説明

車両用シートカバー用積層複合体、及び、車両用シートカバー用積層複合体の製造方法

【課題】着座者に効率的に熱を伝達することができ、且つ、耐久性を確保することのできるシートヒータを、シートの座り心地を損ねることなく構成できるようにする。
【解決手段】表皮材37と表皮材37の裏面側に積層されて固着されるカバーパッド39とを備える積層構造41と、表皮材37とカバーパッド39との間に配設されシートヒータに用いられる導電糸23と、を備える車両用シートカバー用積層複合体35であって、導電糸23は、表皮材37とカバーパッド39との固着作用を利用して表皮材37とカバーパッド39との間に保持されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートカバー用積層複合体、及び、車両用シートカバー用積層複合体の製造方法に関する。より具体的には、表皮材と該表皮材の裏面側に積層されて固着されるカバーパッドとを備える積層構造と、前記表皮材と前記カバーパッドとの間に配設されシートヒータに用いられる導電糸と、を備える車両用シートカバー用積層複合体と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートの着座面を形作るシートパッドを被覆する車両用シートカバーとして、表皮材と、該表皮材の裏面側に積層されて固着されるカバーパッドとを備える積層構造を有するシートカバーがあった。かかるシートカバーによれば、カバーパッドにより、例えば、シート表面の感触が柔らかく保たれ、また、パッド表面の凹凸が吸収されるとともに、繰り返し着座することにより表皮材に皺が生じるのが防止されるなど、シートの座り心地や外観の良さなどを向上させることができる。
【0003】
ところで、シートカバーを備えた車両用シートには、着座面を暖かくすることのできるシートヒータを備えたものがあった。例えば、下記特許文献1には、平坦な担持体に発熱体を保持させてなる電気加熱要素が開示されており、この電気加熱要素をシートカバーの内側に設置することでシートカバーを通じて着座者を暖めることが可能である。しかしながら、シートカバーが上記積層構造を有する場合には、カバーパッドが断熱材のように作用することで、着座者への熱の伝達効率が低下する問題があった。
【0004】
また、下記特許文献2には、発熱体として導電糸を採用し、表皮材である織物の一部を導電糸で構成することで、着座面を構成する表皮材を発熱可能とする技術が開示されている。この技術によれば、表皮材の裏面側にカバーパッドが積層されているか否かに関わらず、着座面自体が発熱するため、着座者に直接的に熱を伝達することができる。したがって、着座者への熱の伝達効率は優れる。この技術によれば、発熱体として導電糸を採用することで、着座者が直に接触する着座面に発熱体を配設してもシートの座り心地を悪化させない点でも有利である一方、着座面に導電糸が配設されることにより、長期使用による磨耗や衝撃による損傷が懸念され、耐久性を確保しにくいという問題があった。
【0005】
そこで、耐久性と着座者への熱の伝達効率とに注目すると、これに関連する技術は、下記特許文献3に開示されている。下記特許文献3には、カバーパッドに線状ないし面状の発熱体を縫着ないし接着することでカバーパッドに発熱体を保持させ、その発熱体が表皮材に面するように、カバーパッドと表皮材とを積層することが提案されている。かかる技術によれば、発熱体が表皮材とカバーパッドとの間に配置されるため、発熱体が着座面に露出せず、耐久性が確保される。また、発熱体による発熱を、カバーパッドを介さずに直接的に表皮材に熱を伝達することができるため、着座者への熱の伝達効率も優れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2007−528579号公報
【特許文献2】特開2007−227384号公報
【特許文献3】特開2000−342381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、線状ないし面状の発熱体が着座者に近い位置に配されるため、着座者に異物感を生じてシートの座り心地が損なわれるおそれがあり、また、線状ないし面状の発熱体をカバーパッドに固定するための縫糸や接着剤によってもシートの座り心地が損なわれるおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、着座者に効率的に熱を伝達することができ、且つ、耐久性を確保することのできるシートヒータを、シートの座り心地を損ねることなく構成できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は次の手段を採用する。
