車両用シートパッドの製造方法
【課題】パッド本体の立壁状外周部につながる裏面側厚み面で、シートフレームとの間で発生する異音を防ぎ、さらに発泡成形時に発泡原料漏れ対策を講じた車両用シートパッドの製造方法を提供する。
【解決手段】パーティングラインPL位置が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aで、裏面1R側へ張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設けられ、さらに上型7にセットされる布状材と通じる発泡ガス用ガス抜き孔7gがその上型に設けられる発泡型6を用いて、布状材5の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型7の型面7Aに布状材5をセットする第一工程と、発泡原料9の注入及び型閉じする第二工程と、発泡成形で余剰の発泡ガスをガス抜き孔7gから放出して、布状材5が被着一体化されるパッド本体1を発泡成形する第三工程とを備える。
【解決手段】パーティングラインPL位置が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aで、裏面1R側へ張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設けられ、さらに上型7にセットされる布状材と通じる発泡ガス用ガス抜き孔7gがその上型に設けられる発泡型6を用いて、布状材5の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型7の型面7Aに布状材5をセットする第一工程と、発泡原料9の注入及び型閉じする第二工程と、発泡成形で余剰の発泡ガスをガス抜き孔7gから放出して、布状材5が被着一体化されるパッド本体1を発泡成形する第三工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用座席シートを構成する車両用シートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される座席シートの座部や背もたれを構成するシートクッションがある。軟質ポリウレタンフォーム等のシートパッドを主構成要素とするが、乗員の着座時等でシートパッドが撓んでシートフレームと擦れ、時に異音発生するケースがある。
こうしたことから、近年、パッド本体の裏面側に不織布等の布状材を被着一体化させて、異音対策を講じたシートパッドが提案されるようになっている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−11249号公報
【特許文献2】特開平2−145308号公報
【0004】
特許文献1は、その請求の範囲のごとく「上型のウレタン発泡空間を有する上型と下型とからなり、上型のウレタン発泡空間壁に沿ってセットされるフェルトの端末部を凸形態に保持するよう上型側に突設されている凸起部の外側に前記凸起部と平行するリブを形成して凸起部の外側とリブとの間に凹溝を設け、この凹溝内にフェルトの端末を差し込みウレタン発泡」するようにしている。
また、特許文献2はその請求の範囲に記載のごとく「サポータ材(本発明でいう「布状材」)がパッド材の底部より大きく形成され、該サポータ材の端末が下型と上型との型合わせ部に挟持される」構成とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、近年登場したハイブリッドカーは低速になると静かで、一層の異音対策が求められるようになり、また高級車では昇降時等で座席の各所に手をついても異音が発生しない品質向上要求が出てきており、特許文献1の発明はこうした要求に対して万全とはいえなかった。車両用シートパッドはシートフレームに取付けられ、パッド本体はその外周沿いに裏面側へ立壁状の外周部が張り出している。この外周部の裏面側厚み面とシートフレームとの異音対策を講じる必要性がでてきており、特許文献1のような外周部の内側壁面だけの対策構成では応えきれていなかった。また、特許文献2は、サポータ材の端末が下型と上型との型合わせ部に挟持される構成であるため、発泡成形時のガス抜けが制御できずパッド本体の成形が不良になる問題があった。サポータ材がパーティングライン部に噛んで、発泡ガスが必要以上に抜け過ぎてしまい、いわゆる底上がりなどの不具合を招く問題があった。
こうしたことから、現状は、図3(ロ)のごとく発泡成形されるパッド本体1の各外周部1aでその一番高い地点10に、パーティングラインPLを設け、且つ布状材5の外周縁51をパーティングラインPLから5mm〜10mm離れた所までにとどめて、上型型面7Aに布状材5をセットし、パッド本体1の発泡成形を行っている。しかし、上型7Aに布状材5をセットしても、パーティングラインPLから5mm〜10mm離れた所までしか布状材5がないため、布状材5のない露出部分たる裏面側厚み面11でシートフレーム等との擦れ音が依然として発生する問題があった。また、発泡成形時にパッド本体外周部1aの全域で発泡原料漏れ(ウレタン漏れ)を引き起こす問題を抱えていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するもので、パッド本体に係るメイン部,サイド部の裏面側だけでなく、パッド本体の立壁状外周部につながる裏面側厚み面で、シートフレームとの間で発生する異音を防ぎ、さらに発泡成形時に発泡原料漏れ対策を講じた車両用シートパッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、上型(7)への布状材(5)のセット後、発泡原料(9)の注入及び下型(8)との型閉じを経て、裏面(1R)に該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形するシートパッドの製造方法において、上型(7)と下型(8)とのパーティングライン(PL)の位置が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)で、裏面(1R)側へ張り出すその一番高い地点(10)よりも下方地点に設けられ、さらに前記パッド本体(1)の外周部の一領域では、その一番高い地点(10)にパーティングライン(PL)の位置を合わせた発泡型を用いて、(イ)前記パッド本体(1)の外周部の一領域にあてがわれる布状材(5)に係る外周縁(51)の一部分(510)は、パッド本体外周部(1a)の一番高い地点(10)を越えずに、布状材(5)に係る前記一部分(510)以外の外周縁(51)が、発泡成形される前記パッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え、且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該布状材(5)をセットする第一工程と、(ロ)発泡原料(9)の注入及び型閉じする第二工程と、(ハ)発泡成形で余剰の発泡ガスを布状材(5)に係る前記一部分(510)側から放出して、該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形する第三工程と、を備えることを特徴とする車両用シートパッドの製造方法にある。ここで、「発泡成形されるパッド本体の外周部で、裏面側へ張り出すその一番高い地点」とは、発泡成形時における発泡型の断面状態下、それぞれの外周部地点でその外周部をつくる外側立壁面の最上点をいう。
請求項2の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、上型(7)への布状材(5)のセット後、発泡原料(9)の注入及び下型(8)との型閉じを経て、裏面(1R)に該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形するシートパッドの製造方法において、上型(7)と下型(8)とのパーティングライン(PL)の位置が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)で、裏面(1R)側へ張り出すその一番高い地点(10)よりも下方地点に設けられ、さらに上型(7)にセットされる布状材と通じる発泡ガス用ガス抜き孔(7g)がその上型に設けられる発泡型(6)を用いて、(イ)布状材(5)の外周縁(51)が、発泡成形される前記パッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該布状材(5)をセットする第一工程と、(ロ)発泡原料(9)の注入及び型閉じする第二工程と、(ハ)発泡成形で余剰の発泡ガスを前記ガス抜き孔(7g)から放出して、該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形する第三工程と、を備えることを特徴とする車両用シートパッドの製造方法にある。請求項3の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、請求項1又は2で、布状材(5)の外周縁(51)から布状材中央部(50)に向け短冊状に複数の切込み(52)を入れて短冊状部(53)を複数有する短冊状部付き布状材(5)に予め加工形成し、該切込み(52)でできた短冊状部(53)同士を重ね合せるか又は短冊状部(53)間を開いて、該短冊状部(53)付き布状材(5)を曲面形成し、前記第一工程に係る布状材(5)の外周縁(51)が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該短冊状部(53)付き布状材(5)をセットすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用シートパッドの製造方法は、パッド本体の裏面側に配されるシートフレーム等の接触に対して、布状材がパッド本体の外周部につながる裏面側厚み面をも含めてパッド本体裏面に被着されるので、パッド本体とフレーム等との擦れ音がなくなり、異音防止に貢献し、さらに発泡成形時の余剰発泡原料を一箇所に集中でき、バリ取りの後処理を簡便化できるなど極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の車両用シートパッドの製造方法の一形態で、シートパッドを裏面側から見た斜視図である。
