説明

車両用リヤサブフレーム構造

【課題】 リヤサブフレームの重量増加を最小限に抑えながら、湾曲部を有する前部クロスメンバの剛性を向上させる。
【解決手段】 プロペラシャフトからリヤディファレンシャルギヤ30に駆動力が入力される駆動力入力部30aとの干渉を回避すべく、リヤサブフレーム12の前部クロスメンバ13に湾曲部13aを形成したので、サスペンションアーム取付部16aから大荷重が入力すると前部クロスメンバ13が変形する可能性があるが、サスペンションアーム取付部16aの近傍と、リヤディファレンシャルギヤ30の前部を前部クロスメンバ13の曲部の近傍に支持するマウント部材32とを連結部材37で連結したので、この連結部材37で前部クロスメンバ13を補強して変形を防止することができ、しかも前部クロスメンバ13の重量の増加を最小限に抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車幅方向に延びる前部クロスメンバおよび後部クロスメンバと、車体前後方向に延びる左右一対のサイドメンバとを枠状に結合したリヤサブフレームの内部に、プロペラシャフトから入力される駆動力を左右の車軸に伝達するリヤディファレンシャルギヤをマウント部材を介して支持する車両用リヤサブフレーム構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば四輪駆動車両のリヤディファレンシャルギヤを車体フレームに支持する際に、そのリヤディファレンシャルギヤやリヤサスペンション装置を予め組付けたリヤサブフレームを、サブアセンブリとして車体フレームに一括して搭載するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−289094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車幅方向に延びる前部クロスメンバおよび後部クロスメンバと、車体前後方向に延びる左右一対のサイドメンバとを枠状に結合してリヤサブフレームを構成し、このリヤサブフレームの内部にマウント部材を介してリヤディファレンシャルギヤを支持した場合、リヤディファレンシャルギヤの前部に設けられてプロペラシャフトからの駆動力が入力する駆動力入力部がリヤサブフレームの前部クロスメンバと干渉するのを回避するために、前部クロスメンバの車幅方向中央部を上向きに湾曲させて前記駆動力入力部を配置する空間を形成する必要が生じることがある。
【0005】
かかる湾曲部を形成すると前部クロスメンバの剛性が低下するため、その車幅方向両端に支持されたサスペンションアームから入力された荷重により、前部クロスメンバが変形する可能性があり、これを防止すべく前部クロスメンバの断面を大型化したり肉厚を増加させたりすると、リヤサブフレームの重量が増加する問題がある。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、リヤサブフレームの重量増加を最小限に抑えながら、湾曲部を有する前部クロスメンバの剛性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、車幅方向に延びる前部クロスメンバおよび後部クロスメンバと、車体前後方向に延びる左右一対のサイドメンバとを枠状に結合したリヤサブフレームの内部に、プロペラシャフトから入力される駆動力を左右の車軸に伝達するリヤディファレンシャルギヤをマウント部材を介して支持する車両用リヤサブフレーム構造であって、前記プロペラシャフトから前記リヤディファレンシャルギヤに駆動力が入力される駆動力入力部との干渉を回避すべく、前記前部クロスメンバの車幅方向中央部に上向きに湾曲する湾曲部を形成したものにおいて、前記リヤサブフレームの前部の車幅方向両端部に設けたサスペンションアーム取付部と、前記リヤディファレンシャルギヤの前部を前記前部クロスメンバの湾曲部の近傍に支持する前記マウント部材とを連結部材で連結したことを特徴とする車両用リヤサブフレーム構造が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記湾曲部の近傍に設けたマウント部材は、上部が前記前部クロスメンバに固定されて下部が前記連結部材に固定された軸部と、内周面が前記軸部に固定されて外周面が前記リヤディファレンシャルギヤの支持部に固定された円筒状のゴムブッシュと、前記支持部の下面と前記連結部材の上面との間に配置されたストッパラバーとを備えることを特徴とする車両用リヤサブフレーム構造が提案される。
