説明

車両用ロールバーの組み付け構造及びその組み付け方法

【課題】 ロールバー(ロールバーユニット)を車体に対して簡単に且つ確実に位置決めして組み付けでき、組み付け負荷を軽減し、ロールバーを備えた車両の量産効率を高めることができる、車両用ロールバーの組み付け構造及びその組み付け方法を提供する。
【解決手段】 ロールバーユニット29の1対のロールバー13の下端部をリヤフロアパネル5に対して少なくとも車幅方向に位置決めすると共に上下方向から締結固定する1対のロールバー位置決め固定機構40を設け、各ロールバー位置決め固定機構40は、リヤフロアパネル5に対して固定されてリヤフロアパネル5上に突出するボルト部材41と、ロールバー13の下端部に固定的に設けられボルト部材41のネジ41bに係合して前後方向へガイドされる固定部材43とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の座席後部側に配設されるロールバーを車体に組み付ける構造及び方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、屋根が開放されるオープンカーには、標準的に、車両転倒時等に乗員の頭部を保護して生存空間を確保するために、座席後部側に逆U字状のロールバーが配設されている。このロールバーを車体に組み付ける技術として、特許文献1では、ロールバーと幌とを予め組み立てた構成ユニットを車体に組み付けるが、この場合、ロールバーの左右両下端部のフランジと、このロールバーに固定的に設けられた門形の補強部材の左右両下端部のフランジとが車体に連結されて、ロールバーが車体に組み付けられる。
【0003】
また、特許文献2では、車体の左右のサイドパネル同士を連結する車幅方向に長いクロスバーに1対のロールバーが連結されると共に、フロアパネルに、1対のロールバーの下端部と、1対のロールバーに上端部が夫々固定された1対の支柱の下端部が連結されて、ロールバーが車体に組み付けられる。
【特許文献1】特開平7−277118号公報
【特許文献2】特開平11−115662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2のロールバーの組み付け構造のように、ロールバーとクロスバーとを予め連結して構成したロールバーユニットを車体に組み付ける場合、そのロールバーユニットのロールバーとクロスバー間の組み付け誤差や、ロールバーユニットと車体間の組み付け誤差等により、1対のロールバーの下端部をフロアパネルの所定部位に対して位置決め固定し、更に、クロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルの所定部位に対して位置決め固定することが難しくなり、無理にロールバーユニットを車体に組み付けると、ロールバーの組み付け剛性を確保できなくなる虞もある。
【0005】
つまり、ロールバーユニットと車体との連結について、前記誤差を吸収することができずに連結不良が起こる虞があり、これを回避するために、多くは、手間のかかる微調整(例えば、シムを部材間に挟み込んで行う調整)が必要となる。このように、ロールバーユニットを車体に対して車幅方向、更には上下方向、更には前後方向へ簡単に且つ確実に位置決めして組み付けることが非常に難しく、その結果、ロールバーユニットの組み付け負荷が増大し、このロールバーを備えた車両の量産効率が低くなる。尚、特許文献1のロールバーの組み付け構造では、上記の課題を解決できる構成ではない。
【0006】
本発明の目的は、ロールバー(ロールバーユニット)を車体に対して簡単に且つ確実に位置決めして組み付けることができ、組み付け負荷を軽減し、ロールバーを備えた車両の量産効率を高めること、等である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の車両用ロールバーの組み付け構造は、左右の車体側壁を構成するサイドパネルと、左右のサイドパネル間に配設されると共にこれらサイドパネル同士を連結して車両床面を形成するフロアパネルとを備えた車体に、そのフロアパネルの上側において左右のサイドパネル同士を連結する車幅方向に長いクロスバーと車両の座席後部側に配設されるロールバーとを予め連結して構成したロールバーユニットを組み付ける構造であって、前記ロールバーユニットのロールバーの下端部をフロアパネルに対して少なくとも車幅方向に位置決めすると共に上下方向から締結固定する1対のロールバー位置決め固定機構と、前記ロールバーユニットのクロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルに対して夫々前後方向から締結固定する1対のクロスバー固定機構とを備えたことを特徴とする。
【0008】
この車両用ロールバーの組み付け構造は、クロスバーとロールバーとを予め連結して構成したロールバーユニットを、左右のサイドパネルとフロアパネルとを備えた車体に組み付ける構造である。ロールバーユニットを車体に組み付ける場合、1対の位置決め固定機構により、ロールバーの下端部がフロアパネルに対して少なくとも車幅方向に位置決めされて上下方向から締結固定される。つまり、ロールバーの下端部をフロアパネルの所定部位に対して簡単に且つ確実に位置決めすることができ、それ故、クロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルの所定部位に対して夫々簡単に且つ確実に位置決めすることができ、この状態で、1対のクロスバー固定機構により、クロスバーの車幅方向両端部が左右のサイドパネルに対して夫々前後方向から締結固定される。
【0009】
請求項1の発明においては、次の構成を採用可能である。
前記ロールバー位置決め固定機構は、フロアパネルに対して固定されてフロアパネル上に突出する位置決め部材と、ロールバーの下端部に固定的に設けられ前記位置決め部材に係合して前後方向へガイドされる固定部材とを有する(請求項2)。前記位置決め部材は上向き姿勢で配設されたボルト部材からなり、そのネジ部にナットを螺合させることにより、ネジ部に係合された固定部材を固定する(請求項3)。
