説明

車両操作支援装置

【課題】運転における安全性を高めることが可能な車両操作支援装置を提供する。
【解決手段】車両挙動制御装置10は、自車両の運転操作を制御する車両操作支援装置であって、自車両のドライバのくしゃみといった所定の生理現象を検知する生理現象検知部1と、生理現象検知部1により所定の生理現象が検知された際に、ドライバによる所定の操作が行われたか否かを判定する操作量検知部3及び条件判断部5と、操作量検知部3及び条件判断部5により所定の操作が行われたと判定された場合に、所定の操作による自車両の挙動を緩和する緩和制御を行なう緩和制御部6と、を備える。これにより、ドライバのくしゃみといった所定の生理現象を原因とする意図しない急な所定の操作を原因とする急な車両挙動を緩和して運転における安全性を高めることが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の運転操作を制御する車両操作支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車両の車室内を除菌する空調装置が知られている。例えば、下記の特許文献1には、車室内の雑菌数に対応したイオンを吹き出すイオン発生装置付き車両用空調装置が開示されている。このイオン発生装置付き車両用空調装置は、乗員の咳の回数に応じて除菌イオンの発生の要否を判定し、除菌イオンの発生が必要と判定されると車室内に除菌イオンを発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−189178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のイオン発生装置付き車両用空調装置は、乗員の咳の回数に応じて除菌イオンの発生の要否を判定し、除菌イオンの発生が必要と判定されると車室内に除菌イオンを発生する。しかしながら、乗員としての運転者のくしゃみといった生理現象による意図しない急な操作を原因とする急な車両挙動を緩和させることに関してはなんら考慮されていないため、車両の運転における安全性を高める余地が残されている。
【0005】
そこで本発明は、上記の課題を解決する為になされたものであり、運転における安全性を高めることが可能な車両操作支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る車両操作支援装置は、自車両の運転操作を制御する車両操作支援装置であって、自車両の運転者の所定の生理現象を検知する検知手段と、検知手段により所定の生理現象が検知された際に、運転者による所定の操作が行われたか否かを判定する判定手段と、判定手段により所定の操作が行われたと判定された場合に、所定の操作による自車両の挙動を緩和する緩和制御を行なう緩和手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る車両操作支援装置では、自車両の運転者の所定の生理現象が検知された際に、運転者による所定の操作が行われたか否かを判定する。そして、所定の操作が行われたと判定された場合に、所定の操作による自車両の挙動を緩和する緩和制御を行なう。このため、自車両の運転者の所定の生理現象を原因とする運転者による意図しない急な所定の操作を原因とする急な車両挙動を緩和して運転における安全性を高めることが可能になる。
【0008】
また、緩和制御が開始してからの経過時間を計測する計時手段を更に備え、緩和手段は、計時手段により計測された経過時間が所定時間以上となった場合に、緩和制御を解除するのも好ましい。これにより、計測された経過時間が所定時間以上となった場合、運転者の意図による操作が可能になっていると推測されるため不要になったと考えられる緩和制御を解除することが可能になる。
【0009】
また、所定の操作が行われる前の操作状態になったか否かを判断する判断手段を更に備え、緩和手段は、所定の操作が行われる前の操作状態になったと判断手段により判断された場合に、緩和制御を解除するのも好ましい。これにより、所定の操作が行われる前の操作状態になったと判断された場合、運転者の意図による操作が可能になっていると推測されるため不要になったと考えられる緩和制御を解除することが可能になる。
【0010】
また、判定手段は、検知手段により所定の生理現象が検知された際に、所定の操作として自車両の操作手段に対する所定時間内の所定操作量以上の操作が行われたか否かを判定するのも好ましい。これにより、ステアリングホイールやアクセルペダルやブレーキペダルといった自車両の操作手段に対する所定時間内の所定操作量以上の操作が行われたと判定された場合に、この操作による自車両の挙動を緩和して運転における安全性を高めることが可能になる。
【0011】
