説明

車両用シート空調装置

【課題】衛生的な車室内空間の提供に加えて、駐車時温熱運転が実行された後、再乗車する乗員に対して配慮した車両用シート空調装置を提供する。
【解決手段】車両用シート空調装置は、シート1に供給する空気を加熱する加冷熱生成装置3と、加冷熱生成装置3により加熱された温熱空気をシート1に送る送風装置4と、加冷熱生成装置3および送風装置4の運転を制御するシート温調制御部8と、乗員が着座していない状態で駐車されたことを判断する駐車判断部6と、を備えている。そして、シート温調制御部8は、シート1を駐車中に温める駐車時温熱運転を、駐車判断部6によって駐車の判断がされてから開始し、その後、駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときには、加冷熱生成装置3の運転を停止した後、送風装置4の運転を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートを温める機能を備える車両用シート空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の車室内は、非居住空間であり、狭くて掃除しにくい空間であることから、建物の部屋と比べて清掃が頻繁に行われない傾向にある。また、乗員の衣服に付いた害虫や、ペットの犬、猫等の動物に付いているノミ、ダニ等の害虫が、車室内に入り込むことがある。これらの要因から、ノミ、ダニ等の害虫が車室内で増殖して乗員を刺したりかんだりすることがある。また、害虫の生体、糞、および死骸はアレルギーを引き起こす原因、いわゆるアレルゲンとして問題となる。特にシートに着座すると、乗員に接触することもあり、これらの要因を除去したいという要求が高まってきている。
【0003】
一方、従来からノミ、ダニ等の害虫を除去する装置としては、例えば、特許文献1に記載されているように、温風を吹き出し、その熱をエアマットを介して布団や衣服等に伝えてこれを乾燥する乾燥機が知られている。この乾燥機は、ノミ、ダニ等が死滅する温度に達する温風により、布団や衣服等に付いているノミ、ダニ等の増殖を抑制することができる。
【0004】
そして、自動車等のシートを温めることができる装置としては、従来の車両用シート空調装置が知られている。この装置は、例えば、特許文献2に記載されているように、自動車等のシートに着座している乗客のために温度調節された空気を供給する装置である。この装置は、熱交換機としての複数のペルチェモジュールと、この熱交換機で温調された空気をシート内部の通路を介してその表面側に送る送風機と、を備え、これらの作動が温度変化制御装置によって自動調節される。
【特許文献1】特開平5−68787号公報
【特許文献2】特表平10−504977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、車両のシートに温熱を与えることによってシートの害虫を除去するには、比較的高温の温風をシートに供給する温熱運転が必要になる。しかも、この温熱運転を実施する際には、乗員に対して温熱による不快感を与えないようにしなければならない。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の車両用シート空調装置において、特許文献1に記載の乾燥機のように、害虫が死滅または活動を停止する程度にシートの温度を上げた温度制御を施す温熱運転を実施したとしても、この運転中や運転を停止した後に乗車する乗員に対して温熱による不快感を与えないための配慮がなされていないという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上記問題点に鑑み、衛生的な車室内空間の提供に加えて、駐車時温熱運転が実行された後、再乗車する乗員に対して配慮した車両用シート空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。すなわち、車両用シート空調装置にかかる発明は、シート(1)に供給する空気を加熱する加熱部(3)と、加熱部(3)により加熱された温熱空気をシート(1)に送る送風部(4)と、加熱部(3)および送風部(4)の運転を制御するシート温調制御部(8)と、乗員が着座していない状態で駐車されたことを判断する駐車判断部(6)と、を備えており、
シート温調制御部(8)は、加熱部(3)および送風部(4)の運転によってシート(1)を車両の駐車中に温める駐車時温熱運転を、駐車判断部(6)によって駐車の判断がされてから開始し、その後、駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときには、加熱部(3)の運転を停止した後、送風部(4)の運転を停止することを特徴とする。
