説明

車両制御装置

【課題】力行可能な電動機を備えた車両において、燃費を向上できる車両制御装置を提供すること。
【解決手段】エンジンと、予め定められた所定領域R1内の動作点で動作することができる電動機と、エンジンおよび電動機と車両の駆動輪とを接続する変速機と、を備え、変速機を所定の変速比に変速させる所定変速制御を実行可能であり、所定の変速比は、車両に要求される要求出力に対応する電動機の動作点を所定領域内の動作点P1とする変速比、あるいは要求出力に対応する電動機の動作点を所定領域の近傍の動作点P11とする変速比である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、力行可能な電動機を備えた車両が公知である。特許文献1には、力行機能と回生機能とを兼備しているモータ・ジェネレータを備え、回生制御を実行する場合に、変速機の変速比を大きくするダウンシフト制御を実行するダウンシフト手段を備えているハイブリッド車の制御装置の技術が開示されている。特許文献1のハイブリッド車両の制御装置によれば、車両の減速時における回生機構の回生効率を向上させることが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−050866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
力行可能な電動機を備えた車両において、燃費を向上できることが望まれている。例えば、エンジンと電動機とを備えたハイブリッド車両において、エンジンの出力によらずに電動機の出力によって車両を走行させることができる走行状態を積極的に作り出すことによって、燃費の向上を実現できることが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、力行可能な電動機を備えた車両において、燃費を向上できる車両制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両制御装置は、エンジンと、予め定められた所定領域内の動作点で動作することができる電動機と、前記エンジンおよび前記電動機と車両の駆動輪とを接続する変速機と、を備え、前記変速機を所定の変速比に変速させる所定変速制御を実行可能であり、前記所定の変速比は、前記車両に要求される要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域内の動作点とする変速比、あるいは前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域の近傍の動作点とする変速比であることを特徴とする。
【0007】
上記車両制御装置において、前記エンジンの出力によらずに前記電動機の出力によって前記車両を走行させることができる車速である予め定められた所定車速と、前記車両の現在の車速とに基づいて、前記所定変速制御を行うか否かを決定することが好ましい。
【0008】
上記車両制御装置において、前記所定変速制御に加えて、前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域内の動作点とすること、あるいは前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域の近傍の動作点とすることのいずれかを実現するように前記車両の補機の負荷トルクを低減させることが好ましい。
【0009】
本発明の車両制御装置は、エンジンと、予め定められた所定領域内の動作点で動作することができる電動機と、前記エンジンおよび前記電動機と車両の駆動輪とを接続する変速機に対する所定の変速比への変速操作を前記車両の運転者に促す情報提供手段と、を備え、前記所定の変速比は、前記車両に要求される要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域内の動作点とする変速比、あるいは前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域の近傍の動作点とする変速比であることを特徴とする。
【0010】
上記車両制御装置において、前記エンジンの出力によらずに前記電動機の出力によって前記車両を走行させることができる車速である予め定められた所定車速と、前記車両の現在の車速とに基づいて、前記情報提供手段によって前記所定の変速比への変速操作を前記運転者に促すか否かを決定することが好ましい。
【0011】
上記車両制御装置において、前記所定の変速比への変速操作を前記運転者に促すことに加えて、前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域内の動作点とすること、あるいは前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域の近傍の動作点とすることのいずれかを実現するように前記車両の補機の負荷トルクを低減させることが好ましい。
【0012】
本発明の車両制御装置は、エンジンと、電動機と、前記エンジンおよび前記電動機と車両の駆動輪とを接続する変速機と、を備え、前記変速機の変速比が所定の変速比であり、かつ前記車両が所定車速で定常走行する場合に、前記エンジンの出力によらずに前記電動機の出力で前記車両を走行させることが可能であり、前記車両の現在の車速と前記所定車速との差分の大きさが所定値未満である場合、前記変速機を前記所定の変速比に変速させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる車両制御装置は、エンジンと、予め定められた所定領域内の動作点で動作することができる電動機と、エンジンおよび電動機と車両の駆動輪とを接続する変速機と、を備え、変速機を所定の変速比に変速させる所定変速制御を実行可能である。所定の変速比は、車両に要求される要求出力に対応する電動機の動作点を所定領域内の動作点とする変速比、あるいは要求出力に対応する電動機の動作点を所定領域の近傍の動作点とする変速比である。本発明にかかる車両制御装置によれば、エンジンの出力によらずに電動機の出力によって車両を走行させる機会を増加させ、燃費の向上を実現できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、第1実施形態の車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図2】図2は、第1実施形態にかかるハイブリッド車両の概略構成図である。
