車両制御システム及び制御装置
【課題】確実に内燃機関を始動することができる車両制御システム及び制御装置を提供することを目的とする。
【解決手段】制御装置6は、内燃機関7、回転電機10、及び、クラッチ9を制御し、クラッチ9をスリップ状態とし回転電機10側からの動力により内燃機関7の出力軸20を回転させた後に内燃機関7の燃焼室71に燃料を噴射して点火し内燃機関7を始動する第1始動制御と、内燃機関7の出力軸71の回転が停止した状態で内燃機関7の燃焼室71に燃料を噴射して点火し出力軸20を回転させた後にクラッチ9を介した回転電機10側からの動力により出力軸20の回転をアシストし内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能である。そして、制御装置6は、内燃機関7が停止してからの経過時間に基づいて、第1始動制御と第2始動制御とを切り替えることを特徴とするので、確実に内燃機関7を始動することができる、という効果を奏する。
【解決手段】制御装置6は、内燃機関7、回転電機10、及び、クラッチ9を制御し、クラッチ9をスリップ状態とし回転電機10側からの動力により内燃機関7の出力軸20を回転させた後に内燃機関7の燃焼室71に燃料を噴射して点火し内燃機関7を始動する第1始動制御と、内燃機関7の出力軸71の回転が停止した状態で内燃機関7の燃焼室71に燃料を噴射して点火し出力軸20を回転させた後にクラッチ9を介した回転電機10側からの動力により出力軸20の回転をアシストし内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能である。そして、制御装置6は、内燃機関7が停止してからの経過時間に基づいて、第1始動制御と第2始動制御とを切り替えることを特徴とするので、確実に内燃機関7を始動することができる、という効果を奏する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、車両を制御するための従来のシステムとして、例えば、特許文献1には、エンジンと、モータと、エンジンとモータとを分離係合可能にするクラッチとを備えたハイブリッド車両の駆動制御装置が開示されている。このハイブリッド車両の駆動制御装置は、クラッチを分離状態に切り替えてのモータによる車両駆動時にクラッチを係合させてエンジンをクランキングし始動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−200758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置は、クラッチを完全係合状態にするとともにエンジンの吸気圧が所定値以下で燃料噴射を実行する第1の始動モードと、クラッチを半係合状態にして燃料噴射を実行し、燃料噴射と同時または燃料噴射から所定時間後にクラッチの係合力を半係合状態での係合力より小さくする第2の始動モードとを実行可能であるが、例えば、より確実なエンジン始動の点で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、確実に内燃機関を始動することができる車両制御システム及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両制御システムは、車両の走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関及び回転電機と、前記内燃機関と前記回転電機とを連結可能であるクラッチと、前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能である制御装置とを備え、前記制御装置は、前記内燃機関が停止してからの経過時間に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする。
【0007】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関を始動する際に、前記経過時間が始動判定時間未満である場合に前記第1始動制御を実行し、前記経過時間が始動判定時間以上である場合に前記第2始動制御を実行するものとすることができる。
【0008】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記第2始動制御を実行する場合、前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火した後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸の回転をアシストし、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくするものとすることができる。
【0009】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記点火前の前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記点火前の前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくするものとすることができる。
【0010】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくするものとすることができる。
【0011】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを前記点火前の前記クラッチの伝達トルクよりも小さくするものとすることができる。
【0012】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関の停止後の燃焼室内の空気量に基づいて、前記始動判定時間を変更するものとすることができる。
【0013】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関の停止前の吸気通路内圧、スロットル開度、あるいは、前記出力軸の回転速度に基づいて、前記始動判定時間を変更するものとすることができる。
【0014】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関が停止した際の前記出力軸の停止位置に基づいて、前記始動判定時間を変更するものとすることができる。
【0015】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関が停止した際の前記出力軸の停止位置に基づいて、前記伝達トルクを変更するものとすることができる。
【0016】
また、上記車両制御システムでは、前記内燃機関の燃焼室内の圧力を検出する検出装置を備え、前記制御装置は、前記検出装置が検出する前記内燃機関の停止後の前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記始動判定時間を変更するものとすることができる。
【0017】
また、上記車両制御システムでは、前記内燃機関の燃焼室内の圧力を検出する検出装置を備え、前記制御装置は、前記検出装置が検出する前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記燃焼室内の空気量を推定するものとすることができる。
【0018】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関の吸気通路内圧、スロットル開度、あるいは、前記出力軸の回転速度に基づいて、前記燃焼室内の空気量を推定するものとすることができる。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両制御システムは、車両の走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関及び回転電機と、前記内燃機関と前記回転電機とを連結可能であるクラッチと、前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能である制御装置とを備え、前記制御装置は、前記内燃機関の始動時の前記燃焼室内の空気量、あるいは、前記内燃機関の始動時の前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする。
【0020】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記第2始動制御として、前記内燃機関の出力軸が回転しない程度に前記クラッチをスリップ状態とした後、前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記クラッチの伝達トルクを増大させて前記内燃機関を始動するものとすることができる。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明に係る制御装置は、車両の駆動輪への動力の伝達経路に対して、走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関、クラッチ、走行用動力源である回転電機の順で配置される駆動装置を制御する制御装置であって、前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能であり、
さらに、前記内燃機関が停止してからの経過時間に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る車両制御システム、制御装置は、確実に内燃機関を始動することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施形態1に係る車両制御システムの概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る車両制御システムのエンジンの燃焼室を含む部分断面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る車両制御システムのECUによる制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施形態2に係る車両制御システムの停止直後KL推定値マップの一例を表す線図である。
【図5】図5は、実施形態2に係る車両制御システムの始動判定時間マップの一例を表す線図である。
【図6】図6は、実施形態2に係る車両制御システムの推定KLマップの一例を表す線図である。
【図7】図7は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pd1マップの一例を表す線図である。
【図8】図8は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pk1マップの一例を表す線図である。
【図9】図9は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pk2マップの一例を表す線図である。
【図10】図10は、実施形態3に係る車両制御システムの動作の一例を示すタイムチャートである。
【図11】図11は、実施形態3に係る車両制御システムの動作の一例を示すタイムチャートである。
【図12】図12は、実施形態4に係る車両制御システムの始動判定時間マップの一例を表す線図である。
【図13】図13は、実施形態5に係る車両制御システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0025】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る車両制御システムの概略構成図、図2は、実施形態1に係る車両制御システムのエンジンの燃焼室を含む部分断面図、図3は、実施形態1に係る車両制御システムのECUによる制御の一例を示すフローチャートである。
【0026】
本実施形態は、1つのモータジェネレータと1つのエンジンを備えたいわゆる1モータパラレルハイブリッド形式の車両制御システムである。本実施形態は、車両に適用されるものであり、典型的には、下記の構成要素を有している。
(1)直噴始動が可能な直噴エンジン。
(2)エンジンとモータジェネレータとを接断自在なクラッチ。
【0027】
そして、本実施形態は、これらの構成要素によって、エンジン始動を行う場合に、例えば、前回のエンジン停止後からの経過時間に基づいて第1始動制御と第2始動制御とを切り替えることで、状況に応じたより確実なエンジン始動を実現している。
【0028】
具体的には、本実施形態の車両制御システム1は、図1に示すように、車両2に搭載され、この車両2を制御するためのシステムであり、典型的には、車両2のエンジン停止状態からの始動を制御するエンジン始動制御システムである。車両2は、車両2を走行させるための走行用動力源(原動機)として、内燃機関としてのエンジン7と、回転電機としてのモータジェネレータ10とを搭載したいわゆる「ハイブリッド車両」である。より詳細には、車両2は、1つのモータジェネレータ10と自動変速機である変速機12とを備えたいわゆる1MG+AT型の「パラレルハイブリッド車両」である。
【0029】
車両制御システム1は、車両2の駆動輪3を駆動する駆動装置4と、車両2の状態を検出する状態検出装置5と、駆動装置4を含む車両2の各部を制御する制御装置としてのECU6とを備える。
【0030】
駆動装置4は、車両2においてパラレルハイブリッド形式のパワートレーンを構成し、1つのエンジン7と、1つのモータジェネレータ10とを有し、これらにより駆動輪3を回転駆動するものである。
【0031】
駆動装置4は、エンジン7と、ダンパ機構8と、クラッチとしてのK0クラッチ9と、モータジェネレータ10とを備える。さらに、駆動装置4は、トルクコンバータ11と、変速機12と、プロペラ軸13と、デファレンシャルギヤ14と、ドライブ軸15とを備える。また、トルクコンバータ11は、ロックアップ機構16と、流体伝達機構17とを含んで構成される。変速機12は、C1クラッチ18と、変速機本体19とを含んで構成される。
【0032】
この駆動装置4は、各構成要素が駆動輪3への動力の伝達経路に対して、エンジン7、ダンパ機構8、K0クラッチ9、モータジェネレータ10、トルクコンバータ11のロックアップ機構16、流体伝達機構17、変速機12のC1クラッチ18、変速機本体19、プロペラ軸13、デファレンシャルギヤ14、ドライブ軸15の順で相互に動力伝達可能に配置される。この場合、駆動装置4は、エンジン7の出力軸(内燃機関出力軸)であるクランク軸20とモータジェネレータ10の出力軸(電動機出力軸)であるのロータ軸21とがダンパ機構8、K0クラッチ9を介して連結される。さらに、駆動装置4は、ロータ軸21と駆動輪3とがトルクコンバータ11、変速機12、プロペラ軸13、デファレンシャルギヤ14、ドライブ軸15等を介して連結される。
【0033】
より詳細には、エンジン7は、燃焼室71(図2参照)で燃料を燃焼させることにより燃料のエネルギを機械的仕事に変換して動力として出力する熱機関である。エンジン7は、燃料の燃焼に伴ってクランク軸20に機械的な動力(エンジントルク)を発生させ、この機械的動力をクランク軸20から出力可能である。
【0034】
ここで、本実施形態のエンジン7は、図2に示すように、いわゆる多気筒筒内直接噴射式の内燃機関である。すなわち、エンジン7は、燃料噴射装置(インジェクタ)70によって燃料噴霧70aを燃焼室71に直接噴射するものである。エンジン7は、シリンダボア72内に往復運動可能に設けられるピストン73が2往復する間に一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルエンジンである。エンジン7は、典型的には、ピストン73がシリンダボア72内を吸気行程上死点から下降することで、吸気弁74の開弁に伴って、吸気管、サージタンク、インテークマニホールド、吸気ポート75等の吸気通路76を介して燃焼室71内に空気が吸入される(吸気行程)。そして、エンジン7は、ピストン73が吸気行程下死点を経てシリンダボア72内を上昇することで空気が圧縮される(圧縮行程)。このとき、エンジン7は、吸気行程又は圧縮行程にて燃料噴射装置70から燃焼室71内へ燃料が噴射され、この燃料と空気とが混合して混合気を形成する。そして、エンジン7は、ピストン73が圧縮行程上死点付近に近づくと点火プラグ77により混合気に点火され、該混合気が着火して燃焼し、その燃焼圧力によりピストン73を下降させる(膨張行程)。燃焼後の混合気は、ピストン73が膨張行程下死点を経て吸気行程上死点に向かって再び上昇することで、排気弁78の開弁に伴って、排気ポート79を介して排気ガスとして放出される(排気行程)。このピストン73のシリンダボア72内での往復運動は、コネクティングロッドを介してクランク軸20(図1参照)に伝えられ、ここで回転運動に変換され、出力として取り出される。そして、ピストン73は、カウンタウェイトと共にクランク軸20が慣性力によりさらに回転することで、このクランク軸20の回転に伴ってシリンダボア72内を往復する。このクランク軸20が2回転することで、ピストン73はシリンダボア72を2往復し、この間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行い、燃焼室71内で1回の爆発が行われる。
【0035】
このエンジン7は、車両2の停車中、走行中にかかわらず、作動状態と非作動状態とを切り替え可能である。ここで、エンジン7の作動状態(エンジン7を作動させた状態)とは、駆動輪3に作用させる動力を発生する状態であり、燃焼室71で燃料を燃焼して生じる熱エネルギをトルクなどの機械的エネルギの形で出力する状態である。つまり、エンジン7は、作動状態では燃焼室71で燃料を燃焼させて車両2の駆動輪3に作用させる動力を発生する。一方、エンジン7の非作動状態、すなわち、エンジン7の作動を停止させた状態とは、動力の発生を停止した状態であり、燃焼室71への燃料の供給をカットし(フューエルカット)、燃焼室71で燃料を燃焼させずトルクなどの機械的エネルギを出力しない状態である。
【0036】
図1に戻って、K0クラッチ9は、エンジン7のクランク軸20とモータジェネレータ10のロータ軸21とをダンパ機構8を介して連結可能である。K0クラッチ9は、クランク軸20とロータ軸21とを動力伝達可能に係合した係合状態と、この係合を解除した解放状態と、係合状態と解放状態との間のスリップ状態とに切り替え可能である。K0クラッチ9は、係合状態となることで、クランク軸20とロータ軸21とをダンパ機構8を介して一体回転可能に連結し、エンジン7とモータジェネレータ10との間での動力伝達が可能な状態となる。一方、K0クラッチ9は、解放状態となることでクランク軸20とロータ軸21とを切り離しエンジン7とモータジェネレータ10との間での動力伝達が遮断された状態となる。
【0037】
K0クラッチ9は、種々のクラッチを用いることができ、例えば、湿式多板クラッチや乾式単板クラッチ等の摩擦式ディスククラッチ装置を用いることができる。ここでは、K0クラッチ9は、例えば、K0クラッチ9に供給される作動油の油圧であるクラッチ油圧に応じて作動する油圧式の装置である。K0クラッチ9は、クラッチ油圧に応じた係合力(クラッチ板を係合する押圧力)が0である場合に係合が完全に解除された解放状態となり、係合力が大きくなるにしたがってスリップ状態(半係合状態)を経て完全に係合した係合状態となる。K0クラッチ9における伝達トルクは、解放状態では0であり、スリップ状態では係合力に応じた大きさとなり、係合状態では最大となる。なお、以下で説明するC1クラッチ18、ロックアップクラッチ25についてもこのK0クラッチ9とほぼ同様である。
【0038】
モータジェネレータ10は、例えば、交流同期電動機等である。モータジェネレータ10は、固定子としてのステータ22がケース等に固定され、回転子としてのロータ23がステータ22の径方向内側に配置されてロータ軸21に一体回転可能に結合される。モータジェネレータ10は、インバータなどを介して蓄電装置としてのバッテリ24から供給された電力を機械的動力に変換する電動機としての機能(力行機能)と、入力された機械的動力を電力に変換しインバータなどを介してバッテリ24に充電する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えた回転電機である。モータジェネレータ10は、例えば、バッテリ24からインバータを介して交流電力の供給を受けて駆動し、ロータ軸21に機械的な動力(モータトルク)を発生させ、この機械的動力をロータ軸21から出力可能である。
【0039】
