説明

車両用前照灯装置および配光制御方法

【課題】前方視認性と前方車に対するグレア低減とを両立し得る配光パターンの切替えを実現する技術を提供する。
【解決手段】車両用前照灯装置において、制御部は、前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、複数の付加配光パターンから選択された、該車両への光の照射が遮光される1つの付加配光パターンを形成すべく遮光部を制御し、前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、該車両が光で照射されないように、複数の付加配光パターンから選択された1つの付加配光パターンを形成すべく遮光部を制御するとともに、灯具ユニットの光軸を旋回させるべく駆動部を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前方車の位置に応じて配光パターンを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車前方をカメラ等で撮像し、撮像画像を画像処理することで、自車両と前方車との距離や相対位置を算出し、その算出結果に基づいて車両前方の配光パターンを切り替える車両用前照灯装置が考案されている(特許文献1参照)。また、通常、遠方視界を確保するためにはハイビーム用配光パターンが用いられるが、前方車に与えるグレアの低減を目的として、ハイビーム用配光パターンの一部を遮光したいわゆる遮光ハイビーム用配光パターンに切り替えることができる車両用灯具も考案されている。配光パターンを切り替える手段には、シェードの形状を変化させたり、光軸を左右方向に旋回駆動(スイブル)させたりする方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−63070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、シェードの形状の変化によって配光パターンを切り替える場合、遮光が可能な領域が限られるため、前方車の位置によっては、前方視認性と前方車に対するグレア低減とを高いレベルで両立するには改善の余地がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前方視認性と前方車に対するグレア低減とを両立し得る配光パターンの切替えを実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用前照灯装置は、光源から出射された光の一部を遮光可能に構成されている遮光部を有する灯具ユニットと、灯具ユニットの光軸を車幅方向に旋回可能な駆動部と、前方に存在する車両の位置に応じて所定の配光パターンを形成すべく遮光部および駆動部を制御する制御部と、を備える。遮光部は、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような傾斜カットオフラインを有する付加配光パターンであって、当該傾斜カットオフラインの形状が異なる複数の付加配光パターンを形成可能に構成されており、制御部は、前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、複数の付加配光パターンから選択された、該車両への光の照射が遮光される1つの付加配光パターンを形成すべく遮光部を制御し、前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、該車両が光で照射されないように、複数の付加配光パターンから選択された1つの付加配光パターンを形成すべく遮光部を制御するとともに、灯具ユニットの光軸を旋回させるべく駆動部を制御する。
【0007】
この態様によると、車両が第1の領域に位置する場合、遮光部を制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、車両が第2の領域に位置する場合、遮光部と駆動部とを制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、第1の領域に車両が存在する場合には、駆動部を用いて灯具ユニットの光軸を旋回させる必要がなく、光軸の変化に伴う運転者の違和感を少なくすることができる。
【0008】
制御部は、前方に存在する車両の位置が、第1の領域よりも車幅方向外側の所定の第2の領域であって複数の付加配光パターンのいずれを選択しても該車両への遮光ができない第2の領域にある場合、複数の付加配光パターンから選択された、遮光域の最も広い1つの付加配光パターンを形成すべく遮光部を制御するとともに、選択された該1つの付加配光パターンによって該車両が光で照射されないように灯具ユニットの光軸を旋回させるべく駆動部を制御してもよい。これにより、車両前方のより広範囲な領域に対して前方視認性を確保できる。また、第1の領域に存在する車両が第2の領域に徐々に移動する場合、はじめは遮光部を制御することで運転者に違和感を与えることなく前方車に対するグレアの低減を図りつつ、車両が第2の領域に移動した場合に駆動部の制御が開始されるため、制御が容易となる。
【0009】
灯具ユニットは、車両前方へ光を照射可能な光源を更に有してもよい。遮光部は、回転駆動することにより回転位置に応じて複数の付加配光パターンのうちいずれか1つを形成可能な回転体を有してもよい。これにより、省スペースで複数の付加配光パターンを形成することができる。また、遮光部の簡易な動作により複数の付加配光パターンのうちいずれか1つを形成できる。
【0010】
複数の付加配光パターンは、それぞれの傾斜カットオフラインの傾斜角度が異なり、制御部は、遮光部を制御することで複数の付加配光パターンの切替えによって傾斜角度を段階的または連続的に変化させてもよい。これにより、前方に存在する車両に対するグレアを、その車両の位置に応じてより適切に低減することができる。
【0011】
灯具ユニットは、光源から出射された光の一部を遮光可能に構成されている第1の遮光部を有する第1の灯具ユニットと、光源から出射された光の一部を遮光可能に構成されている第2の遮光部を有する第2の灯具ユニットとを備えてもよい。駆動部は、第1の灯具ユニットの光軸を車幅方向に旋回可能な第1の駆動部と、第2の灯具ユニットの光軸を車幅方向に旋回可能な第2の駆動部とを備えてもよい。第1の遮光部は、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方の対向車線側の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような第1の傾斜カットオフラインを有する第1の付加配光パターンであって、当該第1の傾斜カットオフラインの形状が異なる複数の第1の付加配光パターンを形成可能に構成されており、第2の遮光部は、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方の自車線側の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような第2の傾斜カットオフラインを有する第2の付加配光パターンであって、当該第2の傾斜カットオフラインの形状が異なる複数の第2の付加配光パターンを形成可能に構成されており、制御部は、前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、(i)複数の第1の付加配光パターンから選択された、該車両への光の照射が遮光される1つの第1の付加配光パターンを形成すべく第1の遮光部を制御し、および、(ii)複数の第2の付加配光パターンから選択された、該車両への光の照射が遮光される1つの第2の付加配光パターンを形成すべく第2の遮光部を制御し、前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、(i)該車両が光で照射されないように、複数の第1の付加配光パターンから選択された1つの第1の付加配光パターンを形成すべく第1の遮光部を制御し、および、(ii)該車両が光で照射されないように、複数の第2の付加配光パターンから選択された1つの第2の付加配光パターンを形成すべく第2の遮光部を制御するとともに、(iii)第1の灯具ユニットの光軸を旋回させるべく第1の駆動部を制御し、および/または、(iv)第2の灯具ユニットの光軸を旋回させるべく第2の駆動部を制御する。これにより、前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とをより高いレベルで両立し得る。
【0012】
制御部は、取得した車両前方の情報に基づいて車両前方を複数の領域に分割するとともに、該複数の領域のいずれかに車両が存在する場合、車両が存在する領域に応じて遮光部および駆動部を制御し、所定の配光パターンを形成してもよい。これにより、車両前方に存在する車両の位置に応じた適切な配光パターンの形成を簡易に制御できる。
【0013】
本発明の別の態様もまた、車両用前照灯装置である。この装置は、光源から出射された光の一部を遮光可能に構成されている遮光部を有する灯具ユニットと、灯具ユニットの光軸を車幅方向に旋回可能な駆動部と、前方に存在する車両の位置に応じて所定の配光パターンを形成すべく遮光部および駆動部を制御する制御部と、を備える。遮光部は、複数の配光パターンを形成可能に構成されており、制御部は、前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、複数の配光パターンから選択された1つの配光パターンを形成すべく遮光部を制御し、前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、該車両が光で照射されないように、複数の配光パターンから選択された1つの配光パターンを形成すべく遮光部を制御するとともに、灯具ユニットの光軸を旋回させるべく駆動部を制御する。
