車両用交流発電機
【課題】整流装置の冷却性の確保とコスト低減が可能な車両用交流発電機を提供すること。
【解決手段】車両用交流発電機1は、回転子2と、回転子2と対向配置された固定子3と、回転子2と固定子3とを支持するフレーム4と、フレーム4に固定されて整流素子の冷却と電気的接続を行う放熱フィン51、53を有する整流装置5と、整流装置5を経由して回転子2側に冷却風を吸入する冷却ファン12とを備えている。放熱フィン53は、一方の面に形成された凹部534と他方の面であって凹部534の反対側の同じ位置に形成された凸部532とからなる複数のサブフィン530を有する。
【解決手段】車両用交流発電機1は、回転子2と、回転子2と対向配置された固定子3と、回転子2と固定子3とを支持するフレーム4と、フレーム4に固定されて整流素子の冷却と電気的接続を行う放熱フィン51、53を有する整流装置5と、整流装置5を経由して回転子2側に冷却風を吸入する冷却ファン12とを備えている。放熱フィン53は、一方の面に形成された凹部534と他方の面であって凹部534の反対側の同じ位置に形成された凸部532とからなる複数のサブフィン530を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用交流発電機に用いられる整流装置には正極側放熱フィンと負極側放熱フィンが備わっており、それぞれに取り付けられた整流素子の冷却が行われる。例えば、これらの放熱フィンとして、プレス成型にて貫通した丸穴や長丸穴を設けることにより放熱面積を増加させ、これらの穴に冷却風を通して放熱する構造(例えば、特許文献1参照。)や、ダイカスト成型にて放射方向に薄いサブ放熱フィンを多数設けることにより放熱面積を大幅に増加させ、サブ放熱フィン間に冷却風を通して放熱する構造(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3775235号公報(第3−6頁、図1−8)
【特許文献2】特許第3707477号公報(第5−9頁、図1−12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示された丸穴や長丸穴を設けた放熱フィンを用いる整流装置では、プレス成型を行う型の制約上、貫通した穴と穴の間隔はある程度確保する必要があり、ダイカスト成型品なみの放熱面積の増加は期待できない。また、丸穴や長丸穴を増やしすぎると、放熱フィンの熱容量が減少することになるため、放熱能力が低下することになる。このように、特許文献1に開示された構造の整流装置では冷却性能のさらなる向上が難しいという問題があった。
【0005】
上述した特許文献2に開示されたサブ放熱フィンを設けた放熱フィンを用いる整流装置では、隣接するサブフィン間や型分割部分にバリが発生し、その除去に時間や手間を要するため、プレス成型品に比べて工数増によるコスト上昇につながるという問題があった。また、整流素子を圧入固定する部分については精度が必要なため、切削加工が必要になり、さらにコストが上昇する。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、整流装置の冷却性の確保とコスト低減が可能な車両用交流発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用交流発電機は、回転子と、回転子と対向配置された固定子と、回転子と固定子とを支持するフレームと、フレームに固定されて整流素子の冷却と電気的接続を行う放熱フィンを有する整流装置と、整流装置を経由して回転子側に冷却風を吸入する冷却風発生装置とを備える車両用交流発電機において、放熱フィンは、一方の面に形成された凹部と他方の面であって凹部の反対側の同じ位置に形成された凸部とからなる複数のサブフィンを有している。また、上述した放熱フィンは、板材により構成されており、凹部と凸部は、プレス成型により同時に形成されることが望ましい。
【0008】
凹部と凸部の位置を合わせることにより、板材のプレス成型によりサブフィンを形成することが可能となる。これにより、丸穴や長丸穴を形成する場合に比べて放熱面積を拡大することができるとともに、熱容量の減少を防止することができるため、冷却性能の向上が可能となる。また、プレス成型によりサブフィンを形成する場合には、隣接するサブフィン間などにバリが発生しないため、その除去に時間や手間を要することもなく、コスト低減が可能となる。
【0009】
また、上述した複数のサブフィンは、回転子の回転軸に対して放射状に形成されていることが望ましい。これにより、回転軸を中心としてサブフィンに沿って効率よく冷却風を導入することが可能となり、冷却性能をさらに向上させることが可能となる。
【0010】
また、上述した回転軸を中心としたサブフィンの径方向端部において、凹部の深さおよび凸部の高さが徐々に変化していることが望ましい。これにより、サブフィンの端部において乱流が発生することを防止することができ、冷却風を効率よく流すことによる冷却性能の向上が可能となる。
【0011】
また、上述したサブフィンの一方の径方向端部は、放熱フィンの内周端部および外周端部のいずれか一方まで延在しており、サブフィンの他方の径方向端部において、凹部の深さおよび凸部の高さが徐々に変化していることが望ましい。サブフィンの一方の端部を放熱フィンの内周端部あるいは外周端部まで延在させることにより、この一方の端部において冷却風の流れを円滑にすることができ、冷却性能を上げることができる。
【0012】
また、上述した放熱フィンは、凹部の底面の一部に形成された貫通穴を有することが望ましい。あるいは、上述した放熱フィンは、凹部の底面の一部に形成された切り欠きを有することが望ましい。これにより、凹部の内部を通して確実に冷却風を流すことが可能になり、放熱フィンの放熱効果を高めることができる。
【0013】
また、上述した凹部の深さおよび凸部の高さは、放熱フィンの板厚未満であることが望ましい。これにより、凹部に相当する材料を押し上げて凸部を形成するだけで容易にサブフィンを形成することができるとともに、凹部と凸部の間に放熱フィンの材料を残すことにより放熱フィンの強度を確保することができる。
【0014】
また、上述した凹部の幅は、凸部の幅よりも広いことが望ましい。これにより、板材を打ち抜くことなく変形させてサブフィンを形成することが容易となる。
【0015】
また、上述した放熱フィンは、整流素子が取り付けられた主フィンと、主フィンの外周側に突出した補助フィンとを有し、補助フィンに複数のサブフィンが形成されていることが望ましい。複数のサブフィンが設けられた補助フィンを主フィンの外周側に配置することにより、外周側から主フィンに流れ込む冷却風の流れを円滑にすることができ、内周側に配置された主フィンに取り付けられた整流素子の周囲に効率よく冷却風を流すことができる。
【0016】
また、上述した主フィンと補助フィンとの間に、勾配を有する段差が形成されていることが望ましい。段差を付けることにより、高所(上流側)から低所(下流側)に向けて冷却風の流れを促すことができ、補助フィンに到達した冷却風を効率よく主フィン側に導くことができる。また、段差を設けることにより、主フィンと補助フィンからなる放熱フィンの強度を増すことができ、主フィンに取り付けられた整流素子に作用する応力を低減することができる。
【0017】
また、上述した主フィンは、整流素子と補助フィンとの間に形成された貫通穴を有することが望ましい。これにより、補助フィンに設けられた複数のサブフィンに沿って流れる冷却風を、主フィンに設けられた貫通穴を通して裏側に流すことができ、サブフィンと貫通穴の両方による放熱面積の拡大による冷却性能の向上が可能となる。また、この貫通穴を整流素子と補助フィンとの間に設けることにより、整流素子の近傍を効率よく冷却することができる。
【0018】
また、上述した回転子の回転軸を中心とした周方向位置が、隣接する2つのサブフィンの間となるように、貫通穴が配置されていることが望ましい。これにより、サブフィン間を通して流れる冷却風の向きを変えることなく貫通穴に向けて流すことができ、貫通穴を通して裏側に流れる冷却風の通風抵抗を減らすことができ、貫通穴を通して流れる冷却風の風量を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の全体構造を示す断面図である。
【図2】整流装置の平面図である。
【図3】整流装置の裏面図である。
【図4】図3のIV−IV線拡大断面図である。
【図5】負極側放熱フィンの斜視図である。
【図6】図5のP部を拡大した部分的な斜視図である。
【図7】サブフィン周辺各部の寸法を示す図である。
【図8】凸部と凹部の外径側の形状を徐々に変化させた変形例を示す部分的な断面図である。