また、検知手段は、運転者の呼気の流速と当該運転者から発せられた飛沫の流速とに基づいて、所定の生理現象としてくしゃみを検知するのも好ましい。これにより、自車両の運転者のくしゃみを原因とする運転者による意図しない急な所定の操作を緩和して運転における安全性を高めることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、運転者の生理現象による意図しない急な操作を緩和して運転における安全性を高めることが可能な車両操作支援装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】車両挙動制御装置の構成概略を説明するための構成概略図である。
【図2】一般的なヒトの生理現象における飛沫粒子の速度及び到達距離の時間変化を説明するためのグラフである。
【図3】生理現象検知部の構成の詳細を説明するための構成概略図である。
【図4】車両挙動制御装置における挙動制御処理の流れを示すフローチャートある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
(1)車両挙動制御装置の構成
最初に、本実施形態である車両操作支援装置としての車両挙動制御装置の構成について、図1を用いて説明する。図1は、車両挙動制御装置10の構成概略を説明するための構成概略図である。車両挙動制御装置10は、例えば自動車等の移動体車両(以下、自車両)に搭載され、自車両の運転者(以下、ドライバ)のくしゃみといった生理現象を検知して、この生理現象を原因とする意図しない急な運転操作による急な車両挙動を緩和する制御を行なう制御装置である。
【0016】
車両挙動制御装置10は、生理現象検知部1(検知手段)、周囲状況検知部2(検知手段)、操作量検知部3(判定手段)、初期位置記憶部4(判断手段)、条件判断部5(判定手段)、緩和制御部6(緩和手段)、及びタイマ7(計時手段)を構成要素として備えている。これらの構成要素は、互いに通信することが可能である。
【0017】
なお、車両挙動制御装置10による機能は、例えば、自車両の内部に搭載された電子制御装置であるECU(図示せず)により実現される。ECUは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random AccessMemory)等からなるマイクロコンピュータを主要構成部品とするユニットである。
【0018】
生理現象検知部1は、自車両のドライバのくしゃみといった所定の生理現象を検知するマスク状センサ部分である。生理現象検知部1は、マスクとしてドライバに装着され、口腔部における呼気の流速とドライバから発せられた飛沫粒子の速度及び到達距離とを精度よく測定し、この流速と飛沫粒子の速度及び到達距離に基づいて、くしゃみを検知する。
【0019】
周囲状況検知部2は、生理現象検知部1による検知処理に必要なドライバの周囲の状況を例えば撮像することによって検知して取得し、この周囲の状況に関する情報を生理現象検知部1に送信するセンサ部分である。
【0020】
操作量検知部3は、生理現象検知部1によりくしゃみといった所定の生理現象が検知された際に、所定時間内におけるドライバによる所定の運転操作の操作量を測定するセンサ部分である。ドライバによる所定の運転操作としては、例えば、自車両のステアリングホイールWやアクセルペダルAやブレーキペダルBといった操作手段に対する所定の操作が挙げられ、ステアリングホイールWであれば回転量、アクセルペダルAやブレーキペダルBであれば踏み込み量が測定される。
【0021】
初期位置記憶部4は、生理現象検知部1によりくしゃみといった所定の生理現象が検知された際に、上記の所定の運転操作が行われる前の操作状態を初期位置として記憶しておき、所定時間後に初期位置としての操作状態に戻ったか否かを判断する記憶判断部分である。
【0022】
条件判断部5は、操作量検知部3により測定された操作量に基づいて、ドライバによる所定の急な運転操作が行われたか否かを判定する判定部分である。条件判断部5は、操作量検知部3により測定された所定時間内における操作量が、所定の操作量以上であったか否かを判定する。そして、操作量検知部3により測定された所定時間内における操作量が、所定の操作量以上であった場合に、上記の所定の急な運転操作が行われたと判定する。
【0023】
緩和制御部6は、条件判断部5により所定の急な運転操作が行われたと判定された場合に、トルク調整やゲイン調整を行うことによって、この所定の急な運転操作による自車両の急な挙動を緩和する緩和制御を行なう制御部分である。緩和制御部6は、後述のタイマ7により計測された経過時間が所定時間以上となった場合に、この緩和制御を解除する。また、緩和制御部6は、上記の所定の急な運転操作が行われる前の初期位置としての操作状態に戻ったと初期位置記憶部4により判断された場合に、この緩和制御を解除する。
【0024】
タイマ7は、緩和制御部6による緩和制御が開始してからの経過時間を計測する計時部分である。
【0025】
(2)生理現象の検知方法
引き続き、生理現象検知部1による生理現象の検知方法について、図2を用いて説明する。図2は、一般的なヒトの生理現象における飛沫粒子の速度及び到達距離の時間変化を説明するためのグラフであり、縦軸は、破線に関しては速度(cm/sec)を表しており、実線に関しては到達距離(cm)を表しており、横軸は、経過時間(sec)を表している。