【0014】
この態様によると、車両が第1の領域に位置する場合、遮光部を制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、車両が第2の領域に位置する場合、遮光部と駆動部とを制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、第1の領域に車両が存在する場合には、駆動部を用いて灯具ユニットの光軸を旋回させる必要がなく、光軸の変化に伴う運転者の違和感を少なくすることができる。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、配光制御方法である。この方法は、光源から出射された光の一部を遮光可能に構成されている遮光部を有する灯具ユニットと、灯具ユニットの光軸を車幅方向に旋回可能な駆動部とを備える車両用前照灯装置の配光制御方法であって、取得した情報に基づいて前方に存在する車両の位置を判別する判別工程と、前方に存在する車両の位置に応じて所定の配光パターンを形成すべく遮光部および駆動部を制御する制御工程と、を含む。制御工程は、前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような傾斜カットオフラインを有する付加配光パターンであって、当該傾斜カットオフラインの形状が異なる複数の付加配光パターンから選択された1つの付加配光パターンを形成すべく遮光部を制御する第1の工程と、前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、複数の付加配光パターンから選択された1つの付加配光パターンを形成すべく遮光部を制御するとともに、灯具ユニットの光軸を旋回させるべく駆動部を制御する第2の工程と、を有する。
【0016】
この態様によると、車両が第1の領域に位置する場合、遮光部を制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、車両が第2の領域に位置する場合、遮光部と駆動部とを制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、第1の領域に車両が存在する場合には、駆動部を用いて灯具ユニットの光軸を旋回させる必要がなく、光軸の変化に伴う運転者の違和感を少なくすることができる。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、前方視認性と前方車に対するグレア低減とを両立し得る配光パターンの切替えを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る車両用前照灯装置の内部構造を説明する概略鉛直断面図である。
【図2】回転シェードの概略斜視図である。
【図3】前照灯ユニットの照射制御部と車両側の車両制御部との動作連係を説明する機能ブロック図である。
【図4】図4(A)〜図4(E)は、前照灯ユニット210Lにより形成される配光パターンの形状を示す説明図であり、図4(F)〜図4(J)は、前照灯ユニット210Rにより形成される配光パターンの形状を示す説明図である。
【図5】図5(A)〜図5(E)は、対向車両と配光パターンとの関係を説明するための図である。
【図6】実施の形態に係る車両用前照灯装置における、配光パターン形成の制御フローチャートの一例である。
【図7】図7(A)および図7(B)は、配光パターンの切替えによる照射領域の変化を示す図である。
【図8】図8(A)〜図8(E)は、先行車両と配光パターンとの関係を説明するための図である。
【図9】第1の領域および第2の領域を説明するための模式図である。
【図10】図10(A)〜図10(D)は、先行車両と配光パターンとの関係を説明するための図である。
【図11】実施の形態に係る車両用前照灯装置における、配光パターン形成の制御フローチャートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一または同等の構成要素、部材、処理には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組合せは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0021】
図1は、実施の形態に係る車両用前照灯装置の内部構造を説明する概略鉛直断面図である。本実施の形態の車両用前照灯装置200は、車両の車幅方向の左側端部に配置された前照灯ユニット210Lと右側端部に配置された前照灯ユニット210Rとを備える(以下、適宜、前照灯ユニット210Lと前照灯ユニット210Rを総称して「前照灯ユニット210」という)。
【0022】
本実施の形態の前照灯ユニット210L,210Rは、例えば1つの光源から照射されるビームの一部を遮ることによりロービーム用配光パターンや後述する付加配光パターンを形成し、遮らないときにハイビーム用配光パターンを形成する、いわゆる配光可変式前照灯である。前照灯ユニット210L,210Rの大部分は左右対称の構造を有する点以外は実質的に同一の構成であるため、以下では、右側の前照灯ユニット210Rの構造を説明し、左側の前照灯ユニットの説明は適宜省略する。なお、前照灯ユニット210Lの各部材について記載する場合には、説明の便宜上、各部材に対して前照灯ユニット210Rの対応する部材と同一の符号を付す。また、前照灯ユニット210R側の符号が末尾に「R」を含む場合には、末尾の「R」を「L」に置き換える。
【0023】
前照灯ユニット210Rは、ランプボディ212と透光カバー214を含む。ランプボディ212は、車両前方方向に開口部を有し、後方側にはバルブ14の交換時等に取り外す着脱カバー212aを有する。そして、ランプボディ212の前方の開口部には、透光カバー214が接続されて灯室216が形成される。灯室216には、光を車両前方方向に照射する灯具ユニット10が収納されている。
【0024】
灯具ユニット10の一部には、当該灯具ユニット10の揺動中心となるピボット機構218aを有するランプブラケット218が形成されている。ランプブラケット218は、ランプボディ212の壁面に回転自在に支持されたエイミング調整ネジ220と螺合している。したがって、灯具ユニット10はエイミング調整ネジ220の調整状態で定められた灯室216内の所定位置に傾動可能な状態で支持されることになる。
【0025】
また、灯具ユニット10の下面には、曲線道路走行時等に進行方向を照らす曲線道路用配光可変前照灯(Adaptive Front-lighting System:AFS)などを構成するためのスイブルアクチュエータ222の回転軸222aが固定されている。スイブルアクチュエータ222は、車両側から提供される操舵量のデータやナビゲーションシステムから提供される走行道路の形状データ、対向車や先行車を含む前方車両と自車との相対位置の関係等に基づいて、灯具ユニット10を、ピボット機構218aを中心として進行方向に旋回(スイブル:swivel)させる。その結果、灯具ユニット10の照射領域が車両の正面ではなく曲線道路のカーブの先に向き、運転者の前方視認性が向上する。スイブルアクチュエータ222は、例えばステッピングモータで構成することができる。なお、スイブル角度が固定値の場合には、ソレノイドなども利用可能である。
【0026】
スイブルアクチュエータ222は、ユニットブラケット224に固定されている。ユニットブラケット224には、ランプボディ212の外部に配置されたレベリングアクチュエータ226が接続されている。レベリングアクチュエータ226は、例えばロッド226aを矢印M,N方向に伸縮させるモータなどで構成されている。ロッド226aが矢印M方向に伸長した場合、灯具ユニット10はピボット機構218aを中心として後傾姿勢になるように揺動する。逆にロッド226aが矢印N方向に短縮した場合、灯具ユニット10はピボット機構218aを中心として前傾姿勢になるように揺動する。灯具ユニット10が後傾姿勢になると、光軸を上方に向けるレベリング調整ができる。また、灯具ユニット10が前傾姿勢になると、光軸を下方に向けるレベリング調整ができる。このような、レベリング調整をすることで車両姿勢に応じた光軸調整ができる。その結果、車両用前照灯装置200による前方照射光の到達距離を最適な距離に調整することができる。
【0027】
このレベリング調整は、車両走行中の車両姿勢に応じて実行することもできる。例えば、車両が走行中に加速する場合は車両姿勢は後傾姿勢となり、逆に減速する場合は前傾姿勢となる。したがって、前照灯ユニット210の照射方向も車両の姿勢状態に対応して上下に変動して、前方照射距離が長くなったり短くなったりする。そこで、車両姿勢に基づき灯具ユニット10のレベリング調整をリアルタイムで実行することで走行中でも前方照射の到達距離を最適に調整できる。これを「オートレベリング」と称することもある。
【0028】
灯具ユニット10下方位置の灯室216の内壁面には、灯具ユニット10の点消灯制御や配光パターンの形成制御を実行する照射制御部228(制御部)が配置されている。図1の場合、前照灯ユニット210Rを制御するための照射制御部228Rが配置されている。この照射制御部228Rは、スイブルアクチュエータ222、レベリングアクチュエータ226等の制御も実行する。なお、前照灯ユニット210Lは専用の照射制御部228Lを有していてもよいし、前照灯ユニット210Rに設けられた照射制御部228Rが前照灯ユニット210Rおよび前照灯ユニット210Lの各アクチュエータの制御や配光パターンの形成制御を一括して制御するようにしてもよい。
