説明

車両用ディスクブレーキ

【課題】摩擦パッドの振動や異音を抑制する制振材をパッドガイド溝と耳片との間に簡単に配置でき、組み付け性の向上を図ることのできる車両用ディスクブレーキを提供する。
【解決手段】キャリパブラケット3のキャリパ支持腕3aにコ字状のパッドガイド溝3dを対向して設ける。耳片6bは、ディスク半径方向外側面6gとディスク半径方向内側面6hとを繋ぐ長さ寸法L1が、パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとを繋ぐ長さ寸法L2よりも短く形成され、耳片のディスク半径方向外側面6gとディスク半径方向内側面6hとに、パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとに圧着する制振部材10を装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や自動二輪等の車両に用いられる車両用ディスクブレーキに係り、詳しくは、車体に固設したブラケットに設けたパッドガイド溝に、摩擦パッドの耳片を支承させて、摩擦パッドをディスク軸方向に移動可能に吊持した車両用ディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体に固設したブラケットに設けたパッドガイド溝に、摩擦パッドの裏板に突設した耳片を支承させる車両用ディスクブレーキでは、摩擦パッドの振動や異音の発生を抑制するために、パッドガイド溝に制振部材を装着したものがあり、この制振部材は、パッドガイド溝のディスク半径方向外側面と、該ディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とを結ぶ対向面とにホルダーを介して装着されていた(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−281116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献のものでは、パッドガイド溝の奥まった位置に、ホルダーを介して制振部材が固定され、その後に、摩擦パッドの耳片をパッドガイド溝に組み付けることから、組み付けに手間が掛かるという課題がある。
【0005】
そこで本発明は、摩擦パッドの振動や異音を抑制する制振部材をパッドガイド溝と耳片との間に簡単に配置でき、組み付け性の向上を図ることのできる車両用ディスクブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキは、車体に固設されるキャリパブラケットに、ディスクロータの外縁をディスク軸方向に跨ぐ一対のキャリパ支持腕を延設し、該キャリパ支持腕に、ディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面と当該両側面を結ぶ対向面とを有するコ字状のパッドガイド溝を対向して設け、前記ディスクロータを挟んで配置される摩擦パッドの裏板両側部にそれぞれ突設した耳片を、前記パッドガイド溝に制振部材を介して支承した車両用ディスクブレーキにおいて、前記耳片は、ディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とを繋ぐ長さ寸法が、前記パッドガイド溝のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とを繋ぐ長さ寸法よりも短く形成され、前記耳片のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とに、前記パッドガイド溝のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とに圧着する前記制振部材を装着したことを特徴としている。
【0007】
また、前記制振部材は、前記耳片のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とに装着される一対の制振部材本体部と、該一対の制振部材本体部を繋ぎ、前記耳片のディスクロータ側面と反ディスクロータ側面とを覆う一対の連結部とを一体に形成し、中央に前記耳片に嵌着される嵌着孔を設けた角筒状の弾性材で形成することができる。
【0008】