【0010】
前記車体はフロアパネルに沿って車幅方向に延びるクロスメンバーを備え、このクロスメンバーに前記位置決め部材を固定的に設ける(請求項4)。前記左右のサイドパネルに開閉式の屋根を支持する1対のリンクブラケットが夫々固定され、これらリンクブラケットを介してクロスバーの両端部が左右のサイドパネルに夫々連結される(請求項5)。
【0011】
請求項6の車両用ロールバーの組み付け構造は、左右の車体側壁を構成するサイドパネルと、左右のサイドパネル間に配設されると共にこれらサイドパネル同士を連結して車両床面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車幅方向に延びるクロスメンバーとを備えた車体に、車両の座席後部側に配設されるロールバーを組み付ける構造であって、前記ロールバーの下端部をクロスメンバーに位置決めすると共に上下方向から締結固定するために、フロアパネル上に突出する少なくとも1対の位置決め部材をクロスメンバーに固定的に設け、これら位置決め部材に夫々係合する少なくとも1対の固定部材をロールバーの下端部に固定的に設けたことを特徴とする。
【0012】
この車両用ロールバーの組み付け構造は、ロールバーを、左右のサイドパネルとフロアパネルとクロスメンバーとを備えた車体に組み付ける構造である。クロスメンバーには、フロアパネル上に突出する少なくとも1対の位置決め部材が固定的に設けられ、ロールバーの下端部には、少なくとも1対の位置決め部材に夫々係合する少なくとも1対の固定部材が固定的に設けられている。ロールバーを車体に組み付ける場合、少なくとも1対の固定部材が少なくとも1対の位置決め部材に夫々係合した状態で、ロールバーの下端部がクロスメンバーに位置決めされて上下方向から締結固定される。つまり、ロールバーの下端部をクロスメンバーの所定部位に簡単に且つ確実に位置決めすることができ、例えば、請求項1のように、クロスバーとロールバーとを予め連結して構成したロールバーユニットを車体に組み付ける構造にも適用することができる。
【0013】
請求項7の車両用ロールバーの組み付け方法は、左右の車体側壁を構成するサイドパネルと、左右のサイドパネル間に配設されると共にこれらサイドパネル同士を連結して車両床面を形成するフロアパネルとを備えた車体に、車両の座席後部側に配設されるロールバーを組み付ける方法であって、前記フロアパネルの上側において左右のサイドパネル同士を連結する車幅方向に長いクロスバーと前記ロールバーとを予め連結してロールバーユニットを組み立てる第1ステップと、次に、フロアパネルに対して固定されてフロアパネル上に突出する1対の位置決め部材に、ロールバーの下端部に固定的に設けられた1対の固定部材を夫々係合させて、ロールバーの下端部をフロアパネルに対して少なくとも車幅方向に位置決めする第2ステップと、次に、クロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルに対して夫々前後方向から締結固定する第3ステップとを備えたことを特徴とする。
【0014】
この車両用ロールバーの組み付け方法では、先ず、第1ステップにおいて、車両外部で例えば専用の治具を用いて、クロスバーとロールバーとを予め連結してロールバーユニットを簡単に組み立てることができる。次に、第2ステップにおいて、フロアパネルに対して固定されてフロアパネル上に突出する1対の位置決め部材に、ロールバーの下端部に固定的に設けられた1対の固定部材を夫々係合させて、ロールバーの下端部をフロアパネルの所定部位に対して簡単に且つ確実に位置決めすることができる。これにより、クロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルの所定部位に対して夫々簡単に且つ確実に位置決めすることができ、次に、第3ステップにおいて、クロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルに対して夫々前後方向から締結固定することができる。
【0015】
請求項7の発明においては、前記第2ステップにおいて、フロアパネルに沿って車幅方向に延びるクロスメンバーに固定的に設けた位置決め部材に前記固定部材を係合させるようにしてもよい(請求項8)。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の車両用ロールバーの組み付け構造によれば、クロスバーとロールバーとを予め連結して構成したロールバーユニットを、左右のサイドパネルとフロアパネルとを備えた車体に組み付けるものであり、1対のロールバー位置決め固定機構を設けたことにより、ロールバーの下端部をフロアパネル対して少なくとも車幅方向に位置決めして上下方向から締結固定することができる。つまり、ロールバーの下端部をフロアパネルの所定部位に対して簡単に且つ確実に位置決めすることができ、それ故、クロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルの所定部位に対して夫々簡単に且つ確実に位置決めすることができ、この状態で、1対のクロスバー固定機構により、クロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルに対して夫々前後方向から締結固定することができる。
【0017】
ここで、ロールバーユニットのロールバーとクロスバー間の組み付け誤差や、ロールバーユニットと車体間の組み付け誤差が生じた場合でも、ロールバーの下端部をフロアパネルの所定部位に対して確実に位置決めすることができるため、ロールバーユニットと車体の連結について、例えば、これらをボルト結合する場合には、そのボルト穴を大きめに形成したり長穴に形成することにより、前記誤差を吸収して連結することが可能になり、手間のかかる位置決め微調整(例えば、シムを部材間に挟み込んで行う調整)も不要になる。つまり、ロールバーユニットの組み付け負荷を大幅に軽減でき、このロールバーを備えた車両の量産効率を大幅に向上させることができ、そのうえ、ロールバーユニットと車体との連結強度を高め、ロールバーの組み付け剛性を確保することが可能になる。