【図2】図1のII-II線矢視図で、発泡成形を終えた型内に在るシートパッドの断面図である。
【図3】(イ)は図2の部分拡大図で、(ロ)が(イ)に代わる対比説明図である。
【図4】図1のIV-IV線矢視図で、発泡成形を終えた型内に在るシートパッドの断面図である。
【図5】図4に代わる対比説明断面図である。
【図6】布状材の平面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】上型に布状材をセット後、発泡原料を注入する説明断面図である。
【図9】型閉じした説明断面図である。
【図10】シートパッドの外周部周りの拡大斜視図である。
【図11】図4に代わる他態様の説明である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る車両用シートパッドの製造方法について詳述する。図1〜図11は本発明の車両用シートパッド(以下、単に「シートパッド」ともいう。)の製造方法の一形態で、図1はシートパッドを裏面側から見た斜視図、図2は図1のII-II線矢視図、図3(イ)は図2の部分拡大図で、(ロ)が(イ)に代わる対比説明図、図4が図1のIV-IV線矢視図、図5が図4に代わる対比説明断面図、図6が布状材の平面図、図7が図6の部分拡大図、図8が発泡原料を注入する説明断面図、図9が型閉じした説明断面図、図10がシートパッドの外周部周りの拡大斜視図、図11が図4に代わる他態様の説明断面図を示す。尚、各図は布状材を判り易くするため、その厚みを大きく描く。
【0011】
シートパッドSは、背もたれ用のバックパッドや着座した乗員の下半身を受け支えるクッションパッドである。本実施形態は図1のようなクッションパッドに適用する。クッションパッドに表皮を被せてシートクッションの形にすれば、公知のバックパッドに表皮を被せたバックレストと公知のヘッドレストとで車両用座席シートになる。シートパッドSは、上型7に布状材5をセットした後、発泡原料9の注入及び下型8との型閉じを経て、裏面1Rに該布状材5が被着一体化されるパッド本体1を発泡成形して製造される。パッド本体は図2のように乗員の臀部及び大腿部を支えるメイン部2と該メイン部の両側で隆起して臀部及び大腿部の側部を支えるサイド部3とに大別される。符号1cはサイド部裏面側に形成される凹所、符号1eはメイン部表面2aとサイド部表面3aとの境界部分で車両前後方向に走る縦溝を示す。
【0012】
本シートパッドの製造方法では、上型7と下型8とのパーティングラインPLの位置が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aで、裏面1R側に張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設けられる発泡型6を用いる。パーティングラインPLの位置を、裏面1R側に張り出すパッド本体外周部1aの一番高い地点10よりも下方地点に設けるのは、図3(ロ)の従来法と違って、図2のごとく一番高い地点10を越えて外周部1aの外側立壁面13側にまで、布状材5の外周縁51を配するためである。
本発明は、図9のように型閉じでシートパッド用キャビティCAを形成し、シートパッドS,パッド本体1が車両に設置される状態と上下逆にして成形される。パッド本体1にはその外周沿いに裏面1R側へ張り出す立壁状の外周部1aが形成される(図2)。外周部1aに係る外側立壁面13からその突端に在る一番高い地点10で曲がった後に裏面側厚み面11が続き、その先の内方屈曲部14で曲がり、さらに内側立壁面12となっている(図3のイ)。各外周部1aで裏面1R側に張り出すその一番高い地点10をつくる角部70が上型7に設けられる。上型7には、パーティングラインPLの接合部79から、外側立壁面用型面部の一部75、角部70を経て、サイド部3の裏面側型面7bたる裏面側厚み面形成用型面部71,内方角部74,内側立壁面形成用型面部72,凹所用型面部78、さらにメイン部2の裏面側型面7aへと続く上型型面7Aが形づくられる。図8の符号60は外側立壁面用型面部の一部75と裏面側厚み面形成用型面部71と内側立壁面形成用型面部72でつくる張出部4用窪みを示す。下型8には接合部89から外側立壁面用型面部の残り部分83が形づくられ、さらにサイド部3の表面側型面8b、縦溝用型面8c、メイン部の表面側型面8aが形成される。
【0013】
前記発泡型6を用いて、シートパッドSが次のように製造される。
まず、布状材5に係る外周縁51の一部分510が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越えずにその手前の上型型面7Aに配される一方、布状材5に係る前記一部分510以外の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体外周部1aの一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型型面7Aに布状材5をセットする(第一工程)。
ここでは、布状材5に係る一部分510以外の外周縁残り全て511が、発泡成形されるパッド本体1の各外周部1aでその一番高い地点10を越え、且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型7の型面7Aに布状材5をセットする。布状材5に係る外周縁51の一部分510が、例えば乗員の大腿部が当接する車両前方側メイン部2の裏面2bで、内方屈曲部14近くに配される(図1,図4)。該一部分510を、パッド本体外周部1aの一番高い地点10を越えずにその手前の上型型面7Aにとどめるのは、該一部分510周りのパーティングライン位置を変更し(後述)、ここに発泡成形時の余剰発泡ガスを集め、ここから余剰発泡ガスさらに余剰発泡原料を放出させるためである。発泡成形時、余剰発泡ガスは布状材5を構成する糸と糸との間隙を通って、該一部分510へ集まる。一方、布状材5に係る一部分510以外の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え、且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型型面7Aに布状材5をセットするのは、一番高い地点10を介して外周部1aにつながる裏面側厚み面11を布状材5で被って、裏面側厚み面11も含めてパッド本体1とシートフレームとの擦れ音をなくすためである。尚、パッド本体1の裏面側厚み面11の幅は、図3(ロ)のごとく5mm〜10mm程度である。
【0014】
型閉じ後の発泡成形で、図3(イ)に示す外周部1aの一番高い地点10からパーティングラインPLまでの垂直距離αは10mm〜20mmの範囲とし、布状材5の外周縁51(一部分510を除く)がパーティングラインPL手前の上方地点に配される。上型型面7Aへの布状材5のセットで、布状材5の外周縁51を一番高い地点10とパーティングラインPLとの間に配することによって、布状材5の上型セット時の多少の位置ズレを許容させる。布状材5の外周縁51がパーティングラインPLから多少離れてセットされても、裏面側厚み面11を確実に覆うことができる。一方、布状材5の上型セット時に、布状材5がパーティングラインPL側へ多少寄っても、布状材5がパーティングラインPL,接合部79,89に噛み込むことがない。
パーティングラインPLの位置は、その全域に亘って、図5のように、発泡成形されるパッド本体1の各外周部1aで、裏面1R側に張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設定する発泡型6を用いることもできる。しかし、布状材5を伝って一部分510に達した余剰発泡ガスが、該一部分510近くの接合部79,89から綺麗に抜け出せない虞がある。そこで、本発明は、パーティングラインPLの位置が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aで、裏面1R側へ張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設けられるとしながらも、パッド本体1の外周部1aの一領域で、その一番高い地点10にパーティングラインPLの位置を合わせた発泡型を採用する(図4)。そして、パッド本体1の外周部の該一領域にあてがわれる布状材5に係る外周縁51の一部分510は、パッド本体外周部1aの一番高い地点10を越えないよう設定する。布状材5の一部分510周りのパーティングラインPLだけは、そのパーティングライン位置が発泡成形されるパッド本体外周部1aの一番高い地点10となる発泡型6を用い、発泡成形時の余剰発泡ガスを円滑且つ積極的に放出させるようにしている。
