説明

車両用の乗員保護装置

【課題】車両の衝突時、エアバッグによる乗員の慣性力の吸収効果が最適に得られるように、ウェビングを適切に引き出すことができ、それにより、乗員を適切に保護することができる車両用の乗員保護装置を提供する。
【解決手段】乗員保護装置では、検出されたシートの位置および乗員の体格に応じて、乗員とエアバッグが最大に展開したときのエアバッグとの間の前後方向の距離である第1距離が予測されるとともに、車両が物体と衝突したと判定されてからエアバッグが最大に展開するまでの期間であるエアバッグ展開期間において、予測された第1距離とエアバッグ展開期間の長さとに基づき、モータを介してウェビングの引出速度が制御される(ステップ14)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の衝突による衝撃から乗員を保護する車両用の乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の乗員保護装置として、例えば特許文献1に開示されたものが知られている。この従来の乗員保護装置は、車両のシートに乗員を拘束するためのウェビングと、ウェビングが巻回されたリールと、車両の衝突時にウェビングを巻き取るためにリールを回転駆動するプリテンショナおよびモータを備えている。このプリテンショナは、火薬の発火によって発生するガスを用いてリールを回転駆動するものである。また、この従来の乗員保護装置では、乗員の体格が検出されるとともに、検出された乗員の体格に応じ、プリテンショナおよびモータを作動させることによって、乗員に対するウェビングの支持反力が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−179826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、車両の衝突による衝撃から乗員を適切に保護するために、車両の衝突時に、車両のステアリングホイールやインストルメントパネルと乗員との間に展開するエアバッグが、車両に設けられている。このようなエアバッグが設けられた車両に、上述した従来の乗員保護装置を適用した場合には、次のような不具合がある。すなわち、上述したように、従来の乗員保護装置では、検出された乗員の体格に応じてウェビングの支持反力が制御されるにすぎない。このため、車両の衝突時、エアバッグが最大に展開する前に、あるいは、エアバッグがしぼみ始めた後に、乗員がエアバッグに当たる場合があり、その場合には、乗員の慣性力をエアバッグで十分に吸収できず、その結果、乗員を適切に保護することができないおそれがある。また、エアバッグが展開している途中で、乗員がエアバッグに当たった場合には、慣性力とエアバッグの展開力の双方による大きな衝撃が乗員に作用してしまい、このことによっても、乗員を適切に保護することができないおそれがある。
【0005】
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、車両の衝突時、エアバッグによる乗員の慣性力の吸収効果が最適に得られるように、ウェビングを適切に引き出すことができ、それにより、乗員を適切に保護することができる車両用の乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明による車両用の乗員保護装置は、車両Vが物体と衝突したか否かを判定する衝突判定手段(実施形態における(以下、本項において同じ)ECU2、ステップ12)と、車両VのステアリングホイールSWおよびインストルメントパネルの少なくとも一方に収容され、車両Vが物体と衝突したと判定されたときに作動し、少なくとも一方と車両Vの乗員(運転者DR)との間に展開するエアバッグ4aと、車両Vのシート(運転席SE)に乗員を拘束するためのウェビング5が巻回されたリール8と、リール8を回転駆動するためのモータ9と、車両Vの前後方向におけるシートの位置を検出するシート位置検出手段(シート位置センサ22)と、シートに着座した乗員の体格を検出する体格検出手段(回転角センサ21、ECU2)と、検出されたシートの位置(シート位置SP)および乗員の体格(体格パラメータDF)に応じて、乗員とエアバッグ4aが最大に展開したときのエアバッグ4aとの間の前後方向の距離である第1距離L1を予測する距離予測手段(ECU2、ステップ33)と、車両Vが物体と衝突したと判定されてからエアバッグ4aが最大に展開するまでの期間であるエアバッグ展開期間において、予測された第1距離L1とエアバッグ展開期間の長さ(エアバッグ展開時間t1)とに基づき、モータ9を介してウェビング5の引出速度を制御する制御手段(ECU2、ステップ35、14)と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、車両が物体と衝突したか否かが、衝突判定手段によって判定され、車両の前後方向におけるシートの位置が、シート位置検出手段によって検出されるとともに、乗員の体格が、体格検出手段によって検出される。エアバッグは、ステアリングホイールおよびインストルメントパネルの少なくとも一方と乗員との間に展開するので、乗員とエアバッグが最大に展開したときのエアバッグとの間の前後方向の距離である第1距離は、車両の前後方向におけるシートの位置および乗員の体格に応じて定まる。上述した構成によれば、距離予測手段により、この第1距離を、検出されたシートの位置および体格に応じて予測するので、この予測を精度良く行うことができる。
