説明

車両の軌道を変更するための方法及びシステム

この発明は、車両の軌道を変更するための方法に関し、該車両が、手動の操舵装置、少なくとも1対の接地部材、並びに手動操舵装置と接地部材との間の機械的相互接続を含み、車両の軌道が変更されるように、前記接地部材の少なくとも1つに制動力を付与すると同時に、機械的相互接続から生じる操舵装置外乱を抑制するステップを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の軌道を変更するための方法及びシステムであって、該車両は、手動操舵装置、少なくとも1対の接地部材、並びに手動操舵装置と接地部材との間の機械的相互接続を含む方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多数の能動的な安全機能は、衝突の回避、車道逸脱、又は適切な車線位置の取得などの理由で、車両の今後の軌道を変更することを目指している。軌道の変更は、操舵角の変更によって実施でき、これは正にドライバーが車両の運転中に行っていることである。
【0003】
従って、車両の軌道は、車両の所望の今後の軌道からの逸脱のような望ましくない状況によって変更されうる。つまり、本発明は、運転中の車両のいわゆる車線維持に適用可能である。意図しない車線逸脱を呈示する現在の運転シナリオは、車両の位置、車線(若しくは路肩)に対する方向及び/又は方向付けに基づいて決定できる。更に、車両前方の車線の行路を監視するために構成される公知のシステムがあり、これは、例えば、視覚システムを用いて車線標識を監視することによって実施される。この車線維持サポートシステムは、好ましくは、操舵装置に対する案内力の供給が、あらゆる入力データ(例えば、車両前方の車線の行路、走行中の他の車両、並びに当該車両の予測される運転挙動)の分析後に適切であるとみなされる状況でのみ案内力を供給するように構成される。
【0004】
操舵装置に及ぼされる案内力は、ドライバーが操舵装置に付与する力に逆らう場合には、抵抗的であり、ドライバーが操舵装置に付与する力と同じ方向に作用する場合には補助的である。従って、例えば、車輪などに働く例えば摩擦力の作用を低減するが、これは、操舵装置を操作する際、ドライバーにより抵抗として経験される。操舵装置は、車両の場合、一般に、従来のハンドルによって形成される。しかし、本発明は、上記以外の操舵装置、例えば、ジョイスティック、スライディングニップル、又は車両を操舵するためのいずれか他の好適な操舵装置にも適用可能である。例えば、操舵装置がハンドルである場合、案内力は該ハンドルに及ぼされる案内トルクとして付与されることになる。
【0005】
多くの国や地域では、操舵装置に付与される許容案内力を制限する法的要件が存在する。公知の方法によれば、ハンドルに付与される案内トルクは、介入中に許容限界まで自動的に制限される。しかし、こうした自動的制限は、所望の範囲まで介入できないため、介入がうまくいかないという結果をもたらしうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的の1つは、車両の軌道を変更するための方法であって、特に、操舵装置案内力の量について所定の限界がある場合に、運転中、更に改善された安全の状況を形成する方法を達成することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。従って、車両の軌道が変更され、同時に、機械的相互接続から起こる操舵装置外乱を抑制するように、接地部材の少なくとも1つに制動力を付与するステップによって達成される。
【0008】
「接地部材」という用語は、タイヤを備えた車輪を含むが、その他のタイプの接地部材、例えば無限軌道も含みうる。
【0009】
制動力は、好ましくは、対の接地部材に対する差動ブレーキ力によって付与される。
【0010】
従って、車両の軌道は、差動ブレーキによって変更でき、その際、縦力は、ブレーキ圧を単一の車輪又は車輪対(例えば、同じ側の前輪と後輪)に付与することによって生成される。得られる縦力は、車両の重心を中心とするトルクを発生し、車両軌道を変更する。
【0011】
前車軸に対する差動ブレーキについての従来の解決策に伴う問題は、外乱トルクが操舵システムに導入され、操舵角が生じることである。その結果、前車軸の横すべり角が導入され、横力が生じる。この力は、車両の重心を中心として発生する横力及び縦力のトルクが同じ方向に反作用するか、又は作用するように作動する。これら2つの方法のうち、あてはまるのがどちらかについては、前車軸サスペンションの実際の構成による。いずれの場合でも、達成される操舵角の正確な量は、ドライバーがハンドルに手を載せているか否か、並びにドライバーによって許容されるハンドル角に応じて変わる。つまり、側方加速(又は片揺れ率)とブレーキ圧(又はホイールブレーキトルク)との間の伝達関数のループ利得は、実際の車両前車軸サスペンション及びドライバーの両方に応じて変動する。
【0012】
機械的相互接続によって生じる操舵装置外乱を同時に抑制する、本発明のステップによって、操舵システムに導入される外乱トルクの問題が軽減される。
【0013】
例示的実施形態によれば、本方法は、現在の運転シナリオを示す信号を受信し、望ましくない状況を回避するために、運転シナリオに基づき少なくとも1つの接地部材を制動することにより、車両の軌道を変更するのが望ましいか否かを決定し、もし望ましい場合には、制動力を少なくとも1つの接地部材に自動的に付与するステップを含む。従って、車両の軌道を変更することは、少なくとも1つの接地部材を制動するのに加えて追加的方法でも実施できる。この追加的方法の1つは、操舵装置によって操舵することにより、車両の軌道を変更することである。例えば、車両の軌道を変更するために、案内力を操舵装置に付与する。好ましくは、ドライバーの操舵操作中に案内力を付与する。好ましくは、付与された案内力は、補助的にすぎない。すなわちこれは、ドライバーが依然として車両を操舵する完全な権限を有する程度までに限定される。しかし、システムは、車両を制御すると共に、車線維持の場合には、車両を本来の車線の安全な位置に戻すように構成することができる。