【0015】
ここで、布状材5とは布地状のシート材で、本実施形態は製織しないで機械的,化学的,熱的などで繊維を固着したり絡み合わせたりして、シート状にした不織布とする。布状材5の外周部で、パッド本体1に係る凹凸部15のある裏面側厚み面11、外側立壁面の一部を覆い、且つメイン部裏面2b,サイド部裏面3bを覆う大きさにする。さらに凹凸部15に対応する布状材5の外周縁51から布状材中央部50へ向け短冊状に複数の切込み52を入れて、短冊状部53を複数有する短冊状部53付き布状材5に予め加工形成した布状材5を用いる。
【0016】
具体的には、裏面側厚み面11の長手方向ほぼ全域(一部分510を除く)を覆い、且つ外周部1aの一番高い地点を越え、パーティングラインPL手前の外側立壁面を覆って、パッド本体裏面1R側を覆うことのできる大きさに裁断し、さらに切込み52を入れた布状材5とする(図6,図10)。切込み52の方向は、例えば図10のごとく凹凸部15の凸部17(又は凹部16)に対応する布状材5の膨らみある外周縁51では、最も突出した地点で、その法線方向に設けられる(図7)。法線方向の切込み52と平行にする切込み52を複数設けて、細長の短冊状部53を複数有する短冊状部53付き布状材5とする。
切込み52の長さLは、外周部1aに短冊状部53付き布状材5を被着一体化した状態下(図10)で、外側立壁面13に載った布状材5の外周縁51から、裏面側厚み面11の平坦域βを経由し、内方屈曲部14の丸み形成域Rを越えて、内側立壁面12の領域αにまで入り込む長さとするのが好ましい。切込み先端52aが内側立壁面12の領域にまで達すると、発泡型6への短冊状部53付き布状材5のセット時に、その外周縁51が型接合部79寄りに多少ずれても、短冊状部53で丸み形成域Rを覆い、最終的に凹凸部15の曲面も綺麗に覆えようになるからである。図6中、符号56は布状材5を上型7に係止するための孔、符号58はノズル用開口、符号59はサイド部裏面3bから外周部4の内側立壁面42へ円滑に屈曲可能にするためのスリット、符号Fは布状材に貼着一体化させた矩形のフェライトシート片を示す。
【0017】
本第一工程は、短冊状部53付き布状材5を用い、まず、布状材中央部50で上型型面7Aの中央部を被う。引き続き、切込み52でできた短冊状部53同士を重ね合せるか又は短冊状部53間を開いて、布状材5に係る前記一部分510以外の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の各外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型7の型面7Aに該短冊状部付き布状材をセットする。外周部1aにつながる裏面側厚み面11に凹凸部15がある場合、上型7の対応起伏部に、切込み52でできた隣り合う短冊状部53同士を重ね合わせるか又は隣り合う短冊状部53間を開くことにより曲面形成して、上型6に短冊状部53付き布状材5をセットする。
詳しくは、裏面側厚み面11に凹凸部15の凸部17を形成している場合、その箇所の発泡型6の起伏部は凹状にへこんでおり、短冊状部53の一部を重ね合わせ複数の短冊状部53で該起伏部の曲面を形成するようにしてあてがう。起伏部に被着する布状部分が複数の短冊状部53からなるので、起伏部の曲面形状にセットし易くなっている。一方、凹凸部15の凹部16を形成する発泡型6の起伏部は凸状になっており、短冊状部53間が開くようにして、その曲面を複数の短冊状部53で形成する。起伏部に対応する部位が複数の不織布製短冊状部53からなるので、短冊状部53間が開いてできたその隙間εに布状材5の起毛が入り込み絡み合う。
【0018】
短冊状部53付き布状材5に代え、布状材5に係る一部分510以外の外周縁51が、パッド本体外周部1aの一番高い地点を越え且つパーティングライン手前の上型型面7Aに沿うように、該布状材が熱プレス等で立体形状に予備成形されたものを用いることもできる。ただ、裏面側厚み面11に凹凸部15のある外周部1aについては、短冊状部53付き布状材5の方が該凹凸部の形状になぞって上型7へのセットが行い易く、発泡成形終了までその形状に維持できるなどより好ましくなっている。
【0019】
前記第一工程で、上型7への布状材5のセット後、発泡原料9の注入及び型閉じする第二工程,第三工程へと進行する。発泡原料9の注入及び型閉じを経て、発泡体からなるパッド本体1を、その裏面1Rに布状材5が被着一体化されるようにして、発泡成形する。本実施形態は、発泡型6への短冊状部53付き布状材5のセット後、型開状態のまま、下型8のキャビティCAを形成する型面8Aに注入ホースN等を使用してパッド本体1成形用ウレタン発泡原液等の発泡原料9を所定量注入する(図8)。続いて、上型7を作動させ型閉じし、第二工程を終える(図9)。上型7と下型8との型閉じで、短冊状部53付き布状材5がインサートされたシートパッドS用キャビティCAができる。尚、発泡型6への布状材5のセット後、発泡原料9を注入し、その後、型閉じしたが、発泡型6に布状材5をセットした後、型閉じし、その後、発泡原料9を注入することもできる。
【0020】
前記型閉じ後、パッド本体1の発泡成形に移る(第三工程)。図9の型閉じ状態を所定時間維持し、図2,図4ごとくパッド本体1を、その裏面1R側に布状材5が被着一体化するよう発泡成形して、シートパッドSを造る。
発泡成形の第三工程で、余剰の発泡ガス,余剰発泡原料を、布状材5に係る外周縁51の前記一部分510側から放出して、布状材5が一体被着されるパッド本体1を成形する。発泡成形過程の余剰発泡ガスは、図4で説明すると、上型型面7Aにセットされた布状材5を伝って同図左側の布状材5の一部分510の方向へと進み、該一部分近くの接合部79,89から放出される。該接合部のパーティングライン位置が、既述のごとく発泡成形されるパッド本体外周部1aで、その一番高い地点10と一致しているので、余剰発泡ガスが円滑放出される。パッド本体1の発泡成形を終え、脱型すれば、パッド本体1の裏面1Rに布状材5が被着一体化し、且つ一部分510を除いて、外周部1aにつながる裏面側厚み面11に布状材5が被着一体化した所望のシートパッドSが得られる。尚、図1,図5中、符号19はパッド本体1の露出部分で、裏面側厚み面11の一部分510周りでは布状材5が被着してない状態図を示したが、該裏面側厚み面も布状材5が出来る限り被うよう設定することもできる。
該シートパッドSに図示しない表皮を被せると、車両用座席シートの座部用シートクッションになる(図1)。
【0021】
本実施形態は、上型(7)と下型(8)とのパーティングライン(PL)の位置が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)で、裏面(1R)側へ張り出すその一番高い地点(10)よりも下方地点に設けられとしながら、パッド本体1の外周部1aの一領域に限り、その一番高い地点10にパーティングラインPLの位置を合わせた発泡型を用いる。さらに、布状材5の外周縁51について、パッド本体1の外周部の該一領域にあてがわれる布状材5に係る外周縁51の一部分510は、パッド本体外周部1aの一番高い地点10を越えずに、布状材5に係る該一部分510以外の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配される構成とする(第一工程)。これに代え、図11のような構成にすることもできる。
【0022】
すなわち、上型7にセットされる布状材5と通じる発泡ガス用ガス抜き孔7gを予め該上型7に設け、第一工程では、該布状材5に係る外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型7の型面7Aに該布状材5をセットする。ここでは、図11のごとく上型7と下型8とのパーティングラインPLの位置を、その全域に亘って、発泡成形されるパッド本体1の各外周部1aで、裏面1R側へ張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設定する。発泡成形時の余剰発泡ガス,余剰発泡原料を接合部79,89から放出させずに、上型に設けたガス抜き孔7gから放出できるからである。