【図3】図3は、実施形態の制御を説明する図である。
【図4】図4は、所定領域の説明図である。
【図5】図5は、実施形態の変速制御の説明図である。
【図6】図6は、第1実施形態の変形例にかかるハイブリッド車両の概略構成図である。
【図7】図7は、シフトインジケータの一例を示す図である。
【図8】図8は、第2実施形態の車両制御装置の動作を示すフローチャートである。
【図9】図9は、実施形態の補機制御の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態にかかる車両制御装置につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0016】
(第1実施形態)
図1から図5を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、車両制御装置に関する。図1は、第1実施形態の車両制御装置の動作を示すフローチャート、図2は、第1実施形態にかかるハイブリッド車両の概略構成図である。
【0017】
本実施形態のハイブリッド車両100のハイブリッドシステムは、極小出力のモータジェネレータを用いた小規模なシステムである。小規模なハイブリッドシステムでは、EV走行を実行可能な運転領域が極めて限定されるため、限定された条件下でいかに確実にEV走行を行うかが重要な課題となる。
【0018】
本実施形態の車両制御装置1−1は、車両が定常走行状態であり、かつ車速が設計時に想定されたEV車速条件に近い場合、設計時に想定したEV走行可能なレンジに自動で変速を行う。これにより、実際の車速が想定した車速となった場合、すぐにEV走行を開始することができる。よって、本実施形態の車両制御装置1−1によれば、設計時に想定した燃費効果を発揮させることが可能となる。
【0019】
図2に示すように、ハイブリッド車両100は、エンジン1、トランスミッション(T/M)2、クラッチ3、モータジェネレータ(M/G)4、バッテリー5およびECU30を備えている。また、本実施形態の車両制御装置1−1は、エンジン1、T/M2、M/G4およびECU30を備える。
【0020】
エンジン1は、ハイブリッド車両100の動力源である。エンジン1は、燃料の燃焼エネルギーを回転軸の回転運動に変換して出力する。エンジン1の回転軸であるクランクシャフト1aは、クラッチ3を介してT/M2の入力軸2aと接続されている。
【0021】
T/M2は、エンジン1およびM/G4とハイブリッド車両100の駆動輪7とを接続する変速機である。T/M2は、例えば、自動変速機であり、エンジン1やM/G4から入力軸2aに入力される動力を変速して出力軸2bに出力する。本実施形態のT/M2は、有段の自動変速機であり、それぞれ変速比の異なる複数のギア段に変速可能である。T/M2は、例えば、油圧を駆動源とするアクチュエータを有しており、アクチュエータによって任意のギア段に変速することができる。T/M2の出力軸2bは、図示しない差動機構等を介して駆動輪7と接続されている。
【0022】
クランクシャフト1aには、空調装置(A/C)のコンプレッサ8が配置されている。コンプレッサ8は、クランクシャフト1aを介して伝達される動力によって駆動されて冷媒を圧縮する圧縮機である。コンプレッサ8は、運転状態を切替え可能である。コンプレッサ8は、例えば、クラッチを介してクランクシャフト1aと接続されており、運転状態あるいは休止状態に切替え可能である。クラッチが係合状態とされると、コンプレッサ8はクランクシャフト1aに対して係合され、クランクシャフト1aから伝達される動力によって駆動される運転状態となる。運転状態では、コンプレッサ8がクランクシャフト1aに対する負荷となり、コンプレッサ8の作動によってクランクシャフト1aには負荷トルクが作用する。
【0023】
クラッチが開放状態とされると、コンプレッサ8はクランクシャフト1aから切り離された休止状態となる。休止状態では、コンプレッサ8とクランクシャフト1aとの動力の伝達が遮断されていることから、コンプレッサ8はクランクシャフト1aに対する負荷としては作用しない。
【0024】
M/G(電動機)4は、電力の供給により駆動する電動機としての機能(力行機能)と、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する発電機としての機能(回生機能)とを兼ね備えている。M/G4としては、例えば、交流同期型のモータジェネレータを用いることができる。M/G4は、バッテリー5と接続されている。バッテリー5は、電力を蓄えること、および蓄えた電力を放電することが可能な蓄電装置である。バッテリー5は、例えば、鉛蓄電池とすることができる。
【0025】
M/G4は、オルタネータに代えて搭載された小型のモータジェネレータである。M/G4の回転軸4aと、エンジン1のクランクシャフト1aとは、ベルト9を介して動力を伝達することができる。つまり、M/G4は、クランクシャフト1aからベルト9を介して伝達される動力によって発電すること、および電力を消費して出力する動力をベルト9を介してクランクシャフト1aに対して出力することが可能である。M/G4において発電された電力は、バッテリー5に充電可能である。
【0026】
M/G4は、エンジン1の動力によって走行するときにエンジン1の動力によって駆動されて発電し、バッテリー5を充電することができる。また、M/G4は、ハイブリッド車両100の減速時に回生発電を行い、バッテリー5を充電することができる。また、M/G4は、ハイブリッド車両100の停止時等にクラッチ3を開放状態としてエンジン1の動力によって駆動されて発電し、バッテリー5を充電することも可能である。
【0027】
M/G4は、力行時にはバッテリー5から供給される電力によって駆動されてクランクシャフト1aに対して動力を出力することができる。
【0028】
