説明

車両用フロア構造

【課題】ビードが形成されたフロアパネルであっても、車載部品の搭載を容易にしつつビードによるフロアパネルの剛性向上及び側面衝突時の剛性向上が確保できる車両用フロア構造を提供する。
【解決手段】フロアパネル3面にサイドシルインナー23からミドルクロスメンバー7に向かって湾曲させた弧状のビード50を並列に複数条設けた車両用フロアパネルであって、車載部品の取り付け用の外側ブラケット60を前記ビード50上に取り付けるにあたって、外側ブラケット60を一条のビード50Aを覆うようにして取り付け、外側ブラケット60のサイドシルインナー23から遠い側の端部を二条のビード50Bに跨って載置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ビードが形成された車体フロア構造、とりわけシートやバッテリ等の車載部品を搭載する場合に好適な車両用フロア構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用フロア構造の中には、車両側面衝突時の外力に対して対抗できる強度剛性を確保するため、サイドシルとクロスメンバーとが交差する部位を中心とする凹凸断面のビードをフロアパネル面に設けたものがある。このビードにより車体重量を抑えつつフロアパネルの剛性を格段に高めることができる。
【特許文献1】特開2006−298076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術にあってはフロパネルに設けたビードによってフロアパネル自体の剛性を高めることはできるが、このビードが設けられているため平坦でなくなったフロア面への部品搭載が行い難くなってしまうという問題がある。
これに対して、搭載する部位にはビードを設けないようにして、この部分にブラケットを設けて車載部品を取り付けることもできるが、このビードを設けていない部分の剛性が低下してしまうという問題がある。
【0004】
そこで、この発明は、ビードが形成されたフロアパネルであっても、車載部品の搭載を容易にしつつビードによるフロアパネルの剛性向上及び側面衝突時の剛性向上が確保できる車両用フロア構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、請求項1に記載した発明は、フロアパネル(例えば、実施形態におけるフロアアパネル3,4)面にサイドシルインナー(例えば、実施形態におけるサイドシルインナー23)からミドルクロスメンバー(例えば、実施形態におけるミドルクロスメンバー7)に向かって湾曲させた弧状のビード(例えば、実施形態におけるビード50)を並列に複数条設けた車両用フロアパネルであって、車載部品のサイドシルインナー側の取り付けブラケット(例えば、実施形態における外側ブラケット60)を前記ビード上に取り付けるにあたって、前記サイドシルインナー近傍のビード(例えば、実施形態におけるビード50A)の数を減らして、このビードが前記サイドシルインナーから遠い側の複数のビード(例えば、実施形態におけるビード50B)に分岐して接続するように構成し、前記ブラケットを前記サイドシルインナー近傍のビードを覆うようにして取り付け、前記ブラケットの前記サイドシルインナーから遠い側の端部を分岐している複数のビードに跨って載置したことを特徴とする。
このように構成することで、サイドシルインナー近傍のビードの数がサイドシルインナーから遠い側のビードの数よりも少なくなっている分を、ブラケットにより補強してフロアパネルの強度を高めることが可能となる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記ブラケットの稜線(例えば、実施形態における稜線R1)と、前記分岐している複数のビードの外側の稜線(例えば、実施形態における稜線R2)とを連続させることを特徴とする。
このように構成することで、車両側面衝突時における衝撃荷重をビードとブラケットとの各々の稜線の2系統で受けることが可能となる。
【0007】
請求項3に記載した発明は、フロアパネル面にサイドシルインナーからミドルクロスメンバーに向かって湾曲させた弧状のビードを並列に複数条設けた車両用フロアパネルであって、車載部品の取り付けブラケットを前記ビード上に取り付けるにあたって、前記ブラケットが取り付けられるフロアパネルの取り付け面にサイドシルインナー側からミドルクロスメンバーに向かって一条が二股に分かれて二条となるビードを連続形成し、一条のビードをブラケットで覆うようにして、ブラケットの脚部(例えば、実施形態における脚部68)を一条のビードの谷部(例えば、実施形態における谷部53)に接合すると共に、ブラケットのミドルクロスメンバー側の端部の稜線を、二条のビードの外側の稜線に連続させたことを特徴とする。