【0018】
請求項2の車両用ロールバーの組み付け構造によれば、ロールバー位置決め固定機構は、フロアパネルに対して固定されてフロアパネル上に突出する位置決め部材と、ロールバーの下端部に固定的に設けられ位置決め部材に係合して前後方向へガイドされる固定部材とを有するので、フロアパネルに対するロールバーの下端部の位置決めについて、固定部材を位置決め部材に係合させて車幅方向に確実に行うことができ、また、ロールバーユニットの自重により固定部材をフロアパネルに当接させて上下方向にも確実に行い、しかも、ロールバーの下端部を固定部材を介してフロアパネルに対して上下方向から簡単、確実に締結することができる。
【0019】
請求項3の車両用ロールバーの組み付け構造によれば、位置決め部材は上向き姿勢で配設されたボルト部材からなり、そのネジ部にナットを螺合させることにより、ネジ部に係合された固定部材を固定するので、この位置決め部材(ボルト部材)を、位置決め用としてだけでなく締結用として兼用して、ロールバー締結固定機構を簡単化できる。
【0020】
請求項4の車両用ロールバーの組み付け構造によれば、車体はフロアパネルに沿って車幅方向に延びるクロスメンバーを備え、このクロスメンバーに位置決め部材を固定的に設けたので、ロールバーの下端部を車体に強固に連結することができ、車両転倒時等に乗員の頭部を保護して生存空間を確保するロールバーの機能を高めることができる。しかも、クロスメンバーを車体に組み付ける前の車外において、このクロスメンバーに1対の位置決め部材を取り付けて、それら位置決め部材間の間隔管理(調整)を正確に行うことができるため、より高い精度でロールバーユニットを車体に組み付けることが可能になる。また、クロスメンバーのフランジを使用し、そのフランジに1対の位置決め部材を簡単に間隔調整して取り付けることが可能になる。
【0021】
請求項5の車両用ロールバーの組み付け構造によれば、左右のサイドパネルに開閉式の屋根を支持する1対のリンクブラケットを夫々固定し、これらリンクブラケットを介してクロスバーの両端部を左右のサイドパネルに夫々連結したので、クロスバーをサイドパネルに連結する部材を別途設けることなく、これらの連結構造を簡単化できる。また、ロールバーの下端部をフロアパネルに対して車幅方向に位置決めできるため、リンクブラケットにクロスバーが干渉することなく、これらの連結を円滑に行うことが可能になる。
【0022】
請求項6の車両用ロールバーの組み付け構造によれば、ロールバーを、左右のサイドパネルとフロアパネルとクロスメンバーとを備えた車体に組み付けるものであり、フロアパネル上に突出する少なくとも1対の位置決め部材をクロスメンバーに固定的に設け、これら位置決め部材に夫々係合する少なくとも1対の固定部材をロールバーの下端部に固定的に設けたので、ロールバーの下端部をクロスメンバーに位置決めして上下方向から締結固定することができる。つまり、ロールバーの下端部をクロスメンバーの所定部位に簡単に且つ確実に位置決めすることができ、例えば、請求項1のように、クロスバーとロールバーとを予め連結して構成したロールバーユニットを車体に組み付ける構造にも適用することができ、この場合、請求項1と同様の効果を奏する。
【0023】
また、クロスメンバーに対するロールバーの下端部の位置決めについて、位置決め部材に対する固定部材の係合方向を前後方向とすることにより、車幅方向に確実に行うことができ、また、ロールバーの自重により固定部材をフロアパネルに上側から当接させて上下方向にも確実に行い、しかも、ロールバーの下端部を固定部材を介してフロアパネルに対して上下方向から簡単、確実に締結することができる。しかも、少なくとも1対の位置決め部材をクロスメンバーに固定的に設けたので、クロスメンバーを車体に組み付ける前の車外において、このクロスメンバーに少なくとも1対の位置決め部材を取り付けて、それら位置決め部材間の間隔管理(調整)を正確に行うことができるため、より高い精度でロールバーを車体に組み付けることが可能になる。また、クロスメンバーのフランジを使用し、そのフランジに少なくとも1対の位置決め部材を簡単に間隔調整して取り付けることが可能になる。
【0024】
請求項7の車両用ロールバーの組み付け方法によれば、第1ステップを設けたことにより、先ず、車両外部で例えば専用の治具を用いて、クロスバーとロールバーとを予め連結してロールバーユニットを簡単に組み立てることができ、第2ステップを設けたことにより、次に、フロアパネルに対して固定されてフロアパネル上に突出する1対の位置決め部材に、ロールバーの下端部に固定的に設けられた1対の固定部材を夫々係合させて、ロールバーの下端部をフロアパネルに対して簡単に且つ確実に位置決めでき、これにより、クロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルの所定部位に対して夫々簡単に且つ確実に位置決めすることができ、第3ステップを設けたことにより、次に、クロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルに対して夫々前後方向から締結固定することができる。
【0025】