【0014】
好ましくは、望ましくない状況とは、車両の予測される所望の今後の軌道からの予測される逸脱を表す。
【0015】
別の例示的実施形態によれば、本方法は、機械的接続の影響からドライバーの操舵感覚を切り離すことによって、機械的相互接続によって生じる操舵装置外乱を抑制するステップを含む。従って、上記実施形態は、操舵感覚からハードウエア(機械的接続)を切り離す条件を形成する。つまり、この実施形態は、アプリケーションから独立した(ハードウエアから独立した)操舵感覚の条件を形成する。
【0016】
更に別の例示的実施形態によれば、本方法は、操舵装置における操舵角及び/又は操舵トルクを示す信号を受信し、操舵角によって操舵装置外乱が生じるか否かを決定し、操舵角及び/又は操舵トルクによって生じる操舵装置外乱に反作用する力を付与するのが望ましいか否かを決定し、もし望ましい場合には、対応する信号を操舵装置に上記の反作用力を付与するように配置されたアクチュエータに、対応する信号を生成することによって、機械的相互接続から生じる操舵装置外乱を抑制するステップを含む。
【0017】
好ましくは、操舵トルクは、操舵装置におけるトーションバーのねじりを測定することによって決定される。より詳細には、第1角度センサーが、トーションバーの第1末端に配置され、第2角度センサーが、トーションバーの第2末端(第1末端の反対側)に配置される。操舵トルクは、トーションバーの相対角運動(ねじり)とトーションバーの剛性に基づいて決定できる。別の実施形態によれば、1つ又は複数のストレインゲージを用いることができる。
【0018】
方法は、電気式パワーアシスト操舵システム(EPAS)によって実施してもよく、EPASは、制御機能(以後「基準信号発生器」と呼ぶ)を含み、これは、ドライバーに所望の操舵感覚を提供するためにハンドルに付与される所望のトルクを決定するように構成される。つまり、基準信号発生器は、名目上の車両を呈示する。
【0019】
従って、操舵装置と地面との間に機械的接続は存在するが、機械的接続によって生じる固有の操舵感覚は排除されるか、少なくとも抑制される。つまり、案内力は、ドライバーが、機械的接続によって生じる固有の操舵感覚ではなく、操舵装置において所望の感覚を経験するように、運転中連続的に決定される。
【0020】
操舵システム制御のために基準信号発生器を用いる場合には、外乱トルクが自動的に補償されるため、前車軸の滑り角が生じない。従って、横力も発生しない。このように、サスペンション形状及びドライバーの両方の影響がループから効果的に排除される。従って、制動機能は、はるかに予測可能なプロセスとなる。
【0021】
従って、別の例示的実施形態によれば、本方法は、決定された所望の案内力(操舵装置に付与される)に基づいて所望の操舵感覚を車両のドライバーに提供するステップを含む。好ましくは、この方法は、決定された案内力を、アクチュエータを介して操舵装置に付与するステップを含む。実施の観点から、実際トルクが、決定された操舵感覚についての所望のトルクより低い場合には、アクチュエータを介して案内トルクを追加することが、また、実際トルクが、決定された操舵感覚についての所望のトルクより高い場合には、アクチュエータを介して案内トルクを取り消すことが賢明である。
【0022】
更に別の例示的実施形態によれば、本方法は、車両状態を示す少なくとも1つの信号を受信して、少なくとも1つの車両状態信号に基づいて案内力を決定するステップを含む。好ましくは、方法は、車両の今後の軌道を変更するための案内力の値及び方向を決定するステップを含む。車両の今後の軌道を変更する際にドライバーを補助するように、案内力の値を決定できる。
【0023】
別の例示的実施形態によれば、本方法は、決定された案内力を限界値と比較して、決定された案内力が限界値を超える場合には、車両の軌道を変更するように、少なくとも1つの接地部材に制動力を付与するステップを含む。
【0024】
限界値は、最大許容トルクを表す場合もあり、法的要件又は内部安全要件のために、EPASはこれを追加できる。好ましくは、車両の軌道の変更は、操舵装置によって実施され、前述のような限界に達した場合にのみ、ブレーキを用いて、車両の重心を中心とするトルクを増加することにより、車両の軌道の変更の一因となるか、あるいは、完全に操舵を支配する。
【0025】
車両を右に操舵しようとする場合、サスペンション形状は、1タイプのトラックにおけるものと同様である。次に、車両の右側の車輪を制動する。そして、重心を中心とするトルクを獲得して、車両を時計回り方向に回転させる。基準信号発生器機能を備えていない場合、前部右車輪は、右側への外乱角を取得することになる。基準信号発生器機能を備えている場合には、この外乱角は除去され、制動によって、はるかに予測しやすい操舵がもたらされるであろう。
【0026】
更に別の例示的実施形態によれば、本方法は、操舵装置に付与される案内力を限界値以下に制限するステップを含む。従って、制動による操舵に加えて、操舵装置を用いて操舵作用が達成される。
【0027】
更に別の例示的実施形態によれば、本方法は、少なくとも1つの操舵装置案内力操作モデルに基づき案内力を決定するステップを含む。好ましくは、方法は、運転中、案内力を連続的に決定し、決定された案内力を操舵装置に連続的に付与した後、操舵装置トルクの限定値に達したら、決定された案内力を変更/中止するステップを含む。
【0028】
好ましくは、少なくとも1つの案内力操作モデルは、少なくとも1つの所望の操舵特性パラメータを含む。好ましくは、少なくとも1つの所望の操舵特性パラメータは、操舵装置運動の制動、タイヤ摩擦、操舵装置のニュートラル位置への自己アライメント、並びに操舵装置と車輪との機械的接続における摩擦のうち少なくとも1つを含む。特に、少なくとも1つの所望の操舵特性パラメータは、少なくとも1つの側方加速及び/又は片揺れ率を含み、方法は、側方加速及び/又は片揺れ率の影響を改変及び/又は取り消すステップを含む。