【0008】
また、ウェビングが巻回されたリールがモータによって回転駆動されるとともに、車両が物体と衝突したと判定されたときに、エアバッグが作動し、展開する。さらに、車両が物体と衝突したと判定されてからエアバッグが最大に展開するまでの期間であるエアバッグ展開期間において、予測された第1距離とエアバッグ展開期間の長さとに基づき、ウェビングの引出速度が、モータを介して制御手段により制御される。上述したように、第1距離が、乗員と最大に展開したときのエアバッグとの間の距離であることと、エアバッグ展開期間が、車両が物体と衝突したと判定されてからエアバッグが最大に展開するまでの期間であることから、車両の衝突時、エアバッグ展開期間において、上記の制御手段によるウェビングの引出速度の制御によって、エアバッグが最大に展開したタイミングで、すなわち、エアバッグの展開力(膨張力)がほぼなくなったタイミングで、乗員がエアバッグに当たるように、ウェビングを引き出すことができる。したがって、車両の衝突時、エアバッグによる乗員の慣性力の吸収効果を最適に得ることができるとともに、慣性力とエアバッグの展開力の双方による大きな衝撃が乗員に作用するのを回避でき、乗員を適切に保護することができる。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両用の乗員保護装置において、距離予測手段は、最大に展開したエアバッグ4aに乗員が当たったときのステアリングホイールSWおよびインストルメントパネルの少なくとも一方と乗員との間の前後方向の距離である第2距離L2をさらに予測し(ステップ36)、制御手段は、エアバッグ4aが最大に展開してからしぼむまでの期間であるエアバッグ収縮期間において、予測された第2距離L2とエアバッグ収縮期間の長さ(エアバッグ収縮時間t2)とに基づき、モータ9を介してウェビング5の引出速度を制御する(ステップ38、21)ことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、最大に展開したエアバッグに乗員が当たったときのステアリングホイールおよびインストルメントパネルの少なくとも一方(以下「少なくとも一方の収容部」という)と乗員との間の前後方向の距離である第2距離が、予測される。また、エアバッグが最大に展開してからしぼむまでの期間であるエアバッグ収縮期間において、予測された第2距離とエアバッグ収縮期間の長さとに基づいて、ウェビングの引出速度が制御される。
【0011】
上述したように、第2距離が、最大に展開したエアバッグに乗員が当たったときの少なくとも一方の収容部と乗員との間の距離であることと、エアバッグがこの少なくとも一方の収容部に収容されること、エアバッグ収縮期間が、エアバッグが最大に展開してからしぼむまでの期間であることから、車両の衝突時、エアバッグ収縮期間において、上記のウェビングの引出速度の制御により、乗員がエアバッグに当たり続けるように、ウェビングを引き出すことができる。したがって、車両の衝突時、エアバッグおよびウェビングの協働による乗員の慣性力の吸収効果を最適に得ることができ、乗員をより適切に保護することができる。同じ理由から、必要最小限のウェビングの張力によって乗員をシートに拘束でき、したがって、ウェビングにより乗員が過度に締め付けられるのを防止することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1または2に記載の車両用の乗員保護装置において、シートの位置に基づいて、エアバッグ4aの展開開始タイミング(エアバッグ展開開始タイミングTSTAB)を設定する展開開始タイミング設定手段(ECU2、ステップ32)をさらに備えることを特徴とする。
【0013】
前述したように、エアバッグは、少なくとも一方の収容部と乗員との間に展開するので、シートの位置が後ろ側であるほど、最大に展開したときのエアバッグと乗員との間の前後方向の距離である第1距離は、より大きくなる。また、請求項1に係る発明の説明で述べたように、この第1距離とエアバッグ展開期間(車両が物体と衝突したと判定されてからエアバッグが最大に展開するまでの期間)の長さに基づいて、ウェビングの引出速度を制御することによって、例えば、ウェビングの引出速度は、エアバッグが最大に展開したタイミングで乗員がエアバッグに当たるように、制御される。この場合において、例えば車両が物体と衝突したと判定されたタイミングですぐに、エアバッグを作動させたときには、第1距離が大きいほど、それに応じて、単位時間当たりのウェビングの引出量を大きくするために、ウェビングの引出速度をより高く制御しなければならず、その結果、乗員の慣性力をウェビングで十分に吸収できなくなるおそれがある。同じ理由により、エアバッグから乗員に作用する衝撃が大きくなるおそれがある。
【0014】
