説明

車両用冷却装置

【課題】 熱交換器を縮小した場合にエンジンコンパートメント内の冷却の効率化、および部品熱害抑制と両立させる車両用冷却装置の提供。
【解決手段】(1) 熱交換器の空気流れ方向後方にクロスフローファン12を備え、該クロスフローファン12の空気流れ方向後方、斜め上方に動力源13を備えた車両用冷却装置であって、クロスフローファン12の吐出口を空気流れ方向後方、斜め上方に向けた車両用冷却装置。
(2) 車両のエンジンアンダーカバー14をクロスフローファンから排出された冷却風を排出促進するためのデフューザ構造15とした(1)記載の車両用冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用冷却装置では、図4に示すように、ラジエータ1A、エアコンコンデンサ1Bの熱交換器1は、エンジンコンパートメント高さの大部分を使用して配置されている。
また、ラジエータ1A、エアコンコンデンサ1B等の熱交換器1の空気流れ方向後方に配置されるファン2は、軸流ファンであり、その後方にエンジン等の動力源3が配置される。
また、軸流ファン2からの風は、エンジンコンパートメント内からエンジンアンダーカバーの隙間を通して床下に排風される。
特開2001−304178号公報は、ラジエータファンをクロスフローファンとしたものを開示している。
【特許文献1】特開2001−304178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の車両用冷却装置には、つぎの問題がある。
i)熱交換器とフードとの間の上下方向隙間が小さいと、歩行者保護の目標値を満足できない。
ii)ラジエータを小型化すると、冷却風を風速ばらつき無く効率的に入れるためには、特開2001−304178号公報のように、クロスフローファンの採用が考えられる。ただし、ファン通過後、エンジンコンパートメントから排風させているので、エンジン周辺部品の冷却性能が不足し、部品熱害抑制と両立しない。
iii)さらに、従来のようなエンジンアンダーカバーの隙間からの排風では、排風能力が小さく、図5に示すように、床下流れに剥離が生じCd(空気抵抗係数)値が悪化する。
【0004】
本発明の目的は、熱交換器を縮小した場合にエンジンコンパートメント内の冷却の効率化、および部品熱害抑制と両立させる車両用冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する、そして上記目的を達成する、本発明はつぎの通りである。
(1) 熱交換器の空気流れ方向後方にクロスフローファンを備え、該クロスフローファンの空気流れ方向後方、斜め上方に動力源を備えた車両用冷却装置であって、前記クロスフローファンの吐出口を空気流れ方向後方、斜め上方に向けた車両用冷却装置。
(2) 車両のエンジンアンダーカバーを、クロスフローファンから排出された冷却風を排出促進するためのデフューザ構造とした(1)記載の車両用冷却装置。
【発明の効果】
【0006】
上記(1)の車両用冷却装置によれば、クロスフローファンの吐出口を空気流れ方向後方、斜め上方に向けたので、クロスフローファンの排風を動力源とその周辺に流すことができ、エンジンコンパートメント内の冷却を効率的にすることができるとともに、部品熱害を抑制することができる。
上記(2)の車両用冷却装置によれば、エンジンアンダーカバーをデフューザ構造としたので、排風効率を向上することができると共に、Cd(空気抵抗係数)悪化を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の車両用冷却装置を図1〜図3を参照して説明する。
本発明の車両用冷却装置10は、図1に示すように、熱交換器11の空気流れ方向後方にクロスフローファン12を備え、該クロスフローファン12の空気流れ方向後方、斜め上方に動力源13を備えた車両用冷却装置であって、クロスフローファン12の吐出口12a(吐出口の向きは吐出口から吐出される空気の流れ方向と等しい)を空気流れ方向後方、斜め上方に(すなわち、動力源13に向かう方向に)向けた車両用冷却装置からなる。
【0008】
ここで、軸流ファンとはファンの回転軸芯が空気流れ方向に向けられているファンであり、クロスフローファンとはファンの回転軸芯が空気流れ方向に交わる方向(通常、直交方向)に向けられているファンである。
通常、車両の前方から車両を見た場合、熱交換器11は横長の矩形で、軸流ファンの場合は左右に2つ軸流ファンが設けられ、熱交換器11のうち軸流ファン以外の部分には風が流れにくいので、軸流ファンの部分と軸流ファン以外の部分との風速差が大きく、したがって風速分布が大きく、均一風速の場合に比べて熱交換器の冷却性能が低下するが、クロスフローファン12の場合は、横長の熱交換器11の横方向全長にわたってクロスフローファン12が存在するので、風速分布が小さく(軸流ファンの場合に比べて風速分布が小さく)、熱交換器の冷却性能が向上する(軸流ファンの場合に比べて向上する)。
【0009】
熱交換器11は、ラジエータ11Aとエアコンコンデンサ11Bの少なくとも一方である。熱交換器11がラジエータ11Aとエアコンコンデンサ11Bの両方を含む場合は、低温を要求されるエアコンコンデンサ11Bの方をラジエータ11Aよりも空気流れ方向上流側に配置する。
また、動力源13は、エンジン、ハイブリッドシステムの動力装置(エンジン、モータ等)、燃料電池の何れかである。
【0010】
熱交換器11は、クロスフローファン12の代わりに軸流ファン2を備えた場合の熱交換器に比べて、上下方向に小型化されている。図2に示すように、クロスフローファン12の場合は、熱交換器のほぼ全域に風を流すことができ、風速差が小さい(風速分布が小さい)ので、熱交換器の効率が高く(冷却性能が高く)、したがって、軸流ファン2の場合に比べて、熱交換器11を小型化できる。
