説明

車両制御装置

【課題】自動走行装置と自動制動装置とを備えた車両において、両装置の調和を図って車両の制御を適切に行うことを可能とする車両制御装置を提供する。
【解決手段】自動駐車装置と、車両後方に障害物を検出した場合に車両を自動制動する自動制動装置とを備える車両を制御する車両制御装置1である。この装置1では、車両後方に障害物を検出した場合(ステップS203)に、衝突までの余裕を示す衝突予測時間TTCを求め(ステップS205)、これが閾値以下である場合には、自動駐車装置の作動を中止する(ステップS206)。一方、衝突予測時間TTCが閾値よりも大きい場合は、自動駐車装置による走行出力を通常出力よりも低減させる(ステップS207)。このとき、障害物の種類に応じて、走行出力の低減のさせ方を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自動制動装置と自動走行装置とを備えた車両を制御する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両を自動制動する装置として、例えば特許文献1に開示されたものがある。この装置では、車両の後退操作時において、センサにより障害物を検知した場合に、その障害物との距離や速度に応じた制動力で、自動的にブレーキをかけて制動している。
【特許文献1】特開2004−351992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、車両を自動駐車させる自動駐車装置を備えた車両に上記の技術を適用する場合、例えば、車両後方に障害物が検知され自動でブレーキ力が働いても、これとは無関係に自動駐車装置が作動してしまい、車両の適切な制動が行えないおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、自動走行装置と自動制動装置とを備えた車両において、両装置の調和を図って車両の制御を適切に行うことを可能とする車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車両制御装置は、車両を自動走行させる自動走行装置と、障害物を検出した場合に車両を自動制動する自動制動装置とを備える車両を制御する車両制御装置において、前記障害物を検出した場合に、前記自動走行装置による走行出力を通常出力よりも低減させる走行出力設定手段を備えることを特徴とする。
【0006】
この装置では、障害物を検出した場合に、自動走行装置による走行出力を通常出力よりも低減させることができるため、自動制動装置による車両の制動が容易になる。このようにして、ユーザの使用性を損なうことなく安全性を保ち、両装置の調和が図られることで、車両の適切な制御を行うことが可能となる。
【0007】
前記自動走行装置は、前記車両を自動駐車させる自動駐車装置であることを特徴としてもよい。このようにすれば、自動駐車装置と車両制動装置との調和が図られ、駐車支援を適切に行うことができる。
【0008】
前記走行出力設定手段は、前記車両と障害物との距離が閾値よりも小さい場合に、走行出力をゼロとすることを特徴としてもよい。このようにすれば、障害物との衝突を未然に防止し、安全性を高めることができる。
【0009】
前記自動走行装置は、所定の走行出力に対して前記車両が一定時間動かない場合に、一時的に駆動力を上昇させる駆動力上昇手段を有し、前記走行出力設定手段は、前記障害物を検出した場合に、前記駆動力上昇手段による駆動力の上昇を禁止することを特徴としてもよい。このようにすれば、駆動力の一時的な上昇が禁止されるため、安全性をより高めて、車両のより適切な制御を行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、自動走行装置と自動制動装置とを備えた車両において、両装置の調和を図って車両の制御を適切に行うことを可能とする車両制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。この車両制御装置1は、車両を自動駐車させる自動駐車装置と、車両後方で障害物を検出した場合に車両を自動制動する自動制動装置とを備える車両を制御する装置である。図1に示すように、車両制御装置1は、車両制御電子制御ユニット(ECU)10を備えている。
【0013】
この車両制御ECU10の入力側には、ミリ波レーダ22、カメラ24、及び車輪速センサ26が接続されている。ミリ波レーダ22は、車両後部に搭載されており、車両後方の所定範囲内にある障害物を検出する。またカメラ24は、車両後部に設けられたステレオカメラであり、車両後方の所定範囲内にある障害物を検出する。このように、ミリ波レーダ22及びカメラ24の双方を利用することで、センシングの精度を上げている。車輪速センサ26は、車輪の回転に応じた車輪速パルスと車輪の回転方向情報とを出力する。
【0014】
また、この車両制御ECU10の出力側には、自動駐車装置(IPA : Intelligent Parking Assist)を構成する自動駐車ECU30、及び自動制動装置(PB : Precrash Brake)を構成する後方自動制動ECU40が接続されている。自動駐車ECU30は、ドライバの要求により、自動で車両を走行させて駐車を支援するために、図示しない操舵ECU及びエンジンECUを制御する。後方自動制動ECU40は、車両後方における障害物との衝突を回避するために、図示しないブレーキECUを制御する。
