説明

車両室内構造

【課題】 ドア開口部の後方の座席への乗降性、および、前記後方の座席に着座した乗員の車両室内での居住性を向上するとともに、ドア開閉動作の自動化に関与する機構の設置空間の確保を可能ならしめる車両室内構造を提供する。
【解決手段】 車両側部の乗降用開口部(20)を開閉するためのドア(12)を備えるとともに、前記開口部の室内側に乗降用のステップ(5)を備え、前記ステップが車両室内のフロア(4)より低位置であるような車両の室内構造において、ステップ(5)の車両前後方向における後方側に、フロア(4)と略等しい高さの拡張フロア部(6)が設けられている。また、折畳み可能な座席(2)の後側脚部(24)が車両幅方向室外側に張出して設けられ、拡張フロア部(6)上に載置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側部にドアを備え、前記ドアの開口部の室内側に沿って延在する乗降用のステップを備えた車両の室内構造に関し、さらに詳しくは、車両前後方向におけるドア開口部の範囲に位置した座席と、その後方に位置した座席とを備えた車両の室内構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両前後方向に位置した複数列の座席を備えたワゴンタイプの車両においては、ドア開口部を広く確保できるスライドドアを備え、また、比較的高いフロアへの乗降の便を考慮して、ドア開口部に乗降用のステップを備えている場合が多い。このようなステップは、フロア面に対して低位置に設けられているため、乗員が足を載せたり、フロアの一部として利用したりすることはできなかった。
【0003】
そこで、特許文献1には、スライドドアの開閉に応じて、ステップ上を覆う格納式のカバープレートを備え、ドアを開いた時にはカバープレートが格納されて乗降用のステップとして使用でき、ドアを閉めた時にはカバープレートがステップ上に展開され、フラットな床面を構成する技術が開示されている。しかし、このような格納式のカバープレートは、格納機構が複雑となるうえ、機構部を塵埃や泥水から保護するシール構造、乗員の乗降に耐えうる構造的強度が必要であるため、非常にコストが掛かることが予想される。また、カバープレートの格納にスペースを取られてしまうため、電動式のスライドドア仕様とする場合に、駆動ユニットなどを配置するスペースを確保することが困難となる。
【0004】
一方、図14に示すように、ステップ141は、ドア開口部140の後端まで設けられているため、ドア開口部140よりさらに後方に配置された座席(3列シートにおける3列目)へ乗降する際には、一番狭く乗込みにくい箇所においてステップ141を踏んでフロア142に上がらなければならず、しかも、ステップ141の後方寄りはドア開口部140の後縁部の陰に隠れて目標が見えにくいので、乗込み時に不安定な姿勢となる虞があった。さらに、ドア開口部140の最下部には、スライドドアを支持するドアヒンジ143(ロワアーム)の軌道が設けられ、該ドアヒンジ143はスライドドアの前端側に張出して設けられているため、乗降時に踏まれ易いという問題もあった。
【0005】
また、車両の前後長は規格により定められているため、小型の車両では、限られた室内前後長の中で複数列の座席の前後間の距離を充分に確保するのは難しい。特に、図1に示す、車両前後方向に3列のシート1,2,3を配置したワゴンタイプの車両では、最前列シート1の下方のフロア下にエンジンが配置されるので、2列目シート2の乗員の足を最前列シート1の下に入れることができない。このため、最前列シート1と2列目シート2の間にある程度距離を置き、フロア面上に2列目シート2の乗員の足を置くスペースを確保しなければならず、その分、2列目シート2と3列目シート3との距離が狭くなるので、2列目シート2の下方に3列目シート3の乗員の足を置くレイアウトが必須である。
【0006】
しかしながら、従来の2列目シート2の下方後側には、後側の脚部24や、フロア4に設けたストライカーに係合するロック機構(図示せず)などが配置され、3列目シート3の乗員が足を入れるスペースを充分に確保するのが困難であった。さらに、3列目シート3の乗員を3人掛けとする場合は、3人分の足が2列目シート2の下方に置かれることとなり、スペースの確保が一層困難であった。
【0007】