【0009】
なお、上記駐車時温熱運転は、シートの温度をノミ、ダニ等の害虫の増殖活動を抑制できる温度または死滅しうる温度に温めることができる運転である。
【0010】
この発明によれば、ノミ、ダニ等の害虫を除去して衛生的な車室内空間を提供することができるとともに、温熱空気の送風を停止した後、それよりも低温の空気を送風することにより、乗員に対して不快に感じさせない駐車時温熱運転を提供することができる。
【0011】
また、上記シート温調制御部(8)は、上記駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときに、送風部(4)による送風量を、一旦増加させてから送風部(4)の運転を停止することが好ましい。この発明によれば、駐車時温熱運転を完全に停止させる前にそれまでよりも送風量を一旦増加させてから停止するので、送風量の増加によってシートを早く冷却することができる。
【0012】
また、シート(1)を冷やす冷却空気を生成するとともに、上記シート温調制御部(8)によって制御される冷却部(3)を備え、シート温調制御部(8)は、上記駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときに、加熱部(3)の運転を停止してシート(1)に対する上記温熱空気の供給を停止するとともに、冷却部(3)を運転してシート(1)に冷却空気を供給した後、冷却部(3)および送風部(4)の運転を停止することが好ましい。
【0013】
この発明によれば、シートへの送風を停止する前に冷却空気を積極的に送風することにより、加熱空気によるシートに溜まった熱を冷まして、シート温度を通常状態に早く低下させることができる。
【0014】
また、上記シート温調制御部(8)は、上記駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときに、加熱部(3)の運転を停止後、所定時間経過してから、冷却部(3)を運転することが好ましい。この発明によれば、加熱部の運転から冷却部の運転への移行に時間間隔を設けることにより、急激な温度変化を緩和して加熱部や冷却部を構成する装置に対する熱的衝撃を抑制することができる。
【0015】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下に、図1から図6を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、自動車などのシートを所定温度以上の高温に温めることができる車両用シート空調装置の構成を示した概念図である。
【0017】
車両用シート空調装置は、乗員が着座し、着座部および背もたれ部を有するシート1を駐車中に温める駐車時温熱運転を実施する装置である。図1に示すように、車両用シート空調装置は、シート1に供給する空気を加熱する加熱部として機能しうる加冷熱生成装置3と、加冷熱生成装置3により加熱された温熱空気をシート1に送る送風部としての送風装置4と、を備えており、さらに、駐車時温熱運転において加冷熱生成装置3および送風装置4の運転を制御するシート温調制御部8と、乗員が着座していない状態で駐車されたことを判断する駐車判断部6と、通常のシート空調運転を制御する空調制御部7と、を備えている。
【0018】
シート温調装置2は、加冷熱生成装置3および送風装置4を含み、シート1の着座部および背もたれ部の少なくともいずれか一方の内部または裏面側に配置されている。また、シート温調装置2は、シート1の近傍に設ける構成でもよいし、シート1の内部にダクト等を介して温風を送風できるようにシート1から離れて配置する構成としてもよい。
【0019】
制御装置5は、シート温調制御部8、駐車判断部6、および空調制御部7を含むコントロールユニットである。制御装置5は、エアコン空調制御装置と一体化される構成でもよい。制御装置5には、車室内の熱負荷に関する情報、駐車状態であるか否かを判定し得る情報、車室内の操作パネル9に配置された駐車時運転スイッチ10からの信号などが入力される。
【0020】
車室内の熱負荷に関する情報は、外部から車室内に入る熱的因子などのシート1の温度環境を示す各種の情報であり、例えば、日射センサにより検出された車室内への日射情報、車室内温度情報、外気温度センサにより検出された外気温度情報、赤外線センサなどにより検出されたシート1の温度などである。
【0021】
駐車判定に関する情報は、人の存在の有無が判断できる情報であり、例えば、イグニッションスイッチがOFF状態であるか否か、キーロック状態であるか否か、ドアロック状態であるか否か、着座センサの検出結果などである。
【0022】