【0009】
尚、実施の形態の取付ブラケット16aはサスペンションアーム取付部に対応し、実施の形態の前部マウント部材32および後部マウント部材33は本発明のマウント部材に対応し、実施の形態のストッパ37は本発明の連結部材に対応し、実施の形態のボルト38は本発明の軸部に対応し、実施の形態の下部ストッパラバー40は本発明のストッパラバーに対応する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、車幅方向に延びる前部クロスメンバおよび後部クロスメンバと、車体前後方向に延びる左右一対のサイドメンバとを枠状に結合したリヤサブフレームの内部に、プロペラシャフトから入力される駆動力を左右の車軸に伝達するリヤディファレンシャルギヤがマウント部材を介して支持される。プロペラシャフトからリヤディファレンシャルギヤに駆動力が入力される駆動力入力部との干渉を回避すべく、前部クロスメンバの車幅方向中央部に上向きに湾曲する湾曲部を形成したので、リヤサブフレームの前部の車幅方向両端部に設けたサスペンションアーム取付部から大荷重が入力すると、湾曲部により剛性が低下した前部クロスメンバが変形する可能性があるが、サスペンションアーム取付部と、リヤディファレンシャルギヤの前部を前部クロスメンバの湾曲部の近傍に支持するマウント部材とを連結部材で連結したので、この連結部材で前部クロスメンバを補強して変形を防止することができ、しかも前部クロスメンバ自体の断面を大型化したり肉厚を増加させたりする場合に比べて重量の増加を最小限に抑えることができる。
【0011】
また請求項2の構成によれば、前部クロスメンバの湾曲部の近傍に設けられてリヤディファレンシャルギヤを支持するマウント部材は、上部が前部クロスメンバに固定されて下部が連結部材に固定された軸部と、内周面が軸部に固定されて外周面がリヤディファレンシャルギヤに固定された円筒状のゴムブッシュと、支持部の下面と連結部材の上面との間に配置されたストッパラバーとを備えるので、前部クロスメンバ、連結部材およびマウント部材の軸部で閉断面構造を構成して前部クロスメンバの剛性を効果的に高めることができる。しかも連結部材は、ストッパラバーの下面が当接可能に対向してゴムブッシュの変形限界を規制するストッパを兼ねるので、連結部材に前部クロスメンバの補強機能およびマウント部材のストッパ機能を併せ持たせて部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】リヤサブフレームの斜視図。
【図2】リヤサブフレームの底面図(図1の2方向矢視図)。
【図3】リヤサブフレームの正面図(図1の3方向矢視図)。
【図4】図2の4−4線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1〜図4に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1〜図4に示すように、四輪駆動車両の車体後部の左右両側に前後方向に配置される左右一対のリヤサイドフレーム11,11の下面に、リヤサブフレーム12が着脱自在に支持される。リヤサブフレーム12は四角枠状の部材であって、車幅方向に延びる前部クロスメンバ13と、前部クロスメンバ13の後方において車幅方向に延びる後部クロスメンバ14と、前部クロスメンバ13および後部クロスメンバ14の車幅方向外側を前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ15,15と、前部クロスメンバ13の左右両端と左右のサイドメンバ15,15の前端とを接続して前方かつ車幅方向外側に向かって延びる左右一対の前側取付部16,16と、後部クロスメンバ14の左右両端と左右のサイドメンバ15,15の後端とを接続して後方かつ車幅方向外側に向かって延びる左右一対の後側取付部17,17とを備える。前側取付部16,16の先端はゴムブッシュを有する前部サブフレームマウント18,18を介して左右のリヤサイドフレーム11,11の下面に弾性支持され、後側取付部17,17の先端はゴムブッシュを有する後部サブフレームマウント19,19を介して左右のリヤサイドフレーム11,11の下面に弾性支持される。
【0015】