このように構成することで、サイドシルインナーに作用した衝撃荷重はフロアパネルのビードに作用するが、一条のビードの部位ではブラケットと共にビードがこの荷重を受け、この荷重は一条のビードから二条のビードへ直接伝達されるものと、ブラケットの稜線から、二条のビードの外側の稜線に伝わるものとが合計されて、ビードからミドルクロスメンバーに分散して伝達される。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、サイドシルインナー近傍のビードの数が少なくなっている分をブラケットにより補強してフロアパネルの強度を高めることが可能となるため、車両側面衝突時においてサイドシルインナーから作用する衝撃荷重を確実に受け止めて伝達することができる。
請求項2に記載した発明によれば、車両側面衝突時における衝撃荷重をビードとブラケットとの各々の稜線の2系統で受けることが可能となるため、衝撃荷重を効率よく確実に伝達することができる効果がある。
請求項3に記載した発明によれば、サイドシルインナーに作用した衝撃荷重はフロアパネルのビードに作用するが、一条のビードの部位ではブラケットと共にビードがこの荷重を受け、この荷重は一条のビードから二条のビードへ直接伝達されるものと、ブラケットの稜線から二条のビードの外側の稜線に伝わるものとが合計されて、ビードからミドルクロスメンバーに分散して伝達されるため、ブラケットを取り付けることで生じたビードの強度低下をブラケット自身を有効利用して高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1、図2に示すように、車両のフロア1には、車幅方向中央部に車体前後方向に延びるフロアトンネルフレーム2が形成されている。このフロアトンネルフレーム2の両側縁には左右のフロアパネル3,4の内側縁が接合され、左右のフロアパネル3,4の外側縁にそれぞれ車体前後方向に延びる車体骨格部材である左右のサイドシル5,6が取り付けられている。つまり、左右のフロアパネル3,4はフロアトンネルフレーム2と左右のサイドシル5,6とに掛け渡されている。左右のサイドシル5,6の後部同士が車幅方向に配置された車体骨格部材であるミドルクロスメンバー7によって連結され、ミドルクロスメンバー7の前縁部は左右のフロアパネル3,4の後縁に接合されている。また、フロアトンネルフレーム2の前後方向略中央部と左右のサイドシル5,6がそれぞれ車幅方向に配置された左右のフロントクロスメンバー9,10によって連結されている。
【0010】
一方、フロアトンネルフレーム2の前端部の両側壁にはそれぞれエクステンション11、12の一端部が接合され、左右のサイドシル5,6の前端部にはそれぞれアウトリガー13,14の一端部が接合され、これら左右のエクステンション11,12がアウトリガー13,14の内側壁に連結されている。そして、ミドルクロスメンバー7の左右端部47,47は斜め前方に屈曲しており、この左右端部47,47の後壁及び左右のサイドシル5,6の後部内壁に左右のリヤサイドフレーム15,16の前端部が連結されている。主としてフロアパネル3,4とフロアトンネルフレーム2とでフロア1を構成している。このように構成された、左右のエクステンション11,12とアウトリガー13,14はサイドシル5,6とフロアトンネルフレーム2とを車幅方向で連結するという点で横骨格部材としても機能している。
【0011】
図3に示すように、フロアトンネルフレーム2は、上壁17と傾斜した両側壁18,18によってフロアパネル3,4の上方に凸となるように膨出形成されたトンネル本体19と、このトンネル本体19の両側縁を左右のフロアパネル3,4面よりも下側に延出した後、水平方向外側に延出し、フロアパネル3,4下面にフランジ部20によって溶接されるウイング部21,21とで構成されている。左右のフロアパネル3,4の内側縁にはフランジ部22が立ち上げ形成され、このフランジ部22がフロアトンネルフレーム2のトンネル本体19の両側壁18,18に溶接されている。
したがって、フロアトンネルフレーム2の両側壁18,18であって、フロアパネル3,4下に、フロアトンネルフレーム2のウイング部21,21とフロアパネル3,4とで形成された車体前後方向に延出する閉断面構造部H1が形成されることとなる。