トルクコンバータ11は、流体継手の一種であり、モータジェネレータ10のロータ軸21に連結される。トルクコンバータ11は、エンジン7又はモータジェネレータ10からの動力を、ロックアップクラッチ25を介して伝達するロックアップ機構16と、作動油(作動流体)を介して伝達する流体伝達機構17とを有する。ロックアップ機構16は、ロックアップクラッチ25を介してロータ軸21とトルクコンバータ11の出力軸(流体伝達装置出力軸)26とを連結可能である。流体伝達機構17は、ポンプ(ポンプインペラ)17p、タービン(タービンランナ)17t、ステータ17s、ワンウェイクラッチ17c等を含んで構成され、内部に作動流体としての作動油が充填される。ポンプ17pは、ロータ軸21と一体回転可能に連結され、タービン17tは、出力軸26と一体回転可能に連結される。ロックアップクラッチ25は、ロータ軸21とタービン17tとを動力伝達可能に係合した係合状態と、この係合を解除した解放状態と、係合状態と解放状態との間のスリップ状態とに切り替え可能である。トルクコンバータ11は、エンジン7又はモータジェネレータ10からの動力を、ロックアップクラッチ25の状態に応じて、ロックアップ機構16、又は、流体伝達機構17を介して出力軸26に伝達し、この出力軸26から出力することができる。
【0040】
変速機12は、トルクコンバータ11からの動力を、C1クラッチ18を介して変速機本体19に伝達し、変速機本体19にて変速して駆動輪3側に出力する。C1クラッチ18は、トルクコンバータ11の出力軸26と駆動輪3とを変速機本体19、プロペラ軸13、デファレンシャルギヤ14、ドライブ軸15等を介して連結可能である。ここでは、C1クラッチ18は、トルクコンバータ11の出力軸26と変速機本体19の入力軸27とを動力伝達可能に係合した係合状態と、この係合を解除した解放状態と、係合状態と解放状態との間のスリップ状態とに切り替え可能である。変速機本体19は、例えば、有段自動変速機(AT)、無段自動変速機(CVT)、マルチモードマニュアルトランスミッション(MMT)、シーケンシャルマニュアルトランスミッション(SMT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)などのいわゆる自動変速機である。ここでは、変速機本体19は、例えば、有段自動変速機が適用される。
【0041】
デファレンシャルギヤ14は、プロペラ軸13からの動力を、各ドライブ軸15を介して各駆動輪3に伝達する。デファレンシャルギヤ14は、車両2が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の駆動輪3と、外側の駆動輪3との回転速度の差を吸収する。
【0042】
上記のように構成される駆動装置4は、エンジン7が発生させた動力をクランク軸20からダンパ機構8、K0クラッチ9、ロータ軸21、トルクコンバータ11、変速機12、プロペラ軸13、デファレンシャルギヤ14、ドライブ軸15を介して駆動輪3に伝達することができる。また、駆動装置4は、モータジェネレータ10が発生させた動力をロータ軸21から、K0クラッチ9を介さずに、トルクコンバータ11、変速機12、プロペラ軸13、デファレンシャルギヤ14、ドライブ軸15を介して駆動輪3に伝達することができる。この結果、車両2は、駆動輪3と路面との接地面に駆動力[N]が生じ、これにより走行することができる。
【0043】
状態検出装置5は、車両2の状態を検出するものであり、車両2の状態を表す種々の状態量や物理量、スイッチ類の作動状態等を検出するものである。状態検出装置5は、ECU6と電気的に接続されており、相互に検出信号や駆動信号、制御指令等の情報の授受を行うことができる。状態検出装置5は、例えば、アクセル開度センサ50、ブレーキセンサ51、車速センサ52、クランク角センサ53、吸気圧センサ54、スロットル開度センサ55、充電状態検出器56等を含む。アクセル開度センサ50は、運転者による車両2のアクセルペダルの操作量(アクセル操作量、加速要求操作量)に相当するアクセル開度を検出する。ブレーキセンサ51は、運転者による車両2のブレーキペダルの操作量(ブレーキ操作量、制動要求操作量)に相当するマスタシリンダ圧、あるいは、ブレーキ踏力等を検出する。車速センサ52は、車両2の走行速度である車速を検出する。クランク角センサ53は、クランク軸20の回転角度であるクランク角度を検出する。ECU6は、このクランク角度に基づいて、エンジン7の各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、クランク軸20の回転数(回転速度)であるエンジン回転数を算出することができる。吸気圧センサ54は、吸気通路76(図2参照)内の圧力(内圧)、例えば、インテークマニホールド内圧を検出する。スロットル開度センサ55は、エンジン7の吸気通路76に設けられたスロットル装置のスロットル弁の開度であるスロットル開度を検出する。充電状態検出器56は、バッテリ24の蓄電量(充電量)やバッテリ電圧等に応じた蓄電状態SOCを検出する。
【0044】
ECU6は、車両制御システム1の全体の制御を統括的に行い、エンジン7やモータジェネレータ10等を協調して制御するための制御ユニットである。ECU6は、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。ECU6は、状態検出装置5が電気的に接続され、また、エンジン7の燃料噴射装置70、点火プラグ77、スロットル装置、モータジェネレータ10のインバータ、バッテリ24等が電気的に接続される。さらに、ECU6は、K0クラッチ9、ロックアップクラッチ25、C1クラッチ18及び変速機本体19等に油圧制御装置28を介して接続され、油圧制御装置28を介してこれらの動作を制御する。ECU6は、状態検出装置5が検出した検出結果に対応した電気信号が入力され、入力された検出結果に応じてエンジン7、モータジェネレータ10のインバータ、油圧制御装置28等の駆動装置4の各部に駆動信号を出力しこれらの駆動を制御する。
【0045】
ここで、油圧制御装置28は、作動流体としての作動油(オイル)の油圧によって、変速機本体19の変速動作やK0クラッチ9、ロックアップクラッチ25、C1クラッチ18等の係合要素の係合・解放・スリップ動作を制御するものである。油圧制御装置28は、ECU6により制御される種々の公知の油圧制御回路を含んで構成され、例えば、複数の油路、オイルリザーバ、オイルポンプ、複数の電磁弁などを含んで構成される。油圧制御装置28は、ECU6からの信号に応じて、駆動装置4の各部に供給される作動油の流量あるいは油圧を制御する。
【0046】
ECU6は、例えば、アクセル開度、車速等に基づいてエンジン7のスロットル装置を制御し、吸気通路76のスロットル開度を調節し、吸入空気量を調節して、その変化に対応して燃料噴射量を制御し、燃焼室71に充填される混合気の量を調節してエンジン7の出力を制御する。また、ECU6は、例えば、アクセル開度、車速等に基づいて油圧制御装置28を制御し、変速機本体19の変速動作やK0クラッチ9、ロックアップクラッチ25、C1クラッチ18等の係合・解放・スリップ動作等を制御する。
【0047】
上記のように構成される車両制御システム1は、ECU6が駆動装置4を制御し、エンジン7とモータジェネレータ10とを併用又は選択使用することで、車両2を様々な走行モードで走行させることができる。
【0048】
ECU6は、例えば、K0クラッチ9を係合状態(K0クラッチON)としかつエンジン7を作動させ、走行用動力源であるエンジン7とモータジェネレータ10とのうちエンジン7から出力する動力(エンジントルク)のみを駆動輪3に伝達させる。このとき、C1クラッチ18は、係合状態(C1クラッチON)となっている。これにより、車両制御システム1は、「エンジン走行」モードを実現することができる。したがって、車両2は、走行用動力源のうちエンジン7のみを用いて走行することができる。
【0049】
また、ECU6は、例えば、上記のようにK0クラッチ9を係合状態(K0クラッチON)としかつエンジン7を作動させた状態で、要求駆動力やバッテリ24の蓄電状態SOCに応じてモータジェネレータ10を力行させ、エンジン7から出力する動力と、モータジェネレータ10から出力する動力(モータトルク)とを統合して駆動輪3に伝達させる。このとき、C1クラッチ18は、係合状態(C1クラッチON)となっている。これにより、車両制御システム1は、「HV走行」モードを実現することができる。したがって、車両2は、エンジン7とモータジェネレータ10とを併用して走行することができる。
【0050】
さらに、ECU6は、例えば、K0クラッチ9を解放状態(K0クラッチOFF)としかつエンジン7を停止し非作動状態とした上で、モータジェネレータ10を力行させ、走行用動力源であるエンジン7とモータジェネレータ10とのうちモータジェネレータ10から出力する動力のみを駆動輪3に伝達させる。このとき、C1クラッチ18は、係合状態(C1クラッチON)となっている。また、エンジン7は、非作動状態でありかつK0クラッチ9が解放状態であるから、クランク軸20の回転も停止している。これにより、車両制御システム1は、「EV走行」モードを実現することができる。したがって、車両2は、走行用動力源のうちモータジェネレータ10のみを用いて走行することができる。このとき、車両2は、基本的にはクランク軸20とロータ軸21とがK0クラッチ9にて機械的に切り離された状態となり、エンジン7の回転抵抗が作用しない状態となる。
【0051】
また、ECU6は、例えば、車両2の減速走行時に、モータジェネレータ10を制御し、駆動輪3からロータ軸21に伝達される動力によってモータジェネレータ10にて回生により発電し、これに伴ってロータ軸21に生じる機械的動力(負のモータトルク)を駆動輪3に伝達する。このとき、C1クラッチ18は、係合状態(C1クラッチON)となっている。これにより、車両制御システム1は、「回生走行」モードを実現することができる。したがって、車両2は、モータジェネレータ10により回生制動されて減速走行することができる。
【0052】
そして、ECU6は、例えば、エンジン7が非作動状態でありクランク軸20の回転が停止した状態からエンジン7を始動する場合、異なる2つの始動モードでエンジン7を始動することができる。ECU6は、状況に応じて第1始動制御としてのK0始動制御と、第2始動制御としての着火始動制御とを使い分けることができる。
【0053】
ECU6は、K0始動制御を実行する場合、モータジェネレータ10をエンジン7のスタータモータとして利用しエンジン7を始動させる。この場合、ECU6は、下記のようにしてK0始動制御を実行する。すなわち、ECU6は、エンジン7、モータジェネレータ10、及び、K0クラッチ9を制御し、まず、K0クラッチ9をスリップ状態としモータジェネレータ10側からの動力によりエンジン7のクランク軸20を回転(クランキング)させる。すなわち、ECU6は、K0クラッチ9をスリップ状態としモータジェネレータ10が出力する動力の一部をクランク軸20のクランキングトルク(始動トルク)として利用してクランク軸20を回転させる。そして、ECU6は、クランク軸20を回転させた後に、回転数が所定回転数を超えたら、燃料噴射装置70から燃焼室71に燃料を噴射し点火プラグ77によって点火しエンジン7を始動する(K0始動)。その後、ECU6は、エンジン回転数が自律運転可能な回転数となりエンジン7が完全に始動しエンジン回転数とモータ回転数とがほぼ同期した際にK0クラッチ9を完全に係合した係合状態とする。
【0054】
また、ECU6は、エンジン7が筒内直接噴射式の内燃機関であるため、下記のようにして着火始動制御を実行することでもエンジン7を始動させることができる。すなわち、ECU6は、エンジン7を制御し、クランク軸20の回転が停止した状態で燃料噴射装置70から燃焼室71に燃料を噴射し点火プラグ77によって点火してクランク軸20を回転させてエンジン7を始動する。ここでは、ECU6は、エンジン7、モータジェネレータ10、及び、K0クラッチ9を制御し、まず、クランク軸20の回転が停止した状態でエンジン7の燃焼室71、典型的には膨張行程で停止した気筒の燃焼室71に燃料を噴射して点火し、燃料の燃焼エネルギによってクランク軸20の回転を開始する。その後、ECU6は、燃焼によりクランク軸20が回転を開始した状態でK0クラッチ9の伝達トルクを増大させて、K0クラッチ9を介したモータジェネレータ10側からの動力の一部によりクランク軸20の回転をアシストしてエンジン7を始動する(着火始動)。その後、ECU6は、エンジン回転数が自律運転可能な回転数となりエンジン7が完全に始動しエンジン回転数とモータ回転数とがほぼ同期した際にK0クラッチ9を完全に係合した係合状態とする。
【0055】
このとき、ECU6は、この着火始動制御では混合気への点火が完了するまではK0クラッチ9のトルク容量をクランク軸20が回転し始めない程度の大きさの待機時トルク容量に設定しておく。つまり、ECU6は、着火始動制御として、点火が完了するまではクランク軸20が回転しない程度にK0クラッチ9をスリップ状態としK0クラッチ9のトルク容量を待機時トルク容量とする。その後、ECU6は、燃焼室71に燃料を噴射して点火しクランク軸20を回転させた後にK0クラッチ9の伝達トルク(トルク容量)を増大させてエンジン7を始動する。これにより、この車両制御システム1は、燃焼が開始してクランク軸20の回転が始まったら、すぐにK0クラッチ9のトルク容量を着火始動アシストトルク容量に増加し、K0クラッチ9を介してクランク軸20にアシストトルクを伝達することができる。この結果、車両制御システム1は、より確実にかつ迅速にエンジン7を始動することができる。なお、この待機時トルク容量は、0であってもよい。この場合、ECU6は、着火始動制御として、クランク軸20の回転が停止した状態で燃焼室71に燃料を噴射して点火しクランク軸20を回転させた後にK0クラッチ9をスリップ状態としK0クラッチ9の伝達トルク(トルク容量)を増大させてエンジン7を始動する。
【0056】
なお、ECU6は、油圧制御装置28を制御して、K0クラッチ9に供給されるクラッチ油圧であるK0圧を調節し、K0クラッチ9のトルク容量を調節することで、エンジン7の始動時におけるK0クラッチ9の伝達トルク(以下、「K0トルク」という場合がある。)を調節することができる。ここでは、K0クラッチ9のトルク容量は、K0始動と着火始動とを比較した場合、K0始動でのトルク容量の方が相対的に大きく、着火始動でのトルク容量の方が相対的に小さくなる。すなわち、着火始動制御でのクランク軸20のアシストトルクは、着火始動では燃焼室71での燃焼エネルギを利用してクランク軸20の回転を開始している分、K0始動制御でのクランク軸20のクランキングトルクよりも少なくてすむ。このため、K0クラッチ9の伝達トルク容量は、着火始動制御の方がK0始動制御の場合と比較して相対的に小さくてすむ。したがって、車両制御システム1は、着火始動制御では、その分、電力消費を抑制してモータジェネレータ10の負荷を相対的に低減することができる。ここでは、ECU6は、例えば、燃焼室71内の空気量の推定値やクランク軸20の停止位置(停止クランク角度)、エンジン停止後からの経過時間等に応じて、着火始動が可能な状況において積極的に着火始動制御を実行する。これにより、車両制御システム1は、電力消費を抑制し燃費性能を向上することができる。
【0057】
ここで、この車両制御システム1は、クランク軸20の回転停止後の燃焼室71内の空気量、あるいは、筒内圧(燃焼室71内の圧力)の状態によっては、着火始動制御を実行しても、燃焼室71での十分な燃料の燃焼に必要な空気が不足することで、始動時のエンジン発生トルクが不足するおそれがある。これにより、この車両制御システム1は、例えば、異常燃焼により始動時にショックが発生したり、始動に失敗(エンジンストール)したりするおそれがある。
【0058】
そこで、本実施形態のECU6は、エンジン7が停止してからの経過時間に基づいて、K0始動制御と着火始動制御とを切り替えることで、より確実なエンジン始動を実現している。
【0059】
より詳細には、ECU6は、エンジン7を始動する際に、エンジン7が停止してからの経過時間が始動判定時間未満である場合にK0始動制御を実行し、経過時間が始動判定時間以上である場合に着火始動制御を実行する。
【0060】
ここで、始動判定時間は、例えば、実車評価等に応じて予め設定される。始動判定時間は、典型的には、クランク軸20の回転停止後の燃焼室71内の空気量、筒内圧の状態が着火始動可能な状態に回復するまでの時間に応じて設定される。エンジン7が停止してからの経過時間、より詳細には、クランク軸20の回転が停止してからの経過時間は、燃焼室71内の空気量、筒内圧等に影響を与える関連パラメータである。下記で説明するように、燃焼室71内の空気量、筒内圧は、クランク軸20の回転が停止してからの経過時間が長くなるにしたがって増加する傾向にある。さらに言えば、クランク軸20の回転が停止してからの経過時間は、燃焼室71内の空気量、筒内圧の状態が着火始動可能な状態に回復したか否かを推定するためのパラメータとして用いることができる。
【0061】
例えば、車両制御システム1は、エンジン7のクランク軸20の回転停止前の状態ではサージタンク、インテークマニホールド等の吸気通路76を吸入空気が流動していることから、スロットル弁(絞り)等の作用により、燃焼室71側の内圧が低下した状態となっている。そして、車両制御システム1は、エンジン7のクランク軸20の回転停止直後の状態では、燃焼室71内の空気圧である筒内圧が負圧となっており、燃焼室71内の空気量(酸素量)が不足した状態となっているおそれがある。
【0062】
これに対して、本実施形態のECU6は、クランク軸20の回転が停止しエンジン7が停止してからの経過時間(以下、「停止後経過時間」という場合がある。)が始動判定時間未満である場合、着火始動制御を禁止し、エンジン始動要求に対してK0始動制御でエンジン7を始動する。これにより、車両制御システム1は、クランク軸20の回転停止直後であって、燃焼室71での十分な燃料の燃焼に必要な空気が不足しているような状態であっても、K0始動によってエンジン7を始動することができる。この結果、この車両制御システム1は、例えば、異常燃焼により始動時にショックが発生したり、始動に失敗したりすることなく、適正にエンジン7を始動することができる。
【0063】
一方、車両制御システム1は、クランク軸20の回転停止後、所定時間、典型的には始動判定時間経過後の状態では、例えば、スロットル弁と吸気通路76内壁との隙間等から時間の経過に伴って燃焼室71側に空気が流入し、筒内圧が大気圧近傍まで復帰(増加)した状態となっていると推定できる。これにより、車両制御システム1は、燃焼室71内の空気量が着火始動するための十分な燃焼エネルギが得られる空気量まで回復した状態となっていると推定できる。
【0064】
したがってこの場合、ECU6は、停止後経過時間が始動判定時間以上である場合、着火始動制御を許可し、エンジン始動要求に対して着火始動制御でエンジン7を始動する。これにより、車両制御システム1は、燃焼室71に着火始動に必要な空気量が確保されたと推定できる状態では、着火始動によってエンジン7を始動することができる。これにより、この車両制御システム1は、着火始動可能な状況においては積極的に着火始動を行うことで燃費性能を向上することができ、その上で適正にエンジン7を始動することができる。
【0065】
次に、図3のフローチャートを参照して車両制御システム1におけるECU6による制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0066】
まず、ECU6は、状態検出装置5による検出結果に応じて、エンジン7の始動要求があるか否かを判定する(ST1)。ECU6は、例えば、加速要求操作量に相当するアクセル開度、蓄電状態SOC等に基づいて、エンジン7の始動要求があるか否かを判定する。ECU6は、エンジン7の始動要求がないと判定した場合(ST1:No)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0067】
ECU6は、エンジン7の始動要求があると判定した場合(ST1:Yes)、エンジン7の停止後、予め設定される始動判定時間Td以上経過したか否かを判定する(ST2)。すなわち、ECU6は、停止後経過時間が始動判定時間Td以上であるか否かを判定する。
【0068】