【特許文献1】実開昭57−88674号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような実状に鑑みてなされたものであって、その目的は、ドア開口部の室内側に乗降用のステップを備えるとともに、ドア開口部の範囲に位置した座席と、その後方に位置した座席とを備えた車両の室内構造において、ドア開口部の後方の座席への乗降性、および、前記後方の座席に着座した乗員の車両室内での居住性を向上するとともに、ドア開閉動作の自動化に関与する機構の設置空間の確保を可能ならしめる車両室内構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来技術の有する課題を解決するため、本発明は、車両側部の乗降用開口部にドアを備えるとともに、前記開口部の室内側に乗降用のステップを備え、前記ステップが前記車両室内のフロアより低位置であるような車両の室内構造において、前記ステップの車両前後方向における後方側に、前記フロアと略等しい高さの拡張フロア部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明の好適な態様において、前記拡張フロア部は、車幅方向に対して前記フロア側に部分的に設けられ、前記拡張フロア部の車両室外側には空間が形成されている。また、前記拡張フロア部の表面には、前記ステップの表面と同一または類似の滑り止め用凹凸パターンが形成されている。さらに、前記拡張フロア部は、車体と別体のフロア拡張用構造部材と、その外表面を被覆する表面部材とで構成されている。また、前記フロア拡張用構造部材は、サイドシルの上部に配置されたステップパネルと、車体を構成するフレームの上部に配置されたフロアパネルとに跨って固定され、その内部には空間が形成されている。さらに、前記拡張フロア部の前記表面部材が、前記ステップパネル表面まで被覆している。
【0011】
本発明の好適な態様において、前記車両室内には、車両前後方向に複数の座席が設けられ、このうち車両前後方向における前記ドア開口部の範囲に配置された座席は、前側および後側に脚部を備え、前記前側脚部を中心に前方に回動して起立状態に折畳み可能であるとともに、前記後側脚部が車両幅方向室外側に張出して設けられ、着座可能にした状態で、前記後側脚部が、前記拡張フロア部上に載置されるように構成されている。また、前記拡張フロア部の前記後側脚部が載置される箇所には、前記表面部材に透孔を設け、前記透孔内で前記後側脚部が前記フロア拡張用構造部材の上に載置されるように構成されている。さらに、前記フロアに敷設されているカーペット材が、前記拡張フロア部の範囲まで拡張され、かつ、前記表面部材と前記フロア拡張用構造部材との間に敷き込まれ、前記透孔部分において前記フロア拡張用構造部材の上面が前記カーペット材で覆われ、前記カーペット材の上に前記後側脚部が載置されるように構成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、車両側部の乗降用開口部にドアを備えるとともに、前記開口部の室内側に乗降用のステップを備え、前記ステップが前記車両室内のフロアより低位置であるような車両の室内構造において、前記ステップの車両前後方向における後方側に、前記フロアと略等しい高さの拡張フロア部が設けられているので、乗員がドア開口部より後方の座席に乗降する際に、ドア開口部の範囲でステップ面から拡張フロア部に容易に上がることができるとともに、ドア開口部後端縁の狭い箇所を通過する際には、拡張フロア部から略等しい高さのフロアに容易に移動でき、乗降時に安定した姿勢を保持することが可能である。また、ドア開口部の下部後端に位置したドアヒンジに、拡張フロア部が隣接して配置され、乗員の足は拡張フロア部上に誘導されるので、乗降時などにドアヒンジが踏まれるのを防止可能である。
【0013】
前記拡張フロア部は、車幅方向に対して前記フロア側に部分的に設けられ、前記拡張フロア部の車両室外側には空間が形成されている態様では、前記空間を利用してスライドドアの閉時における機構部品の収納が可能である。また、前記拡張フロア部の表面には、前記ステップの表面と同一または類似の滑り止め用凹凸パターンが形成されている態様では、拡張フロア部に載せた足の滑りを防止できるとともに、前記拡張フロア部が踏み面であることを視覚的にアピールでき、乗員の移動を円滑に誘導することができる。
【0014】
前記拡張フロア部は、車体と別体のフロア拡張用構造部材と、その外表面を被覆する表面部材とで構成されているので、フロア拡張用構造部材により拡張フロア部上面からの荷重を受ける剛性を確保でき、表面部材には加工が容易な樹脂材を用い、滑り止め用凹凸パターンを容易に形成できる。また、フロア拡張用構造部材を固定する以前に当該箇所にシーラー塗布を行うことができ、塗布作業を容易かつ確実に行える。
【0015】