請求項8の車両用ロールバーの組み付け方法によれば、第2ステップにおいて、フロアパネルに沿って車幅方向に延びるクロスメンバーに固定的に設けた位置決め部材に固定部材を係合させるので、ロールバーの下端部を車体に強固に連結でき、車両転倒時等に乗員の頭部を保護して生存空間を確保するロールバーの機能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明の車両用ロールバーの組み付け構造は、左右の車体側壁を構成するサイドパネルと、左右のサイドパネル間に配設されると共にこれらサイドパネル同士を連結して車両床面を形成するフロアパネルとを備えた車体に、そのフロアパネルの上側において左右のサイドパネル同士を連結する車幅方向に長いクロスバーと車両の座席後部側に配設されるロールバーとを予め連結して構成したロールバーユニットを組み付ける構造であり、前記ロールバーユニットのロールバーの下端部をフロアパネルに対して少なくとも車幅方向に位置決めすると共に上下方向から締結固定する1対のロールバー位置決め固定機構と、前記ロールバーユニットのクロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルに対して夫々前後方向から締結固定する1対のクロスバー固定機構とを備えたものである。
【実施例】
【0027】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
本実施例は、2シータで屋根が開放されるオープンカーである車両1(自動車1)に、本発明を適用した場合の一例である。
図1は、本発明の車両用ロールバーの組み付け構造を備えた車両1の内部の斜視図であり、図2は、同車両1の内部の左側面図である。
【0028】
図1、図2に示すように、車両1の車体2は、車室の床面を形成するフロアパネル3と、フロアパネル3の後端部から上方且つ後方へ傾斜状に延びるキックアップパネル4と、キックアップパネル4の上端部から後方へ延びて荷室の床面を形成するリヤフロアパネル5と、左右の車体側壁(車体外側面及び車室側内側面)を構成するサイドパネル6とを備えている。リヤフロアパネル5は左右のサイドパネル6のインナパネル21間に配設され、このリヤフロアパネル6により左右のインナパネル21同士が連結されている。
【0029】
また、車両1の車体2には、車体補強フレームとして、フロアパネル3の左右両端に連結された前後方向に延びる1対のサイドシル7と、キックアップパネル4の上端部とリヤフロアパネル5の前端部に結合されリヤフロアパネル5に沿って車幅方向に延びるクロスメンバー8が設けられている。クロスメンバー8は、キックアップパネル4及びリヤフロアパネル5とで閉断面に形成され、このクロスメンバー8の車幅方向中央部分に、前後方向に長いバックボーンフレーム9の後端部が連結されている。
【0030】
この車両1には左右1対のシート10(座席10)が装備されるが、フロアパネル3には、各シート10に対応させて、前側シートブラケット11と後側シートブラケット12が設けられ、これらシートブラケット11,12にシート10(図1では左側のシート10のみを図示)が取り付けられている。本実施例の車両用ロールバーの組み付け構造及びその組み付け方法は、1対のシート10の後部側に夫々配設される左右1対の逆U字状のロールバー13を前記車体2に組み付ける構造及び方法である。
【0031】
左右のサイドパネル6には、開閉式の屋根である幌14又はリトラクタブルハードトップ(図示略)を回動自在に支持するリンクブラケット15が夫々固定されている。各リンクブラケット15には、幌14を開閉する為のリンク16,17の基端部が回動自在に取り付けられている。図2では、幌14が折り畳まれ、その幌14とリンク16,17が幌格納部18に格納された状態を示している。尚、この幌格納部18の下側において、キックアップパネル4とクロスメンバー8の後側に燃料タンク19が設けられている。
【0032】
次に、車両用ロールバーの組み付け構造について説明する。
図1〜図9に示すように、この車両用ロールバーの組み付け構造は、車体2に、そのリヤフロアパネル5の上側において左右のサイドパネル6同士を連結する車幅方向に長いクロスバー30と左右1対のロールバー13とを予め連結して構成したロールバーユニット29を組み付ける構造であり、そのために、ロールバーユニット29の1対のロールバー13の下端部をリヤフロアパネル5に対して夫々車幅方向と上下方向に位置決めすると共に上下方向から締結固定する1対のロールバー位置決め固定機構40と、ロールバーユニット29のクロスバー30の車幅方向両端部を左右のサイドパネル6に対して夫々前後方向から締結固定する1対のクロスバー固定機構50とを備えている。
【0033】
尚、この車両用ロールバーの組み付け構造には、クロスバー30の下側において、各ロールバー13とそのロールバー13に近い方のインナパネル21とを連結すると共に、各ロールバー13とクロスメンバー8とを連結する連結部材60が設けられている。
【0034】
ここで、サイドパネル6について説明すると、図13に示すように、各サイドパネル6は、車体外側面を構成するアウタパネル20と、車室側内側面を構成するインナパネル21と、アウタパネル20とインナパネル21の間に配設されてそれらパネル20,21の少なくとも一方を補強するレインフォースメント22等で構成されている。尚、レインフォースメント23も設けられている。本実施例の場合、各サイドパネル6のうち、連結部材60が連結される部分がリヤピラー部2aとなり、そのリヤピラー部2a付近がアウタパネル20及びインナパネル21とレインフォースメント22を含む構成となり、そこではアウタパネル20とインナパネル21間の車幅方向間隔は比較的広い間隔になる。
【0035】
さて、図1〜図4に示すように、1対のロールバー13は左右対称に構成され、各ロールバー13は、1本の丸パイプをU字状に成形し、逆U字状で上下方向に延び、その上部がクロスバー30よりも上側へ突出してシート10のヘッドレストの後側に位置するように配設されている。各ロールバー13は、Uターン状に大きく曲げられたロールバー上方部13aと、このロールバー上方部13aから下方へ延びる左右のロールバー外方部13b及びロールバー内方部13cとを有する。
【0036】
