説明

車両後部の下部車体構造

【課題】燃料タンクの容量を増大できる車両後部の下部車体構造の実現。
【解決手段】左右のリヤサスペンションを支持するサスペンション支持メンバ4と燃料タンク5とが配設された車両後部の下部車体構造であって、前記サスペンション支持メンバにおけるフロント側に位置し車幅方向に延びるフロント側クロスメンバ8を前記燃料タンク5と一体的に形成し、前記フロント側クロスメンバと前記燃料タンクとにより閉断面を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のリヤサスペンションを支持するサスペンションクロスメンバと燃料タンクとが配設された車両後部の下部車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両後部の下部車体構造として、特許文献1には、左右のリヤサイドフレームに掛け渡されたリヤクロスメンバの前方に燃料タンクを配置した構造が記載されている。
【0003】
また、リヤサイドフレームやリヤクロスメンバとは別にサスペンション支持メンバを別途リヤサイドフレーム等に取り付け、サスペンション支持メンバの前方に燃料タンクを配置するようにしたものも知られている。
【特許文献1】特開2005−29000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の構造では、図4に示すように、車両後部において左右のリヤサスペンションを支持するサスペンション支持メンバ(フロント側クロスメンバ8’)との干渉を避けるために燃料タンク5’下部に逃げ形状部5a’が形成されているため、この逃げ形状部のスペース分だけ燃料タンクの容量を低下せざるを得ないという課題がある。尚、図4に示す他の要素については、後述する図2と同一の構成に同一の符号を付して示している。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされ、その目的は、燃料タンクの容量を増大できる車両後部の下部車体構造を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る第1の形態は、左右のリヤサスペンションを支持するサスペンション支持メンバと燃料タンクとが配設された車両後部の下部車体構造であって、前記サスペンション支持メンバにおけるフロント側に位置し車幅方向に延びるフロント側クロスメンバを前記燃料タンクと一体的に形成した。
【0007】
この第1の形態によれば、従来燃料タンクに設けられていたフロント側クロスメンバとの干渉を防止するためのスペースを有効活用し、燃料タンクの容量を増大することができる。また、フロント側クロスメンバの剛性が高まることで板厚を低下でき、軽量化を図ることができる。
【0008】
また、第2の形態では、前記フロント側クロスメンバと前記燃料タンクとにより閉断面を形成する。この形態によれば、閉断面を形成して更に剛性を高めることができる。
【0009】
また、第3の形態では、前記燃料タンクに段部を設け、当該段部に前記フロント側クロスメンバを接合することにより前記閉断面を形成する。この形態によれば、燃料タンクの容量を最大限増大しつつ、閉断面を形成して更に剛性を高めることができる。
【0010】
また、第4の形態では、前記左右のリヤサスペンションの車幅方向の中間部にデファレンシャル装置が配設されており、前記フロント側クロスメンバには前記デファレンシャル装置との干渉を避けるための凹部が形成されている。この形態によれば、フロント側クロスメンバとデファレンシャル装置との干渉を避けつつ両者を最大限近接して配置させると共に、燃料タンクの容量増大を図ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、燃料タンクの容量を増大できる車両後部の下部車体構造を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0014】
図1は本発明に係る実施形態の車体後部の下部構造を下方から見た図である。図2は図1のA−A断面図(a)、B部の拡大図(c)、他の接合形態を例示する図(c)、(d)、フロント側クロスメンバの斜視図(e)である。
【0015】
図1及び図2において、本実施形態の車体は、車幅方向の両側に車体前後方向に延びる左右のサイドメンバ1,2と、これら左右のサイドメンバ1,2間を連結する車幅方向に延びる複数のクロスメンバ(リヤクロスメンバ3のみを図示)と、で構成されるフレーム構造を有している。車体後部のフレームは、上記左右のサイドメンバ1,2と、これら左右のサイドメンバ1,2間を連結する車幅方向に延びるリヤクロスメンバ3と、で構成されている。
【0016】
そして、車体後部における上記サイドメンバ1,2及びリヤクロスメンバ3の下部には、左右のリヤサスペンションを支持するサスペンション支持メンバ4と、燃料タンク5とが配置され、ボルト等を介して当該サイドメンバ1,2及びリヤクロスメンバ3に連結することで支持されている。
【0017】
上記左右のサイドメンバ1,2は、燃料タンク5より後方で車幅方向の中央部に向けて湾曲し、当該サイドメンバ間の距離が短くなる湾曲部1a,2aと、この湾曲部1a,2aより後方に直線状に延びる直線部1b、2bとを有する。
【0018】
左右の各リヤサスペンションは、複数のリンク21、補助リンク22、ダンパー&スプリング23等からなる。
【0019】
サスペンション支持メンバ4は、左右のサイドメンバ1,2に夫々連結される左右のサスペンションサイドメンバ6,7と、これら左右のサスペンションサイドメンバ間を連結する車幅方向に延びるフロント側及びリヤ側の各サスペンションクロスメンバ8,9と、前後のサスペンションクロスメンバ8,9間を連結する車体前後に延びる左右の補助サイドメンバ10,11と、で構成されている。サスペンションサイドメンバ6,7は、円弧状に湾曲した形状を有し、他のメンバは直線状に形成されている。