【0029】
制動による操舵は、車両に側方加速(又は片揺れ率)を引き起こし、実際の車両挙動と、基準信号発生器機能における車両モデルによって推定される挙動との間に偏差が生じる。この偏差は、ハンドルにトルクをもたらすが、こうしたトルクは、制動による操舵に反して作用することになる。これを回避するために、測定された側方加速(又は片揺れ率)は、制動による操舵中に切り離す必要がある。あるいは、制動による操舵中に、重心を中心とするどれくらいのトルクがもたらされるかがわかっているため、ハンドルにおけるトルクを補償できる。
【0030】
制動による操舵からの所望の側方加速(片揺れ率)は、車両の推定慣性を用いることにより、車両の重心を中心とする所望のトルクをもたらす。輪距がわかっていれば、車両の重心を中心とする所望のトルクから、制動力を計算できる。
【0031】
更に、重心を中心とするどれくらいのトルクについて、ブレーキが影響しているかがわかるように、ブレーキのブレーキ係数の優れた推定値を得ることが有利である。ブレーキ係数は、ブレーキトルクに対するブレーキ圧に関するものであり、例えば、速度、ブレーキ圧、温度及び汚染によって変動しうる。
【0032】
本発明の別の目的は、車両の軌道を変更するためのシステムであって、運転中、特に案内力の量について所定の限界がある場合に、より改善された安全性の条件を形成するシステムを達成することである。
【0033】
上記の目的は、請求項17に記載のシステムによって達成される。従って、車両は、車両の軌道を変更するためのシステムであって、車両は、手動の操舵装置と、少なくとも1対の接地部材と、これらの間にある機械的相互接続とを含み、該システムは、車両の軌道が変更されるように、接地部材の少なくとも1つに制動力を付与するための装置と、機械的相互接続によって生じる操舵装置外乱を抑制するための装置とを含むことを特徴とするシステムによって達成される。
【0034】
例示的実施形態によれば、操舵装置外乱を抑制するための装置は、操舵角及び/又は操舵装置において操舵トルクを検出する手段、操舵角及び/又は操舵トルクが、操舵装置外乱を起こすか否かを決定して、対応する信号を生成する手段と、信号を受信し、これに応じて操舵装置に対する外乱に反作用する力を付与するように構成されたアクチュエータとを含む。好ましくは、供給された操舵装置案内力を測定し、推定された所望の操舵装置案内力と比較するが、ここで、供給された操舵装置案内力は、フィードバック制御装置を用いて、案内力の量を調整することにより、所望の操舵装置案内力と実質的に同じになるように調整される。
【0035】
別の例示的実施形態によれば、本システムは、現在の運転シナリオを示す信号を受信して、運転シナリオに基づいて制動することにより車両の軌道を変更することが望ましいか否かを決定した後、対応する制動力信号を、制動力を付与する手段に対して生成する手段を含む。
【0036】
更に別の例示的実施形態によれば、車両の軌道を変更することが望ましいか否かを決定する手段は、操舵装置を制御する手段に対して信号を生成するように構成される。
【0037】
また別の例示的実施形態によれば、本システムは、決定された所望の案内力に基づいて所望の操舵感覚を車両のドライバーに提供する手段を含む。
【0038】
その他の好ましい実施形態及びその利点は、以下の説明、図面並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【0039】
添付図面に示す実施形態を参照しながら、本発明を以下により詳細に説明することにする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】一実施形態による本発明の方法を実施するためのシステムを概略的に示す図である。
【図2】制動により車両を操舵する実施例を示す図である。
【図3】制動により車両を操舵する別の実施例を示す図である。
【図4】一実施形態による本発明の方法のための作業の流れを概略的に示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下、本発明のトラックへの適用について説明する。しかし、本発明は、トラックに限定されると見なされるべきではなく、他の車両、例えば乗用車にも適用できる。図1は、一実施形態の制御方法を実施するためのシステム1を概略的に示す。システム1は、機械的操舵装置2を含み、これは従来のタイプのものでよい。機械的操舵装置2は、ステアリングホイール(ハンドル)の形態の操舵装置3、車輪の形態の少なくとも1つの接地係合部材4、及びハンドル3から車輪4へ操舵信号を伝達するためのハンドル3と車輪4との間の機械的接続5を含む。
【0042】
ハンドル3は、車両の車室内に配置され、車輪4を操舵するために車両のドライバーによって手動で操作される。操舵装置2は、ハンドル3から下方の油圧式パワーアシストシステム(HPAS)7まで延びる操舵連結手段6を含むが、これは、操舵連結手段6における角回転を、操舵部材8を介して線形運動に変換するためのものである。操舵連結手段6は、電気操舵ギヤを含む。HPASは、油圧シリンダ(図示なし)とトーションバー(図示なし)を含む従来のタイプのものでよい。操舵部材8は、両端が左右の車輪4に連結され、ハンドル3からの操舵信号に応じて車輪4を回転させるように構成される。
【0043】
システム1は、操舵角の補助調節をするアクチュエータ9を更に含む。アクチュエータ9は、好ましくは電気モータによって形成される。アクチュエータ9は、ドライバーがハンドルを操舵するのを補助するために、案内力、より具体的には案内トルク又はアシストトルクを操舵集合装置に供給する。電気モータは、操舵装置2におけるハンドル軸周辺に配置され、磁界がハンドル軸に直接作用する。あるいは、電気モータは、ハンドル軸の付近に配置して、機械的連結、好ましくはピニオンギヤを介してハンドル軸に作用させてもよい。