第三工程では、発泡成形で余剰発泡ガス,余剰発泡原料をガス抜き孔7gから放出して、布状材5が一体被着されるパッド本体1を発泡成形する。発泡成形過程の余剰発泡ガスは、上型型面7Aにセットされた布状材5を伝ってガス抜き孔7gが在る方向へと向かい、該ガス抜き孔から円滑放出される。発泡ガスをガス抜き孔7gから放出させるので、布状材5に係る外周縁全て511が、パッド本体外周部1aの一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型面7Aへの布状材5をセットすることが可能になっている。図11で、パッド本体1の発泡成形を終え、脱型すれば、パッド本体裏面1Rに布状材5が被着し、且つ外周部1aの裏面側厚み面11の全域に布状材5が被着一体化した所望のシートパッドSが得られる。
【0023】
このように構成したシートパッドの製造方法によれば、パーティングラインPLの位置が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aで、裏面1R側へ張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設けられる発泡型6を用い、且つ布状材5の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越えて、上型7の型面7Aに該布状材5をセットするので、外周部1aにつながる裏面側厚み面11を含めてパッド本体裏面1Rが布状材5で覆われる。シートフレーム等と接触するパッド本体部位に布状材5を被着することができ、シートパッドSとフレームとの擦れ音をなくすことができる。これまで走行振動や着座時等で、裏面側厚み面11とシートフレームとが擦れ音が鳴っていた問題を解消できる。外周部1aへつながる裏面側厚み面11とシートフレームとの異音対策が万全となる。
【0024】
そして、布状材5の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPL手前に配されるようにして、布状材5を上型7にセットするので、上型7への布状材5のセットが容易になる。布状材5の外周縁51が、図3(イ)で符号αの範囲、すなわち上型7の一番高い地点10からパーティングラインPL地点までの区間にくるようセットするだけで、裏面側厚み面11を覆った状態を保てるので、上型7への布状材セットが楽で、作業性向上につながる。また、布状材5の外周縁51をパーティングライン手前に配して、パーティングライン地点まで到達するには余裕があるので、布状材5がパーティングラインPL,接合部79,89に噛んで、発泡成形時、発泡ガスが必要以上に抜け過ぎてしまう不具合等は起こらない。
【0025】
一方、パーティングラインPLの位置が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aで、裏面1R側へ張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設けられる発泡型6を用いるので、発泡成形時の余剰発泡ガスをガス抜けできない懸念があるが、パッド本体1の裏面1Rに布状材5が存在するため、該布状材を伝って余剰ガスが抜けるため、パッド本体1の形状を損なうことはない。上型7に発泡ガス用ガス抜き孔7gが設けられるので、発泡成形時の余剰発泡ガスのガス抜きが円滑に行われる。
また、ガス抜き孔に代え、パッド本体1の外周部1aの一領域で、その一番高い地点10にパーティングラインPLの位置を合わる発泡型6を採用すると、該パーティングラインを通じて、発泡成形時の余剰発泡ガスさらに余剰発泡原料を円滑且つ積極的に放出することができる。加えて、発泡成形時のバリを、一部分510周りのパーティングラインPL,接合部79,89に集中させることができる。従来、発泡成形時にパーティングライン全周域の至る所にバリが発生し、後処理でこれらのバリを取り除かねばならず苦労したが、一部分510周りのパーティングラインPLに限定して、そのパーティングライン位置を、発泡成形されるパッド本体外周部1aの一番高い地点10とするので、バリをその一箇所に集め、後処理のバリ取りを容易にする。
また、上型7に発泡ガス用ガス抜き孔7gが予め設けられる発泡型6を採用すると、前記一部分510の制約がなく、布状材5の外周縁51全てが、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにできる。したがって、裏面側厚み面11の全てを含めたパッド本体裏面1Rの型面部位に布状材5をセットでき、シートフレーム等と接触するパッド本体1全域に布状材5を被着することができ、シートパッドSとフレームとの擦れ音防止が完璧となる。
【0026】
加えて、短冊状部53付き布状材5に予め加工形成し、該短冊状部53同士を重ね合せるか又は短冊状部53間を開いて曲面形成し、布状材5の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型型面7Aに該短冊状部53付き布状材5をセットすると、外周部1aにつながる凹凸部15のある裏面側厚み面11にも、布状材5がその凹凸部15に合わせた曲面を形成して被着一体化できる。切込み52を複数形成した短冊状部53の箇所は、他の部位に比べ剛性が弱くなっているので、パッド本体1の発泡成形で、上型型面7Aへの追従性が向上する。切込み52を複数設けることにより、複雑な凹凸形状にも追従性が向上する。細幅の短冊状部53を設けることで、短冊状部53のコシ(剛性)が弱くなり追従性が向上し、外周部1aの外側立壁面13から一番高い地点10で曲がって裏面側厚み面11へ被着するのは勿論、凹凸部15への被着一体化をも確実なものにする。パッド本体裏面1Rに布状材5が被着一体化するシートパッドの品質向上に貢献する。
【0027】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。パッド本体1,外周部1a,布状材5,発泡型6,発泡原料9等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態はクッションパッドに適用したが、背もたれ用バックパッドにも適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 パッド本体
1R 裏面
1a 外周部
10 一番高い地点
5 布状材
51 外周縁
510 外周縁の一部分
511 外周縁の残り全て
52 切込み
53 短冊状部
6 発泡型
7 上型
7A 上型型面
7g ガス抜き孔
8 下型
9 発泡原料
PL パーティングライン
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用座席シートを構成する車両用シートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に搭載される座席シートの座部や背もたれを構成するシートクッションがある。軟質ポリウレタンフォーム等のシートパッドを主構成要素とするが、乗員の着座時等でシートパッドが撓んでシートフレームと擦れ、時に異音発生するケースがある。
こうしたことから、近年、パッド本体の裏面側に不織布等の布状材を被着一体化させて、異音対策を講じたシートパッドが提案されるようになっている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−11249号公報
【特許文献2】特開平2−145308号公報
【0004】
特許文献1は、その請求の範囲のごとく「上型のウレタン発泡空間を有する上型と下型とからなり、上型のウレタン発泡空間壁に沿ってセットされるフェルトの端末部を凸形態に保持するよう上型側に突設されている凸起部の外側に前記凸起部と平行するリブを形成して凸起部の外側とリブとの間に凹溝を設け、この凹溝内にフェルトの端末を差し込みウレタン発泡」するようにしている。
また、特許文献2はその請求の範囲に記載のごとく「サポータ材(本発明でいう「布状材」)がパッド材の底部より大きく形成され、該サポータ材の端末が下型と上型との型合わせ部に挟持される」構成とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかるに、近年登場したハイブリッドカーは低速になると静かで、一層の異音対策が求められるようになり、また高級車では昇降時等で座席の各所に手をついても異音が発生しない品質向上要求が出てきており、特許文献1の発明はこうした要求に対して万全とはいえなかった。車両用シートパッドはシートフレームに取付けられ、パッド本体はその外周沿いに裏面側へ立壁状の外周部が張り出している。この外周部の裏面側厚み面とシートフレームとの異音対策を講じる必要性がでてきており、特許文献1のような外周部の内側壁面だけの対策構成では応えきれていなかった。また、特許文献2は、サポータ材の端末が下型と上型との型合わせ部に挟持される構成であるため、発泡成形時のガス抜けが制御できずパッド本体の成形が不良になる問題があった。サポータ材がパーティングライン部に噛んで、発泡ガスが必要以上に抜け過ぎてしまい、いわゆる底上がりなどの不具合を招く問題があった。
