説明

車両用サスペンション装置

【課題】バンプ時におけるスプリングの圧縮量を低減すると共に、客室や荷室の充分なスペースを確保すること。
【解決手段】ショックアブソーバ26の下部側でナックル12に対して車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられ、ロアアーム20に一端が支持されると共に、前記一端における車両前後方向の軸周りにロアアーム20に対して回動可能に設けられる第1リンクアーム34と、ナックル12の車両上下方向の中間部に一端が支持され、他端がショックアブソーバ26の下端に支持され、ナックル12及びショックアブソーバ26に対して車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられる第2リンクアーム36と、第2リンクアーム36の車両上下方向上側に位置し、ナックル12及びショックアブソーバ26のそれぞれに車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられる第3リンクアーム38とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ストラット式サスペンションが開示されている。図7に示されるように、このストラット式サスペンション1は、ナックル2と、前記ナックル2に軸着され車両前後方向に互いに隔置された一対のサスペンションアーム(ロアアーム)3a、3bと、上端がコイルスプリング4を介して車体(アッパサポート)に固定され下端がコネクティングロッド5に固定されたショックアブソーバ6とを有する。
【0003】
サスペンションアーム3aには、ボールジョイントを介してキャンバーコントロールリンク7の一端が軸着され、前記キャンバーコントロールリンク7の他端がボールジョイントを介してコネクティングロッド5の下端に軸着されている。
【0004】
特許文献1に開示されたストラット式サスペンション1では、車体に対して車輪が上方に変位(移動)する、つまりバンプストロークする際、ショックアブソーバ6が圧縮されるため、前記ショックアブソーバ6の下端に固定されるコネクティングロッド5も一体的に上方に変位する。また、ナックル2に連結される一対のサスペンションアーム3a、3bが、車体側端部を旋回中心として上方に揺動する。
【0005】
このようにバンプストロークする際、一端がコネクティングロッド5に他端がサスペンションアーム3aに連結されるキャンバーコントロールリンク7は、コネクティングロッド5及びサスペンションアーム3a、3bの上方への変位に伴って両者の変位を許容すると共に、コネクティングロッド5の端部を車幅方向内側(図7の矢印A参照)に引き込むように揺動する。
【0006】
この結果、特許文献1に開示されたストラット式サスペンション1では、バンプストローク時のサスペンションアーム3a、3bのナックル2側連結点の車幅方向内側への変位量(移動量)に対して、コネクティングロッド5のキャンバーコントロールリンク7側連結点の車幅方向内側への変位量(移動量)を大きくすることができ、バンプストローク時に車輪がネガティブ方向のキャンバー角となるように設定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−237611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示されたストラット式サスペンション1では、ナックル2がショックアブソーバ6の下端に固定されたアーム8の先端にボールジョイント9を介して軸着されていることから、サスペンションストローク時において、ショックアブソーバ6と同軸に配置されるコイルスプリング4のスプリングストローク量が、従来のストラット式サスペンションと比較してレバー比分だけ小さくなるが、車輪側に近接して配置されるコイルスプリング4(ショックアブソーバ6)によってこのレバー比が小さく設定されているため、コイルスプリング4のスプリングストローク量が大きくなる。
【0009】
このように、コイルスプリング4のスプリングストローク量が大きいと、ストローク時にコイルスプリング4の線間(密着余裕)が埋まってしまい、周回して隣接するコイルスプリングが摩擦接触して損傷するおそれがあり、又は異音が発生するおそれがある。これを回避するために、例えば、コイルスプリング4の線間の寸法を増大させると、コイルスプリング4の延出方向に沿った全長を従来と比較して伸長させる必要があり、車体側のスペースに影響を与えて客室や荷室の充分なスペースを確保することが困難となる。
