である。
このように構成された本発明においては、エネルギ吸収部材の横断面形状が、車両上下方向寸法が車幅方向寸法より長い矩形状となっているので、エネルギ吸収部材は、車両上下方向よりも、車幅方向における方が、耐力が低くなる。このとき、突出部及び凹部が、車両の上下方向に延びるように形成されているので、結合部における車幅方向の結合強度を向上させることができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、突出部及び凹部は、フレーム部材の車両上下方向中央部及びエネルギ吸収部材の車両上下方向中央部に形成され、且つ車幅方向に延びる。
このように構成された本発明においては、突出部及び凹部が、車幅方向に延びるように形成されているので、結合部における車両上下方向の結合強度を向上させることができる。また、突出部及び凹部が、フレーム部材及びエネルギ吸収部材の車両上下方向中央部に形成されるので、エネルギ吸収部材が吸収しきれない衝突エネルギを車両上下方向に関して偏りなくフレーム部材に伝達することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、エネルギ吸収部材の横断面形状は、車幅方向寸法が、車両上下方向寸法より長い矩形状である。
このように構成された本発明においては、エネルギ吸収部材の横断面形状が、車幅方向寸法が車両上下方向寸法より長い矩形状となっているので、エネルギ吸収部材は、車幅方向よりも、車両上下方向における方が、耐力が低くなる。このとき、突出部及び凹部が、車幅方向に延びるように形成されているので、結合部における車両上下方向の結合強度を向上させることができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、フレーム部材の結合部とエネルギ吸収部材の結合部は、車両上下方向中央部における車幅方向両端の2箇所と、車幅方向中央部における車両上下方向両端の2箇所とで締結されている。
突出部及び凹部を有しない従来の結合部においては、結合部を4隅の4箇所で締結することが一般的である。これに対して、上記のように構成された本発明では、突出部及び凹部を有する結合部においても、車両上下方向中央部の2箇所と、車幅方向中央部の2箇所の計4箇所において結合部を締結する。したがって、従来の結合部に比べて締結箇所を増やすことなく、突出部及び凹部を有する結合部であっても容易に結合部を締結させることができ、必要な結合強度を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と同様の構成には、図面に第1実施形態と同一符号を付し、その説明を簡略化または省略する。
【0014】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による車両の車体構造1について説明する。
図1は、本発明の第1実施形態による車両の前部の車体構造1を示す斜視図である。本実施形態の車体構造1においては、車幅方向の左右両側に、一対のフロントサイドフレーム2が配置されている。フロントサイドフレーム2は、車両の前後方向に延び、車両上下方向寸法が車幅方向寸法よりも長い縦長の矩形状の閉断面を有する。フロントサイドフレーム2の上方には、車両の前後方向に延びる一対のエプロンレインフォースメント4が配置され、これらのエプロンレインフォースメント4の前端部6の下面とフロントサイドフレーム2の前端部8の上面とが連結部10によって車両上下方向に連結されている。フロントサイドフレーム2及びエプロンレインフォースメント4の後端12,14は、ダッシュパネル16の上方及び下方にそれぞれ配置される。
【0015】
フロントサイドフレーム2の前端18には、車両の衝突時の衝撃力を吸収するためのエネルギ吸収部材としてのクラッシュカン20が連結されている。クラッシュカン20は、その後端22が、フロントサイドフレーム2に連結され、フロントサイドフレーム2に沿って、車両前後方向に沿って延びる。クラッシュカン20の座屈強度は、フロントサイドフレーム2の座屈強度よりも低く設定されている。
クラッシュカン20は、フロントサイドフレーム2と同様に、車両上下方向寸法が、車幅方向寸法よりも長い縦長の閉断面を有する。クラッシュカン20の前端24には、車幅方向両側のクラッシュカン20を連結して車幅方向に延びるバンパレインフォースメント26が設けられている。一対のフロントサイドフレーム2及びクラッシュカン20、バンパレインフォースメント26、及びダッシュパネル16に囲まれた領域内部には、エンジンやラジエータ等の車両の構成部品(図示せず)が配置される。