こうしたことから、現状は、図3(ロ)のごとく発泡成形されるパッド本体1の各外周部1aでその一番高い地点10に、パーティングラインPLを設け、且つ布状材5の外周縁51をパーティングラインPLから5mm〜10mm離れた所までにとどめて、上型型面7Aに布状材5をセットし、パッド本体1の発泡成形を行っている。しかし、上型7Aに布状材5をセットしても、パーティングラインPLから5mm〜10mm離れた所までしか布状材5がないため、布状材5のない露出部分たる裏面側厚み面11でシートフレーム等との擦れ音が依然として発生する問題があった。また、発泡成形時にパッド本体外周部1aの全域で発泡原料漏れ(ウレタン漏れ)を引き起こす問題を抱えていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するもので、パッド本体に係るメイン部,サイド部の裏面側だけでなく、パッド本体の立壁状外周部につながる裏面側厚み面で、シートフレームとの間で発生する異音を防ぎ、さらに発泡成形時に発泡原料漏れ対策を講じた車両用シートパッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、請求項1に記載の発明の要旨は、上型(7)への布状材(5)のセット後、発泡原料(9)の注入及び下型(8)との型閉じを経て、裏面(1R)に該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形するシートパッドの製造方法において、上型(7)と下型(8)とのパーティングライン(PL)の位置が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)で、裏面(1R)側へ張り出すその一番高い地点(10)よりも下方地点に設けられ、さらに前記パッド本体(1)の外周部の一領域では、その一番高い地点(10)にパーティングライン(PL)の位置を合わせた発泡型を用いて、(イ)前記パッド本体(1)の外周部の一領域にあてがわれる布状材(5)に係る外周縁(51)の一部分(510)は、パッド本体外周部(1a)の一番高い地点(10)を越えずに、布状材(5)に係る前記一部分(510)以外の外周縁(51)が、発泡成形される前記パッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え、且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該布状材(5)をセットする第一工程と、(ロ)発泡原料(9)の注入及び型閉じする第二工程と、(ハ)発泡成形で余剰の発泡ガスを布状材(5)に係る前記一部分(510)側から放出して、該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形する第三工程と、を備えることを特徴とする車両用シートパッドの製造方法にある。ここで、「発泡成形されるパッド本体の外周部で、裏面側へ張り出すその一番高い地点」とは、発泡成形時における発泡型の断面状態下、それぞれの外周部地点でその外周部をつくる外側立壁面の最上点をいう。
請求項2の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、上型(7)への布状材(5)のセット後、発泡原料(9)の注入及び下型(8)との型閉じを経て、裏面(1R)に該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形するシートパッドの製造方法において、上型(7)と下型(8)とのパーティングライン(PL)の位置が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)で、裏面(1R)側へ張り出すその一番高い地点(10)よりも下方地点に設けられ、さらに上型(7)にセットされる布状材と通じる発泡ガス用ガス抜き孔(7g)がその上型に設けられる発泡型(6)を用いて、(イ)布状材(5)の外周縁(51)が、発泡成形される前記パッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該布状材(5)をセットする第一工程と、(ロ)発泡原料(9)の注入及び型閉じする第二工程と、(ハ)発泡成形で余剰の発泡ガスを前記ガス抜き孔(7g)から放出して、該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形する第三工程と、を備えることを特徴とする車両用シートパッドの製造方法にある。請求項3の発明たる車両用シートパッドの製造方法は、請求項1又は2で、布状材(5)の外周縁(51)から布状材中央部(50)に向け短冊状に複数の切込み(52)を入れて短冊状部(53)を複数有する短冊状部付き布状材(5)に予め加工形成し、該切込み(52)でできた短冊状部(53)同士を重ね合せるか又は短冊状部(53)間を開いて、該短冊状部(53)付き布状材(5)を曲面形成し、前記第一工程に係る布状材(5)の外周縁(51)が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該短冊状部(53)付き布状材(5)をセットすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用シートパッドの製造方法は、パッド本体の裏面側に配されるシートフレーム等の接触に対して、布状材がパッド本体の外周部につながる裏面側厚み面をも含めてパッド本体裏面に被着されるので、パッド本体とフレーム等との擦れ音がなくなり、異音防止に貢献し、さらに発泡成形時の余剰発泡原料を一箇所に集中でき、バリ取りの後処理を簡便化できるなど極めて有益である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の車両用シートパッドの製造方法の一形態で、シートパッドを裏面側から見た斜視図である。
【図2】図1のII-II線矢視図で、発泡成形を終えた型内に在るシートパッドの断面図である。
【図3】(イ)は図2の部分拡大図で、(ロ)が(イ)に代わる対比説明図である。
【図4】図1のIV-IV線矢視図で、発泡成形を終えた型内に在るシートパッドの断面図である。
【図5】図4に代わる対比説明断面図である。
【図6】布状材の平面図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】上型に布状材をセット後、発泡原料を注入する説明断面図である。
【図9】型閉じした説明断面図である。
【図10】シートパッドの外周部周りの拡大斜視図である。
【図11】図4に代わる他態様の説明である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る車両用シートパッドの製造方法について詳述する。図1〜図11は本発明の車両用シートパッド(以下、単に「シートパッド」ともいう。)の製造方法の一形態で、図1はシートパッドを裏面側から見た斜視図、図2は図1のII-II線矢視図、図3(イ)は図2の部分拡大図で、(ロ)が(イ)に代わる対比説明図、図4が図1のIV-IV線矢視図、図5が図4に代わる対比説明断面図、図6が布状材の平面図、図7が図6の部分拡大図、図8が発泡原料を注入する説明断面図、図9が型閉じした説明断面図、図10がシートパッドの外周部周りの拡大斜視図、図11が図4に代わる他態様の説明断面図を示す。尚、各図は布状材を判り易くするため、その厚みを大きく描く。
【0011】
シートパッドSは、背もたれ用のバックパッドや着座した乗員の下半身を受け支えるクッションパッドである。本実施形態は図1のようなクッションパッドに適用する。クッションパッドに表皮を被せてシートクッションの形にすれば、公知のバックパッドに表皮を被せたバックレストと公知のヘッドレストとで車両用座席シートになる。シートパッドSは、上型7に布状材5をセットした後、発泡原料9の注入及び下型8との型閉じを経て、裏面1Rに該布状材5が被着一体化されるパッド本体1を発泡成形して製造される。パッド本体は図2のように乗員の臀部及び大腿部を支えるメイン部2と該メイン部の両側で隆起して臀部及び大腿部の側部を支えるサイド部3とに大別される。符号1cはサイド部裏面側に形成される凹所、符号1eはメイン部表面2aとサイド部表面3aとの境界部分で車両前後方向に走る縦溝を示す。
【0012】
本シートパッドの製造方法では、上型7と下型8とのパーティングラインPLの位置が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aで、裏面1R側に張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設けられる発泡型6を用いる。パーティングラインPLの位置を、裏面1R側に張り出すパッド本体外周部1aの一番高い地点10よりも下方地点に設けるのは、図3(ロ)の従来法と違って、図2のごとく一番高い地点10を越えて外周部1aの外側立壁面13側にまで、布状材5の外周縁51を配するためである。