エンジン1には、スタータ6が設けられている。スタータ6は、電力を消費してエンジン1を始動させる始動装置である。スタータ6は、エンジン1のクランクシャフト1aに対して動力を伝達可能なモータ(例えば、DCモータ)を有しており、電力を消費してこのモータを回転させることによりエンジン1を始動させる。スタータ6は、バッテリー5およびM/G4と接続されており、バッテリー5およびM/G4から電力の供給を受けることができる。
【0029】
クラッチ3は、エンジン1およびM/G4とT/M2との動力の伝達を接続あるいは遮断する。クラッチ3は、例えば、摩擦係合式のクラッチ装置である。クラッチ3は、図示しないアクチュエータを有しており、アクチュエータによって係合状態と開放状態とに切替え可能である。
【0030】
ECU30は、コンピュータを有する電子制御ユニットである。ECU30は、ハイブリッド車両100の走行制御を行う走行制御装置としての機能を有している。ECU30には、エンジン1、T/M2、クラッチ3、M/G4、スタータ6およびコンプレッサ8が接続されている。エンジン1、T/M2、クラッチ3、M/G4、スタータ6およびコンプレッサ8は、それぞれECU30によって制御される。また、ECU30には、車速を検出する車速センサ、アクセル開度を検出するアクセル開度センサ、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ等が接続されており、それぞれのセンサの検出結果を示す信号がECU30に出力される。
【0031】
ECU30は、エンジン1、M/G4の少なくともいずれか一方が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させることができる。例えば、ECU30は、少なくともエンジン1の動力によってハイブリッド車両100を走行させるエンジン走行を実行することができる。ECU30は、エンジン1やM/G4が出力する動力を駆動輪7に出力する場合、クラッチ3を係合状態とする。
【0032】
エンジン走行において、ECU30は、更に、M/G4が出力する動力を駆動輪7に伝達してハイブリッド車両100を走行させることができる。ECU30は、例えば、ハイブリッド車両100の加速時等にエンジン1のトルクが不足する場合に、M/G4にエンジン1をアシストさせることができる。
【0033】
また、M/G4は、エンジン1の動力によらずに単独でハイブリッド車両100を走行させることが可能である。ECU30は、エンジン1の動力によらずにM/G4が出力する動力によってハイブリッド車両100を走行させるEV走行を実行することができる。ECU30は、エンジン走行およびEV走行において、シフトポジションや走行状態に応じてT/M2の変速比を制御することができる。ECU30は、T/M2の変速を行う場合、変速前のギア段から変速後のギア段にギア段を切替える間、クラッチ3を開放状態とし、ギア段の切替えが完了すると、クラッチ3を係合状態とする。
【0034】
また、ECU30は、ハイブリッド車両100の減速時に回生制御を行うことができる。回生制御は、例えば、ハイブリッド車両100において制動要求が検出されている場合になされる。ECU30は、回生制御を行う場合、M/G4に回生発電を行わせ、バッテリー5を充電する。
【0035】
ECU30は、車速およびアクセル開度などの条件に基づいて、駆動輪7に伝達するべき要求トルクあるいは要求駆動力を算出し、その算出結果に基づいて、エンジン1、T/M2およびM/G4を制御する。要求トルクや要求駆動力は、ハイブリッド車両100の走行負荷に対応する。ECU30は、例えば、要求トルクと車速とに基づいてハイブリッド車両100に要求される要求出力である要求パワーを算出する。ECU30は、この要求パワーをエンジン1およびM/G4の出力によって実現するようにエンジン1、T/M2およびM/G4を制御する。
【0036】
ECU30は、軽負荷でトルクの小さな領域においてEV走行によってハイブリッド車両100を走行させることができる。図3は、本実施形態の制御を説明する図である。図3において、横軸は時間、縦軸は車速を示す。符号Xは、設計時に予め定められたEV走行を実行可能な所定車速である。本実施形態では、設計時に想定したEV走行を実行可能な所定車速を単に「想定車速X」とも記載する。想定車速Xは、一定の幅を有する車速域であってもよい。
【0037】
本実施形態では、低速定常走行時に想定車速XでEV走行を実行する機会を増やすことを狙いとして変速制御を行う。EV走行では、エンジン1に対する燃料噴射を停止し、M/G4の力によって力行する。このとき、エンジン1はM/G4に連れ回される状態であり、燃料消費量はゼロである。
【0038】
ハイブリッドシステムにおいて高い燃費効果を望む場合、電力(減速回生によって回収したエネルギ)を用いて、EV走行することが望ましい。ここで、EV走行可能な運転領域は、M/G4の出力特性等によって異なる。
【0039】
図4は、M/G4が動作可能な所定領域の説明図である。図4において、横軸はM/G4の回転数、縦軸はM/G4の出力トルクを示す。本実施形態では、M/G4の回転数を単に「MG回転数」とも記載し、M/G4の出力トルクを単に「MGトルク」とも記載する。符号Tmaxは、限界出力トルク線を示す。限界出力トルク線Tmaxは、MG回転数と、M/G4が出力可能な最大トルクとの対応関係を示すものである。
【0040】
M/G4は、限界出力トルク線Tmax上や限界出力トルク線Tmaxよりも原点側の領域の動作点で作動可能である。本実施形態において、動作点とは、MG回転数とMGトルクとの組合せで定まる点を示す。本実施形態では、限界出力トルク線Tmax上および限界出力トルク線Tmaxよりも原点側の領域を合わせて「所定領域R1」と記載する。所定領域R1は、M/G4が力行可能な動作点の領域である。一方、M/G4は、限界出力トルク線Tmaxよりも原点側と反対側の領域の動作点では動作することができない。ECU30は、所定領域R1外の動作点でM/G4が動作することを禁止する。
【0041】