駐車時運転スイッチ10は、乗員により操作されるスイッチであり、駐車時温熱運転を実施する命令をシート温調制御部8に送るための操作部である。乗員が車を止めて車室内から離れる前に駐車時運転スイッチ10を操作すると、シート温調制御部8は、駐車されたことが駐車判断部6によって判断されてからの経過時間が後述する遅動時間TDに到達したときに、シート温調装置2を起動して駐車時温熱運転を開始する。一旦操作された駐車時運転スイッチ10による駐車時温熱運転を実施する信号を解除する場合は、再度、駐車時運転スイッチ10を操作するように構成されている。
【0023】
シート温調制御部8には、日射情報、車室内温度、外気温度、およびシート温度の少なくとも一つの情報が入力され、これらの情報に基づいて車両の熱負荷を算出する場合は、あらかじめ記憶された車両の熱負荷を求める制御特性マップ(図3参照)を用いて熱負荷TLが求められる。駐車判断部6には、イグニッションスイッチの状態、着座センサの検出結果などが入力され、現時点がシート1に乗員が着座していない状態で駐車状態であるか否かが判断される。
【0024】
シート温調制御部8は、図3の制御特性マップにより求められた熱負荷TLが所定の熱負荷よりも小さいときは、所定の熱負荷よりも大きい場合と比べて、駐車判断部6によって判断された駐車開始から駐車時温熱運転を開始するまでの遅動時間を長くなるように決定する。
【0025】
駐車時温熱運転は、駐車時にシート1に温熱を提供する運転である。この運転は、シート1に着座している乗員にシート1に形成した空気通路を介して空調空気を供給する通常のシート空調運転とは異なり、乗員が不在時のシート1に対して通常のシート空調運転時よりも高温の温風を送風して、シート1に存在している害虫、例えばノミ、ダニ等を熱によって除去するために行われる。一般に、ダニ等の繁殖には25℃〜30℃、60〜85%の環境が適しているといわれており、駐車時温熱運転は、この環境を排除することができる。シート温調装置2により温風がシート1内部に供給されると、シート1の裏側から日射のあたる表側に向かって温風が流れてダニ等の害虫が逃げ場を失うので、害虫除去の効果が得られる。
【0026】
この駐車時温熱運転では、シート1の内部または表面の温度が50℃以上になる熱を提供し、好ましくは50℃〜60℃の範囲になる熱を提供する。シート1をこのような温度にすると、乗員やペットとともに車室内に侵入してシート1に存在しているノミ、ダニ等を死滅させることができる。これらの害虫を死滅させることで、乗員が刺されたり、かまれたりすることが防止でき、また、アレルゲンとなる害虫の生体や糞を抑制することができる。特に車室内は狭い空間であり、窓から進入する外風やエアコン風などによってアレルゲンが浮遊しやすい環境であるので、車室内のアレルゲンを排除することにより、乗員に対してアレルギーの発症、心因性の被害、その他の不快感を与えない効果がある。
【0027】
また、駐車時温熱運転では、シート1の内部または表面の温度が40℃〜50℃の範囲になる熱を提供してもよい。シート1をこのような温度にすることにより、ノミ、ダニ等の繁殖を抑えて増殖抑制効果が期待できる。
【0028】
加冷熱生成装置3は、温熱空気を生成する加熱部と冷却空気を生成する冷却部を備える装置である。加冷熱生成装置3には、ペルチェモジュール、PTCヒータ等により構成された熱交換器や、面状ヒータ等の面状発熱体を採用することができる。ペルチェモジュールを採用した場合には、電源印加部を切り替えることによって加熱部と冷却部の両方の機能を有する加冷熱生成装置を構成することができる。また、熱交換器の小型化を図ることができ、シート1内のスペースを有効に活用できる。
【0029】
なお、加熱部と冷却部は、加冷熱生成装置3のように一体に形成されていなくてもよく、それぞれが独立して離れた位置に配置されていてもよい。
【0030】
シート1は、ウレタンなどの緩衝材であるメインパッドおよびカバーパッドと、これを覆う表皮部材とを備えており、通気性を有する所定の厚さを備えている。メインパッドは、所定の形状に形成され、このメインパッドには、送風手段と連通する空気通路が形成されている。メインパッドは、着座部と背もたれ部の形状を主に保持するとともに、乗員への振動を吸収する緩衝部材の機能を備えている。
【0031】
表皮部材には、多数の小孔が形成され、空気通路は、表皮部材およびカバーパッドを介して車室内空間と連通している。また、表皮部材は通気性を有するファブリックで構成することによって、空気通路と連通する多数の小孔を構成してもよい。
【0032】