前記フロア拡張用構造部材は、サイドシルの上部に配置されたステップパネルと、車体を構成するフレームの上部に配置されたフロアパネルとに跨って固定され、その内部には空間が形成されているので、拡張フロア部上面からの荷重を剛性の高い車体構成部材に分散させ、強固な拡張フロア部を構成できる。また、フロア拡張用構造部材の内部空間に、電動式スライドドアの駆動ユニット等を収納することが可能であり、該収納位置はドアヒンジに近接し好都合である。
【0016】
前記拡張フロア部の前記表面部材が、前記ステップパネル表面まで被覆している態様においては、ステップから拡張フロア部にかけての表面が共通の部材で覆われ外観が良好であるとともに、塵埃や雨水に対してのシール性も良好である。
【0017】
前記車両室内には、車両前後方向に複数の座席が設けられ、このうち車両前後方向における前記ドア開口部の範囲に配置された座席は、前側および後側に脚部を備え、前記前側脚部を中心に前方に回動して起立状態に折畳み可能であるとともに、前記後側脚部が車両幅方向室外側に張出して設けられ、着座可能にした状態で、前記後側脚部が、前記拡張フロア部上に載置されるように構成されている態様においては、前記座席の下方の空間が車幅方向に拡張され、該座席の後方の座席に着座した乗員の足を置くスペースを広く確保できる。
【0018】
また、前記拡張フロア部の前記後側脚部が載置される箇所には、前記表面部材に透孔を設け、前記透孔内で前記後側脚部が前記フロア拡張用構造部材の上に載置されるように構成されている態様においては、拡張フロア部の表面部材を樹脂等の成型品で構成しても、該表面部材に座席脚部が直接載置された場合に生じる割れや損傷を回避でき、表面部材の補強などのコスト増を伴うことなく、強度的にも製造コスト的にも良好な拡張フロア部を構成できる。
【0019】
さらに、前記フロアに敷設されているカーペット材が、前記拡張フロア部の範囲まで拡張され、かつ、前記表面部材と前記フロア拡張用構造部材との間に敷き込まれ、前記透孔部分において前記フロア拡張用構造部材の上面が前記カーペット材で覆われ、前記カーペット材の上に前記後側脚部が載置されるように構成されている態様においては、既存の部品を利用してフロア拡張用構造部材の保護が行え、別途傷付き防止材等を貼付することなくフロア拡張用構造部材の塗装の剥離を防止することができる。また、カーペット材の端部を押さえる面積を大きくすることができるため、カーペットの浮きやめくれを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、本発明を適用するのに好適なワゴンタイプの車両を例に図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係わる室内構造の実施に適した車両を示す側面図である。図において、車両室内には、車両最前部の運転席を含む最前列シート1、その後方に配置した2列目シート2、さらにその後方に配置した3列目シート3を備え、車両側部には車両前方側から順に、最前列シート1への乗降口(開口部)を開閉するフロントドア11、2列目シート2および3列目シート3への乗降口(開口部20)を開閉するリヤドア12が配置されている。
【0021】
リヤドア12は、図2に示すように、車体側面に沿って後方に開くスライドドアであり、リヤドア12を後方へスライドさせることにより、車両側部に開口部20を出現させることができる。リヤドア12の開口部20の範囲には2列目シート2が配置されているため、乗員が開口部20から3列目シート3に乗り込む場合、または3列目シート3から開口部20を通じて車外に出る場合は2列目シート2を折り畳む必要がある。
【0022】
図3(a)〜(c)は、2列目シート2の折畳み手順を示すものであり、先ず、2列目シート2のシートバック21を前方に倒してシートクッション22の上に重ねた後、前側の脚部23のヒンジ機構23aを中心にシートクッション22の後方を引き上げて起立させれば、脚部23にロッド25で連結されている後方の脚部24がシートクッション22の裏面に沿うように折り畳まれ、乗員が乗降するためのスペースが確保される。
【0023】
開口部20の下部には車両室内のフロア4より一段下げて階段状としたステップ5が設けられ、このステップ5は、リヤドア12を閉じた際にはリヤドア12の室内側に配置される所謂内蔵ステップである。ステップ5は、図2あるいは拡大図である図4に示すように、ステップ面をドア開口幅全面とせず、ステップ5の車両前後方向における後方側には、フロア4と略等しい高さの拡張フロア部6が設けられている。
【0024】