【0012】
サイドシル5,6は、車室内側に凸形状つまり外側に開いたコの字断面形状のサイドシルインナー23と、このサイドシルインナー23と共に上下の接合フランジ部24,24で接合されて閉断面構造部を形成し、内側に開いたコの字断面形状のレインフォース25と、このレインフォース25の外側に閉断面構造部を形成し前記接合フランジ部24に接合されるサイドシルアウター8とで構成されている。サイドシルインナー23はほぼ全長に亘って同一断面形状で直線状に形成されているが、図1、図2に示すようにレインフォース25は前端及び後端から前後方向中央に進むにしたがって徐々に外側への突出寸法が大きくなる前傾斜壁25Fと後傾斜壁25Rによって傾斜閉断面形状部HF2、HR2が形成されている。レインフォース25の外側への突出寸法が最大となる最大突出閉断面構造部H2は車体前後方向所定長さに亘って形成され、この最大突出閉断面構造部H2はミドルクロスメンバー7とフロントクロスメンバー9,10との間に配置されている。
サイドシルインナー23の内側壁26に左右のフロアパネル3,4の外側縁に立ち上げ形成されたフランジ部27が接合されている。
【0013】
図4に示すように、ミドルクロスメンバー7は、略L字形断面の2つの部材を対向配置し、後部上縁フランジ部28と前部下縁フランジ部29とを互いに溶接してフロアパネル3,4上面に車体骨格部となる略矩形の閉断面構造部H3を形成するものである。前部下縁フランジ部29は左右のフロアパネル3,4の後縁に溶接され、後壁30にはリヤサイドフレーム15,16の前端部が接合されている。
フロントクロスメンバー9,10は下側に開いたハット型断面形状の部材であって、左右のフロアパネル3,4上面に前後のフランジ部31,31が接合され、フロアパネル3,4上面に車幅方向に沿う車体骨格部となる閉断面構造部H4を形成するものである。フロントクロスメンバー9,10の外側端はサイドシルインナー23の上壁を含む側壁26に接合され、内側端は図1,図2に示すように、前フランジ部32と後フランジ部33とがフロアトンネルフレーム2の側壁18外面に、上壁34の端縁はフロアトンネルフレームの上壁17に接合されている。
【0014】
ここで、図3に示すように、フロアトンネルフレーム2のトンネル本体19の裏側には、左右のフロントクロスメンバー9,10を結ぶ位置にジョイントフレーム35が接合されている。このジョイントフレーム35は、フロントクロスメンバー9,10とは逆に上側に開いたハット型断面形状の部材であって、下壁36はフロアパネル3,4面に整合している。ジョイントフレーム35の前側フランジ37と後側フランジ38(図1,図2参照)はトンネル本体19の裏側に接合され、下壁36の両端縁39,39はフロアトンネルフレーム2のトンネル本体19の裏側に接合されている。
これによりジョイントフレーム35とフロアトンネルフレーム2との間に閉断面構造部H5が形成され、この閉断面構造部H5が左右のフロントクロスメンバー9,10とフロアパネル3,4との間に形成された閉断面構造部H4と連なり、車幅方向に沿ってサイドシル5,6を連結する実質的に連続した車体骨格部材を形成することとなる。
【0015】
図5に示すように、左右のエクステンション11,12の一端側はフロアトンネルフレーム2のウイング部21を下方から全面を覆うように上に開いた形状に形成されたものであって、内側壁40はフロアパネル3,4のフランジ部22に至る部位をフロアトンネルフレーム2のトンネル本体19の側壁18裏面に接合されている。エクステンション11,12の一端側の外側のフランジ部41はウイング部21のフランジ部20に重合されている。
【0016】
一方、アウトリガー13,14の一端部はサイドシルインナー23,23の下壁42に接合される下壁43とこの下壁43からフロパネル3,4の下面に立ち上がりフランジ部44によってフロアパネル3,4に接合され、サイドシル5,6とフロアパネル3,4との間に閉断面構造部H6を形成している。
このように形成された、エクステンション11,12とアウトリガー13,14が図4に鎖線で示すように、フロアパネル3,4の前縁上面に接合されたダッシュボードパネル45の裏面に沿って、徐々に前側に立ち上がるようにして形成され、図6、図7に示すように、前側がハット型断面形状に形成されたアウトリガー13,14の下壁43にエクステンション11,12の下壁46が接合され両者が連結されている。そして、アウトリガー13の前端にフロントサイドフレーム(図示せず)の後端が連結されている。尚、図6,図7において鎖線で示すのはアウトリガー13,14、エクステンション11,12との間に閉断面構造部H6を形成するダッシュボードパネル45である。