本発明は、表皮材と該表皮材の裏面側に積層されて固着されるカバーパッドとを備える積層構造と、前記表皮材と前記カバーパッドとの間に配設されシートヒータに用いられる導電糸と、を備える車両用シートカバー用積層複合体であって、前記導電糸は、前記表皮材と前記カバーパッドとの固着作用を利用して前記表皮材と前記カバーパッドとの間に保持されていることを特徴とする。
【0010】
かかる車両用シートカバー用積層複合体(以下、単に積層複合体と称することがある。)によれば、導電糸が表皮材とカバーパッドとの間に配設されているため、導電糸による発熱がシート表面を形成する表皮材にカバーパッドを介することなく伝達され、着座者に効率的に熱を伝達することができる。また、導電糸がシート表面に露出していないため、導電糸の耐久性を確保することができる。そして、表皮材とカバーパッドとの間に配設されているのが導電糸であって、その形状が糸状であるため、着座者に異物感を生じにくく、シートの座り心地を損ねにくい。そして、その導電糸が表皮材とカバーパッドとの固着作用を利用して表皮材とカバーパッドとの間に保持されており、積層複合体は、導電糸をカバーパッド又は表皮材に対して固着するためだけにのみ機能する、例えば、縫糸や接着剤等の専用材料を有しない。したがって、このような専用材料により座り心地が損なわれることもない。
【0011】
かかる車両用シートカバー用積層複合体は、前記表皮材と前記カバーパッドとの間に前記導電糸が配備された状態で前記表皮材と前記カバーパッドとを固着することにより、前記積層構造を形成すると同時に該積層構造に前記導電糸を保持させることで製造することができる。
このように製造すれば、工程を増やすことなく、表皮材とカバーパッドとの間に導電糸を保持させることができる。
【0012】
また、上記車両用シートカバー用積層複合体を製造するにあたり、前記導電糸は、位置決め手段によって前記表皮材又は前記カバーパッドのいずれかの固着面に対して位置決めされた状態として前記表皮材と前記カバーパッドとの間に配備してもよい。前記位置決め手段とは、前記表皮材と前記カバーパッドとの固着に際して一時的に前記表皮材又は前記カバーパッドのいずれかの固着面に対して前記導電糸を位置決めし、該位置決め作用は、前記表皮材と前記カバーパッドとが固着された後には解除されている手段である。このような位置決め手段を用いることで、積層複合体の面方向における導電糸の配設位置を容易に制御することができる。このような位置決め手段によれば、製造後の積層複合体の構成中に残らないため、それにより着座者に異物感を生じさせることはなく、シートの座り心地を損ねない。
【発明の効果】
【0013】
本発明の車両用シートカバー用積層複合体によれば、着座者に効率的に熱を伝達することができ、且つ、耐久性を確保することのできるシートヒータを、シートの座り心地を損ねることなく構成することが可能となる。
また、本発明の車両用シートカバー用積層複合体の製造方法によれば、工程を増やすことなく、表皮材とカバーパッドとの間に導電糸を保持させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【図2】図1に示される車両用シートのII−II線断面を拡大して示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る積層複合体からなるカバーピースを裏面側から見た平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る積層複合体の製造方法Aを説明する積層複合体の分解斜視図である。
【図5】本発明の実施形態に係るの製造方法Bを説明する斜視図である。
【図6】本発明の実施形態に係るの製造方法Bの変更例aを説明する斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に係るの製造方法Bの変更例bを説明する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施例である実施形態について説明する。本実施形態の車両用シート11は自動車等の車両に装備されるシートである。また、各図において矢印で示すWは車両用シート11の幅方向を示している。図1に示されるように、車両用シート11は、座面となるシートクッション13、背凭れとなるシートバック15、および、ヘッドレスト17を備えている。本実施形態では、シートバック15に背凭れ面15aを暖めることのシートヒータ21が備えられており、本発明が適用されている。したがって、以下、シートバック15について詳細に説明する。
【0016】