次に、車両用シート空調装置の駐車時温熱運転について説明する。図2は、シート温調装置2による駐車時温熱運転の処理手順を示したフローチャートである。図2に示すように、駐車判断部6は、まず、ステップS10で現時点が駐車中であるか否かを判断する。この判断は、駐車判断部6にイグニッションスイッチの状態、着座センサの検出結果などを表す情報が入力され、例えば、着座センサにより乗員が着座していないことが検出された場合であって、イグニッションスイッチがOFFの場合、キーロック状態、ドアロック状態、の場合などに、駐車中であると判断される。
【0033】
まず、乗員が車を運転中である場合には、イグニッションスイッチはONであり、着座センサにより乗員の着座が検出されるので、駐車判断部6は駐車中でないと判断する(ステップS10)。
【0034】
次に、シート温調制御部8は、車両の熱負荷に関する情報、乗員による駐車時温熱運転の要求(駐車時運転スイッチ10の操作)を取得する。例えば、日射、車室内温度、外気温度、およびシート温度のいずれか少なくとも一つの情報を読み込む。このステップS12における熱負荷情報の読込みは、駐車前状態の熱負荷情報の取得である。
【0035】
図3は、図2の制御処理において、車両の熱負荷を求めるマップである。そして、車両の熱負荷TLは、ステップS12で読み込まれた熱負荷に関する情報と、図3に示す制御特性マップとからを算出される。このマップは、あらかじめ制御装置に記憶されており、日射、車室内温度、および外気温度のいずれか少なくとも一つの情報と、熱負荷との関係を表したマップであり、日射等の値が大きくなればなるほど、熱負荷も大きい値に算出される特性を有している。
【0036】
この制御特性マップは、
熱負荷=K×日射量+L×車室内温度+M×外気温度+N
(K,L,M,Nは定数)のようにあらかじめ記憶されている算出式を反映したマップである。あるいは、図3のマップを用いて算出すると、この算出式を用いて演算したときと同様の結果が得られるものである。
【0037】
算出された熱負荷TLは、シート1に対する外部からの熱的ストレスを用いて駐車開始から駐車時温熱運転を開始するまでの遅動時間TDを求める処理を採用する場合に用いられる。この制御を採用しない場合には、あらかじめシート温調制御部8に記憶されている遅動時間TD(例えば、駐車後3分)が採用されることなる。
【0038】
外部からの熱的ストレスを用いて遅動時間TDを求める処理について説明する。この遅動時間TDは、図4の制御特性マップと、熱負荷TLとから決定される。図4のマップは、駐車時温熱運転の遅動時間を熱負荷に基づいて求める場合に用いられるマップであり、あらかじめ制御装置に記憶されており、熱負荷TLと、遅動時間TDとの関係を表している。
【0039】
この制御特性マップは、
遅動時間=S×熱負荷+T
(S,Tは定数)のようにあらかじめ記憶されている算出式を反映したマップである。あるいは、図4のマップを用いて算出すると、この算出式を用いて演算したときと同様の結果が得られるものである。
【0040】
図4のマップは、閾値TL1よりも小さい熱負荷TLである場合よりも、閾値TL1よりも大きい熱負荷TLである場合の方が遅動時間TDを短く算出する特性を有しており、また、熱負荷TLが大きければ大きいほど遅動時間TDが短い時間に算出される。このように、算出された熱負荷TLが所定の熱負荷よりも小さいときは、所定の熱負荷よりも大きい場合と比べて遅動時間TDは長くなるように決定される。
【0041】
ステップS12における読み込みの後、空調制御部7は、通常のシート空調運転の実施、またはシート空調運転の停止を判断し(ステップS14)、この判断に適合する信号を出力して加冷熱生成装置3および送風装置4を制御する(ステップS50)。
【0042】
制御装置5は、ステップS10において、駐車判断部6が駐車中であると判断するまで、S12、S14、およびS50のステップを繰り返す。そして、駐車判断部6が駐車中であると判断すると、シート温調制御部8は、駐車時温熱運転の実施中であるか否かを判断する(ステップS20)。
【0043】
駐車時温熱運転は、乗員により駐車時運転スイッチ10が操作された後、駐車が判断されてからの経過時間が遅動時間TDに達すると開始され、さらに運転開始後、あらかじめ制御装置に記憶された所定の運転時間(例えば30分)が経過すると、駐車時温熱運転の停止処理が実行されて運転終了となる。駐車時温熱運転の停止処理は、送風装置4の運転を停止する前に、少なくとも加冷熱生成装置3による加熱運転を停止する処理である。
【0044】
そして、まだ所定の運転時間が経過していない場合は、シート温調制御部8は、ステップS20において駐車時温熱運転が実施されていると判断して、加冷熱生成装置3をHOT(加熱)側に、さらに送風装置4をLo(低風量)に設定し(ステップS40)、この設定に適合する信号を出力して加冷熱生成装置3および送風装置4を制御する(ステップS50)。