【0026】
図2に示されるように、一般的なヒトのくしゃみの粒子速度は、くしゃみの発生直後で1600cm/sec程度であり、時間の経過とともに急減して、0.1秒経過時で200cm/sec程度である。また、咳の粒子速度は、咳の発生直後で800cm/sec程度であり、時間の経過とともに急減して、0.1秒経過時で100cm/sec程度である。
【0027】
また、一般的なヒトのくしゃみの粒子到達距離は、くしゃみの発生から0.05秒経過時で50cm程度であり、時間の経過とともに伸びて、0.2秒経過時で1500cm程度である。また、咳の発生から0.05秒経過時で25cm程度であり、時間の経過とともに伸びて、0.2秒経過時で40cm程度である。
【0028】
ここで、くしゃみにより飛散する飛沫の飛散距離は最大で2m程度であり、この距離の範囲内に生理現象検知部1が設置される。生理現象検知部1による検知速度を考慮すると、0.1秒以内に検知可能な70cm以内の範囲内に生理現象検知部1が設置されるのが好ましい。生理現象検知部1は、検知したドライバから発せられた飛沫粒子の速度及び到達距離が、図2に示されている飛沫粒子の挙動と同程度かそれ以上であるか否かを判定することによって、自車両のドライバのくしゃみといった所定の生理現象を検知する。
【0029】
なお、通常、くしゃみにより飛散する飛沫の大きさは直径5μmより大きい。直径5μmより大きい飛沫の落下速度は30〜80cm/secであり、直径5μm以下の飛沫の落下速度は0.06〜1.5cm/secである。
【0030】
また、一般的なヒトの口部における流速として、通常の場合で1.8km/h程度(即ち、呼吸速度が50cm/sec)であり、咳の場合で160km/h程度(気管中の空気の速度)であるのに対して、くしゃみの場合では320km/h程度(気管中の空気の速度)であって格段に違いがある、と言われている。生理現象検知部1は、この圧倒的な違いがあるという性質を用いて、くしゃみといった生理現象を検知する。
【0031】
(3)生理現象検知部の構成の詳細
引き続き、生理現象検知部1の構成の詳細について、図3を用いて説明する。図3は、生理現象検知部1の構成の詳細を説明するための構成概略図である。生理現象検知部1は、呼気流速センサ11及びシグナル発生部12を含んで構成されるマスクオプション13と、マイクスピーカ14と、カメラ15と、シグナル検知部16とを構成要素として有している。
【0032】
呼気流速センサ11は、ドライバの呼気の流速と、ドライバから発せられた飛沫粒子の速度とを計測するセンサである。呼気流速センサ11は、計測した呼気の流速と飛沫粒子の速度とに基づいて、ドライバのくしゃみといった所定の生理現象を検知する。
【0033】
シグナル発生部12は、呼気流速センサ11によってドライバのくしゃみといった所定の生理現象が検知されると、音や光Lをマイクスピーカ14及びカメラ15に向けて発する。
【0034】
マイクスピーカ14は、シグナル発生部12によって発せられた音をシグナルとして検知すると、シグナルを検知したことを示す電気信号をシグナル検知部16に送信する。
【0035】
カメラ15は、シグナル発生部12によって発せられた光をシグナルとして検知すると、シグナルを検知したことを示す電気信号をシグナル検知部16に送信する。
【0036】
シグナル検知部16は、シグナルを検知したことを示す電気信号を受信すると、くしゃみといった所定の生理現象が検知されたことを示す電気信号を、操作量検知部3、初期位置記憶部4、及び条件判断部5に送信する。
【0037】
(4)車両挙動制御装置における挙動制御処理の流れ
引き続き、車両挙動制御装置10における挙動制御処理の流れについて、図4を用いて説明する。図4は、車両挙動制御装置10における挙動制御処理の流れを示すフローチャートである。
【0038】
まず、生理現象検知部1が、自車両を運転中のドライバにマスクオプション13が装着されていることを確認する(ステップS01)。ここで、ドライバがくしゃみをしたとする。このとき、呼気流速センサ11が、生理現象の発生を検知し、ドライバの呼気の流速と、ドライバから発せられた飛沫粒子の速度とを計測する(ステップS02)。
【0039】
次に、呼気流速センサ11が、ドライバから発せられた飛沫粒子の速度及び到達距離が、図2に示されている飛沫粒子の挙動と同程度かそれ以上であるか否かを、速度及び到達距離が所定の閾値以上であるか否かによって判定する(ステップS03)。飛沫粒子の速度及び到達距離が、図2に示されている飛沫粒子の挙動未満であると判定された場合、一連の処理は終了する。一方、飛沫粒子の速度及び到達距離が、図2に示されている飛沫粒子の挙動と同程度かそれ以上であると判定された場合(即ち、ドライバのくしゃみといった所定の生理現象が検知された場合)、後述のステップS04に移行する。
【0040】