この場合、例えば、シートの位置が後ろ側であるほど、エアバッグの展開開始タイミングを遅らせることによって、この遅らせた時間の分、ウェビングを先に引き出すことができるので、ウェビングの引出速度を低下させることが可能になり、それにより、乗員の慣性力をウェビングで十分に吸収することができるとともに、エアバッグから乗員への衝撃を抑制することができる。上述した構成によれば、エアバッグの展開開始タイミングを、検出されたシートの位置に基づき、展開開始タイミング設定手段によって設定するので、上述したウェビングによる乗員の慣性力の吸収効果と、エアバッグから乗員への衝撃の抑制効果とを適切に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態による乗員保護装置を、車両の運転席や運転者とともに概略的に示す側面図である。
【図2】本実施形態による乗員保護装置を、車両の運転席などとともに概略的に示す正面図である。
【図3】乗員保護装置のシートベルト装置やエアバッグ装置、ECUを概略的に示す図である。
【図4】ECUによって実行される、乗員保護制御処理を示すフローチャートである。
【図5】図4に示す処理の続きを示すフローチャートである。
【図6】図4のステップ9で実行されるパラメータ算出処理のサブルーチンを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1〜図3に示す車両用の乗員保護装置は、シートベルト装置3およびエアバッグ装置4を備えている。これらのシートベルト装置3およびエアバッグ装置4として、車両Vの運転者DR用のものと、助手席(図示せず)の乗員用のものが設けられている。まず、運転者DR用のシートベルト装置3およびエアバッグ装置4について説明する。また、運転者DRから見て前側を「前」、左側を「左」として説明する。
【0017】
シートベルト装置3は、いわゆる3点式のものであり、運転者DRを運転席SEに拘束するためのウェビング5と、ウェビング5を巻き取るためのリトラクタ6を有している。リトラクタ6は、車両Vの右側のセンタピラーCPの下部に取り付けられている。ウェビング5は、リトラクタ6から上方に延びるとともに、センタピラーCPの上部に取り付けられたスルーアンカTAに通されており、ウェビング5の先端部は、センタピラーCPの下部に、アウタアンカOAを介して固定されている。ウェビング5は、運転者DRに装着されていない非装着状態では、センタピラーCPに沿って、上下方向に延びている。
【0018】
また、ウェビング5には、スルーアンカTAとアウタアンカOAの間に、タングプレートTPが設けられている。このタングプレートTPは、ウェビング5の長さ方向に移動自在であるとともに、バックルBUに着脱可能になっている。バックルBUは、車両VのフロントフロアFFに固定されており、運転席SE付近の助手席寄りに配置されている。以上の構成のシートベルト装置3では、運転席SEに着座した運転者DRが、ウェビング5をリトラクタ6から引き出し、タングプレートTPをバックルBUに係合させることによって、ウェビング5が運転者DRに装着される。この装着状態では、運転者DRは、ウェビング5によって運転席SEに拘束される。
【0019】
図3に示すように、リトラクタ6は、センタピラーCPに固定されたフレーム7と、ウェビング5が巻回されたリール8と、リール8を回転駆動するためのモータ9などで構成されている。リール8は、フレーム7に回転自在に支持されており、復帰ばね(図示せず)によって、ウェビング5を巻き取る方向(以下「巻取方向」という)に付勢されている。この復帰ばねによる付勢によって、ウェビング5は、非装着状態では、リール8に巻き取られ、リトラクタ6に部分的に収容される。
【0020】
また、リール8の軸部8aは、動力伝達機構10を介してモータ9の出力軸9aに連結されている。モータ9は、例えばDCモータで構成されており、供給された電力を動力に変換して出力軸9aから出力するものであり、動力伝達機構10とともに、車両Vの衝突時にウェビング5を巻き取るための電動式プリテンショナを構成している。モータ9の動作は、後述するECU2によって制御される。
【0021】
さらに、動力伝達機構10は、機械式のクラッチや遊星歯車装置(いずれも図示せず)などで構成されている。モータ9が正転したときには、このクラッチによって、モータ9の出力軸9aがリール8の軸部8aに接続されるとともに、遊星歯車装置によって、モータ9の動力が減速した状態でリール8に伝達される。これにより、リール8は、巻取方向に回転駆動される。一方、モータ9が逆転したときには、クラッチによって、出力軸9aと軸部8aの間が遮断される。
【0022】
以上の構成のシートベルト装置3では、車両Vの衝突時以外の通常時には、モータ9とリール8の間が、クラッチによって遮断されており、車両Vの衝突時には、ECU2によるモータ9の制御によって、モータ9が正転し、それにより、モータ9とリール8の間がクラッチで接続されるとともに、リール8が巻取方向に回転駆動される。車両Vの衝突時、運転者DRに前方への慣性力が作用し、それによりウェビング5が引き出されるのに対し、上述したモータ9の制御を行うことによって、モータ9の動力(以下「モータ動力」という)が、ウェビング5に負荷(制動力)として作用する。この場合、ECU2により、モータ動力を制御することによって、ウェビング5の引出速度(以下「ウェビング引出速度」という)、すなわち単位時間当たりの引出量が制御され、その結果、運転者DRの慣性力がウェビング5によって吸収される。その詳細については後述する。
【0023】
また、リトラクタ6には、回転角センサ21が設けられている。回転角センサ21は、ホール素子などで構成されており、リール8の回転角度位置を検出し、その検出信号をECU2に出力する。
