説明

車両用ペダルの後退防止装置

【課題】 ペダルブラケットの側板が常に外側へ座屈してペダルブラケットが適切に曲げ変形させられるようにして、操作ペダルの後退防止作用が一層確実に得られるようにする。
【解決手段】 ペダルブラケット14の一対の側板30、32の膨出部30a、32aが設けられた部分に、荷重Fに対してその膨出部30a、32aの頂部分の強度が最も弱くなるように切欠穴50が設けられ、車両前方からの大荷重入力などでダッシュパネル12が運転席側へ変位して荷重Fによりペダルブラケット14が曲げ変形させられる際に、その膨出部30a、32aの頂部分が外側へ突き出して座屈させられるようにしたため、ペダルブラケット14が常に適切に曲げ変形させられるようになり、操作ペダルの後退防止作用が一層確実に得られるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダッシュパネルが運転席側へ変位した時に操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを防止する車両用ペダルの後退防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) 一対の側板を備えており、その側板の前端部においてダッシュパネルに一体的に固設されるペダルブラケットと、(b) 前記一対の側板に跨がって設けられた支持軸の軸心まわりに回動可能に配設され、下端部に設けられた踏部が踏込み操作される操作ペダルと、(c) 前記ペダルブラケットの上端部と車体側部材とに関連して設けられ、そのペダルブラケットが前記ダッシュパネルと共に運転席側へ後退させられた時に、その車体側部材との相対変位に伴ってその上端部を所定の移動軌跡に従って下方へ変位させることにより、前記一対の側板を座屈させながらそのペダルブラケットを曲げ変形させて、前記操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを抑制するガイド部材と、を有する車両用操作ペダルの後退防止装置が提案されている。
【0003】
特許文献1に記載の装置はその一例で、ブレーキペダルについて記載されており、ペダルブラケットの上端部は、車体側部材としてのインパネリインフォースメントに固設されたガイド部材(スライドプレート)に連結されている。そして、車両前方からの大荷重入力などでダッシュパネルが運転席側へ変位すると、ペダルブラケットとガイド部材との連結が解除されるとともに、ペダルブラケットの上端部がガイド部材に案内されて下方へ変位させられることにより、剛性低下のために設けられた切欠穴部分で座屈して折り曲げられ、これにより操作ペダルはオペレーティングロッドとの連結部を支点として踏部が相対的に車両前側へ変位するように回動させられる。特許文献2にも、実質的に同様な構成の後退防止装置が記載されている。
【特許文献1】特開平10−175492号公報
【特許文献2】特開平9−254821号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ペダルブラケットの一対の側板には、例えばブレーキブースタとの干渉を避けるために外側へ円弧状に張り出す膨出部が設けられる場合があるが、切欠穴の位置や形状によっては、ペダルブラケットの曲げ変形時に前記ガイド部材から加えられる荷重によって膨出部の境界部分(折れ曲がり部分)が内側へ座屈することがある。
【0005】
図3のペダルブラケット100は、一対の側板102、104が背板106によって連結され、全体として断面がコの字形状を成しているとともに、下端部にはブレーキブースタと干渉しないように外側へ膨出する円弧形状の膨出部102a、104aが設けられ、その膨出部102a、104aの前端側(図3(a) の左側)においてダッシュパネル108に一体的にに固設されている一方、上端部分には側板102、104に跨がって支持軸110が配設され、図示しない操作ペダルが回動可能に取り付けられるようになっている。