【図9】凹部の底部に貫通穴を設けたサブフィンの変形例を示す断面図である。
【図10】凹部の底部に切り欠きを設けたサブフィンの変形例を示す断面図である。
【図11】負極側放熱フィンと正極側放熱フィンの両方を板材をプレス成型した変形例を示す整流装置の正面図である。
【図12】正極側放熱フィンと負極側放熱フィンのそれぞれに形成したサブフィンの組合せを示す図である。
【図13】正極側放熱フィンの外周側に補助フィンを設けてサブフィンを形成した変形例を示す整流装置の正面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線に対応する断面図である。
【図15】図14のQ部の部分拡大図である。
【図16】図13のXVI−XVI線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、一実施形態の車両用交流発電機の全体構造を示す断面図である。同図に示すように、本実施形態の車両用交流発電機1は、回転子2、固定子3、フレーム4、整流装置5等を含んで構成されている。
【0022】
回転子2は、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻き回した界磁コイル8を、それぞれが複数個の爪部を有するポールコア7によって、回転軸6を通して両側から挟み込んだ構成を有している。また、フロント側のポールコア7の端面には、フロント側から吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すために冷却ファン11が溶接等によって取り付けられている。同様に、リヤ側のポールコア7の端面には、リヤ側から吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すために遠心式の冷却ファン12が溶接等によって取り付けられている。この冷却ファン12が、整流装置5を経由して回転子2側に冷却風を吸入する冷却風発生装置に対応する。
【0023】
また、回転軸6のリヤ側端部近傍には、界磁コイル8の両端に電気的に接続された2つのスリップリング61、62が形成されており、これらのスリップリング61、62を介してブラシ装置70から界磁コイル8に対して給電が行われる。固定子3は、回転子2と対向配置され、固定子鉄心32と固定子巻線31とを備えている。
【0024】
フレーム4は、回転子2および固定子3を収容しており、回転子2が回転軸6を中心に回転可能な状態で支持されているとともに、回転子2のポールコア7の外周側に所定の隙間を介して配置された固定子3が固定されている。また、フレーム4は、固定子3のコイルエンドに対向した部分に冷却風の吐出穴42が、軸方向端面に吸入穴41がそれぞれ設けられている。
【0025】
整流装置5は、三相の固定子巻線31の出力電圧である三相交流電圧を整流して直流の出力電力を得るためのものである。この整流装置5は、フレーム4に固定されており、正極側整流素子が取り付けられてこの正極側整流素子に対する冷却と電気的接続を行う正極側放熱フィン51と、負極側整流素子が取り付けられてこの負極側整流素子に対する冷却と電気的接続を行う負極側放熱フィン53と、正極側整流素子と負極側整流素子とを結線する接続ターミナルが埋設された端子台と、正極側放熱フィン51に設けられた出力端子57とを備えている。整流装置5の詳細については後述する。
【0026】
ブラシ装置70は、整流装置5から回転子2の界磁コイル8に励磁電流を流すためのものであり、回転子2の回転軸6に形成されたスリップリング61、62のそれぞれに押圧するブラシ71、72を有する。リヤカバー80は、リヤ側のフレーム4の外側に取り付けられるブラシ装置70、整流装置5、ICレギュレータ74等の電気部品を覆って、これらを保護するためのものである。
【0027】
上述した構造を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジン(図示せず)からの回転力が伝えられると回転子2が所定方向に回転する。この状態で回転子2の界磁コイル8に外部から励磁電圧を印加することにより、ポールコア7のそれぞれの爪部が励磁され、固定子巻線31に三相交流電圧を発生させることができ、整流装置5の出力端子57からは所定の直流電流が取り出される。
【0028】
次に、整流装置5の詳細について詳細に説明する。図2は、整流装置5の平面図である。また、図3は整流装置5の裏面図である。これらの図に示すように、整流装置5は、軸方向に2段に重ねられた正極側放熱フィン51および負極側放熱フィン53と、正極側放熱フィン51に取り付けられた複数の正極側整流素子52と、負極側放熱フィン53に取り付けられた複数の負極側整流素子54と、端子台55等からなる。
【0029】
端子台55は、正極側放熱フィン51および負極側放熱フィン53のそれぞれを支持するとともにこれらの間を電気的に絶縁する樹脂製絶縁部材(例えばPPS樹脂)からなり、固定子4で発生する交流電圧を正極側整流素子52および負極側整流素子54に導くための電気導体であるターミナル56を一体樹脂成型により内蔵している。正極側整流素子52と負極側整流素子54は、それぞれのリード部52a、54aが異極性の放熱フィンに向くように配置されている。例えば、正極側整流素子52は、正極側放熱フィン51の貫通した取付穴に打ち込み固定されており、負極側整流素子54は、負極側放熱フィン53の貫通した取付穴に打ち込み固定されている。正極側整流素子52および負極側整流素子54のそれぞれのリード部52a、54aが端子台55のターミナル56に電気接続され、全波整流ブリッジ回路が形成されている。
【0030】
本実施形態では、2組の三相全波整流ブリッジ回路を形成するよう、正極側放熱フィン51には6個の正極側整流素子52が、負極側放熱フィン53には6個の負極側整流素子54がそれぞれ配置されている。そして、正極側放熱フィン51の端部に取り付けられた出力端子57から直流出力が取り出される。
【0031】
また、正極側放熱フィン51には、主に正極側整流素子52の周囲であって、正極側整流素子52のリード部52aと反対側の面に、この面と垂直な向きに突出し、整流装置5を車両用交流発電機1に組み付けた際に回転軸6を中心とした放射状に延在する複数のサブフィン510が形成されている。この正極側放熱フィン51はアルミニウムあるいはアルミニウム合金を用いたダイカスト成型によって形成されており、正極側放熱フィン51を形成する際に上述した複数のサブフィン510が同時に形成される。
【0032】
また、負極側放熱フィン53には、主に隣接する負極側整流素子54の間であって、負極側整流素子54のリード部54aと反対の面に、この面と垂直な向きに突出し、整流装置5を車両用交流発電機1に組み付けた際に回転軸6を中心とした放射状に延在する複数のサブフィン530が形成されている。この負極側放熱フィン53は、上述した正極側放熱フィン51とは異なり、アルミニウムの板材を用いたプレス成型によって形成されており、負極側放熱フィン53を形成する際に上述した複数のサブフィン530が同時に形成される。
【0033】
図4は、図3のIV−IV線拡大断面図である。図5は、負極側放熱フィン53の斜視図であり、負極側整流素子54が打ち込まれる前の状態が示されている。図6は、図5のP部を拡大した部分的な斜視図である。図7は、サブフィン530周辺各部の寸法を示す図である。これらの図に示すように、負極側放熱フィン53に設けられたサブフィン530は、負極側放熱フィン53の一方の面に形成された凸部532と、他方の面であって凸部532と対応する位置に形成された凹部534からなっている。これらの凸部532と凹部534は、所定の板厚t(図7)の負極側放熱フィン53に対してプレス成型を行うことにより同時に形成される。板厚tの負極側放熱フィン53のプレス成型前の面に対して、一方の面に突出する凸部532が形成され、他方の面に凹部534が形成される。なお、凸部532と凹部534の形成は、所定の外形形状および負極側整流素子54の取付穴の形成と同時に行うことが望ましいが、後工程において凸部532と凹部534を追加するようにしてもよい。
【0034】
また、凹部534の深さH1(図7)と凸部532の高さH2(図7)はともに負極側放熱フィン53の板厚t未満であり、凹部534の幅W2(図7)は凸部532の幅W1(図7)よりもわずかに広く設定されている。このように凹部534の深さH1と凸部532の高さH2を設定することにより、凹部534に相当する材料を押し上げて凸部532を形成するだけで容易にサブフィン530を形成することができる。また、凹部534と凸部532の間に負極側放熱フィン53の材料を残すことにより負極側放熱フィン53の強度を確保することができる。また、このように凹部534の幅W2と凸部532の幅W1を設定することにより、板材を打ち抜くことなく変形させてサブフィン530を形成することが容易となる。