【0024】
エアバッグ装置4は、エアバッグ4a(図1に仮想線で図示)およびインフレータ4bを有している。エアバッグ4aは、通常時には、車両VのステアリングホイールSWのパッドに、たたまれた状態で収容されており、エアバッグ4aには、ガス排出孔が形成されている。また、インフレータ4bは、点火機器や、着火薬、ガス発生剤(いずれも図示せず)などで構成されており、車両Vの衝突時、ECU2による制御によって、ガスを発生させるとともに、エアバッグ4aに供給する。これにより、エアバッグ4aは、運転者DRとステアリングホイールSWとの間に、急速に展開する。また、エアバッグ4aは、最大に展開し(展開しきった状態)、インフレータ4bからのガスの供給が終了すると、供給されたガスがガス排出孔から排出されることによって、急速にしぼむ。
【0025】
また、車両Vには、シート位置センサ22、加速度センサ23およびバックルスイッチ(以下「BU・SW」という)24が設けられている。シート位置センサ22は、車両Vにおける運転席SEの前後方向の位置(以下「シート位置」という)SPを検出し、その検出信号をECU2に出力する。また、加速度センサ23は、車両Vの加速度および減速度(以下「車両加速度」という)VGを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
【0026】
上記のBU・SW24は、前述したウェビング5のタングプレートTPがバックルBUに係合しているとき、すなわちウェビング5が装着状態のときに、ON信号をECU2に出力する一方、タングプレートTPがバックルBUに係合していないとき、すなわちウェビング5が非装着状態のときに、OFF信号をECU2に出力する。
【0027】
ECU2は、CPU、RAM、ROMおよびI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2は、前述した各種のセンサ21〜23からの検出信号およびBU・SW24からの出力信号などに応じ、ROMに記憶された制御プログラムに従って、他の車両や電柱などの物体との車両Vの衝突による衝撃から運転者DRを保護するために、シートベルト装置3およびエアバッグ装置4の動作を制御する乗員保護制御処理を実行する。
【0028】
図4および図5は、この乗員保護制御処理を示している。本処理は、所定時間(例えば1msec)ごとに繰り返し実行される。まず、図4のステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、保護完了フラグF_DONEが「1」であるか否かを判別する。この保護完了フラグF_DONEは、後述するシートベルト装置3およびエアバッグ装置4による運転者DRの保護が完了したときに「1」に設定されるものであり、車両Vの工場からの出荷時に「0」に初期化されている。その詳細については後述する。
【0029】
このステップ1の答がNO(F_DONE=0)のときには、前述したBU・SW24からON信号が出力されているか否かを判別する(ステップ2)。この答がNOのとき、すなわち、ウェビング5が非装着状態のときには、アップカウント式の衝突時タイマのタイマ値tCOを値0にリセットする(ステップ3)とともに、ステップ4、5および6において、後述するエアバッグ作動済みフラグF_AB、第1モータ制御フラグF_MC1および第2モータ制御フラグF_MC2をそれぞれ「0」にリセットし、シートベルト装置3およびエアバッグ装置4を作動させる必要がないため、そのまま本処理を終了する。
【0030】
一方、上記ステップ2の答がYESで、BU・SW24からON信号が出力されているとき、すなわち、ウェビング5が装着状態のときには、検出されたリール8の回転角度位置に基づいて、そのときにリトラクタ6から引き出されているウェビング5の引出量(以下「ウェビング引出量」という)BLを算出する(ステップ7)。次いで、BU・SW24の前回の出力信号(BU・SWZ)が、OFF信号であったか否かを判別する(ステップ8)。
【0031】
この答がYESのとき、すなわち、ウェビング5が装着された直後のときには、パラメータ算出処理を実行し(ステップ9)、後述するステップ10に進む。一方、ステップ8の答がNOで、ウェビング5の装着直後でないときには、ステップ9をスキップし、ステップ10に進む。このように、パラメータ算出処理は、ウェビング5の装着直後にのみ行われる。図6は、このパラメータ算出処理を示している。
【0032】
まず、図6のステップ31では、体格パラメータDFを算出する。この体格パラメータDFは、運転者DRの体格を、基準となる体格(成人男性の平均的な体格)に対するパーセンテージで表すものである。具体的には、体格パラメータDFは、検出されたシート位置SPと、図4のステップ7で算出されたウェビング引出量BLに応じ、所定の演算式によって算出される。この演算式は、車両Vの車種ごとに定められている。本処理(パラメータ算出処理)が上述したようにウェビング5の装着直後に1回のみ行われるため、体格パラメータDFの算出に用いられるウェビング引出量BLは、ウェビング5を装着するときにリトラクタから引き出されたウェビング5の引出量である。
【0033】