拡張フロア部6は、図4〜図6に示すように、ステップ5の奥行きに対してフロア4寄りに部分的に設け、拡張フロア部6の車両室外側に空間120を設定することにより、リヤドア12が閉じた状態におけるスライドドア機構(パワースライドドア常時給電用ハーネス等)をレイアウトすることが可能となる。しかし、この空間120が過大であれば拡張フロア部6がステップとして機能しなくなるため、拡張フロア部6をステップ5の奥行きの1/2以上とする一方、空間120の底部はステップ5に連なる平面とはせずに、側面に連続する曲面または斜面とし、乗降時に乗員が足を載せられないようにし、拡張フロア部6部分がフロア4に連なる乗降面であることを容易に認識させ、乗員が足を載せるように誘導することができる。
【0025】
また、拡張フロア部6の表面には、図4、図11に示すように、滑り止めパターン64を追加し、乗員が足を載せた際における滑りを防止するとともに、この滑り止めパターン64が、乗降面であることを表現し、視覚的に乗降動作を誘導することが可能となる。さらに、この滑り止めパターン64を、ステップ5の滑り止めパターン54と同一または類似の凹凸パターンとすることにより、連続した乗降面であることを一層明確に表現することができ、好ましい。
【0026】
以上のように構成された拡張フロア部6により広い踏み面が確保され、しかも、拡張フロア部6は開口部20の外部から見えやすく乗降時の目標になりやすいため、乗員が3列目シートに乗り込む際には、車両側部前方から車両中央後部へ、サイドステップ5、拡張フロア部6、フロア4の順に容易に移動することができる。従って、最も狭い開口部の後縁部を通る前(乗車時)、または通ってしまった後(降車時)に、ステップ5への昇降動作を行うことができ、安定した姿勢での乗降が可能となる。
【0027】
なお、図5に示すようにステップ5の後端は、開状態のリヤドア12の前端付近に位置し、2列目シート2の範囲をカバーしているので、2列目シート2への乗降に必要なステップ面も損なわれることが無く、かつ、3列目シート3に乗降する際も、ステップ5と拡張フロア部6の2段階に足を運ぶことができる。
【0028】
さらに、拡張フロア部6が、リヤドア12の開状態で車両前後方向のドアヒンジ121およびそれに連なるロワアーム122が位置する箇所の近くに設けられ、かつ、空間120の範囲を曲面または斜面として足を載せにくくしたことにより、ドアヒンジ121より高い位置にある拡張フロア部6に足を載せるように乗員が誘導され、可動部であるドアヒンジ121やロワアーム122に足が触る可能性を減少させることができる。
【0029】
次に、ステップ5および拡張フロア部6の内部構造について説明する。ステップ5は、車体の構造部材を構成する鋼材から成るメンバーや鋼板から成るパネルの表面を、樹脂等から成る表面部材で被覆することにより形成される。拡張フロア部6も乗員の体重を支えうる剛性を備える必要があるので、内部にフロア拡張用構造部材61を設ける一方、その表面をステップ5の表面部材と一体の表面部材62で被覆している。
【0030】
フロア拡張用構造部材61は、図7〜10に示すように、フロアパネル40に接合される上面部611と、その車両前後方向前縁部を支持すべくステップパネル50から立ち上がる部分円筒状の側面部612とを備えた台形状を基本とし、他の側面は開口され、内部には、前記開口によって外部に連通する内部空間60が形成されている。フロア拡張用構造部材61は、上面部611の縁部においてはフロアパネル40に、側面部612の下端においてはステップパネル50に、それぞれ2箇所ずつボルト等の螺合部材で固定されている。フロアパネル40の固定位置の近くには剛性の高いフレーム41,42が配置され、また、ステップパネル50は剛性の高いサイドシル上部に配置されているので、フロア拡張用構造部材61は、乗降時に付加される荷重を各構造部材へと分散することにより、高い支持力を得ることができる。
【0031】
また、このフロア拡張用構造部材61はステップパネル50やフロアパネル40などと別体で構成され、車体に対してボルト等の締結部材により固定できる構造であるので、シーラー塗布時に取り外して、図8に破線で示すパネル接合部51にシーラー塗布を容易に行うことができる。さらに、フロア拡張用構造部材61の下方に形成された内部空間60は、外部からの作業が可能であるため、空間60内に、パワースライドドアのユニット等のドア用機構部品を設置することが可能となる。
【0032】
以上のように構成された拡張フロア部6は、乗降時の踏み面として好適であるが、着座可能な状態に展開した2列目シート2の後方の脚部24を載置し、支持するためのスペースとしても好適である。
【0033】