リヤサブフレーム12の左右両側部には後輪20,20を支持するサスペンション装置21,21が設けられる。各サスペンション装置21は、前部ロアアーム22と、後部ロアアーム23と、アッパーアーム24と、コントロールアーム25と、ダンパー26と、スタビライザ27とを備える。I型の前部ロアアーム22は、前側取付部16の下面から下向きに延びる取付ブラケット16aとナックル28とを接続し、I型の後部ロアアーム23は、後側取付部17の下面から下向きに延びる取付ブラケット17aとナックル28とを接続し、I型のコントロールアーム25は、後側取付部17の下面から下向きに延びる取付ブラケット17bとナックル28とを接続し、A型のアッパーアーム24は、前側取付部16に設けた取付ブラケット16bおよび後側取付部17に設けた取付ブラケット17cとナックル28とを接続する。またダンパー26の下端はナックル28に接続され、スタビライザ27の前端は上下方向に延びるリンク29を介してナックル28に接続される。
【0016】
枠状に形成されたリヤサブフレーム12の内部に搭載されるリヤディファレンシャルギヤ30は、その前面から前方に突出する駆動力入力部30aが、車体前後方向に延びるプロペラシャフト31の後端に接続されるとともに、その側面から左右の車軸46,46が車幅方向外側に延出する。このとき、リヤディファレンシャルギヤ30の前面から前方に突出する駆動力入力部30aがリヤサブフレーム12の前部クロスメンバ13と干渉しないように、前部クロスメンバ13の車幅方向中央部に上向きに湾曲する湾曲部13aが形成されており、この湾曲部13aの下側に形成される空間にリヤディファレンシャルギヤ30の駆動力入力部30aが配置される。リヤディファレンシャルギヤ30は、その前部が左右一対の前部マウント部材32,32を介して前部クロスメンバ13に支持され、その後部が左右一対の後部マウント部材33,33を介して後部クロスメンバ14に支持される。
【0017】
図4に明瞭に示すように、各前部マウント部材32は、内筒34の外周面および外筒35の内周面に焼き付けにより固定された円筒状のゴムブッシュ36を備えており、板状のストッパ37に下方から挿入されたボルト38が内筒34を貫通して前部クロスメンバ13の内部に設けたナット39に下方から螺合することで、内筒34が前部クロスメンバ13の下面に締結される。またリヤディファレンシャルギヤ30の前面から前方に突出する支持部30bに形成した支持孔30cに外筒35が圧入により固定される。各前部マウント部材32はゴムブッシュ36の上面から突出する上部ストッパラバー36aを備え、この上部ストッパラバー36aはリヤディファレンシャルギヤ30の支持部30bの上面と前部クロスメンバ13の下面との間に配置される。更に各前部マウント部材32は、リヤディファレンシャルギヤ30の支持部30bの下面とストッパ37の上面との間に配置された下部ストッパラバー40を備える。そしてストッパ37の車幅方向外端はリヤサブフレーム12の前側取付部16の前端部下面に2本のボルト41,41で固定される。
【0018】
一方、リヤディファレンシャルギヤ30を後部クロスメンバ14に支持する左右一対の後部マウント部材33,33の各々は、内筒42の外周面および外筒43の内周面に焼き付けにより固定された円筒状のゴムブッシュ44を備えており、内筒42に後方から挿入されたボルト45がリヤディファレンシャルギヤ30の後面に螺合し、かつ外筒43が後部クロスメンバ14に形成した支持孔14aに圧入により固定される。
【0019】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0020】
リヤサブフレーム12に前部マウント部材32,32および後部マウント部材33,33を介してリヤディファレンシャルギヤ30を支持するとともに、左右のサスペンション装置21,21を組付けてサブアセンブリ化し、これを前部サブフレームマウント18,18および後部サブフレームマウント19,19を介してリヤサイドフレーム11,11に一括して組付ける。
【0021】
リヤディファレンシャルギヤ30は前部マウント部材32,32および後部マウント部材33,33を介してリヤサブフレーム12に弾性支持されるが、リヤディファレンシャルギヤ30の前部が前部マウント部材32,32のゴムブッシュ36,36を変形させながら大きく下方に変位したとき、前部マウント部材32,32の下部ストッパラバー40,40がストッパ37,37の上面に当接することで、リヤディファレンシャルギヤ30の前部の下方への移動限界を規制する。またリヤディファレンシャルギヤ30の前部が前部マウント部材32,32のゴムブッシュ36,36を変形させながら大きく上方に変位したとき、前部マウント部材32,32の上部ストッパラバー36a,36aが前部クロスメンバ13,13の下面に当接することで、リヤディファレンシャルギヤ30の前部の上方への移動限界を規制する。