【0010】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、バンプ時におけるスプリングの圧縮量を低減すると共に、客室や荷室の充分なスペースを確保することが可能な車両用サスペンション装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の目的を達成するために、本発明は、車輪を回転可能に支持するナックルと、前記ナックルと車体との間に介装され、前記ナックルを揺動自在に支持するロアアームと、前記車体と前記ナックルとの間に掛け渡され、前記車体の衝撃を吸収するショックアブソーバと、前記ショックアブソーバと同軸に配置されるスプリングとを有する車両用サスペンション装置であって、前記ショックアブソーバの下部側で車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられ、前記ロアアームに一端が支持されると共に、前記一端における車両前後方向の軸周りに前記ロアアームに対して回動可能に設けられる第1リンク部材と、前記ナックルの車両上下方向の中間部に一端が支持され、他端が前記ショックアブソーバの下端に支持され、前記ナックル及び前記ショックアブソーバに対して車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられる第2リンク部材と、前記第2リンク部材の車両上下方向上側に位置し、前記ナックル及び前記ショックアブソーバのそれぞれに車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられる第3リンク部材とを備えることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、ナックルとショックアブソーバとの間に、第1リンク部材、第2リンク部材及び第3リンク部材からなるリンク機構を介在させ、例えば、バンプ時において、第2リンク部材及び第3リンク部材の回動領域を大きく確保することができるため、車輪側のナックルのストローク量に対するスプリングのストローク量を低減させることができる。この結果、本発明では、スプリングの線間が埋まってしまうことを抑制することができると共に、スプリングの車体側の取り付け点を従来のストラット式サスペンションと比較して低く設定することができるため、客室・荷室スペースを充分に確保することができる。
【0013】
また、本発明は、前記第3リンク部材の回動半径が、前記第2リンク部材の回動半径よりも小さくなるように設定されることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、車両方向上側に配置された第3リンク部材の回動半径を、車両方向下側に配置された第2リンク部材の回動半径よりも小さく設定することにより、バンプ時にナックルの上端を車幅方向内側に引き込むことができ、ネガティブ方向へのキャンバー変化量を大きくして車両の操縦安定性を向上させることができる。
【0015】
さらに、本発明は、前記ナックルが、前記第2リンク部材及び前記第3リンク部材を取り付けるように延出した延出部を備え、前記延出部の延出方向と前記第2リンク部材との車幅方向内側になす角度(θ1)及び前記延出部の延出方向と前記第3リンク部材との車幅方向内側になす角度(θ2)が、それぞれ、180度未満に設定されることを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、バンプ時に延出部の延出方向と第2リンク部材との車幅方向内側になす角度(θ1)及び延出部の延出方向と第3リンク部材との車幅方向内側になす角度(θ2)が、180度未満に設定されることにより、それぞれの角度(θ1、θ2)が減少する方向に確実に第2リンク部材及び第3リンク部材を回動させることができる。この結果、例えば、バンプ時において、第2リンク部材及び第3リンク部材の回動領域を大きく確保することにより、車輪側のナックルのストローク量に対するスプリングのストローク量を低減させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、バンプ時におけるスプリングの圧縮量を低減すると共に、客室や荷室の充分なスペースを確保することが可能な車両用サスペンション装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係るサスペンション装置の斜視図である。
【図2】(a)は、図1のII−II線に沿った横断面図、(b)は、図1の部分拡大側面図である。
【図3】ジョイントの一部切り欠き断面図である。
【図4】図1に示すサスペンション装置のスケルトン図である。
【図5】(a)は、本実施形態に係るサスペンション装置を、車両の通常走行状態で正面視した図、(b)は、バンプ時において正面視した図である。
【図6】(a)は、比較例に係るサスペンション装置を、車両の通常走行状態で正面視した図、(b)は、バンプ時において正面視した図である。
【図7】従来技術に係るストラット式サスペンションの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るサスペンション装置の斜視図であり、図2(a)は、図1のII−II線に沿った横断面図、図2(b)は、図1の部分拡大側面図である。
【0020】