【0044】
システム1は更に、ドライバーによってハンドルに付与される手動のトルクを測定するためのトルク測定装置10を含む。トルク測定装置10は、弾力的構成からなり、好ましくはトーションバーを含む。つまり、操舵角がトーションバーによって測定される。より具体的には、電気操舵ギヤはトーションバーを含む。
【0045】
システム1は更に、電気式パワーアシスト操舵(EPAS)システム11を含む。EPAS11は、調節ループ12を含み、これは、トルクフリーの操舵を達成するように構成される。調節ループ12は、ハンドル3における現在の操舵トルクを示す入力信号を受信するように構成される。入力信号は、トルク測定装置10から受信される。基本的に、調節ループ12は、トルクフリーの操舵が達成されるように、アクチュエータ9に信号を出力するために構成される。
【0046】
調節ループ12は、フィルター機能を備えた制御装置(すなわちレギュレータ)27を含む。フィルター機能は、本発明の車両の操舵動力学の逆モデルに基づくものでよい。更に、レギュレータ27は、上記モデルにおけるエラーを軽減すると共に、外乱及び測定ノイズを低減して、システムの不安定性の危険性を軽減するように構成できる。
【0047】
レギュレータ27は、電気モータを介して操舵装置に付与しようとするトルクを示す信号を受信し、これに応じて、出力信号を生成するように構成される。調節ループ12は電気モータ制御手段28を更に含み、これは、レギュレータ27からのトルクを示す出力信号を受信し、電気モータに対して、対応する電流値を示す信号を生成するように構成される。別の形態によれば、レギュレータ27と電気モータ制御手段28とを、単一の制御装置に一体化する。
【0048】
EPASは更に、制御機能13(以後、基準信号発生器と呼ぶ)を含み、これは、ドライバーに所望の操舵感覚を提供するために、ハンドルに付与しようとする所望のトルクを決定するように構成される。つまり、基準信号発生器は、名目上の車両を呈示するものである。
【0049】
更に、基準信号発生器13は、調節ループ12に作動可能に接続されて、所望の操舵トルクを示す信号を出力する。調節ループは、所望の操舵トルクと、実際の現在の操舵トルクを比較し、出力信号をアクチュエータに連続的に適合させ、これによって所望の操舵トルクがドライバーに伝達されるようにする。つまり、アクチュエータは、基準信号発生器からの所望のトルク値と、操舵集合装置における現在の実際トルクとの間のトルク差を付与するように制御され、これによって実際トルクが、所望のトルクと実質的に等しくなるように制御される。
【0050】
基準信号発生器13は、少なくとも1つの操舵装置案内力操作モデルを含み、図1の実施例では、複数の案内力操作モデル14、15、16、17、18を含む。案内力操作モデルは、好ましくは数学モデルを含む。該モデルは、ある意味では、操舵装置において所望の操舵感覚を達成するように構成される。従って、上記モデルは、様々な車両タイプ及び/又は様々な所望の操舵感覚のために様々な方法で構成できる。
【0051】
更に、上記モデルは、少なくとも1つの所望の操舵特性パラメータを含む。より具体的には、各モデルは、少なくとも1つの入力19に基づく、1つの所望の予定された操舵特性パラメータについて、案内トルク値Tを生成するように構成される。つまり、操舵特性パラメータは、動作パラメータに影響を与える案内力である。各モデルは、数学的機能を含み、トルク値は、入力の値の関数として決定される。図1の機能の図示した例を参照されたい。
【0052】
上記モデルから得られた個々のトルク値を合計してトルク和を得るが、基準信号発生器からの出力20を形成する。図示の実施形態では、基準信号発生器は、車両側方加速、操舵装置運動の制動、タイヤ摩擦、操舵装置のニュートラル位置への自己アライメント、及び操舵装置と車輪との機械的接続の摩擦などの操舵特性パラメータについてのモデルを含む。
【0053】
基準信号発生器への信号入力は、ドライバーの操舵意図、例えば、操舵角(δ)及び操舵角の変化率(dδ/dt)を示す少なくとも1つの信号を含む。操舵角に代わる実施形態によれば、操舵意図を示す信号は、電気モータ角度又は車輪角であってよい。操舵角の変化率に代わる実施形態によれば、操舵意図を示す信号は、電気モータ角度又は車輪角の変化率であってよい。
【0054】
基準信号発生器に入力される信号は、車体運動、例えば、側方加速(Ay)及び/又は片揺れ率を示す少なくとも1つの信号を含む。こうした車体運動は、車両に配置されたセンサーによって感知できる。
【0055】
車両側方加速モデル14は、好ましくは、入力信号として現在の側方加速を示す信号を受信する。好ましい実施例では、車両側方加速は、最も重要な操舵特性パラメータである。
【0056】
制動モデル15は、所望の操舵感覚を達成するための案内トルク値と現在のハンドル速度との所定の関係を表す。従って、制動モデル15は、好ましくはハンドル速度(ハンドル位置の変化率)を示す信号を受信する。図1に示す機能例では、トルク値は、ハンドル速度の小さな入力値については劇的に上昇する。更に、トルク値は、ハンドル速度の入力値が大きくなると、ほとんど増加しない。つまり、曲線は平坦になる。制動モデル15は、好ましくは純粋な静的マッピングである。制動モデルからのトルク値出力は、現在のハンドル速度に対して反対方向に作用するように構成される。制動モデル15は、好ましくは、得られるトルクが、より高いハンドル速度については小さく、また、より小さいハンドル速度については高くなるように構成される。このように、制動トルクは、正常運転中は操舵角速度に比例しており、また、駐車又は回避操作中は最大値に限定される。
【0057】
従って、車両側方加速モデル14と制動モデル15は、互いに関連している。
【0058】