そして、軽量化のために、例えば膨出部102a、104a付近に切欠穴112が設けられると、ダッシュパネル108の後退時(図3(a) の右方向への変位)に図示しないガイド部材から加えられる荷重Fに対して最も強度が低くなる最弱部Qが、その膨出部102a、102bの上側の膨出境界部分102b、104bに位置し、その膨出境界部分102b、104bは膨出部102a、104aとの関係で相対的に内向きに凸となるように折れ曲がっているため、圧縮方向の荷重Fが作用すると図3(b) に点線で示すように内側へ座屈する。切欠穴112が膨出部102a 、104aの頂部分を含んでいても、単純な長円形状などで上側の膨出境界部分102b、104bを跨いでいると、その膨出境界部分102b、104bの強度が弱くなってしまうのであり、膨出境界部分102b、104bを含まないように膨出部102a、104a内のみに切欠穴112を形成すると、十分な軽量化効果が得られない。なお、図3の(a) は、右側の側板104を内側から示す縦断面図で、(b) は正面図である。
【0006】
そして、このように側板が内側へ座屈すると、ブレーキブースタ等と干渉してペダルブラケットの曲げ変形が阻害され、操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを抑制する後退防止作用が十分に得られなくなる可能性がある。
【0007】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、ペダルブラケットの側板が常に外側へ座屈してペダルブラケットが適切に曲げ変形させられるようにして、操作ペダルの後退防止作用が一層確実に得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) 一対の側板を備えており、その側板の前端部においてダッシュパネルに一体的に固設されるとともに、その一対の側板にはそれぞれ外側へ円弧状に張り出す膨出部が設けられているペダルブラケットと、(b) 前記一対の側板に跨がって設けられた支持軸の軸心まわりに回動可能に配設され、下端部に設けられた踏部が踏込み操作される操作ペダルと、(c) 前記ペダルブラケットの上端部と車体側部材とに関連して設けられ、そのペダルブラケットが前記ダッシュパネルと共に運転席側へ後退させられた時に、その車体側部材との相対変位に伴ってその上端部を所定の移動軌跡に従って下方へ変位させることにより、前記一対の側板を座屈させながらそのペダルブラケットを曲げ変形させて、前記操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを抑制するガイド部材と、を有する車両用操作ペダルの後退防止装置において、(d) 前記ペダルブラケットの一対の側板の前記膨出部が設けられた部分には、前記ダッシュパネルの後退時に前記ガイド部材から加えられる荷重に対してその膨出部の頂部分の強度が最も弱くなり、その頂部分が外側へ突き出して座屈するように、その頂部分を含んで切欠穴が設けられていることを特徴とする。
【0009】
なお、ダッシュパネル変形時に後退が抑制される踏部の位置は、通常の状態における踏部の位置と同じかそれよりも車両前方側になることが望ましいが、運転席側(車両後方側)へ後退する場合であっても、少なくとも本発明が適用されることによって運転席側への後退移動量が少なくなれば良い。
【0010】
第2発明は、第1発明の車両用操作ペダルの後退防止装置において、(a) 前記操作ペダルは、前記ダッシュパネルに配設されているブレーキブースタのオペレーティングロッドに連結されるブレーキペダルで、(b) 前記一対の側板は、前記ブレーキブースタの左右両側に配設されて上方へ延び出しており、その下端部分にそのブレーキブースタと干渉しないようにそのブレーキブースタの外周縁に沿って左右に膨出するように前記膨出部が設けられているとともに、その膨出部の前端側が前記ダッシュパネルに固設されており、且つ、その膨出部の後端縁は上方へ向かうに従ってそのダッシュパネルから離間する後方側へ傾斜させられており、(c) 前記切欠穴は、前記膨出部からその膨出部よりも上方部分に跨がって設けられているとともに、前記ダッシュパネルに沿って底辺が位置する三角形状を成していて、その膨出部の上側の膨出境界部分でその三角形の高さ寸法が最も大きくされていることを特徴とする。
【0011】
第3発明は、第2発明の車両用操作ペダルの後退防止装置において、前記三角形の底辺は、前記膨出部の頂部分とその膨出部の上側の前記膨出境界部分とを跨いでその上下に延び出していることを特徴とする。
