説明

車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置

【課題】トルクを確保しつつ熱発生割合のピーク値を小さくして、エンジン振動そのものを低減する。
【解決手段】エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、拡散燃焼用の主燃料噴射が複数回に分割して行われる分割噴射とされる。1段目の分割噴射の噴射量よりも2段目の分割噴射の噴射量の方が多くされる。分割噴射の回数を3以上とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軽油を主成分とした燃料が供給されるディーゼルエンジンにおいては、拡散燃焼用の主燃料噴射の前に、予混合燃焼用のプレ燃料噴射を行うことがある。特許文献1には、プレ燃料噴射を複数回行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−293383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ディーゼルエンジンにあっては、燃焼によって生じる振動がかなり大きいものとなる。したがって、ディーゼルエンジンを自動車等の車両に搭載した場合は、エンジンの発生する振動が乗員に対して不快感を与えることになり、特に高負荷低速域において、200〜800HZの周波数域の振動が不快感を与えることになる。このため、エンジンと車体との間に介在されるエンジンマウントの構造を工夫する等のことによって、不快なエンジン振動が車体に伝達されにくいようにすることも行われている。
【0005】
ディーゼルエンジンの振動発生の原因のひとつとして、熱発生割合(つまり燃焼圧力)のピーク値が大きいことに起因する振動がある。すなわち、最近のディーゼルエンジンでは、高圧燃料噴射を行うと共に過給を行うことにより、熱発生割合(単位クランク角あたりの発熱量で、熱発生率とも呼ばれる)が極めて大きくなる傾向にある。この熱発生割合のピーク値が大きいほど燃焼圧力のピーク値も大きくなって、振動が大きくなる。なお、特許文献1に開示の技術は、主燃料噴射の遅角限界とプレ燃料噴射の進角限界とを考慮した燃料噴射タイミングの最適化を狙ったものであり、エンジン振動低減のための噴射タイミングの設定ということは考慮されていない。なお、熱発生割合のピーク値を小さくするために燃料噴射量を減量することは、トルク低下となって好ましくないものとなる。
【0006】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、トルクを確保しつつ熱発生割合のピーク値を小さくして、エンジン振動そのものを低減できるようにした車両搭載用のディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、特許請求の範囲における請求項1に記載のように、
車両に搭載され、軽油を主成分とした燃料が供給される車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置において、
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、拡散燃焼用の主燃料噴射が複数回に分割して行われる分割噴射とされ、
1段目の分割噴射の噴射量よりも2段目の分割噴射の噴射量の方が多くされる、
ようにしてある。
【0008】
上記解決手法によれば、エンジンマウント振動が敏感になるエンジンの高負荷域のうち少なくとも低速域において、主燃料噴射を分割して行うことにより、熱発生割合のピーク値が小さくなって、振動を低減することができる。とりわけ、2段目の分割噴射の噴射量を1段目の分割噴射の噴射量よりも多くすることにより、拡散燃焼全体の熱発生割合を緩やかな山なり形状に近似した形態となるようにして振動低減の上で極めて効果的となり、また2段目の分割噴射による燃料が燃焼する際に必要な酸素量も十分確保されて、スモーク増大を防止する上でも好ましいものとなる。勿論、分割噴射によって主燃料噴射全体としての燃料噴射量を十分に確保できるので、トルクも十分に確保することができる。また、主燃料噴射を1段のみとした場合に比して、同一トルクを確保するのにほぼ同一の燃料消費量程度ですみ、燃費の上でも問題のないものとなる。
【0009】
上記解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2以下に記載のとおりである。すなわち、
エンジンの幾何学的圧縮比が15以下とされ、
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、前記主燃料噴射の前に、予混合燃焼用のプレ燃料噴射が行われる、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、低圧縮比ゆえの着火遅れをプレ燃料噴射によって短くして、拡散燃焼開始の遅れを少なくして、分割噴射の期間を十分に確保する上で好ましいものとなる。