シートバック15は、骨格としてのバックフレーム(図示省略)と、該バックフレームに被せ付けられて背凭れ面15aを形作るシートパッド16(図2参照)と、を備えている。シートパッド16は、該シートパッド16の外表面に沿うシートカバー31で被覆されている。図1に示されるように、シートカバー31は、複数のカバーピース33a〜33dが縫合されて形成されている。車両用シート11は、着座者の背中が面する位置に配置されたカバーピース33aが暖かくなるシートヒータ21を備えている。
【0017】
カバーピース33aは、図2に示されるように、積層複合体35よりなる。まず、この積層複合体35の構成について説明する。積層複合体35は、表皮材37とカバーパッド39とを備える積層構造41、及び、シートヒータ21に用いられる導電糸23を備えている。表皮材37は、シートカバー31の外表面を形成し、例えば、織物ないし編物等のファブリック、或いは皮革等で構成することができる。カバーパッド39は、クッション性を有するシート状の部材であり、例えば、厚さ5〜10mm程度のシート状の発泡ウレタンよりなる。カバーパッド39は、表皮材37の裏面側に固着されている。図3に示されるように、カバーピース33aにおいて、カバーパッド39は、表皮材37に対して、他のカバーピース33b〜33dとの縫線37b〜37dのちょうど内側に位置するように積層されている。これにより、表皮材37の周縁が他のカバーピース33b〜33dとの縫合のための縫い代38b〜38dとして設定されている。
【0018】
導電糸23は、導電性を有し、通電により発熱する繊維であり、シートヒータ21の発熱部位を構成する。導電糸23としては、例えば、抵抗値が5〜10Ω/cmのカーボンファイバー(φ7μm×1000本)を用いることができる。なお、図2においては、積層複合体35の構成を分かりやすく示すため、導電糸23の寸法を極端に誇張して示している。積層複合体35において、導電糸23は、積層されて固着された表皮材37とカバーパッド39との間に配設されており、表皮材37とカバーパッド39との固着作用を利用して表皮材37とカバーパッド39との間に保持されている。本実施形態の積層複合体35では、図3に示されるように、複数の導電糸23が幅方向に沿って配設されており、各導電糸23の両端部23a,23bが、それぞれ縫線37b,37cより外方に達している。なお、本実施形態では、導電糸23の平面配置の一例として波形に配設した場合を図示したが、例えば、直線的に配置するなど、その平面配置は限定されない。次に、かかる構成の積層複合体35の製造方法を説明する前に、導電糸23を発熱部位として備えるシートヒータ21の構成について説明する。
【0019】
シートヒータ21は、導電糸23の他に、バッテリー等の電源供給装置25と通電部材27,27とを備える。導電糸23の両端部23a,23bは、それぞれ、カバーピース33aの縫線37b,37cよりも外側に設けられた通電部材27,27を介して電源供給装置25と電気的に接続されている。これによりシートヒータ21の並列回路が形成されている。通電部材27は、糸状の電気伝導体である。通電部材27は、導電性を有するが、導電糸23に比べて抵抗値が低く、通電時の発熱がほとんどない繊維である。例えば、抵抗値が約1mΩ/cmの軟銅線(φ0.05mm×22本)を用いることができる。この糸状の通電部材27により、各導電糸23が、基布28に縫い止められている。導電糸23と通電部材27は、ともに表面が絶縁処理されておらず、交差して接触することで電気的に接続されている。通電部材27は、基布28がカバーピース33aの縫い代37b,37cに縫着されることでカバーピース33aに一体的に設けられている。
【0020】
シートヒータ21は、カバーピース33aが他のカバーピース33b〜33dと縫合されてシートカバー31が形成されることで、シートカバー31に付設される。なお、通電部材27,27は、カバーピース33aの縫い代37b,37cに配設されているから、カバーピース33aとカバーピース33b,33cとが縫合されることでシートカバー31の裏側に配される。このシートカバー31をシートパッド16に被せることにより、車両用シート11にシートヒータ21を備え付けることができる。そして、シートヒータ21は、電源供給装置25により導電糸23に通電することにより、該導電糸23が発熱し、表皮材37を介して着座者に熱を伝達することが可能となる。
【0021】
さて、カバーピース33aを構成する積層複合体35の説明に戻り、積層複合体35の好ましい製造方法について、大別して2形態を例示する。
【0022】
[製造方法A]
まず、積層複合体35の一製造方法である製造方法Aについて、図4を参照しながら説明する。この製造方法Aは、積層複合体35をカバーピース33aの形状として製造する方法である。