図1に示されるように、サスペンション装置10は、タイヤ及びホィール等からからなる車輪W(図4参照)を回転自在に軸支(支持)するナックル12と、前記ナックル12の下端にボールジョイント14を介して車幅方向外端の一端部が連結され、且つ車幅方向内端の他端部がゴムブッシュジョイント16を介して車体18に連結されるロアアーム20とを含む。なお、図1において、Frは、車両の前方を示し、Rrは、車両の後方を示している。
【0021】
この場合、前記ロアアーム20は、ナックル12と車体18との間に介装され、ゴムブッシュジョイント16を揺動支点として、前記ナックル12を揺動自在に支持するものである。また、本実施形態では、単体で形成されたA型アームからなるロアアーム20を例示しているが、これに限定されるものではなく、複数の部材で構成するようにしてもよい。
【0022】
また、サスペンション装置10は、車体18とナックル12との間に掛け渡され、上端に設けられた車体固定部22が車体18のアッパサポート24に固定されて車体18に付与される衝撃を吸収するショックアブソーバ26と、有底円筒状に形成され前記ショックアブソーバ26の下部側に一体的に外嵌されるブラケット28と、前記ショックアブソーバ26の外周に沿って螺旋状に延在すると共に、前記ショックアブソーバ26の軸線と同軸に装着されるコイルスプリング(スプリング)30と、ショックアブソーバ26の下方側に位置して前記ショックアブソーバ26を支持すると共に、前記ショックアブソーバ26、ロアアーム20、車輪W側のナックル12をそれぞれリンクするリンク機構32とを有する。
【0023】
このリンク機構32は、ショックアブソーバ26の下部側に設けられたブラケット28とロアアーム20とをリンクする第1リンクアーム(第1リンク部材)34と、ショックアブソーバ26の下部側に設けられたブラケット28と車輪W側のナックル12とをリンクする第2リンクアーム(第2リンク部材)36及び第3リンクアーム(第3リンク部材)38とから構成される。
【0024】
第1リンクアーム34は、後記するように、スプリングストロークコントロールリンクとして機能するものである。この第1リンクアーム34の軸方向に沿った一端部(下端部)は、ジョイントを介してロアアーム20の膨出部20aに連結されると共に、前記ロアアーム20に対して車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられる。また、第1リンクアーム34の軸方向に沿った他端部(上端部)は、ジョイントを介して前記ショックアブソーバ26の下部側に設けられたブラケット28の膨出部28aに連結されると共に、前記ナックル12に対して車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられる。
【0025】
第2リンクアーム36及び第3リンクアーム38は、それぞれ、ショックアブソーバ26(ブラケット28)とナックル12の延出部12aとの間で横方向に沿って所定間隔離間して取り付けられる。この場合、第2リンクアーム36は、車両上下方向の下側に位置し、第3リンクアーム38は、車両上下方向の上側に位置するように配設される。
【0026】
第2リンクアーム36は、後記するように、キャンバーコントロールリンクとして機能するものである。この第2リンクアーム36の軸方向に沿った一端部は、ナックル12の車両上下方向の中間部にジョイントを介して軸支され、他端部は、ショックアブソーバ26の下部側に設けられたブラケット28の膨出部28bにジョイントを介して軸支される。従って、第2リンクアーム36は、ナックル12及びショックアブソーバ26に対して車両前後方向の軸周りにそれぞれ回動可能に取り付けられる。
【0027】
第3リンクアーム38は、後記するように、キャンバーコントロールリンクとして機能するものである。この第3リンクアーム38の軸方向に沿った一端部は、ナックル12の車両上下方向の一端部にジョイントを介して軸支され、他端部は、ショックアブソーバ26の下部側に設けられたブラケット28の膨出部28cにジョイントを介して軸支される。従って、第3リンクアーム38は、第2リンクアーム36よりも車両上下方向の上側に位置し、ナックル12及びショックアブソーバ26に対して車両前後方向の軸周りにそれぞれ回動可能に取り付けられる。
【0028】
この場合、図2(b)に示されるように、第3リンクアーム38の軸方向に沿った長さ(一方の連結点から他方の連結点までの長さ)D2が、第2リンクアーム36の軸方向に沿った長さ(一方の連結点から他方の連結点までの長さ)D1よりも短く形成されることにより(D1>D2)、前記第3リンクアーム38の回動半径は、前記第2リンクアーム36の回動半径よりも小さくなるように設定される。
【0029】
本実施形態では、車両方向上側に配置された第3リンクアーム38の回動半径を、車両方向下側に配置された第2リンクアーム36の回動半径よりも小さく設定することにより、バンプ時にナックル12の上端を車幅方向内側に引き込むことができ、ネガティブ方向へのキャンバー変化量を大きくして車両の操縦安定性を向上させることができる。