【0029】
灯具ユニット10はエイミング調整機構を備えることができる。例えば、レベリングアクチュエータ226のロッド226aとユニットブラケット224の接続部分に、エイミング調整時の揺動中心となるエイミングピボット機構(図示せず)を配置する。また、ランプブラケット218には前述したエイミング調整ネジ220が車幅方向に間隔を空けて配置されている。
【0030】
例えば2本のエイミング調整ネジ220を反時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に前傾姿勢となり光軸が下方に調整される。同様に2本のエイミング調整ネジ220を時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に後傾姿勢となり光軸が上方に調整される。また、車幅方向左側のエイミング調整ネジ220を反時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に右旋回姿勢となり右方向に光軸が調整される。また、車幅方向右側のエイミング調整ネジ220を反時計回り方向に回転させれば、灯具ユニット10はエイミングピボット機構を中心に左旋回姿勢となり左方向に光軸が調整される。このエイミング調整は、車両出荷時や車検時、前照灯ユニット210の交換時に行われる。そして、前照灯ユニット210が設計上定められた姿勢に調整され、この姿勢を基準に本実施の形態の配光パターンの形成制御が行われる。
【0031】
灯具ユニット10は、回転軸12aを有する回転シェード12(可変シェードという場合もある)を含むシェード機構18、車両前方へ光を照射可能な光源としてのバルブ14、リフレクタ16を内壁に支持する灯具ハウジング17、投影レンズ20を備える。バルブ14は、例えば、白熱球やハロゲンランプ、放電球、LEDなどが使用可能である。本実施の形態では、バルブ14をハロゲンランプで構成する例を示す。
【0032】
リフレクタ16は、その少なくとも一部が楕円球面状であり、この楕円球面は、灯具ユニット10の光軸Oを含む断面形状が楕円形状の少なくとも一部となるように設定されている。リフレクタ16の楕円球面状部分は、バルブ14の略中央に第1焦点を有し、投影レンズ20の後方焦点を含む焦点面である後方焦点面上に第2焦点を有する。バルブ14から放射された光は、直接あるいはリフレクタ16で反射して、その一部が回転シェード12を経て投影レンズ20へと導かれる。
【0033】
図2は、回転シェードの概略斜視図である。回転シェード12は、回転軸12aを中心に回転可能な円筒形状の部材である。また、回転シェード12は軸方向に一部が切り欠かれた切欠部22を有し、当該切欠部22以外の外周面12b上に板状のシェードプレート24を複数保持している。回転シェード12は、その回転角度に応じて光軸O上であって投影レンズ20の後方焦点面の位置に切欠部22またはシェードプレート24のいずれか1つを移動させることができる。
【0034】
シェードプレート24のいずれか1つを光軸O上に移動させた場合には、光軸O上のシェードプレート24によりバルブ14から照射された光の一部が遮光されて、ロービーム用配光パターンまたは一部にハイビーム用配光パターンの特徴を含む付加配光パターンが形成される。また、切欠部22を光軸O上に移動させた場合には、バルブ14から照射された光が非遮光状態となってハイビーム用配光パターンが形成される。なお、本実施の形態に係る車両用前照灯装置200では、前照灯ユニット210Lの灯具ユニット10(第2灯具ユニット)と前照灯ユニット210Rの灯具ユニット10(第1灯具ユニット)とが互いに異なる形状のシェードプレート24を有し、異なる配光パターンを形成することができる。前照灯ユニット210により形成される配光パターンについては後に詳細に説明する。
【0035】
回転シェード12は、例えばモータ駆動により回転可能であり、モータの回転量を制御することで所望の配光パターンを形成するためのシェードプレート24または切欠部22を光軸O上に移動させることができる。なお、回転シェード12の外周面12bの切欠部22を省略して、回転シェード12に遮光機能だけを持たせてもよい。そして、ハイビーム用配光パターンを形成する場合は、例えばソレノイド等を駆動して回転シェード12を光軸Oの位置から退避させるようにする。この場合、回転シェード12は切欠部22を持たないので、例えば、回転シェード12を回転させるモータがフェールしてもロービーム用配光パターンまたはそれに類似する配光パターンで固定される。つまり、回転シェード12がハイビーム用配光パターンの形成姿勢で固定されてしまうことを確実に回避してフェールセーフ機能を実現できる。
【0036】
このように、シェード機構18は、回転駆動することにより回転位置に応じて複数の付加配光パターンのうちいずれか1つを形成可能な回転シェード12を有している。これにより、省スペースで複数の付加配光パターンを形成することができる。また、シェード機構18の簡易な動作により複数の付加配光パターンのうちいずれか1つを形成できる。
【0037】
投影レンズ20は、車両前後方向に延びる光軸O上に配置され、バルブ14は投影レンズ20の後方焦点面よりも後方側に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、後方焦点面上に形成される光源像を反転像として車両用前照灯装置200前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。
【0038】
図3は、上述のように構成された前照灯ユニットの照射制御部と車両側の車両制御部との動作連係を説明する機能ブロック図である。なお、上述のように右側の前照灯ユニット210Rおよび左側の前照灯ユニット210Lの構成は基本的に同一であるため、前照灯ユニット210R側のみの説明を行い前照灯ユニット210L側の説明は省略する。
【0039】
前照灯ユニット210Rの照射制御部228Rは、車両300に搭載された車両制御部302から得られた情報に基づいて電源回路230の制御を行いバルブ14の点灯制御を実行する。また、照射制御部228Rは車両制御部302から得られた情報に基づいて可変シェード制御部232、スイブル制御部234、レベリング制御部236を制御する。可変シェード制御部232は、回転シェード12の回転軸12aにギア機構を介して接続されたモータ238を回転制御して、所望のシェードプレート24または切欠部22を光軸O上に移動させる。なお、可変シェード制御部232には、モータ238や回転シェード12に備えられたエンコーダ等の検出センサから回転シェード12の回転状態を示す回転情報が提供されてフィードバック制御により正確な回転制御が実現される。
【0040】
スイブル制御部234は、スイブルアクチュエータ222を制御して灯具ユニット10の光軸を車幅方向について調整する。例えば、曲路走行や右左折走行などの旋回時に灯具ユニット10の光軸をこれから進行する方向に向ける。また、レベリング制御部236は、レベリングアクチュエータ226を制御して、灯具ユニット10の光軸を車両上下方向について調整する。例えば、加減速時における車両姿勢の前傾、後傾に応じて灯具ユニット10の姿勢を調整して前方照射光の到達距離を最適な距離に調整する。車両制御部302は、前照灯ユニット210Lに対しても同様の情報を提供し、前照灯ユニット210Lに設けられた照射制御部228L(制御部)が、照射制御部228Rと同様の制御を実行する。
【0041】
本実施の形態の場合、前照灯ユニット210L,210Rによって形成される配光パターンは、運転者によるライトスイッチ304の操作内容に応じて切替え可能である。この場合、ライトスイッチ304の操作に応じて、照射制御部228L,228Rが可変シェード制御部232を介してモータ238の駆動により所望の配光パターンを形成する。
【0042】
また、本実施の形態の前照灯ユニット210L,210Rは、ライトスイッチ304の操作によらず、各種センサで検出された車両周囲状況に応じた最適な配光パターンを形成するように自動制御することもできる。例えば、自車の前方に先行車や対向車、歩行者等が存在することが検出できた場合には、照射制御部228L,228Rは車両制御部302から得られた情報に基づいてグレアを防止するべきであると判定し、ロービーム用配光パターンを形成することができる。また、自車の前方に先行車や対向車、歩行者等が存在しないことが検出できた場合には、照射制御部228L,228Rは運転者の視認性を向上させるべきであると判定して回転シェード12による遮光を伴わないハイビーム用配光パターンを形成することができる。また、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンに加えて、後述する付加配光パターンを形成可能な場合には、前方車両の存在状態に応じて前方車両を考慮した最適な配光パターンを形成してもよい。このような制御モードをADB(Adaptive Driving Beam)モードという場合がある。
【0043】