【0016】
フロントサイドフレーム2の前端18には結合部としてのフランジ部30が形成され、クラッシュカン20の後端22には、フロントサイドフレーム2のフランジ部30に対応する結合部としてのフランジ部32が形成されている。
図2は、本発明の第1実施形態によるフロントサイドフレーム2及びクラッシュカン20のフランジ部30,32を示す拡大斜視図である。また、図3は、本発明の第1実施形態によるフランジ部30,32の平面図である。図2及び図3に示すように、これらのフランジ部30,32は、ボルト34で締結されることにより、互いに結合されている。
【0017】
フロントサイドフレーム2のフランジ部30は、フロントサイドフレーム2の断面形状に対応して、車両上下方向寸法が、車幅方向寸法より大きい縦長の矩形状プレートに形成され、中央にフロントサイドフレーム2の断面矩形よりも小さい矩形状の開口部33が形成されている。フランジ部30は、フロントサイドフレーム2の前端18の外縁を全周にわたって溶接等することによって前端18に接合されている。
【0018】
フランジ部30には、車幅方向中央部に車両の前方に向かって突出する突出部36が形成されている。突出部36は、車両上下方向に沿って延びている。突出部36は、フロントサイドフレーム2の両側面から中央に向かって前方斜めに延びる傾斜面38と、両側の傾斜面38を連結し、車幅方向にほぼ平行に延びる平坦面40と、によって形成されている。このような形状により、突出部36は、フロントサイドフレーム2の車幅方向中央を通る車両上下方向に沿った平面に関して対称な形状となる。突出部36の車幅方向両側には、車幅方向に沿って延びる平坦面42,44が形成されている。
【0019】
クラッシュカン20のフランジ部32は、フロントサイドフレーム2のフランジ部30の形状に対応した形状を有する。即ち、クラッシュカン20のフランジ部32の中央には、クラッシュカン20の断面矩形よりも小さい矩形状の開口部35が形成されている。また、クラッシュカン20のフランジ部32には、車幅方向中央部に車両の前方に向かって凹む凹部46が形成されている。凹部46は、車両上下方向に沿って延びている。凹部46は、クラッシュカン20の両側面から中央に向かって前方斜めに延びる、傾斜面38に対応した傾斜面48と、両側の傾斜面48を連結し、車幅方向にほぼ平行に延びる、平坦面40に対応した平坦面50と、によって形成されている。このような形状により、凹部46は、クラッシュカン20の車幅方向中央を通る車両上下方向に沿った平面に関して対称な形状となる。凹部46の車幅方向両側には、車幅方向に沿って延びる、平坦面42,44に対応する平坦面52,54が形成されている。
【0020】
フランジ部30,32には、4つの取付孔56,58がそれぞれ形成されている。4つの取付孔56,58のうち2つは、車幅方向中央の車両上下方向両端に、平坦面40,50にそれぞれ形成されている。また、取付孔56,58の他の2つは、車両上下方向中央の車幅方向両端に、平坦面42,52と平坦面44,54にそれぞれ形成されている。これらの取付孔56,58にボルト34が挿通されることにより、フランジ部30,32が4箇所で締結され、クラッシュカン20とフロントサイドフレーム2とが互いに結合される。
【0021】
このような構成の車両の車体構造1においては、車両の前方衝突によりバンパレインフォースメント26に衝撃力が加わった場合、フロントサイドフレーム2よりもクラッシュカン20の方が剛性が低く設定されているため、フロントサイドフレーム2が座屈する前に、クラッシュカン20が座屈して、衝突エネルギをある程度吸収する。車体構造1への衝撃力がある程度以上である場合には、クラッシュカン20が完全に変形した後、フロントサイドフレーム2及びエプロンレインフォースメント4も座屈して、衝突によるエネルギを更に吸収する。
【0022】
このように構成された本実施形態によれば、次のような優れた効果を得ることができる。