【0035】
また、上述したサブフィン530すなわち凸部532と凹部534は、一方の径方向端部である内径側が負極側放熱フィン53の内周端部まで延在しており、凹部534の内径側には負極側放熱フィン53の内周側空間につながる開口が存在し、内径側を開放した形状となっている。これにより、サブフィン530内径側の端部において冷却風の流れを円滑にすることができ、冷却性能を上げることができる。
【0036】
このように、本実施形態の車両用交流発電機1に備わった整流装置5では、凹部534と凸部532の位置を合わせることにより、板材のプレス成型によりサブフィン530を形成することが可能となる。これにより、丸穴や長丸穴を形成する場合に比べて負極側放熱フィン53の放熱面積を拡大することができるとともに、熱容量の減少を防止することができるため、冷却性能の向上が可能となる。また、プレス成型によりサブフィン530を形成する場合には、隣接するサブフィン530間などにバリが発生しないため、その除去に時間や手間を要することもなく、コスト低減が可能となる。また、サブフィン530を回転軸6に対して放射状に形成することにより、回転軸6を中心としてサブフィン530に沿って効率よく冷却風を導入することが可能となり、冷却性能をさらに向上させることが可能となる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、負極側放熱フィン53のサブフィン530を構成する凸部532や凹部534の他方の径方向端部である外径側の形状については特に説明しなかったが、負極側放熱フィン53の表面と垂直な面で径方向端部を構成する場合の他、外径側にいくにしたがって凸部532の高さを徐々に低くするとともに、凹部534の深さを徐々に浅くするようにしてもよい。
【0038】
図8は、凸部532と凹部534の外径側の形状を徐々に変化させた変形例を示す部分的な断面図である。図8に示すように、凸部532の外径側は、高さが直線状に徐々に低くなるテーパ形状を有している。同様に、凹部534の外径側は、深さが直線状に徐々に浅くなるテーパ形状を有している。
【0039】
また、図8に示す矢印Aは、回転子2のリヤ側に設けられた冷却ファン12の回転によって生じる冷却風の流れを示している。冷却風は、一部がリヤカバー80に設けられた軸方向吸入穴82を通して、他の一部がリヤカバー80に設けられた径方向吸入穴84あるいはリヤカバー80とフレーム4の間の隙間を通してリヤカバー80内に取り込まれる。
【0040】
軸方向吸入穴82から取り込まれた冷却風は、正極側放熱フィン51のサブフィン510の間を通って負極側放熱フィン53の表面近傍に到達し、さらに凹部534を含むこの表面近傍に沿って内周側に進行した後に吸入穴41からフレーム4内に吸い込まれる。凹部534の外径側がテーパ形状に形成されているため、このような冷却風の流れにおいて、凹部534の外径側端部において冷却風の流れを円滑にすることができ、この外径側端部において乱流が発生することを防止することができる。
【0041】
一方、径方向吸入穴84あるいはリヤカバー80とフレーム4の間の隙間から取り込まれた冷却風は、負極側放熱フィン53の裏面側に導入され、凸部532を含むこの裏面近傍に沿って内周側に進行した後に吸入穴41からフレーム内に吸い込まれる。凸部532の外径側がテーパ形状に形成されているため、このような冷却風の流れにおいて、凸部532の外径側端部に衝突する冷却風の流れを円滑にすることができ、この外径側端部において乱流が発生することを防止することができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、図5に示すように、負極側放熱フィン53の外周端部をフレーム4側に湾曲させたが、反フレーム側、すなわち、リヤカバー80の軸方向吸入穴82(図8)から取り込まれる冷却風の通風経路側に湾曲させるようにしてもよい。この場合には、軸方向吸入穴82から取り込まれた冷却風を負極側放熱フィン53の表面側に効率よく導入することができる。特に、負極側放熱フィン53の外周端部とリヤカバー80の内周面との間の隙間が広い場合に、この隙間に冷却風が流れにくくして負極側放熱フィン53を優先的に冷却することが可能となる。
【0043】
また、上述した実施形態では、凹部534を負極側放熱フィン53の内周端部まで延在させることにより凹部534の内径側を開放した形状としたが、凹部534を負極側放熱フィン53の内周端部まで延在させる代わりに凹部534の底部に貫通穴や切り欠きを形成し、これらの貫通穴や切り欠きを通して冷却風を流すようにしてもよい。
【0044】
図9は、凹部の底部に貫通穴を設けたサブフィンの変形例を示す断面図である。図9に示すサブフィン530Aは、凸部532Aと凹部534Aからなっている。この基本的な構造は、上述したサブフィン530と同じである。しかし、この変形例の凹部534Aは、内径側が負極側放熱フィン53の内周側空間に直接開放してはおらず、負極側放熱フィン53の板厚部分が残っている。また、凹部534Aの内径寄りの一部に貫通穴536が形成されており、その分だけ凸部532Aの径方向長さが短くなっている。凹部534Aの内部に進入した冷却風(矢印B)はこの貫通穴536を通して負極側放熱フィン53の裏面側に流れる。これにより、凹部534の内部を通して冷却風を流すことが可能になり、負極側放熱フィン53の放熱効果を高めることができる。
【0045】
図10は、凹部の底部に切り欠きを設けたサブフィンの変形例を示す断面図である。図10に示すサブフィン530Bは、凸部532Bと凹部534Bからなっている。この基本的な構造は、上述したサブフィン530と同じである。しかし、この変形例の凹部534Bの底部には、内径側に切り欠き538が設けられており、その分だけ凸部532Bの径方向長さが短くなっている。凹部534Bの内部に進入した冷却風(矢印C)はこの切り欠き538を通して負極側放熱フィン53の裏面側に流れる。これにより、凹部534Bの内部を通して冷却風を流すことが可能になり、負極側放熱フィン53の放熱効果を高めることができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、負極側放熱フィン53のみを板材をプレス成型して形成したが、正極側放熱フィン51のみを板材をプレス成型して形成したり、負極側放熱フィン53と正極側放熱フィン51の両方を板材をプレス成型して形成するようにしてもよい。
【0047】
図11は、負極側放熱フィンと正極側放熱フィンの両方を板材をプレス成型した変形例を示す整流装置の正面図である。図11に示す整流装置5Aは、正極側放熱フィン51Aと負極側放熱フィン53を含んで構成されている。この整流装置5Aは、図2に示した整流装置5に対して、正極側放熱フィン51を正極側放熱フィン51Aに置き換えた点が異なっている。正極側放熱フィン51Aは、負極側放熱フィン53と同様に、アルミニウムの板材を用いたプレス成型によって形成されている。正極側放熱フィン51Aを形成する際に、整流装置5Aを車両用交流発電機に組み付けた際に回転軸6を中心としたほぼ放射状に延在する複数のサブフィン510Aが同時に形成される。なお、変形例では、正極側放熱フィン51Aのプレス成型と、複数のサブフィン510Aのプレス成型とを別々に行うようにしてもよい。
【0048】
複数のサブフィン510Aは、正極側放熱フィン51Aの内周側と外周側のそれぞれに分離した状態で形成されている。それぞれのサブフィン510Aは、図4等に示したサブフィン530と基本的に同じ構造を有しており、正極側放熱フィン51Aの一方の面(リヤカバー80側)に形成された凸部と、他方の面であってこの凸部と対応する位置に形成された凹部からなっている。なお、サブフィン510Aは、内周側のみ、あるいは、外周側のみに形成するようにしてもよい。
【0049】
ところで、板材を用いたプレス成型によって正極側放熱フィン51Aと負極側放熱フィン53のそれぞれにサブフィン510A、530を形成した場合に、それらの位置と向きの組み合わせは4通りが考えられる。
【0050】