自己アライメントモデル17は、所望の操舵感覚を達成するための案内トルク値と現在の操舵角との所定の関係を表す。ニュートラル位置に対する操舵装置の自己アライメントとは、能動的な戻り、すなわち解放されたハンドルの中心設定への戻りを意味する。自己アライメントモデル17は、好ましくは、操舵角を示す信号と、入力信号として車両速度を示す信号を受信する。車両速度入力信号の目的は、高速走行中に自己アライメントトルクを減少させられるように、現在の車両速度に応じて所望のアライニングトルクを調節できるようにすることである。
【0059】
摩擦モデル16、18に関しては、ハンドルにおいて所定量の摩擦感覚が望ましい。例えば、小さな操舵角偏差について所望のトルク増大を達成するためには、オンセンターハンドリング中にクーロン摩擦が望ましい。更に、クーロン摩擦は、長いカーブを走行中にも望ましく、これにより、操舵力が減少し、ドライバーは、摩擦時にハンドルを「休ませる」ことができる。
【0060】
タイヤモデル16はヒステリシスカーブを含み、これはタイヤモデルを表す。好ましくは、モデル16は、操舵トルクに対して非回転タイヤの動的モデルである。操舵角とトルクとの関係は、物理的関係によって与えられ、個別のゴム要素の偏向が、ハンドルの角度差、ねじり、及び回転タイヤによるゴム要素の弛緩に応じてモデル化される。従って、得られるモデルは、車両速度が増大し、かつ操舵角振動数が一定のとき、より小さなヒステリシス作用をもたらす。
【0061】
本発明の方法は、実際の操舵装置から得られるハンドルにおける実際摩擦作用を取り消し、それに代わって、ハンドルに対し所望の抵抗トルクを付与するための条件を形成するが、これは、ドライバーに対してごくわずかな摩擦感覚を呈示する。このように、ハードウエア(機械的操舵装置)は、摩擦操舵感覚から切り離される。つまり、本発明は、アプリケーションから独立した(ハードウエアから独立した)摩擦操舵感覚のための条件を形成する。
【0062】
タイヤ摩擦モデル16と機械的接続摩擦モデル18は、原則として互いに類似している。タイヤ摩擦モデル16は、タイヤと地面との間の摩擦を表すものであり、機械的接続摩擦モデル18は、上部ハンドルの舵取り軸集合装置における摩擦を表している。従って、機械的接続摩擦モデル18における摩擦係数は、タイヤ摩擦モデル16の係数より高い。タイヤ摩擦モデル16は、好ましくは操舵角を示す信号と車両速度を示す信号とを受信する。機械的接続摩擦モデル18は、好ましくは操舵角を示す信号を受信する。
【0063】
摩擦モデル18の実施例によれば、操舵角δの値を、圧縮されたばね剛性(Nm/Rad)に一致する剛性Kで掛ける。得られた値をラプラスオペレータ(s)に入力する。得られた操舵角信号、すなわち操舵角速度に剛性Kを乗じたものを、アンチワインドアップ機能性を含む積分関数で用いるが、これは、積分限界及びラプラストランスフォーメータの逆数によって示される。所望の最大値及び最小値に対する摩擦トルクを制限するために、限定値を選択する。前述したアンチワインドアップ機能性は、いったん積分限界に達したら、積分を止めるように意図されている。操舵角δと、出力トルク値との関係を図1のボックス18に概略的に示す。
【0064】
操舵特性モデル14、15、16、17、18は、様々な操舵特性パラメータが、様々な運転シナリオにおいて他のパラメータに対して優先するように構成される。一実施例では、側方加速は、高速で運転中、他の操舵特性パラメータに対して優先するように構成される。別の実施例では、操舵システム摩擦及びタイヤ摩擦が、低速で運転中に、他の操舵特性パラメータに対し優先するように構成される。制動トルクは、車両速度とは関係なく同様に能動的である。別の実施例によれば、自己アライメントは、高速度及び低速度の間の中間速度の時間内での運転中に、他の操舵特性パラメータに対し優先するように構成される。
【0065】
本発明は、運転中の車両のドライバーを補助するための方法に関する。好ましい実施形態によれば、制御方法は、走行中の車両のドライバーによって経験される操舵特性の制御を可能にするように構成される。つまり、制御方法は、ハンドルを介して、ある操舵感覚(又は操舵感受性若しくは触覚フィードバック)をドライバーにもたらすように構成される。
【0066】
摩擦感覚に関して、例示的実施形態によれば、方法は、操舵角を表す入力に基づく所望の抵抗トルクを決定するステップを含む。実際の操舵角の方向(時計方向又は反時計方向)を決定し、即座に同じ方向にトルクを付与することにより、操舵装置における摩擦の作用を有効に取り消すことができる。
【0067】
システム1は、車線維持制御機能の形態の安全機能21を更に含む。車線維持制御機能21は、車両の意図する所望の今後の経路からの逸脱を回避するように構成される。車線維持制御機能は公知であり、本明細書では詳しく説明しないことする。車線維持機能21は、現在の運転シナリオに基づいて、意図しない車線逸脱を回避する目的で、車両操舵装置に対する案内力が望ましいか否かを予測するように構成される。より具体的には、車線維持制御機能21は、現在の運転シナリオを示す少なくとも1つの入力33を受信し、これに応じて出力トルク値25を決定する。
【0068】
車線維持制御機能21は、車線監視システム33を含み、該システムは好ましくはカメラを備えている。車線監視システム33は、現在の車線位置を示す信号を生成する。車線維持制御機能21は更に、要求される車線位置を示す信号(図示なし)を受信する。車線維持制御機能21はまた、車両速度を示す信号(図示なし)も受信する可能性がある。
【0069】
車線維持制御機能21は、求められる車線位置と車両速度とに基づき側方加速値を決定(計算)するように構成される。つまり、車両がカーブに接近すると、カーブの間、所望の車線に車両を維持するために、側方加速の値が計算される。車線維持制御機能21は、操舵装置2に対して、対応するトルク値を示す出力信号25を生成する。
【0070】
一実施形態によれば、操舵装置2は安全機能21からの出力信号25に応じて制御され、これに応じて、車線維持機能21が軌道の変更が必要であると決定するときに、車両の軌道が変更されるようにする。
【0071】