このように先行車や対向車などの対象物を検出するために、車両制御部302には対象物の認識手段として例えばステレオカメラなどのカメラ306が接続されている。カメラ306で撮影された画像フレームデータは、画像処理部308で対象物認識処理など所定の画像処理が施されて車両制御部302に提供され、車両制御部302で少なくとも自車に対する前方車両の検出処理が実行される。そして、車両制御部302は、前方車両の検出処理の結果を照射制御部228L,228Rに提供する。照射制御部228L,228Rは、車両制御部302で検出された前方車両に関するデータに基づき、その前方車両を考慮した最適な配光パターンを形成するように各制御部に情報を提供する。
【0044】
また、車両制御部302は、車両300に通常搭載されているステアリングセンサ310、車速センサ312などからの情報も取得可能であり、これにより照射制御部228L,228Rは車両300の走行状態や走行姿勢に応じて、形成する配光パターンを選択したり光軸の方向を変化させて、簡易的に配光パターンを変化させたりすることができる。例えば、車両制御部302がステアリングセンサ310からの情報に基づき車両が旋回していると判定した場合、車両制御部302から情報を受け取った照射制御部228L,228Rは回転シェード12を回転制御して旋回方向の視界を向上させるような配光パターンを形成するシェードプレート24を選択することができる。また、回転シェード12の回転状態は変化させずに、スイブル制御部234によりスイブルアクチュエータ222を制御して灯具ユニット10の光軸を旋回方向に向けて視界を向上させてもよい。このような制御モードを旋回感応モードという場合がある。
【0045】
また、夜間に高速走行しているときには、対向車や先行車、道路標識やメッセージボードの認識をできるだけ早く行えるように自車前方を照明することが好ましい。そこで、車両制御部302が車速センサ312からの情報に基づき高速走行していると判定したときに、照射制御部228L,228Rは回転シェード12を回転制御してロービーム用配光パターンの一部の形状を変えたハイウェイモードのロービーム用配光パターンを形成するシェードプレート24を選択してもよい。同様の制御は、レベリング制御部236によりレベリングアクチュエータ226を制御して灯具ユニット10を後傾姿勢に変化させることでも実現できる。上述したレベリングアクチュエータ226による加減速時のオートレベリング制御は、照射距離を一定に維持するような制御である。この制御を利用して、積極的にカットオフラインの高さを制御すれば、回転シェード12を回転させて異なるカットオフラインを選択する制御と同等の制御ができる。このような制御モードを速度感応モードという場合がある。
【0046】
なお、灯具ユニット10の光軸調整は、スイブルアクチュエータ222やレベリングアクチュエータ226を用いずに実行することもできる。例えば、エイミング制御をリアルタイムで実行するようにして灯具ユニット10を旋回させたり前傾姿勢や後傾姿勢にしたりして、所望する方向の視認性を向上させてもよい。
【0047】
この他、車両制御部302は、ナビゲーションシステム314から道路の形状情報や形態情報、道路標識の設置情報などを取得することもできる。これらの情報を事前に取得することにより、照射制御部228L,228Rはレベリングアクチュエータ226、スイブルアクチュエータ222、モータ238等を制御して、走行道路に適した配光パターンをスムーズに形成することもできる。このような制御モードをナビ感応モードという場合もある。
【0048】
このように、自車の走行状態や自車周囲の状況に応じて自車の配光パターンを自動的に変更することにより、先行車や対向車等の前方車両の運転者や同乗者に与えるグレアを抑制しつつ、自車運転者の視界向上が可能となる。以上説明した各種制御モードを含む配光パターンの自動形成制御は、例えばライトスイッチ304によってそれぞれの自動形成制御が指示された場合に実行される。
【0049】
次に、車両用前照灯装置200の各前照灯ユニット210L,210Rにより形成可能な配光パターンについて説明する。図4(A)〜図4(E)は、前照灯ユニット210Lにより形成される配光パターンの形状を示す説明図であり、図4(F)〜図4(J)は、前照灯ユニット210Rにより形成される配光パターンの形状を示す説明図である。図4(A)〜図4(J)では、灯具前方の所定位置、例えば灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成された配光パターンを示している。なお、図1に示すように、投影レンズ20は前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであるため、ハイビーム用配光パターンを除く他の配光パターンは、それぞれに対応するシェードプレート24によって遮光された部分を含む光源像が上下左右に反転した像となる。したがって、各配光パターンのカットオフライン形状と各シェードプレート24の稜線形状とが対応している。
【0050】
まず、前照灯ユニット210Lおよび前照灯ユニット210Rの灯具ユニット10は、図4(A)、図4(F)に示すように、ロービーム用配光パターンLoを形成することができる。このロービーム用配光パターンLoは、左側通行時に前方車両や歩行者にグレアを与えないように配慮された配光パターンである。ロービーム用配光パターンLoは、V−V線よりも右側(対向車線側)に、水平ラインであるH−H線と平行に延びる対向車線側カットオフラインを、またV−V線よりも左側(自車線側)に、対向車線側カットオフラインよりも高い位置でH−H線と平行に延びる自車線側カットオフラインを、そして対向車線側カットオフラインと自車線側カットオフラインとの間に、両者をつなぐ斜めカットオフラインをそれぞれ有する。対向車線側カットオフラインは、その外側領域部分が中心領域部分よりも高く自車線側カットオフラインよりも低い位置で水平に延びている。斜めカットオフラインは、対向車線側カットオフラインとV−V線との交点から左斜め上方へ45°の傾斜角で延びている。
【0051】
また、前照灯ユニット210Lおよび前照灯ユニット210Rの灯具ユニット10は、図4(E)、図4(J)に示すように、ハイビーム用配光パターンHiを形成することができる。このハイビーム用配光パターンHiは、前方の広範囲および遠方を照明する配光パターンであり、例えば、前方車両や歩行者へのグレアを配慮する必要のない場合に形成される。
【0052】
また、上述のように、本実施の形態に係る車両用前照灯装置200では、前照灯ユニット210Rおよび前照灯ユニット210Lの灯具ユニット10が互いに異なる形状のシェードプレート24を有し、したがって異なる配光パターンを形成可能である。
【0053】
具体的には、前照灯ユニット210Lの灯具ユニット10は、図4(B)〜図4(D)に示すように、ロービーム用配光パターンLoのカットオフラインから上方の自車線側の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような第2傾斜カットオフラインを有する第2付加配光パターンLHi1,LHi2,LHi3を形成することができる。本実施の形態では、第2付加配光パターンLHi1〜LHi3は、車幅方向外側にいくにつれて、すなわち、V−V線から離れるにつれて照射領域の高さが連続的に高くなる第2傾斜カットオフラインLCL1,LCL2,LCL3を有する。したがって、第2付加配光パターンLHi1〜LHi3は、ロービーム用配光パターンLoのカットオフラインから上方の自車線側の領域に、略扇形状の照射領域を有する。
【0054】
第2付加配光パターンLHi1〜LHi3は、左側通行時にハイビーム用配光パターンHiの対向車線側を遮光し、自車線側の一部をハイビーム領域で照射する特殊ハイビーム用配光パターンである。第2付加配光パターンLHi1〜LHi3は、自車線に存在する先行車や歩行者へのグレアを考慮しながら、自車線側領域における運転者の視認性を高めることができる。
【0055】
第2付加配光パターンLHi1〜LHi3は、それぞれの第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3の形状が異なり、具体的には、第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3の傾斜角度が異なる。それぞれの傾斜角度は、第2傾斜カットオフラインLCL1、第2傾斜カットオフラインLCL2、第2傾斜カットオフラインLCL3の順に段階的に大きくなっている。ここで、第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3の傾斜角度は、例えば、各第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3の両端を結ぶ仮想直線と水平ラインであるH−H線とのなす角度である。各第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3の端部のうち、車幅方向中心側の端部、言い換えれば、付加配光パターンの中心領域側の端部は、例えば、ロービーム用配光パターンLoの斜めカットオフラインと第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3との交点である。あるいは、車幅方向中心側の端部は、ロービーム用配光パターンLoの自車線側カットオフラインと斜めカットオフラインとの交点であってもよい。各第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3の端部のうち、車幅方向外側の端部、言い換えれば、付加配光パターンの外側領域側の端部は、例えば、付加配光パターンの外周の輪郭線と第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3との交点である。