図12は、正極側放熱フィン51Aと負極側放熱フィン53のそれぞれに形成したサブフィン510A、530の組合せを示す図である。図12(A)に示す例では、それぞれのサブフィン510A、530の凹部が対向しており、凸部が互いに反対側に配置されている。図12(B)に示す例では、サブフィン530の凹部とサブフィン510Aの凸部が対向しており、サブフィン530の凸部とサブフィン510Aの凹部が互いに反対側に配置されている。図12(C)に示す例では、サブフィン530の凸部とサブフィン510Aの凹部が対向しており、サブフィン530の凹部とサブフィン510Aの凸部が互いに反対側に配置されている。図12(D)に示す例では、それぞれのサブフィン510A、530の凸部が対向しており、凹部が互いに反対側に配置されている。なお、これらの例は、サブフィン530とサブフィン510Aの周方向位置が一致している場合であり、周方向位置をずらすようにしてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、負極側放熱フィン53については、内径側に凹部534の一方端側を開放したサブフィン530を設けたが、外径側に凹部の一方端側を開放したサブフィンを設けたり、これら2種類のサブフィンを両方とも設けるようにしてもよい。
【0052】
図13は、正極側放熱フィンの外周側に補助フィンを設けてサブフィンを形成した変形例を示す整流装置の正面図である。また、図14は図13のXIV−XIV線に対応する断面図であり、図8に対応する車両用交流発電機の部分的な断面が示されている。図15は、図14のQ部の部分拡大図である。図16は、図13のXVI−XVI線拡大断面図である。
【0053】
図13〜図16に示す整流装置5Bは、正極側放熱フィン51Bと負極側放熱フィン53を含んで構成されている。この整流装置5Bは、図2に示した整流装置5に対して、正極側放熱フィン51を正極側放熱フィン51Bに置き換えた点が異なっている。正極側放熱フィン51Bは、負極側放熱フィン53と同様にアルミニウムの板材を用いたプレス成型によって形成されており、正極側整流素子52が取り付けられた主フィン51B1と、主フィン51B1の外周側に突出した3つの補助フィン51B2とを有する。補助フィン51B2には、回転軸6を中心とした放射状に延在する複数のサブフィン510Bが形成されている。複数のサブフィン510Bが設けられた補助フィン51B2を主フィン51B1の外周側に配置することにより、外周側から主フィン51B1に流れ込む冷却風の流れ(図15において矢印で示されている)を円滑にすることができ、内周側に配置された主フィン51B1に取り付けられた正極側整流素子52の周囲に効率よく冷却風を流すことができる。
【0054】
また、図15に示すように、主フィン51B1と補助フィン51B2との間には、勾配を有する段差520が形成されている。この段差520は、補助フィン51B2の内径側端部に形成されており、図15に示す例では、この内径側端部の段差520の勾配に一致するように、サブフィン510Bを構成する凹部の深さや凸部の高さが徐々に変化している。段差520を設けることにより、高所(上流側)から低所(下流側)に向けて冷却風の流れを促すことができ、補助フィン51B2に到達した冷却風を効率よく主フィン51B1側に導くことができる。また、段差520を設けることにより、主フィン51B1と補助フィン51B2からなる正極側放熱フィン51Bの強度を増すことができ、主フィン51B1に取り付けられた正極側整流素子52に作用する応力を低減することができる。
【0055】
さらに、図13に示すように、主フィン51B1には、正極側整流素子52と補助フィン51B2との間に貫通穴522が形成されている。これにより、補助フィン51B2に設けられた複数のサブフィン510Bに沿って流れる冷却風を、主フィン51B1に設けられた貫通穴522を通して裏側に流すことができ、サブフィン51B2と貫通穴522の両方による放熱面積の拡大による冷却性能の向上が可能となる。また、この貫通穴522を正極側整流素子52と補助フィン51B2との間に設けることにより、正極側整流素子52の近傍を効率よく冷却することができる。また、この貫通穴522は、回転軸6を中心としたその周方向位置が、隣接する2つのサブフィン510Bの間となるように配置されている。これにより、サブフィン510B間を通して流れる冷却風の向きを変えることなく貫通穴522に向けて流すことができ、貫通穴522を通して裏側に流れる冷却風の通風抵抗を減らすことができ、貫通穴522を通して流れる冷却風の風量を増すことができる。
【0056】
ところで、上述した変形例では、正極側放熱フィン51Bを主フィン51B1と補助フィン51B2によって構成したが、同様の構成を負極側放熱フィン53について採用するようにしてもよい。また、主フィン51B1と補助フィン51B2の間の段差520や、主フィン51B1に設けられた貫通穴522については適宜省略するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
上述したように、本発明によれば、整流装置5の負極側放熱フィン53において、凹部534と凸部532の位置を合わせることにより、板材のプレス成型によりサブフィン530を形成することが可能となる。これにより、丸穴や長丸穴を形成する場合に比べて放熱面積を拡大することができるとともに、熱容量の減少を防止することができるため、冷却性能の向上が可能となる。また、プレス成型によりサブフィン530を形成する場合には、隣接するサブフィン530間などにバリが発生しないため、その除去に時間や手間を要することもなく、コスト低減が可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 車両用交流発電機
2 回転子
3 固定子
4 フレーム
5 整流装置
6 回転軸
51 正極側放熱フィン
53 負極側放熱フィン
55 端子台
56 ターミナル
57 出力端子
510、530 サブフィン
520 段差
522 貫通穴
532 凸部
534 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用車やトラック等に搭載される車両用交流発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両用交流発電機に用いられる整流装置には正極側放熱フィンと負極側放熱フィンが備わっており、それぞれに取り付けられた整流素子の冷却が行われる。例えば、これらの放熱フィンとして、プレス成型にて貫通した丸穴や長丸穴を設けることにより放熱面積を増加させ、これらの穴に冷却風を通して放熱する構造(例えば、特許文献1参照。)や、ダイカスト成型にて放射方向に薄いサブ放熱フィンを多数設けることにより放熱面積を大幅に増加させ、サブ放熱フィン間に冷却風を通して放熱する構造(例えば、特許文献2参照。)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3775235号公報(第3−6頁、図1−8)
【特許文献2】特許第3707477号公報(第5−9頁、図1−12)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した特許文献1に開示された丸穴や長丸穴を設けた放熱フィンを用いる整流装置では、プレス成型を行う型の制約上、貫通した穴と穴の間隔はある程度確保する必要があり、ダイカスト成型品なみの放熱面積の増加は期待できない。また、丸穴や長丸穴を増やしすぎると、放熱フィンの熱容量が減少することになるため、放熱能力が低下することになる。このように、特許文献1に開示された構造の整流装置では冷却性能のさらなる向上が難しいという問題があった。
【0005】
上述した特許文献2に開示されたサブ放熱フィンを設けた放熱フィンを用いる整流装置では、隣接するサブフィン間や型分割部分にバリが発生し、その除去に時間や手間を要するため、プレス成型品に比べて工数増によるコスト上昇につながるという問題があった。また、整流素子を圧入固定する部分については精度が必要なため、切削加工が必要になり、さらにコストが上昇する。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、整流装置の冷却性の確保とコスト低減が可能な車両用交流発電機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明の車両用交流発電機は、回転子と、回転子と対向配置された固定子と、回転子と固定子とを支持するフレームと、フレームに固定されて整流素子の冷却と電気的接続を行う放熱フィンを有する整流装置と、整流装置を経由して回転子側に冷却風を吸入する冷却風発生装置とを備える車両用交流発電機において、放熱フィンは、一方の面に形成された凹部と他方の面であって凹部の反対側の同じ位置に形成された凸部とからなる複数のサブフィンを有している。また、上述した放熱フィンは、板材により構成されており、凹部と凸部は、プレス成型により同時に形成されることが望ましい。
【0008】