図1に示す実施例によれば、車線維持制御機能21からの出力トルク値25と、基準信号発生器13からの出力トルク値20を合計して、合計トルク値26を得るが、これは、ハンドル3に付与される所望の操舵トルクを示す。調節ループ12は、所望の合計トルク値26を受信する。
【0072】
従って、システムは、予測された合計案内力が、介入中に、望ましくない状況を回避するのに十分であるように、複数の所望の操舵特性パラメータの少なくとも1つの案内力付与を取り消すべきか否かを決定するために構成される。摩擦作用16、18は、車線維持操作中に必ず取り消されるのが好ましい。少なくとも1つの接地部材に制動力が付与される間、側方加速(モデル14)及び/又は片揺れ率は、変更及び/又は取り消される。
【0073】
本発明は、複数の車輪軸を有するトラクタ及びトレーラを含むトラックに適用できる。大型車、例えば貨物商用車は、通常、様々なブレーキ装置40、例えば、車輪ブレーキ(すなわち、ディスクブレーキ)42、43、44、45、油圧リターダ及びエンジンブレーキと一緒に構成される。
【0074】
安全機能21は、更に、決定された案内力と限定値とを比較するために構成される。もし決定された案内力が限界値を超える場合には、ブレーキ装置40に信号が送信されるが、該ブレーキ装置は、少なくとも1つの接地部材に制動力を付与することによって、車両の軌道を変更するように構成される。限界値は、最大許容トルクを呈示でき、該トルクは、法的要件又は内部安全要件のために、EPASを追加することができる。従って、こうした限界に達したら、ブレーキ42、43、44、45を用いて、車両の重心を中心とするトルクを増加することにより、車両軌道の変更の一因となるか、あるいは、完全に操舵を支配する。
【0075】
ブレーキ装置40は、ブレーキ信号を受信するように構成されたブレーキ制御器41と、複数のブレーキ装置42、43、44、45を含む。各ブレーキ装置42、43、44、45は、車輪の1つを個別に制動するように構成される。ブレーキ制御器41は、車両の軌道を変更するために、複数のブレーキ装置42、43、44、45の少なくとも1つに対しブレーキ信号を生成するように構成される。
【0076】
ブレーキ装置40は、好ましくは電気的に制御される空気ブレーキ装置である。ブレーキ制御器40は、トラクタ及びトレーラ(トレーラのブレーキは示していない)のブレーキ同士の間に、好適な方法で、利用可能なブレーキ圧を分配するように構成されるコンピューター化制御ユニットを形成する。この分配機能は、「ブレーキ適応機能」と呼ばれることもあるし、あるいは、トラクタとトレーラの間では「連結力制御」と呼ばれることもある。上記の機能を用いて、トラクタ内、並びにトラクタとトレーラの間で、高レベルのブレーキ適合性、又はブレーキ均衡を得ることができる。つまり、ブレーキ適応機能による目的は、トラクタ内、並びにトラクタとトレーラの間に、最適な方法で、ブレーキ圧を分配することである。
【0077】
トラクタ及びトレーラのブレーキ均衡を制御するために、いわゆる「ブレーキ係数」、若しくは「ブレーキ利得」をブレーキ制御ユニットへの入力パラメータとして用いる。ブレーキ係数は、通常、Bと称されるが、該係数は、所与の車輪軸について、付与されるブレーキトルクと、加えられるブレーキシリンダ圧との関係、すなわち:
=Tbrake/Pcyl [Nm/バール/軸]
(式中、Tbrakeは、当該車輪軸について付与されるブレーキトルクを示し、Pcylは、車軸について加えられるブレーキシリンダ圧を示す)
として定義される。車両の各車輪軸についてブレーキ係数Bを表す値を決定することにより、制御ユニットは、ブレーキ適応機能を達成するように操作できる。より正確には、特定の車輪軸について試験を実施でき、その際、加えられるブレーキ圧Pcyl(すなわち、対応するブレーキパッドを用いてホイールブレーキディスクに作用する圧力)を測定すると共に、制動中に自由転動軸の減速も測定する。また、減速を表す値も、加速度計を用いて取得できる。減速を測定することにより、ブレーキトルクTbrakeを表す値を計算できる。ブレーキトルクTbrakeを計算する際、いくつかの因子、例えば、空気抵抗及び転動抵抗を補償しなければならない。ブレーキトルクTbrake及びブレーキ圧Pcylの値を用いることによって、前述の関係を用いてブレーキ係数Bを計算できる。
【0078】
更に、ドライバーに補助ブレーキ、すなわちエンジンブレーキ又はリターダによる制動が求められる場合には、車輪軸の制動を実施できる。ドライバーが補助ブレーキから要求されたものと同じ量の制動力で、前部から後部の順に各車輪軸が制動される場合には、ドライバーは外乱を感じることなく、各軸のブレーキ係数を取得できる。車輪軸についてのブレーキ係数を2で割ることによって、各車輪についてのブレーキ係数の推定値を得ることができる。
【0079】
従って、ブレーキ係数Bは、ブレーキの効率を表す値として考えることができる。また、低いブレーキ係数は、例えば、ブレーキにおける故障の可能性を示す場合がある。例えば、ブレーキの接触面積は、土又は錆で汚れている可能性があり、調整を必要とすることを意味する。
【0080】
図2及び図3は、制動により車両を操舵する2つの異なる実施例を示す。ブレーキ圧を単一の車輪又は車輪対(例えば、同じ側の前輪及び後輪)にブレーキ圧を付与することにより、縦力が生成される。得られる縦力は、車両重心を中心とするトルクを生成し、これにより、車両の軌道を変更する。図2及び図3は、車両を右に操舵しようとする2つの状況を示す。このとき、車両の右側で車輪を制動する。重心を中心とするトルクを得て、これにより、車両を時計回りの方向に回転させる。図2は、車両を操舵するためにブレーキがかけられるが、操舵装置による操舵はなく、すなわち車輪が、車両の縦方向に対して傾斜していない状況を開示する。図3は、車両を操舵するためにブレーキがかけられ、更に、操舵装置が操舵されており、すなわち、車輪が車両の縦方向に対して傾斜している状況を開示する。
【0081】