従って、ハイブリッド車両100に対する要求パワーに対応する動作点が、所定領域R1にあれば、MGトルクのみでハイブリッド車両100を走行させるEV走行が可能である。一方、要求パワーに対応する動作点が、所定領域R1にない場合、エンジン1にトルクを出力させることなくM/G4が単独で要求パワーを実現することはできないことになる。本実施形態のハイブリッド車両100は、T/M2の変速段(変速比)が所定の変速段(所定の変速比)であり、かつハイブリッド車両100が想定車速Xで定常走行する場合に、要求パワーに対応する動作点が所定領域R1内の動作点となり、EV走行が可能である。
【0042】
本実施形態のM/G4は、小出力(例えば、3〜5kW程度)のモータジェネレータである。こうした小出力のモータジェネレータを用いたハイブリッドシステムでは、EV走行可能な運転領域(回転数・トルク条件)が大きく限定される。例えば、EV走行可能な運転領域は、低車速(10〜20[km/h]程度)の定常走行時に限定される。つまり、MG回転数が比較的低く、かつ軽負荷で要求トルクが小さい走行状態に限り、EV走行が可能である。従って、EV走行可能な場面は、時間的に非常に短く、かつ停車に至る直前など場所も限られている。その限定された条件下で、いかに確実にEV走行を行うか、いかにしてEV走行可能な条件を整えるか、が燃費向上のための重要な課題である。
【0043】
本実施形態の車両制御装置1−1は、ハイブリッド車両100の現在の車速情報をもとに、定常走行状態であるか、設計時に想定されたEV車速条件に近いか、を判定する。そして、定常走行状態であり、かつEV車速条件に近い場合、T/M2において設計時に想定したレンジに自動的に移動させる。
【0044】
M/G4は、T/M2を介して駆動輪7に接続されていることから、MG回転数は、車速とT/M2の変速比とに基づいて決まる。つまり、同じ要求パワーに対して、T/M2の変速比が異なれば、要求パワーに対応する動作点は異なるものとなる。従って、図5を参照して説明するように、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の動作点とするようにT/M2の変速制御を行えば、EV走行可能な機会を増やして燃費の向上を図ることができる。
【0045】
図5は、本実施形態の変速制御の説明図である。図5において、横軸は、T/M2の各ギア段に対応するMG回転数を示し、縦軸はMGトルクを示す。符号P1およびP2は、それぞれ同じ要求パワーに対応する異なるギア段での動作点を示す。P1は、T/M2の1速ギア段における要求パワーに対応する動作点であり、P2は、T/M2の2速ギア段における要求パワーに対応する動作点である。
【0046】
2速ギア段では、MG回転数は2500[rpm]であり、EV走行を実行しようとする場合、すなわちM/G4の出力のみで要求パワーを実現しようとする場合に要求されるMGトルクは8[Nm]である。要求されるMGトルクは限界出力トルク線Tmaxよりも高トルクであり、動作点P2は所定領域R1外の点である。このため、2速ギア段ではEV走行を実行することができない。
【0047】
1速ギア段では、MG回転数は5000[rpm]であり、EV走行を実行しようとする場合に要求されるMGトルクは4[Nm]である。要求されるMGトルクは限界出力トルク線Tmaxに対応するトルクであり、動作点P1は所定領域R1内の点である。従って、1速ギア段ではEV走行を実行可能である。例えば、現在のギア段が2速ギア段である場合、現在のギア段のままではEV走行は不可能であるが、1速ギア段にダウンシフトすればEV走行が可能となる。
【0048】
このようにT/M2によって変速することでEV走行が可能となる場合、ECU30は、EV走行可能となるギア段に変速し、EV走行を実行する。つまり、T/M2において選択可能ないずれかの変速比が、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の動作点とすることができる場合、ECU30はその変速比を目標変速比として変速制御を行う。これにより、EV走行を実行する期間の増加による燃費の向上を実現することができる。
【0049】
また、T/M2において選択可能な変速比では要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の動作点にできない場合であっても、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の動作点とすることができれば、その後の走行状態の変化によりEV走行可能となることが期待できる。例えば、変速後の変速比における要求パワーに対応する動作点が、変速前の変速比における要求パワーに対応する動作点よりも所定領域R1に近づくようにすれば、EV走行を実行できる可能性を高めることができる。変速制御によって要求パワーに対応する動作点を所定領域R1に近い動作点に移行させておけば、車速の変化や要求パワーの変化によって動作点が所定領域R1の点に移行することが期待できる。
【0050】
例えば、現在の車速が(想定車速X+α)であるとして、この車速(X+α)では、2速ギア段から1速ギア段にダウンシフトしたとしても変速後の要求パワーに対応する動作点P11が所定領域R1内の点とはならない場合がある。しかしながら、その動作点P11は所定領域R1の近傍の動作点であり、車速が想定車速Xに変化して要求パワーに対応する動作点がP1に移行すれば、EV走行が可能となる。このような場合、車速(X+α)の時点で前もって1速ギア段にダウンシフトをすることによって、想定車速Xとなった場合、すぐにM/G4の運転範囲に入り、EV走行が可能となる。よって、設計時に想定した燃費効果を発揮することが可能となり、燃費の向上を実現することができる。なお、所定領域R1の近傍の動作点は、所定領域R1よりも高回転側の動作点、あるいは所定領域R1よりも高トルク側の動作点の少なくともいずれか一方とすることができる。
【0051】
このようにT/M2によって変速することで要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の動作点とすることができる場合、ECU30は、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の動作点とするギア段に変速し、変速後にEV走行可能となればEV走行を実行する。つまり、T/M2において選択可能ないずれかの変速比が、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の動作点とすることができる場合、ECU30はその変速比を目標変速比として変速制御を行う。