凹部と凸部の位置を合わせることにより、板材のプレス成型によりサブフィンを形成することが可能となる。これにより、丸穴や長丸穴を形成する場合に比べて放熱面積を拡大することができるとともに、熱容量の減少を防止することができるため、冷却性能の向上が可能となる。また、プレス成型によりサブフィンを形成する場合には、隣接するサブフィン間などにバリが発生しないため、その除去に時間や手間を要することもなく、コスト低減が可能となる。
【0009】
また、上述した複数のサブフィンは、回転子の回転軸に対して放射状に形成されていることが望ましい。これにより、回転軸を中心としてサブフィンに沿って効率よく冷却風を導入することが可能となり、冷却性能をさらに向上させることが可能となる。
【0010】
また、上述した回転軸を中心としたサブフィンの径方向端部において、凹部の深さおよび凸部の高さが徐々に変化していることが望ましい。これにより、サブフィンの端部において乱流が発生することを防止することができ、冷却風を効率よく流すことによる冷却性能の向上が可能となる。
【0011】
また、上述したサブフィンの一方の径方向端部は、放熱フィンの内周端部および外周端部のいずれか一方まで延在しており、サブフィンの他方の径方向端部において、凹部の深さおよび凸部の高さが徐々に変化していることが望ましい。サブフィンの一方の端部を放熱フィンの内周端部あるいは外周端部まで延在させることにより、この一方の端部において冷却風の流れを円滑にすることができ、冷却性能を上げることができる。
【0012】
また、上述した放熱フィンは、凹部の底面の一部に形成された貫通穴を有することが望ましい。あるいは、上述した放熱フィンは、凹部の底面の一部に形成された切り欠きを有することが望ましい。これにより、凹部の内部を通して確実に冷却風を流すことが可能になり、放熱フィンの放熱効果を高めることができる。
【0013】
また、上述した凹部の深さおよび凸部の高さは、放熱フィンの板厚未満であることが望ましい。これにより、凹部に相当する材料を押し上げて凸部を形成するだけで容易にサブフィンを形成することができるとともに、凹部と凸部の間に放熱フィンの材料を残すことにより放熱フィンの強度を確保することができる。
【0014】
また、上述した凹部の幅は、凸部の幅よりも広いことが望ましい。これにより、板材を打ち抜くことなく変形させてサブフィンを形成することが容易となる。
【0015】
また、上述した放熱フィンは、整流素子が取り付けられた主フィンと、主フィンの外周側に突出した補助フィンとを有し、補助フィンに複数のサブフィンが形成されていることが望ましい。複数のサブフィンが設けられた補助フィンを主フィンの外周側に配置することにより、外周側から主フィンに流れ込む冷却風の流れを円滑にすることができ、内周側に配置された主フィンに取り付けられた整流素子の周囲に効率よく冷却風を流すことができる。
【0016】
また、上述した主フィンと補助フィンとの間に、勾配を有する段差が形成されていることが望ましい。段差を付けることにより、高所(上流側)から低所(下流側)に向けて冷却風の流れを促すことができ、補助フィンに到達した冷却風を効率よく主フィン側に導くことができる。また、段差を設けることにより、主フィンと補助フィンからなる放熱フィンの強度を増すことができ、主フィンに取り付けられた整流素子に作用する応力を低減することができる。
【0017】
また、上述した主フィンは、整流素子と補助フィンとの間に形成された貫通穴を有することが望ましい。これにより、補助フィンに設けられた複数のサブフィンに沿って流れる冷却風を、主フィンに設けられた貫通穴を通して裏側に流すことができ、サブフィンと貫通穴の両方による放熱面積の拡大による冷却性能の向上が可能となる。また、この貫通穴を整流素子と補助フィンとの間に設けることにより、整流素子の近傍を効率よく冷却することができる。
【0018】
また、上述した回転子の回転軸を中心とした周方向位置が、隣接する2つのサブフィンの間となるように、貫通穴が配置されていることが望ましい。これにより、サブフィン間を通して流れる冷却風の向きを変えることなく貫通穴に向けて流すことができ、貫通穴を通して裏側に流れる冷却風の通風抵抗を減らすことができ、貫通穴を通して流れる冷却風の風量を増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施形態の車両用交流発電機の全体構造を示す断面図である。
【図2】整流装置の平面図である。
【図3】整流装置の裏面図である。
【図4】図3のIV−IV線拡大断面図である。
【図5】負極側放熱フィンの斜視図である。
【図6】図5のP部を拡大した部分的な斜視図である。
【図7】サブフィン周辺各部の寸法を示す図である。
【図8】凸部と凹部の外径側の形状を徐々に変化させた変形例を示す部分的な断面図である。
【図9】凹部の底部に貫通穴を設けたサブフィンの変形例を示す断面図である。
【図10】凹部の底部に切り欠きを設けたサブフィンの変形例を示す断面図である。
【図11】負極側放熱フィンと正極側放熱フィンの両方を板材をプレス成型した変形例を示す整流装置の正面図である。
【図12】正極側放熱フィンと負極側放熱フィンのそれぞれに形成したサブフィンの組合せを示す図である。
【図13】正極側放熱フィンの外周側に補助フィンを設けてサブフィンを形成した変形例を示す整流装置の正面図である。
【図14】図13のXIV−XIV線に対応する断面図である。
【図15】図14のQ部の部分拡大図である。
【図16】図13のXVI−XVI線拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を適用した一実施形態の車両用交流発電機について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は、一実施形態の車両用交流発電機の全体構造を示す断面図である。同図に示すように、本実施形態の車両用交流発電機1は、回転子2、固定子3、フレーム4、整流装置5等を含んで構成されている。
【0022】
回転子2は、絶縁処理された銅線を円筒状かつ同心状に巻き回した界磁コイル8を、それぞれが複数個の爪部を有するポールコア7によって、回転軸6を通して両側から挟み込んだ構成を有している。また、フロント側のポールコア7の端面には、フロント側から吸い込んだ冷却風を軸方向および径方向に吐き出すために冷却ファン11が溶接等によって取り付けられている。同様に、リヤ側のポールコア7の端面には、リヤ側から吸い込んだ冷却風を径方向に吐き出すために遠心式の冷却ファン12が溶接等によって取り付けられている。この冷却ファン12が、整流装置5を経由して回転子2側に冷却風を吸入する冷却風発生装置に対応する。
【0023】
また、回転軸6のリヤ側端部近傍には、界磁コイル8の両端に電気的に接続された2つのスリップリング61、62が形成されており、これらのスリップリング61、62を介してブラシ装置70から界磁コイル8に対して給電が行われる。固定子3は、回転子2と対向配置され、固定子鉄心32と固定子巻線31とを備えている。
【0024】
フレーム4は、回転子2および固定子3を収容しており、回転子2が回転軸6を中心に回転可能な状態で支持されているとともに、回転子2のポールコア7の外周側に所定の隙間を介して配置された固定子3が固定されている。また、フレーム4は、固定子3のコイルエンドに対向した部分に冷却風の吐出穴42が、軸方向端面に吸入穴41がそれぞれ設けられている。
【0025】
整流装置5は、三相の固定子巻線31の出力電圧である三相交流電圧を整流して直流の出力電力を得るためのものである。この整流装置5は、フレーム4に固定されており、正極側整流素子が取り付けられてこの正極側整流素子に対する冷却と電気的接続を行う正極側放熱フィン51と、負極側整流素子が取り付けられてこの負極側整流素子に対する冷却と電気的接続を行う負極側放熱フィン53と、正極側整流素子と負極側整流素子とを結線する接続ターミナルが埋設された端子台と、正極側放熱フィン51に設けられた出力端子57とを備えている。整流装置5の詳細については後述する。
【0026】
ブラシ装置70は、整流装置5から回転子2の界磁コイル8に励磁電流を流すためのものであり、回転子2の回転軸6に形成されたスリップリング61、62のそれぞれに押圧するブラシ71、72を有する。リヤカバー80は、リヤ側のフレーム4の外側に取り付けられるブラシ装置70、整流装置5、ICレギュレータ74等の電気部品を覆って、これらを保護するためのものである。
【0027】
上述した構造を有する車両用交流発電機1は、ベルト等を介してプーリ20にエンジン(図示せず)からの回転力が伝えられると回転子2が所定方向に回転する。この状態で回転子2の界磁コイル8に外部から励磁電圧を印加することにより、ポールコア7のそれぞれの爪部が励磁され、固定子巻線31に三相交流電圧を発生させることができ、整流装置5の出力端子57からは所定の直流電流が取り出される。