【0010】
エンジンの幾何学的圧縮比が15以下とされ、
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、過給が行われる、
ようにしてある(請求項3対応)。この場合、低圧縮比ゆえのトルク低下を、過給によっておぎなって、トルクを十分に確保することができる。
【0011】
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、圧縮上死点前に予混合燃焼用のプレ燃料噴射が行われ、
前記1段目の分割噴射と前記2段目の分割噴射との間隔が、前記プレ燃料噴射と前記1段目の分割噴射との間隔よりも短くされる、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、1段目の分割噴射と2段目の分割噴射の間隔を短くして、トルク確保の上で好ましいものとなる。
【0012】
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、前記主燃料噴射の前に、予混合燃焼用のプレ燃料噴射が行われ、
前記分割噴射の回数が2回とされ、
1段目の分割噴射の噴射量が、前記プレ燃料噴射の噴射量よりも多くされる、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、分割噴射の回数が少ない分、特に1段目の分割噴射を極力圧縮上死点近くで多量に行うことが可能となって、同じトルクを確保するのであれば分割噴射における燃料増量を防止あるいは抑制して、燃費の上でも好ましいものとなる。
【0013】
前記分割噴射の回数が3以上とされ、
前記分割噴射における最終段目の噴射量がその直前の段目の分割噴射の噴射量よりも少なくされる、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、拡散燃焼全体の熱発生割合を緩やかな山なり形状により近似した形態として、振動低減の上でより好ましいものとなる。
【0014】
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、過給が行われ、
前記過給による吸気充填量の増大に応じて、空気過剰率λが1以上となる範囲で燃料噴射量が増量される、
ようにしてある(請求項7対応)。この場合、トルク確保の上で好ましいものとなる。
【0015】
エンジン高負荷域の高速域では、前記主燃料噴射が分割されることなく1段で行われる、ようにしてある(請求項8対応)。この場合、振動の問題が生じないエンジンの高負荷高速域では、主燃料噴射による拡散燃焼を圧縮上死点の近くで行わせて、トルク確保や燃費向上の上で好ましいものとなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、トルクを確保しつつ熱発生割合のピーク値を小さくして、振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ディーゼルエンジンの車両への搭載例を示す簡略平面図。
【図2】ディーゼルエンジンの吸排気系統例を示す図。
【図3】主燃料噴射を2回の分割噴射としたときの噴射量の設定例を示す図。
【図4】主燃料噴射を4回の分割噴射としたときの噴射量の設定例を示す図。
【図5】図3における噴射態様のときの熱発生割合を示す図。
【図6】主燃料噴射を3回の分割噴射としたときの熱発生割合を示す図。
【図7】主燃料噴射を4回の分割噴射としたときの熱発生割合を示す図。
【図8】主燃料噴射を5回の分割噴射としたときの熱発生割合を示す図。
【図9】主燃料噴射を2回〜5回の分割噴射としたときの振動低減の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1において、1はエンジン(エンジン本体)で、実施形態では直列4気筒の自動車用ディーゼルエンジンとされている。エンジン1は、変速機TRと一体化された状態で、車体BDに取付けられる。実施形態では、車体BDの前部(に形成されたエンジンルーム内)に、エンジン1が横置きされた状態で、3つのマウント部材1M、3M、4Mを介して車体BD(のフロントフレーム)に取付けられている。
【0019】
図2に示すように、エンジン1は、既知のように、シリンダ2とシリンダヘッド3とピストン4とを有している。ピストン4の上方の形成される燃焼室5に対して、吸気ポート6および排気ポート7が開口されている。吸気ポート6は吸気弁8によって開閉され、排気ポート7は排気弁9によって開閉される。そして、シリンダヘッド3には、燃焼室5に臨ませて、燃料噴射弁10が取付けられている。なお、実施形態では、コモンレール式の燃料噴射とされて、燃料噴射弁10からは極めて高圧の燃料が噴射されるようになっている。なお、エンジン1の幾何学的圧縮比は、15以下(実施形態では14.2)の低圧縮比とされている。なお、幾何学的圧縮比は、着火性や着火遅れが問題とならない範囲でより小さい圧縮比に設定できるが、自動車用としては12以上に設定するのが好ましい。