【0052】
このように、ECU30は、T/M2を所定の変速比に変速させる所定変速制御を実行可能である。この所定の変速比は、要求パワーに対応するM/G4の動作点を所定領域R1内の動作点とする変速比、あるいは要求パワーに対応するM/G4の動作点を所定領域R1の近傍の動作点とする変速比である。所定の変速比が同一(例えば、1速ギア段の変速比)であっても、ハイブリッド車両100の走行状態に応じて「要求パワーに対応するM/G4の動作点を所定領域R1内の動作点とする変速比」となる場合もあり、「要求パワーに対応するM/G4の動作点を所定領域R1の近傍の動作点とする変速比」となる場合もある。
【0053】
本実施形態では、ECU30は、現在の車速と想定車速Xとの乖離が小さい場合、設計時の想定レンジ(所定の変速比)に自動で変速を行う。例えば、1速ギア段に変速することでEV走行を即座に開始可能となる場合や、1速ギア段への変速後の車速等の変化によりEV走行を開始可能となることが期待できる場合、1速ギア段に自動でダウンシフトを行う。図1を参照して、本実施形態の車両制御装置1−1の動作について説明する。図1に示す制御フローは、ハイブリッド車両100の走行中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0054】
ステップS1では、ECU30により、定常走行を継続した時間が所定時間A[s]よりも大であるか否かが判定される。ステップS1では、車速や要求パワー、要求トルクの変化が少ない定常走行状態であるか否かが判定される。ECU30は、ハイブリッド車両100の現在の走行速度情報、および過去数秒の時系列の車速データに基づいてステップS1の判定を行う。ECU30は、所定のサンプリング間隔で車速データを取得しており、過去数秒のデータを時系列データとして記憶している。ECU30は、この時系列データと、現在の車速データとに基づいて、現在までの所定時間A[s]の間に大きな車速の変化がない場合にステップS1で肯定判定を行うことができる。
【0055】
ステップS1の判定の結果、定常走行を継続した時間が所定時間A[s]よりも大であると判定された場合(ステップS1−Y)にはステップS2に進み、そうでない場合(ステップS1−N)にはステップS4に進む。
【0056】
ステップS2では、ECU30により、現在車速と想定車速Xとの車速差の大きさ(絶対値)が10[km/h]未満であるか否かが判定される。ECU30は、想定車速Xに対して現在車速が±10[km/h]未満である場合、EV走行の実行を狙いとした所定変速制御を実行する。なお、想定車速Xが車速域として定められている場合、車速差は、想定車速Xの下限に対する現在車速の乖離量、あるいは想定車速Xの上限に対する現在車速の乖離量を示す。例えば、現在車速が想定車速Xの車速域の上限よりも高速である場合、現在車速と当該車速域の上限との差分が車速差となる。一方、現在車速が想定車速Xの車速域の下限よりも低速である場合、現在車速と当該車速域の下限との差分が車速差となる。
【0057】
なお、車速差の閾値(所定値)は、10[km/h]には限定されない。車速域の閾値は、適合実験等に基づいて適宜定めることができる。ステップS2の判定の結果、現在車速と想定車速Xとの車速差の大きさが10[km/h]未満であると判定された場合(ステップS2−Y)にはステップS3に進み、そうでない場合(ステップS2−N)にはステップS4に進む。
【0058】
ステップS3では、ECU30により、設計想定レンジへの変速が自動的に行われる。ECU30は、T/M2の変速比を「要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の点とするギア段(変速比)」や「要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の点とするギア段(変速比)」に変更する。ECU30は、例えば、想定車速XとEV走行可能なギア段(設計想定レンジ)との組合せを予め記憶しており、この組合せに基づいて変速制御を行う。ステップS3で変速が実行されると、本制御フローは終了する。
【0059】
ステップS4では、ECU30により、制御なしと決定される。定常走行状態でない場合や、想定車速Xとの車速差が大きい場合、EV走行可能な状態とはなりにくい。ECU30は、EV走行可能とするための所定変速制御を行うことなく、本制御フローを終了する。
【0060】
本実施形態の車両制御装置1−1は、EV走行可能とできる変速比が存在する場合、その変速比に自動で変速する。また、車両制御装置1−1は、EV走行可能とできる変速比が存在しない場合、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の動作点とする変速比に自動で変速する。これにより、本実施形態の車両制御装置1−1によれば、設計時に想定したEV走行の機会を最大限取りこぼさないようにし、実環境下における燃費効果を最大限向上させることができる。
【0061】
なお、本実施形態の車両制御装置1−1は、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の動作点とする変速制御、および要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の動作点とする変速制御の両方を実行したが、これらのいずれか一方の変速制御のみ行うようにしてもよい。例えば、所定変速制御の目標変速比である所定の変速比は、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の点とする変速比に限定されてもよい。これは、例えば、現在車速が想定車速Xと等しい場合に限り所定変速制御を実行することに相当する。
【0062】