製造方法Aでは、まず、カバーピース33aの形状に対応して表皮材37とカバーパッド39とを裁断する。裁断された表皮材37又はカバーパッド39を、図4に示されるように、それぞれ、表皮材ピース38p又はカバーパッドピース40pと称する。
次に、カバーパッドピース40pに対して、位置決めピン51を、貫通させ、先端がカバーパッドピース40pの表皮材ピース38pに対向する側の面から突起させる。このとき、位置決めピン51は、一枚のカバーパッドピース40pに対して、面方向に間隔をおいて複数配置する。そして、導電糸23を複数の位置決めピン51にジグザグに沿わせることで、カバーパッドピース40pに対して位置決めする。なお、カバーパッドピース40pに対して複数の導電糸23が位置決めされるが、図4においては、一の導電糸23に対する位置決めピン51の配置関係を図示し、他の導電糸23については図示を省略した。
【0023】
次に、表皮材ピース38pとカバーパッドピース40pとを固着する。その固着方法としては、従来の方法を採用することができる。例えば、ホットメルト等の接着剤を用いて表皮材ピース38pとカバーパッドピース40pとを固着することできる。これにより、積層構造41が形成されるとともに、表皮材ピース38pとカバーパッドピース40pとの間に導電糸23が保持され、積層複合体35が得られる。このとき、表皮材ピース38pとカバーパッドピース40pとが固着される直前、同時、又は固着された後に位置決めピン51をカバーパッドピース40pから引き抜くことで、位置決めピン51による導電糸23をカバーパッドピース40pに対して位置決めする作用を解除する。この位置決めピン51が本発明の位置決め手段に相当する。
【0024】
[製造方法B]
次に、積層複合体35の一製造方法である製造方法Bについて、図5を参照しながら説明する。この製造方法Bは、積層複合体35を、カバーピース33aとして裁断される前の原反として製造する方法である。
製造方法Bでは、繰り出した表皮材37の原反38rとカバーパッド39の原反40rとを対面させ、一対の回転ローラ53,53の間で押圧し、連続的に固着手段により表皮材37とカバーパッド39とを連続的に固着するに際し、固着前に表皮材37の原反38rとカバーパッド39の原反40rとの間に導電糸23を挿入して配置する。これにより、表皮材37とカバーパッド39とが固着して積層構造41が形成されるとともに、表皮材37とカバーパッド39との間に導電糸23が保持され、積層複合体35が得られる。前記固着手段としては、従来の固着手段を採用することができる。例えば、フレームラミネーションや、ホットメルト等の接着剤で接着によるラミネーション等、各種のラミネーション手段を採用することができる。図5に示されるように、表皮材37の原反38r及びカバーパッド39の原反40rの流れ方向に直交して、表皮材37の原反38rとカバーパッド39の原反40rとの間に導電糸23を挿入する場合には、例えば、織機のヨコ糸を打ち出す機構を適用した打ち出し装置55を用いることができる。このようにして得られた積層複合体35の原反は、裁断してカバーピース33aとすることができる。
【0025】
なお、上記製造方法Bでは、変更例aとして図6に示されるように、導電糸23を挿入して配置するのに替えて、カバーパッド39の原反40rに対して、導電糸23を位置決めピン(図示省略)で位置決めしておくこともできる。その場合、位置決めピンは、好ましくは積層構造41が形成される直前に引き抜かれる。
【0026】
以上、製造方法A,Bとして例示したように、積層複合体35において、導電糸23は、表皮材37又はカバーパッド39の単体に対しては固着されず、表皮材37とカバーパッド39とを積層して固着して積層構造41を形成すると同時に、表皮材37とカバーパッド39とに挟まれた状態で該積層構造41の内部に固定される。このような、積層複合体35を用いた車両用シート11のシートカバー31によれば、以下の作用効果を奏する。
【0027】
まず、シートヒータ21に用いられる導電糸23が表皮材37とカバーパッド39との間に配設されているため、導電糸23の発する熱がカバーパッド39を介さずに、表皮材37のみを介して着座者に伝達される。そのため、着座者に効率的に熱を伝達することができる。また、シートヒータ21の加熱部位が導電糸23で形成されているため、加熱部位と着座者との間に表皮材37しか介在していない構成にも拘らず、着座者に加熱部位が設けられていることによる異物感を生じにくく、座り心地を損ねにくい。また、導電糸23は、積層複合体35を形成する前の表皮材37又はカバーパッド39の単体に対しては固着されず、表皮材37とカバーパッド39とで積層複合体35を形成する固着作用を利用して表皮材37とカバーパッド39との間に保持されている。そのため、表皮材37又はカバーパッド39の単体に対しては導電糸23を固着しないため、当該固着にのみ機能する縫糸や接着剤などの専用材料を必要としない。また、このような専用材料が積層複合体35中に無いため、このような専用材料によって座り心地が損なわれることもない。