フロントサイドフレーム2のフランジ部30に突出部36を設け、クラッシュカン20のフランジ部32に凹部46を形成したので、突出部36及び凹部46が互いに係合することにより、フランジ部30,32における結合強度を向上させることができる。したがって、例えば車両の通常運転中、フランジ部30,32に振動が伝達された場合でも、結合部が節となって振動が助長されるなどの不具合を防止することができる。また、クラッシュカン20が衝突エネルギを吸収するとき、クラッシュカン20が座屈する前にフランジ部30,32が折れてしまうのを防止することができ、クラッシュカン20を確実に変形させて衝突時のエネルギを十分に吸収することができる。これは、例えば、クラッシュカン20のエネルギ吸収量を増大させたい場合や、車体構造1内に配置されるエンジンやラジエータ等の車両の構成部品をより確実に保護したい場合に、クラッシュカン20を長く形成するとき、フランジ部30,32が支持しなければならない荷重も増大するため、本発明の車体構造1が特に有用である。
【0023】
突出部36及び凹部46が、車両上下方向に沿って形成されているので、フランジ部30,32における車幅方向の結合強度を向上させることができる。つまり、突出部36の傾斜面38及び凹部46の傾斜面48が互いに係合することにより、フランジ部30,32における車幅方向の荷重を、ボルト34だけでなく、傾斜面38,48でも受けることができる。したがって、フランジ部30,32における当該車幅方向の振動や応力に対する耐力を向上させることができる。
【0024】
フロントサイドフレーム2及びクラッシュカン20の横断面形状が、車両上下方向寸法が車幅寸法よりも長い縦長の矩形状であるが、車両上下方向に沿って延びる突出部36及び凹部46によって、より剛性の低い車幅方向の剛性を向上させることができる。例えば、FF車では、エンジンやトランスミッション等多くの構成部品を車両の前部に配置しなければならないため、フロントサイドフレーム2間の寸法をできるだけ大きくすべく、フロントサイドフレーム2の横断面形状を縦長とすることがある。このような場合でも、突出部36及び凹部46を車両上下方向に沿って形成することによって車幅方向の剛性を向上させることができるので、本実施形態の車体構造1は特に有利である。
【0025】
突出部36及び凹部46が、車幅方向中央に配置されているので、車幅両方向に対して等しく結合強度を向上させることができる。また、突出部36及び凹部46が、車幅方向中央で車両上下方向の面に関して対称に形成されているので、クラッシュカン20に入力された軸方向の荷重を、車幅方向に関して偏りなくフロントサイドフレーム2に伝達することができる。したがって、荷重の偏りによるフロントサイドフレーム2の折れを防止することができる。
【0026】
取付孔56,58が、車幅方向中央に車両上下方向両端に2つ設けられ、また車両上下方向中央に車幅方向両端に2つ設けられているので、計4箇所においてボルト34でフランジ部30,32を結合することができる。フランジ部に突出部及び凹部が形成されていない従来の結合部では、矩形のフランジ部の4隅をボルトで締結するのが一般的である。これに対して、本実施形態の車体構造1では、フランジ部30,32の4隅を締結するのに代えて、車幅方向中央及び車両上下方向中央に4箇所で締結したので、突出部36及び凹部46を締結しながら、ボルト34の数を増やすことなくフランジ部30,32を互いに確実に結合することができる。
【0027】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態による車両の車体構造について説明する。第2実施形態による車両の車体構造60は、フロントサイドフレーム及びクラッシュカンの構造が異なる他は、第1実施形態による車両の車体構造1と同様の構造を有する。
図4は、本発明の第2実施形態による車両の車体構造60の一部を示す拡大斜視図である。この図4では、車両の車体構造60のフロントサイドフレーム62及びクラッシュカン64のフランジ部66,68の部分を拡大して示す。
【0028】
フロントサイドフレーム62は、車幅方向寸法が、車両上下方向寸法よりも長い横長の矩形状の閉断面を有する。フロントサイドフレーム62は、クラッシュカン64との結合部に、フランジ部66を有する。
フランジ部66は、車両上下方向中央部に、車両の前方に向かって突出する突出部70が形成されている。突出部70は、フロントサイドフレーム62の上下面から中央に向かって前方斜めに延びる傾斜面72と、両側の傾斜面72を連結し、車両上下方向にほぼ平行に延びる平坦面74と、によって形成されている。このような形状により、突出部70は、フロントサイドフレーム62の車両上下方向中央を通る車幅方向に沿った平面に関して対称な形状となる。突出部70の車両上下方向両側には、車両上下方向に沿って延びる平坦面76,78が形成されている。
【0029】