ECU6は、エンジン7の停止後、始動判定時間Td以上経過したと判定した場合(ST2:Yes)、すなわち、停止後経過時間が始動判定時間Td以上であると判定した場合、着火始動制御を実行し、着火始動を実施して(ST3)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0069】
ECU6は、エンジン7の停止後、始動判定時間Td以上経過していないと判定した場合(ST2:No)、すなわち、停止後経過時間が始動判定時間Td未満であると判定した場合、K0始動制御を実行し、K0始動を実施して(ST4)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0070】
以上で説明した実施形態に係る車両制御システム1、ECU6は、エンジン7が停止してからの経過時間に基づいて、K0始動制御と着火始動制御とを切り替えるので、状況に応じて適宜にK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることで、確実にエンジン7を始動することができると共に、燃費性能を向上することができる。
【0071】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る車両制御システムの停止直後KL推定値マップの一例を表す線図、図5は、実施形態2に係る車両制御システムの始動判定時間マップの一例を表す線図、図6は、実施形態2に係る車両制御システムの推定KLマップの一例を表す線図である。実施形態2に係る車両制御システム、制御装置は、燃焼室内の空気量に基づいて始動判定時間を変更する点で実施形態1とは異なる。なお、実施形態2に係る車両制御システムの各構成については、適宜、図1等を参照する。
【0072】
本実施形態の車両制御システム201(図1参照)は、制御装置としてのECU6がエンジン7の停止後の燃焼室71内の空気量に基づいて始動判定時間を変更する。
【0073】
ここでは、ECU6は、エンジン7の停止後の燃焼室71内の空気量、あるいは筒内圧に影響を与える関連パラメータとして、エンジン7の停止前の吸気通路内圧(PM)、エンジン7の停止前のスロットル開度、あるいは、エンジン7の停止前のエンジン回転数(出力軸の回転速度)等に基づいて、停止直後KL推定値を算出する。そして、ECU6は、停止直後KL推定値に基づいて、始動判定時間を設定する。
【0074】
ここで、KL推定値(あるいは後述の推定KL)は、エンジン7の全負荷を100%としたときの推定負荷の比率である。このKL推定値は、筒内の空気量、あるいは、筒内圧に関する関連値であり、気筒内にどれだけの吸入空気が入ってきているかを示す値、すなわち、燃焼室71内の空気量の推定値に相当する値である。このKL推定値は、相対的に高い数値であるほど、燃焼室71内の空気量が相対的に多いことを表す。またここで、エンジン7の停止前とは、典型的には、クランク軸20の回転が停止しエンジン7が停止する前であり、一例として、エンジン7の停止要求発生時である。
【0075】
ECU6は、例えば、エンジン7の停止要求発生時でのクランク角センサ53、吸気圧センサ54、スロットル開度センサ55による検出結果に基づいて、エンジン7の停止前の吸気通路内圧、エンジン7の停止前のスロットル開度、エンジン7の停止前のエンジン回転数から停止直後KL推定値を算出する。
【0076】
この場合、ECU6は、まず、エンジン7の停止前の吸気通路内圧、エンジン7の停止前のスロットル開度からエンジン7の停止前KL推定値を算出する。この停止前KL推定値は、エンジン7の停止前の吸気通路内圧が高いほど相対的に高くなり、エンジン7の停止前のスロットル開度が大きいほど相対的に高くなる傾向にある。
【0077】
そして、ECU6は、例えば、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1に基づいて、停止直後KL推定値を算出する。停止直後KL推定値マップm1は、横軸が停止前エンジン回転数、縦軸が停止直後KL推定値を示す。この停止直後KL推定値マップm1は、停止前KL推定値、停止前エンジン回転数と停止直後KL推定値との関係を記述したものである。停止直後KL推定値マップm1は、停止前KL推定値、停止前エンジン回転数と停止直後KL推定値との関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。この停止直後KL推定値マップm1では、停止直後KL推定値は、停止前KL推定値の増加に伴って増加し、また、停止前エンジン回転数が高いほど停止までの時間が長くなることから徐々に増加する。ECU6は、停止直後KL推定値マップm1に基づいて、停止前KL推定値とエンジン7の停止前エンジン回転数とから、停止直後KL推定値を算出する。
【0078】
なお、本実施形態では、ECU6は、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1を用いて停止直後KL推定値を算出するものとして説明したが本実施形態はこれに限定されない。ECU6は、例えば、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1に相当する数式モデルに基づいて停止直後KL推定値を算出するようにしてもよい。以下で説明する種々のマップについても同様である。
【0079】
そして、ECU6は、算出した停止直後KL推定値に基づいて、始動判定時間Tdを設定する。ECU6は、例えば、図5に例示する始動判定時間マップm2に基づいて、始動判定時間Tdを算出する。始動判定時間マップm2は、横軸が停止直後KL推定値、縦軸が始動判定時間Tdを示す。この始動判定時間マップm2は、停止直後KL推定値と始動判定時間Tdとの関係を記述したものである。始動判定時間マップm2は、停止直後KL推定値と始動判定時間Tdとの関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。この始動判定時間マップm2では、始動判定時間Tdは、停止直後KL推定値の増加に伴って減少する。ECU6は、始動判定時間マップm2に基づいて、停止直後KL推定値から、始動判定時間Tdを算出する。
【0080】
そして、ECU6は、算出した始動判定時間Tdに基づいてK0始動制御と着火始動制御とを切り替える。すなわち、ECU6は、エンジン7を始動する際に、停止後経過時間がここで算出された始動判定時間Td未満である場合にK0始動制御を実行し、停止後経過時間が始動判定時間Td以上である場合に着火始動制御を実行する。
【0081】
つまり、この車両制御システム201は、停止直後KL推定値が相対的に大きいほど、すなわち、燃焼室71内の空気量が相対的に多いと推定できる場合ほど始動判定時間Tdが相対的に短い時間に設定され、相対的に短い停止後経過時間でも着火始動制御を許可することができる。この結果、この車両制御システム201は、着火始動可能な状況をより精度よく把握しより積極的に着火始動を行うことで燃費性能を向上することができる。
【0082】
一方、この車両制御システム201は、停止直後KL推定値が相対的に小さいほど、すなわち、燃焼室71内の空気量が相対的に少ないと推定できる場合ほど始動判定時間Tdが相対的に長い時間に設定され、着火始動制御を許可するまでの停止後経過時間を相対的に長くすることができる。この結果、この車両制御システム201は、着火始動ができない状況をより精度よく把握し、K0始動によってより確実にエンジン7を始動することができる。
【0083】
以上で説明した実施形態に係る車両制御システム201、ECU6は、エンジン7が停止してからの停止後経過時間と始動判定時間Tdとに基づいて、K0始動制御と着火始動制御とを切り替えると共にエンジン7の停止後の燃焼室71内の空気量に基づいて始動判定時間Tdを変更する。これにより、車両制御システム201、ECU6は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができる。この結果、車両制御システム201は、例えば、着火始動では始動に失敗するような状況を確実に特定し、K0始動でより確実にエンジン7を始動することができると共に、燃費性能を向上することができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0084】
なお、以上の説明では、ECU6は、エンジン7の停止前の吸気通路内圧、エンジン7の停止前のスロットル開度、あるいは、エンジン7の停止前のエンジン回転数等に基づいて、停止直後KL推定値を算出し、算出した停止直後KL推定値に基づいて始動判定時間Tdを設定するものとして説明したがこれに限らない。ECU6は、停止直後KL推定値を算出せずに、エンジン7の停止前の吸気通路内圧、エンジン7の停止前のスロットル開度、あるいは、エンジン7の停止前のエンジン回転数に基づいて、直接的に始動判定時間Tdを変更してもよい。
【0085】
この場合、ECU6は、エンジン7の停止前の吸気通路内圧が高いほど、始動判定時間Tdを相対的に短い時間に設定する。ECU6は、エンジン7の停止前のスロットル開度が大きいほど、始動判定時間Tdを相対的に短い時間に設定する。ECU6は、エンジン7の停止前のエンジン回転数が高いほど、始動判定時間Tdを相対的に短い時間に設定する。すなわち、ECU6は、燃焼室71内の空気量が相対的に多いと推定できる場合ほど、始動判定時間Tdを相対的に短い時間に設定する。この場合であっても、車両制御システム201、ECU6は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0086】
また、ECU6は、停止直後KL推定値から始動判定時間Tdを設定せずに、エンジン7の始動時の燃焼室71内の空気量に相当する推定KLに対して、始動判定時間Tdに対応した始動判定空気量を設定し、エンジン7の始動時の推定KLと始動判定空気量との関係に応じてK0始動制御と着火始動制御とを切り替えてもよい。すなわち、ECU6は、エンジン7の始動時の燃焼室71内の空気量に基づいてK0始動制御と着火始動制御とを切り替えてもよい。
【0087】
この場合、ECU6は、例えば、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1を用いて、エンジン7の停止要求発生時でのエンジン7の停止前の吸気通路内圧、スロットル開度、エンジン回転数から停止直後KL推定値を算出する。そして、ECU6は、算出した停止直後KL推定値と停止後経過時間とに基づいてエンジン7の始動時の推定KLを算出する。ECU6は、例えば、図6に例示する推定KLマップm3に基づいて、エンジン7の始動時の推定KLを算出する。推定KLマップm3は、横軸が停止後経過時間、縦軸が推定KLを示す。この推定KLマップm3は、停止直後KL推定値、停止後経過時間と推定KLとの関係を記述したものである。推定KLマップm3は、停止直後KL推定値、停止後経過時間と推定KLとの関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。この推定KLマップm3では、推定KLは、停止後経過時間の増加に伴って増加し、また、停止直後KL推定値が高いほど増加する。ECU6は、推定KLマップm3に基づいて、停止直後KL推定値と停止後経過時間とから、推定KLを算出する。
【0088】
そして、ECU6は、エンジン7を始動する際に、エンジン7の始動時(始動開始時)の燃焼室71内の空気量に相当する推定KLが始動判定空気量に応じた始動判定KL未満である場合にK0始動制御を実行し、推定KLが始動判定KL以上である場合に着火始動制御を実行する。この場合であっても、車両制御システム201、ECU6は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0089】
[実施形態3]
図7は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pd1マップの一例を表す線図、図8は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pk1マップの一例を表す線図、図9は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pk2マップの一例を表す線図、図10、図11は、実施形態3に係る車両制御システムの動作の一例を示すタイムチャートである。実施形態3に係る車両制御システム、制御装置は、燃焼室の空気量に基づいてクラッチの伝達トルクを変更する点で実施形態1、2とは異なる。なお、実施形態3に係る車両制御システムの各構成については、適宜、図1等を参照する。
【0090】
本実施形態の車両制御システム301(図1参照)は、ECU6がエンジン7の始動の際の燃焼室71内の空気量に基づいて、K0クラッチ9の伝達トルクを変更する。ECU6は、油圧制御装置28を制御して、K0クラッチ9に供給されるクラッチ油圧であるK0圧を調節し、スリップ状態にあるK0クラッチ9のトルク容量を調節することで、エンジン7の始動時におけるK0クラッチ9の伝達トルクを調節する。
【0091】
この場合、ECU6は、上述したように、エンジン7の停止前の吸気通路内圧、スロットル開度、エンジン回転数、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1、停止後経過時間、図6に例示する推定KLマップm3等に基づいて、エンジン7の始動時(始動開始時)の推定KLを算出し、これを燃焼室71内の空気量に相当する値として用いればよい。なお、ECU6は、これに限らず、後述する筒内圧センサ557(図13参照)に基づいて、燃焼室71内の空気量を推定するようにしてもよい。
【0092】
より詳細には、ECU6は、着火始動制御を実行する場合、エンジン7の始動の際、典型的には、エンジン7の始動時(始動開始時)の燃焼室71内の空気量が相対的に多い場合にK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくし、空気量が相対的に少ない場合にK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくする。
【0093】
この場合、ECU6は、エンジン7の始動時の推定KLを算出し、この推定KLに基づいて、着火始動制御の際にK0クラッチ9に供給されるクラッチ油圧であるK0圧Pd1を算出する。ECU6は、例えば、図7に例示するK0圧Pd1マップm4に基づいて、K0圧Pd1を算出する。K0圧Pd1マップm4は、横軸が推定KL、縦軸がK0圧Pd1を示す。このK0圧Pd1マップm4は、推定KLとK0圧Pd1との関係を記述したものである。K0圧Pd1マップm4は、推定KLとK0圧Pd1との関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。このK0圧Pd1マップm4では、K0圧Pd1は、推定KLの増加に伴って減少する。ECU6は、K0圧Pd1マップm4に基づいて、エンジン7の始動時の推定KLから、K0圧Pd1を算出する。
【0094】
そして、ECU6は、着火始動制御の際に、上記のようにして算出したK0圧Pd1に基づいて油圧制御装置28を制御し、K0クラッチ9にK0圧Pd1を供給し、K0クラッチ9の伝達トルクを調節する。
【0095】
したがって、ECU6は、着火始動の際に、燃焼室71内の空気量に応じてK0クラッチ9の伝達トルクを調節することで、燃焼エネルギによってクランク軸20の回転を開始した後に、この燃焼エネルギの大小に応じてK0クラッチ9を介してクランク軸20に伝達されるアシストトルクを調節することができる。
【0096】
すなわち、ECU6は、エンジン始動時の燃焼室71内の空気量が相対的に少なく着火始動の際の燃焼エネルギ、言い換えればエンジントルクが相対的に小さい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくしアシストトルクを相対的に大きくすることができ、確実にエンジン7を始動することができる。一方、ECU6は、エンジン始動時の燃焼室71内の空気量が相対的に多く着火始動の際の燃焼エネルギ、言い換えればエンジントルクが相対的に大きい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくしアシストトルクを相対的に小さくすることができ、電力消費を抑制し燃費性能を向上することができる。この結果、車両制御システム301は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0097】
また、ECU6は、K0始動制御を実行する場合、点火後のK0クラッチ9の伝達トルクを点火前のK0クラッチ9の伝達トルクよりも小さくする。そして、ECU6は、K0始動制御を実行する場合、エンジン7の始動の際の燃焼室71内の空気量が相対的に多い場合に点火前のK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくし、空気量が相対的に少ない場合に点火前のK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくする。また、ECU6は、K0始動制御を実行する場合、エンジン7の始動の際の燃焼室71内の空気量が相対的に多い場合に点火後のK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくし、空気量が相対的に少ない場合に点火後のK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくする。
【0098】
この場合、ECU6は、エンジン7の始動時の推定KLを算出し、この推定KLに基づいて、K0始動制御の際にK0クラッチ9に供給されるクラッチ油圧であるK0圧Pk1、Pk2を算出する。ここで、K0圧Pk1は、点火前(初爆前)にK0クラッチ9に供給するクラッチ油圧であり、K0圧Pk2は、点火後(初爆後)にK0クラッチ9に供給するクラッチ油圧である。ECU6は、例えば、図8、図9に例示するK0圧Pk1マップm5、K0圧Pk2マップm6に基づいて、K0圧Pk1、Pk2を算出する。K0圧Pk1マップm5は、横軸が推定KL、縦軸がK0圧Pk1を示し、K0圧Pk2マップm6は、横軸が推定KL、縦軸がK0圧Pk2を示す。このK0圧Pk1マップm5、K0圧Pk2マップm6は、推定KLとK0圧Pk1との関係、推定KLとK0圧Pk2との関係を記述したものである。K0圧Pk1マップm5、K0圧Pk2マップm6は、推定KLとK0圧Pk1との関係、推定KLとK0圧Pk2との関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。K0圧Pk1マップm5では、K0圧Pk1は、推定KLの増加に伴って増加する。一方、K0圧Pk2マップm6では、K0圧Pk2は、K0圧Pk1よりも小さく、推定KLの増加に伴って減少する。ECU6は、K0圧Pk1マップm5、K0圧Pk2マップm6に基づいて、エンジン7の始動時の推定KLから、K0圧Pk1、K0圧Pk2を算出する。
【0099】
そして、ECU6は、K0始動制御の際に、点火プラグ77による点火の前に、上記のようにして算出したK0圧Pk1に基づいて油圧制御装置28を制御し、クラッチ油圧として、K0クラッチ9にK0圧Pk1を供給し、K0クラッチ9の伝達トルクを調節する。また、ECU6は、K0始動制御の際に、点火プラグ77による点火の後に、上記のようにして算出したK0圧Pk2に基づいて油圧制御装置28を制御し、クラッチ油圧として、K0クラッチ9にK0圧Pk2を供給し、K0クラッチ9の伝達トルクを調節する。
【0100】
したがって、ECU6は、K0始動の際に、点火前に燃焼室71内の空気量に応じてK0クラッチ9の伝達トルクを調節することで、エンジン始動時の筒内空気(燃焼室71内の空気)の圧縮に必要なトルクの大小に応じてK0クラッチ9を介してクランク軸20に伝達されるクランキングトルク(始動トルク)を調節することができる。
【0101】
すなわち、ECU6は、エンジン始動時の点火前に燃焼室71内の空気量が相対的に少なく、燃焼室71内の空気による空気バネ反力が相対的に小さい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくし、クランキングトルクを相対的に小さくすることができ、電力消費を抑制し燃費性能を向上することができる。一方、ECU6は、エンジン始動時の点火前に燃焼室71内の空気量が相対的に多く、燃焼室71内の空気による空気バネ反力が相対的に大きい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくし、クランキングトルクを相対的に大きくすることができ、確実にエンジン7を始動することができる。この点でも、車両制御システム301は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0102】