ロールバー外方部13bはロールバー内方部13cよりも下側に長く延び、その途中部分がクロスバー30に貫通状に連結され、クロスバー30の下側において少し前方へ向かって斜め下側へ傾斜し、その下端部がロールバー位置決め固定機構40によりリヤフロアパネル5に対して位置決めされ上下方向から締結固定されている。ロールバー内方部13cは、その下端部分がクロスバー30から下方へ大きく突出しない程度にクロスバー30に貫通状に連結されている。
【0037】
図3〜図9に示すように、クロスバー30は、後方へ開放する断面コ字形の前方側クロスバー部材31と後方側クロスバー部材32を有し、これら部材31,32のフランジ同士が溶接により接合さて閉断面が形成されている。前方側クロスバー部材31の車幅方向両端部には、夫々、その上壁部31a及び下壁部31bに、後方に開口する円弧凹部33aが形成され、その円弧凹部33aの前側の縦壁部31cに上下1対のボルト穴34aが形成されている。
【0038】
また、前方側クロスバー部材31の車幅方向両端部には、夫々、ボルト穴34aよりも車幅方向外側に、縦壁部31cの延長部となるフランジ部31dが形成され、そのフランジ部31dに上下1対のボルト穴35が形成されている。1対の円弧凹部33aよりも車幅方向内側において、その上壁部31a及び下壁部31bに左右1対の孔部36が形成され、これら孔部36に1対のロールバー13のロールバー内方部13cが夫々貫通する。
【0039】
後方側クロスバー部材32の車幅方向両端部には、夫々、前方へ張り出すロールバー支持部32aが設けられ、その上壁部32b及び下壁部32cに、前方に開口する円弧凹部33bが形成され、その円弧凹部33bの後側の縦壁部32dに上下1対のボルト穴34bが形成されている。前方側クロスバー部材31と後方側クロスバー部材32が接合されると、1対の円弧凹部33aと1対の円弧凹部33bとで左右1対の孔部33が形成され、これら孔部33に1対のロールバー13のロールバー外方部13bが夫々貫通する。
【0040】
ロールバー13とクロスバー30との連結について詳しく説明すると、図4に示すように、ロールバー内方部13cと前方側クロスバー部材31の上壁部31aと下壁部31bとは、孔部36の外周縁部に沿って溶接され、また、ロールバー外方部13bと前方側クロスバー部材31の上壁部31aと下壁部31bとは、孔部33の外周縁部に沿って溶接され、更に、図8、図9に示すように、ロールバー外方部13bとクロスバー30は、クロスバー固定機構50の1対のボルト51及びナット52により結合されている。
【0041】
尚、ボルト穴34a,34bは、このボルト穴34a,34bを挿通するボルト51の径よりも大径に形成され、ボルト穴35は、このボルト穴35を挿通するボルト53の径よりも大径に形成されている。
【0042】
次に、各クロスバー固定機構50について説明する。
図7〜図9に示すように、各クロスバー固定機構50は、車幅方向内側の上下2組のボルト51及びナット52と、車幅方向外側の上下2組のボルト53及びナット54を有し、これらボルト51,53とナット52,54により、クロスバー30の端部がリンクブラケット15に前後方向から締結固定され、このリンクブラケット15を介してサイドパネル6に連結されている。
【0043】
図8、図9に示すように、リンクブラケット15は、例えば、3つの部材15a〜15cで構成され、部材15aがサイドパネル6の内面に固定され、部材15bが部材15aに固定されて後方且つ車幅方向内側へ延び、この部材15aの内端部分に、クロスバー30の車幅方向外端部を前方側から受け止める受止部15dが形成され、その受止部15dにクロスバー30がボルト50及びナット51で連結されている。また、部材15bの前端部に部材15cに固定されて後方且つ車幅方向内側へ延び、この部材15cの内端部にクロスバー30のフランジ部31dを前方側から受け止める受止部15eが形成され、その受止部15eにフランジ部31dがボルト53及びナット54で連結されている。
【0044】
次に、各ロールバー位置決め固定機構40について説明する。
図1、図2、図10〜図12に示すように、各ロールバー位置決め固定機構40は、リヤフロアパネル5に対して固定されてリヤフロアパネル5上に突出する位置決め部材に相当するボルト部材41と、このボルト部材41のネジ部41bに螺合するナット42と、ロールバー13のロールバー外方部13bの下端部に固定的に設けられボルト部材41に係合して前後方向へガイドされる固定部材43と、ボルト部材41以外の2つのボルト44と、これらボルト44に夫々螺合するナット45とを有する。
【0045】
ボルト部材41は、その頭部41aがクロスメンバー8の内側にくるように上向き姿勢で配設され、頭部41aがクロスメンバー8の上端後部のフランジ8aの下面に溶接されて、このクロスメンバー8に固定的にボルト部材41が設けられている。クロスメンバー8のフランジ8aにはボルト穴8bが形成され、そのボルト穴8bと一致するようにリヤフロアパネル5にボルト穴5aが形成され、ボルト部材41のネジ部41bはそのボルト穴8b,5aを挿通して上方へ延びリヤフロアパネル5の上側へ突出している。
【0046】
固定部材43は、リヤフロアパネル5の上面に接するほぼ三角形状の底板部43aと、その底板部43aの外周部から立ち上がる外周フランジ部43bと、底板部43aの中央部分から立ち上がる環状の中央フランジ部43cと、ボルト部材41のネジ部41bに係合する係合部43dと、ネジ部41bが係合部43dに係合するようにネジ部41bに案内される案内部43eとを有する。
【0047】
中央フランジ部43cにロールバー外方部13bの下端部が内嵌され、ロールバー13に対して固定部材43が適切な高さとなるように調節され溶接により固定されている。ここで、固定部材43に外周フランジ部43bを形成したことにより、固定部材43の強度・剛性を高めることができ、この固定部材43を介してロールバー外方部13bの下端部とクロスメンバー8とを確実に連結することができる。
【0048】