本発明は、図9のように型閉じでシートパッド用キャビティCAを形成し、シートパッドS,パッド本体1が車両に設置される状態と上下逆にして成形される。パッド本体1にはその外周沿いに裏面1R側へ張り出す立壁状の外周部1aが形成される(図2)。外周部1aに係る外側立壁面13からその突端に在る一番高い地点10で曲がった後に裏面側厚み面11が続き、その先の内方屈曲部14で曲がり、さらに内側立壁面12となっている(図3のイ)。各外周部1aで裏面1R側に張り出すその一番高い地点10をつくる角部70が上型7に設けられる。上型7には、パーティングラインPLの接合部79から、外側立壁面用型面部の一部75、角部70を経て、サイド部3の裏面側型面7bたる裏面側厚み面形成用型面部71,内方角部74,内側立壁面形成用型面部72,凹所用型面部78、さらにメイン部2の裏面側型面7aへと続く上型型面7Aが形づくられる。図8の符号60は外側立壁面用型面部の一部75と裏面側厚み面形成用型面部71と内側立壁面形成用型面部72でつくる張出部4用窪みを示す。下型8には接合部89から外側立壁面用型面部の残り部分83が形づくられ、さらにサイド部3の表面側型面8b、縦溝用型面8c、メイン部の表面側型面8aが形成される。
【0013】
前記発泡型6を用いて、シートパッドSが次のように製造される。
まず、布状材5に係る外周縁51の一部分510が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越えずにその手前の上型型面7Aに配される一方、布状材5に係る前記一部分510以外の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体外周部1aの一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型型面7Aに布状材5をセットする(第一工程)。
ここでは、布状材5に係る一部分510以外の外周縁残り全て511が、発泡成形されるパッド本体1の各外周部1aでその一番高い地点10を越え、且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型7の型面7Aに布状材5をセットする。布状材5に係る外周縁51の一部分510が、例えば乗員の大腿部が当接する車両前方側メイン部2の裏面2bで、内方屈曲部14近くに配される(図1,図4)。該一部分510を、パッド本体外周部1aの一番高い地点10を越えずにその手前の上型型面7Aにとどめるのは、該一部分510周りのパーティングライン位置を変更し(後述)、ここに発泡成形時の余剰発泡ガスを集め、ここから余剰発泡ガスさらに余剰発泡原料を放出させるためである。発泡成形時、余剰発泡ガスは布状材5を構成する糸と糸との間隙を通って、該一部分510へ集まる。一方、布状材5に係る一部分510以外の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え、且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型型面7Aに布状材5をセットするのは、一番高い地点10を介して外周部1aにつながる裏面側厚み面11を布状材5で被って、裏面側厚み面11も含めてパッド本体1とシートフレームとの擦れ音をなくすためである。尚、パッド本体1の裏面側厚み面11の幅は、図3(ロ)のごとく5mm〜10mm程度である。
【0014】
型閉じ後の発泡成形で、図3(イ)に示す外周部1aの一番高い地点10からパーティングラインPLまでの垂直距離αは10mm〜20mmの範囲とし、布状材5の外周縁51(一部分510を除く)がパーティングラインPL手前の上方地点に配される。上型型面7Aへの布状材5のセットで、布状材5の外周縁51を一番高い地点10とパーティングラインPLとの間に配することによって、布状材5の上型セット時の多少の位置ズレを許容させる。布状材5の外周縁51がパーティングラインPLから多少離れてセットされても、裏面側厚み面11を確実に覆うことができる。一方、布状材5の上型セット時に、布状材5がパーティングラインPL側へ多少寄っても、布状材5がパーティングラインPL,接合部79,89に噛み込むことがない。
パーティングラインPLの位置は、その全域に亘って、図5のように、発泡成形されるパッド本体1の各外周部1aで、裏面1R側に張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設定する発泡型6を用いることもできる。しかし、布状材5を伝って一部分510に達した余剰発泡ガスが、該一部分510近くの接合部79,89から綺麗に抜け出せない虞がある。そこで、本発明は、パーティングラインPLの位置が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aで、裏面1R側へ張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設けられるとしながらも、パッド本体1の外周部1aの一領域で、その一番高い地点10にパーティングラインPLの位置を合わせた発泡型を採用する(図4)。そして、パッド本体1の外周部の該一領域にあてがわれる布状材5に係る外周縁51の一部分510は、パッド本体外周部1aの一番高い地点10を越えないよう設定する。布状材5の一部分510周りのパーティングラインPLだけは、そのパーティングライン位置が発泡成形されるパッド本体外周部1aの一番高い地点10となる発泡型6を用い、発泡成形時の余剰発泡ガスを円滑且つ積極的に放出させるようにしている。
【0015】
ここで、布状材5とは布地状のシート材で、本実施形態は製織しないで機械的,化学的,熱的などで繊維を固着したり絡み合わせたりして、シート状にした不織布とする。布状材5の外周部で、パッド本体1に係る凹凸部15のある裏面側厚み面11、外側立壁面の一部を覆い、且つメイン部裏面2b,サイド部裏面3bを覆う大きさにする。さらに凹凸部15に対応する布状材5の外周縁51から布状材中央部50へ向け短冊状に複数の切込み52を入れて、短冊状部53を複数有する短冊状部53付き布状材5に予め加工形成した布状材5を用いる。
【0016】
具体的には、裏面側厚み面11の長手方向ほぼ全域(一部分510を除く)を覆い、且つ外周部1aの一番高い地点を越え、パーティングラインPL手前の外側立壁面を覆って、パッド本体裏面1R側を覆うことのできる大きさに裁断し、さらに切込み52を入れた布状材5とする(図6,図10)。切込み52の方向は、例えば図10のごとく凹凸部15の凸部17(又は凹部16)に対応する布状材5の膨らみある外周縁51では、最も突出した地点で、その法線方向に設けられる(図7)。法線方向の切込み52と平行にする切込み52を複数設けて、細長の短冊状部53を複数有する短冊状部53付き布状材5とする。
切込み52の長さLは、外周部1aに短冊状部53付き布状材5を被着一体化した状態下(図10)で、外側立壁面13に載った布状材5の外周縁51から、裏面側厚み面11の平坦域βを経由し、内方屈曲部14の丸み形成域Rを越えて、内側立壁面12の領域αにまで入り込む長さとするのが好ましい。切込み先端52aが内側立壁面12の領域にまで達すると、発泡型6への短冊状部53付き布状材5のセット時に、その外周縁51が型接合部79寄りに多少ずれても、短冊状部53で丸み形成域Rを覆い、最終的に凹凸部15の曲面も綺麗に覆えようになるからである。図6中、符号56は布状材5を上型7に係止するための孔、符号58はノズル用開口、符号59はサイド部裏面3bから外周部4の内側立壁面42へ円滑に屈曲可能にするためのスリット、符号Fは布状材に貼着一体化させた矩形のフェライトシート片を示す。
【0017】
本第一工程は、短冊状部53付き布状材5を用い、まず、布状材中央部50で上型型面7Aの中央部を被う。引き続き、切込み52でできた短冊状部53同士を重ね合せるか又は短冊状部53間を開いて、布状材5に係る前記一部分510以外の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の各外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型7の型面7Aに該短冊状部付き布状材をセットする。外周部1aにつながる裏面側厚み面11に凹凸部15がある場合、上型7の対応起伏部に、切込み52でできた隣り合う短冊状部53同士を重ね合わせるか又は隣り合う短冊状部53間を開くことにより曲面形成して、上型6に短冊状部53付き布状材5をセットする。
詳しくは、裏面側厚み面11に凹凸部15の凸部17を形成している場合、その箇所の発泡型6の起伏部は凹状にへこんでおり、短冊状部53の一部を重ね合わせ複数の短冊状部53で該起伏部の曲面を形成するようにしてあてがう。起伏部に被着する布状部分が複数の短冊状部53からなるので、起伏部の曲面形状にセットし易くなっている。一方、凹凸部15の凹部16を形成する発泡型6の起伏部は凸状になっており、短冊状部53間が開くようにして、その曲面を複数の短冊状部53で形成する。起伏部に対応する部位が複数の不織布製短冊状部53からなるので、短冊状部53間が開いてできたその隙間εに布状材5の起毛が入り込み絡み合う。
【0018】
短冊状部53付き布状材5に代え、布状材5に係る一部分510以外の外周縁51が、パッド本体外周部1aの一番高い地点を越え且つパーティングライン手前の上型型面7Aに沿うように、該布状材が熱プレス等で立体形状に予備成形されたものを用いることもできる。ただ、裏面側厚み面11に凹凸部15のある外周部1aについては、短冊状部53付き布状材5の方が該凹凸部の形状になぞって上型7へのセットが行い易く、発泡成形終了までその形状に維持できるなどより好ましくなっている。