【0020】
上記各メンバは、所望の強度を確保した断面又は閉断面構造を有する鋼材からなる。
【0021】
更に、サスペンション支持メンバ4のフロント側クロスメンバ8は、燃料タンク5のリヤ側の後下面部分に溶接等で一体的に接合されている。また、上記サスペンション支持メンバ4のフロント側クロスメンバ8と燃料タンク5とが閉断面を形成するように接合されている。上記閉断面は、燃料タンク5の後下面部分に段部5a、5bを形成し、これらの段部5a,5bにクランク状に折れ曲がった断面を有するフロント側クロスメンバ8のフランジ部8a,8bを接合することにより形成される。
【0022】
また、左右のサスペンションサイドメンバ6,7の車幅方向の中間部にデファレンシャル装置12が配設されており、上記フロント側クロスメンバ8のフランジ部8aには、このデファレンシャル装置12の上面部との干渉を避けるための上に凸の凹部8cが形成されている。
【0023】
尚、図2(c)のようにフロント側クロスメンバ8自体を閉断面構造とし、燃料タンク5に一体的に接合した形態や、図2(d)のようにフロント側クロスメンバ8を燃料タンク5の段部5a,5bではなく、段部5a,5bの間の平面部5cに接合した形態でもよい。
【0024】
図3は本実施形態の車体後部の下部構造の組み立て工程を示す斜視図である。
【0025】
図3に示すように、燃料タンク5とフロント側クロスメンバ8とを組み立てる際には、先ず燃料タンク5とフロント側クロスメンバ8とを溶接等で接合し(図3(a))、燃料タンク5に一体化されたフロント側クロスメンバ8の両端部が左右のサスペンションサイドメンバ6,7にボルト等で締結される(図3(b))。
【0026】
上記構成によれば、サスペンション支持メンバ4のフロント側クロスメンバ8と燃料タンク5の後下面部分とを一体的に接合したことにより、図4に示す従来燃料タンクに設けられていたフロント側クロスメンバ8’との干渉を防止するための逃げ形状部5a’のスペースを有効活用し、図2(b)の斜線部の分だけ燃料タンク5の容量を増大することができる。また、フロント側クロスメンバ8の剛性が高まることで板厚を低下でき、軽量化を図ることができる。
【0027】
また、フロント側クロスメンバ8と燃料タンク5とで閉断面を形成するので、更に剛性を高めることができる。
【0028】
また、燃料タンク5の後下面部分に段部5a,5bを形成し、この段部5,5bにフロント側クロスメンバ8のフランジ部8a,8bを接合することにより上記閉断面を形成するので、燃料タンク5の容量を最大限増大しつつ、閉断面を形成して更に剛性を高めることができる。
【0029】
また、フロント側クロスメンバ8にはデファレンシャル装置12の上面部との干渉を避けるための凹部8cが形成されているので、フロント側クロスメンバ8とデファレンシャル装置12との干渉を避けつつ両者を最大限近接して配置させると共に、燃料タンク5の容量増大を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る実施形態の車体後部の下部構造を下方から見た図である。
【図2】図1のA−A断面図(a)、B部の拡大図(c)、他の接合形態を例示する図(c)、(d)、フロント側クロスメンバの斜視図(e)である。
【図3】本実施形態の車体後部の下部構造の組み立て工程を示す斜視図である。
【図4】従来の車体後部の下部構造を示す、図1(a)に対応する断面図(a)、C部の拡大図(b)である。
【符号の説明】
【0031】
1,2 サイドメンバ
3 リヤクロスメンバ
4 サスペンション支持メンバ
5 燃料タンク
6,7 サスペンションサイドメンバ
8 サスペンションクロスメンバ(フロント側クロスメンバ)
9 サスペンションクロスメンバ(リヤ側クロスメンバ)
10,11 補助サイドメンバ
12 デファレンシャル装置
21 リンク
22 補助リンク
23 ダンパー&スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のリヤサスペンションを支持するサスペンション支持メンバと燃料タンクとが配設された車両後部の下部車体構造であって、
前記サスペンション支持メンバにおけるフロント側に位置し車幅方向に延びるフロント側クロスメンバを前記燃料タンクと一体的に形成したことを特徴とする車両後部の下部車体構造。
【請求項2】
前記フロント側クロスメンバと前記燃料タンクとにより閉断面を形成することを特徴とする請求項1に記載の車両後部の下部車体構造。
【請求項3】
前記燃料タンクに段部を設け、当該段部に前記フロント側クロスメンバを接合することにより前記閉断面を形成することを特徴とする請求項2に記載の車両後部の下部車体構造。
【請求項4】
前記左右のリヤサスペンションの車幅方向の中間部にデファレンシャル装置が配設されており、前記フロント側クロスメンバには前記デファレンシャル装置との干渉を避けるための凹部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両後部の下部車体構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−237985(P2007−237985A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−64786(P2006−64786)
【出願日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】