そして、ECU6は、K0始動の際に、点火後に燃焼室71内の空気量に応じてK0クラッチ9の伝達トルクを調節することで、モータジェネレータ10側からの動力によってクランク軸20の回転を開始し燃料に点火した後は、燃焼エネルギの大小に応じてK0クラッチ9を介してクランク軸20に伝達されるアシストトルクを調節することができる。
【0103】
すなわち、ECU6は、エンジン始動時の燃焼室71内の空気量が相対的に少なく点火後の燃焼エネルギ、言い換えればエンジントルクが相対的に小さい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくしアシストトルクを相対的に大きくすることができ、確実にエンジン7の始動を完了することができる。一方、ECU6は、エンジン始動時の燃焼室71内の空気量が相対的に多く点火後の燃焼エネルギ、言い換えればエンジントルクが相対的に大きい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくしアシストトルクを相対的に小さくすることができ、電力消費を抑制し燃費性能を向上することができる。この点でも、車両制御システム301は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0104】
次に、図10、図11のタイムチャートを参照して上記のように構成された車両制御システム301の動作の一例を説明する。図10、図11は、横軸を時間軸とし、縦軸を回転数、K0圧指示値としている。図10、図11中、実線L1はモータ回転数、実線L2はエンジン回転数、実線L3はK0圧指示値を表している。そして、図10は、着火始動制御が実行された場合を表しており、図11は、K0始動制御が実行された場合を表している。
【0105】
ECU6は、着火始動制御を実行する場合、図10に示すように、まず、油圧制御装置28を制御しプレチャージ圧Pqfを発生させた後、エンジン7を制御し燃焼室71に燃料を噴射し点火してクランク軸20を回転させてエンジン7の始動を開始する。この際、ECU6は、モータジェネレータ10を制御してモータ回転数をエンジン始動可能な回転数で保っておく。そして、ECU6は、燃焼によりクランク軸20が回転を開始した状態で、油圧制御装置28を制御しK0クラッチ9のK0圧を燃焼室71内の空気量に応じたK0圧Pd1に調圧しK0クラッチ9をスリップ状態とし、モータジェネレータ10側からの動力の一部によりクランク軸20の回転をアシストしてエンジン7を完全に始動する。その後、ECU6は、エンジン回転数が自律運転可能な回転数となりエンジン7が完全に始動しエンジン回転数とモータ回転数とがほぼ同期した際に、油圧制御装置28を制御しK0クラッチ9のK0圧を係合油圧Pstdyに調圧しK0クラッチ9を完全に係合した係合状態とする。
【0106】
一方、ECU6は、K0始動制御を実行する場合、図11に示すように、まず、油圧制御装置28を制御しプレチャージ圧Pqfを発生させた後、モータジェネレータ10、油圧制御装置28を制御し、モータ回転数をエンジン始動可能な回転数で保ちつつ、K0クラッチ9のK0圧を燃焼室71内の空気量に応じたK0圧Pk1に調圧しK0クラッチ9をスリップ状態とする。これにより、ECU6は、モータジェネレータ10側からの動力によりエンジン7のクランク軸20を回転させてエンジン7の始動を開始する。そして、ECU6は、エンジン回転数が所定回転数を超えたら、エンジン7、油圧制御装置28を制御し、燃焼室71に燃料を噴射し点火すると共に、K0クラッチ9のK0圧を燃焼室71内の空気量に応じたK0圧Pk2に減圧しK0クラッチ9の伝達トルクを低減した上で、クランク軸20の回転をアシストしてエンジン7を完全に始動する。その後、ECU6は、エンジン回転数が自律運転可能な回転数となりエンジン7が完全に始動しエンジン回転数とモータ回転数とがほぼ同期した際に、油圧制御装置28を制御しK0クラッチ9のK0圧を係合油圧Pstdyに調圧しK0クラッチ9を完全に係合した係合状態とする。
【0107】
以上で説明した実施形態に係る車両制御システム301、ECU6は、状況に応じてK0始動制御と着火始動制御とを使い分けた上で、K0クラッチ9の伝達トルクを適正な大きさに設定することができるので、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0108】
[実施形態4]
図12は、実施形態4に係る車両制御システムの始動判定時間マップの一例を表す線図である。実施形態4に係る車両制御システム、制御装置は、出力軸の停止位置に基づいて始動判定時間を変更する点で実施形態1、2、3とは異なる。なお、実施形態4に係る車両制御システムの各構成については、適宜、図1等を参照する。
【0109】
本実施形態の車両制御システム401(図1参照)は、制御装置としてのECU6が、エンジン7が停止した際のクランク軸20の停止位置に基づいて、始動判定時間を変更する。ECU6は、エンジン7が停止した際のクランク軸20の停止位置として、エンジン7が停止した際のクランク角度(以下、「停止時クランク角度」という場合がある。)を用いて、この停止時クランク角度に基づいて、始動判定時間を変更する。
【0110】
この車両制御システム401は、停止時クランク角度に応じてエンジン7が停止した際のピストン73の位置が異なるため燃焼室71自体の容積が異なることとなり、同等のKL値であっても生じる燃焼エネルギ、言い換えれば、エンジン始動トルクが異なることとなる。また、車両制御システム401は、停止時クランク角度ごとにエンジン始動時の筒内空気(燃焼室71内の空気)の圧縮に必要なトルクが異なることとなる。このため、車両制御システム401は、着火始動で始動可能な燃焼室71内の空気量、言い換えれば、KL値が停止時クランク角度に応じて異なることとなる。
【0111】
そこで、ECU6は、停止時クランク角度に基づいて、始動判定時間を変更することで、より確実なエンジン7の始動を実現している。
【0112】
ここでは、ECU6は、例えば、停止時クランク角度と停止直後KL推定値とに基づいて、始動判定時間Tdを算出する。この場合、ECU6は、まず、例えば、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1を用いて、エンジン7の停止要求発生時でのエンジン7の停止前の吸気通路内圧、スロットル開度、エンジン回転数から停止直後KL推定値を算出する。そして、ECU6は、例えば、図12に例示する始動判定時間マップm7に基づいて、始動判定時間Tdを算出する。始動判定時間マップm7は、横軸が停止直後KL推定値、縦軸が始動判定時間Tdを示す。この始動判定時間マップm7は、停止直後KL推定値、停止時クランク角度と始動判定時間Tdとの関係を記述したものである。始動判定時間マップm7は、停止直後KL推定値、停止時クランク角度と始動判定時間Tdとの関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。この始動判定時間マップm7では、始動判定時間Tdは、停止直後KL推定値の増加に伴って減少し、また、クランク角度が上死点0°、すなわち、燃焼室71の容積が最小である場合に最も長い時間になるように設定されている。また、始動判定時間Tdは、燃焼室71自体の容積や筒内空気の圧縮に必要なトルク等との関係に応じて、例えば、クランク角度が上死点0°から進むにつれて徐々に短くなり所定角度で最小となった後、再び徐々に長くなるように設定されている。ECU6は、始動判定時間マップm7に基づいて、停止直後KL推定値と停止時クランク角度とから、始動判定時間Tdを算出する。
【0113】
そして、ECU6は、算出した始動判定時間Tdに基づいてK0始動制御と着火始動制御とを切り替える。すなわち、ECU6は、エンジン7を始動する際に、停止後経過時間がここで算出された始動判定時間Td未満である場合にK0始動制御を実行し、停止後経過時間が始動判定時間Td以上である場合に着火始動制御を実行する。
【0114】
つまり、この車両制御システム401は、停止時クランク角度に基づいて、エンジン7の始動時の燃焼室71自体の容積や筒内空気の圧縮に必要なトルク等に応じた適切な始動判定時間Tdを設定することができる。この結果、この車両制御システム401は、着火始動ができない状況をより精度よく把握し、K0始動によってより確実にエンジン7を始動することができる。
【0115】
以上で説明した実施形態に係る車両制御システム401、ECU6は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0116】
なお、以上の説明では、ECU6は、停止時クランク角度と停止直後KL推定値とに基づいて、始動判定時間Tdを算出するものとして説明したがこれ限らない。ECU6は、停止直後KL推定値にかかわらず、単純に停止時クランク角度に応じて始動判定時間Tdを変更するようにしてもよい。この場合であっても、車両制御システム401、ECU6は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0117】
また、ECU6は、上記で説明したようにエンジン7の始動時の推定KL(始動時の燃焼室71内の空気量)と始動判定KL(始動判定空気量)との関係に応じてK0始動制御と着火始動制御とを切り替える場合、始動判定時間を変更する場合と同様に、停止時クランク角度に基づいて始動判定KL(始動判定空気量)を変更するようにしてもよい。この場合であっても、車両制御システム401、ECU6は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0118】
また、この車両制御システム401は、上記で説明したように、停止時クランク角度ごとにエンジン始動時の筒内空気(燃焼室71内の空気)の圧縮に必要なトルクが異なることとなるため、K0始動では始動に必要なトルクが異なることとなる。
【0119】
このため、ECU6は、停止時クランク角度に基づいて、エンジン始動時のK0クラッチ9での伝達トルクを変更するようにしてもよい。この場合、ECU6は、例えば、停止時クランク角度に基づいて、図8等で例示したK0圧Pk1マップm5を変更するようにしてもよい。この場合であっても、車両制御システム401、ECU6は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。また、ECU6は、停止時クランク角度に基づいて、図7で例示したK0圧Pd1マップm4、図9で例示したK0圧Pk2マップm6を変更するようにしてもよい。
【0120】
[実施形態5]
図13は、実施形態5に係る車両制御システムの概略構成図である。実施形態5に係る車両制御システム、制御装置は、状態検出装置が燃焼室内の圧力を検出する検出装置を備える点で実施形態1、2、3、4とは異なる。
【0121】
本実施形態の車両制御システム501は、図13に示すように、状態検出装置5が検出装置としての筒内圧センサ(CPS)557を備える。筒内圧センサ557は、燃焼室71内の圧力である筒内圧を検出する。
【0122】
ECU6は、燃焼室71内の空気量に影響を与える関連パラメータとして、この筒内圧センサ557が検出する筒内圧に基づいて、燃焼室71内の空気量を推定する。これにより、ECU6は、燃焼室71内の空気量をより正確に推定することができ、正確に推定した燃焼室71内の空気量を上記で説明した各種の制御に反映させることができる。
【0123】
またこの場合、ECU6は、筒内圧センサ557が検出するエンジン7の停止後の筒内圧に基づいて、始動判定時間Tdを変更してもよい。この場合、ECU6は、エンジン7の停止後の筒内圧が相対的に大きいほど、すなわち、燃焼室71内の空気量が相対的に多いと推定できる場合ほど始動判定時間Tdを相対的に短い時間に設定する。これにより、この車両制御システム501は、相対的に短い停止後経過時間でも着火始動制御を許可することができる。一方、ECU6は、エンジン7の停止後の筒内圧が相対的に小さいほど、すなわち、燃焼室71内の空気量が相対的に少ないと推定できる場合ほど始動判定時間Tdを相対的に長い時間に設定する。これにより、この車両制御システム501は、着火始動制御を許可するまでの停止後経過時間を相対的に長くすることができる。この結果、車両制御システム501は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0124】
また、ECU6は、エンジン7の停止後の筒内圧から始動判定時間Tdを設定せずに、筒内圧センサ557が検出するエンジン7の始動時の筒内圧に対して、始動判定時間Tdに対応した始動判定筒内圧を設定し、エンジン7の始動時の筒内圧と始動判定筒内圧との関係に応じてK0始動制御と着火始動制御とを切り替えてもよい。すなわち、ECU6は、エンジン7の始動時の燃焼室71内の圧力に基づいてK0始動制御と着火始動制御とを切り替えてもよい。
【0125】
この場合、ECU6は、エンジン7を始動する際に、エンジン7の始動時(始動開始時)の筒内圧が始動判定筒内圧未満である場合にK0始動制御を実行し、筒内圧が始動判定筒内圧以上である場合に着火始動制御を実行する。この場合であっても、車両制御システム501、ECU6は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0126】
また、ECU6は、エンジン7の始動時の筒内圧と始動判定筒内圧との関係に応じてK0始動制御と着火始動制御とを切り替える場合、始動判定時間を変更する場合と同様に、停止時クランク角度に基づいて始動判定筒内圧を変更するようにしてもよい。この場合であっても、車両制御システム501、ECU6は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0127】
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両制御システム及び制御装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る車両制御システム及び制御装置は、以上で説明した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【0128】
以上で説明した車両制御システム1は、ダンパ機構8等を備えない構成であってもよい。
【0129】
以上で説明した車両制御システム1は、エンジン7自体にスタータを設けて、このスタータによってエンジン7のクランク軸20を回転(クランキング)し、エンジン7を始動させる第3始動制御(スタータ始動制御)を併用してもよい。
【符号の説明】
【0130】
1、201、301、401、501 車両制御システム
2 車両
3 駆動輪
4 駆動装置
5 状態検出装置
6 ECU(制御装置)
7 エンジン(内燃機関)
9 K0クラッチ(クラッチ)
10 モータジェネレータ(回転電機)
20 クランク軸(出力軸)
28 油圧制御装置
71 燃焼室
76 吸気通路
557 筒内圧センサ(検出装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載され、車両を制御するための従来のシステムとして、例えば、特許文献1には、エンジンと、モータと、エンジンとモータとを分離係合可能にするクラッチとを備えたハイブリッド車両の駆動制御装置が開示されている。このハイブリッド車両の駆動制御装置は、クラッチを分離状態に切り替えてのモータによる車両駆動時にクラッチを係合させてエンジンをクランキングし始動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−200758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載のハイブリッド車両の駆動制御装置は、クラッチを完全係合状態にするとともにエンジンの吸気圧が所定値以下で燃料噴射を実行する第1の始動モードと、クラッチを半係合状態にして燃料噴射を実行し、燃料噴射と同時または燃料噴射から所定時間後にクラッチの係合力を半係合状態での係合力より小さくする第2の始動モードとを実行可能であるが、例えば、より確実なエンジン始動の点で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、確実に内燃機関を始動することができる車両制御システム及び制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両制御システムは、車両の走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関及び回転電機と、前記内燃機関と前記回転電機とを連結可能であるクラッチと、前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能である制御装置とを備え、前記制御装置は、前記内燃機関が停止してからの経過時間に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする。
【0007】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関を始動する際に、前記経過時間が始動判定時間未満である場合に前記第1始動制御を実行し、前記経過時間が始動判定時間以上である場合に前記第2始動制御を実行するものとすることができる。
【0008】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記第2始動制御を実行する場合、前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火した後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸の回転をアシストし、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくするものとすることができる。
【0009】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記点火前の前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記点火前の前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくするものとすることができる。
【0010】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくするものとすることができる。
【0011】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを前記点火前の前記クラッチの伝達トルクよりも小さくするものとすることができる。
【0012】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関の停止後の燃焼室内の空気量に基づいて、前記始動判定時間を変更するものとすることができる。
【0013】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関の停止前の吸気通路内圧、スロットル開度、あるいは、前記出力軸の回転速度に基づいて、前記始動判定時間を変更するものとすることができる。
【0014】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関が停止した際の前記出力軸の停止位置に基づいて、前記始動判定時間を変更するものとすることができる。
【0015】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関が停止した際の前記出力軸の停止位置に基づいて、前記伝達トルクを変更するものとすることができる。
【0016】
また、上記車両制御システムでは、前記内燃機関の燃焼室内の圧力を検出する検出装置を備え、前記制御装置は、前記検出装置が検出する前記内燃機関の停止後の前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記始動判定時間を変更するものとすることができる。
【0017】
また、上記車両制御システムでは、前記内燃機関の燃焼室内の圧力を検出する検出装置を備え、前記制御装置は、前記検出装置が検出する前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記燃焼室内の空気量を推定するものとすることができる。