ステップS04では、シグナル発生部12が、音や光Lをシグナルとしてマイクスピーカ14及びカメラ15に向けて発生させる。次に、マイクスピーカ14が、シグナル発生部12によって発せられた音をシグナルとして検知するとともに、カメラ15が、シグナル発生部12によって発せられた光をシグナルとして検知して、シグナル検知部16が、シグナルを検知したことを示す電気信号を受信する(ステップS05)。そして、後述のステップS06及びS11に移行する。
【0041】
ステップS06では、操作量検知部3が、所定時間内におけるドライバによる所定の運転操作を検知してこの運転操作の操作量を測定する。ドライバによる所定の運転操作としては、例えば、自車両のステアリングホイールWやアクセルペダルAやブレーキペダルBといった操作手段に対する所定の操作が挙げられる。
【0042】
そして、条件判断部5が、操作量検知部3により測定された操作量に基づいて、ドライバによる所定の急な運転操作が行われたか否かを判定する(ステップS07)。操作量検知部3により測定された所定時間内における操作量が、所定の操作量未満であった場合、一連の処理は終了する。一方、操作量検知部3により測定された所定時間内における操作量が、所定の操作量以上であった場合に、上記の所定の急な運転操作が行われたと判定され、後述のステップS08に移行する。
【0043】
ステップS08では、緩和制御部6が、この所定の急な運転操作による自車両の急な挙動を、トルク調整やゲイン調整を行うことによって緩和する緩和制御を行なう。次に、タイマ7が、緩和制御部6による緩和制御が開始してからの経過時間(例えば、くしゃみといった所定の生理現象を検知可能な通常の生理現象継続時間)を計測し(ステップS09)、タイマ7により計測された経過時間が所定時間以上となった場合に、後述のステップS10に移行する。なお、ステップS01〜ステップS05は、ドライバのくしゃみを検知するステップ群のグループGを構成している。
【0044】
ステップS10では、緩和制御部6が、この緩和制御を解除して、一連の処理は終了する。
【0045】
ステップS11では、初期位置記憶部4が、上記の所定の運転操作が行われる前の操作状態を初期位置として記憶する。次に、初期位置記憶部4が、上記の初期位置としての操作状態に戻ったか否かを判断する(ステップS12)。初期位置としての操作状態に戻っていないと判断された場合、再度、ステップS12における判断処理が実行される。一方、初期位置としての操作状態に戻ったと判断された場合、前述のステップS10に移行する。
【0046】
(5)車両挙動制御装置による作用及び効果
本発明に係る車両操作支援装置としての車両挙動制御装置10では、自車両のドライバのくしゃみといった所定の生理現象が検知された際に、この生理現象の検知をトリガとして、ドライバによる所定の急な運転操作が行われたか否かを判定する。そして、所定の急な運転操作が行われたと判定された場合に、所定の急な運転操作による自車両の挙動を緩和する。
【0047】
このため、ドライバのくしゃみといった所定の生理現象を原因とする意図しない急な所定の運転操作(例えば、我慢するのが困難なくしゃみといった瞬発的な生理現象の瞬間に眼を瞑るとともに思わず力を入れてしまう操作)を原因とする自車両の挙動を緩和して運転における安全性を高めることが可能になる。更に、くしゃみといった所定の生理現象を踏ん張ってこらえようと全身の筋肉を収縮させてしまうことを原因とする不本意な急な所定の運転操作を原因とする自車両の挙動を緩和して運転における安全性を高めることの支援も、可能になる。
【0048】
なお、くしゃみの瞬間は、顔の表面部分の「顔面筋」が運動を起こし、この「顔面筋」に伴なって、瞼を閉じようとする「眼輪筋」の運動が協調して起こる。この「眼輪筋」の運動は、大脳皮質下の「共同運動」であり、くしゃみという随意運動に伴なって引き起こされる不随意運動であるため、主体的な意思や意識とは無関係に自然に瞼が閉じられる。このことから、くしゃみの瞬間は眼を瞑るというメカニズムは、いわゆる生物学における「反射」であって回避するのが困難である。
【0049】
しかしながら、車両挙動制御装置10によれば、回避するのが困難なくしゃみといった瞬発的な生理現象の瞬間に眼を瞑るとともに思わず力を入れてしまう操作を原因とする自車両の挙動を緩和して、運転における安全性を高めることが可能になる。
【0050】
また、緩和制御が開始してからの経過時間が所定時間以上となった場合、ドライバの意図による操作が可能になっている状態であると推測されるため不要になったと考えられる緩和制御を解除することが可能になる。
【0051】
また、所定の急な運転操作が行われる前の操作状態になったと判断された場合、ドライバの意図による操作が可能になっている状態であると推測されるため不要になったと考えられる緩和制御を解除することが可能になる。
【0052】
また、ステアリングホイールWやアクセルペダルAやブレーキペダルBといった操作子に対する急な操作が行われたと判定された場合に、この急な操作による自車両の挙動を緩和して運転における安全性を高めることが可能になる。
【0053】