また、所定の変速比は、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の点とする変速比に限定されてもよい。これは、例えば、現在車速と想定車速Xとの車速差の大きさが0よりも大きくかつ車速差の閾値未満である場合に所定変速制御を実行することに相当する。
【0063】
なお、上記ステップS2では、現在車速と想定車速Xとの車速差の大きさに基づいて設計想定レンジへの変速を行うか否かが決定されたが、更に、過去の車速の推移に基づいて設計想定レンジへの変速を行うか否かが決定されてもよい。例えば、現在までの車速の推移が、想定車速Xに近づくように変化している場合は設計想定レンジへの変速を行い、現在までの車速の推移が、想定車速Xから離れるように変化している場合は設計想定レンジへの変速を行わないようにしてもよい。
【0064】
ステップS2における車速差の閾値は、可変とされてもよい。一例として、車速差の閾値は、バッテリー5の充電量に応じて変化するものであってもよい。例えば、バッテリー5の充電量が多い場合、充電量が少ない場合よりも閾値が大きな値とされてもよい。また、車速差の閾値は、学習制御に基づいて定められてもよい。例えば、運転者の走行パターンを学習して最適な燃費を実現するように車速差の閾値を定めるようにしてもよい。
【0065】
本実施形態のM/G4は、極めて小出力のものであったが、M/G4は、このような小出力のものには限定されない。つまり、本実施形態の車両制御装置1−1は、M/G4の出力の大きさを問わずに適用可能である。また、M/G4とエンジン1やT/M2との接続の形態は図示したものには限定されない。例えば、本実施形態ではEV走行においてエンジン1がM/G4によって連れ回されるが、これに代えて、EV走行においてエンジン1がM/G4から切り離されるようにしてもよい。一例として、エンジン1とT/M2との間にM/G4が配置され、かつエンジン1とM/G4との間にクラッチを配置して、EV走行ではこのクラッチを開放することでエンジン1がM/G4および駆動輪7から切り離されるようにすることができる。
【0066】
なお、本実施形態では、T/M2が有段の自動変速機であったが、これに限定されるものではなく、T/M2は、エンジン1やM/G4から入力される回転を変速して駆動輪7に対して出力できるものであればよい。例えば、T/M2は、無段変速機等であってもよい。
【0067】
(第1実施形態の変形例)
本変形例において、上記第1実施形態と異なる点は、T/M2が手動変速機(M/T)である点である。本変形例では、EV走行可能なギア段が現在のギア段と異なる場合、EV走行可能なギア段への変速を運転者に促す。図6は、本変形例にかかるハイブリッド車両の概略構成図、図7は、シフトインジケータの一例を示す図である。
【0068】
図6に示すハイブリッド車両110において、T/M2は、手動変速機である。T/M2は、運転者によって図示しないシフトレバーが操作されることによってギア段の切替えが手動でなされる。また、クラッチ3は、運転者のクラッチ操作によって開放状態と係合状態との切替えがなされる。なお、クラッチ3は、手動操作が可能であることに加えて、上記第1実施形態と同様にアクチュエータを備え、ECU30によって制御可能なものであってもよい。
【0069】
ハイブリッド車両110は、シフトインジケータ40を備える。シフトインジケータ40は、現在のシフト位置および推奨するシフト操作を表示するインジケータである。シフトインジケータ40は、既存のインジケータを用いてその機能を流用するようにしてもよい。シフトインジケータ40は、T/M2に対する所定の変速比への変速操作を運転者に促す情報提供手段としての機能を有する。本変形例の車両制御装置1−2は、上記第1実施形態の構成要素に加えて、シフトインジケータ40を備える。シフトインジケータ40は、ECU30と接続されており、ECU30によって制御される。ECU30は、図示しないシフトポジションセンサの信号に基づいて、現在のシフト位置を取得することができる。
【0070】
図7に示すように、シフトインジケータ40は、シフト位置表示部41、アップシフトガイドランプ42およびダウンシフトガイドランプ43を有する。シフト位置表示部41には、現在のシフト位置が表示される。アップシフトガイドランプ42は、現在のシフト位置からのアップシフトが推奨されることを点灯(点滅でもよい)することによって示すものである。ECU30は、現在のシフト位置からアップシフトすることによって即座にEV走行が可能となる場合や、現在のシフト位置からアップシフトすることによって、要求パワーに対応する動作点が所定領域R1の近傍の動作点となる場合、アップシフトガイドランプ42を点灯させる。この場合、アップシフト先のギア段の変速比は、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の動作点とする変速比、あるいは要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の動作点とする変速比である。
【0071】
ダウンシフトガイドランプ43は、現在のシフト位置からのダウンシフトが推奨されることを点灯(点滅でもよい)することによって示すものである。ECU30は、現在のシフト位置からダウンシフトすることによって即座にEV走行が可能となる場合や、現在のシフト位置からダウンシフトすることによって、要求パワーに対応する動作点が所定領域R1の近傍の動作点となる場合、ダウンシフトガイドランプ43を点灯させる。この場合、ダウンシフト先のギア段の変速比は、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の動作点とする変速比、あるいは要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の動作点とする変速比である。
【0072】
本変形例の車両制御装置1−2の動作について説明する。ECU30は、上記第1実施形態(図1参照)と同様に、定常走行状態であり(S1−Y)、かつ現在車速と想定車速Xとの車速差の大きさが10[km/h]未満である(S2−Y)場合、シフトインジケータ40によって運転者に変速を要求する。つまり、ECU30は、現在車速と想定車速Xとに基づいてシフトインジケータ40によって変速操作を促すか否かを決定する。