運転者DRの体格が大きいほど、シート位置SPはより後ろ側に位置し、装着のために引き出されるウェビング引出量BLはより大きくなるので、これらのパラメータSPおよびBLはいずれも、運転者DRの体格を良好に表す。したがって、シート位置SPおよびウェビング引出量BLに応じて、体格パラメータDFを精度良く算出することができる。
【0034】
上記ステップ31に続くステップ32では、シート位置SPに基づき、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、エアバッグ展開開始タイミングTSTABを算出(設定)する。エアバッグ展開開始タイミングTSTABは、車両Vの衝突時にエアバッグ4aを展開させる際の展開開始タイミングの目標値であり、後述するように車両Vが物体と衝突したと判定された時を基準とする時間で表される。また、上記のマップでは、エアバッグ展開開始タイミングTSTABは、シート位置SPが後ろ側であるほど、より遅いタイミングに設定されている。その理由については後述する。
【0035】
次いで、シート位置SPと、ステップ31で算出された体格パラメータDFに応じ、所定の演算式によって、第1距離L1を算出する(ステップ33)。この第1距離L1は、通常時における運転者DRの頭部と、エアバッグ4aが最大に展開したときのエアバッグ4aとの間の前後方向の距離の予測値である(図1参照)。この所定の演算式は、車両Vの車種ごとに定められている。
【0036】
次に、エアバッグ展開開始タイミングTSTABに応じて、エアバッグ展開時間t1を算出する(ステップ34)。このエアバッグ展開時間t1は、車両Vが物体と衝突したと判定されてからエアバッグ4aが最大に展開するまでの期間(以下「エアバッグ展開期間」という)の長さであり、エアバッグ展開開始タイミングTSTABに、エアバッグ4aが展開を開始してから最大に展開するまでに要する時間を加算することによって、算出される。なお、エアバッグ4aの展開開始から最大に展開するまでに要する時間は、実験などにより求められた所定値に設定されている。
【0037】
次いで、上記ステップ33で算出された第1距離L1を、ステップ34で算出されたエアバッグ展開時間t1で除算することによって、第1目標引出速度BLOBJ1を算出する(ステップ35)。この第1目標引出速度BLOBJ1は、ウェビング引出速度、すなわち、ウェビング5の単位時間当たりの引出量の目標値であり、シートベルト装置3のモータ9の制御に用いられる。
【0038】
次に、第2距離L2をROMから読み出す(ステップ36)。この第2距離L2は、最大に展開したエアバッグ4aに運転者DRが当たったときのステアリングホイールSWと運転者DRの頭部との間の前後方向の距離であり(図1参照)、エアバッグ4aの種類ごとに応じた、所定値に設定されている。次いで、エアバッグ収縮時間t2をROMから読み出す(ステップ37)。このエアバッグ収縮時間t2は、エアバッグ4aが最大に展開してからしぼみきるまでの期間(以下「エアバッグ収縮期間」という)の長さであり、エアバッグ4aの種類ごとに応じた所定値に設定されている。
【0039】
次に、上記ステップ36で読み出された第2距離L2を、ステップ37で読み出されたエアバッグ収縮時間t2で除算することによって、第2目標引出速度BLOBJ2を算出し(ステップ38)、本処理を終了する。この第2目標引出速度BLOBJ2は、第1目標引出速度BLOBJ1と同様、ウェビング引出速度の目標値であり、シートベルト装置3のモータ9の制御に用いられる。
【0040】
図4に戻り、前記ステップ10では、第2モータ制御フラグF_MC2が「1」であるか否かを判別する。この第2モータ制御フラグF_MC2は、後述する第2モータ制御の実行中に「1」に設定されるものである。この第2モータ制御は、車両Vの衝突による衝撃から運転者DRを保護するために、エアバッグ収縮期間(エアバッグ4aが最大に展開してからしぼみきるまでの期間)において実行されるモータ9の制御である。
【0041】
ステップ10の答がNO(F_MC2=0)のとき、すなわち、第2モータ制御の実行中でないときには、第1モータ制御フラグF_MC1が「1」であるか否かを判別する(ステップ11)。この第1モータ制御フラグF_MC1は、後述する第1モータ制御の実行中に「1」に設定されるものである。この第1モータ制御は、車両Vの衝突による衝撃から運転者DRを保護するために、エアバッグ展開期間(車両Vが物体と衝突したと判定されてからエアバッグ4aが最大に展開するまでの期間)において実行されるモータ9の制御である。
【0042】
上記ステップ11の答がNO(F_MC1=0)のとき、すなわち、第1モータ制御の実行中でないときには、検出された車両加速度VGが所定加速度VGREF以上であるか否かを判別する(ステップ12)。この所定加速度VGREFは、車両Vが物体と衝突したか否かを判定するためのものであり、実験などによって設定される。このステップ12の答がNOで、VG<VGREFのときには、車両Vが物体と衝突していないと判定するとともに、前記ステップ3〜6を実行し、本処理を終了する。
【0043】
一方、ステップ12の答がYESで、車両加速度VGが所定加速度VGREF以上のときには、車両Vが物体と衝突したと判定するとともに、当該衝突による衝撃から運転者DBを保護するために、次のステップ13以降において、シートベルト装置3およびエアバッグ装置4の動作を制御する。
【0044】