【0019】
前記第一工程で、上型7への布状材5のセット後、発泡原料9の注入及び型閉じする第二工程,第三工程へと進行する。発泡原料9の注入及び型閉じを経て、発泡体からなるパッド本体1を、その裏面1Rに布状材5が被着一体化されるようにして、発泡成形する。本実施形態は、発泡型6への短冊状部53付き布状材5のセット後、型開状態のまま、下型8のキャビティCAを形成する型面8Aに注入ホースN等を使用してパッド本体1成形用ウレタン発泡原液等の発泡原料9を所定量注入する(図8)。続いて、上型7を作動させ型閉じし、第二工程を終える(図9)。上型7と下型8との型閉じで、短冊状部53付き布状材5がインサートされたシートパッドS用キャビティCAができる。尚、発泡型6への布状材5のセット後、発泡原料9を注入し、その後、型閉じしたが、発泡型6に布状材5をセットした後、型閉じし、その後、発泡原料9を注入することもできる。
【0020】
前記型閉じ後、パッド本体1の発泡成形に移る(第三工程)。図9の型閉じ状態を所定時間維持し、図2,図4ごとくパッド本体1を、その裏面1R側に布状材5が被着一体化するよう発泡成形して、シートパッドSを造る。
発泡成形の第三工程で、余剰の発泡ガス,余剰発泡原料を、布状材5に係る外周縁51の前記一部分510側から放出して、布状材5が一体被着されるパッド本体1を成形する。発泡成形過程の余剰発泡ガスは、図4で説明すると、上型型面7Aにセットされた布状材5を伝って同図左側の布状材5の一部分510の方向へと進み、該一部分近くの接合部79,89から放出される。該接合部のパーティングライン位置が、既述のごとく発泡成形されるパッド本体外周部1aで、その一番高い地点10と一致しているので、余剰発泡ガスが円滑放出される。パッド本体1の発泡成形を終え、脱型すれば、パッド本体1の裏面1Rに布状材5が被着一体化し、且つ一部分510を除いて、外周部1aにつながる裏面側厚み面11に布状材5が被着一体化した所望のシートパッドSが得られる。尚、図1,図5中、符号19はパッド本体1の露出部分で、裏面側厚み面11の一部分510周りでは布状材5が被着してない状態図を示したが、該裏面側厚み面も布状材5が出来る限り被うよう設定することもできる。
該シートパッドSに図示しない表皮を被せると、車両用座席シートの座部用シートクッションになる(図1)。
【0021】
本実施形態は、上型(7)と下型(8)とのパーティングライン(PL)の位置が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)で、裏面(1R)側へ張り出すその一番高い地点(10)よりも下方地点に設けられとしながら、パッド本体1の外周部1aの一領域に限り、その一番高い地点10にパーティングラインPLの位置を合わせた発泡型を用いる。さらに、布状材5の外周縁51について、パッド本体1の外周部の該一領域にあてがわれる布状材5に係る外周縁51の一部分510は、パッド本体外周部1aの一番高い地点10を越えずに、布状材5に係る該一部分510以外の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配される構成とする(第一工程)。これに代え、図11のような構成にすることもできる。
【0022】
すなわち、上型7にセットされる布状材5と通じる発泡ガス用ガス抜き孔7gを予め該上型7に設け、第一工程では、該布状材5に係る外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型7の型面7Aに該布状材5をセットする。ここでは、図11のごとく上型7と下型8とのパーティングラインPLの位置を、その全域に亘って、発泡成形されるパッド本体1の各外周部1aで、裏面1R側へ張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設定する。発泡成形時の余剰発泡ガス,余剰発泡原料を接合部79,89から放出させずに、上型に設けたガス抜き孔7gから放出できるからである。
第三工程では、発泡成形で余剰発泡ガス,余剰発泡原料をガス抜き孔7gから放出して、布状材5が一体被着されるパッド本体1を発泡成形する。発泡成形過程の余剰発泡ガスは、上型型面7Aにセットされた布状材5を伝ってガス抜き孔7gが在る方向へと向かい、該ガス抜き孔から円滑放出される。発泡ガスをガス抜き孔7gから放出させるので、布状材5に係る外周縁全て511が、パッド本体外周部1aの一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型面7Aへの布状材5をセットすることが可能になっている。図11で、パッド本体1の発泡成形を終え、脱型すれば、パッド本体裏面1Rに布状材5が被着し、且つ外周部1aの裏面側厚み面11の全域に布状材5が被着一体化した所望のシートパッドSが得られる。
【0023】
このように構成したシートパッドの製造方法によれば、パーティングラインPLの位置が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aで、裏面1R側へ張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設けられる発泡型6を用い、且つ布状材5の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越えて、上型7の型面7Aに該布状材5をセットするので、外周部1aにつながる裏面側厚み面11を含めてパッド本体裏面1Rが布状材5で覆われる。シートフレーム等と接触するパッド本体部位に布状材5を被着することができ、シートパッドSとフレームとの擦れ音をなくすことができる。これまで走行振動や着座時等で、裏面側厚み面11とシートフレームとが擦れ音が鳴っていた問題を解消できる。外周部1aへつながる裏面側厚み面11とシートフレームとの異音対策が万全となる。
【0024】
そして、布状材5の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPL手前に配されるようにして、布状材5を上型7にセットするので、上型7への布状材5のセットが容易になる。布状材5の外周縁51が、図3(イ)で符号αの範囲、すなわち上型7の一番高い地点10からパーティングラインPL地点までの区間にくるようセットするだけで、裏面側厚み面11を覆った状態を保てるので、上型7への布状材セットが楽で、作業性向上につながる。また、布状材5の外周縁51をパーティングライン手前に配して、パーティングライン地点まで到達するには余裕があるので、布状材5がパーティングラインPL,接合部79,89に噛んで、発泡成形時、発泡ガスが必要以上に抜け過ぎてしまう不具合等は起こらない。
【0025】
一方、パーティングラインPLの位置が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aで、裏面1R側へ張り出すその一番高い地点10よりも下方地点に設けられる発泡型6を用いるので、発泡成形時の余剰発泡ガスをガス抜けできない懸念があるが、パッド本体1の裏面1Rに布状材5が存在するため、該布状材を伝って余剰ガスが抜けるため、パッド本体1の形状を損なうことはない。上型7に発泡ガス用ガス抜き孔7gが設けられるので、発泡成形時の余剰発泡ガスのガス抜きが円滑に行われる。
また、ガス抜き孔に代え、パッド本体1の外周部1aの一領域で、その一番高い地点10にパーティングラインPLの位置を合わる発泡型6を採用すると、該パーティングラインを通じて、発泡成形時の余剰発泡ガスさらに余剰発泡原料を円滑且つ積極的に放出することができる。加えて、発泡成形時のバリを、一部分510周りのパーティングラインPL,接合部79,89に集中させることができる。従来、発泡成形時にパーティングライン全周域の至る所にバリが発生し、後処理でこれらのバリを取り除かねばならず苦労したが、一部分510周りのパーティングラインPLに限定して、そのパーティングライン位置を、発泡成形されるパッド本体外周部1aの一番高い地点10とするので、バリをその一箇所に集め、後処理のバリ取りを容易にする。
また、上型7に発泡ガス用ガス抜き孔7gが予め設けられる発泡型6を採用すると、前記一部分510の制約がなく、布状材5の外周縁51全てが、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにできる。したがって、裏面側厚み面11の全てを含めたパッド本体裏面1Rの型面部位に布状材5をセットでき、シートフレーム等と接触するパッド本体1全域に布状材5を被着することができ、シートパッドSとフレームとの擦れ音防止が完璧となる。
【0026】