また、生理現象検知部1はマスク形状のセンサ部分であるため、くしゃみといった所定の生理現象の瞬間のドライバの顔向きや姿勢によらずに、更に車室内に複数のセンサを設置する必要なく、より精度よく生理現象を低コストで検知することが可能になる。
【0054】
また、生理現象検知部1はマスク形状のセンサ部分であるため、花粉症の症状を有するドライバにとってこれを装着することに対する抵抗感は比較的小さく、自発的な装着の実施効果が期待される。
【0055】
また、呼気流速センサ11によってドライバのくしゃみといった所定の生理現象が検知されると、シグナル発生部12が、音や光Lをマイクスピーカ14及びカメラ15に向けて発し、マイクスピーカ14がこの音をシグナルとして検知するとともに、カメラ15がこの光をシグナルとして検知する。このようなシグナルの無線通信では、ドライバの運転操作に制限を加えることがないため、ドライバの運転の際の自由度を確保することができる。
【0056】
(6)変形例
上記の実施例では、生理現象検知部1は、ドライバの呼気の流速とドライバから発せられた飛沫粒子の速度及び到達距離とを測定し、この流速と飛沫粒子の速度及び到達距離に基づいて、くしゃみを検知する構成であるとして説明したが、ドライバのくしゃみといった所定の生理現象を検知が可能であれば検知方法は特に限定されない。
【0057】
例えば、ドライバの顎部近傍の筋電を計測して筋電の所定量以上の急な変動を検出することによる検知方法であってもよく、ドライバの位置のシートベルトの引っ張り力を計測して引っ張り力の所定量以上の急な変動を肺活量の急な変動として検出することによる検知方法であってもよい。
【0058】
更に、運転席の前方近傍での風圧を計測して風圧の所定量以上の急な変動を検出することによる検知方法であってもよく、生理現象検知部1を、ひずみゲージを含む耳紐部を有するマスク状センサとして、ひずみゲージよって引っ張り圧力を計測して引っ張り圧力の所定量以上の急な変動を検出することによる検知方法であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明によれば、運転における安全性を高めることが可能な車両操作支援装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…生理現象検知部、2…周囲状況検知部、3…操作量検知部、4…初期位置記憶部、5…条件判断部、6…緩和制御部、7…タイマ、10…車両挙動制御装置、11…呼気流速センサ、12…シグナル発生部、13…マスクオプション、14…マイクスピーカ、15…カメラ、16…シグナル検知部、A…アクセルペダル、B…ブレーキペダル、G…グループ、L…音や光、W…ステアリングホイール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の運転操作を制御する車両操作支援装置であって、
前記自車両の運転者の所定の生理現象を検知する検知手段と、
前記検知手段により前記所定の生理現象が検知された際に、前記運転者による所定の操作が行われたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記所定の操作が行われたと判定された場合に、前記所定の操作による前記自車両の挙動を緩和する緩和制御を行なう緩和手段と、
を備えることを特徴とする車両操作支援装置。
【請求項2】
前記緩和制御が開始してからの経過時間を計測する計時手段を更に備え、
前記緩和手段は、前記計時手段により計測された前記経過時間が所定時間以上となった場合に、前記緩和制御を解除することを特徴とする請求項1に記載の車両操作支援装置。
【請求項3】
前記所定の操作が行われる前の操作状態になったか否かを判断する判断手段を更に備え、
前記緩和手段は、前記所定の操作が行われる前の操作状態になったと前記判断手段により判断された場合に、前記緩和制御を解除することを特徴とする請求項1または2に記載の車両操作支援装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記検知手段により前記所定の生理現象が検知された際に、前記所定の操作として前記自車両の操作手段に対する所定時間内の所定操作量以上の操作が行われたか否かを判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の車両操作支援装置。
【請求項5】
前記検知手段は、前記運転者の呼気の流速と当該運転者から発せられた飛沫の速度とに基づいて、前記所定の生理現象としてくしゃみを検知することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の車両操作支援装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−140271(P2011−140271A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2171(P2010−2171)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】