【0020】
吸気ポート6に連なる吸気通路20には、その上流側から下流側に向けて順次、エアクリーナ21,第1排気ターボ式過給機22のコンプレッサホイール22a、第2排気ターボ式過給機23のコンプレッサホイール23a、インタークーラ24,スロットル弁25,サージタンク26が配設されている。そして、サージタンク26と各気筒(の吸気ポート6)とが個々独立して、分岐吸気通路27によって接続されている。
【0021】
吸気通路20には、バイパス通路28が設けられている。このバイパス通路28は、その上流側端が、コンプレッサホイール22aと23aとの間の吸気通路20に開口されている。また、バイパス通路28の下流側端は、コンプレッサホイール23aとインタークーラ24との間の吸気通路20に開口されている。そして、バイパス通路28には、制御弁29が配設されている。
【0022】
排気ポート7に連なる排気通路30には、その上流側から下流側に向けて順次、第2排気ターボ式過給機23のタービンホイール23b、第1排気ターボ式過給機22のタービンホイール22b、酸化触媒31,DPF32が接続されている。
【0023】
排気通路30は、バイパス通路33とウエストゲート通路34とを有する。バイパス通路33は、その上流側端がタービンホイール23bの上流側において排気通路30に開口されている。このバイパス通路33の下流側端は、タービンホイール22bと23bとの間の排気通路30に開口されている。そして、バイパス通路33には、制御弁35が配設されている。
【0024】
ウエストゲート通路34は、その上流側端が、タービンホイール22bと23bとの間の排気通路30に開口されている。このウエストゲート通路34の下流側端は、タービンホイール22bと酸化触媒31との間の排気通路30に開口されている。そして、ウエストゲート通路34には、ウエストゲートバルブ36が配設されている。
【0025】
第1排気ターボ式過給機22は大型のものとされ、第2排気ターボ式過給機23は小型のものとされている。低回転、低負荷域では、主として小型の第2排気ターボ式過給機23による過給が行われ、このときに、制御弁29、35は閉じられる。また、高負荷域では主として大型の排気ターボ式過給機22による過給が行われ、このときは、制御弁28、33が開かれる。実施形態では、エンジン回転数とエンジン負荷(例えばアクセル開度)とをパラメータとして設定されたマップに基づいて、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラUによって、各制御弁29、35が制御される。過給圧が所定の上限圧を超えたときは、ウエストゲートバルブ36が開かれる。なお、主として小型の排気ターボ式過給機23によって過給する状態から、主として大型の排気ターボ式過給機22によって過給する状態へと移行する過渡期には、制御弁29,35が中間開度とされることもある。なお、このような過給制御そのものは本発明とは直接関係がないので、これ以上の説明は省略する。
【0026】
吸気通路20と排気通路30とは、EGR通路50を介して接続されている。このEGR通路50の上流側端は、タービンホイール23bの上流側の排気通路30に開口されている。また、EGR通路50の下流側端は、スロットル弁25とサージタンク26の間の吸気通路20に開口されている。
【0027】
EGR通路50には、EGRクーラ51が接続されると共に、EGRクーラ51の下流側においてEGR弁52が配設されている。EGR通路50には、EGRクーラ51をバイパスするバイパス通路53が設けられている。このバイパス通路53は、その上流側端がEGRクーラ51の上流側においてEGR通路50に開口され、その下流側端がEGR弁52の下流側においてEGR通路50に開口されている。そして、バイパス通路54には、制御弁54が配設されている。
【0028】
ここで、燃料噴射弁10からの燃料噴射制御は、マイクロコンピュータを利用して構成されたコントローラU(図2参照)によって行われる。コントローラUには、少なくともエンジン負荷(アクセル開度や過給圧)およびエンジン回転数を検出する各センサ等からの信号が入力されて、根燃料噴射弁10を制御する。燃料噴射は、基本的には、予混合燃焼用となる1回のプレ燃料噴射と、拡散燃焼用となる1回の主燃料噴射とが行われる。プレ燃料噴射は、圧縮上死点よりも前に行われる(プレ燃料噴射による予混合燃焼が圧縮上死点前に終了されるタイミングでプレ燃料噴射が実行される)。主燃料噴射は、圧縮上死点付近から圧縮上死点後の膨張行程に掛けて拡散燃焼が行われるようにその噴射タイミングが設定される。
【0029】