【0030】
また、図2(b)に示されるように、ナックル12の上部側に設けられた延出部12aの延出方向Cと第2リンクアーム36の軸線T1との間で車幅方向内側になす角度θ1及び前記延出部12aの延出方向Cと第3リンクアーム38の軸線T2との間で車幅方向内側になす角度θ2は、それぞれ、180度未満に設定される。
【0031】
本実施形態では、例えば、バンプ時において、延出部12aの延出方向と第2リンクアーム36との車幅方向内側になす角度(θ1)及び延出部12aの延出方向と第3リンクアーム38との車幅方向内側になす角度(θ2)が、180度未満に設定されることにより、それぞれの角度(θ1、θ2)が減少する方向に確実に第2リンクアーム36及び第3リンクアーム38を回動させることができる。この結果、例えば、バンプ時において、第2リンクアーム36及び第3リンクアーム38の回動領域を大きく確保することにより、車輪W側のナックル12のストローク量に対するコイルスプリング30のストローク量を低減させることができる。この点については、後記で詳細に説明する。
【0032】
図3は、ジョイントの一部切り欠き断面図である。この場合、リンク機構32において各リンク点を構成するジョイントは、全て同一構成からなるため、第2リンクアーム36とナックル12とを連結するジョイントを例にして以下説明する。
【0033】
図3に示されるように、ジョイントは、内筒側部材40aと、外筒側部材40bと、前記内筒側部材40aと前記外筒側部材40bとの間に介装され転動自在に設けられたボールベアリング42と、内筒側部材40a及び外筒側部材40bを貫通し、第2リンクアーム36の端部に設けられた二股分岐部44を締結力によって内筒側部材40aに固定するボルト46及びナット48とを有する。この場合、ボルト46及びナット48の締結力によって第2リンクアーム44の二股分岐部44及び外筒側部材40bは、内筒側部材40aに対して回動可能に設けられる。
【0034】
なお、ジョイントを構成するボルト46は、リンク機構32を構成する連結点として機能するものであり、図4のスケルトン図、図5及び図6の動作説明図では、説明の便宜上、各ボルト46を対応する連結点として示している。すなわち、第1リンクアーム34とロアアーム12との連結点をA1とし、第1リンクアーム34とショックアブソーバ26(ブラケット28)との連結点をA2とし、第2リンクアーム36とナックル12との連結点をB1とし、第2リンクアーム36とショックアブソーバ26(ブラケット28)との連結点をB2とし、第3リンクアーム38とナックル12との連結点をC1とし、第3リンクアーム38とショックアブソーバ26(ブラケット28)との連結点をC2として描出している。
【0035】
本実施形態に係るサスペンション装置10は、基本的に以上のように構成されるものであり、次にその作用効果について説明する。
【0036】
図5(a)は、本実施形態に係るサスペンション装置を、車両の通常走行状態で正面視した図、図5(b)は、バンプ時において正面視した図、図6(a)は、比較例に係るサスペンション装置を、車両の通常走行状態で正面視した図、図6(b)は、バンプ時において正面視した図である。
【0037】
本実施形態に係るサスペンション装置10では、図5(b)に示されるように、第1リンクアーム34がスプリングストロークコントロールリンクとして機能し、前記第1リンクアーム34の下端部がロアアーム20の車幅方向内側の中間部に取り付けられることにより、サスペンションストローク時におけるロアアーム20の取付点(A1、14)の高さが変化して、第1リンクアーム34との取付点の高さL1よりもナックル12との取付点の高さL2が大きくなる(L1<L2)。
【0038】
このロアアーム20の取付点(A1、14)の高さ変化に基づいて、ショックアブソーバ26とナックル12との高さ変位差が発生することにより、第2リンクアーム36及び第3リンクアーム38が図5(b)の矢印方向に揺動して車輪Wのネガティブ方向へのキャンバー変化を大きくすることができる。なお、このキャンバー変化量は、キャンバーコントロールリンクとして機能する第2リンクアーム36及び第3リンクアーム38の連結点間(B1−B2間、C1−C2間)の軸長さD1及びD2によって設定される。例えば、図2(b)に示されるように、第2リンクアーム36及び第3リンクアーム38の連結点間の軸長さD1及びD2を、D1>D2とし、このD1、D2の軸長さの差(D1−D2)が大きい程、キャンバー変化量を大きくすることができる。
【0039】
さらに、本実施形態では、例えば、バンプ時等においてキャンバー変化量を大きく設定することにより、サスペンションのストローク量Sに対してコイルスプリング30の圧縮量(M1−M2)を小さく設定することができる。
【0040】
すなわち、本実施形態では、バンプ時において、ショックアブソーバ26側を回動中心として第2リンクアーム36及び第3リンクアーム38の回動領域を大きく確保することができるため、サスペンションのストローク量S(車輪W側のナックル12のストローク量S)に対するコイルスプリング30の圧縮量(M1−M2)を低減させることができる。