【0012】
なお、上記切欠穴の形状は正確な三角形である必要はなく、各頂点に丸みを付けることが望ましいとともに、成形前の素材の状態(展開した状態)では三角形であるが、膨出部が成形された製品状態では、その膨出に起因して三角形がやや変形した形状となる場合であっても差し支えない。勿論、製品状態において三角形となるようにすることも可能で、所期の効果が得られることを条件として略三角形状を成しておれば良い。
【発明の効果】
【0013】
このような車両用ペダルの後退防止装置においては、ペダルブラケットの一対の側板の膨出部が設けられた部分に、その膨出部の頂部分の強度が最も弱くなるように切欠穴が設けられ、ペダルブラケットの曲げ変形時にはその膨出部の頂部分が外側へ突き出して座屈するようになっているため、ペダルブラケットが常に適切に曲げ変形させられるようになり、操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを抑制する後退防止作用が一層確実に得られるようになる。
【0014】
また、切欠穴が、膨出部からその膨出部よりも上方部分に跨がって設けられ、ダッシュパネルに沿って底辺が位置する三角形状を成しているとともに、その膨出部の上側の膨出境界部分でその三角形の高さ寸法が最も大きくされている第2発明では、膨出部の頂部分を確実に外側へ座屈させるようにしながら切欠穴の面積を大きくして軽量化を図ることができる。特に、第3発明では、三角形の底辺が膨出部の頂部分と上側の膨出境界部分とを跨いでその上下に延び出しているため、切欠穴の面積を一層大きくして十分な軽量化効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、例えばブレーキブースタのオペレーティングロッドが操作ペダルの上下の中間位置に連結される常用ブレーキ用のブレーキペダルに好適に適用されるが、アクセルペダルやクラッチペダル、パーキング用ブレーキペダルなど他の車両用ペダルにも適用され得る。
【0016】
ペダルブラケットの一対の側板は、例えば互いに略平行となる姿勢でダッシュパネルに対して略垂直に設けられるとともに、膨出部は、一対の側板の略同じ位置に略対称的に設けられて、その内側には、ダッシュパネルに固定された円筒形状の部材、例えばブレーキブースタの構成部品等が配設される。
【0017】
ガイド部材を介してペダルブラケットを変形させる車体側部材は、車両前方からの大荷重入力時に運転席側すなわち車両後方側へ変位する可能性がダッシュパネルに比較して少ないもので、インパネリインフォースメント(インストルメントパネルの補強部材)の他カウルパネルなどが好適に用いられ、その車体側部材とダッシュパネルとの相対変位に基づいてペダルブラケットが曲げ変形させられる。ダッシュパネルは、車室内とエンジンルームとを区切る隔壁である。
【0018】
ガイド部材は、ペダルブラケットおよび車体側部材の何れか一方に設けられ、他方と係合させられることにより、ペダルブラケットの上端部を所定の移動軌跡に従って滑らかに下方へ変位させるように、スライド面等を有して構成される。ペダルブラケットの上端部の移動軌跡は、その移動に伴ってペダルブラケットを確実に曲げ変形させるように定められ、例えば斜め下方へ向かう直線や円弧などが適当である。
【0019】
ペダルブラケットの上端部と車体側部材は、始めから相対移動可能であっても良いが、連結部材により連結してペダルブラケットを位置決めしておくとともに、ペダルブラケットに車両後方側へ向かって所定の荷重が作用した場合に連結が解除され、車体側部材に対して相対移動させられるようにしても良い。連結部材は、所定の荷重で破断するボルトやその他の破断部材、ボルトの締結荷重などで摩擦係合させられるとともに所定の荷重でスリップしてスリット等から抜け出す摩擦係合部材、或いは所定の荷重で変形して相対変位を許容する変形部材などである。
【0020】