【0045】
次に、所定の運転時間が経過している場合は、シート温調制御部8は、ステップS30において駐車時温熱運転の停止処理がなされているか否かを判断する。この処理は、少なくとも加冷熱生成装置3による加熱運転を停止する処理である。また、ステップS30では、この停止処理済みか否かという判断に代えて、上記所定の運転時間に到達してから所定時間、例えば40秒が経過しているか否かという経過時間の判断基準で判断してもよい。
【0046】
シート温調制御部8は、ステップS30において駐車時温熱運転の停止処理がなされていない、または所定の運転時間の到達後40秒が経過していないと判断したときは、ステップS32においてシート1の冷却処理がされているか否か、または所定の運転時間の到達後20秒が経過しているか否かを判断する。シート1の冷却処理とは、加冷熱生成装置3により冷却空気を生成し、送風装置4により冷却空気をシート1に送風する処理である。なお、シート1の冷却処理がされているか否かの判断は、シート1の温度を検出し、その温度が所定温度(例えば、36℃)以下であるか否か判断することによって行ってもよい。
【0047】
シート温調制御部8は、ステップS32においてシート1の冷却処理がされている、または所定の運転時間の到達後20秒が経過していると判断したときは、加冷熱生成装置3をCOLD(冷却)側に、さらに送風装置4を通常のシート空調時よりも風量を増加させたExt Hi(大風量)に設定し(ステップS33)、この設定に適合する信号を出力して加冷熱生成装置3および送風装置4を制御する(ステップS50)。
【0048】
一方、シート温調制御部8は、引き続き駐車中であって、シート1の冷却処理がされている、または所定の運転時間の到達後20秒が経過していると判断したときは、加冷熱生成装置3をOFF(停止)して、さらに送風装置4を引き続きExt Hi(大風量)に設定し(ステップS34)、この設定に適合する信号を出力して加冷熱生成装置3および送風装置4を制御する(ステップS50)。ここで、駐車時温熱運転の停止処理がなされたことになる。
【0049】
そして、シート温調制御部8は、駐車状態が解除されず駐車中が継続していれば、ステップS34の処理によって駐車時温熱運転の停止処理済みであるので、ステップS30において停止処理済みの判断をし、送風装置4をOFF(停止)に設定し(ステップS35)、この設定に適合する信号を出力して加冷熱生成装置3および送風装置4を制御する(ステップS50)。
【0050】
なお、シート温調制御部8は、駐車時温熱運転の途中でドアロックが開錠された場合には、開錠を認識した時の運転状態をリセットして駐車時温熱運転の停止処理(ステップS34、S35、S50)を強制的に実行する制御ステップを備えることが好ましい。
【0051】
以上のように駐車時温熱運転の停止処理における加冷熱生成装置3および送風装置4の動作状態は、図5のタイムチャートによって表される。図5に示す動作によると、駐車時温熱運転を停止する制御が実行されると、まず加冷熱生成装置3による加熱運転を停止して冷却運転に切り替え、所定時間の冷却運転により冷却空気を送風してシート1を冷やす。そして、加冷熱生成装置3の運転を停止した後、シート1に対して送風のみを行ってから送風装置4の運転を停止する。
【0052】
このような動作によれば、シート1への送風を停止する前に冷却空気を積極的に送風するので、加熱空気によってシート1に溜められた熱を冷ましてシート温度を通常状態に早く低下させることができ、再乗車する乗員に対して不快感を与えない。
【0053】
また、図5のタイムチャートで表される加冷熱生成装置3および送風装置4の動作は、図6のタイムチャートによって表される動作としてもよい。図6に示す動作によると、駐車時温熱運転を停止する制御が実行されると、まず加冷熱生成装置3による加熱運転を停止し、第1の所定時間が経過してから冷却運転を作動し、第2の所定時間の冷却運転により冷却空気を送風してシート1を冷やす。そして、加冷熱生成装置3の運転を停止した後、シート1に対して送風のみを行ってから送風装置4の運転を停止する。このような動作によれば、加熱運転から冷却運転への移行に時間間隔を設けるので、急激な温度変化を緩和して加冷熱生成装置3に対する熱的衝撃を抑制することができる。
【0054】
以上のように本実施形態の車両用シート空調装置は、シート1に供給する空気を加熱する加冷熱生成装置3と、加冷熱生成装置3により加熱された温熱空気をシート1に送る送風装置4と、加冷熱生成装置3および送風装置4の運転を制御するシート温調制御部8と、乗員が着座していない状態で駐車されたことを判断する駐車判断部6と、を備えている。そして、シート温調制御部8は、シート1を駐車中に温める駐車時温熱運転を、駐車判断部6によって駐車の判断がされてから開始し、その後、駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときには、加冷熱生成装置3の運転を停止した後、送風装置4の運転を停止する。