【0015】
車両制御ECU10は、後退検出部11、IPA判定部12、障害物検出部13、衝突余裕判定部14、及び走行出力設定部15を備えている。
【0016】
後退検出部11は、車輪速センサ26から出力される車輪の回転方向情報に基づいて、車両が後退しているか否かを検出する。IPA判定部12は、自動駐車ECU30からの情報に基づいて、自動駐車装置が作動セット中か否か判定する。
【0017】
障害物検出部13は、ミリ波レーダ22及びカメラ24からの情報に基づいて、車両後方の所定範囲内に存在する障害物を検出する。衝突余裕判定部14は、検出された障害物と車両との距離(すなわち、衝突予測時間(TTC : Time To Collision))に基づいて、衝突までの余裕を判定する。走行出力設定部15は、自動駐車ECU30に駆動力要求値を指示することで、自動駐車装置による車両の走行出力を所望に設定する。
【0018】
次に、上記した構成の車両制御装置1による車両制御の方法について、図2のフローチャートを参照して説明する。図2の処理は、例えばイグニッションオンで開始され、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0019】
まず、図2に示すように、車輪速センサ26から出力される車輪の回転方向情報に基づいて、後退検出部11において、車両が後退しているか否かを検出する(ステップS201)。そして、車両が後退していなければ処理を中止する。この場合は、自動駐車制御も後方自動制動制御も行われない。一方、車両が後退していればステップS202に進む。
【0020】
ステップS202では、自動駐車ECU30からの情報に基づいて、IPA判定部12において、自動駐車装置が作動セット中か否か判定する。そして、自動駐車装置が作動セット中でなければ処理を中止する。この場合は、後方自動制動ECU40により、通常の後方自動制動制御のみが行われる。一方、自動駐車装置が作動セット中であればステップS203に進む。
【0021】
ステップS203では、ミリ波レーダ22及びカメラ24からの情報に基づいて、障害物検出部13において、車両後方の所定範囲内に存在する障害物を検出する。そして、障害物が検出されなければステップS204に進む。ステップS204では、車両後方に障害物が存在しないため、走行出力設定部15は、通常時の走行出力で車両を走行させて自動駐車を行うように、自動駐車ECU30に通常の駆動力要求値を指示する。一方、障害物検出部13において障害物が検出されれば、ステップS205に進む。なお、図3においては、車両Vの後方において障害物Pが検出されるケースとして、ケースP−I,ケースP−II,ケースP−III,ケースP−IVの四つのケースを示している。図3において実線で囲まれた領域Sが、ミリ波レーダ及びカメラによる障害物の検出範囲である。また領域Sのうち、後方に角のように飛び出た四つの領域は、指向性を有するミリ波レーダのみによる障害物の検出範囲である。
【0022】
ステップS205では、衝突余裕判定部14において、検出された障害物Pと車両Vとの距離、すなわち、障害物Pと車両Vとの衝突予測時間TTCに基づいて、衝突までの余裕を判定する。そして、衝突までの余裕がない場合(ケースP−Iのような場合)、すなわち、衝突予測時間TTCが予め決められた閾値以下である場合には、ステップS206に進む。ステップS206では、衝突までの余裕がないため、走行出力設定部15は、自動駐車ECU30に駆動力要求値としてゼロ値を指示することで、自動駐車装置による車両の走行出力をゼロに設定し、自動駐車装置の作動を中止する。これにより、衝突が避けられない場合や、実際に衝突が起こった場合などに、自動駐車制御を中止することができ、安全性を高めることができる。なお、このように駆動力要求値としてゼロ値を指示することで、自動駐車装置による車両の走行出力をゼロに設定し、自動駐車装置の作動を中止することも、本発明における「走行出力を通常出力よりも低減させる」に含まれることは言うまでもない。一方、衝突余裕判定部14において、衝突までの余裕があると判定された場合(ケースP−IIやP−IIIやP−IVのような場合)、すなわち、衝突予測時間TTCが予め決められた閾値よりも大きい場合には、ステップS207に進む。
【0023】
ステップS207では、障害物Pと車両Vとの衝突まで余裕があるものの、衝突に備えるため、自動駐車装置による走行出力を通常出力よりも低減させる。このとき、障害物Pの種類に応じて、走行出力の低減のさせ方を変更する。
【0024】
具体的には、検出された障害物Pの形状が面や線等から構成されている場合は、壁や倉庫など動かないものと推定し、走行出力の下げ代を最低限のものとする。例えば、通常出力が10kmである場合に、走行出力を8kmとする。なお、障害物Pが車両推定後退経路上に無い場合(例えば、ケースP−IIIのような場合)は、走行出力を下げることなく通常の走行出力を維持してもよい。一方、障害物Pが車両推定後退経路上に有るか無いか明確でない場合(例えば、ケースP−IVのような場合)は、最低限の下げ代で走行出力を下げておく。また、検出された障害物Pの形状が曲線等から構成されている場合は、障害物Pが動く可能性があるため、走行出力の下げ代を通常のものとする。例えば、最低限の下げ代としたときの走行出力が8kmである場合に、走行出力を6kmとする。また、検出された障害物Pが人間の形状(5〜8頭身等)から構成されている場合は、障害物Pが動く可能性が高く、且つ危険度が高いと判断し、走行出力の下げ代を最大のものとする。例えば、通常の下げ代としたときの走行出力が6kmである場合に、走行出力を4kmとする。なお、この場合は走行出力の下げ代を最大のものとする代わりに、自動駐車ECU30に駆動力要求値としてゼロ値を指示することで、自動駐車装置による車両の走行出力をゼロに設定し、自動駐車装置の作動を中止してもよい。