【0028】
なお、本発明は、要旨を逸脱しない範囲内でその他種々の実施形態が考えられるものである。
例えば、上記実施形態において、導電糸23の平面的な配置形状として、波形を図示したが、これは一例に過ぎない。導電糸23の平面的な配置は、シートヒータ21の温度や加熱箇所等の設計に応じて、適宜、配置形状や、配置密度を変形することができる。また、上記実施形態では、複数の導電糸23を並列状態で配置した例を示したが、一続きの導電糸23を適宜の平面的な配置形状として配置することもできる。
また、通電部材27は、通電可能な部材であれば、糸状のみならず、例えば、帯状、線状等とすることができ、その形態は特に限定されるものではない。
【0029】
また、上記実施形態では、カバーピース33aにおいて積層複合体35の積層構造41とは外れた位置に通電部材27が配置されているが、通電部材27は、導電糸23とともに積層構造41内に設けることも可能である。例えば、上記製造方法Bでは、変更例bとして図7に示されるように、通電部材27が導電糸23と交差するように、通電部材27を表皮材37の原反38rとカバーパッド39の原反40rとの間に繰り出し、表皮材37とカバーパッド39とを固着させて積層構造41を形成するとともに、表皮材37とカバーパッド39との間に導電糸23だけでなく通電部材27をも保持させて積層複合体35とすることができる。なお、図示は省略するが、上記製造方法Aにおいて、通電部材27を導電糸23とともに積層構造41内に設けることも可能である。すなわち、表皮材ピース38pとカバーパッドピース40pとを固着するにあたり、導電糸23とともに該導電糸23と接触するように通電部材27を配置した状態で積層構造41を形成すればよい。
【0030】
なお、シートヒータ21は、シートバック15に限らず、シートクッション13に設定することもできる。また、シートヒータ21は、その加熱部位を着座面の局所に設けても全体に設けてもよい。
【符号の説明】
【0031】
11 車両用シート
16 シートパッド
21 シートヒータ
23 導電糸
25 電源供給装置
27 通電部材
31 シートカバー
33a カバーピース
35 積層複合体
37 表皮材
39 カバーパッド
41 積層構造
51 位置決めピン(位置決め手段)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮材と該表皮材の裏面側に積層されて固着されるカバーパッドとを備える積層構造と、前記表皮材と前記カバーパッドとの間に配設されシートヒータに用いられる導電糸と、を備える車両用シートカバー用積層複合体であって、
前記導電糸は、前記表皮材と前記カバーパッドとの固着作用を利用して前記表皮材と前記カバーパッドとの間に保持されていることを特徴とする車両用シートカバー用積層複合体。
【請求項2】
表皮材と該表皮材の裏面側に積層されて固着されたカバーパッドとを備える積層構造と、導電糸と、を備える車両用シートカバー用積層複合体の製造方法であって、
前記表皮材と前記カバーパッドとの間に前記導電糸が配備された状態で前記表皮材と前記カバーパッドとを固着することにより、前記積層構造を形成すると同時に該積層構造に前記導電糸を保持させることを特徴とする車両用シートカバー用積層複合体の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートカバー用積層複合体の製造方法であって、
前記導電糸は、位置決め手段によって前記表皮材又は前記カバーパッドのいずれかの固着面に対して位置決めされた状態として前記表皮材と前記カバーパッドとの間に配備され、
前記位置決め手段は、前記表皮材と前記カバーパッドとの固着に際して一時的に前記表皮材又は前記カバーパッドのいずれかの固着面に対して前記導電糸を位置決めし、該位置決め作用は、前記表皮材と前記カバーパッドとが固着された後には解除されていることを特徴とする車両用シートカバー用積層複合体の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−284314(P2010−284314A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140062(P2009−140062)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】