あらかじめ設定されたエンジン振動が問題となる高負荷・低速域(例えば、全負荷に対して70%以上の負荷で、かつ2000rpm以下の回転域で、コントローラUに記憶されている)では、主燃料噴射が複数回に分割して行われる分割噴射とされる。主燃料噴射を2回の分割噴射とした例が図3に示され、4回の分割噴射とした例が図4に示される。この図3、図4において、横軸がクランク角で、縦軸が燃料の噴射量を示す(各燃料噴射の上端位置が燃料噴射量を示す)。
【0030】
主燃料噴射を2回の分割噴射とした場合は、図3に示すように、1段目の分割噴射の噴射量が、2段目の分割噴射の噴射量の例えば50〜75%というように少なくされる。分割噴射によって拡散燃焼の際の熱発生割合のピーク値が小さくなる。また、1段目の分割噴射の噴射量を少なくすることにより、拡散燃焼の当初は熱発生割合が急激に増大するのが抑制され、その後の2段目の分割噴射の噴射量を多くすることによってトルクが確保される。また、1段目の分割噴射の噴射量を少なくすることにより、2段目の分割噴射の際に酸素量も十分確保されて、スモーク低減あるいは抑制の上でも好ましいものとなる。
【0031】
エンジン振動低減のためには、熱発生割合のピーク値同士を結んだ連結線が、徐々に増加した後徐々に低下するような緩やかな山なり形状に近似する形態が好ましい。このような形態を確保するために、分割噴射を3回以上とする場合、例えば図4のように4回に分けて分割噴射する場合は、最終段(図4の場合は4段目)の分割噴射の噴射量を、その直前の段目(図4の場合は3段目)の分割噴射の噴射量よりも少なくなるのが好ましい(直前の分割噴射の噴射量の例えば85%〜90%にする)。
【0032】
図5〜図8は、分割噴射の回数を相違させたときの熱発生割合の様子を示すものである。まず、図5は2段分割噴射の場合を示す(図3の噴射態様に相当)。図中破線は、主燃料噴射を1回のみ行う従来での熱発生割合を示し、一点鎖線は、熱発生割合が山なりに緩やかに変化する理想状態を示す(このことは図6〜図8においても同じ)。この図5から明かなように、主燃料噴射を2回の分割噴射とすることにより、熱発生割合のピーク値が小さくなり、エンジン振動が低減されることになる。分割噴射の回数を最小限の2回としつつ、プレ噴射量よりも1段目の分割噴射の噴射量を多くすることにより、分割噴射の終了時期を早い時期に設定することが可能となって、スモーク抑制やトルク確保の上で好ましいものとなる。
【0033】
図6は、主燃料噴射を3回の分割噴射とした場合を示し、1段目の分割噴射の噴射量よりも2段目の分割噴射の噴射量よりも多くし、かつ2段目の分割噴射の噴射量よりも3段目の分割噴射の噴射量を少なくしてある。この場合は、熱発生割合のピーク値が図5の2段分割噴射の場合よりもさらに小さくなって、エンジン振動がより低減される。
【0034】
図7は、主燃料噴射を4回の分割噴射とした場合を示す。3段目の分割噴射までは噴射量が増大され、4段目の分割噴射の噴射量が3段目の分割噴射の噴射量よりも少なくされる。本例でも、熱発生割合のピーク値が十分に小さくされて、エンジン振動が十分に低減される。図8は、主燃料噴射を5回の分割噴射とした場合を示す。3段目の分割噴射までは噴射量が増大され、4段目の分割噴射以降は、噴射量が低減されていく。本例でも、熱発生割合のピーク値が十分に小さくされて、エンジン振動が十分に低減される。
【0035】
図9は、分割噴射の回数を前述した2回〜5回とした場合に、図1における各マウント部材1M、3M、4Mの各部分での振動レベルを示すものであり、図中「Base」で示されるので、主燃料噴射を1回のみとした場合である。この図9において示される3軸和は、各マウント部材1M、3M、4M部分での3軸方向(前後、左右、上下)の振動エネルギの総和を示す。主燃料噴射を分割噴射とした場合は、いずれもBaseの場合よりも振動が低減されていることが理解される。なお、振動レベルで1dbの低減は、相当に大きな振動低減となり、2回の分割噴射とすることによってもエンジン振動低減の効果としては大きいものとなる。勿論、3段以上の分割噴射とした場合の振動低減の効果は極めて大きいものとなる。なお、分割噴射の回数を多くするほど、後段の分割噴射の噴射時期が遅れて、スモーク発生が問題となってくるが、燃料噴射弁10として応答性がよくかつ噴射量精度の高いものを用いることによって、最終段の分割噴射の噴射時期を早めて、スモーク抑制を図ることが可能である。
【0036】
ここで、エンジン振動低減のために主燃料噴射を分割噴射とする領域にあっては、過給が行われるので、トルク確保の点で極めて好ましいものとなる。とりわけ、過給に応じて燃料噴射量を増量させることができるので、トルク向上の点で好ましいものとなる。ただし、過給に高じた燃料噴射量の増量は、吸入空気の空気過剰率λが1以上の範囲において行うのが好ましいものである(スモーク抑制)。各段の分割噴射の間隔は、1段目の分割噴射とプレ噴射との間の間隔よりも短くすることが、全ての分割噴射を終了するまでの時期を極力早めて、トルク確保やスモーク抑制の上で好ましいものとなる。また、プレ燃料噴射量よりも1段目の分割噴射の噴射量を多くすることにより、拡散燃焼を主とした燃焼を行うことが可能になる。なお、エンジン振動が問題とならない高負荷・高速域では、主燃料噴射を1回で行うようにして、トルクが確保される。