さらに、前記摩擦パッドは、反ディスクロータ側面にシム板を備え、該シム板は、ディスク回転方向端部に制振部材保持部が延設され、該制振部材保持部は、前記耳片のディスクロータ側面とディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面と反ディスクロータ面とに沿って敷設されるカバー片と、該カバー片のディスク半径方向外側面のディスクロータ側端面と反ディスクロータ側端面とからディスク半径方向外側にそれぞれ突出する一対の第1保持片と、前記カバー片のディスク半径方向内側面のディスクロータ側端面と反ディスクロータ側端面とからディスク半径方向内側にそれぞれ突出する一対の第2保持片とを有し、前記制振部材は、前記第1保持片又は前記第2保持片で保持可能な直方体状の弾性材でそれぞれ形成されていても良く、前記第1保持片と第2保持片とは、前記カバー片のディスク半径方向外側面又はディスク半径方向内側面を切り起こして形成され、各制振部材の前記カバー片との対向面と、前記第1保持片又は第2保持片との対向面とには、前記カバー片と第1保持片又は第2保持片の形状に対応する凹部又は凸部が形成されていると好適である。
【0009】
また、前記制振部材は、前記パッドガイド溝のディスク半径方向外側面又はディスク半径方向内側面に圧着される圧着面のディスク軸方向両端側に、外側に向けて漸次薄肉となるテーパー面をそれぞれ設けていても良く、さらに、前記制振部材は、前記パッドガイド溝のディスク半径方向外側面又はディスク半径方向内側面に平行な溝部がそれぞれ形成されていても良い。また、前記制振部材は、前記耳片のディスク回転方向端面よりもディスク回転方向外側に突出していても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用ディスクブレーキによれば、摩擦パッドの耳片に取り付けた制振部材が、パッドガイド溝のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とに圧着することから、摩擦パッドのディスク半径方向の振動や、この振動に基づく異音の発生を抑制することができる。また、制振部材は、耳片に嵌着するだけで簡単に取り付けることができると共に、制振部材を装着した状態の耳片をパッドガイド溝に挿入すれば良いことから、組み付け性の向上を図ることができる。
【0011】
また、制振部材を、耳片のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とに装着される一対の制振部材本体部と、該一対の制振部材本体部を繋ぎ、前記耳片のディスクロータ側面と反ディスクロータ側面とを覆う一対の連結部とを一体に形成し、中央に前記耳片に嵌着される嵌着孔を設けた角筒状の弾性材で形成したことにより、耳片のディスク回転方向外側から、制振部材の嵌着孔を耳片に挿通させるだけで、制振部材を耳片に簡単、且つ、確実に取り付けることができる。
【0012】
さらに、摩擦パッドの反ディスクロータ側面に配置されるシム板に、制振部材保持部を一体に延設し、該制振部材保持部に形成した第1保持片と第2保持片とで制振部材を保持させるようにしたことにより、シム板を利用して、制振部材を簡単に保持することができる。
【0013】
また、第1保持片と第2保持片とは、前記カバー片のディスク半径方向外側面又はディスク半径方向内側面を切り起こして形成され、各制振部材の前記カバー片との対向面と、前記第1保持片又は第2保持片との対向面とには、前記カバー片と第1保持片又は第2保持片の形状に対応する凹部又は凸部を形成したことにより、第1保持片及び第2保持片を簡単に形成することができると共に、制振部材を制振部材保持部に確実に保持させることができる。
【0014】
さらに、制振部材に、前記耳片の外側に向けて漸次薄肉となるテーパー面を設けたことにより、制振部材を装着した耳片をパッドガイド溝に挿入する際に、テーパー面によってパッドガイド溝への挿入がガイドされ、耳片の組み付け性を向上させることができる。
【0015】
また、制振部材のディスクロータ側面と反ディスクロータ側面とに、溝部を設けることにより、制振部材を取り付けた状態の耳片をパッドガイド溝に挿入する際に、溝部により制振部材が撓み、耳片をパッドガイド溝に良好に挿入させることができる。
【0016】
さらに、制振部材は、前記耳片のディスク回転方向端面よりもディスク回転方向外側に突出させることにより、摩擦パッドのディスク回転方向のガタ付きを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1形態例を示す車両用ディスクブレーキの要部拡大断面図である。
【図2】同じく車両用ディスクブレーキの要部分解斜視図である。
【図3】図6のIII-III断面図である。
【図4】同じく車両用ディスクブレーキの一部断面背面図である。
【図5】図6のV-V断面図である。
【図6】同じく車両用ディスクブレーキの正面図である。
【図7】同じく車両用ディスクブレーキの一部切欠き平面図である。
【図8】本発明の第2形態例を示す車両用ディスクブレーキの要部分解斜視図である。
【図9】同じく車両用ディスクブレーキの要部拡大断面図である。
【図10】図9のX-X断面図である。
【図11】本発明の第3形態例を示す車両用ディスクブレーキの要部分解斜視図である。