【0017】
図1、図2に示すように、フロアパネル3,4にはそのほぼ全面に波紋状の多数のビード50が規則的に設けられるとともに、多数の液抜き孔51と、複数の位置決め孔52が設けられている。フロアパネル3,4は、フロアトンネルフレーム2を中心にして左右対称形をなし、ビード50、液抜き孔51、位置決め孔52についてもフロアパネル3,4では左右対称な配列となっている。以下、左側のフロアパネル3について詳述し、右側のフロアパネルについては同一部分に同一符号を付して説明は省略する。尚、図3〜図5の断面図において、正確には複雑な形状となるビード50の断面形状は、図示都合上単純な形状として示す。
同じフロアパネル3において、フロントクロスメンバー9を境にして前方と後方ではビード50の配列パターンが異なっている。
【0018】
フロアパネル3において、フロアトンネルフレーム2とフロントクロスメンバー9とエクステンション11及びアウトリガー13により囲まれる領域S1では、アウトリガー13の一端部における断面中心とサイドシルインナー23の内側壁26との交点X1を中心として複数のビード50が同心円孤状に一定間隔で設けられている。ビード50の一端側は前傾斜壁25Fに面するサイドシルインナー23のフロアパネル3との接合部分に直角に端を発して延び、ビード50の他端側の一部は、アウトリガー13に連結される前記フロントサイドフレームの幅方向に対して直角となるように延びている。
【0019】
一方、フロアパネル3において、フロアトンネルフレーム2とフロントクロスメンバー9とミドルクロスメンバー7とで囲まれる領域S2では、ミドルクロスメンバー7の左側の端部47における断面中心とサイドシルインナー23の内側壁26との交点X2を中心として複数のビード50が同心円孤状に一定間隔で設けられている。ビード50の一端側は後傾斜壁25Rに面するサイドシルインナー23のフロアパネル3との接合部分に直角に端を発して延び、ビード50の他端側は、ミドルクロスメンバー7に直角となるように延びている。尚、ビード50はプレス加工により一般面よりも上方に突出させた台形状に形成されており、隣接するビード50,50間に谷部53が形成されている。
このように多数のビード50を設けたことによって、フロアパネル3,4の剛性を高めている。
【0020】
また、フロントクロスメンバー9よりも前方の領域では、アウトリガー13とサイドシルインナー23との結合部と、フロアトンネルフレーム2とフロントクロスメンバー9との結合部とを結ぶ対角線上に、液抜き孔51及び位置決め孔52が配置されている。一方、フロントクロスメンバー9よりも後方の領域では、フロアトンネルフレーム2とフロントクロスメンバー9との結合部と、ミドルクロスメンバー7とサイドシルインナー23との結合部とを結ぶ対角線上に、液抜き孔51及び位置決め孔52が配置されている。
【0021】
液抜き孔51は、隣接するビード50間の谷部53中央に1つずつ設けられている。この液抜き孔51はフロアパネル3の電着塗装工程において、電着液からフロアパネル3を取り出した際にフロアパネル3から電着液を抜くためのものである。
位置決め孔52は、フロアパネル3においてフロントクロスメンバー9の前後各領域にそれぞれ1つずつ設けられており、隣接するビード50,50の頂部同士を連結した部位に設けられている。
【0022】
ここで、図8に示すように、フロアトンネルフレーム2とフロントクロスメンバー9とミドルクロスメンバー7とで囲まれる領域S2にはシート(図示せず)を支持するために外側ブラケット60と内側ブラケット61がフロアパネル3に取り付けられている。
内側ブラケット61は矩形に形成された板状の部材であって、ビード50のフロアトンネルフレーム2側の端部でビード50が消失している部分のフロアパネル3面、具体的にはフロアトンネルフレーム2のウイング部21に対応する部位に接合され、この内側ブラケット61の中央部には裏側にウエルドナット62が配置された取付座63が形成されている。
一方、外側ブラケット60は位置決め孔52のすぐ後方であって外側に取り付けられている。
【0023】