即ち、図2、図6に示すように、2列目シート2の後方の脚部24を、前記拡張フロア部6の拡張分だけ車両室外側に張り出させ、2列目シート2の着座使用時に、脚部24を拡張フロア部6上に載置する構造とすることにより、2列目シート2下方の狭いフロア空間に3列目シート乗員の足元スペースの確保を可能としている。
【0034】
図12は2列目シート2を前方に折り畳んだ状態を示す、車両後方側から見た斜視図である。図において、脚部24は、ヒンジ機構240に連結される短パイプ材241と、その先端に溶接等により固定され、シートクッション22の裏面の幅方向に延設される長パイプ材242とにより主に構成され、長パイプ材242の車両室外側の端部を屈曲することにより、車両室外側に張出した脚部24を形成している。脚部24をパイプ材から形成することにより、加工が容易な上、占有スペースを少なくすることができる。脚部24の先端はカバー部材で覆われ、さらにクッションゴム等を取付け、車体への接地時の衝撃を吸収できるようにするとともに、ロッド25を介して前方の脚部23の先端と連結されている。前方の脚部23はヒンジ機構230を介してシートクッション22のフレーム221に回動可能に取付けられている。
【0035】
このように従来はシートクッション22の取付部(ヒンジ機構240または短パイプ材241)より真下に伸びて配置されていた脚を途中で屈曲させ、車両室外側にオフセットさせたことによりシート幅及びシート取付幅を拡幅することなく、シートクッション22の下部に乗員が足を置けるスペースを確保することができる。
【0036】
さらに、脚部24をフロア4に固定するためのロック243を、長パイプ材242の中間位置に取付け、フロア4に設けた図示しないストライカーに係合可能とし、着座可能状態の2列目シート2の可動側(後方側)を車体に対して固定するようにしている。一般的にカム式のロックは厚み方向が係合するストライカーのバーに平行な板状であるので、図12に示すように、ロック機構243を長パイプ材242の長手方向に垂直に固定し、ロック機構243が車両前後方向に沿って配置されるようにしてある。これによりロック243が車幅方向に占めるスペースを削減でき、その分、乗員が足を置くスペースを確保することができる。脚部24の以上の構成により、図13に示すように、3列目シート3の乗員3人分の足を置くスペースを2列目シート2のシートクッションの下方に確保することができる。
【0037】
一方、拡張フロア部6は、図4、図6に示すように、表面部材62(樹脂などの内装材)の、脚部24の先端が当接する箇所に透孔63を設け、フロア4に敷設したカーペット材43を拡張フロア部6の下まで拡張して、フロア拡張用構造部材61と表面部材62との間に敷き込み、フロア拡張用構造部材61を被覆したカーペット材43を透孔63から露出させるようにしている。
【0038】
これにより、カーペット材43で覆われた透孔63に脚部24の先端を載置することができ、表面部材62を、樹脂材など比較的剛性の小さい材料を用いた場合にも、割れやキズ付きを防ぐことができる。また、透孔63の箇所には充分な剛性を有するフロア拡張用構造部材61が位置しているため、2列目シート2や乗降する乗員の荷重を確実に支えることができる。また、フロア拡張用構造部材61の表面がカーペット材43で覆われているため、塗装の剥離や傷付きを防ぐことも可能である。さらに、この透孔63の位置にカーペット材43を別途貼付するのではなく、フロア4に敷設されるカーペット材43を利用したことにより、部品点数および組付け工数を削減できるばかりでなく、表面部材62で挟み込む範囲が広がり、特別な固定部品を追加することなくカーペット材43周辺の浮きを防止することが可能となる。また、別途透孔63位置にカーペット材を貼る場合に生じる剥離なども防止することができる。
【0039】
以上、本発明の実施の形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて各種の変形および変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係わる室内構造の実施に適した車両を示す側面図である。
【図2】本発明に係わる室内構造を実施した車両の、ドアを開けた状態を示す斜視図である。
【図3】(a)〜(c)は、2列目シートの折畳み手順を示す側面図である。
【図4】本発明に係わる室内構造を実施した車両のステップ付近を示す斜視図である。
【図5】本発明に係わる室内構造を実施した車両のドア開口付近を示す平面図である。
【図6】図5のA−A断面図である。
【図7】本発明に係わる室内構造を実施した車両のステップ付近の表面部材を外した状態を示す斜視図である。