クラッシュカン64は、フロントサイドフレーム62の断面形状に対応して、車幅方向寸法が、車両上下方向寸法よりも長い横長の矩形状の閉断面を有する。クラッシュカン64は、フロントサイドフレーム62との結合部に、フランジ部68を有する。フランジ部68は、フロントサイドフレーム62のフランジ部66に対応した形状を有する。即ち、フランジ部68には、車両上下方向中央部に、車両の前方に向かって凹む凹部82が形成されている。凹部82は、車幅方向に沿って延びている。凹部82は、クラッシュカン64の上下面から中央に向かって前方斜めに延びる、傾斜面72に対応した傾斜面84と、両側の傾斜面84を連結し、車両上下方向にほぼ平行に延びる、平坦面74に対応した平坦面86と、によって形成されている。このような形状により、凹部82は、クラッシュカン64の車両上下方向中央を通る車幅方向に沿った平面に関して対称な形状となる。凹部82の車両上下方向両側には、車両上下方向に沿って延びる平坦面88,90が形成されている。
【0030】
フランジ部66,68には、4つの取付孔92,94がそれぞれ形成されている。4つの取付孔92,94のうちの2つは、車両上下方向中央の車幅方向両端に、平坦面74,86にそれぞれ形成されている。また、取付孔92,94の他の2つは、車幅方向中央の車両上下方向の両端に、平坦面76,88と平坦面78,90にそれぞれ形成されている。これらの取付孔92,94にボルト(図示せず)が挿通されることにより、フランジ部66,68が4箇所で締結され、フロントサイドフレーム62とクラッシュカン64とが結合される。
【0031】
以上のような構成の本実施形態によれば、第1実施形態による車両の車体構造1の効果と同様の効果が得られる他、次のような優れた効果が得られる。
突出部70及び凹部82が、車幅方向に沿って形成されているので、フランジ部66,68における車両上下方向の結合強度を向上させることができる。つまり、突出部70の傾斜面72及び凹部82の傾斜面84が互いに係合することにより、フランジ部66,68における車両上下方向の荷重を、ボルトだけでなく、傾斜面72,84でも受けることができる。したがって、フランジ部66,68における車両上下方向の振動や応力に対する耐力を向上させることができる。
【0032】
フロントサイドフレーム62及びクラッシュカン64の横断面形状が、車幅方向寸法が車両上下寸法よりも長い横長の矩形状であるが、車幅方向に沿って延びる突出部70及び凹部82によって、より剛性の低い車両上下方向の剛性を向上させることができる。
【0033】
突出部70及び凹部82が、車両上下方向中央に配置されているので、車両上下両方向に対して等しく結合強度を向上させることができる。また、突出部70及び凹部82が、車両上下方向中央で車幅方向の面に関して対称に形成されているので、クラッシュカン64に入力された軸方向の荷重を、車両上下方向に関して偏りなくフロントサイドフレーム62に伝達することができる。したがって、荷重の偏りによるフロントサイドフレーム62の折れを防止することができる。
【0034】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、例えば、突出部及び凹部は、共に車両の前方に向かって形成されるものに限らず、例えば図5に示すように、フロントサイドフレーム100が車両後方に向かって凹む凹部102を有し、クラッシュカン104が、凹部102に対応して車両後方に向かって突出する突出部106を有していてもよい。
【0035】
結合部は、4箇所で締結されているものに限らず、例えば図6に示すように、突出部112及び凹部114が車両上下方向に延びるフランジ部120,122において、フランジ部120,122の4隅と、突出部112及び凹部114の平坦部116,118の車両上下方向両端の2箇所の、計6箇所をボルト(図示せず)で締結してもよい。また、フレーム部材とエネルギ吸収部材の結合部の結合方法は、ボルトによる締結に限らず、例えば溶接等、他の任意の結合方法を用いてよい。このように、結合部の結合方法は、結合部の形状、寸法等を勘案して任意に設定することができる。
【0036】
また、フランジ部は、図6に示すフランジ部120,122のように、内部に開口部を有していない構成のものであってもよい。
結合部とフレーム部材または結合部とエネルギ吸収部材との結合は、前述の実施形態のように、フランジ部30にフロントサイドフレーム2の前端18を当てて全周を溶接する方法に限らない。例えば、フランジ部にフロントサイドフレームの前端外周面に沿った筒状の取付部を形成し、この取付部にフロントサイドフレームの端部を挿入し、取付部の外側からフロントサイドフレームの端部を溶接してもよい。