【0018】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記内燃機関の吸気通路内圧、スロットル開度、あるいは、前記出力軸の回転速度に基づいて、前記燃焼室内の空気量を推定するものとすることができる。
【0019】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両制御システムは、車両の走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関及び回転電機と、前記内燃機関と前記回転電機とを連結可能であるクラッチと、前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能である制御装置とを備え、前記制御装置は、前記内燃機関の始動時の前記燃焼室内の空気量、あるいは、前記内燃機関の始動時の前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする。
【0020】
また、上記車両制御システムでは、前記制御装置は、前記第2始動制御として、前記内燃機関の出力軸が回転しない程度に前記クラッチをスリップ状態とした後、前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記クラッチの伝達トルクを増大させて前記内燃機関を始動するものとすることができる。
【0021】
上記目的を達成するために、本発明に係る制御装置は、車両の駆動輪への動力の伝達経路に対して、走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関、クラッチ、走行用動力源である回転電機の順で配置される駆動装置を制御する制御装置であって、前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能であり、
さらに、前記内燃機関が停止してからの経過時間に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る車両制御システム、制御装置は、確実に内燃機関を始動することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、実施形態1に係る車両制御システムの概略構成図である。
【図2】図2は、実施形態1に係る車両制御システムのエンジンの燃焼室を含む部分断面図である。
【図3】図3は、実施形態1に係る車両制御システムのECUによる制御の一例を示すフローチャートである。
【図4】図4は、実施形態2に係る車両制御システムの停止直後KL推定値マップの一例を表す線図である。
【図5】図5は、実施形態2に係る車両制御システムの始動判定時間マップの一例を表す線図である。
【図6】図6は、実施形態2に係る車両制御システムの推定KLマップの一例を表す線図である。
【図7】図7は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pd1マップの一例を表す線図である。
【図8】図8は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pk1マップの一例を表す線図である。
【図9】図9は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pk2マップの一例を表す線図である。
【図10】図10は、実施形態3に係る車両制御システムの動作の一例を示すタイムチャートである。
【図11】図11は、実施形態3に係る車両制御システムの動作の一例を示すタイムチャートである。
【図12】図12は、実施形態4に係る車両制御システムの始動判定時間マップの一例を表す線図である。
【図13】図13は、実施形態5に係る車両制御システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0025】
[実施形態1]
図1は、実施形態1に係る車両制御システムの概略構成図、図2は、実施形態1に係る車両制御システムのエンジンの燃焼室を含む部分断面図、図3は、実施形態1に係る車両制御システムのECUによる制御の一例を示すフローチャートである。
【0026】
本実施形態は、1つのモータジェネレータと1つのエンジンを備えたいわゆる1モータパラレルハイブリッド形式の車両制御システムである。本実施形態は、車両に適用されるものであり、典型的には、下記の構成要素を有している。
(1)直噴始動が可能な直噴エンジン。
(2)エンジンとモータジェネレータとを接断自在なクラッチ。
【0027】
そして、本実施形態は、これらの構成要素によって、エンジン始動を行う場合に、例えば、前回のエンジン停止後からの経過時間に基づいて第1始動制御と第2始動制御とを切り替えることで、状況に応じたより確実なエンジン始動を実現している。
【0028】
具体的には、本実施形態の車両制御システム1は、図1に示すように、車両2に搭載され、この車両2を制御するためのシステムであり、典型的には、車両2のエンジン停止状態からの始動を制御するエンジン始動制御システムである。車両2は、車両2を走行させるための走行用動力源(原動機)として、内燃機関としてのエンジン7と、回転電機としてのモータジェネレータ10とを搭載したいわゆる「ハイブリッド車両」である。より詳細には、車両2は、1つのモータジェネレータ10と自動変速機である変速機12とを備えたいわゆる1MG+AT型の「パラレルハイブリッド車両」である。
【0029】
車両制御システム1は、車両2の駆動輪3を駆動する駆動装置4と、車両2の状態を検出する状態検出装置5と、駆動装置4を含む車両2の各部を制御する制御装置としてのECU6とを備える。
【0030】
駆動装置4は、車両2においてパラレルハイブリッド形式のパワートレーンを構成し、1つのエンジン7と、1つのモータジェネレータ10とを有し、これらにより駆動輪3を回転駆動するものである。
【0031】
駆動装置4は、エンジン7と、ダンパ機構8と、クラッチとしてのK0クラッチ9と、モータジェネレータ10とを備える。さらに、駆動装置4は、トルクコンバータ11と、変速機12と、プロペラ軸13と、デファレンシャルギヤ14と、ドライブ軸15とを備える。また、トルクコンバータ11は、ロックアップ機構16と、流体伝達機構17とを含んで構成される。変速機12は、C1クラッチ18と、変速機本体19とを含んで構成される。
【0032】
この駆動装置4は、各構成要素が駆動輪3への動力の伝達経路に対して、エンジン7、ダンパ機構8、K0クラッチ9、モータジェネレータ10、トルクコンバータ11のロックアップ機構16、流体伝達機構17、変速機12のC1クラッチ18、変速機本体19、プロペラ軸13、デファレンシャルギヤ14、ドライブ軸15の順で相互に動力伝達可能に配置される。この場合、駆動装置4は、エンジン7の出力軸(内燃機関出力軸)であるクランク軸20とモータジェネレータ10の出力軸(電動機出力軸)であるのロータ軸21とがダンパ機構8、K0クラッチ9を介して連結される。さらに、駆動装置4は、ロータ軸21と駆動輪3とがトルクコンバータ11、変速機12、プロペラ軸13、デファレンシャルギヤ14、ドライブ軸15等を介して連結される。
【0033】
より詳細には、エンジン7は、燃焼室71(図2参照)で燃料を燃焼させることにより燃料のエネルギを機械的仕事に変換して動力として出力する熱機関である。エンジン7は、燃料の燃焼に伴ってクランク軸20に機械的な動力(エンジントルク)を発生させ、この機械的動力をクランク軸20から出力可能である。
【0034】
ここで、本実施形態のエンジン7は、図2に示すように、いわゆる多気筒筒内直接噴射式の内燃機関である。すなわち、エンジン7は、燃料噴射装置(インジェクタ)70によって燃料噴霧70aを燃焼室71に直接噴射するものである。エンジン7は、シリンダボア72内に往復運動可能に設けられるピストン73が2往復する間に一連の4行程を行う、いわゆる4サイクルエンジンである。エンジン7は、典型的には、ピストン73がシリンダボア72内を吸気行程上死点から下降することで、吸気弁74の開弁に伴って、吸気管、サージタンク、インテークマニホールド、吸気ポート75等の吸気通路76を介して燃焼室71内に空気が吸入される(吸気行程)。そして、エンジン7は、ピストン73が吸気行程下死点を経てシリンダボア72内を上昇することで空気が圧縮される(圧縮行程)。このとき、エンジン7は、吸気行程又は圧縮行程にて燃料噴射装置70から燃焼室71内へ燃料が噴射され、この燃料と空気とが混合して混合気を形成する。そして、エンジン7は、ピストン73が圧縮行程上死点付近に近づくと点火プラグ77により混合気に点火され、該混合気が着火して燃焼し、その燃焼圧力によりピストン73を下降させる(膨張行程)。燃焼後の混合気は、ピストン73が膨張行程下死点を経て吸気行程上死点に向かって再び上昇することで、排気弁78の開弁に伴って、排気ポート79を介して排気ガスとして放出される(排気行程)。このピストン73のシリンダボア72内での往復運動は、コネクティングロッドを介してクランク軸20(図1参照)に伝えられ、ここで回転運動に変換され、出力として取り出される。そして、ピストン73は、カウンタウェイトと共にクランク軸20が慣性力によりさらに回転することで、このクランク軸20の回転に伴ってシリンダボア72内を往復する。このクランク軸20が2回転することで、ピストン73はシリンダボア72を2往復し、この間に吸気行程、圧縮行程、膨張行程及び排気行程からなる一連の4行程を行い、燃焼室71内で1回の爆発が行われる。
【0035】
このエンジン7は、車両2の停車中、走行中にかかわらず、作動状態と非作動状態とを切り替え可能である。ここで、エンジン7の作動状態(エンジン7を作動させた状態)とは、駆動輪3に作用させる動力を発生する状態であり、燃焼室71で燃料を燃焼して生じる熱エネルギをトルクなどの機械的エネルギの形で出力する状態である。つまり、エンジン7は、作動状態では燃焼室71で燃料を燃焼させて車両2の駆動輪3に作用させる動力を発生する。一方、エンジン7の非作動状態、すなわち、エンジン7の作動を停止させた状態とは、動力の発生を停止した状態であり、燃焼室71への燃料の供給をカットし(フューエルカット)、燃焼室71で燃料を燃焼させずトルクなどの機械的エネルギを出力しない状態である。
【0036】
図1に戻って、K0クラッチ9は、エンジン7のクランク軸20とモータジェネレータ10のロータ軸21とをダンパ機構8を介して連結可能である。K0クラッチ9は、クランク軸20とロータ軸21とを動力伝達可能に係合した係合状態と、この係合を解除した解放状態と、係合状態と解放状態との間のスリップ状態とに切り替え可能である。K0クラッチ9は、係合状態となることで、クランク軸20とロータ軸21とをダンパ機構8を介して一体回転可能に連結し、エンジン7とモータジェネレータ10との間での動力伝達が可能な状態となる。一方、K0クラッチ9は、解放状態となることでクランク軸20とロータ軸21とを切り離しエンジン7とモータジェネレータ10との間での動力伝達が遮断された状態となる。
【0037】
K0クラッチ9は、種々のクラッチを用いることができ、例えば、湿式多板クラッチや乾式単板クラッチ等の摩擦式ディスククラッチ装置を用いることができる。ここでは、K0クラッチ9は、例えば、K0クラッチ9に供給される作動油の油圧であるクラッチ油圧に応じて作動する油圧式の装置である。K0クラッチ9は、クラッチ油圧に応じた係合力(クラッチ板を係合する押圧力)が0である場合に係合が完全に解除された解放状態となり、係合力が大きくなるにしたがってスリップ状態(半係合状態)を経て完全に係合した係合状態となる。K0クラッチ9における伝達トルクは、解放状態では0であり、スリップ状態では係合力に応じた大きさとなり、係合状態では最大となる。なお、以下で説明するC1クラッチ18、ロックアップクラッチ25についてもこのK0クラッチ9とほぼ同様である。
【0038】
モータジェネレータ10は、例えば、交流同期電動機等である。モータジェネレータ10は、固定子としてのステータ22がケース等に固定され、回転子としてのロータ23がステータ22の径方向内側に配置されてロータ軸21に一体回転可能に結合される。モータジェネレータ10は、インバータなどを介して蓄電装置としてのバッテリ24から供給された電力を機械的動力に変換する電動機としての機能(力行機能)と、入力された機械的動力を電力に変換しインバータなどを介してバッテリ24に充電する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えた回転電機である。モータジェネレータ10は、例えば、バッテリ24からインバータを介して交流電力の供給を受けて駆動し、ロータ軸21に機械的な動力(モータトルク)を発生させ、この機械的動力をロータ軸21から出力可能である。
【0039】
トルクコンバータ11は、流体継手の一種であり、モータジェネレータ10のロータ軸21に連結される。トルクコンバータ11は、エンジン7又はモータジェネレータ10からの動力を、ロックアップクラッチ25を介して伝達するロックアップ機構16と、作動油(作動流体)を介して伝達する流体伝達機構17とを有する。ロックアップ機構16は、ロックアップクラッチ25を介してロータ軸21とトルクコンバータ11の出力軸(流体伝達装置出力軸)26とを連結可能である。流体伝達機構17は、ポンプ(ポンプインペラ)17p、タービン(タービンランナ)17t、ステータ17s、ワンウェイクラッチ17c等を含んで構成され、内部に作動流体としての作動油が充填される。ポンプ17pは、ロータ軸21と一体回転可能に連結され、タービン17tは、出力軸26と一体回転可能に連結される。ロックアップクラッチ25は、ロータ軸21とタービン17tとを動力伝達可能に係合した係合状態と、この係合を解除した解放状態と、係合状態と解放状態との間のスリップ状態とに切り替え可能である。トルクコンバータ11は、エンジン7又はモータジェネレータ10からの動力を、ロックアップクラッチ25の状態に応じて、ロックアップ機構16、又は、流体伝達機構17を介して出力軸26に伝達し、この出力軸26から出力することができる。
【0040】
変速機12は、トルクコンバータ11からの動力を、C1クラッチ18を介して変速機本体19に伝達し、変速機本体19にて変速して駆動輪3側に出力する。C1クラッチ18は、トルクコンバータ11の出力軸26と駆動輪3とを変速機本体19、プロペラ軸13、デファレンシャルギヤ14、ドライブ軸15等を介して連結可能である。ここでは、C1クラッチ18は、トルクコンバータ11の出力軸26と変速機本体19の入力軸27とを動力伝達可能に係合した係合状態と、この係合を解除した解放状態と、係合状態と解放状態との間のスリップ状態とに切り替え可能である。変速機本体19は、例えば、有段自動変速機(AT)、無段自動変速機(CVT)、マルチモードマニュアルトランスミッション(MMT)、シーケンシャルマニュアルトランスミッション(SMT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)などのいわゆる自動変速機である。ここでは、変速機本体19は、例えば、有段自動変速機が適用される。
【0041】
デファレンシャルギヤ14は、プロペラ軸13からの動力を、各ドライブ軸15を介して各駆動輪3に伝達する。デファレンシャルギヤ14は、車両2が旋回する際に生じる旋回の中心側、つまり内側の駆動輪3と、外側の駆動輪3との回転速度の差を吸収する。
【0042】
上記のように構成される駆動装置4は、エンジン7が発生させた動力をクランク軸20からダンパ機構8、K0クラッチ9、ロータ軸21、トルクコンバータ11、変速機12、プロペラ軸13、デファレンシャルギヤ14、ドライブ軸15を介して駆動輪3に伝達することができる。また、駆動装置4は、モータジェネレータ10が発生させた動力をロータ軸21から、K0クラッチ9を介さずに、トルクコンバータ11、変速機12、プロペラ軸13、デファレンシャルギヤ14、ドライブ軸15を介して駆動輪3に伝達することができる。この結果、車両2は、駆動輪3と路面との接地面に駆動力[N]が生じ、これにより走行することができる。
【0043】
状態検出装置5は、車両2の状態を検出するものであり、車両2の状態を表す種々の状態量や物理量、スイッチ類の作動状態等を検出するものである。状態検出装置5は、ECU6と電気的に接続されており、相互に検出信号や駆動信号、制御指令等の情報の授受を行うことができる。状態検出装置5は、例えば、アクセル開度センサ50、ブレーキセンサ51、車速センサ52、クランク角センサ53、吸気圧センサ54、スロットル開度センサ55、充電状態検出器56等を含む。アクセル開度センサ50は、運転者による車両2のアクセルペダルの操作量(アクセル操作量、加速要求操作量)に相当するアクセル開度を検出する。ブレーキセンサ51は、運転者による車両2のブレーキペダルの操作量(ブレーキ操作量、制動要求操作量)に相当するマスタシリンダ圧、あるいは、ブレーキ踏力等を検出する。車速センサ52は、車両2の走行速度である車速を検出する。クランク角センサ53は、クランク軸20の回転角度であるクランク角度を検出する。ECU6は、このクランク角度に基づいて、エンジン7の各気筒における吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を判別すると共に、クランク軸20の回転数(回転速度)であるエンジン回転数を算出することができる。吸気圧センサ54は、吸気通路76(図2参照)内の圧力(内圧)、例えば、インテークマニホールド内圧を検出する。スロットル開度センサ55は、エンジン7の吸気通路76に設けられたスロットル装置のスロットル弁の開度であるスロットル開度を検出する。充電状態検出器56は、バッテリ24の蓄電量(充電量)やバッテリ電圧等に応じた蓄電状態SOCを検出する。
【0044】
ECU6は、車両制御システム1の全体の制御を統括的に行い、エンジン7やモータジェネレータ10等を協調して制御するための制御ユニットである。ECU6は、CPU、ROM、RAM及びインターフェースを含む周知のマイクロコンピュータを主体とする電子回路である。ECU6は、状態検出装置5が電気的に接続され、また、エンジン7の燃料噴射装置70、点火プラグ77、スロットル装置、モータジェネレータ10のインバータ、バッテリ24等が電気的に接続される。さらに、ECU6は、K0クラッチ9、ロックアップクラッチ25、C1クラッチ18及び変速機本体19等に油圧制御装置28を介して接続され、油圧制御装置28を介してこれらの動作を制御する。ECU6は、状態検出装置5が検出した検出結果に対応した電気信号が入力され、入力された検出結果に応じてエンジン7、モータジェネレータ10のインバータ、油圧制御装置28等の駆動装置4の各部に駆動信号を出力しこれらの駆動を制御する。
【0045】
ここで、油圧制御装置28は、作動流体としての作動油(オイル)の油圧によって、変速機本体19の変速動作やK0クラッチ9、ロックアップクラッチ25、C1クラッチ18等の係合要素の係合・解放・スリップ動作を制御するものである。油圧制御装置28は、ECU6により制御される種々の公知の油圧制御回路を含んで構成され、例えば、複数の油路、オイルリザーバ、オイルポンプ、複数の電磁弁などを含んで構成される。油圧制御装置28は、ECU6からの信号に応じて、駆動装置4の各部に供給される作動油の流量あるいは油圧を制御する。
【0046】
ECU6は、例えば、アクセル開度、車速等に基づいてエンジン7のスロットル装置を制御し、吸気通路76のスロットル開度を調節し、吸入空気量を調節して、その変化に対応して燃料噴射量を制御し、燃焼室71に充填される混合気の量を調節してエンジン7の出力を制御する。また、ECU6は、例えば、アクセル開度、車速等に基づいて油圧制御装置28を制御し、変速機本体19の変速動作やK0クラッチ9、ロックアップクラッチ25、C1クラッチ18等の係合・解放・スリップ動作等を制御する。
【0047】
上記のように構成される車両制御システム1は、ECU6が駆動装置4を制御し、エンジン7とモータジェネレータ10とを併用又は選択使用することで、車両2を様々な走行モードで走行させることができる。
【0048】
ECU6は、例えば、K0クラッチ9を係合状態(K0クラッチON)としかつエンジン7を作動させ、走行用動力源であるエンジン7とモータジェネレータ10とのうちエンジン7から出力する動力(エンジントルク)のみを駆動輪3に伝達させる。このとき、C1クラッチ18は、係合状態(C1クラッチON)となっている。これにより、車両制御システム1は、「エンジン走行」モードを実現することができる。したがって、車両2は、走行用動力源のうちエンジン7のみを用いて走行することができる。