底板部43aには、その後側部分に前後方向に長い長穴状に切り欠いた係合部43dが形成され、その係合部43dの後側に係合部43dの後端部に連なるように後方広がりハ字状の案内部43eが形成されている。また、底板部43aには、その前側部分に左右1対のボルト穴43fが形成され、これらボルト穴43fに対応するボルト穴5bがリヤフロアパネル5に形成されている。尚、1対のナット45は夫々ボルト穴5bと一致するように、リヤフロアパネル5の下面に予め溶接されている。
【0049】
そして、1対のボルト部材41のネジ部41bに1対の固定部材43の係合部43dが夫々係合され、各固定部材43において、例えば、係合部43dの前端部にネジ部41bが近接した状態で、1対のボルト穴43fがリヤフロアパネル5の1対のボルト穴5bと一致し、この状態で、ネジ41bに上側からナット42が螺合されると共に、1対のボルト44が夫々ボルト穴43f,5bを上側から挿通されナット45に螺合されて、この固定部材43がリヤフロアパネル5とクロスメンバー8に固定されている。尚、ボルト穴43fは、このボルト穴43fを挿通するボルト44の径よりも大径に形成されている。
【0050】
連結部材60について説明すると、図10に示すように、連結部材60は、クロスバー30の下側において、ロールバー13をサイドパネル6とクロスメンバー8に連結する部材であり、この連結部材60は金属製の丸パイプ基材を成形して形成されている。連結部材60の長さ方向途中部が圧縮成形され平板状に形成されて、ロールバー13のロールバー外方部13bに固定されたブラケット61にボルト62で連結されている。
【0051】
連結部材60の車幅方向内端部が圧縮成形され平板状に形成されて、クロスメンバー8にボルト63により連結され、連結部材60の車幅方向外端部がフランジ部材70に溶接されている。このフランジ部材70は側面視にて長円形(小判形)に形成され、前方下がりに傾斜するように配設され、その後上部の内面に連結部材60が固着され、その前下部がインナパネル21にボルト71により連結されている。
【0052】
次に、車両用ロールバーの組み付け方法について、図14の工程図に基づいて説明する。この車両用ロールバーの組み付け方法は、リヤフロアパネル5、左右のサイドパネル6、クロスメンバー8を備えた車体2に、1対のロールバー13を組み付ける方法であり、ロールバー13を組み付けるにあたって、左右のリンクブラケット15、1対のボルト部材41は、既に、車体2に組み付けられているものとする。
【0053】
この車両用ロールバーの組み付け方法では、先ず、第1工程(P1)において、リヤフロアパネル5の上側において左右のサイドパネル6同士を連結する車幅方向に長いクロスバー30と1対のロールバー13とを予め連結してロールバーユニット29を組み立てる。この場合、図15に示すように、クロスバー30の前方側クロスバー部材31と後方側クロスバー部材32を分離した状態で、先ず、矢印Aで示すように、各ロールバー13のロールバー内方部13cを前方側クロスバー部材31の孔部36に上側から挿入する。その際、ロールバー外方部13bを前方側クロスバー部材31よりも後側に位置させる。
【0054】
次に、矢印Bで示すように、各ロールバー13をロールバー内方部13cを中心に回動させ、ロールバー外方部13bを前方側クロスバー部材31の円弧凹部34aに嵌合させる。その際、ロールバー外方部13bに貫通状に固定された上下1対の前後方向向きの筒状スペーサ37がボルト穴34aと一致するように高さ調節する。次に、矢印Cで示すように、前方側クロスバー部材31に後方側クロスバー部材32を組み合わせると、これらの対向する円弧凹部34a,34bで孔部34が形成され、その孔部34にロールバー外方部13bが貫通した状態となる。
【0055】
前方側クロスバー部材31に後方側クロスバー部材32を組み合わせた後、又は、組み合わせる前に、各ロールバー13と前方側クロスバー部材31(後方側クロスバー部材32)とを必要な箇所に溶接を施して結合する。また、各ロールバー13のロールバー外方部13bにブラケット61を固定すると共に、ロールバー外方部13bの下端部に固定部材43を固定する。この場合、ロールバー外方部13bの下端部は固定部材43の中央フランジ部43cに内嵌され高さ調節した状態で溶接により固定される。こうして、図16に示すロールバーユニット29を構成する。
【0056】
次に、第2工程(P2)において、リヤフロアパネル5に対して固定されてフロアパネル5上に突出する1対のボルト部材41に、1対のロールバー13の下端部に固定的に設けられた1対の固定部材43を係合させて、ロールバー13の下端部をリヤフロアパネル5に対して車幅方向と上下方向に位置決めし、また、リンクブラケット15にクロスメンバー8を係合させる。この場合、例えば、ロールバーユニット29を少し前傾姿勢にした状態で、各固定部材43の案内部43eにボルト部材41のネジ41bを係合させてから、ロールバーユニット29を鉛直姿勢に戻しつつ後方へ押しつける。
【0057】
その際、各固定部材43の案内部43eがネジ41bに案内されて、係合部43dがネジ41bに確実に係合して、固定部材43が前後方向にガイドされる。それ故、ロールバーユニット29がリヤフロアパネル5に対して車幅方向に位置決めされる。また、ロールバーユニット29が鉛直姿勢になると、各固定部材43がリヤフロアパネル5に当接して、ロールバーユニット29がリヤフロアパネル5に対して上下方向に位置決めされ、また、クロスバー30のフランジ部31dがリンクブラケット15の受止部15eに前側から受け止められて、ロールバーユニット29が前後方向に位置決めされる。
【0058】
こうして、ロールバーユニット29が位置決めされた状態では、この組み付けによる誤差が多少生じたとしても、クロスバー30のボルト穴34a,34b、35は、ボルト51、53の径よりも大径に形成されていることもあり、ボルト穴34a,34b、35とリンクブラケット15側のボルト穴は一致し、また、固定部材43のボルト穴43fは、このボルト穴43fを挿通するボルト44の径よりも大径に形成されていることもあり、ボルト穴43fとクロスメンバー8側のボルト穴8bは一致する。