具体的には、図9〜図12に示すように、外側ブラケット60はビード50の形成部位に取り付けられるため、特別の取り付け構造を採用している。この外側ブラケット60が取り付けられるフロアパネル3にはサイドシルインナー23に端を発する複数条のビード50が形成されているが、外側ブラケット60が取り付けられる部位には一条のビード50Aがサイドシルインナー23に端を発するようにして設けられ、この一条のビード50Aのサイドシルインナー23から遠い側の端部、つまり車室内側の端部には二条のビード50B,50Bが二股状になるようにして分岐し連続して形成されている。尚、ここで二条のビード50B,50Bは一条のビード50Aに対して明確にするために特別の符号を付したが、一条のビード50Aが二股状に分岐して接続されている以外は通常のビード50と同様の構成となっている。また、このように構成したため一条のビード50Aの配置されているサイドシルインナー23近傍のビードの数はサイドシルインナー23から遠い側のビードの数よりも少なくなっている。
【0024】
一条のビード50Aは、図10に示すように、通常のビードに比較して断面形状が大きく形成されその谷部53の幅寸法Lは通常のビード50よりも広く設定されている。
一条のビード50Aを上から覆うようにして外側ブラケット60が設けられ、外側ブラケット60のサイドシルインナー23から遠い側の端部は二条のビード50B,50Bに跨るようにして設けられている。
外側ブラケット60の上壁部65の裏面にはウエルドナット62が取り付けられ、ここがシートの取付座63として構成されている。
【0025】
外側ブラケット60は上壁部65の前後縁に前傾斜壁66と後傾斜壁67を備え、前傾斜壁66と後傾斜壁67には各々水平方向に脚部68,68が形成され、これら脚部68,68が一条のビード50Aの谷部53にスポット溶接により接合されている。
図12に示すように、外側ブラケット60の基部側には上壁部65から立ち上がるフランジ部69が形成されている。このフランジ部69はフロアパネル3の両側縁に形成されサイドシルインナー23に接合されるフランジ部27に重合されるものである。
【0026】
外側ブラケット60の上壁部65のサイドシルインナー23から遠い側の端部は、二股状のビード50B,50Bの上壁70に向かって傾斜する傾斜部71が設けられ、この傾斜部71の前側縁と後側縁にはやや湾曲形成された前傾斜部72と後傾斜部73が形成されている。前傾斜部72には前脚部74が設けられ、後傾斜部73には後脚部75が形成されている。これら前脚部74と後脚部75とが二条のビード50B,50Bの外側の谷部53,53にスポット溶接により接合されている。ここで、傾斜部71のサイドシルインナー23から遠い側の側縁は二条のビード50B,50Bの上壁70に整合しており、傾斜部71に対する前傾斜部72と後傾斜部73との稜線R1は二条のビード50B,50Bの外側の稜線R2に連続して形成されている。
ここで、後傾斜部73の稜線R1の端末と二条のビード50Bの片側の稜線R2とはMIG溶接により接合され、前傾斜部72の稜線R1の端末と二条のビード50Bのもう片側の稜線R2とはMIG溶接により接合されている。
【0027】
上記実施形態によれば、図9、図12に示すように、車両側面衝突時にサイドシル5から衝撃荷重(矢印F)が作用すると、この衝撃荷重Fはサイドシルインナー23からフロアパネル3に対してフランジ部27から作用する。フロアパネル3のフランジ部27から作用した衝撃荷重Fの一部は、経路Aとして一条のビード50Aに対して車室内側に向かって作用し、このビード50Aからこのビード50Aに二股状に連なる二条のビード50B,50Bへと伝達される。これにより、各ビード50B,50Bに分散されるため、荷重が集中しない点で有利である。
【0028】
また、衝撃荷重Fの残りは、フランジ部27により外側ブラケット60に対して作用し、この外側ブラケット60の上壁部65、傾斜部71を中心とし、前傾斜壁66、後傾斜壁67を経て前傾斜部72、後傾斜部73へ伝達され、外側ブラケット60の稜線R1に対して外側の稜線R2が一致している二条のビード50B,50Bへ2系統の経路Bとして分散されて伝達される。
【0029】
したがって、外側ブラケット60を取り付けるためにビード数を削減して一条のビード50Aとせざるを得ない分を外側ブラケット60自身により補強して、ビード50Aと外側ブラケット60とによって衝撃荷重を受け止めフロアパネル3の強度を高めることが可能となる。よって、車両側面衝突時においてサイドシルインナー23から作用する衝撃荷重Fを確実に受け止めて伝達することができる。
【0030】