切欠穴は、少なくとも膨出部の頂部分を含むように設けられるが、その位置や形状、大きさは、膨出部の頂部分が最弱部となって外側へ突き出して座屈するように、ペダルブラケットの一対の側板の形状や荷重の向きに基づいて、シミュレーションや実験等により適宜定められる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された常用ブレーキ用のブレーキペダル装置10を説明する概略図で、(a) は通常の状態、(b) は後退防止装置の作動状態を示す図であり、何れも左方向から見た側面図である。このブレーキペダル装置10は、エンジンルームと車室内とを区切るダッシュパネル12に図示しないボルト等を介して一体的に固設されたペダルブラケット14と、そのペダルブラケット14の上端部に略水平で且つ車両幅方向と略平行に配設された支持軸16と、その支持軸16に軸心まわりの回動可能に配設された操作ペダル18とを備えている。操作ペダル18は、上端部において支持軸16に回動可能に取り付けられており、下端部に設けられた踏部20が車両前方側(図1の左方向)へ踏込み操作されることにより、上下の中間位置に連結ピン22を介して連結されたブレーキブースタ24のオペレーティングロッド26を前方へ押圧してブレーキ力を発生させる。ブレーキブースタ24は、ダッシュパネル12に一体的に固定されているとともに、車室内に突き出す蛇腹等の円筒部28を一体的に備えており、オペレーティングロッド26はその円筒部28内を挿通させられている。
【0022】
図2は、上記ペダルブラケット14を拡大して示す図で、図3に対応する図であり、(a) は縦断面図、(b) は正面図である。ペダルブラケット14は、互いに略平行な一対の側板30、32が背板34によって連結され、全体として断面がコの字形状を成すもので、一対の側板30、32は、ダッシュパネル12に対して略垂直となる姿勢で前記ブレーキブースタ24の円筒部28の左右両側に配設されて上方へ延び出している。一対の側板30、32の下端部には、円筒部28と干渉しないようにその円筒部28の外周面に沿って略対称的に左右に膨出する円弧形状の膨出部30a、32aが設けられ、その膨出部30a、32aの前端側(図2(a) の左側)において図示しないボルト等によりダッシュパネル12に一体的にに固設されている。また、側板30、32は、略一定の幅寸法で上方へ向かうに従ってダッシュパネル12から離間する車両後方側へ向かって傾斜させられており、その上端部分に前記支持軸16が側板30、32に跨がって配設されている。
【0023】
ペダルブラケット14の上端部には連結部材36が一体的に設けられており、図1に示すように、車体側部材であるインパネリインフォースメント38に一体的に固設されたサポート部材40にボルト42を介して連結されている。連結部材36にはスリットが設けられているとともに、ボルト42はそのスリット内を挿通させられており、そのスリットの両側においてねじ締結による摩擦係合でペダルブラケット14をサポート部材40に連結している。そして、ペダルブラケット14に車両後方側すなわち図1(a) 、(b) における右方向へ所定の離脱荷重が加えられると、スリップしてボルト42がスリットを通過して連結部材36から抜け出し、図1(b) に示すようにペダルブラケット14とサポート部材40との連結が解除される。
【0024】
上記離脱荷重は、車両前方からの大荷重入力などでダッシュパネル12が運転席側へ変位した場合に、操作ペダル18の踏部20がそのまま運転席側へ後退することを防止するために、ペダルブラケット14の上端部がサポート部材40から離脱することを許容するように定められている。サポート部材40には、車両後方側すなわち運転席側へ向かうに従って斜め下方へ滑らかに傾斜している2種類のガイド部材44、46が一体的に設けられており、サポート部材40との連結が解除されたペダルブラケット14は、ダッシュパネル12と共に更に運転席側へ移動させられると、その上端部がガイド部材44のスライド面(下面)と係合させられて、そのガイド部材44に案内されつつ斜め下方へ滑らかに移動させられる。サポート部材40が設けられたインパネリインフォースメント38は、車両前方からの大荷重入力時に車両後方側へ変位する可能性がダッシュパネル12に比較して少なく、それ等の相対変位に基づいてペダルブラケット14の上端部がサポート部材40から離脱し、ガイド部材44に案内されつつ斜め下方へ滑らかに変位させられるのである。サポート部材40には、斜め方向入力などでペダルブラケット14がガイド部材44のスライド面から側方へ外れることがないように、そのペダルブラケット14を位置決めする位置決め部材46が一体的に設けられている。