【0059】
次に、第3工程(P3)において、ボルト穴34a,34bにボルト51を挿通させてナット52と螺合させると共に、ボルト穴35にボルト53を挿通させてナット54と螺合させて、クロスバー30の車幅方向両端部を左右のサイドパネル6に固定されたリンクブラケット15に夫々前後方向から締結固定する。
【0060】
次に、第4工程(P4)において、ボルト穴43f,5bにボルト44を挿通させてナット45と螺合させると共に、ボルト部材41のネジ41bにナット42を螺合させて、リヤフロアパネル5に対して固定部材43を固定し、その後、第5工程(P5)において、各連結部材60を、前記のように、ロールバー13とサイドパネル6とクロスメンバー8に固定して、終了する。
【0061】
以上説明した車両用ロールバーの組み付け構造及びその組み付け方法によれば、次の作用・効果を奏する。
1対のロールバー位置決め固定機構40を設けたことにより、ロールバーユニット29の1対のロールバー13(ロールバー外方部13b)の下端部をリヤフロアパネル5対して車幅方向と上下方向に位置決めして上下方向から締結固定することができる。つまり、1対のロールバー13の下端部をリヤフロアパネル5の所定部位に対して簡単に且つ確実に位置決めすることができ、それ故、クロスバー30の車幅方向両端部を左右のサイドパネル6に固定のリンクブラケット15の所定部位に夫々簡単に且つ確実に位置決めすることができ、この状態で、1対のクロスバー固定機構50により、クロスバー30の車幅方向両端部を左右のリンクブラケット15に夫々前後方向から締結固定することができる。
【0062】
ロールバーユニット29のロールバー30と1対のクロスバー13間の組み付け誤差や、ロールバーユニット29と車体2間の組み付け誤差が生じた場合でも、1対のロールバー13の下端部をリヤフロアパネル5の所定部位に対して確実に位置決めすることができるため、ロールバーユニット29と車体2の連結について、これらをボルト結合する場合のボルト穴34a,34b、35,43fを大きめに形成することにより、前記誤差を吸収して連結することが可能になり、手間のかかる位置決め微調整(例えば、シムを部材間に挟み込んで行う調整)も不要になる。つまり、ロールバーユニット29の組み付け負荷を大幅に軽減でき、このロールバー13を備えた車両1の量産効率を大幅に向上させることができ、そのうえ、ロールバーユニット29と車体2との連結強度を高め、ロールバー13の組み付け剛性を確保することが可能になる。
【0063】
ロールバー位置決め固定機構40は、リヤフロアパネル5に対して固定されてリヤフロアパネル5上に突出するボルト部材41と、ロールバー13の下端部に固定的に設けられボルト部材41のネジ41bに係合して前後方向へガイドされる固定部材43とを有するので、リヤフロアパネル5に対するロールバー13の下端部の位置決めについて、固定部材43をネジ41bに係合させて車幅方向に確実に行うことができ、また、ロールバーユニット29の自重により固定部材43をリヤフロアパネル5に当接させて上下方向にも確実に行い、しかも、ロールバー13の下端部を固定部材43を介してリヤフロアパネル5に対して上下方向から簡単、確実に締結することができる。
【0064】
ボルト部材41を、位置決め用としてだけでなく締結用として兼用して、ロールバー締結固定機構40を簡単化できる。車体2はリヤフロアパネル5に沿って車幅方向に延びるクロスメンバー8を備え、このクロスメンバー8にボルト部材41を固定的に設けたので、ロールバー13の下端部を車体に強固に連結することができ、車両転倒時等に乗員の頭部を保護して生存空間を確保するロールバー13の機能を高めることができる。しかも、クロスメンバー8を車体2に組み付ける前の車外において、このクロスメンバー8に1対のボルト部材41を取り付けて、それらボルト部材41間の間隔管理(調整)を正確に行うことができるため、より高い精度でロールバーユニット29を車体2に組み付けることが可能になる。また、クロスメンバー8のフランジ8aを使用し、そのフランジ8aに1対のボルト部材41を簡単に間隔調整して取り付けることが可能になる。
【0065】
左右のサイドパネル6に開閉式の幌14を支持する1対のリンクブラケット15を夫々固定し、これらリンクブラケット15を介してクロスバー30の両端部を左右のサイドパネル6に夫々連結したので、クロスバー30をサイドパネル6に連結する部材を別途設けることなく、これらの連結構造を簡単化できる。また、ロールバー13の下端部をリヤフロアパネル5に対して車幅方向に位置決めできるため、リンクブラケット15にクロスバー30が干渉することなく、これらの連結を円滑に行うことが可能になる。
【0066】
前記実施例を次のように変更可能である。
1]リヤフロアパネル5の上側に車幅方向に延びるクロスメンバーを設け、このクロスメンバーに、ロールバー位置決め固定機構によりロールバーユニットのロールバーの下端部を車幅方向に位置決めすると共に上下方向から締結固定する。
2]位置決め部材としては、締結用として兼用されるボルト部材を適用せずに、位置決め機能のみ有するピン部材を適用する。
3]クロスバー固定機構により、クロスバー30の車幅方向両端部をリンクブラケット15を介さずに、左右のサイドパネル6に直接的に連結する。
【0067】
4]クロスバー30を省略して、ロールバー13の下端部をクロスメンバー8に位置決めすると共に上下方向から締結固定する。そのために、リヤフロアパネル5上に突出する少なくとも1対の位置決め部材をクロスメンバー8に固定的に設け、これら位置決め部材に夫々係合する少なくとも1対の固定部材をロールバー13の下端部に固定的に設ける。