【0028】
次に、整流装置5の詳細について詳細に説明する。図2は、整流装置5の平面図である。また、図3は整流装置5の裏面図である。これらの図に示すように、整流装置5は、軸方向に2段に重ねられた正極側放熱フィン51および負極側放熱フィン53と、正極側放熱フィン51に取り付けられた複数の正極側整流素子52と、負極側放熱フィン53に取り付けられた複数の負極側整流素子54と、端子台55等からなる。
【0029】
端子台55は、正極側放熱フィン51および負極側放熱フィン53のそれぞれを支持するとともにこれらの間を電気的に絶縁する樹脂製絶縁部材(例えばPPS樹脂)からなり、固定子4で発生する交流電圧を正極側整流素子52および負極側整流素子54に導くための電気導体であるターミナル56を一体樹脂成型により内蔵している。正極側整流素子52と負極側整流素子54は、それぞれのリード部52a、54aが異極性の放熱フィンに向くように配置されている。例えば、正極側整流素子52は、正極側放熱フィン51の貫通した取付穴に打ち込み固定されており、負極側整流素子54は、負極側放熱フィン53の貫通した取付穴に打ち込み固定されている。正極側整流素子52および負極側整流素子54のそれぞれのリード部52a、54aが端子台55のターミナル56に電気接続され、全波整流ブリッジ回路が形成されている。
【0030】
本実施形態では、2組の三相全波整流ブリッジ回路を形成するよう、正極側放熱フィン51には6個の正極側整流素子52が、負極側放熱フィン53には6個の負極側整流素子54がそれぞれ配置されている。そして、正極側放熱フィン51の端部に取り付けられた出力端子57から直流出力が取り出される。
【0031】
また、正極側放熱フィン51には、主に正極側整流素子52の周囲であって、正極側整流素子52のリード部52aと反対側の面に、この面と垂直な向きに突出し、整流装置5を車両用交流発電機1に組み付けた際に回転軸6を中心とした放射状に延在する複数のサブフィン510が形成されている。この正極側放熱フィン51はアルミニウムあるいはアルミニウム合金を用いたダイカスト成型によって形成されており、正極側放熱フィン51を形成する際に上述した複数のサブフィン510が同時に形成される。
【0032】
また、負極側放熱フィン53には、主に隣接する負極側整流素子54の間であって、負極側整流素子54のリード部54aと反対の面に、この面と垂直な向きに突出し、整流装置5を車両用交流発電機1に組み付けた際に回転軸6を中心とした放射状に延在する複数のサブフィン530が形成されている。この負極側放熱フィン53は、上述した正極側放熱フィン51とは異なり、アルミニウムの板材を用いたプレス成型によって形成されており、負極側放熱フィン53を形成する際に上述した複数のサブフィン530が同時に形成される。
【0033】
図4は、図3のIV−IV線拡大断面図である。図5は、負極側放熱フィン53の斜視図であり、負極側整流素子54が打ち込まれる前の状態が示されている。図6は、図5のP部を拡大した部分的な斜視図である。図7は、サブフィン530周辺各部の寸法を示す図である。これらの図に示すように、負極側放熱フィン53に設けられたサブフィン530は、負極側放熱フィン53の一方の面に形成された凸部532と、他方の面であって凸部532と対応する位置に形成された凹部534からなっている。これらの凸部532と凹部534は、所定の板厚t(図7)の負極側放熱フィン53に対してプレス成型を行うことにより同時に形成される。板厚tの負極側放熱フィン53のプレス成型前の面に対して、一方の面に突出する凸部532が形成され、他方の面に凹部534が形成される。なお、凸部532と凹部534の形成は、所定の外形形状および負極側整流素子54の取付穴の形成と同時に行うことが望ましいが、後工程において凸部532と凹部534を追加するようにしてもよい。
【0034】
また、凹部534の深さH1(図7)と凸部532の高さH2(図7)はともに負極側放熱フィン53の板厚t未満であり、凹部534の幅W2(図7)は凸部532の幅W1(図7)よりもわずかに広く設定されている。このように凹部534の深さH1と凸部532の高さH2を設定することにより、凹部534に相当する材料を押し上げて凸部532を形成するだけで容易にサブフィン530を形成することができる。また、凹部534と凸部532の間に負極側放熱フィン53の材料を残すことにより負極側放熱フィン53の強度を確保することができる。また、このように凹部534の幅W2と凸部532の幅W1を設定することにより、板材を打ち抜くことなく変形させてサブフィン530を形成することが容易となる。
【0035】
また、上述したサブフィン530すなわち凸部532と凹部534は、一方の径方向端部である内径側が負極側放熱フィン53の内周端部まで延在しており、凹部534の内径側には負極側放熱フィン53の内周側空間につながる開口が存在し、内径側を開放した形状となっている。これにより、サブフィン530内径側の端部において冷却風の流れを円滑にすることができ、冷却性能を上げることができる。
【0036】
このように、本実施形態の車両用交流発電機1に備わった整流装置5では、凹部534と凸部532の位置を合わせることにより、板材のプレス成型によりサブフィン530を形成することが可能となる。これにより、丸穴や長丸穴を形成する場合に比べて負極側放熱フィン53の放熱面積を拡大することができるとともに、熱容量の減少を防止することができるため、冷却性能の向上が可能となる。また、プレス成型によりサブフィン530を形成する場合には、隣接するサブフィン530間などにバリが発生しないため、その除去に時間や手間を要することもなく、コスト低減が可能となる。また、サブフィン530を回転軸6に対して放射状に形成することにより、回転軸6を中心としてサブフィン530に沿って効率よく冷却風を導入することが可能となり、冷却性能をさらに向上させることが可能となる。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施形態では、負極側放熱フィン53のサブフィン530を構成する凸部532や凹部534の他方の径方向端部である外径側の形状については特に説明しなかったが、負極側放熱フィン53の表面と垂直な面で径方向端部を構成する場合の他、外径側にいくにしたがって凸部532の高さを徐々に低くするとともに、凹部534の深さを徐々に浅くするようにしてもよい。
【0038】
図8は、凸部532と凹部534の外径側の形状を徐々に変化させた変形例を示す部分的な断面図である。図8に示すように、凸部532の外径側は、高さが直線状に徐々に低くなるテーパ形状を有している。同様に、凹部534の外径側は、深さが直線状に徐々に浅くなるテーパ形状を有している。
【0039】
また、図8に示す矢印Aは、回転子2のリヤ側に設けられた冷却ファン12の回転によって生じる冷却風の流れを示している。冷却風は、一部がリヤカバー80に設けられた軸方向吸入穴82を通して、他の一部がリヤカバー80に設けられた径方向吸入穴84あるいはリヤカバー80とフレーム4の間の隙間を通してリヤカバー80内に取り込まれる。
【0040】
軸方向吸入穴82から取り込まれた冷却風は、正極側放熱フィン51のサブフィン510の間を通って負極側放熱フィン53の表面近傍に到達し、さらに凹部534を含むこの表面近傍に沿って内周側に進行した後に吸入穴41からフレーム4内に吸い込まれる。凹部534の外径側がテーパ形状に形成されているため、このような冷却風の流れにおいて、凹部534の外径側端部において冷却風の流れを円滑にすることができ、この外径側端部において乱流が発生することを防止することができる。
【0041】
一方、径方向吸入穴84あるいはリヤカバー80とフレーム4の間の隙間から取り込まれた冷却風は、負極側放熱フィン53の裏面側に導入され、凸部532を含むこの裏面近傍に沿って内周側に進行した後に吸入穴41からフレーム内に吸い込まれる。凸部532の外径側がテーパ形状に形成されているため、このような冷却風の流れにおいて、凸部532の外径側端部に衝突する冷却風の流れを円滑にすることができ、この外径側端部において乱流が発生することを防止することができる。
【0042】
また、上述した実施形態では、図5に示すように、負極側放熱フィン53の外周端部をフレーム4側に湾曲させたが、反フレーム側、すなわち、リヤカバー80の軸方向吸入穴82(図8)から取り込まれる冷却風の通風経路側に湾曲させるようにしてもよい。この場合には、軸方向吸入穴82から取り込まれた冷却風を負極側放熱フィン53の表面側に効率よく導入することができる。特に、負極側放熱フィン53の外周端部とリヤカバー80の内周面との間の隙間が広い場合に、この隙間に冷却風が流れにくくして負極側放熱フィン53を優先的に冷却することが可能となる。