【0037】
突出部及び凹部は、車幅方向中央部または車両上下方向中央部に形成されるものに限らず、例えば車幅方向内側または外側や、車両上方または下方に偏位した位置に形成されていてもよい。また、突出部及び凹部は、車両上下方向または車幅方向に延びるように形成されているものに限らず、例えば矩形に突出した突出部及び矩形に凹んだ凹部であってもよいし、十字形に突出下突出部及び十字形に凹んだ凹部であってもよい。このように、突出部及び凹部の形状及び寸法は、任意に設定することができる。
【0038】
エネルギ吸収部材は、フロントサイドフレームとバンパレインフォースメントの間に設けられるクラッシュカンに限らない。例えば、本発明のエネルギ吸収部材は、フロントサイドフレームの下方にフロントサイドフレームに沿って延びるサブフレームと、バンパレインフォースメントの下方に車幅方向に延びるビーム部の間に設けられて、ビーム部が受ける衝突エネルギを吸収するためのエネルギ吸収部材として使用してもよい。
また、エネルギ吸収部材は、車両の前部に設けられるものに限らず、例えば、リアサイドフレームとリア側のビーム部との間に設けられて、後方からの衝突エネルギを吸収するエネルギ吸収部材として使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態による車両の車体構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態による結合部の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態による結合部の拡大平面図である。
【図4】本発明の第2実施形態による結合部の分解斜視図である。
【図5】本発明の結合部の変形例を示す図である。
【図6】本発明の結合部の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1,60 車体構造
2,62 フロントサイドフレーム
20,64 クラッシュカン
30,32,66,68 フランジ部
34 ボルト
36,70 突出部
46,82 凹部
56,58,92,94 取付孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車幅方向両側に、前後方向に延びる一対のフレーム部材と、前記各フレーム部材の端部に設けられたエネルギ吸収部材とを備えた車両の車体構造であって、
前記フレーム部材の前記エネルギ吸収部材との結合部には、車両前後方向に突出した突出部または車両前後方向に凹んだ凹部が形成され、
前記エネルギ吸収部材の前記フレーム部材との結合部には、前記フレーム部材の前記突出部または前記凹部に対応する凹部または突出部が形成されている、
ことを特徴とする車両の車体構造。
【請求項2】
前記突出部及び前記凹部は、前記フレーム部材の車幅方向中央部及び前記エネルギ吸収部材の車幅方向中央部に形成され、且つ車両の上下方向に延びる、
請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項3】
前記エネルギ吸収部材の横断面形状は、車両上下方向寸法が、車幅方向寸法より長い矩形状である、
請求項2に記載の車両の車体構造。
【請求項4】
前記突出部及び前記凹部は、前記フレーム部材の車両上下方向中央部及び前記エネルギ吸収部材の車両上下方向中央部に形成され、且つ車幅方向に延びる、
請求項1に記載の車両の車体構造。
【請求項5】
前記エネルギ吸収部材の横断面形状は、車幅方向寸法が、車両上下方向寸法より長い矩形状である、
請求項4に記載の車両の車体構造。
【請求項6】
前記フレーム部材の結合部とエネルギ吸収部材の結合部は、車両上下方向中央部における車幅方向両端の2箇所と、車幅方向中央部における車両上下方向両端の2箇所とで締結されている、
請求項1から5の何れか1項に記載の車両の車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−241699(P2009−241699A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89417(P2008−89417)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】