【図12】同じく車両用ディスクブレーキの要部拡大断面図である。
【図13】本発明の第4形態例を示す車両用ディスクブレーキの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至図7は、本発明の車両用ディスクブレーキの第1形態例を示す図で、矢印Aは車両前進時に車輪と一体に回転するディスクロータの回転方向である。
【0019】
この車両用ディスクブレーキ1は、車輪と一体に回転するディスクロータ2と該ディスクロータ2の一側部で車体に固設されるキャリパブラケット3と、該キャリパブラケット3のキャリパ支持腕3a,3aに、一対のスライドピン4,4を介してディスク軸方向へ移動可能に支持されるキャリパボディ5と、該キャリパボディ5の作用部5aと反作用部5bとの内側で、ディスクロータ2を挟んで対向配置される一対の摩擦パッド6,6とからなっている。
【0020】
キャリパボディ5は、ディスクロータ2の両側に配設される上述の作用部5a及び反作用部5bと、これらをディスクロータ2の外縁を跨いで連結するブリッジ部5cとからなっていて、作用部5aには、ディスクロータ2側を開口したシリンダ孔7が設けられている。シリンダ孔7には、有底円筒状のピストン8が収容され、ピストン8は、シリンダ孔底部の液圧室9に供給される圧液によって、シリンダ孔7をディスクロータ方向へ移動するようになっている。また、作用部5aの側部には、車体取付け腕5d,5dが突設されており、各車体取付け腕5dの先端には、それぞれ上述のスライドピン4が、取付けボルトにて突設されている。
【0021】
キャリパ支持腕3a,3aは、キャリパブラケット3の両側部から、ブリッジ部5cの両側を挟みながらディスクロータ2の外縁をディスク軸方向に跨ぎ、さらにディスクロータ2の他側部で、反作用部5bの側壁に沿ってディスク中心方向へ延びる形状となっている。キャリパ支持腕3a,3aの先端部は、タイロッド3bが連結されていて、制動トルクの掛かる両キャリパ支持腕3a,3aの剛性力を高めている。
【0022】
各キャリパ支持腕3aには、上述のスライドピン4を収容するガイド孔3cが穿設され、また双方のキャリパ支持腕3a,3aには、ディスクロータ2のそれぞれの側部で互いに向き合う4つのパッドガイド溝3dが設けられている。各パッドガイド溝3dは、ディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fと両側面3e,3fを結ぶ対向面3gとを有するコ字状に形成されている。
【0023】
各摩擦パッド6は、両側部に前記耳片6b,6bを突設した裏板6aと、裏板6aのディスクロータ側面に貼着されるライニング6cとで構成され、裏板6aの両側部にそれぞれ突出した耳片6b,6bを、ディスク回入側と回出側のパッドガイド溝3d,3dにそれぞれ支承させる。各耳片6bには制振部材10がそれぞれ取り付けられ、裏板6aの反ディスクロータ側面にはシム板11が取り付けられている。耳片6b,6bは、ディスク半径方向外側面6gとディスク半径方向内側面6hとが段付き形状に形成され、各耳片6bの先端側に制振部材10,10を装着する装着凹部6d,6dが形成され、ディスク半径方向外側の装着凹部6dとディスク半径方向内側の装着凹部6dとを繋ぐ長さ寸法L1が、前記パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとを繋ぐ長さ寸法L2よりも短く形成されている。
【0024】
各制振部材10は、弾性を有するゴムや合成樹脂で形成され、前記装着凹部6d,6dに装着される一対の制振部材本体部10a,10aと、これら制振部材本体部10a,10aを繋ぐと共に、耳片6bのディスクロータ側面6eと反ディスクロータ側面6fと覆う一対の連結部10b,10bとを一体に形成し、中央に、耳片6bに嵌着される嵌着孔10cを設けた角筒状に形成されている。また、制振部材10は、耳片6bに嵌着した状態で、パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとに圧着される制振部材本体部10a,10aの圧着面10d,10dを繋ぐ長さ寸法は、前記パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとを繋ぐ長さ寸法L2よりも僅かに長くなっており、さらに、制振部材10のディスク回転方向外端面10e,10eは、耳片6bのディスク回転方向端面6i,6iと面一になっている。
【0025】