【0049】
また、ECU6は、例えば、上記のようにK0クラッチ9を係合状態(K0クラッチON)としかつエンジン7を作動させた状態で、要求駆動力やバッテリ24の蓄電状態SOCに応じてモータジェネレータ10を力行させ、エンジン7から出力する動力と、モータジェネレータ10から出力する動力(モータトルク)とを統合して駆動輪3に伝達させる。このとき、C1クラッチ18は、係合状態(C1クラッチON)となっている。これにより、車両制御システム1は、「HV走行」モードを実現することができる。したがって、車両2は、エンジン7とモータジェネレータ10とを併用して走行することができる。
【0050】
さらに、ECU6は、例えば、K0クラッチ9を解放状態(K0クラッチOFF)としかつエンジン7を停止し非作動状態とした上で、モータジェネレータ10を力行させ、走行用動力源であるエンジン7とモータジェネレータ10とのうちモータジェネレータ10から出力する動力のみを駆動輪3に伝達させる。このとき、C1クラッチ18は、係合状態(C1クラッチON)となっている。また、エンジン7は、非作動状態でありかつK0クラッチ9が解放状態であるから、クランク軸20の回転も停止している。これにより、車両制御システム1は、「EV走行」モードを実現することができる。したがって、車両2は、走行用動力源のうちモータジェネレータ10のみを用いて走行することができる。このとき、車両2は、基本的にはクランク軸20とロータ軸21とがK0クラッチ9にて機械的に切り離された状態となり、エンジン7の回転抵抗が作用しない状態となる。
【0051】
また、ECU6は、例えば、車両2の減速走行時に、モータジェネレータ10を制御し、駆動輪3からロータ軸21に伝達される動力によってモータジェネレータ10にて回生により発電し、これに伴ってロータ軸21に生じる機械的動力(負のモータトルク)を駆動輪3に伝達する。このとき、C1クラッチ18は、係合状態(C1クラッチON)となっている。これにより、車両制御システム1は、「回生走行」モードを実現することができる。したがって、車両2は、モータジェネレータ10により回生制動されて減速走行することができる。
【0052】
そして、ECU6は、例えば、エンジン7が非作動状態でありクランク軸20の回転が停止した状態からエンジン7を始動する場合、異なる2つの始動モードでエンジン7を始動することができる。ECU6は、状況に応じて第1始動制御としてのK0始動制御と、第2始動制御としての着火始動制御とを使い分けることができる。
【0053】
ECU6は、K0始動制御を実行する場合、モータジェネレータ10をエンジン7のスタータモータとして利用しエンジン7を始動させる。この場合、ECU6は、下記のようにしてK0始動制御を実行する。すなわち、ECU6は、エンジン7、モータジェネレータ10、及び、K0クラッチ9を制御し、まず、K0クラッチ9をスリップ状態としモータジェネレータ10側からの動力によりエンジン7のクランク軸20を回転(クランキング)させる。すなわち、ECU6は、K0クラッチ9をスリップ状態としモータジェネレータ10が出力する動力の一部をクランク軸20のクランキングトルク(始動トルク)として利用してクランク軸20を回転させる。そして、ECU6は、クランク軸20を回転させた後に、回転数が所定回転数を超えたら、燃料噴射装置70から燃焼室71に燃料を噴射し点火プラグ77によって点火しエンジン7を始動する(K0始動)。その後、ECU6は、エンジン回転数が自律運転可能な回転数となりエンジン7が完全に始動しエンジン回転数とモータ回転数とがほぼ同期した際にK0クラッチ9を完全に係合した係合状態とする。
【0054】
また、ECU6は、エンジン7が筒内直接噴射式の内燃機関であるため、下記のようにして着火始動制御を実行することでもエンジン7を始動させることができる。すなわち、ECU6は、エンジン7を制御し、クランク軸20の回転が停止した状態で燃料噴射装置70から燃焼室71に燃料を噴射し点火プラグ77によって点火してクランク軸20を回転させてエンジン7を始動する。ここでは、ECU6は、エンジン7、モータジェネレータ10、及び、K0クラッチ9を制御し、まず、クランク軸20の回転が停止した状態でエンジン7の燃焼室71、典型的には膨張行程で停止した気筒の燃焼室71に燃料を噴射して点火し、燃料の燃焼エネルギによってクランク軸20の回転を開始する。その後、ECU6は、燃焼によりクランク軸20が回転を開始した状態でK0クラッチ9の伝達トルクを増大させて、K0クラッチ9を介したモータジェネレータ10側からの動力の一部によりクランク軸20の回転をアシストしてエンジン7を始動する(着火始動)。その後、ECU6は、エンジン回転数が自律運転可能な回転数となりエンジン7が完全に始動しエンジン回転数とモータ回転数とがほぼ同期した際にK0クラッチ9を完全に係合した係合状態とする。
【0055】
このとき、ECU6は、この着火始動制御では混合気への点火が完了するまではK0クラッチ9のトルク容量をクランク軸20が回転し始めない程度の大きさの待機時トルク容量に設定しておく。つまり、ECU6は、着火始動制御として、点火が完了するまではクランク軸20が回転しない程度にK0クラッチ9をスリップ状態としK0クラッチ9のトルク容量を待機時トルク容量とする。その後、ECU6は、燃焼室71に燃料を噴射して点火しクランク軸20を回転させた後にK0クラッチ9の伝達トルク(トルク容量)を増大させてエンジン7を始動する。これにより、この車両制御システム1は、燃焼が開始してクランク軸20の回転が始まったら、すぐにK0クラッチ9のトルク容量を着火始動アシストトルク容量に増加し、K0クラッチ9を介してクランク軸20にアシストトルクを伝達することができる。この結果、車両制御システム1は、より確実にかつ迅速にエンジン7を始動することができる。なお、この待機時トルク容量は、0であってもよい。この場合、ECU6は、着火始動制御として、クランク軸20の回転が停止した状態で燃焼室71に燃料を噴射して点火しクランク軸20を回転させた後にK0クラッチ9をスリップ状態としK0クラッチ9の伝達トルク(トルク容量)を増大させてエンジン7を始動する。
【0056】
なお、ECU6は、油圧制御装置28を制御して、K0クラッチ9に供給されるクラッチ油圧であるK0圧を調節し、K0クラッチ9のトルク容量を調節することで、エンジン7の始動時におけるK0クラッチ9の伝達トルク(以下、「K0トルク」という場合がある。)を調節することができる。ここでは、K0クラッチ9のトルク容量は、K0始動と着火始動とを比較した場合、K0始動でのトルク容量の方が相対的に大きく、着火始動でのトルク容量の方が相対的に小さくなる。すなわち、着火始動制御でのクランク軸20のアシストトルクは、着火始動では燃焼室71での燃焼エネルギを利用してクランク軸20の回転を開始している分、K0始動制御でのクランク軸20のクランキングトルクよりも少なくてすむ。このため、K0クラッチ9の伝達トルク容量は、着火始動制御の方がK0始動制御の場合と比較して相対的に小さくてすむ。したがって、車両制御システム1は、着火始動制御では、その分、電力消費を抑制してモータジェネレータ10の負荷を相対的に低減することができる。ここでは、ECU6は、例えば、燃焼室71内の空気量の推定値やクランク軸20の停止位置(停止クランク角度)、エンジン停止後からの経過時間等に応じて、着火始動が可能な状況において積極的に着火始動制御を実行する。これにより、車両制御システム1は、電力消費を抑制し燃費性能を向上することができる。
【0057】
ここで、この車両制御システム1は、クランク軸20の回転停止後の燃焼室71内の空気量、あるいは、筒内圧(燃焼室71内の圧力)の状態によっては、着火始動制御を実行しても、燃焼室71での十分な燃料の燃焼に必要な空気が不足することで、始動時のエンジン発生トルクが不足するおそれがある。これにより、この車両制御システム1は、例えば、異常燃焼により始動時にショックが発生したり、始動に失敗(エンジンストール)したりするおそれがある。
【0058】
そこで、本実施形態のECU6は、エンジン7が停止してからの経過時間に基づいて、K0始動制御と着火始動制御とを切り替えることで、より確実なエンジン始動を実現している。
【0059】
より詳細には、ECU6は、エンジン7を始動する際に、エンジン7が停止してからの経過時間が始動判定時間未満である場合にK0始動制御を実行し、経過時間が始動判定時間以上である場合に着火始動制御を実行する。
【0060】
ここで、始動判定時間は、例えば、実車評価等に応じて予め設定される。始動判定時間は、典型的には、クランク軸20の回転停止後の燃焼室71内の空気量、筒内圧の状態が着火始動可能な状態に回復するまでの時間に応じて設定される。エンジン7が停止してからの経過時間、より詳細には、クランク軸20の回転が停止してからの経過時間は、燃焼室71内の空気量、筒内圧等に影響を与える関連パラメータである。下記で説明するように、燃焼室71内の空気量、筒内圧は、クランク軸20の回転が停止してからの経過時間が長くなるにしたがって増加する傾向にある。さらに言えば、クランク軸20の回転が停止してからの経過時間は、燃焼室71内の空気量、筒内圧の状態が着火始動可能な状態に回復したか否かを推定するためのパラメータとして用いることができる。
【0061】
例えば、車両制御システム1は、エンジン7のクランク軸20の回転停止前の状態ではサージタンク、インテークマニホールド等の吸気通路76を吸入空気が流動していることから、スロットル弁(絞り)等の作用により、燃焼室71側の内圧が低下した状態となっている。そして、車両制御システム1は、エンジン7のクランク軸20の回転停止直後の状態では、燃焼室71内の空気圧である筒内圧が負圧となっており、燃焼室71内の空気量(酸素量)が不足した状態となっているおそれがある。
【0062】
これに対して、本実施形態のECU6は、クランク軸20の回転が停止しエンジン7が停止してからの経過時間(以下、「停止後経過時間」という場合がある。)が始動判定時間未満である場合、着火始動制御を禁止し、エンジン始動要求に対してK0始動制御でエンジン7を始動する。これにより、車両制御システム1は、クランク軸20の回転停止直後であって、燃焼室71での十分な燃料の燃焼に必要な空気が不足しているような状態であっても、K0始動によってエンジン7を始動することができる。この結果、この車両制御システム1は、例えば、異常燃焼により始動時にショックが発生したり、始動に失敗したりすることなく、適正にエンジン7を始動することができる。
【0063】
一方、車両制御システム1は、クランク軸20の回転停止後、所定時間、典型的には始動判定時間経過後の状態では、例えば、スロットル弁と吸気通路76内壁との隙間等から時間の経過に伴って燃焼室71側に空気が流入し、筒内圧が大気圧近傍まで復帰(増加)した状態となっていると推定できる。これにより、車両制御システム1は、燃焼室71内の空気量が着火始動するための十分な燃焼エネルギが得られる空気量まで回復した状態となっていると推定できる。
【0064】
したがってこの場合、ECU6は、停止後経過時間が始動判定時間以上である場合、着火始動制御を許可し、エンジン始動要求に対して着火始動制御でエンジン7を始動する。これにより、車両制御システム1は、燃焼室71に着火始動に必要な空気量が確保されたと推定できる状態では、着火始動によってエンジン7を始動することができる。これにより、この車両制御システム1は、着火始動可能な状況においては積極的に着火始動を行うことで燃費性能を向上することができ、その上で適正にエンジン7を始動することができる。
【0065】
次に、図3のフローチャートを参照して車両制御システム1におけるECU6による制御の一例を説明する。なお、これらの制御ルーチンは、数msないし数十ms毎の制御周期で繰り返し実行される。
【0066】
まず、ECU6は、状態検出装置5による検出結果に応じて、エンジン7の始動要求があるか否かを判定する(ST1)。ECU6は、例えば、加速要求操作量に相当するアクセル開度、蓄電状態SOC等に基づいて、エンジン7の始動要求があるか否かを判定する。ECU6は、エンジン7の始動要求がないと判定した場合(ST1:No)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0067】
ECU6は、エンジン7の始動要求があると判定した場合(ST1:Yes)、エンジン7の停止後、予め設定される始動判定時間Td以上経過したか否かを判定する(ST2)。すなわち、ECU6は、停止後経過時間が始動判定時間Td以上であるか否かを判定する。
【0068】
ECU6は、エンジン7の停止後、始動判定時間Td以上経過したと判定した場合(ST2:Yes)、すなわち、停止後経過時間が始動判定時間Td以上であると判定した場合、着火始動制御を実行し、着火始動を実施して(ST3)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0069】
ECU6は、エンジン7の停止後、始動判定時間Td以上経過していないと判定した場合(ST2:No)、すなわち、停止後経過時間が始動判定時間Td未満であると判定した場合、K0始動制御を実行し、K0始動を実施して(ST4)、今回の制御周期を終了し、次回の制御周期に移行する。
【0070】
以上で説明した実施形態に係る車両制御システム1、ECU6は、エンジン7が停止してからの経過時間に基づいて、K0始動制御と着火始動制御とを切り替えるので、状況に応じて適宜にK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることで、確実にエンジン7を始動することができると共に、燃費性能を向上することができる。
【0071】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る車両制御システムの停止直後KL推定値マップの一例を表す線図、図5は、実施形態2に係る車両制御システムの始動判定時間マップの一例を表す線図、図6は、実施形態2に係る車両制御システムの推定KLマップの一例を表す線図である。実施形態2に係る車両制御システム、制御装置は、燃焼室内の空気量に基づいて始動判定時間を変更する点で実施形態1とは異なる。なお、実施形態2に係る車両制御システムの各構成については、適宜、図1等を参照する。
【0072】
本実施形態の車両制御システム201(図1参照)は、制御装置としてのECU6がエンジン7の停止後の燃焼室71内の空気量に基づいて始動判定時間を変更する。
【0073】
ここでは、ECU6は、エンジン7の停止後の燃焼室71内の空気量、あるいは筒内圧に影響を与える関連パラメータとして、エンジン7の停止前の吸気通路内圧(PM)、エンジン7の停止前のスロットル開度、あるいは、エンジン7の停止前のエンジン回転数(出力軸の回転速度)等に基づいて、停止直後KL推定値を算出する。そして、ECU6は、停止直後KL推定値に基づいて、始動判定時間を設定する。
【0074】
ここで、KL推定値(あるいは後述の推定KL)は、エンジン7の全負荷を100%としたときの推定負荷の比率である。このKL推定値は、筒内の空気量、あるいは、筒内圧に関する関連値であり、気筒内にどれだけの吸入空気が入ってきているかを示す値、すなわち、燃焼室71内の空気量の推定値に相当する値である。このKL推定値は、相対的に高い数値であるほど、燃焼室71内の空気量が相対的に多いことを表す。またここで、エンジン7の停止前とは、典型的には、クランク軸20の回転が停止しエンジン7が停止する前であり、一例として、エンジン7の停止要求発生時である。
【0075】
ECU6は、例えば、エンジン7の停止要求発生時でのクランク角センサ53、吸気圧センサ54、スロットル開度センサ55による検出結果に基づいて、エンジン7の停止前の吸気通路内圧、エンジン7の停止前のスロットル開度、エンジン7の停止前のエンジン回転数から停止直後KL推定値を算出する。
【0076】
この場合、ECU6は、まず、エンジン7の停止前の吸気通路内圧、エンジン7の停止前のスロットル開度からエンジン7の停止前KL推定値を算出する。この停止前KL推定値は、エンジン7の停止前の吸気通路内圧が高いほど相対的に高くなり、エンジン7の停止前のスロットル開度が大きいほど相対的に高くなる傾向にある。
【0077】
そして、ECU6は、例えば、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1に基づいて、停止直後KL推定値を算出する。停止直後KL推定値マップm1は、横軸が停止前エンジン回転数、縦軸が停止直後KL推定値を示す。この停止直後KL推定値マップm1は、停止前KL推定値、停止前エンジン回転数と停止直後KL推定値との関係を記述したものである。停止直後KL推定値マップm1は、停止前KL推定値、停止前エンジン回転数と停止直後KL推定値との関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。この停止直後KL推定値マップm1では、停止直後KL推定値は、停止前KL推定値の増加に伴って増加し、また、停止前エンジン回転数が高いほど停止までの時間が長くなることから徐々に増加する。ECU6は、停止直後KL推定値マップm1に基づいて、停止前KL推定値とエンジン7の停止前エンジン回転数とから、停止直後KL推定値を算出する。
【0078】
なお、本実施形態では、ECU6は、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1を用いて停止直後KL推定値を算出するものとして説明したが本実施形態はこれに限定されない。ECU6は、例えば、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1に相当する数式モデルに基づいて停止直後KL推定値を算出するようにしてもよい。以下で説明する種々のマップについても同様である。
【0079】
そして、ECU6は、算出した停止直後KL推定値に基づいて、始動判定時間Tdを設定する。ECU6は、例えば、図5に例示する始動判定時間マップm2に基づいて、始動判定時間Tdを算出する。始動判定時間マップm2は、横軸が停止直後KL推定値、縦軸が始動判定時間Tdを示す。この始動判定時間マップm2は、停止直後KL推定値と始動判定時間Tdとの関係を記述したものである。始動判定時間マップm2は、停止直後KL推定値と始動判定時間Tdとの関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。この始動判定時間マップm2では、始動判定時間Tdは、停止直後KL推定値の増加に伴って減少する。ECU6は、始動判定時間マップm2に基づいて、停止直後KL推定値から、始動判定時間Tdを算出する。
【0080】
そして、ECU6は、算出した始動判定時間Tdに基づいてK0始動制御と着火始動制御とを切り替える。すなわち、ECU6は、エンジン7を始動する際に、停止後経過時間がここで算出された始動判定時間Td未満である場合にK0始動制御を実行し、停止後経過時間が始動判定時間Td以上である場合に着火始動制御を実行する。
【0081】
つまり、この車両制御システム201は、停止直後KL推定値が相対的に大きいほど、すなわち、燃焼室71内の空気量が相対的に多いと推定できる場合ほど始動判定時間Tdが相対的に短い時間に設定され、相対的に短い停止後経過時間でも着火始動制御を許可することができる。この結果、この車両制御システム201は、着火始動可能な状況をより精度よく把握しより積極的に着火始動を行うことで燃費性能を向上することができる。
【0082】
一方、この車両制御システム201は、停止直後KL推定値が相対的に小さいほど、すなわち、燃焼室71内の空気量が相対的に少ないと推定できる場合ほど始動判定時間Tdが相対的に長い時間に設定され、着火始動制御を許可するまでの停止後経過時間を相対的に長くすることができる。この結果、この車両制御システム201は、着火始動ができない状況をより精度よく把握し、K0始動によってより確実にエンジン7を始動することができる。
【0083】
以上で説明した実施形態に係る車両制御システム201、ECU6は、エンジン7が停止してからの停止後経過時間と始動判定時間Tdとに基づいて、K0始動制御と着火始動制御とを切り替えると共にエンジン7の停止後の燃焼室71内の空気量に基づいて始動判定時間Tdを変更する。これにより、車両制御システム201、ECU6は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができる。この結果、車両制御システム201は、例えば、着火始動では始動に失敗するような状況を確実に特定し、K0始動でより確実にエンジン7を始動することができると共に、燃費性能を向上することができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0084】