まず、ステップ13では、第1モータ制御を実行するために、前述した第1モータ制御フラグF_MC1を「1」に設定し、ステップ14に進む。このステップ13の実行により、前記ステップ11の答がYESになり、その場合には、ステップ12および13をスキップし、ステップ14に進む。
【0045】
このステップ14では、前記ステップ7で算出されたウェビング引出量BLと、図6のステップ35で算出された第1目標引出速度BLOBJ1とに基づいて、モータ9を制御する。具体的には、ウェビング引出量の今回値BLから前回値BLZを減算した値を、実際のウェビング引出速度として算出するとともに、算出されたウェビング引出速度と第1目標引出速度BLOBJ1との偏差を算出する。次いで、算出された偏差に基づき、所定のフィードバック制御アルゴリズムに従って、モータ動力を制御する。以上により、ウェビング引出速度が、第1目標引出速度BLOBJ1になるように、フィードバック制御される。
【0046】
次いで、図5のステップ15において、エアバッグ作動済みフラグF_ABが「1」であるか否かを判別する。このエアバッグ作動済みフラグF_ABは、エアバッグ4aを作動させたときに「1」に設定されるものである。このステップ15の答がNO(F_AB=0)のとき、すなわち、エアバッグ4aが作動していないときには、前記ステップ3でリセットされた衝突時タイマのタイマ値tCOが、図6のステップ32で算出されたエアバッグ展開開始タイミングTSTAB以上であるか否かを判別する(ステップ16)。
【0047】
このステップ16の答がNOのときには、そのまま本処理を終了する一方、YES(tCO≧TSTAB)のとき、すなわち、車両Vが物体と衝突してから、エアバッグ展開開始タイミングTSTABに相当する時間が経過したときには、インフレータ4bを作動させることによって、エアバッグ4aを作動させる(ステップ17)。これにより、前述したようにインフレータ4bからエアバッグ4aにガスが供給されることによって、エアバッグ4aが急速に展開する。
【0048】
次いで、エアバッグ4aが作動したことを表すために、エアバッグ作動済みフラグF_ABを「1」に設定し(ステップ18)、ステップ19に進む。このステップ18の実行により、前記ステップ15の答がYESになり、その場合には、上記ステップ16〜18をスキップし、ステップ19に進む。
【0049】
このステップ19では、衝突時タイマのタイマ値tCOが、図6のステップ34で算出されたエアバッグ展開時間t1以上であるか否かを判別する。この答がNOのときには、そのまま本処理を終了する一方、YES(tCO≧t1)になったときには、エアバッグ4aが最大に展開したとして、第1モータ制御を終了し、引き続いて第2モータ制御を実行するために、第2モータ制御フラグF_MC2を「1」に設定し(ステップ20)、ステップ21に進む。このステップ20の実行により、前記ステップ10の答がYESになり、その場合には、ステップ11〜20をスキップし、ステップ21に進む。
【0050】
このステップ21では、ウェビング引出量BLと、図6のステップ38で算出された第2目標引出速度BLOBJ2とに基づいて、モータ9を制御する。具体的には、前記ステップ14と同様、ウェビング引出量の今回値BLから前回値BLZを減算することによって、実際のウェビング引出速度を算出するとともに、算出されたウェビング引出速度と第2目標引出速度BLOBJ2との偏差を算出する。次いで、算出された偏差に基づき、所定のフィードバック制御アルゴリズムに従って、モータ動力を制御する。以上により、ウェビング引出速度が、第2目標引出速度BLOBJ2になるように、フィードバック制御される。
【0051】
次に、衝突時タイマのタイマ値tCOが、エアバッグ展開時間t1と、図6のステップ37で読み出されたエアバッグ収縮時間t2との和以上であるか否かを判別する(ステップ22)。この答がNOのときには、そのまま本処理を終了する一方、YES(tCO≧t1+t2)になったときには、最大に展開したエアバッグ4aがしぼみきったとして、シートベルト装置3およびエアバッグ装置4による運転者DRの保護が完了したことを表すために、保護完了フラグF_DONEを「1」に設定し(ステップ23)、本処理を終了する。
【0052】
このステップ23の実行により、前記ステップ1の答がYESになり、その場合には、前記ステップ3〜6を実行し、本処理を終了する。保護完了フラグF_DONEは、このように「1」に設定された後には、工場などにおいて、エアバッグ4aが装着され、再度、使用可能になったときに「0」にリセットされる。
【0053】
なお、助手席の乗員用のシートベルト装置およびエアバッグ装置は、上述した運転手用のものとほぼ同様に構成されており、エアバッグ装置のエアバッグが、助手席の前方のインストルメントパネルに収容されていることが、主に異なる。このため、その詳細な説明については省略する。また、助手席用のシートベルト装置およびエアバッグ装置についても、車両Vの衝突による衝撃から助手席の乗員を保護するために、上述した乗員保護制御処理と同様の処理が実行される。この場合、エアバッグがステアリングホイールSWではなく、インストルメントパネルに収容されているので、第2距離が最大に展開したエアバッグに乗員が当たったときの乗員の頭部とインストルメントパネルとの間の前後方向の距離であることが、主に異なっている。その詳細な説明については省略する。