上述のように形成された車両用ディスクブレーキ1の摩擦パッド6は、双方の耳片6b,6bのディスク回転方向端面6i側から制振部材10,10の嵌着孔10c,10cに装着凹部6d,6dをそれぞれ挿入し、制振部材10,10を双方の耳片6b,6bに嵌着して用いる。そして、制振部材10,10を嵌着した状態の耳片6b,6bを、対向するパッドガイド溝3d,3dにそれぞれ装着する。この時、制振部材本体部10a,10aの圧着面10d,10dを繋ぐ長さ寸法は、前記パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとを繋ぐ長さ寸法L2よりも僅かに長くなっており、さらに、制振部材10のディスク回転方向外端面10e,10eは、耳片6bのディスク回転方向端面6i,6iと面一になっている。そして、制振部材10の圧着面10d,10dがパッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとにそれぞれ圧着し、摩擦パッド6のディスク半径方向の振動を良好に防止させ、異音の発生を抑制することができる。
【0026】
また、制振部材10は、耳片6bのディスク回転方向端面6i側から嵌着孔10cを挿入させるだけで簡単に耳片6bに嵌着させることができ、さらに、制振部材10を嵌着した状態の耳片6bをパッドガイド溝3dに装着させれば良いことから、制振部材10を簡単、且つ、確実に耳片6bとパッドガイド溝3dとの間に配置させることができ、組み付け性の向上を図ることができる。
【0027】
図8乃至図13は本発明の他の形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0028】
図8乃至図10は本発明の第2形態例を示すもので、本形態例では、シム板21に一体に形成した制振部材保持部22に制振部材23,23が保持されている。制振部材保持部22は、摩擦パッド6の反ディスクロータ側面を覆うシム板21のディスク回転方向端部から延設され、シム板本体21と、制振部材保持部22とは、1枚の金属製の薄板を折曲して一体に形成されている。
【0029】
制振部材保持部22は、シム板21から延出して耳片6bの反ディスクロータ側面6fを覆う第1カバー片22aと、該第1カバー片22aのディスク半径方向外側及び内側からそれぞれ延出して耳片6bの装着凹部6d,6dをそれぞれ覆うディスク半径方向外側の第2カバー片22bと、ディスク半径方向内側の第3カバー片22cと、ディスク半径方向外側の第2カバー片22bから延出して耳片6bのディスクロータ側面6eの外半面を覆う第4カバー片22dと、ディスク半径方向内側の第3カバー片22cから延出して耳片6bのディスクロータ側面6eの内半面を覆う第5カバー片22eとを一体に備えている。また、ディスク半径方向外側の第2カバー片22bには、ディスクロータ側端面と反ディスクロータ側端面とからディスク半径方向外側にそれぞれ突出する一対の第1保持片22f,22fが、第2カバー片22bを切り起こして形成されている。さらに、ディスクロータ半径方向内側の第3カバー片22cにも、ディスクロータ側端面と反ディスクロータ側端面とからディスク半径方向内側にそれぞれ突出する一対の第2保持片22g,22gが、第3カバー片22cを切り起こして形成されている。
【0030】
各制振部材保持部22には、第2カバー片22bと、第1保持片22f,22fとに囲繞される空間部と、第3カバー片22cと、第2保持片22g,22gとに囲繞される空間部とにそれぞれ1個ずつ制振部材23が保持される。
【0031】
制振部材23は、略直方体状に形成され、制振部材保持部22に保持された状態で、パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとに圧着される圧着面23a,23aを繋ぐ長さ寸法が、パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとを繋ぐ長さ寸法L2よりも僅かに長くなるように形成されると共に、ディスク回転方向外端面23b,23bが、耳片6bのディスク回転方向端面6i,6iよりもディスク回転方向外側に僅かに突出するように形成されている。
【0032】
さらに、制振部材23の第2カバー片22b又は第3カバー片22cと対向する対向面には、第1保持片22f又は第2保持片22gを切り起こした跡となる切欠きに対応する凸部23c,23cが、側面には、第1保持片22f又は第2保持片22gが嵌合する凹部23d,23dがそれぞれ形成されている。
【0033】
本形態例は上述のように形成されることによりシム板21を利用して、各制振部材23を簡単に保持することができる。さらに、制振部材23の圧着面23a,23aがパッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとに圧着し、摩擦パッド6のディスク半径方向の振動を良好に防止し、さらに、制振部材23のディスク回転方向外端面23bがパッドガイド溝3dの対向面3gに圧着し、摩擦パッド6のディスク回転方向のガタ付きを抑えることもでき、異音の発生を抑制することができる。