【0037】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。車両としては、自動車に限らず、二輪車や軌道(レール)上を走行される車両(いわゆる列車)等であってもよい。車両排気ターボ式過給機は、1つであってもよく、あるいは排気ターボ式過給機を有しないものであってもよい。プレ燃料噴射を行わないようにしてもよい(特に、エンジンの幾何学的圧縮比が例えば15を超えるような高圧縮比である場合にプレ燃料噴射をなしにする)。エンジンマウント部分の振動を検出するセンサを設けて、検出される振動があらかじめ設定されたしきい値以上となったことを条件として、主燃料噴射の分割噴射を実行するようにしてもよい。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、例えば自動車に搭載されるディーゼルエンジンに適用して好適である。
【符号の説明】
【0039】
1:エンジン
5:燃焼室
6:吸気ポート
7:排気ポート
10:燃料噴射弁
20:吸気通路
22,23:排気ターボ式過給機
30:排気通路
U・コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、軽油を主成分とした燃料が供給される車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置において、
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、拡散燃焼用の主燃料噴射が複数回に分割して行われる分割噴射とされ、
1段目の分割噴射の噴射量よりも2段目の分割噴射の噴射量の方が多くされる、
ことを特徴とする車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
エンジンの幾何学的圧縮比が15以下とされ、
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、前記主燃料噴射の前に、予混合燃焼用のプレ燃料噴射が行われる、
ことを特徴とする車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
エンジンの幾何学的圧縮比が15以下とされ、
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、過給が行われる、
ことを特徴とする車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、圧縮上死点前に予混合燃焼用のプレ燃料噴射が行われ、
前記1段目の分割噴射と前記2段目の分割噴射との間隔が、前記プレ燃料噴射と前記1段目の分割噴射との間隔よりも短くされる、
ことを特徴とする車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、前記主燃料噴射の前に、予混合燃焼用のプレ燃料噴射が行われ、
前記分割噴射の回数が2回とされ、
1段目の分割噴射の噴射量が、前記プレ燃料噴射の噴射量よりも多くされる、
ことを特徴とする車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記分割噴射の回数が3以上とされ、
前記分割噴射における最終段目の噴射量がその直前の段目の分割噴射の噴射量よりも少なくされる、
ことを特徴とする車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか1項において、
エンジン高負荷域の少なくとも低速域において、過給が行われ、
前記過給による吸気充填量の増大に応じて、空気過剰率λが1以上となる範囲で燃料噴射量が増量される、
ことを特徴とする車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、
エンジン高負荷域の高速域では、前記主燃料噴射が分割されることなく1段で行われる、ことを特徴とする車両搭載用ディーゼルエンジンの燃料噴射制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−132371(P2012−132371A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285551(P2010−285551)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】