【0054】
また、本実施形態における各種の要素と、本発明における各種の要素との対応関係は、次のとおりである。すなわち、本実施形態における運転席SEおよびシート位置センサ22が、本発明におけるシートおよびシート位置検出手段にそれぞれ相当するとともに、本実施形態における回転角センサ21、シート位置センサ22およびECU2が、本発明における体格検出手段に相当する。また、本実施形態におけるECU2が、本発明における衝突判定手段、距離予測手段、制御手段および展開開始タイミング設定手段に相当する。さらに、本実施形態における体格パラメータDFが、本発明における乗員の体格に相当し、本実施形態におけるエアバッグ展開時間t1が、本発明におけるエアバッグ展開期間の長さに相当するとともに、本実施形態におけるエアバッグ収縮時間t2が、本発明におけるエアバッグ収縮期間の長さに相当する。
【0055】
以上のように、本実施形態によれば、車両Vが物体と衝突したか否かが判定され(ステップ12)、シート位置SPが検出されるとともに、運転者DRの体格を表す体格パラメータDFが算出される(ステップ31)。また、通常時における運転者DRとエアバッグ4aが最大に展開したときのエアバッグ4aとの間の前後方向の距離である第1距離L1を、検出されたシート位置SPおよび体格パラメータDFに応じて算出する(ステップ33)ので、この算出を精度良く行うことができる。また、ウェビング5が巻回されたリール8がモータ9によって回転駆動されるとともに、車両Vが物体と衝突したと判定されたときに(ステップ12:YES)、エアバッグ4aが作動し(ステップ17)、展開する。
【0056】
さらに、算出された第1距離L1を、エアバッグ展開期間(車両Vが物体と衝突したと判定されてからエアバッグ4aが最大に展開するまでの期間)の長さであるエアバッグ展開時間t1で除算することによって、第1目標引出速度BLOBJ1が算出される(ステップ35)。また、エアバッグ展開期間において(ステップ12:YES、ステップ19:NO)、第1モータ制御が実行され、それにより、ウェビング引出速度が算出された第1目標引出速度BLOBJ1になるように、モータ動力が制御される(ステップ14)。これにより、車両Vの衝突時、エアバッグ展開期間において、エアバッグ4aが最大に展開したタイミングで運転者DRがエアバッグ4aに当たるように、すなわち、エアバッグ4aの展開力がほぼなくなったタイミングで運転者DRがエアバッグ4aに当たるように、ウェビング5を引き出すことができる。したがって、車両Vの衝突時、エアバッグ4aによる運転者DRの慣性力の吸収効果を最適に得ることができるとともに、慣性力とエアバッグ4aの展開力の双方による大きな衝撃が運転者DRに作用するのを回避でき、運転者DRを適切に保護することができる。
【0057】
また、最大に展開したエアバッグ4aに運転者DRが当たったときのステアリングホイールSWと運転者DRとの間の前後方向の距離である第2距離L2が、読み出される(ステップ37)とともに、読み出された第2距離L2を、エアバッグ収縮期間(エアバッグ4aが最大に展開してからしぼむまでの期間)の長さであるエアバッグ収縮時間t2で除算することによって、第2目標引出速度BLOBJ2が算出される(ステップ38)。さらに、エアバッグ収縮期間において(ステップ19:YES、ステップ22:NO)、第2モータ制御が実行され、ウェビング引出速度が算出された第2目標引出速度BLOBJ2になるように、モータ動力が制御される(ステップ21)。これにより、車両Vの衝突時、エアバッグ収縮期間において、運転者DRがエアバッグ4aに当たり続けるように、ウェビング5を引き出すことができる。したがって、車両Vの衝突時、エアバッグ4aおよびウェビング5の協働による運転者DRの慣性力の吸収効果を最適に得ることができ、運転者DRをより適切に保護することができる。同じ理由により、必要最小限のウェビング5の張力によって運転者DRを運転席SEに拘束でき、したがって、ウェビング5により運転者DRが過度に締め付けられるのを防止することができる。
【0058】
さらに、請求項3に係る発明の説明で述べたように、エアバッグ4aが最大に展開したタイミングで運転者DRがエアバッグ4aに当たるように、ウェビング引出速度を制御する場合には、シート位置SPが後ろ側であるほど、エアバッグ4aの展開開始タイミングを遅らせることによって、この遅らせた時間の分、ウェビング5を先に引き出すことができるので、ウェビング引出速度を低下させることが可能になり、運転者DRの慣性力をウェビング5で十分に吸収することができるとともに、エアバッグ4aから運転者DRへの衝撃を抑制することができる。本実施形態によれば、シート位置SPが後ろ側であるほど、エアバッグ展開開始タイミングTSTABを、より遅いタイミングに算出する(ステップ32)ので、上述したウェビング5による運転者DRの慣性力の吸収効果と、エアバッグ4aから運転者DRへの衝撃の抑制効果とを適切に得ることができる。また、以上の効果を、助手席の乗員についても同様に得ることができる。