5]本発明は、前記実施例のような2シータのオープンカー以外に、ロールバーを備えた種々の車両において、その車体にロールバーを組み付ける構造・方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の車両用ロールバーの組み付け構造を備えた車両内部の斜視図である。
【図2】車両内部の左側面図である。
【図3】クロスバーの斜視図である。
【図4】ロールバーとクロスバーの正面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】クロスバーの分解斜視図である。
【図7】リンクブラケットとクロスバーの連結構造を示す斜視図である。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】ロールバー位置決め固定機構を含む連結構造を示す斜視図である
【図11】ロールバーとロールバー位置決め固定機構の斜視図である。
【図12】図11のXII −XII 線断面図である。
【図13】サイドパネルの横断面図である。
【図14】車両用ロールバーの組み付け方法の工程図である。
【図15】ロールバーユニットの組み立て段階の斜視図である。
【図16】ロールバーユニットの正面図である。
【符号の説明】
【0069】
1 車両
2 車体
5 リヤフロアパネル
6 サイドパネル
8 クロスメンバー
10 シート
13 ロールバー
15 リンクブラケット
30 クロスバー
40 ロールバー位置決め固定機構
41 ボルト部材
41b ネジ部
43 固定部材
50 クロスバー固定機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の車体側壁を構成するサイドパネルと、左右のサイドパネル間に配設されると共にこれらサイドパネル同士を連結して車両床面を形成するフロアパネルとを備えた車体に、そのフロアパネルの上側において左右のサイドパネル同士を連結する車幅方向に長いクロスバーと車両の座席後部側に配設されるロールバーとを予め連結して構成したロールバーユニットを組み付ける構造であって、
前記ロールバーユニットのロールバーの下端部をフロアパネルに対して少なくとも車幅方向に位置決めすると共に上下方向から締結固定する1対のロールバー位置決め固定機構と、
前記ロールバーユニットのクロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルに対して夫々前後方向から締結固定する1対のクロスバー固定機構と、
を備えたことを特徴とする車両用ロールバーの組み付け構造。
【請求項2】
前記ロールバー位置決め固定機構は、フロアパネルに対して固定されてフロアパネル上に突出する位置決め部材と、ロールバーの下端部に固定的に設けられ前記位置決め部材に係合して前後方向へガイドされる固定部材とを有することを特徴とする請求項1に記載の車両用ロールバーの組み付け構造。
【請求項3】
前記位置決め部材は上向き姿勢で配設されたボルト部材からなり、そのネジ部にナットを螺合させることにより、ネジ部に係合された固定部材を固定することを特徴とする請求項2に記載の車両用ロールバーの組み付け構造。
【請求項4】
前記車体はフロアパネルに沿って車幅方向に延びるクロスメンバーを備え、このクロスメンバーに前記位置決め部材を固定的に設けたことを特徴とする請求項2に記載の車両用ロールバーの組み付け構造。
【請求項5】
前記左右のサイドパネルに開閉式の屋根を支持する1対のリンクブラケットが夫々固定され、これらリンクブラケットを介してクロスバーの両端部が左右のサイドパネルに夫々連結されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の車両用ロールバーの組み付け構造。
【請求項6】
左右の車体側壁を構成するサイドパネルと、左右のサイドパネル間に配設されると共にこれらサイドパネル同士を連結して車両床面を形成するフロアパネルと、このフロアパネルに沿って車幅方向に延びるクロスメンバーとを備えた車体に、車両の座席後部側に配設されるロールバーを組み付ける構造であって、
前記ロールバーの下端部をクロスメンバーに位置決めすると共に上下方向から締結固定するために、フロアパネル上に突出する少なくとも1対の位置決め部材をクロスメンバーに固定的に設け、これら位置決め部材に夫々係合する少なくとも1対の固定部材をロールバーの下端部に固定的に設けたことを特徴とする車両用ロールバーの組み付け構造。
【請求項7】
左右の車体側壁を構成するサイドパネルと、左右のサイドパネル間に配設されると共にこれらサイドパネル同士を連結して車両床面を形成するフロアパネルとを備えた車体に、車両の座席後部側に配設されるロールバーを組み付ける方法であって、
前記フロアパネルの上側において左右のサイドパネル同士を連結する車幅方向に長いクロスバーと前記ロールバーとを予め連結してロールバーユニットを組み立てる第1ステップと、
次に、フロアパネルに対して固定されてフロアパネル上に突出する1対の位置決め部材に、ロールバーの下端部に固定的に設けられた1対の固定部材を夫々係合させて、ロールバーの下端部をフロアパネルに対して少なくとも車幅方向に位置決めする第2ステップと、
次に、クロスバーの車幅方向両端部を左右のサイドパネルに対して夫々前後方向から締結固定する第3ステップと、
を備えたことを特徴とする車両用ロールバーの組み付け方法。
【請求項8】
前記第2ステップにおいて、フロアパネルに沿って車幅方向に延びるクロスメンバーに固定的に設けた位置決め部材に前記固定部材を係合させることを特徴とする請求項7に記載の車両用ロールバーの組み付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−21607(P2006−21607A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−200706(P2004−200706)
【出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】