【0055】
この制御によれば、シート1に存在する害虫を除去することができるとともに、温熱空気の送風停止後、それよりも低温の空気を送風するので、シート1に溜まった熱が放出されて乗員に対して不快感を与えない駐車時温熱運転を提供できる。
【0056】
また、シート温調制御部8は、駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときに、送風装置4による送風量を、一旦増加させてから送風装置4の運転を停止することが好ましい。この制御を採用した場合には、駐車時温熱運転を完全に停止させる前の送風量の増加によりシート1をより早く冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1実施形態の車両用シート空調装置の構成を示した概念図である。
【図2】第1実施形態の車両用シート空調装置の制御処理を示したフローチャートである。
【図3】図2の制御処理において、車両の熱負荷を求めるマップである。
【図4】図2の制御処理において、駐車時温熱運転の遅動時間を熱負荷に基づいて求める場合に用いられるマップである。
【図5】駐車時温熱運転を停止する制御において、加冷熱生成装置3および送風装置4の動作を示したタイムチャートである。
【図6】図5のタイムチャートについての他の例である。
【符号の説明】
【0058】
1…シート
3…加冷熱生成装置(加熱部、冷却部)
4…送風装置(送風部)
5…制御装置
6…駐車判断部
8…シート温調制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座するためのシート(1)を車両の駐車中に温める駐車時温熱運転を行う車両用シート空調装置であって、
前記シート(1)に供給する空気を加熱する加熱部(3)と、
前記加熱部(3)により加熱された温熱空気を前記シート(1)に送る送風部(4)と、
前記加熱部(3)および前記送風部(4)の運転を制御するシート温調制御部(8)と、
前記乗員が着座していない状態で駐車されたことを判断する駐車判断部(6)と、を備え、
前記シート温調制御部(8)は、前記加熱部(3)および前記送風部(4)を運転する前記駐車時温熱運転を、前記駐車判断部(6)によって駐車の判断がされてから開始し、
その後、前記駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときには、前記加熱部(3)の運転を停止した後、前記送風部(4)の運転を停止することを特徴とする車両用シート空調装置。
【請求項2】
前記シート温調制御部(8)は、前記駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときに、前記送風部(4)による送風量を、一旦増加させてから前記送風部(4)の運転を停止することを特徴とする請求項1に記載の車両用シート空調装置。
【請求項3】
前記シート(1)を冷やす冷却空気を生成するとともに、前記シート温調制御部(8)によって制御される冷却部(3)を備え、
前記シート温調制御部(8)は、前記駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときに、前記加熱部(3)の運転を停止して前記シート(1)に対する前記温熱空気の供給を停止するとともに、前記冷却部(3)を運転して前記シート(1)に前記冷却空気を供給した後、前記冷却部(3)および前記送風部(4)の運転を停止することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用シート空調装置。
【請求項4】
前記シート温調制御部(8)は、前記駐車時温熱運転を停止する制御を実行するときに、前記加熱部(3)の運転を停止後、所定時間経過してから、前記冷却部(3)を運転することを特徴とする請求項3に記載の車両用シート空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−74365(P2008−74365A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259440(P2006−259440)
【出願日】平成18年9月25日(2006.9.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】