【0022】
ところで、リヤサブフレーム12の前部クロスメンバ13は、リヤディファレンシャルギヤ30の駆動力入力部30aとの干渉を回避すべく中央部が上向きに湾曲しているため、前部ロアアーム22,22の基端を枢支する取付ブラケット16a,16aに大きな荷重が入力したときに、前部クロスメンバ13が曲げ変形する可能性がある。特に、前部ロアアーム22,22の基端を枢支する取付ブラケット16a,16aの位置と、前部クロスメンバ13の下面の位置との高さの差H(図3参照)が大きい場合には、前部クロスメンバ13の強度不足が顕著になる。
【0023】
しかしながら本実施の形態によれば、前部マウント部材32,32の内筒34,34の下端にボルト38,38で固定されたストッパ37,37を車幅方向外側に延長して前側取付部16,16の下面にボルト41…で締結したので、前部クロスメンバ13、前部マウント部材32,32の内筒34,34、ストッパ37,37および前側取付部16,16よりなる二つの閉断面が形成されることで、前部クロスメンバ13の剛性を効果的に高めて変形を防止することができる。
【0024】
しかもリヤディファレンシャルギヤ30の下方への移動限界を規制する既存のストッパ37,37を僅かに大型化して連結部材として利用するので、最小限の重量増加で前部クロスメンバ13の剛性を大幅に高めることができる。
【0025】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0026】
例えば、実施の形態では前部マウント部材32のストッパ37,37を連結部材として利用しているが、専用の連結部材を用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
12 リヤサブフレーム
13 前部クロスメンバ
13a 湾曲部
14 後部クロスメンバ
15 サイドメンバ
16a 取付ブラケット(サスペンションアーム取付部)
30 リヤディファレンシャルギヤ
30a 駆動力入力部
30b 支持部
31 プロペラシャフト
32 前部マウント部材(マウント部材)
33 後部マウント部材(マウント部材)
36 ゴムブッシュ
37 ストッパ(連結部材)
38 ボルト(軸部)
40 下部ストッパラバー(ストッパラバー)
46 車軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びる前部クロスメンバ(13)および後部クロスメンバ(14)と、車体前後方向に延びる左右一対のサイドメンバ(15)とを枠状に結合したリヤサブフレーム(12)の内部に、プロペラシャフト(31)から入力される駆動力を左右の車軸(46)に伝達するリヤディファレンシャルギヤ(30)をマウント部材(32,33)を介して支持する車両用リヤサブフレーム構造であって、
前記プロペラシャフト(31)から前記リヤディファレンシャルギヤ(30)に駆動力が入力される駆動力入力部(30a)との干渉を回避すべく、前記前部クロスメンバ(13)の車幅方向中央部に上向きに湾曲する湾曲部(13a)を形成したものにおいて、
前記リヤサブフレーム(12)の前部の車幅方向両端部に設けたサスペンションアーム取付部(16a)と、前記リヤディファレンシャルギヤ(30)の前部を前記前部クロスメンバ(13)の湾曲部(13a)の近傍に支持する前記マウント部材(32)とを連結部材(37)で連結したことを特徴とする車両用リヤサブフレーム構造。
【請求項2】
前記湾曲部(13a)の近傍に設けたマウント部材(32)は、上部が前記前部クロスメンバ(13)に固定されて下部が前記連結部材(37)に固定された軸部(38)と、内周面が前記軸部(38)に固定されて外周面が前記リヤディファレンシャルギヤ(30)の支持部(30b)に固定された円筒状のゴムブッシュ(36)と、前記支持部(30b)の下面と前記連結部材(37)の上面との間に配置されたストッパラバー(40)とを備えることを特徴とする、請求項1に記載の車両用リヤサブフレーム構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−20465(P2011−20465A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−164517(P2009−164517)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】