【0073】
ECU30は、アップシフトガイドランプ42を点灯させることで運転者に対してアップシフトを要求し、ダウンシフトガイドランプ43を点灯させることで運転者に対してダウンシフトを要求することができる。ECU30によるシフト要求に応じて運転者によってアップシフトやダウンシフトがなされることで、EV走行が可能な変速比やEV走行可能となることが期待できる変速比でハイブリッド車両110を走行させることができる。
【0074】
なお、アップシフトやダウンシフトを運転者に促す手段は、シフトインジケータ40には限定されない。例えば、音声によって運転者に対してシフト操作を促すようにしてもよい。すなわち、視覚や聴覚等によって認識可能な方法によって、運転者に対してシフト操作を促すことができるものであればよい。
【0075】
(第2実施形態)
図8および図9を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記実施形態で説明したものと同様の機能を有する構成要素には同一の符号を付して重複する説明は省略する。図8は、本実施形態の車両制御装置1−2の動作を示すフローチャートである。
【0076】
本実施形態において、上記第1実施形態と異なる点は、補機の負荷を調節することにより、EV走行を可能とする点である。具体的には、空調装置のコンプレッサ8をOFFすることにより要求パワーを低減させてEV走行を可能とする。
【0077】
図9は、本実施形態の補機制御の説明図である。図9において、横軸はMG回転数、縦軸はMGトルクを示す。エンジン1およびM/G4を含むパワートレーンに対する要求パワーは、補機の負荷トルクも考慮して定められるものであるため、補機の負荷トルクを低減することによって要求パワーを低減させることが可能である。
【0078】
図9において、符号P3は、コンプレッサ8がONであるときの要求パワーに対応する動作点であり、P4は、コンプレッサ8をOFFとしたときの要求パワーに対応する動作点である。コンプレッサ8がONであるときの要求パワーに対応する動作点P3は、所定領域R1外の点であり、そのままではEV走行を実行できない。一方、コンプレッサ8をOFFとすると、クランクシャフト1aに作用するコンプレッサ8による負荷トルク分だけ要求トルクが低減する。これにより、EV走行に必要なトルク(負荷に打勝つために必要なMG出力トルク)が減少する。コンプレッサ8をOFFとした場合、例えば、要求パワーに対応する動作点P4は限界出力トルク線Tmax上の点となり、M/G4は、EV走行に必要なトルクを出力可能となる。よって、EV走行を想定した車速となった場合、すぐにM/G4の運転範囲に入り、EV走行が可能となる。
【0079】
ECU30は、空調負荷分のトルクを低減することで要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の点とできる場合、コンプレッサ8を停止する。ECU30は、コンプレッサ8とクランクシャフト1aとを接続するクラッチを開放することで、クランクシャフト1aとコンプレッサ8との動力の伝達を遮断する。これにより、要求パワーに対応する動作点はP4で示す点に移行し、EV走行が可能となる。
【0080】
また、コンプレッサ8をOFFとすることでは要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の動作点にできない場合であっても、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1の近傍の動作点とすることができれば、その後の走行状態の変化によりEV走行可能となることが期待できる。
【0081】
例えば、現在の車速が(想定車速X+α)であるとして、この車速(X+α)では、コンプレッサ8をOFFしたとしても要求パワーに対応する動作点が所定領域R1内の点とはならない場合がある。しかしながら、コンプレッサ8をOFFしたときの動作点P41は所定領域R1の近傍の動作点であり、車速が想定車速Xに変化して要求パワーに対応する動作点がP4に移行すれば、EV走行が可能となる。このような場合、車速(X+α)の時点で前もってコンプレッサ8をOFFすることによって、想定車速Xとなった場合、すぐにM/G4の運転範囲に入り、EV走行が可能となる。よって、設計時に想定した燃費効果を発揮することが可能となり、燃費の向上を実現することができる。
【0082】
図8を参照して、本実施形態の動作について説明する。図8に示す制御フローは、ハイブリッド車両100の走行中に所定の間隔で繰り返し実行される。
【0083】
ステップS11では、ECU30により、定常走行を継続した時間が所定時間A[s]よりも大であるか否かが判定される。その判定の結果、肯定判定がなされた場合(ステップS11−Y)にはステップS12に進み、そうでない場合(ステップS11−N)にはステップS14に進む。
【0084】
ステップS12では、ECU30により、現在車速と想定車速Xとの車速差の大きさが10[km/h]未満であるか否かが判定される。その判定の結果、肯定判定がなされた場合(ステップS12−Y)にはステップS13に進み、そうでない場合(ステップS12−N)にはステップS14に進む。
【0085】
ステップS13では、ECU30により、自動的にコンプレッサ8の駆動がOFFされる。なお、空調装置がマニュアル式である場合、ECU30により自動でコンプレッサ8をOFFすることに代えて、インジケータ等によって運転者に対して空調をOFFするように促すようにしてもよい。ステップS13が実行されると、本制御フローは終了する。
【0086】
ステップS14では、ECU30により、制御なしと決定される。ECU30は、EV走行可能とするためのコンプレッサ8に対する制御を行うことなく、本制御フローを終了する。
【0087】
本実施形態によれば、コンプレッサ8の負荷トルクを調節することにより、EV走行が可能とされる。よって、設計時に想定したEV走行の機会を可能な限り取りこぼさないようにし、燃費効果を最大限向上させることができる。
【0088】