【0025】
このように、本実施形態にかかる車両制御装置1では、障害物を検出した場合に、自動駐車ECU30により自動駐車装置による走行出力を通常出力よりも低減させることができるため、後方自動制動ECU40を介した自動制動装置による車両の制動が容易になる。このようにして、ユーザの使用性を損なうことなく安全性を保ち、両装置の調和が図られることで、駐車支援を適切に行うことが可能となる。
【0026】
また、走行出力設定部15は、車両Vと障害物Pとの距離、すなわち衝突予測時間TTCが閾値よりも小さい場合に、走行出力をゼロとするため、障害物との衝突を未然に防止し、安全性を高めることができる。
【0027】
また、走行出力設定部15は、検出された障害物の種類に応じて自動駐車装置の走行出力の低減のさせ方を変更するため、ユーザの使用性と安全性を考慮して、駐車支援をより適切に行うことが可能となる。
【0028】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0029】
例えば、自動駐車装置は、所定の走行出力に対して車両が一定時間動かない場合に、一時的に駆動力を上昇させる駆動力上昇手段を有してもよい。この場合、自動駐車ECU30が、一時的に駆動力を上昇させる駆動力上昇部(駆動力上昇手段)を有するように構成することができる。そして、走行出力設定部15は、障害物を検出した場合に、駆動力上昇手段による駆動力の上昇を禁止すると好ましい。図4に示すように、かるい坂路勾配や段差を上らせるため、要求駆動力に基づく走行出力に対して、車両Vが一定時間動かない場合に、駆動力上昇手段により一時的に駆動力を上昇させるクリープアップ制御が行われる場合がある。この場合であっても、障害物を検出した場合には、駆動力上昇手段による駆動力の一時的な上昇が禁止されるため、安全性をより高めて、車両のより適切な制御を行うことが可能となる。
【0030】
また、上記した実施形態では、自動走行装置としての自動駐車装置と後方自動制動装置との調和を図る場合について説明したが、自動走行装置は自動駐車装置に限られず、また自動制動装置も後方自動制動装置に限られない。
【0031】
また、上記した実施形態では、車両制御ECU10と後方自動制御ECU40と自動駐車ECU30とは、それぞれ別個のECUとしてハード的に区分されている場合について説明したが、これらはハード的に一つ或いは二つに統合されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。
【図2】実施形態における車両制御の方法を示すフローチャートである。
【図3】自動駐車の軌跡と車両後方における障害物の検出について説明するための図である。
【図4】クリープアップ制御について説明するための図である。
【符号の説明】
【0033】
1…車両制御装置、10…走行制御ECU、11…後退検出部、12…IPA判定部、13…障害物検出部、14…衝突余裕判定部、15…走行出力設定部(走行出力設定手段)、22…ミリ波レーダ、24…カメラ、26…車輪速センサ、30…自動駐車ECU(自動走行装置)、40…後方自動制動ECU(自動制動装置)、V…車両、P…障害物。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を自動走行させる自動走行装置と、障害物を検出した場合に車両を自動制動する自動制動装置とを備える車両を制御する車両制御装置において、
前記障害物を検出した場合に、前記自動走行装置による走行出力を通常出力より低減させる走行出力設定手段を備えることを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記自動走行装置は、前記車両を自動駐車させる自動駐車装置であることを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記走行出力設定手段は、前記車両と障害物との距離が閾値よりも小さい場合に、走行出力をゼロとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記自動走行装置は、所定の走行出力に対して前記車両が一定時間動かない場合に、一時的に駆動力を上昇させる駆動力上昇手段を有し、
前記走行出力設定手段は、前記障害物を検出した場合に、前記駆動力上昇手段による駆動力の上昇を禁止することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−143337(P2008−143337A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332343(P2006−332343)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】