【0056】
ロービーム用配光パターンLoおよび第2付加配光パターンLHi1〜LHi3のそれぞれを形成するシェードプレート24は、例えば、ロービーム用配光パターンLo用、第2付加配光パターンLHi1用、第2付加配光パターンLHi2用、第2付加配光パターンLHi3用の順で、回転シェード12の外周面12bに設けられている。これにより、照射制御部228Lは、ロービーム用配光パターンLoおよび第2付加配光パターンLHi1〜LHi3の切替えによって、第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3の傾斜角度を段階的に変化させることができる。
【0057】
一方、前照灯ユニット210Rの灯具ユニット10は、図4(G)〜図4(I)に示すように、ロービーム用配光パターンLoのカットオフラインから上方の対向車線側の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような第1傾斜カットオフライン(傾斜カットオフライン)を有する第1付加配光パターンRHi1,RHi2,RHi3(付加配光パターン)を形成することができる。本実施の形態では、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3は、車幅方向外側にいくにつれて、すなわち、V−V線から離れるにつれて照射領域の高さが連続的に高くなる第1傾斜カットオフラインRCL1,RCL2,RCL3を有する。したがって、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3は、ロービーム用配光パターンLoのカットオフラインから上方の対向車線側の領域に、略扇形状の照射領域を有する。
【0058】
第1付加配光パターンRHi1〜RHi3は、左側通行時にハイビーム用配光パターンHiの自車線側を遮光し、対向車線側の一部をハイビーム領域で照射する特殊ハイビーム用配光パターンである。第1付加配光パターンRHi1〜RHi3は、対向車線に存在する対向車や歩行者へのグレアを考慮しながら、対向車線側領域における運転者の視認性を高めることができる。
【0059】
第1付加配光パターンRHi1〜RHi3は、それぞれの第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3の形状が異なり、具体的には、第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3の傾斜角度が異なる。それぞれの傾斜角度は、第1傾斜カットオフラインRCL1、第1傾斜カットオフラインRCL2、第1傾斜カットオフラインRCL3の順に段階的に大きくなっている。ここで、第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3の傾斜角度は、例えば、各第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3の両端を結ぶ仮想直線と水平ラインであるH−H線とのなす角度である。各第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3の端部のうち、付加配光パターンの中心領域側の端部は、例えば、V−V線と第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3との交点であるか、あるいは、V−V線とロービーム用配光パターンLoの対向車線側カットオフラインとの交点である。また、付加配光パターンの外側領域側の端部は、例えば、付加配光パターンの外周の輪郭線と第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3との交点である。
【0060】
ロービーム用配光パターンLoおよび第1付加配光パターンRHi1〜RHi3のそれぞれを形成するシェードプレート24は、例えば、ロービーム用配光パターンLo用、第1付加配光パターンRHi1用、第1付加配光パターンRHi2用、第1付加配光パターンRHi3用の順で、回転シェード12の外周面12bに設けられている。これにより、照射制御部228Rは、ロービーム用配光パターンLoおよび第1付加配光パターンRHi1〜RHi3の切替えによって、第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3の傾斜角度を段階的に変化させることができる。
【0061】
また、本実施の形態に係る車両用前照灯装置200は、いわゆるスプリット配光パターンを形成することができる。このスプリット配光パターンは、水平ラインよりも上方の中央部に遮光領域を有し、遮光領域の水平方向両側にハイビーム領域を有する特殊ハイビーム用配光パターンである。スプリット配光パターンは、前照灯ユニット210Lで形成した第2付加配光パターンLHi1〜LHi3のいずれか1つと、前照灯ユニット210Rで形成した第1付加配光パターンRHi1〜RHi3のいずれか1つとを組み合わせることで形成することができる。第2付加配光パターンLHi1〜LHi3と第1付加配光パターンRHi1〜RHi3とが重畳されて形成される遮光領域は、第2付加配光パターンLHi1〜LHi3および第1付加配光パターンRHi1〜RHi3の組合せを変更することで、水平方向にその範囲を変化させることができる。
【0062】
なお、各前照灯ユニット210L,210Rは、交通法規が右側通行である地域で利用する、いわゆる「ドーバーロービーム」と称される右通行ロービーム用配光パターンに対応したシェードプレート24を有していてもよい。
【0063】
続いて、上述の構成を備えた本実施の形態の車両用前照灯装置200による配光パターンの形成制御の一例を説明する。図5(A)〜図5(E)は、対向車両と配光パターンとの関係を説明するための図である。
【0064】
本実施の形態では、少なくとも照射制御部228Rが、前方車両の存在に応じて前照灯ユニット210Rの灯具ユニット10により、ロービーム用配光パターンLo、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3、ハイビーム用配光パターンHiを形成するADBモードを実行することができる。具体的には、ライトスイッチ304によってADBモードの指示がなされている状態で、カメラ306から得られた情報によって車両制御部302が前方車両の存在を検知すると、車両制御部302から情報を受け取った照射制御部228Rは、前方車両の存在に応じてロービーム用配光パターンLo、および第1付加配光パターンRHi1〜RHi3を切り替え制御する。
【0065】
例えば、図5(A)に示すように、前方車両が検知されない場合には、照射制御部228Rはハイビーム用配光パターンHiを形成する。そして、図5(B)に示すように、前方車両400(対向車)が遠方に存在する場合には、照射制御部228Rは第1傾斜カットオフラインRCL3を有する第1付加配光パターンRHi3を形成する。図5(C)に示すように、前方車両400が自車両に接近すると、照射制御部228Rは第1付加配光パターンRHi3から、第1傾斜カットオフラインRCL3よりも傾斜角度の小さい第1傾斜カットオフラインRCL2を有する第1付加配光パターンRHi2に切り替える。また、図5(D)に示すように、前方車両400がさらに自車両に接近すると、照射制御部228Rは第1付加配光パターンRHi2から、第1傾斜カットオフラインRCL2よりも傾斜角度の小さい第1傾斜カットオフラインRCL1を有する第1付加配光パターンRHi1に切り替える。そして、図5(E)に示すように、前方車両400がさらに自車両に接近すると、照射制御部228Rはロービーム用配光パターンLoを形成する。
【0066】
このように、照射制御部228Rは、前方車両400の存在に応じて第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3の傾斜角度を段階的に変化させる。これにより、前方車両400の位置が変化しても、前方車両400の存在領域(例えば、前方車両400の運転者の頭部存在領域)と第1付加配光パターンRHi1〜RHi3の照射領域が重なるのを回避することができる。そのため、対向車へのグレアを防ぎながら、対向車線側の領域、特に対向車線側の路肩領域における運転者の視認性を向上させることができる。なお、照射制御部228Lは、前方車両400が検知されない場合には、ハイビーム用配光パターンHiを形成し、前方車両400が検知された場合には、ロービーム用配光パターンLoを形成する。
【0067】
照射制御部228Rは、例えば各配光パターンの形状情報、すなわち各配光パターンにおける照射領域情報を図示しない記憶部に格納している。そのため、照射制御部228RはADBモードにおいて、この情報と車両制御部302から得られる前方車両400の位置情報とを比較することで、前方車両400の存在位置が照射領域に含まれないような配光パターンを選択することができる。
【0068】
図6は、実施の形態に係る車両用前照灯装置における、配光パターン形成の制御フローチャートの一例である。このフローは、照射制御部228Rが所定のタイミングで繰り返し実行する。
【0069】
まず、照射制御部228Rは、車両制御部302から得られた情報に基づいて、ADBモードの実行指示がなされているか判断する(ステップ101:以下S101と略記する。他のステップも同様)。ADBモードの実行指示がなされていない場合(S101のNo)、本ルーチンを終了する。ADBモードの実行指示がなされていた場合(S101のYes)、照射制御部228RはADBモードを実施して、前方車両が検知されたか判断する(S102)。