【0025】
一方、側板30、32には、上記のようにペダルブラケット14の上端部がガイド部材44によって斜め下方へ変位させられる際の荷重Fに対して強度が最も弱くなる最弱部Qが前記膨出部30a、32aの頂部分に位置し、その荷重Fにより図2の(b) に点線で示すようにその頂部分が外側へ突き出して座屈するように、その頂部分を含んで切欠穴48、50が設けられている。すなわち、切欠穴48、50の位置や形状は、ペダルブラケット14の一対の側板30、32の形状や荷重Fの向きに基づいて、膨出部30a、32aの頂部分が外側へ突き出して座屈するようにシミュレーションや実験等により定められているのであり、本実施例では、膨出部30a、32aからその膨出部30a、32aよりも上方部分に跨がって設けられるとともに、底辺48a、50aがダッシュパネル12と略平行な三角形状を成している。三角形の各頂点は滑らかな円弧形状を成しているとともに、底辺48a、50aは、膨出部30a、32aの頂部分と上側の膨出境界部分30b、32bとを跨いでその上下に延び出している一方、底辺48a、50aの対角位置の頂点すなわち底辺48a、50aからの高さ寸法が最も大きくなる部分は、上側の膨出境界部分30b、32bであって、厳密には膨出境界部分30b、32bの中心より僅かに下側に位置しており、下側の斜辺48b、50bは側板30、32の車両後方側すなわち図1(a) 、図2(a) における右側の端縁と略平行に傾斜させられている。
【0026】
なお、上記切欠穴48、50は、図2(a) から明らかなように、膨出部30a、32aがプレス成形された製品状態で側面視において三角形状を成すように設けられているが、膨出部30a、32aの突出寸法は小さいため、プレス成形前の素材の状態でも、図2(a) に示す三角形状と略同じ三角形状である。
【0027】
そして、このように一対の側壁30、32が膨出部30a、32aの付近で座屈させられることにより、ペダルブラケット14は全体としてお辞儀をするようにその膨出部30a、32aの部分で曲げ変形させられる。これにより、上端部が支持軸16に連結されている操作ペダル18は、オペレーティングロッド26に連結されている中間部(連結ピン22)を支点として右まわりに回動させられ、踏部20が相対的に車両前方側(図1(b) の左方向)へ移動させられて運転席側への後退が抑制される。図1(b) の一点鎖線は、ペダルブラケット14が変形することなく後退させられた場合の操作ペダル18の姿勢で、ペダルブラケット14が曲げ変形させられることにより、実線で示すように車両前方側へ変位させられる。本実施例では、連結部材36、ボルト42、ガイド部材44、切欠穴48、50を含んで後退防止装置が構成されている。
【0028】
ここで、本実施例ではペダルブラケット14の一対の側板30、32の膨出部30a、32aが設けられた部分に、荷重Fに対してその膨出部30a、32aの頂部分の強度が最も弱くなるように切欠穴48、50が設けられ、車両前方からの大荷重入力などでダッシュパネル12が運転席側へ変位して荷重Fによりペダルブラケット14が曲げ変形させられる際に、その膨出部30a、32aの頂部分が外側へ突き出して座屈させられるようになっているため、その内側に位置しているブレーキブースタ24の円筒部28と干渉する可能性が小さく、干渉しても内側へ折れ曲がる場合に比較して座屈変形が損なわれる可能性は少ない。このため、ペダルブラケット14が常に適切に曲げ変形させられるようになり、操作ペダル18の踏部20が運転席側へ後退することを抑制する後退防止作用が一層確実に得られるようになる。
【0029】
また、本実施例の切欠穴48、50は、膨出部30a、32aからその膨出部30a、32aよりも上方部分に跨がって設けられ、底辺48a、50aがダッシュパネル12と略平行な三角形状を成しているとともに、下側の斜辺48b、50bが側板30、32の後側の端縁と略平行に設けられて、三角形の高さ寸法が膨出部30a、32aの上側の膨出境界部分30b、32bで最も大きくされているため、膨出部30a、32aの頂部分を確実に外側へ座屈させるようにしながら切欠穴48、50の面積を大きくして軽量化を図ることができる。特に、三角形の底辺48a、50aが膨出部30a、32aの頂部分と上側の膨出境界部分30b、32bとを跨いでその上下に延び出しているため、切欠穴48、50の面積を一層大きくして十分な軽量化効果を得ることができる。