【図8】本発明に係わる室内構造を実施した車両のステップ付近にフロア拡張用構造部材を取付ける手順を示す拡大斜視図である。
【図9】本発明に係わる室内構造を実施した車両のステップ付近の表面部材を外した状態でのステップ付近を示す平面図である。
【図10】図9のD−D断面図である。
【図11】ステップおよび拡張フロア部の表面部材を示す斜視図である。
【図12】2列目シート2を前方に折り畳んだ状態を示す、車両後方側から見た斜視図である。
【図13】2列目および3列目シート付近を示す概略平面図である。
【図14】従来の車両のステップ付近を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0041】
1 最前列シート
2 2列目シート
3 3列目シート
4 フロア
5 ステップ
6 拡張フロア部
11 フロントドア
12 リヤドア
20 開口部
21 シートバック
22 シートクッション
23,24 脚部
40 フロアパネル
43 カーペット材
50 ステップパネル
54,64 滑り止めパターン
60 空間
61 フロア拡張用構造部材
62 表面部材
63 透孔
120 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側部の乗降用開口部にドアを備えるとともに、前記開口部の室内側に乗降用のステップを備え、前記ステップが前記車両室内のフロアより低位置であるような車両の室内構造において、前記ステップの車両前後方向における後方側に、前記フロアと略等しい高さの拡張フロア部が設けられていることを特徴とする車両室内構造。
【請求項2】
前記拡張フロア部は、車幅方向に対して前記フロア側に部分的に設けられ、前記拡張フロア部の車両室外側には空間が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の車両室内構造。
【請求項3】
前記拡張フロア部の表面には、前記ステップの表面と同一または類似の滑り止め用凹凸パターンが形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両室内構造。
【請求項4】
前記拡張フロア部は、車体と別体のフロア拡張用構造部材と、その外表面を被覆する表面部材とで構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両室内構造。
【請求項5】
前記フロア拡張用構造部材は、サイドシルの上部に配置されたステップパネルと、車体を構成するフレームの上部に配置されたフロアパネルとに跨って固定され、その内部には空間が形成されていることを特徴とする請求項4に記載の車両室内構造。
【請求項6】
前記拡張フロア部の前記表面部材が、前記ステップパネル表面まで被覆していることを特徴とする請求項4に記載の車両室内構造。
【請求項7】
前記車両室内には、車両前後方向に複数の座席が設けられ、このうち車両前後方向における前記ドア開口部の範囲に配置された座席は、前側および後側に脚部を備え、前記前側脚部を中心に前方に回動して起立状態に折畳み可能であるとともに、前記後側脚部が車両幅方向室外側に張出して設けられ、着座可能にした状態で、前記後側脚部が、前記拡張フロア部上に載置されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の車両室内構造。
【請求項8】
前記拡張フロア部の前記後側脚部が載置される箇所には、前記表面部材に透孔を設け、前記透孔内で前記後側脚部が前記フロア拡張用構造部材の上に載置されるように構成されていることを特徴とする請求項7に記載の車両室内構造。
【請求項9】
前記フロアに敷設されているカーペット材が、前記拡張フロア部の範囲まで拡張され、かつ、前記表面部材と前記フロア拡張用構造部材との間に敷き込まれ、前記透孔部分において前記フロア拡張用構造部材の上面が前記カーペット材で覆われ、前記カーペット材の上に前記後側脚部が載置されるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の車両室内構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−313918(P2007−313918A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−142339(P2006−142339)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】