なお、コンプレッサ8の負荷トルクを低減する場合に、コンプレッサ8の駆動をOFFすることに代えて、コンプレッサ8の負荷を低減するようにしてもよい。例えば、コンプレッサ8として可変容量のコンプレッサを用いた場合、容量を調節することによってコンプレッサ8の負荷を低減することが可能である。
【0089】
要求トルクを低減する制御は、コンプレッサ8の負荷トルクを調節することには限定されない。コンプレッサ8以外の補機のトルクを調節することにより、要求トルクをEV走行可能なトルクまで低減させるようにしてもよい。
【0090】
また、補機の負荷トルクを調節する制御は、上記第1実施形態の変速制御と組み合わせて実行されてもよい。例えば、所定変速制御のみでは要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の動作点とすることができない場合に、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の動作点や所定領域R1の近傍の動作点に移行させるように補機の負荷トルクを低減するようにしてもよい。
【0091】
また、補機の負荷トルクを調節する制御は、上記第1実施形態の変形例と組み合わせて実行されてもよい。例えば、シフトインジケータ40によって所定の変速比への変速操作を運転者に促すことに加えて、要求パワーに対応する動作点を所定領域R1内の動作点や所定領域R1の近傍の動作点に移行させるように補機の負荷トルクを低減するようにしてもよい。
【0092】
上記の各実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
以上のように、本発明にかかる車両制御装置は、力行可能な電動機を備えた車両において、燃費を向上するのに適している。
【符号の説明】
【0094】
1−1,1−2 車両制御装置
1 エンジン
2 T/M(変速機)
4 M/G(電動機)
7 駆動輪
8 コンプレッサ
30 ECU
40 シフトインジケータ
100,110 ハイブリッド車両
R1 所定領域
Tmax 限界出力トルク線
X 想定車速(所定車速)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
予め定められた所定領域内の動作点で動作することができる電動機と、
前記エンジンおよび前記電動機と車両の駆動輪とを接続する変速機と、
を備え、
前記変速機を所定の変速比に変速させる所定変速制御を実行可能であり、
前記所定の変速比は、前記車両に要求される要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域内の動作点とする変速比、あるいは前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域の近傍の動作点とする変速比である
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記エンジンの出力によらずに前記電動機の出力によって前記車両を走行させることができる車速である予め定められた所定車速と、前記車両の現在の車速とに基づいて、前記所定変速制御を行うか否かを決定する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記所定変速制御に加えて、前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域内の動作点とすること、あるいは前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域の近傍の動作点とすることのいずれかを実現するように前記車両の補機の負荷トルクを低減させる
請求項1または2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
エンジンと、
予め定められた所定領域内の動作点で動作することができる電動機と、
前記エンジンおよび前記電動機と車両の駆動輪とを接続する変速機に対する所定の変速比への変速操作を前記車両の運転者に促す情報提供手段と、
を備え、
前記所定の変速比は、前記車両に要求される要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域内の動作点とする変速比、あるいは前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域の近傍の動作点とする変速比である
ことを特徴とする車両制御装置。
【請求項5】
前記エンジンの出力によらずに前記電動機の出力によって前記車両を走行させることができる車速である予め定められた所定車速と、前記車両の現在の車速とに基づいて、前記情報提供手段によって前記所定の変速比への変速操作を前記運転者に促すか否かを決定する
請求項4に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記所定の変速比への変速操作を前記運転者に促すことに加えて、前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域内の動作点とすること、あるいは前記要求出力に対応する前記電動機の動作点を前記所定領域の近傍の動作点とすることのいずれかを実現するように前記車両の補機の負荷トルクを低減させる
請求項4または5に記載の車両制御装置。
【請求項7】
エンジンと、
電動機と、
前記エンジンおよび前記電動機と車両の駆動輪とを接続する変速機と、
を備え、
前記変速機の変速比が所定の変速比であり、かつ前記車両が所定車速で定常走行する場合に、前記エンジンの出力によらずに前記電動機の出力で前記車両を走行させることが可能であり、
前記車両の現在の車速と前記所定車速との差分の大きさが所定値未満である場合、前記変速機を前記所定の変速比に変速させる
ことを特徴とする車両制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−116319(P2012−116319A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267514(P2010−267514)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】