【0059】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、モータ9は、DCモータであるが、ACモータでもよい。また、実施形態では、エアバッグ展開開始タイミングTSTABを、シート位置SPに基づいて算出しているが、車両Vが物体と衝突したと判定されたタイミングと同じタイミングに設定してもよい。すなわち、車両Vが物体と衝突したと判定されたのと同時に、エアバッグ4aを展開させてもよい。さらに、実施形態では、体格パラメータDFを算出するためのパラメータとして、シート位置SPおよびウェビング引出量BLの双方を用いているが、これらのパラメータSP、BLに代えて、または、これらのパラメータSP、BLとともに、センサなどで検出された運転者DRの体重を用いてもよい。あるいは、検出された運転者DRの体重をそのまま、体格パラメータDFとして用いてもよい。
【0060】
また、実施形態では、第1および第2モータ制御によって、ウェビング引出速度を、第1および第2目標引出速度BLOBJ1、BLOBJ2になるようにそれぞれフィードバック制御しているが、オープンループ制御してもよい。また、第1および第2目標引出速度BLOBJ1、BLOBJ2に代えて、第1目標引出速度BLOBJ1の逆数(t1/L1)や、第2目標引出速度BLOBJ2の逆数(t2/L2)を用いてもよい。
【0061】
さらに、本発明は、互いに異なる量のガスを発生させる複数のインフレータを備え、膨張率が可変のエアバッグ装置(車両の衝突状況に応じてエアバッグの膨張率を段階的に変更可能に構成されたエアバッグ装置)にも適用可能である。この場合、第1距離L1は、シート位置SPおよび体格パラメータDFに加え、エアバッグの膨張率に応じて変化するので、エアバッグの膨張率にさらに応じて算出される。このことは、エアバッグ展開時間t1、エアバッグ収縮時間t2および第2距離L2についても同様に当てはまる。
【0062】
また、実施形態では、運転席SE用のエアバッグ4aおよび助手席用のエアバッグの双方が設けられた車両Vに本発明を適用した例であるが、本発明は、運転席SE用のエアバッグ4aおよび助手席用のエアバッグの一方が設けられた車両にも適用可能である。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0063】
V 車両
DR 運転者(乗員)
SE 運転席(シート)
SW ステアリングホイール
2 ECU(衝突判定手段、体格検出手段、距離予測手段、制御手段、展開開始 タイミング設定手段)
4a エアバッグ
5 ウェビング
8 リール
9 モータ
21 回転角センサ(体格検出手段)
22 シート位置センサ(シート位置検出手段)
SP シート位置
DF 体格パラメータ(乗員の体格)
L1 第1距離
t1 エアバッグ展開時間(エアバッグ展開期間の長さ)
L2 第2距離
t2 エアバッグ収縮時間(エアバッグ収縮期間の長さ)
TSTAB エアバッグ展開開始タイミング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が物体と衝突したか否かを判定する衝突判定手段と、
前記車両のステアリングホイールおよびインストルメントパネルの少なくとも一方に収容され、前記車両が物体と衝突したと判定されたときに作動し、前記少なくとも一方と前記車両の乗員との間に展開するエアバッグと、
前記車両のシートに乗員を拘束するためのウェビングが巻回されたリールと、
当該リールを回転駆動するためのモータと、
前記車両の前後方向における前記シートの位置を検出するシート位置検出手段と、
前記シートに着座した乗員の体格を検出する体格検出手段と、
前記検出されたシートの位置および乗員の体格に応じて、乗員と前記エアバッグが最大に展開したときの前記エアバッグとの間の前後方向の距離である第1距離を予測する距離予測手段と、
前記車両が物体と衝突したと判定されてから前記エアバッグが最大に展開するまでの期間であるエアバッグ展開期間において、前記予測された第1距離と前記エアバッグ展開期間の長さとに基づき、前記モータを介して前記ウェビングの引出速度を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする車両用の乗員保護装置。
【請求項2】
前記距離予測手段は、最大に展開した前記エアバッグに乗員が当たったときの前記ステアリングホイールおよび前記インストルメントパネルの前記少なくとも一方と乗員との間の前後方向の距離である第2距離をさらに予測し、
前記制御手段は、前記エアバッグが最大に展開してからしぼむまでの期間であるエアバッグ収縮期間において、前記予測された第2距離と前記エアバッグ収縮期間の長さとに基づき、前記モータを介して前記ウェビングの引出速度を制御することを特徴とする、請求項1に記載の車両用の乗員保護装置。
【請求項3】
前記シートの位置に基づいて、前記エアバッグの展開開始タイミングを設定する展開開始タイミング設定手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の車両用の乗員保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−79010(P2013−79010A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220424(P2011−220424)
【出願日】平成23年10月4日(2011.10.4)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】