図4は、制御方法の一実施形態のフローチャートを開示する。方法は、ボックス401から開始する。方法は、現在の運転シナリオを示す信号を受信して、望ましくない状況を回避するために、運転シナリオ信号に基づいて、少なくとも1つの接地部材を制動することにより、車両の軌道を変更するのが望ましいか否かを決定するステップ403を含む。少なくとも1つの接地部材を制動することにより、車両の軌道を変更すべきであると決定された場合には、次のステップ405において、少なくとも1つの接地部材に制動力が付与される。同時に、機械的相互接続によって生じる操舵装置外乱が抑制される。
【0082】
図5は、制御方法の一実施形態についてのフローチャートを開示する。本方法は、ボックス501から開始する。方法は、現在の運転シナリオを示す信号を受信して、望ましくない状況を回避するために、運転シナリオ信号に基づいて、操舵装置を作動させることにより、車両の軌道を変更するのが望ましいか否かを決定するステップ503を含む。操舵することにより、車両の軌道を変更すべきであると決定された場合には、次のステップ505において、操舵装置に操舵力が付与される。同時に、機械的相互接続によって生じる操舵装置外乱が抑制される。次に、方法は、操舵装置案内力と限界値を比較するステップ507に進み、案内力が限界値を超えると、車両の軌道を変更するために、制動力が少なくとも1つの接地部材に付与される。同時に、機械的相互接続によって生じる操舵装置外乱が抑制される。具体的には、制動による操舵中に、操舵感覚を決定するためのモデルにおける側方加速の作用(前述した)は抑制され、好ましくは取り消される。
【0083】
ステップ403(又は503)において、制動力が望ましくないと予測される場合には、本方法は、401(又は501)に直接戻ってこれを開始する。同様に、ステップ507における予測案内力が限界値を超えない場合には、方法は、ステップ501に直接戻ってこれを開始する。更に、方法は、連続的に繰り返される。
【0084】
操舵角は、好ましくは、ハンドルの偏向を測定することによって決定される。あるいは、操舵角は、車輪角を測定するか、又は機械的操舵装置におけるハンドルと接地車輪との間のいずれか任意の位置を測定することよって決定される。
【0085】
車線維持について本発明を説明してきたが、本発明は、他の能動的安全機能、例えば、他の経路補正機能、例えば、横風補償又は追突回避(例えば、緊急車線アシスト、ELA)にも適用可能である。つまり、車線案内調節システムは、EPASに組み込まれている。同様に、別の機能を本発明の方法の一実施形態に組み込んでもよい。
【0086】
車両の運転安全性を更に高めるために、操舵システムは、ドライバーの操舵意思とは独立した操向前輪の設定を調節する運転動力学レギュレータを含んでもよい。
【0087】
基準信号発生器13と調節ループ12(制御装置27、28を含む)は、ソフトウエアで実施するのが好ましい。
【0088】
車両側方加速の値は、測定した車両の片揺れ率から推定できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の軌道を変更するための方法であって、該車両が、手動の操舵装置、少なくとも1対の接地部材、並びに手動操舵装置と接地部材との間の機械的相互接続を含み、車両の軌道が変更されるように、前記接地部材の少なくとも1つに制動力を付与すると同時に、機械的相互接続から生じる操舵装置外乱を抑制するステップを特徴とする、方法。
【請求項2】
現在の運転シナリオを示す信号を受信し、望ましくない状況を回避するために、該運転シナリオ信号に基づいて少なくとも1つの接地部材を制動することにより、車両の軌道を変更するのが望ましいか否かを決定し、もし望ましい場合には、少なくとも1つの接地部材に制動力を自動的に付与するステップを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記望ましくない状況が、車両の予測される所望の今後の軌道からの予測される逸脱を表すことを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ドライバーの操舵感覚を前記機械的接続の影響から切り離すことにより、機械的相互作用から生じる前記操舵装置外乱を抑制することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記操舵装置における操舵角及び/又は操舵トルクを示す信号を受信し、該操舵角によって操舵装置外乱が起こるか否かを決定し、操舵角及び/又は操舵トルクから生じる操舵装置外乱に反作用する力を付与することが望ましいか否かを決定し、もし望ましい場合には、操舵装置に対して反作用力を付与するように構成されたアクチュエータに、対応する信号を生成することによって、前記機械的相互接続から生じる操舵装置外乱を抑制することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記操舵装置に付与される、決定された所望の案内力に基づいて所望の操舵感覚を前記車両のドライバーに提供するステップを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
決定された案内力をアクチュエータによって操舵装置に付与するステップを特徴とする、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
車両の状態を示す少なくとも1つの信号を受信して、少なくとも1つの車両状態信号に基づいて前記案内力を決定するステップを特徴とする、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記車両の今後の軌道を変更するための案内力の値及び方向を決定するステップを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