【0070】
前方車両が検知されなかった場合(S102のNo)、照射制御部228Rは、ハイビーム用配光パターンHiを形成し(S110)、本ルーチンを終了する。前方車両が検知された場合(S102のYes)、照射制御部228Rは、前方車両が第1付加配光パターンRHi3の照射領域に含まれるか判断する(S103)。前方車両が第1付加配光パターンRHi3に含まれない場合(S103のNo)、照射制御部228Rは、第1付加配光パターンRHi3を形成し(S109)、本ルーチンを終了する。前方車両が第1付加配光パターンRHi3に含まれる場合(S103のYes)、照射制御部228Rは、前方車両が第1付加配光パターンRHi2の照射領域に含まれるか判断する(S104)。
【0071】
前方車両が第1付加配光パターンRHi2に含まれない場合(S104のNo)、照射制御部228Rは、第1付加配光パターンRHi2を形成し(S108)、本ルーチンを終了する。前方車両が第1付加配光パターンRHi2に含まれる場合(S104のYes)、照射制御部228Rは、前方車両が第1付加配光パターンRHi1の照射領域に含まれるか判断する(S105)。前方車両が第1付加配光パターンRHi1に含まれない場合(S105のNo)、照射制御部228Rは、第1付加配光パターンRHi1を形成し(S107)、本ルーチンを終了する。前方車両が第1付加配光パターンRHi1に含まれる場合(S105のYes)、照射制御部228Rは、ロービーム用配光パターンLoを形成し(S106)、本ルーチンを終了する。
【0072】
ここで、図7を用いて、配光パターンの変化あるいは変位と、それにより運転者が受ける視覚的な違和感との関係について説明する。図7(A)および図7(B)は、配光パターンの切替えによる照射領域の変化を示す図である。図7(A)は、従来の配光パターン切替えを示し、図7(B)は本実施の形態の配光パターン切替えを示す。
【0073】
一般に車両前方の中央領域は、車両を運転する運転者の視線が集中する傾向にある視線集中領域となっている。図7(A)、図7(B)に示す領域Aが運転者の視線集中領域である。この視線集中領域Aは、運転者の視線が集中する領域であるが故に、運転者が照度の変化を認識しやすい領域である。したがって、この視線集中領域Aにおいて照度が変化した場合、運転者は視覚的な違和感や煩わしさを感じやすい。
【0074】
図7(A)に示すように、従来のいわゆる右片ハイ用配光パターンRHiXは、ロービーム用配光パターンLoのカットオフラインから上方の対向車線側の領域に照射領域を有し、自車線側に遮光領域を有する。そして、この照射領域と遮光領域とは略鉛直な鉛直カットオフラインXCLで区切られている。そして、従来の車両用前照灯装置では、灯具ユニットをスイブルさせて右片ハイ用配光パターンRHiXを対向車線側に移動させることで、前方車両の存在に応じて遮光領域を変化させていた。したがって、従来の車両用前照灯装置では、右片ハイ用配光パターンRHiXを移動させた場合、鉛直カットオフラインXCLが視線集中領域Aを水平方向に移動していた。
【0075】
これに対し、図7(B)に示すように、本実施の形態に係る車両用前照灯装置200では、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3を切り替えて第1傾斜カットオフラインの傾斜角度を変化させることで、すなわち第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3を切り替えることで、前方車両に応じて遮光領域を変化させている。すなわち、従来の車両用前照灯装置では鉛直なカットオフラインを水平方向に移動させて遮光領域を変化させているが、本実施の形態の車両用前照灯装置200では傾斜したカットオフラインを回転移動させて遮光領域を変化させている。傾斜したカットオフラインを回転移動させた場合は、鉛直なカットオフラインを水平方向に移動させた場合と比べて、視線集中領域Aと照射領域とが重なる部分の面積変化量を小さくすることができる。そのため、本実施の形態の車両用前照灯装置200によれば、前方車両に応じて配光パターンを変化させた場合に、視線集中領域Aにおける照度変化部分を従来の車両用前照灯装置と比べて小さくすることができる。したがって、運転者に違和感を与える可能性を低減することができる。
【0076】
また、一般に灯具ユニットは、形成した配光パターンの中心領域の照度が外側領域の照度よりも高くなるように設計されている。そのため、灯具ユニットをスイブルさせて右片ハイ用配光パターンRHiXを移動させる従来の車両用前照灯装置では、視線集中領域Aと高照度領域とが重なる部分の面積変化量が大きかった。これに対し、本実施の形態に係る車両用前照灯装置200は、第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3を切り替えることで、灯具ユニット10をスイブルさせずに照射領域を変化させている。この場合、視線集中領域Aと高照度領域とが重なる部分の面積変化量を小さくすることができるため、視線集中領域Aにおける照度変化部分を小さくすることができる。したがって、運転者に違和感を与える可能性を低減することができる。
【0077】
さらに、運転者は一般に鉛直方向の明暗変化よりも水平方向の明暗変化に対して強い違和感を抱く傾向にある。そのため、鉛直カットオフラインXCLが視線集中領域Aに重なる従来の右片ハイ用配光パターンRHiXに比べて、第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3が視線集中領域Aに重なる本実施の形態の第1付加配光パターンRHi1〜RHi3の方が、運転者に与える違和感を低減することができる。
【0078】
車両用前照灯装置200は、照射制御部228Rによる対向車線側の前方車両の存在に応じた配光パターンの切替え制御に加えて、照射制御部228Lによる自車線側の前方車両に応じた配光パターンの切替え制御を実施してもよい。この場合には、上述のスプリット配光パターンが形成される。具体的には、照射制御部228Lは、前方車両の存在に応じてロービーム用配光パターンLo、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3、およびハイビーム用配光パターンHiを切り替え制御し、照射制御部228Lは、前方車両の存在に応じてロービーム用配光パターンLo、第2付加配光パターンLHi1〜LHi3、およびハイビーム用配光パターンHiを切り替え制御する。これにより、照射制御部228L、228Rは、前方車両を遮光領域に含むようなスプリット配光パターンを形成する。また、照射制御部228L,228Rは、前方車両の存在位置に応じて配光パターンを切り替えることで、移動する前方車両の位置に合わせて遮光領域を変形させる。このような制御により、前方車両に与えるグレアを防ぎながら、他の領域、特に左右の路肩領域における運転者の視認性を向上させることができる。
【0079】
次に、上述の構成を備えた本実施の形態の車両用前照灯装置200によるスプリット配光パターンの形成制御の一例を説明する。図8(A)〜図8(E)は、先行車両と配光パターンとの関係を説明するための図である。図8(A)〜図8(E)に示す状況は、先行車(自車線を走行中の自車前方の車両)との間隔が相対的に近付いてくる場合である。
【0080】
例えば、図8(A)に示すように、前方車両が検知されない場合には、照射制御部228はハイビーム用配光パターンHiを形成する。そして、図8(B)に示すように、前方車両500(先行車)が遠方に存在する場合には、照射制御部228は第1傾斜カットオフラインRCL3を有する第1付加配光パターンRHi3および第2傾斜カットオフラインLCL3を有する第2付加配光パターンLHi3を形成する。図8(C)に示すように、前方車両500が自車両に接近すると、照射制御部228は、第1付加配光パターンRHi3から、第1傾斜カットオフラインRCL3よりも傾斜角度の小さい第1傾斜カットオフラインRCL2を有する第1付加配光パターンRHi2に切り替えるとともに、第2付加配光パターンLHi3から、第2傾斜カットオフラインLCL3よりも傾斜角度の小さい第2傾斜カットオフラインLCL2を有する第2付加配光パターンLHi2に切り替える。また、図8(D)に示すように、前方車両500がさらに自車両に接近すると、照射制御部228は、第1付加配光パターンRHi2から、第1傾斜カットオフラインRCL2よりも傾斜角度の小さい第1傾斜カットオフラインRCL1を有する第1付加配光パターンRHi1に切り替えるとともに、第2付加配光パターンLHi2から、第2傾斜カットオフラインLCL2よりも傾斜角度の小さい第2傾斜カットオフラインLCL1を有する第2付加配光パターンLHi1に切り替える。そして、図8(E)に示すように、前方車両500がさらに自車両に接近すると、照射制御部228はロービーム用配光パターンLoを形成する。
【0081】