【0043】
また、上述した実施形態では、凹部534を負極側放熱フィン53の内周端部まで延在させることにより凹部534の内径側を開放した形状としたが、凹部534を負極側放熱フィン53の内周端部まで延在させる代わりに凹部534の底部に貫通穴や切り欠きを形成し、これらの貫通穴や切り欠きを通して冷却風を流すようにしてもよい。
【0044】
図9は、凹部の底部に貫通穴を設けたサブフィンの変形例を示す断面図である。図9に示すサブフィン530Aは、凸部532Aと凹部534Aからなっている。この基本的な構造は、上述したサブフィン530と同じである。しかし、この変形例の凹部534Aは、内径側が負極側放熱フィン53の内周側空間に直接開放してはおらず、負極側放熱フィン53の板厚部分が残っている。また、凹部534Aの内径寄りの一部に貫通穴536が形成されており、その分だけ凸部532Aの径方向長さが短くなっている。凹部534Aの内部に進入した冷却風(矢印B)はこの貫通穴536を通して負極側放熱フィン53の裏面側に流れる。これにより、凹部534の内部を通して冷却風を流すことが可能になり、負極側放熱フィン53の放熱効果を高めることができる。
【0045】
図10は、凹部の底部に切り欠きを設けたサブフィンの変形例を示す断面図である。図10に示すサブフィン530Bは、凸部532Bと凹部534Bからなっている。この基本的な構造は、上述したサブフィン530と同じである。しかし、この変形例の凹部534Bの底部には、内径側に切り欠き538が設けられており、その分だけ凸部532Bの径方向長さが短くなっている。凹部534Bの内部に進入した冷却風(矢印C)はこの切り欠き538を通して負極側放熱フィン53の裏面側に流れる。これにより、凹部534Bの内部を通して冷却風を流すことが可能になり、負極側放熱フィン53の放熱効果を高めることができる。
【0046】
また、上述した実施形態では、負極側放熱フィン53のみを板材をプレス成型して形成したが、正極側放熱フィン51のみを板材をプレス成型して形成したり、負極側放熱フィン53と正極側放熱フィン51の両方を板材をプレス成型して形成するようにしてもよい。
【0047】
図11は、負極側放熱フィンと正極側放熱フィンの両方を板材をプレス成型した変形例を示す整流装置の正面図である。図11に示す整流装置5Aは、正極側放熱フィン51Aと負極側放熱フィン53を含んで構成されている。この整流装置5Aは、図2に示した整流装置5に対して、正極側放熱フィン51を正極側放熱フィン51Aに置き換えた点が異なっている。正極側放熱フィン51Aは、負極側放熱フィン53と同様に、アルミニウムの板材を用いたプレス成型によって形成されている。正極側放熱フィン51Aを形成する際に、整流装置5Aを車両用交流発電機に組み付けた際に回転軸6を中心としたほぼ放射状に延在する複数のサブフィン510Aが同時に形成される。なお、変形例では、正極側放熱フィン51Aのプレス成型と、複数のサブフィン510Aのプレス成型とを別々に行うようにしてもよい。
【0048】
複数のサブフィン510Aは、正極側放熱フィン51Aの内周側と外周側のそれぞれに分離した状態で形成されている。それぞれのサブフィン510Aは、図4等に示したサブフィン530と基本的に同じ構造を有しており、正極側放熱フィン51Aの一方の面(リヤカバー80側)に形成された凸部と、他方の面であってこの凸部と対応する位置に形成された凹部からなっている。なお、サブフィン510Aは、内周側のみ、あるいは、外周側のみに形成するようにしてもよい。
【0049】
ところで、板材を用いたプレス成型によって正極側放熱フィン51Aと負極側放熱フィン53のそれぞれにサブフィン510A、530を形成した場合に、それらの位置と向きの組み合わせは4通りが考えられる。
【0050】
図12は、正極側放熱フィン51Aと負極側放熱フィン53のそれぞれに形成したサブフィン510A、530の組合せを示す図である。図12(A)に示す例では、それぞれのサブフィン510A、530の凹部が対向しており、凸部が互いに反対側に配置されている。図12(B)に示す例では、サブフィン530の凹部とサブフィン510Aの凸部が対向しており、サブフィン530の凸部とサブフィン510Aの凹部が互いに反対側に配置されている。図12(C)に示す例では、サブフィン530の凸部とサブフィン510Aの凹部が対向しており、サブフィン530の凹部とサブフィン510Aの凸部が互いに反対側に配置されている。図12(D)に示す例では、それぞれのサブフィン510A、530の凸部が対向しており、凹部が互いに反対側に配置されている。なお、これらの例は、サブフィン530とサブフィン510Aの周方向位置が一致している場合であり、周方向位置をずらすようにしてもよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、負極側放熱フィン53については、内径側に凹部534の一方端側を開放したサブフィン530を設けたが、外径側に凹部の一方端側を開放したサブフィンを設けたり、これら2種類のサブフィンを両方とも設けるようにしてもよい。
【0052】
図13は、正極側放熱フィンの外周側に補助フィンを設けてサブフィンを形成した変形例を示す整流装置の正面図である。また、図14は図13のXIV−XIV線に対応する断面図であり、図8に対応する車両用交流発電機の部分的な断面が示されている。図15は、図14のQ部の部分拡大図である。図16は、図13のXVI−XVI線拡大断面図である。
【0053】
図13〜図16に示す整流装置5Bは、正極側放熱フィン51Bと負極側放熱フィン53を含んで構成されている。この整流装置5Bは、図2に示した整流装置5に対して、正極側放熱フィン51を正極側放熱フィン51Bに置き換えた点が異なっている。正極側放熱フィン51Bは、負極側放熱フィン53と同様にアルミニウムの板材を用いたプレス成型によって形成されており、正極側整流素子52が取り付けられた主フィン51B1と、主フィン51B1の外周側に突出した3つの補助フィン51B2とを有する。補助フィン51B2には、回転軸6を中心とした放射状に延在する複数のサブフィン510Bが形成されている。複数のサブフィン510Bが設けられた補助フィン51B2を主フィン51B1の外周側に配置することにより、外周側から主フィン51B1に流れ込む冷却風の流れ(図15において矢印で示されている)を円滑にすることができ、内周側に配置された主フィン51B1に取り付けられた正極側整流素子52の周囲に効率よく冷却風を流すことができる。
【0054】
また、図15に示すように、主フィン51B1と補助フィン51B2との間には、勾配を有する段差520が形成されている。この段差520は、補助フィン51B2の内径側端部に形成されており、図15に示す例では、この内径側端部の段差520の勾配に一致するように、サブフィン510Bを構成する凹部の深さや凸部の高さが徐々に変化している。段差520を設けることにより、高所(上流側)から低所(下流側)に向けて冷却風の流れを促すことができ、補助フィン51B2に到達した冷却風を効率よく主フィン51B1側に導くことができる。また、段差520を設けることにより、主フィン51B1と補助フィン51B2からなる正極側放熱フィン51Bの強度を増すことができ、主フィン51B1に取り付けられた正極側整流素子52に作用する応力を低減することができる。
【0055】
さらに、図13に示すように、主フィン51B1には、正極側整流素子52と補助フィン51B2との間に貫通穴522が形成されている。これにより、補助フィン51B2に設けられた複数のサブフィン510Bに沿って流れる冷却風を、主フィン51B1に設けられた貫通穴522を通して裏側に流すことができ、サブフィン51B2と貫通穴522の両方による放熱面積の拡大による冷却性能の向上が可能となる。また、この貫通穴522を正極側整流素子52と補助フィン51B2との間に設けることにより、正極側整流素子52の近傍を効率よく冷却することができる。また、この貫通穴522は、回転軸6を中心としたその周方向位置が、隣接する2つのサブフィン510Bの間となるように配置されている。これにより、サブフィン510B間を通して流れる冷却風の向きを変えることなく貫通穴522に向けて流すことができ、貫通穴522を通して裏側に流れる冷却風の通風抵抗を減らすことができ、貫通穴522を通して流れる冷却風の風量を増すことができる。
【0056】
ところで、上述した変形例では、正極側放熱フィン51Bを主フィン51B1と補助フィン51B2によって構成したが、同様の構成を負極側放熱フィン53について採用するようにしてもよい。また、主フィン51B1と補助フィン51B2の間の段差520や、主フィン51B1に設けられた貫通穴522については適宜省略するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