決定された案内力を限界値と比較して、決定された案内力が限界値を超える場合には、車両の軌道を変更するように、少なくとも1つの接地部材に制動力を付与するステップを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記操舵装置に付与される案内力を限界値以下に制限するステップを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの操舵装置案内力操作モデルに基づいて前記案内力を決定するステップを特徴とする、請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの案内力操作モデルが、少なくとも1つの所望の操舵特性パラメータを含むことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの所望の操舵特性パラメータが、少なくとも1つの側方加速及び/又はヨーレートを含み、また、前記方法が、少なくとも1つの接地部材に対する制動力の付与中に、側方加速並びに/若しくはヨーレートの作用を改変及び/又は取り消すステップを含むことを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記操舵装置がハンドルを含み、また、前記案内力が、該操舵装置に付与される案内トルクを形成することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記接地車輪の少なくとも1つを制動するように構成された少なくとも1つのブレーキにブレーキ圧を付与するステップを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
車両の軌道を変更するためのシステムであって、該車両が、手動の操舵装置(3)、少なくとも1対の接地部材(4)、並びにこれらの間の機械的相互接続(5)を含み、該システムは、車両の軌道が変更されるように前記接地部材の少なくとも1つに制動力を付与するための装置(40、41、42、43、44、45)と、前記機械的相互接続から生じる操舵装置外乱を抑制するための装置(12)とを含むことを特徴とする、システム。
【請求項18】
前記装置(12)が、操舵装置における操舵角及び/又は操舵トルクを検出する手段(10)と、操舵角及び/又は操舵トルクによって操舵装置外乱が起こるか否かを決定して、対応する信号を生成する手段(27、28)と、該信号を受信し、これに応じて前記外乱に反作用する力を操舵装置(2)に付与するように構成されたアクチュエータとを含むことを特徴とする、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
現在の運転シナリオを示す信号を受信して、該運転シナリオ信号に基づいて制動することにより車両の軌道を変更するのが望ましいか否かを決定した後、制動力を付与する前記手段(40、41、42、43、44、45)に、対応する制動力信号を生成する手段(21)を含むことを特徴とする、請求項17又は18に記載のシステム。
【請求項20】
前記車両の軌道を変更するのが望ましいか否かを決定する手段(21)が、操舵装置を制御する手段(11)に対して信号を生成するように構成されることを特徴とする、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記システムが、決定された所望の案内力に基づいて所望の操舵感覚を車両のドライバーに提供する手段(12、13)を含む、請求項17〜20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
車両の軌道を変更するためのシステムであって、該車両が、手動の操舵装置、少なくとも1対の接地部材、並びに該手動操舵装置と該接地部材との間の機械的相互接続を含み、該システムは、車両の軌道が変更されるように前記接地部材の少なくとも1つに制動力を付与するための装置と、前記機械的相互接続から生じる操舵装置外乱を抑制するための装置とを含む、システム。
【請求項23】
操舵装置外乱を抑制するための前記装置が、操舵装置における操舵角及び/又は操舵トルクを検出するための制御機能と、操舵角及び/又は操舵トルクによって操舵装置外乱が起こるか否かを決定して、対応する信号を生成するための制御機能と、該信号を受信し、これに応じて前記外乱に反作用する力を操舵装置に付与するように構成されたアクチュエータとを含む、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
現在の運転シナリオを示す信号を受信して、該運転シナリオ信号に基づいて制動することにより車両の軌道を変更するのが望ましいか否かを決定した後、制動力を付与するための前記装置に、対応する制動力信号を生成するための制御機能を含む、請求項22又は23に記載のシステム。
【請求項25】
前記車両の軌道を変更するのが望ましいか否かを決定するための前記機能が、操舵装置を制御するための制御器に対して信号を生成するように構成される、請求項24に記載のシステム。
【請求項26】
前記システムが、決定された所望の案内力に基づいて所望の操舵感覚を前記ドライバーに提供するためのアクチュエータを含む、請求項22〜25のいずれか一項に記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2012−532056(P2012−532056A)
【公表日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518507(P2012−518507)
【出願日】平成21年6月29日(2009.6.29)
【国際出願番号】PCT/SE2009/000339
【国際公開番号】WO2011/002348
【国際公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【出願人】(500277711)ボルボ ラストバグナー アーベー (163)
【Fターム(参考)】