なお、以上の説明では、ECU6は、エンジン7の停止前の吸気通路内圧、エンジン7の停止前のスロットル開度、あるいは、エンジン7の停止前のエンジン回転数等に基づいて、停止直後KL推定値を算出し、算出した停止直後KL推定値に基づいて始動判定時間Tdを設定するものとして説明したがこれに限らない。ECU6は、停止直後KL推定値を算出せずに、エンジン7の停止前の吸気通路内圧、エンジン7の停止前のスロットル開度、あるいは、エンジン7の停止前のエンジン回転数に基づいて、直接的に始動判定時間Tdを変更してもよい。
【0085】
この場合、ECU6は、エンジン7の停止前の吸気通路内圧が高いほど、始動判定時間Tdを相対的に短い時間に設定する。ECU6は、エンジン7の停止前のスロットル開度が大きいほど、始動判定時間Tdを相対的に短い時間に設定する。ECU6は、エンジン7の停止前のエンジン回転数が高いほど、始動判定時間Tdを相対的に短い時間に設定する。すなわち、ECU6は、燃焼室71内の空気量が相対的に多いと推定できる場合ほど、始動判定時間Tdを相対的に短い時間に設定する。この場合であっても、車両制御システム201、ECU6は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0086】
また、ECU6は、停止直後KL推定値から始動判定時間Tdを設定せずに、エンジン7の始動時の燃焼室71内の空気量に相当する推定KLに対して、始動判定時間Tdに対応した始動判定空気量を設定し、エンジン7の始動時の推定KLと始動判定空気量との関係に応じてK0始動制御と着火始動制御とを切り替えてもよい。すなわち、ECU6は、エンジン7の始動時の燃焼室71内の空気量に基づいてK0始動制御と着火始動制御とを切り替えてもよい。
【0087】
この場合、ECU6は、例えば、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1を用いて、エンジン7の停止要求発生時でのエンジン7の停止前の吸気通路内圧、スロットル開度、エンジン回転数から停止直後KL推定値を算出する。そして、ECU6は、算出した停止直後KL推定値と停止後経過時間とに基づいてエンジン7の始動時の推定KLを算出する。ECU6は、例えば、図6に例示する推定KLマップm3に基づいて、エンジン7の始動時の推定KLを算出する。推定KLマップm3は、横軸が停止後経過時間、縦軸が推定KLを示す。この推定KLマップm3は、停止直後KL推定値、停止後経過時間と推定KLとの関係を記述したものである。推定KLマップm3は、停止直後KL推定値、停止後経過時間と推定KLとの関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。この推定KLマップm3では、推定KLは、停止後経過時間の増加に伴って増加し、また、停止直後KL推定値が高いほど増加する。ECU6は、推定KLマップm3に基づいて、停止直後KL推定値と停止後経過時間とから、推定KLを算出する。
【0088】
そして、ECU6は、エンジン7を始動する際に、エンジン7の始動時(始動開始時)の燃焼室71内の空気量に相当する推定KLが始動判定空気量に応じた始動判定KL未満である場合にK0始動制御を実行し、推定KLが始動判定KL以上である場合に着火始動制御を実行する。この場合であっても、車両制御システム201、ECU6は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0089】
[実施形態3]
図7は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pd1マップの一例を表す線図、図8は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pk1マップの一例を表す線図、図9は、実施形態3に係る車両制御システムのK0圧Pk2マップの一例を表す線図、図10、図11は、実施形態3に係る車両制御システムの動作の一例を示すタイムチャートである。実施形態3に係る車両制御システム、制御装置は、燃焼室の空気量に基づいてクラッチの伝達トルクを変更する点で実施形態1、2とは異なる。なお、実施形態3に係る車両制御システムの各構成については、適宜、図1等を参照する。
【0090】
本実施形態の車両制御システム301(図1参照)は、ECU6がエンジン7の始動の際の燃焼室71内の空気量に基づいて、K0クラッチ9の伝達トルクを変更する。ECU6は、油圧制御装置28を制御して、K0クラッチ9に供給されるクラッチ油圧であるK0圧を調節し、スリップ状態にあるK0クラッチ9のトルク容量を調節することで、エンジン7の始動時におけるK0クラッチ9の伝達トルクを調節する。
【0091】
この場合、ECU6は、上述したように、エンジン7の停止前の吸気通路内圧、スロットル開度、エンジン回転数、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1、停止後経過時間、図6に例示する推定KLマップm3等に基づいて、エンジン7の始動時(始動開始時)の推定KLを算出し、これを燃焼室71内の空気量に相当する値として用いればよい。なお、ECU6は、これに限らず、後述する筒内圧センサ557(図13参照)に基づいて、燃焼室71内の空気量を推定するようにしてもよい。
【0092】
より詳細には、ECU6は、着火始動制御を実行する場合、エンジン7の始動の際、典型的には、エンジン7の始動時(始動開始時)の燃焼室71内の空気量が相対的に多い場合にK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくし、空気量が相対的に少ない場合にK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくする。
【0093】
この場合、ECU6は、エンジン7の始動時の推定KLを算出し、この推定KLに基づいて、着火始動制御の際にK0クラッチ9に供給されるクラッチ油圧であるK0圧Pd1を算出する。ECU6は、例えば、図7に例示するK0圧Pd1マップm4に基づいて、K0圧Pd1を算出する。K0圧Pd1マップm4は、横軸が推定KL、縦軸がK0圧Pd1を示す。このK0圧Pd1マップm4は、推定KLとK0圧Pd1との関係を記述したものである。K0圧Pd1マップm4は、推定KLとK0圧Pd1との関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。このK0圧Pd1マップm4では、K0圧Pd1は、推定KLの増加に伴って減少する。ECU6は、K0圧Pd1マップm4に基づいて、エンジン7の始動時の推定KLから、K0圧Pd1を算出する。
【0094】
そして、ECU6は、着火始動制御の際に、上記のようにして算出したK0圧Pd1に基づいて油圧制御装置28を制御し、K0クラッチ9にK0圧Pd1を供給し、K0クラッチ9の伝達トルクを調節する。
【0095】
したがって、ECU6は、着火始動の際に、燃焼室71内の空気量に応じてK0クラッチ9の伝達トルクを調節することで、燃焼エネルギによってクランク軸20の回転を開始した後に、この燃焼エネルギの大小に応じてK0クラッチ9を介してクランク軸20に伝達されるアシストトルクを調節することができる。
【0096】
すなわち、ECU6は、エンジン始動時の燃焼室71内の空気量が相対的に少なく着火始動の際の燃焼エネルギ、言い換えればエンジントルクが相対的に小さい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくしアシストトルクを相対的に大きくすることができ、確実にエンジン7を始動することができる。一方、ECU6は、エンジン始動時の燃焼室71内の空気量が相対的に多く着火始動の際の燃焼エネルギ、言い換えればエンジントルクが相対的に大きい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくしアシストトルクを相対的に小さくすることができ、電力消費を抑制し燃費性能を向上することができる。この結果、車両制御システム301は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0097】
また、ECU6は、K0始動制御を実行する場合、点火後のK0クラッチ9の伝達トルクを点火前のK0クラッチ9の伝達トルクよりも小さくする。そして、ECU6は、K0始動制御を実行する場合、エンジン7の始動の際の燃焼室71内の空気量が相対的に多い場合に点火前のK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくし、空気量が相対的に少ない場合に点火前のK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくする。また、ECU6は、K0始動制御を実行する場合、エンジン7の始動の際の燃焼室71内の空気量が相対的に多い場合に点火後のK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくし、空気量が相対的に少ない場合に点火後のK0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくする。
【0098】
この場合、ECU6は、エンジン7の始動時の推定KLを算出し、この推定KLに基づいて、K0始動制御の際にK0クラッチ9に供給されるクラッチ油圧であるK0圧Pk1、Pk2を算出する。ここで、K0圧Pk1は、点火前(初爆前)にK0クラッチ9に供給するクラッチ油圧であり、K0圧Pk2は、点火後(初爆後)にK0クラッチ9に供給するクラッチ油圧である。ECU6は、例えば、図8、図9に例示するK0圧Pk1マップm5、K0圧Pk2マップm6に基づいて、K0圧Pk1、Pk2を算出する。K0圧Pk1マップm5は、横軸が推定KL、縦軸がK0圧Pk1を示し、K0圧Pk2マップm6は、横軸が推定KL、縦軸がK0圧Pk2を示す。このK0圧Pk1マップm5、K0圧Pk2マップm6は、推定KLとK0圧Pk1との関係、推定KLとK0圧Pk2との関係を記述したものである。K0圧Pk1マップm5、K0圧Pk2マップm6は、推定KLとK0圧Pk1との関係、推定KLとK0圧Pk2との関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。K0圧Pk1マップm5では、K0圧Pk1は、推定KLの増加に伴って増加する。一方、K0圧Pk2マップm6では、K0圧Pk2は、K0圧Pk1よりも小さく、推定KLの増加に伴って減少する。ECU6は、K0圧Pk1マップm5、K0圧Pk2マップm6に基づいて、エンジン7の始動時の推定KLから、K0圧Pk1、K0圧Pk2を算出する。
【0099】
そして、ECU6は、K0始動制御の際に、点火プラグ77による点火の前に、上記のようにして算出したK0圧Pk1に基づいて油圧制御装置28を制御し、クラッチ油圧として、K0クラッチ9にK0圧Pk1を供給し、K0クラッチ9の伝達トルクを調節する。また、ECU6は、K0始動制御の際に、点火プラグ77による点火の後に、上記のようにして算出したK0圧Pk2に基づいて油圧制御装置28を制御し、クラッチ油圧として、K0クラッチ9にK0圧Pk2を供給し、K0クラッチ9の伝達トルクを調節する。
【0100】
したがって、ECU6は、K0始動の際に、点火前に燃焼室71内の空気量に応じてK0クラッチ9の伝達トルクを調節することで、エンジン始動時の筒内空気(燃焼室71内の空気)の圧縮に必要なトルクの大小に応じてK0クラッチ9を介してクランク軸20に伝達されるクランキングトルク(始動トルク)を調節することができる。
【0101】
すなわち、ECU6は、エンジン始動時の点火前に燃焼室71内の空気量が相対的に少なく、燃焼室71内の空気による空気バネ反力が相対的に小さい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくし、クランキングトルクを相対的に小さくすることができ、電力消費を抑制し燃費性能を向上することができる。一方、ECU6は、エンジン始動時の点火前に燃焼室71内の空気量が相対的に多く、燃焼室71内の空気による空気バネ反力が相対的に大きい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくし、クランキングトルクを相対的に大きくすることができ、確実にエンジン7を始動することができる。この点でも、車両制御システム301は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0102】
そして、ECU6は、K0始動の際に、点火後に燃焼室71内の空気量に応じてK0クラッチ9の伝達トルクを調節することで、モータジェネレータ10側からの動力によってクランク軸20の回転を開始し燃料に点火した後は、燃焼エネルギの大小に応じてK0クラッチ9を介してクランク軸20に伝達されるアシストトルクを調節することができる。
【0103】
すなわち、ECU6は、エンジン始動時の燃焼室71内の空気量が相対的に少なく点火後の燃焼エネルギ、言い換えればエンジントルクが相対的に小さい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に大きくしアシストトルクを相対的に大きくすることができ、確実にエンジン7の始動を完了することができる。一方、ECU6は、エンジン始動時の燃焼室71内の空気量が相対的に多く点火後の燃焼エネルギ、言い換えればエンジントルクが相対的に大きい場合には、K0クラッチ9の伝達トルクを相対的に小さくしアシストトルクを相対的に小さくすることができ、電力消費を抑制し燃費性能を向上することができる。この点でも、車両制御システム301は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0104】
次に、図10、図11のタイムチャートを参照して上記のように構成された車両制御システム301の動作の一例を説明する。図10、図11は、横軸を時間軸とし、縦軸を回転数、K0圧指示値としている。図10、図11中、実線L1はモータ回転数、実線L2はエンジン回転数、実線L3はK0圧指示値を表している。そして、図10は、着火始動制御が実行された場合を表しており、図11は、K0始動制御が実行された場合を表している。
【0105】
ECU6は、着火始動制御を実行する場合、図10に示すように、まず、油圧制御装置28を制御しプレチャージ圧Pqfを発生させた後、エンジン7を制御し燃焼室71に燃料を噴射し点火してクランク軸20を回転させてエンジン7の始動を開始する。この際、ECU6は、モータジェネレータ10を制御してモータ回転数をエンジン始動可能な回転数で保っておく。そして、ECU6は、燃焼によりクランク軸20が回転を開始した状態で、油圧制御装置28を制御しK0クラッチ9のK0圧を燃焼室71内の空気量に応じたK0圧Pd1に調圧しK0クラッチ9をスリップ状態とし、モータジェネレータ10側からの動力の一部によりクランク軸20の回転をアシストしてエンジン7を完全に始動する。その後、ECU6は、エンジン回転数が自律運転可能な回転数となりエンジン7が完全に始動しエンジン回転数とモータ回転数とがほぼ同期した際に、油圧制御装置28を制御しK0クラッチ9のK0圧を係合油圧Pstdyに調圧しK0クラッチ9を完全に係合した係合状態とする。
【0106】
一方、ECU6は、K0始動制御を実行する場合、図11に示すように、まず、油圧制御装置28を制御しプレチャージ圧Pqfを発生させた後、モータジェネレータ10、油圧制御装置28を制御し、モータ回転数をエンジン始動可能な回転数で保ちつつ、K0クラッチ9のK0圧を燃焼室71内の空気量に応じたK0圧Pk1に調圧しK0クラッチ9をスリップ状態とする。これにより、ECU6は、モータジェネレータ10側からの動力によりエンジン7のクランク軸20を回転させてエンジン7の始動を開始する。そして、ECU6は、エンジン回転数が所定回転数を超えたら、エンジン7、油圧制御装置28を制御し、燃焼室71に燃料を噴射し点火すると共に、K0クラッチ9のK0圧を燃焼室71内の空気量に応じたK0圧Pk2に減圧しK0クラッチ9の伝達トルクを低減した上で、クランク軸20の回転をアシストしてエンジン7を完全に始動する。その後、ECU6は、エンジン回転数が自律運転可能な回転数となりエンジン7が完全に始動しエンジン回転数とモータ回転数とがほぼ同期した際に、油圧制御装置28を制御しK0クラッチ9のK0圧を係合油圧Pstdyに調圧しK0クラッチ9を完全に係合した係合状態とする。
【0107】
以上で説明した実施形態に係る車両制御システム301、ECU6は、状況に応じてK0始動制御と着火始動制御とを使い分けた上で、K0クラッチ9の伝達トルクを適正な大きさに設定することができるので、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0108】
[実施形態4]
図12は、実施形態4に係る車両制御システムの始動判定時間マップの一例を表す線図である。実施形態4に係る車両制御システム、制御装置は、出力軸の停止位置に基づいて始動判定時間を変更する点で実施形態1、2、3とは異なる。なお、実施形態4に係る車両制御システムの各構成については、適宜、図1等を参照する。
【0109】
本実施形態の車両制御システム401(図1参照)は、制御装置としてのECU6が、エンジン7が停止した際のクランク軸20の停止位置に基づいて、始動判定時間を変更する。ECU6は、エンジン7が停止した際のクランク軸20の停止位置として、エンジン7が停止した際のクランク角度(以下、「停止時クランク角度」という場合がある。)を用いて、この停止時クランク角度に基づいて、始動判定時間を変更する。
【0110】
この車両制御システム401は、停止時クランク角度に応じてエンジン7が停止した際のピストン73の位置が異なるため燃焼室71自体の容積が異なることとなり、同等のKL値であっても生じる燃焼エネルギ、言い換えれば、エンジン始動トルクが異なることとなる。また、車両制御システム401は、停止時クランク角度ごとにエンジン始動時の筒内空気(燃焼室71内の空気)の圧縮に必要なトルクが異なることとなる。このため、車両制御システム401は、着火始動で始動可能な燃焼室71内の空気量、言い換えれば、KL値が停止時クランク角度に応じて異なることとなる。
【0111】
そこで、ECU6は、停止時クランク角度に基づいて、始動判定時間を変更することで、より確実なエンジン7の始動を実現している。
【0112】
ここでは、ECU6は、例えば、停止時クランク角度と停止直後KL推定値とに基づいて、始動判定時間Tdを算出する。この場合、ECU6は、まず、例えば、図4に例示する停止直後KL推定値マップm1を用いて、エンジン7の停止要求発生時でのエンジン7の停止前の吸気通路内圧、スロットル開度、エンジン回転数から停止直後KL推定値を算出する。そして、ECU6は、例えば、図12に例示する始動判定時間マップm7に基づいて、始動判定時間Tdを算出する。始動判定時間マップm7は、横軸が停止直後KL推定値、縦軸が始動判定時間Tdを示す。この始動判定時間マップm7は、停止直後KL推定値、停止時クランク角度と始動判定時間Tdとの関係を記述したものである。始動判定時間マップm7は、停止直後KL推定値、停止時クランク角度と始動判定時間Tdとの関係が、実車評価等を踏まえて予め設定された上で、ECU6の記憶部に格納されている。この始動判定時間マップm7では、始動判定時間Tdは、停止直後KL推定値の増加に伴って減少し、また、クランク角度が上死点0°、すなわち、燃焼室71の容積が最小である場合に最も長い時間になるように設定されている。また、始動判定時間Tdは、燃焼室71自体の容積や筒内空気の圧縮に必要なトルク等との関係に応じて、例えば、クランク角度が上死点0°から進むにつれて徐々に短くなり所定角度で最小となった後、再び徐々に長くなるように設定されている。ECU6は、始動判定時間マップm7に基づいて、停止直後KL推定値と停止時クランク角度とから、始動判定時間Tdを算出する。
【0113】
そして、ECU6は、算出した始動判定時間Tdに基づいてK0始動制御と着火始動制御とを切り替える。すなわち、ECU6は、エンジン7を始動する際に、停止後経過時間がここで算出された始動判定時間Td未満である場合にK0始動制御を実行し、停止後経過時間が始動判定時間Td以上である場合に着火始動制御を実行する。
【0114】