上述したように、本発明によれば、整流装置5の負極側放熱フィン53において、凹部534と凸部532の位置を合わせることにより、板材のプレス成型によりサブフィン530を形成することが可能となる。これにより、丸穴や長丸穴を形成する場合に比べて放熱面積を拡大することができるとともに、熱容量の減少を防止することができるため、冷却性能の向上が可能となる。また、プレス成型によりサブフィン530を形成する場合には、隣接するサブフィン530間などにバリが発生しないため、その除去に時間や手間を要することもなく、コスト低減が可能となる。
【符号の説明】
【0058】
1 車両用交流発電機
2 回転子
3 固定子
4 フレーム
5 整流装置
6 回転軸
51 正極側放熱フィン
53 負極側放熱フィン
55 端子台
56 ターミナル
57 出力端子
510、530 サブフィン
520 段差
522 貫通穴
532 凸部
534 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子と、前記回転子と対向配置された固定子と、前記回転子と前記固定子とを支持するフレームと、前記フレームに固定されて整流素子の冷却と電気的接続を行う放熱フィンを有する整流装置と、前記整流装置を経由して前記回転子側に冷却風を吸入する冷却風発生装置とを備える車両用交流発電機において、
前記放熱フィンは、一方の面に形成された凹部と他方の面であって前記凹部の反対側の同じ位置に形成された凸部とからなる複数のサブフィンを有することを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項2】
請求項1において、
前記放熱フィンは、板材により構成されており、
前記凹部と前記凸部は、プレス成型により同時に形成されることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記複数のサブフィンは、前記回転子の回転軸に対して放射状に形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項4】
請求項3において、
前記回転軸を中心とした前記サブフィンの径方向端部において、前記凹部の深さおよび前記凸部の高さが徐々に変化していることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項5】
請求項4において、
前記サブフィンの一方の径方向端部は、前記放熱フィンの内周端部および外周端部のいずれか一方まで延在しており、
前記サブフィンの他方の径方向端部において、前記凹部の深さおよび前記凸部の高さが徐々に変化していることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記放熱フィンは、前記凹部の底面の一部に形成された貫通穴を有することを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記放熱フィンは、前記凹部の底面の一部に形成された切り欠きを有することを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記凹部の深さおよび前記凸部の高さは、前記放熱フィンの板厚未満であることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記凹部の幅は、前記凸部の幅よりも広いことを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記放熱フィンは、前記整流素子が取り付けられた主フィンと、前記主フィンの外周側に突出した補助フィンとを有し、
前記補助フィンに前記複数のサブフィンが形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項11】
請求項10において、
前記主フィンと前記補助フィンとの間に、勾配を有する段差が形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項12】
請求項11において、
前記主フィンは、前記整流素子と前記補助フィンとの間に形成された貫通穴を有することを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項13】
請求項12において、
前記回転子の回転軸を中心とした前記貫通穴の周方向位置が、隣接する2つの前記サブフィンの間となるように、前記貫通穴が配置されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項1】
回転子と、前記回転子と対向配置された固定子と、前記回転子と前記固定子とを支持するフレームと、前記フレームに固定されて整流素子の冷却と電気的接続を行う放熱フィンを有する整流装置と、前記整流装置を経由して前記回転子側に冷却風を吸入する冷却風発生装置とを備える車両用交流発電機において、
前記放熱フィンは、一方の面に形成された凹部と他方の面であって前記凹部の反対側の同じ位置に形成された凸部とからなる複数のサブフィンを有することを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項2】
請求項1において、
前記放熱フィンは、板材により構成されており、
前記凹部と前記凸部は、プレス成型により同時に形成されることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記複数のサブフィンは、前記回転子の回転軸に対して放射状に形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項4】
請求項3において、
前記回転軸を中心とした前記サブフィンの径方向端部において、前記凹部の深さおよび前記凸部の高さが徐々に変化していることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項5】
請求項4において、
前記サブフィンの一方の径方向端部は、前記放熱フィンの内周端部および外周端部のいずれか一方まで延在しており、
前記サブフィンの他方の径方向端部において、前記凹部の深さおよび前記凸部の高さが徐々に変化していることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記放熱フィンは、前記凹部の底面の一部に形成された貫通穴を有することを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記放熱フィンは、前記凹部の底面の一部に形成された切り欠きを有することを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、
前記凹部の深さおよび前記凸部の高さは、前記放熱フィンの板厚未満であることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかにおいて、
前記凹部の幅は、前記凸部の幅よりも広いことを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項10】
請求項1〜5のいずれかにおいて、
前記放熱フィンは、前記整流素子が取り付けられた主フィンと、前記主フィンの外周側に突出した補助フィンとを有し、
前記補助フィンに前記複数のサブフィンが形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項11】
請求項10において、
前記主フィンと前記補助フィンとの間に、勾配を有する段差が形成されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項12】
請求項11において、
前記主フィンは、前記整流素子と前記補助フィンとの間に形成された貫通穴を有することを特徴とする車両用交流発電機。
【請求項13】
請求項12において、
前記回転子の回転軸を中心とした前記貫通穴の周方向位置が、隣接する2つの前記サブフィンの間となるように、前記貫通穴が配置されていることを特徴とする車両用交流発電機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−31353(P2013−31353A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−20877(P2012−20877)
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]