【0030】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明が適用されたブレーキペダル装置の概略構成を示す側面図で、(a) は通常の状態、(b) は後退防止装置の作動状態である。
【図2】図1の実施例のペダルブラケットを拡大して示す図で、(a) は縦断面図、(b) は正面図である。
【図3】従来のペダルブラケットを説明する図で、図2に対応する図であり、(a) は縦断面図、(b) は正面図である。
【符号の説明】
【0032】
10:ブレーキペダル装置 12:ダッシュパネル 14:ペダルブラケット 18:操作ペダル 20:踏部 24:ブレーキブースタ 26:オペレーティングロッド 30、32:側板 30a、32a:膨出部 38:インパネリインフォースメント(車体側部材) 44:ガイド部材 48、50:切欠穴 48a、50a:底辺 F:荷重 Q:最弱部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の側板を備えており、該側板の前端部においてダッシュパネルに一体的に固設されるとともに、該一対の側板にはそれぞれ外側へ円弧状に張り出す膨出部が設けられているペダルブラケットと、
前記一対の側板に跨がって設けられた支持軸の軸心まわりに回動可能に配設され、下端部に設けられた踏部が踏込み操作される操作ペダルと、
前記ペダルブラケットの上端部と車体側部材とに関連して設けられ、該ペダルブラケットが前記ダッシュパネルと共に運転席側へ後退させられた時に、該車体側部材との相対変位に伴って該上端部を所定の移動軌跡に従って下方へ変位させることにより、前記一対の側板を座屈させながら該ペダルブラケットを曲げ変形させて、前記操作ペダルの踏部が運転席側へ後退することを抑制するガイド部材と、
を有する車両用操作ペダルの後退防止装置において、
前記ペダルブラケットの一対の側板の前記膨出部が設けられた部分には、前記ダッシュパネルの後退時に前記ガイド部材から加えられる荷重に対して該膨出部の頂部分の強度が最も弱くなり、該頂部分が外側へ突き出して座屈するように、該頂部分を含んで切欠穴が設けられている
ことを特徴とする車両用操作ペダルの後退防止装置。
【請求項2】
前記操作ペダルは、前記ダッシュパネルに配設されているブレーキブースタのオペレーティングロッドに連結されるブレーキペダルで、
前記一対の側板は、前記ブレーキブースタの左右両側に配設されて上方へ延び出しており、その下端部分に該ブレーキブースタと干渉しないように該ブレーキブースタの外周縁に沿って左右に膨出するように前記膨出部が設けられているとともに、該膨出部の前端側が前記ダッシュパネルに固設されており、且つ、該膨出部の後端縁は上方へ向かうに従って該ダッシュパネルから離間する後方側へ傾斜させられており、
前記切欠穴は、前記膨出部から該膨出部よりも上方部分に跨がって設けられているとともに、前記ダッシュパネルに沿って底辺が位置する三角形状を成していて、該膨出部の上側の膨出境界部分で該三角形の高さ寸法が最も大きくされている
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用操作ペダルの後退防止装置。
【請求項3】
前記三角形の底辺は、前記膨出部の頂部分と該膨出部の上側の前記膨出境界部分とを跨いでその上下に延び出している
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用操作ペダルの後退防止装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−142940(P2006−142940A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334570(P2004−334570)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000241496)豊田鉄工株式会社 (104)
【Fターム(参考)】