加えて、短冊状部53付き布状材5に予め加工形成し、該短冊状部53同士を重ね合せるか又は短冊状部53間を開いて曲面形成し、布状材5の外周縁51が、発泡成形されるパッド本体1の外周部1aでその一番高い地点10を越え且つパーティングラインPLの手前に配されるようにして、上型型面7Aに該短冊状部53付き布状材5をセットすると、外周部1aにつながる凹凸部15のある裏面側厚み面11にも、布状材5がその凹凸部15に合わせた曲面を形成して被着一体化できる。切込み52を複数形成した短冊状部53の箇所は、他の部位に比べ剛性が弱くなっているので、パッド本体1の発泡成形で、上型型面7Aへの追従性が向上する。切込み52を複数設けることにより、複雑な凹凸形状にも追従性が向上する。細幅の短冊状部53を設けることで、短冊状部53のコシ(剛性)が弱くなり追従性が向上し、外周部1aの外側立壁面13から一番高い地点10で曲がって裏面側厚み面11へ被着するのは勿論、凹凸部15への被着一体化をも確実なものにする。パッド本体裏面1Rに布状材5が被着一体化するシートパッドの品質向上に貢献する。
【0027】
尚、本発明においては前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。パッド本体1,外周部1a,布状材5,発泡型6,発泡原料9等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。実施形態はクッションパッドに適用したが、背もたれ用バックパッドにも適用できる。
【符号の説明】
【0028】
1 パッド本体
1R 裏面
1a 外周部
10 一番高い地点
5 布状材
51 外周縁
510 外周縁の一部分
511 外周縁の残り全て
52 切込み
53 短冊状部
6 発泡型
7 上型
7A 上型型面
7g ガス抜き孔
8 下型
9 発泡原料
PL パーティングライン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型(7)への布状材(5)のセット後、発泡原料(9)の注入及び下型(8)との型閉じを経て、裏面(1R)に該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形するシートパッドの製造方法において、上型(7)と下型(8)とのパーティングライン(PL)の位置が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)で、裏面(1R)側へ張り出すその一番高い地点(10)よりも下方地点に設けられ、さらに前記パッド本体(1)の外周部の一領域では、その一番高い地点(10)にパーティングライン(PL)の位置を合わせた発泡型を用いて、
(イ)前記パッド本体(1)の外周部の一領域にあてがわれる布状材(5)に係る外周縁(51)の一部分(510)は、パッド本体外周部(1a)の一番高い地点(10)を越えずに、布状材(5)に係る前記一部分(510)以外の外周縁(51)が、発泡成形される前記パッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え、且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該布状材(5)をセットする第一工程と、
(ロ)発泡原料(9)の注入及び型閉じする第二工程と、
(ハ)発泡成形で余剰の発泡ガスを布状材(5)に係る前記一部分(510)側から放出して、該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形する第三工程と、を備えることを特徴とする車両用シートパッドの製造方法。
【請求項2】
上型(7)への布状材(5)のセット後、発泡原料(9)の注入及び下型(8)との型閉じを経て、裏面(1R)に該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形するシートパッドの製造方法において、上型(7)と下型(8)とのパーティングライン(PL)の位置が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)で、裏面(1R)側へ張り出すその一番高い地点(10)よりも下方地点に設けられ、さらに上型(7)にセットされる布状材と通じる発泡ガス用ガス抜き孔(7g)がその上型に設けられる発泡型(6)を用いて、
(イ)布状材(5)の外周縁(51)が、発泡成形される前記パッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該布状材(5)をセットする第一工程と、
(ロ)発泡原料(9)の注入及び型閉じする第二工程と、
(ハ)発泡成形で余剰の発泡ガスを前記ガス抜き孔(7g)から放出して、該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形する第三工程と、を備えることを特徴とする車両用シートパッドの製造方法。
【請求項3】
前記布状材(5)の外周縁(51)から布状材中央部(50)に向け短冊状に複数の切込み(52)を入れて短冊状部(53)を複数有する短冊状部付き布状材(5)に予め加工形成し、該切込み(52)でできた短冊状部(53)同士を重ね合せるか又は短冊状部(53)間を開いて、該短冊状部(53)付き布状材(5)を曲面形成し、前記第一工程に係る布状材(5)の外周縁(51)が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該短冊状部(53)付き布状材(5)をセットする請求項1又は2に記載の車両用シートパッドの製造方法。
【請求項1】
上型(7)への布状材(5)のセット後、発泡原料(9)の注入及び下型(8)との型閉じを経て、裏面(1R)に該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形するシートパッドの製造方法において、上型(7)と下型(8)とのパーティングライン(PL)の位置が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)で、裏面(1R)側へ張り出すその一番高い地点(10)よりも下方地点に設けられ、さらに前記パッド本体(1)の外周部の一領域では、その一番高い地点(10)にパーティングライン(PL)の位置を合わせた発泡型を用いて、
(イ)前記パッド本体(1)の外周部の一領域にあてがわれる布状材(5)に係る外周縁(51)の一部分(510)は、パッド本体外周部(1a)の一番高い地点(10)を越えずに、布状材(5)に係る前記一部分(510)以外の外周縁(51)が、発泡成形される前記パッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え、且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該布状材(5)をセットする第一工程と、
(ロ)発泡原料(9)の注入及び型閉じする第二工程と、
(ハ)発泡成形で余剰の発泡ガスを布状材(5)に係る前記一部分(510)側から放出して、該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形する第三工程と、を備えることを特徴とする車両用シートパッドの製造方法。
【請求項2】
上型(7)への布状材(5)のセット後、発泡原料(9)の注入及び下型(8)との型閉じを経て、裏面(1R)に該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形するシートパッドの製造方法において、上型(7)と下型(8)とのパーティングライン(PL)の位置が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)で、裏面(1R)側へ張り出すその一番高い地点(10)よりも下方地点に設けられ、さらに上型(7)にセットされる布状材と通じる発泡ガス用ガス抜き孔(7g)がその上型に設けられる発泡型(6)を用いて、
(イ)布状材(5)の外周縁(51)が、発泡成形される前記パッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該布状材(5)をセットする第一工程と、
(ロ)発泡原料(9)の注入及び型閉じする第二工程と、
(ハ)発泡成形で余剰の発泡ガスを前記ガス抜き孔(7g)から放出して、該布状材(5)が被着一体化されるパッド本体(1)を発泡成形する第三工程と、を備えることを特徴とする車両用シートパッドの製造方法。
【請求項3】
前記布状材(5)の外周縁(51)から布状材中央部(50)に向け短冊状に複数の切込み(52)を入れて短冊状部(53)を複数有する短冊状部付き布状材(5)に予め加工形成し、該切込み(52)でできた短冊状部(53)同士を重ね合せるか又は短冊状部(53)間を開いて、該短冊状部(53)付き布状材(5)を曲面形成し、前記第一工程に係る布状材(5)の外周縁(51)が、発泡成形されるパッド本体(1)の外周部(1a)でその一番高い地点(10)を越え且つパーティングライン(PL)の手前に配されるようにして、上型(7)の型面(7A)に該短冊状部(53)付き布状材(5)をセットする請求項1又は2に記載の車両用シートパッドの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−49190(P2013−49190A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188321(P2011−188321)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]