なお、車両用前照灯装置200は、照射制御部228Lによる自車線側の前方車両に応じた配光パターンの切替え制御のみを実施することもできる。この場合には、前方車両に与えるグレアを防ぎながら、他の領域、特に左の路肩領域における運転者の視認性を向上させることができる。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態に係る車両用前照灯装置200では、前照灯ユニット210Rが、ロービーム用配光パターンLoのカットオフラインから上方の対向車線側の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが連続的に高くなるような第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3を有する第1付加配光パターンRHi1〜RHi3を形成可能である。そして、照射制御部228Rが、前方車両の存在に応じて、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3の形成を切り替え制御する。具体的には、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3は、それぞれの第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3の傾斜角度が異なり、照射制御部228Rが、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3の切替えによって傾斜角度を段階的に変化させている。
【0083】
このように、前方車両の存在に応じて配光パターンを変化させることで、対向車に与えるグレアを防止しつつ、運転者の対向車線側の領域における視認性を向上させることができる。また、対向車線側の領域に斜めに延びるカットオフラインを有する第1付加配光パターンRHi1〜RHi3を切り替えているため、鉛直なカットオフラインを有する右片ハイ用配光パターンRHiXをスイブルさせる従来の構成と比べて、視線集中領域Aにおける照度変化領域を小さくすることができる。また、配光パターンの高照度領域全体が視線集中領域Aからずれることがない。そのため、視線集中領域Aにおける照度変化領域を小さくすることができる。したがって、前方車両の存在に応じて配光パターンを変化させた場合に、運転者に違和感を与える可能性を低減することができる。
【0084】
また、本実施の形態の車両用前照灯装置200は、回転シェード12を備えている。そのため、少ないスペースで第1付加配光パターンRHi1〜RHi3、ロービーム用配光パターンLo、およびハイビーム用配光パターンHiを含む複数の配光パターンを形成することができる。また、回転シェード12とした場合には、傾斜カットオフラインの形状を連続的に変化させることもできる。
【0085】
さらに、本実施の形態の車両用前照灯装置200では、前照灯ユニット210Lが、ロービーム用配光パターンLoのカットオフラインから上方の自車線側の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが連続的に高くなるような第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3を有する第2付加配光パターンLHi1〜LHi3を形成可能である。そして、照射制御部228L,228Rが、前方車両の存在に応じて、第2付加配光パターンLHi1〜LHi3、および第1付加配光パターンRHi1〜RHi3を切り替え制御する。
【0086】
そのため、対向車および先行車に与えるグレアを防止しつつ、運転者の対向車線側および自車線側の領域における視認性を向上させることができる。また、自車線側についても、斜めに延びる第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3を有する第2付加配光パターンLHi1〜LHi3を切り替えているため、鉛直なカットオフラインを有する左片ハイ用配光パターンをスイブルさせる従来の構成と比べて、運転者に違和感を与える可能性を低減することができる。なお、左片ハイ用配光パターンは、右片ハイ用配光パターンRHiXと略左右対称の構造である。
【0087】
このように、本実施の形態に係る車両用前照灯装置200は、車両前方に存在する前方車の位置に応じて遮光領域(照射領域)を変化させる場合、カットオフラインを切り替えることで、灯具ユニットをスイブルさせずに照射領域を変化させている。これにより、運転者に違和感を与える可能性を低減することができるが、前方車の位置によっては、カットオフラインの切替えのみでは適切な遮光領域(照射領域)を実現できない場合ある。
【0088】
前述のように、車両用前照灯装置200は、バルブ14から出射された光の一部を遮光可能に構成されているシェード機構18を有する灯具ユニット10と、灯具ユニット10の光軸を車幅方向に旋回可能なスイブルアクチュエータ222と、前方に存在する車両の位置に応じて所定の配光パターンを形成すべくシェード機構18およびスイブルアクチュエータ222を制御する照射制御部228と、を備える。
【0089】
シェード機構18は、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような傾斜カットオフラインを有する付加配光パターンであって、当該傾斜カットオフラインの形状が異なる複数の付加配光パターンを形成可能に構成されている。
【0090】
そこで、このような構成を有する車両用前照灯装置200を用いて、より広範囲な前方視認性と前方車に対するグレア低減とを両立し得る配光パターンの切替えを実現すべく、本発明者らは更に以下の構成を考案した。
【0091】
本実施の形態に係る照射制御部228は、前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3および第2付加配光パターンLHi1〜LHi3から選択されて組み合わされた、車両への光の照射が遮光される1つの付加配光パターンを形成すべくシェード機構18を制御する。ここで、所定の第1の領域とは、例えば、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3および第2付加配光パターンLHi1〜LHi3を一つまたは二つ組み合わせて実現される配光パターンの遮光領域をいう。
【0092】
照射制御部228は、また、前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、車両が光で照射されないように、複数の第1付加配光パターンRHi1〜RHi3および第2付加配光パターンLHi1〜LHi3から選択された1つの付加配光パターンを形成すべく遮光部を制御するとともに、灯具ユニット10の光軸Oを旋回させるべくスイブルアクチュエータ222を制御する。ここで、所定の第2の領域とは、例えば、第1付加配光パターンRHi1〜RHi3および第2付加配光パターンLHi1〜LHi3を一つまたは二つ組み合わせて実現される付加配光パターンの遮光領域ではないが、灯具ユニット10の光軸Oを旋回させることで移動した付加配光パターンの遮光領域をいう。
【0093】
この態様によると、車両が第1の領域に位置する場合、シェード機構18を制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、車両が第2の領域に位置する場合、シェード機構18とスイブルアクチュエータ222とを制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、第1の領域に車両が存在する場合には、スイブルアクチュエータ222を用いて灯具ユニットの光軸を旋回させる必要がなく、光軸の変化に伴う運転者の違和感を少なくすることができる。
【0094】
図9は、第1の領域および第2の領域を説明するための模式図である。図9に示す消失点の左右の領域であるゾーンIaおよびゾーンIbは、前述の第1の領域に相当する。また、ゾーンIaの左(車幅方向外側)に位置するゾーンIIaおよびゾーンIbの右(車幅方向外側)に位置するゾーンIIbは、前述の第2の領域に相当する。また、ゾーンIIaの左(車幅方向外側)にはゾーンIIIaが、ゾーンIIbの右(車幅方向外側)にはゾーンIIIbが位置する。
【0095】
続いて、上述の構成を備えた本実施の形態の車両用前照灯装置200による、シェード機構およびスイブル機構を併用した配光パターンの形成制御の一例を説明する。図10(A)〜図10(D)は、先行車両と配光パターンとの関係を説明するための図である。図10(A)〜図10(D)に示す状況は、先行車(自車線を走行中の自車前方の車両)が左カーブに侵入していく場合である。
【0096】
例えば、図10(A)に示すように、前方車両600(先行車)が遠方に存在する場合には、照射制御部228は第1傾斜カットオフラインRCL3を有する第1付加配光パターンRHi3および第2傾斜カットオフラインLCL3を有する第2付加配光パターンLHi3を形成する。その後、図10(B)に示すように、前方車両600が左カーブに侵入し、前方車両600が前方視野の左側にずれると、照射制御部228Rは、第2付加配光パターンLHi3から、第2傾斜カットオフラインLCL3よりも傾斜角度の小さい第2傾斜カットオフラインLCL2を有する第2付加配光パターンLHi2に切り替える。また、図10(C)に示すように、前方車両600が左カーブに更に侵入し、前方車両600が前方視野の左側にずれると、照射制御部228Rは、第2付加配光パターンLHi2から、第2傾斜カットオフラインLCL2よりも傾斜角度の小さい第2傾斜カットオフラインLCL1を有する第2付加配光パターンLHi1に切り替える。
【0097】
なお、図10(B)、図10(C)で示されている前方車両600の位置は、図9で示したゾーンIa(所定の第1の領域)に相当する位置である。したがって、前方車両600がこの位置にある場合、照射制御部228は、第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3を切り替えることで、灯具ユニット10をスイブルすることなく、前方車両600の位置に応じて遮光領域を変化させている。