【0041】
この結果、本実施形態では、コイルスプリング30のストローク量(圧縮量)を小さく設定することができることにより、コイルスプリング30の線間(密着余裕)が広くなるため、コイルスプリング30の線間が埋まってしまうことを抑制することができると共に、その分だけ車両における車体固定部22の取り付け高さ位置(スプリングの車体側への取付点)を低く設定することができ、客室・荷室スペースを拡張することができる。
【0042】
図6は、ショックアブソーバの下端部にナックルを固定した通常のストラット式サスペンションを比較例に係るサスペンション装置として構成したものである。なお、比較例において、本実施形態と同一の構成要素には同一の参照符号を付している。
【0043】
この比較例に係るサスペンション装置では、サスペンションのストローク量Sに対してコイルスプリング30の圧縮量(M1−M2)が略同等で、S≒(M1−M2)となり、コイルスプリング30の圧縮量を小さくすることが困難である。すなわち、比較例では、ナックルとショックアブソーバ26と間に、例えば、リンク機構32等のサスペンションストローク量Sを抑制する機構が何ら設けられておらず、サスペンションのストローク量Sがそのまま直接的にコイルスプリング30に伝達されるため、コイルスプリング30の圧縮量を低減することが困難である。
【0044】
このように、本実施形態では、ナックル12とショックアブソーバ26との間にリンク機構32を介在させ、このリンク機構32を構成する第1〜第3リンクアーム34、36、38からなる複数のアームでショックアブソーバ26を支持することにより、例えば、バンプ時等におけるコイルスプリング30の圧縮量を低減し、ネガティブ方向のキャンバー変化量を大きくすることができる。
【0045】
この結果、本実施形態では、従来からストラット式サスペンションの課題といわれていた客室・荷室スペースの確保と、キャンバー変化による操縦安定性の向上とを好適に両立させることができる。
【符号の説明】
【0046】
10 サスペンション装置(車両用サスペンション装置)
12 ナックル
12a 延出部
26 ショックアブソーバ
30 コイルスプリング(スプリング)
32 リンク機構
34 第1リンクアーム(第1リンク部材)
36 第2リンクアーム(第2リンク部材)
38 第3リンクアーム(第3リンク部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を回転可能に支持するナックルと、前記ナックルと車体との間に介装され、前記ナックルを揺動自在に支持するロアアームと、前記車体と前記ナックルとの間に掛け渡され、前記車体の衝撃を吸収するショックアブソーバと、前記ショックアブソーバと同軸に配置されるスプリングとを有する車両用サスペンション装置であって、
前記ショックアブソーバの下部側で車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられ、前記ロアアームに一端が支持されると共に、前記一端における車両前後方向の軸周りに前記ロアアームに対して回動可能に設けられる第1リンク部材と、
前記ナックルの車両上下方向の中間部に一端が支持され、他端が前記ショックアブソーバの下端に支持され、前記ナックル及び前記ショックアブソーバに対して車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられる第2リンク部材と、
前記第2リンク部材の車両上下方向上側に位置し、前記ナックル及び前記ショックアブソーバのそれぞれに車両前後方向の軸周りに回動可能に取り付けられる第3リンク部材と、
を備えることを特徴とする車両用サスペンション装置。
【請求項2】
前記第3リンク部材の回動半径が、前記第2リンク部材の回動半径よりも小さくなるように設定されることを特徴とする請求項1記載の車両用サスペンション装置。
【請求項3】
前記ナックルは、前記第2リンク部材及び前記第3リンク部材を取り付けるように延出した延出部を備え、
前記延出部の延出方向と前記第2リンク部材との車幅方向内側になす角度(θ1)及び前記延出部の延出方向と前記第3リンク部材との車幅方向内側になす角度(θ2)が、それぞれ、180度未満に設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の車両用サスペンション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−79474(P2011−79474A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234831(P2009−234831)
【出願日】平成21年10月9日(2009.10.9)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】