【0034】
図11及び図12は、前記第2形態例の制振部材23の形状を変更した本発明の第3形態例を示すもので、本形態例の制振部材24は、圧着面23a,23aのディスク軸方向両端側に、外側に向けて漸次薄肉となるテーパー面24aをそれぞれ設けている。さらに、制振部材24のディスクロータ側面と反ディスクロータ側面とには、パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3e又はディスク半径方向内側面3fに平行な溝部24b,24bがそれぞれ形成されている。
【0035】
これにより、制振部材24を装着した状態の耳片6bをパッドガイド溝3dに装着する際に、テーパー面24aにより、パッドガイド溝3d内への挿入がガイドされると共に、溝部24bにより制振部材24を良好に撓ませることができ、パッドガイド溝3dへ良好に装着させることができ、組み付け性を向上させることができる。
【0036】
図13は本発明の第4形態例を示すもので、本形態例では、各耳片6bのディスク半径方向外側面6gとディスク半径方向内側面6hとが、パッドガイド溝3dの内部まで延出されると共に、パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eと耳片6bのディスク半径方向外側面6gとの間、及び、パッドガイド溝3dのディスク半径方向内側面3fと耳片のディスク半径方向内側面6hとの間には、クリアランスαがそれぞれ設定されている。
【0037】
また、耳片6bのディスク半径方向外側面6g及びディスク半径方向内側面6hよりも先端側に形成した各装着凹部6dに装着される制振部材10は、前記第1形態例と同様に、角筒状に形成されると共に、耳片6bに嵌着した状態で、パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとに圧着される圧着面10dを繋ぐ長さ寸法は、パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとを繋ぐ長さ寸法L2よりも僅かに長くなっている。
【0038】
本形態例は上述のように形成されることにより、制振部材10の圧着面10d,10dがパッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eとディスク半径方向内側面3fとにそれぞれ圧着し、摩擦パッド6のディスク半径方向の振動を良好に防止し、さらに、制振部材10が過度に変形しようとした際には、パッドガイド溝3dのディスク半径方向外側面3eと耳片6bのディスク半径方向外側面6gとが当接し、或いは、パッドガイド溝3dのディスク半径方向内側面3fと耳片6bのディスク半径方向内側面6hとが当接することによって、制振部材10の変形量が規制され、制振部材10が過度に変形して復元力が低下する虞がない。
【0039】
尚、本形態例は上述の各形態例に限るものではなく、角筒状に形成した制振部材の制振部材本体部の圧着面にテーパー面を設けても良く、また、制振部材本体部のディスクロータ側面と反ディスクロータ側面とにパッドガイド溝のディスク半径方向外側面又はディスク半径方向内側面に平行な溝部を形成することもできる。さらに、耳片全体のディスク半径方向外側とディスク半径方向内側とを繋ぐ長さ寸法を、パッドガイド溝のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とを繋ぐ長さ寸法よりも短く形成しても良い。
【符号の説明】
【0040】
1…車両用ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパブラケット、3a…キャリパ支持腕、3b…タイロッド、3c…ガイド孔、3d…パッドガイド溝、3e…ディスク半径方向外側面、3f…ディスク半径方向内側面、3g…対向面、4…スライドピン、5…キャリパボディ、5a…作用部、5b…反作用部、5c…ブリッジ部、5d…車体取付け腕、6…摩擦パッド、6a…裏板、6b…耳片、6c…ライニング、6d…装着凹部、6e…ディスクロータ側面、6f…反ディスクロータ側面、6g…ディスク半径方向外側面、6h…ディスク半径方向内側面、6i…ディスク回転方向端面、7…シリンダ孔、8…ピストン、9…液圧室、10…制振部材、10a…制振部材本体部、10b…連結部、10c…嵌着孔、10d…圧着面、10e…ディスク回転方向外端面、11,21…シム板、22…制振部材保持部、22a…第1カバー片、22b…第2カバー片、22c…第3カバー片、22d…第4カバー片、22e…第5カバー片、22f…第1保持片、22g…第2保持片、23…制振部材、23a…圧着面、23b…ディスク回転方向外端面、23c…凸部