この熱交換器11の小型化を、上下方向の小型化とすることにより、熱交換器11とフード18との上下方向隙間を大きくすることができ、固い部品をフード18から下方に十分に離すことにより、フード18の上下方向の衝撃吸収を大きくすることができ、歩行者保護からの要求隙間値を十分に満足できる。
また、動力源13の前方(走行風の流れ方向上流側)で、熱交換器11の上方空間には、センサー部品等、駆動源13からの発する熱の熱害を受けやすい部品17を配置してもよい。
【0011】
車両のエンジンアンダーカバー14の後端に、クロスフローファンから排出された冷却風を排出促進するためのデフューザ構造15が設けられている。エンジンアンダーカバー14とその後方の床16との間の段差(床16の方がエンジンアンダーカバー14より上位)を設けて、車両走行中にエンジンアンダーカバー14下面を流れる風によってエンジンアンダーカバー14後端に負圧が発生するようにし、その負圧によってエンジンコンパートメント19内の空気の吸い出し効果を生じさせ、排風量を増加させる。
また、デフューザ構造15をエンジンアンダーカバー14の後端に設けることにより、ファン12を通過して風をファン12から離れた部位で床下に排出することができ、排出までにファン12からの風をエンジンコンパートメント19の全域に行き渡らせることができ、エンジンコンパートメント19内の冷却を効率的にすることができる。
従来のようなエンジンアンダーカバーの隙間からの排風では、排風能力が小さく、図5に示すように、床下流れに剥離が生じCd(空気抵抗係数)値が悪化するが、本発明では、デフューザ構造15によって、図3に示すように、床16下での剥離を無くし、Cd悪化が抑制される。
本発明では、エンジンアンダーカバー14の後端にデフューザ構造15が設けられると共に、エンジンアンダーカバー14に、従来と同様な排風隙間を設けてもよい。
【0012】
つぎに、本発明の車両用冷却装置10の作用・効果を説明する。
ファン12をクロスフローファンとして、その吐出口12aを空気流れ方向後方、斜め上方に向けたので、図1に示すように、クロスフローファン12の排風を動力源13とその周辺に流すことができ、動力源13を効率的に冷却できると共に部品熱害を抑制することができる。また、デフューザ構造15をエンジンアンダーカバー14の後端に設けることにより、ファン12からの風をエンジンコンパートメント19の全域に行き渡らせることができ、エンジンコンパートメント19内の冷却を効率的にすることができる。
従来は、図4に示すように、軸流ファン2からの排風は、軸方向後方か斜め下方に向かい、動力源3とその周辺に十分に流れず、動力源3の周辺の部品は動力源3からの熱害を受けやすかった。しかし、本発明では、クロスフローファン12の排風が動力源13とその周辺に流れると共に、エンジンコンパートメント19の全域に行き渡らせることができるので、動力源13とその周辺部品を効率的に冷却し、部品の熱害を抑制することができ、かつ、エンジンコンパートメント19内の冷却を効率的にすることができる。
【0013】
また、動力源3の周辺の部品を熱交換器11の上方に設けると、グリルから入ってきた走行風でさらに部品を冷却できるので、より一層、周辺の部品の、動力源3からの熱害を抑制することができる。
【0014】
エンジンアンダーカバー14の後端と床16との間に段差を設けてエンジンアンダーカバー14の後端をデフューザ構造15としたので、エンジンコンパートメント19の排風効率を向上することができると共に、床下を流れる風20と床16の下面との剥離を抑制でき(図3、ディフューザ構造15有りの場合の風の解析図)、Cd(空気抵抗係数)悪化を抑制することができる。従来は、図5(ディフューザ構造無しの場合の風の解析図)に示すように、床下を流れる風20に床下面からの剥離21が生じ、Cd(空気抵抗係数)値が悪化していたが、本発明では、それを無くすが抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の車両用冷却装置の側面図である。
【図2】クロスフローファンと、軸流ファンの、冷却性能、風速分布の関係を示すグラフである。
【図3】ディフューザ構造有りの車両の床下の風の流れを示す側面図である。
【図4】従来(軸流ファン、ディフューザ構造無し)の車両用冷却装置の側面図である。
【図5】ディフューザ構造無しの車両の床下の風の流れを示す側面図である。
【符号の説明】
【0016】
11 熱交換器
11A ラジエータ
11B エアコンコンデンサ
12 クロスフローファン
12a 吐出口
13 動力源
14 エンジンアンダーカバー
15 デフューザ構造
16 床
17 熱害を受けやすい部品
18 フード
19 エンジンコンパートメント
20 床下を流れる風
21 床下を流れる風が床下面から剥離した部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器の空気流れ方向後方にクロスフローファンを備え、該クロスフローファンの空気流れ方向後方、斜め上方に動力源を備えた車両用冷却装置であって、前記クロスフローファンの吐出口を空気流れ方向後方、斜め上方に向けた車両用冷却装置。
【請求項2】
車両のフロアのアンダーカバーを、クロスフローファンから排出された冷却風を排出促進するためのデフューザ構造とした請求項1記載の車両用冷却装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−44337(P2006−44337A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−225113(P2004−225113)
【出願日】平成16年8月2日(2004.8.2)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】