つまり、サイドシルインナー23に作用した衝撃荷重Fはフロアパネル3のビード50に作用するが、一条のビード50Aの部位では外側ブラケット60と共にビード50Aがこの荷重を受け、この荷重は一条のビード50Aから二条のビード50B,50Bへ直接伝達されるものと、外側ブラケット60の稜線R1から二条のビード50B,50Bの外側の稜線R2に伝わるものとが合計されて、ビード50Bからミドルクロスメンバー7に分散して伝達される。よって、外側ブラケット60を取り付けることで生じたビードの配置制約をによるフロアパネルの強度低下を外側ブラケット60自身を有効利用して高めると共に衝撃荷重の伝達効率を高めることができるのである。
このようにして、ビード50が形成されたフロアパネル3,4であっても、シートなどの車載部品の搭載を容易にしつつビード50によるフロアパネル3,4の剛性向上及び車両側面衝突時の剛性向上を確保できる構造を得ることができる。
【0031】
尚、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、シート搭載のためのブラケットを例にしたが、電気自動車、ハイブリッド車両などの走行用バッテリを搭載する車両において、このバッテリ搭載のためのブラケットに適用してもよい。また、ビードの断面形状を台形として説明したが、ビードの断面形状は半円形や三角形等であってもよい。また、一条のビードが分岐して二条のビードに接続された場合を例にして説明したが、複数のビードに分岐接続されるのであれば、三条のビードに分岐して接続される場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施形態の斜視図である。
【図2】この発明の実施形態の平面図である。
【図3】図2のD−D線に沿う断面図である。
【図4】図2のE−E線に沿う断面図である。
【図5】図2のC−C線に沿う断面図である。
【図6】図2のB−B線に沿う断面図である。
【図7】図2のA−A線に沿う断面図である。
【図8】図2の拡大図である。
【図9】図8の要部拡大図である。
【図10】図9のF−F線に沿う断面図である。
【図11】図9のG−G線に沿う断面図である。
【図12】図9のH−H線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0033】
3,4 フロアパネル
7 ミドルクロスメンバー
23 サイドシルインナー
50 ビード
50A 一条のビード(サイドシルインナー近傍のビード)
50B 二条のビード(サイドシルインナーから遠い側の複数のビード)
53 谷部
60 外側ブラケット
68 脚部
R1,R2 稜線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネル面にサイドシルインナーからミドルクロスメンバーに向かって湾曲させた弧状のビードを並列に複数条設けた車両用フロアパネルであって、車載部品のサイドシルインナー側の取り付けブラケットを前記ビード上に取り付けるにあたって、前記サイドシルインナー近傍のビードの数を減らして、このビードが前記サイドシルインナーから遠い側の複数のビードに分岐して接続するように構成し、前記ブラケットを前記サイドシルインナー近傍のビードを覆うようにして取り付け、前記ブラケットの前記サイドシルインナーから遠い側の端部を分岐している複数のビードに跨って載置したことを特徴とする車両用フロア構造。
【請求項2】
前記ブラケットの稜線と、前記分岐している複数のビードの外側の稜線とを連続させることを特徴とする請求項1記載の車両用フロア構造。
【請求項3】
フロアパネル面にサイドシルインナーからミドルクロスメンバーに向かって湾曲させた弧状のビードを並列に複数条設けた車両用フロアパネルであって、車載部品の取り付けブラケットを前記ビード上に取り付けるにあたって、前記ブラケットが取り付けられるフロアパネルの取り付け面にサイドシルインナー側からミドルクロスメンバーに向かって一条が二股に分かれて二条となるビードを連続形成し、一条のビードをブラケットで覆うようにして、ブラケットの脚部を一条のビードの谷部に接合すると共に、ブラケットのミドルクロスメンバー側の端部の稜線を、二条のビードの外側の稜線に連続させたことを特徴とする車両用フロア構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−265540(P2008−265540A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111559(P2007−111559)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】