、23d…凹部、24…制振部材、24a…テーパー面、24b…溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に固設されるキャリパブラケットに、ディスクロータの外縁をディスク軸方向に跨ぐ一対のキャリパ支持腕を延設し、該キャリパ支持腕に、ディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面と当該両側面を結ぶ対向面とを有するコ字状のパッドガイド溝を対向して設け、前記ディスクロータを挟んで配置される摩擦パッドの裏板両側部にそれぞれ突設した耳片を、前記パッドガイド溝に制振部材を介して支承した車両用ディスクブレーキにおいて、前記耳片は、ディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とを繋ぐ長さ寸法が、前記パッドガイド溝のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とを繋ぐ長さ寸法よりも短く形成され、前記耳片のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とに、前記パッドガイド溝のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とに圧着する前記制振部材を装着したことを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【請求項2】
前記制振部材は、前記耳片のディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面とに装着される一対の制振部材本体部と、該一対の制振部材本体部を繋ぎ、前記耳片のディスクロータ側面と反ディスクロータ側面とを覆う一対の連結部とを一体に形成し、中央に前記耳片に嵌着される嵌着孔を設けた角筒状の弾性材で形成されることを特徴とする請求項1記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項3】
前記摩擦パッドは、反ディスクロータ側面にシム板を備え、該シム板は、ディスク回転方向端部に制振部材保持部が延設され、該制振部材保持部は、前記耳片のディスクロータ側面とディスク半径方向外側面とディスク半径方向内側面と反ディスクロータ面とに沿って敷設されるカバー片と、該カバー片のディスク半径方向外側面のディスクロータ側端面と反ディスクロータ側端面とからディスク半径方向外側にそれぞれ突出する一対の第1保持片と、前記カバー片のディスク半径方向内側面のディスクロータ側端面と反ディスクロータ側端面とからディスク半径方向内側にそれぞれ突出する一対の第2保持片とを有し、前記制振部材は、前記第1保持片又は前記第2保持片で保持可能な直方体状の弾性材でそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項4】
前記第1保持片と第2保持片とは、前記カバー片のディスク半径方向外側面又はディスク半径方向内側面を切り起こして形成され、各制振部材の前記カバー片との対向面と、前記第1保持片又は第2保持片との対向面とには、前記カバー片と第1保持片又は第2保持片の形状に対応する凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする請求項3記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項5】
前記制振部材は、前記パッドガイド溝のディスク半径方向外側面又はディスク半径方向内側面に圧着される圧着面のディスク軸方向両端側に、外側に向けて漸次薄肉となるテーパー面をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項6】
前記制振部材は、前記パッドガイド溝のディスク半径方向外側面又はディスク半径方向内側面に平行な溝部がそれぞれ形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項7】
前記制振部材は、前記耳片のディスク回転方向端面よりもディスク回転方向外側に突出していることを特徴とする請求項1乃至6記載のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−17371(P2011−17371A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161850(P2009−161850)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【出願人】(000226677)日信工業株式会社 (840)
【Fターム(参考)】