つまり、この車両制御システム401は、停止時クランク角度に基づいて、エンジン7の始動時の燃焼室71自体の容積や筒内空気の圧縮に必要なトルク等に応じた適切な始動判定時間Tdを設定することができる。この結果、この車両制御システム401は、着火始動ができない状況をより精度よく把握し、K0始動によってより確実にエンジン7を始動することができる。
【0115】
以上で説明した実施形態に係る車両制御システム401、ECU6は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0116】
なお、以上の説明では、ECU6は、停止時クランク角度と停止直後KL推定値とに基づいて、始動判定時間Tdを算出するものとして説明したがこれ限らない。ECU6は、停止直後KL推定値にかかわらず、単純に停止時クランク角度に応じて始動判定時間Tdを変更するようにしてもよい。この場合であっても、車両制御システム401、ECU6は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0117】
また、ECU6は、上記で説明したようにエンジン7の始動時の推定KL(始動時の燃焼室71内の空気量)と始動判定KL(始動判定空気量)との関係に応じてK0始動制御と着火始動制御とを切り替える場合、始動判定時間を変更する場合と同様に、停止時クランク角度に基づいて始動判定KL(始動判定空気量)を変更するようにしてもよい。この場合であっても、車両制御システム401、ECU6は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0118】
また、この車両制御システム401は、上記で説明したように、停止時クランク角度ごとにエンジン始動時の筒内空気(燃焼室71内の空気)の圧縮に必要なトルクが異なることとなるため、K0始動では始動に必要なトルクが異なることとなる。
【0119】
このため、ECU6は、停止時クランク角度に基づいて、エンジン始動時のK0クラッチ9での伝達トルクを変更するようにしてもよい。この場合、ECU6は、例えば、停止時クランク角度に基づいて、図8等で例示したK0圧Pk1マップm5を変更するようにしてもよい。この場合であっても、車両制御システム401、ECU6は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。また、ECU6は、停止時クランク角度に基づいて、図7で例示したK0圧Pd1マップm4、図9で例示したK0圧Pk2マップm6を変更するようにしてもよい。
【0120】
[実施形態5]
図13は、実施形態5に係る車両制御システムの概略構成図である。実施形態5に係る車両制御システム、制御装置は、状態検出装置が燃焼室内の圧力を検出する検出装置を備える点で実施形態1、2、3、4とは異なる。
【0121】
本実施形態の車両制御システム501は、図13に示すように、状態検出装置5が検出装置としての筒内圧センサ(CPS)557を備える。筒内圧センサ557は、燃焼室71内の圧力である筒内圧を検出する。
【0122】
ECU6は、燃焼室71内の空気量に影響を与える関連パラメータとして、この筒内圧センサ557が検出する筒内圧に基づいて、燃焼室71内の空気量を推定する。これにより、ECU6は、燃焼室71内の空気量をより正確に推定することができ、正確に推定した燃焼室71内の空気量を上記で説明した各種の制御に反映させることができる。
【0123】
またこの場合、ECU6は、筒内圧センサ557が検出するエンジン7の停止後の筒内圧に基づいて、始動判定時間Tdを変更してもよい。この場合、ECU6は、エンジン7の停止後の筒内圧が相対的に大きいほど、すなわち、燃焼室71内の空気量が相対的に多いと推定できる場合ほど始動判定時間Tdを相対的に短い時間に設定する。これにより、この車両制御システム501は、相対的に短い停止後経過時間でも着火始動制御を許可することができる。一方、ECU6は、エンジン7の停止後の筒内圧が相対的に小さいほど、すなわち、燃焼室71内の空気量が相対的に少ないと推定できる場合ほど始動判定時間Tdを相対的に長い時間に設定する。これにより、この車両制御システム501は、着火始動制御を許可するまでの停止後経過時間を相対的に長くすることができる。この結果、車両制御システム501は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0124】
また、ECU6は、エンジン7の停止後の筒内圧から始動判定時間Tdを設定せずに、筒内圧センサ557が検出するエンジン7の始動時の筒内圧に対して、始動判定時間Tdに対応した始動判定筒内圧を設定し、エンジン7の始動時の筒内圧と始動判定筒内圧との関係に応じてK0始動制御と着火始動制御とを切り替えてもよい。すなわち、ECU6は、エンジン7の始動時の燃焼室71内の圧力に基づいてK0始動制御と着火始動制御とを切り替えてもよい。
【0125】
この場合、ECU6は、エンジン7を始動する際に、エンジン7の始動時(始動開始時)の筒内圧が始動判定筒内圧未満である場合にK0始動制御を実行し、筒内圧が始動判定筒内圧以上である場合に着火始動制御を実行する。この場合であっても、車両制御システム501、ECU6は、状況に応じてより精度よくK0始動制御と着火始動制御とを使い分けることができ、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0126】
また、ECU6は、エンジン7の始動時の筒内圧と始動判定筒内圧との関係に応じてK0始動制御と着火始動制御とを切り替える場合、始動判定時間を変更する場合と同様に、停止時クランク角度に基づいて始動判定筒内圧を変更するようにしてもよい。この場合であっても、車両制御システム501、ECU6は、確実なエンジン始動と燃費性能向上とをより好適に両立することができる。
【0127】
なお、上述した本発明の実施形態に係る車両制御システム及び制御装置は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。本実施形態に係る車両制御システム及び制御装置は、以上で説明した各実施形態の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【0128】
以上で説明した車両制御システム1は、ダンパ機構8等を備えない構成であってもよい。
【0129】
以上で説明した車両制御システム1は、エンジン7自体にスタータを設けて、このスタータによってエンジン7のクランク軸20を回転(クランキング)し、エンジン7を始動させる第3始動制御(スタータ始動制御)を併用してもよい。
【符号の説明】
【0130】
1、201、301、401、501 車両制御システム
2 車両
3 駆動輪
4 駆動装置
5 状態検出装置
6 ECU(制御装置)
7 エンジン(内燃機関)
9 K0クラッチ(クラッチ)
10 モータジェネレータ(回転電機)
20 クランク軸(出力軸)
28 油圧制御装置
71 燃焼室
76 吸気通路
557 筒内圧センサ(検出装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関及び回転電機と、
前記内燃機関と前記回転電機とを連結可能であるクラッチと、
前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能である制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記内燃機関が停止してからの経過時間に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする、
車両制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記内燃機関を始動する際に、前記経過時間が始動判定時間未満である場合に前記第1始動制御を実行し、前記経過時間が始動判定時間以上である場合に前記第2始動制御を実行する、
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2始動制御を実行する場合、前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火した後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸の回転をアシストし、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくする、
請求項1又は請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記点火前の前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記点火前の前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくする、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを前記点火前の前記クラッチの伝達トルクよりも小さくする、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記内燃機関の停止後の燃焼室内の空気量に基づいて、前記始動判定時間を変更する、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記内燃機関の停止前の吸気通路内圧、スロットル開度、あるいは、前記出力軸の回転速度に基づいて、前記始動判定時間を変更する、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記内燃機関が停止した際の前記出力軸の停止位置に基づいて、前記始動判定時間を変更する、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記内燃機関が停止した際の前記出力軸の停止位置に基づいて、前記伝達トルクを変更する、
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項11】
前記内燃機関の燃焼室内の圧力を検出する検出装置を備え、
前記制御装置は、前記検出装置が検出する前記内燃機関の停止後の前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記始動判定時間を変更する、
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項12】
前記内燃機関の燃焼室内の圧力を検出する検出装置を備え、
前記制御装置は、前記検出装置が検出する前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記燃焼室内の空気量を推定する、
請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記内燃機関の吸気通路内圧、スロットル開度、あるいは、前記出力軸の回転速度に基づいて、前記燃焼室内の空気量を推定する、
請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項14】
車両の走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関及び回転電機と、
前記内燃機関と前記回転電機とを連結可能であるクラッチと、
前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能である制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記内燃機関の始動時の前記燃焼室内の空気量、あるいは、前記内燃機関の始動時の前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする、
車両制御システム。
【請求項15】
前記制御装置は、前記第2始動制御として、前記内燃機関の出力軸が回転しない程度に前記クラッチをスリップ状態とした後、前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記クラッチの伝達トルクを増大させて前記内燃機関を始動する、
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項16】
車両の駆動輪への動力の伝達経路に対して、走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関、クラッチ、走行用動力源である回転電機の順で配置される駆動装置を制御する制御装置であって、
前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能であり、
さらに、前記内燃機関が停止してからの経過時間に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする、
制御装置。
【請求項1】
車両の走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関及び回転電機と、
前記内燃機関と前記回転電機とを連結可能であるクラッチと、
前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能である制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記内燃機関が停止してからの経過時間に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする、
車両制御システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記内燃機関を始動する際に、前記経過時間が始動判定時間未満である場合に前記第1始動制御を実行し、前記経過時間が始動判定時間以上である場合に前記第2始動制御を実行する、
請求項1に記載の車両制御システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記第2始動制御を実行する場合、前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火した後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸の回転をアシストし、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくする、
請求項1又は請求項2に記載の車両制御システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記点火前の前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記点火前の前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくする、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記内燃機関の始動の際の燃焼室内の空気量が相対的に多い場合に前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを相対的に小さくし、前記空気量が相対的に少ない場合に前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを相対的に大きくする、
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記第1始動制御を実行する場合、前記点火後の前記クラッチの伝達トルクを前記点火前の前記クラッチの伝達トルクよりも小さくする、
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記内燃機関の停止後の燃焼室内の空気量に基づいて、前記始動判定時間を変更する、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記内燃機関の停止前の吸気通路内圧、スロットル開度、あるいは、前記出力軸の回転速度に基づいて、前記始動判定時間を変更する、
請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記内燃機関が停止した際の前記出力軸の停止位置に基づいて、前記始動判定時間を変更する、
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記内燃機関が停止した際の前記出力軸の停止位置に基づいて、前記伝達トルクを変更する、
請求項3乃至請求項6のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項11】
前記内燃機関の燃焼室内の圧力を検出する検出装置を備え、
前記制御装置は、前記検出装置が検出する前記内燃機関の停止後の前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記始動判定時間を変更する、
請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項12】
前記内燃機関の燃焼室内の圧力を検出する検出装置を備え、
前記制御装置は、前記検出装置が検出する前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記燃焼室内の空気量を推定する、
請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項13】
前記制御装置は、前記内燃機関の吸気通路内圧、スロットル開度、あるいは、前記出力軸の回転速度に基づいて、前記燃焼室内の空気量を推定する、
請求項3乃至請求項7のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項14】
車両の走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関及び回転電機と、
前記内燃機関と前記回転電機とを連結可能であるクラッチと、
前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能である制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記内燃機関の始動時の前記燃焼室内の空気量、あるいは、前記内燃機関の始動時の前記燃焼室内の圧力に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする、
車両制御システム。
【請求項15】
前記制御装置は、前記第2始動制御として、前記内燃機関の出力軸が回転しない程度に前記クラッチをスリップ状態とした後、前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記クラッチの伝達トルクを増大させて前記内燃機関を始動する、
請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の車両制御システム。
【請求項16】
車両の駆動輪への動力の伝達経路に対して、走行用動力源である筒内直接噴射式の内燃機関、クラッチ、走行用動力源である回転電機の順で配置される駆動装置を制御する制御装置であって、
前記内燃機関、前記回転電機、及び、前記クラッチを制御し、前記クラッチをスリップ状態とし前記回転電機側からの動力により前記内燃機関の出力軸を回転させた後に前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記内燃機関を始動する第1始動制御と、前記内燃機関の出力軸の回転が停止した状態で前記内燃機関の燃焼室に燃料を噴射して点火し前記出力軸を回転させた後に前記クラッチを介した前記回転電機側からの動力により前記出力軸の回転をアシストし前記内燃機関を始動する第2始動制御とを実行可能であり、
さらに、前記内燃機関が停止してからの経過時間に基づいて、前記第1始動制御と前記第2始動制御とを切り替えることを特徴とする、
制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−95154(P2013−95154A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236508(P2011−236508)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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