【0098】
そして、図10(D)に示すように、前方車両600が左カーブに更に侵入し、前方車両600が前方視野の左側に更にずれると、前方車両600の位置は、図9で示したゾーンIIaに相当する位置となる。この位置は、前述の第1の領域よりも車幅方向外側の所定の第2の領域であって、複数の第2付加配光パターンLHi1〜LHi3のいずれを選択しても前方車両への遮光ができない領域に相当する。
【0099】
この場合、照射制御部228は、複数の第2付加配光パターンLHi1〜LHi3から選択された、遮光域の最も広い1つの第2付加配光パターンLHi1を形成すべくシェード機構18を制御するとともに、選択された第2付加配光パターンLHi1によって該車両が光で照射されないように灯具ユニット10の光軸を旋回させるべくスイブルアクチュエータ222を制御する。その結果、第2付加配光パターンLHi1は、図10(D)に示すように、図の左側に移動し、前方車両600が遮光領域に含まれる。
【0100】
これにより、車両前方のより広範囲な領域に対して前方視認性を確保できる。また、第1の領域に存在する車両が第2の領域に徐々に移動する場合、はじめはシェード機構18を制御することで運転者に違和感を与えることなく前方車に対するグレアの低減を図りつつ、車両が第2の領域に移動した場合にスイブルアクチュエータ222の制御が開始されるため、制御が容易となる。
【0101】
次に、図10(A)〜図10(D)に示すような、ADB+AFS(スイブル機能)制御モードを併用した配光パターンの形成制御についてフローチャートを用いて説明する。図11は、実施の形態に係る車両用前照灯装置における、配光パターン形成の制御フローチャートの一例である。このフローは、照射制御部228が所定のタイミングで繰り返し実行する。
【0102】
まず、照射制御部228は、車両制御部302から得られた情報に基づいて、ADB+AFSモードの実行指示がなされているか判断する(S200)。ADB+AFSモードの実行指示がなされていない場合(S200のNo)、本ルーチンを終了する。ADB+AFSモードの実行指示がなされていた場合(S200のYes)、照射制御部228はADB+AFSモードを実施して、カメラ306から取得したデータに基づいて前方車両が検知されたか判定し(S202)、前方車両が検知された場合にはその前方車両が図9に示したどのゾーンに位置しているかを判定する(S204)。
【0103】
照射制御部228は、ゾーンIIIaまたはゾーンIIIbのいずれか一方に前方車両が存在しているか否かを判定する(S206)。ゾーンIIIaまたはゾーンIIIbの少なくともいずれか一方に前方車両が存在していると判定された場合(S206のYes)、ゾーンIIIaおよびゾーンIIIbのいずれにも前方車両が存在しているか否かが判定される(S208)。
【0104】
ゾーンIIIaおよびゾーンIIIbのいずれにも前方車両が存在していると判定された場合(S208のYes)、照射制御部228は、ロービーム用配光パターンLoを形成し(S210)、本ルーチンを終了する。
【0105】
ゾーンIIIaおよびゾーンIIIbのいずれか一方にしか前方車両が存在していないと判定された場合(S208のNo)、右片ハイ用配光パターンRHiXまたは左片ハイ用配光パターンを形成し(S212)、本ルーチンを終了する。
【0106】
ゾーンIIIaまたはゾーンIIIbのいずれにも前方車両が存在していないと判定された場合(S206のNo)、ゾーンIIaまたはゾーンIIbに前方車両が存在しているか否かが判定される(S214)。ゾーンIIaおよびゾーンIIbのいずれかに前方車両が存在していると判定された場合(S214のYes)、照射制御部228は、シェード機構18を制御し、複数の第1付加配光パターンおよび複数の第2付加配光パターンの中からそれぞれ最適な1つの付加配光パターンを選択するとともに、スイブルアクチュエータ222を駆動し、ゾーンIIaまたはゾーンIIbに存在する前方車両にグレアを与えないような配光パターンを形成し(S216)、本ルーチンを終了する。
【0107】
ゾーンIIaまたはゾーンIIbのいずれにも前方車両が存在していないと判定された場合(S214のNo)、ゾーンIaまたはゾーンIbに前方車両が存在しているか否かが判定される(S218)。ゾーンIaおよびゾーンIbのいずれかに前方車両が存在していると判定された場合(S218のYes)、照射制御部228は、シェード機構18を制御し、複数の第1付加配光パターンおよび複数の第2付加配光パターンの中からそれぞれ最適な1つの付加配光パターンを選択し、ゾーンIaまたはゾーンIbに存在する前方車両にグレアを与えないような配光パターンを形成し(S220)、本ルーチンを終了する。
【0108】
ゾーンIaまたはゾーンIbのいずれにも前方車両が存在していないと判定された場合(S218のNo)、照射制御部228は、ハイビーム用配光パターンHiを形成し(S222)、本ルーチンを終了する。
【0109】
このように、照射制御部228は、取得した車両前方の情報に基づいて車両前方を複数の領域に分割するとともに、該複数の領域のいずれかに車両が存在する場合、車両が存在する領域に応じてシェード機構18やスイブルアクチュエータ222を制御し、所定の配光パターンを形成することができる。これにより、車両前方に存在する車両の位置に応じた適切な配光パターンの形成を簡易に制御できる。
【0110】
以上説明した本実施の形態に係る車両用前照灯装置200の作用効果は、以下のように述べることもできる。
【0111】
車両用前照灯装置200の照射制御部228は、シェード機構18を制御することで、複数の第1付加配光パターンRHi1〜RHi3および複数の第2付加配光パターンLHi1〜LHi3の切替えによって傾斜角度を段階的または連続的に変化させることができる。これにより、前方に存在する車両に対するグレアを、その車両の位置に応じてより適切に低減することができる。
【0112】
また、照射制御部228は、前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、(i)複数の第1付加配光パターンRHi1〜RHi3から選択された、該車両への光の照射が遮光される1つの第1付加配光パターンを形成すべく前照灯ユニット210Rのシェード機構18を制御し、および、(ii)複数の第2付加配光パターンLHi1〜LHi3から選択された、該車両への光の照射が遮光される第2付加配光パターンを形成すべく前照灯ユニット210Lのシェード機構18を制御する。
【0113】
また、照射制御部228は、前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、(i)該車両が光で照射されないように、複数の第1付加配光パターンRHi1〜RHi3から選択された1つの第1付加配光パターンを形成すべく前照灯ユニット210Rのシェード機構18を制御し、および、(ii)該車両が光で照射されないように、複数の第2付加配光パターンLHi1〜LHi3から選択された1つの第2付加配光パターンを形成すべく前照灯ユニット210Lのシェード機構18を制御するとともに、(iii)前照灯ユニット210Rの灯具ユニット10の光軸を旋回させるべくスイブルアクチュエータ222を制御し、および/または、(iv)前照灯ユニット210Lの灯具ユニット10の光軸を旋回させるべくスイブルアクチュエータ222を制御する。これにより、前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とをより高いレベルで両立し得る。
【0114】
また、車両用前照灯装置200のシェード機構18は、複数の配光パターンを形成可能に構成されており、照射制御部228は、前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、複数の配光パターンから選択された1つの配光パターンを形成すべくシェード機構18を制御し、前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、該車両が光で照射されないように、複数の配光パターンから選択された1つの配光パターンを形成すべくシェード機構18を制御するとともに、灯具ユニット10の光軸を旋回させるべくスイブルアクチュエータ222を制御する。
【0115】
この態様によると、車両が第1の領域に位置する場合、シェード機構18を制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、車両が第2の領域に位置する場合、シェード機構18とスイブルアクチュエータ222とを制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、第1の領域に車両が存在する場合には、スイブルアクチュエータ222を用いて灯具ユニット10の光軸を旋回させる必要がなく、光軸の変化に伴う運転者の違和感を少なくすることができる。
【0116】
また、本実施の形態に係る車両用前照灯装置200の動作を配光制御方法と捉えることもできる。本実施の形態に係る配光制御方法は、バルブ14から出射された光の一部を遮光可能に構成されているシェード機構18を有する灯具ユニット10と、灯具ユニット10の光軸を車幅方向に旋回可能なスイブルアクチュエータ222とを備える車両用前照灯装置200の配光制御方法であって、取得した情報に基づいて前方に存在する車両の位置を判別する判別工程と、前方に存在する車両の位置に応じて所定の配光パターンを形成すべくシェード機構18およびスイブルアクチュエータ222を制御する制御工程と、を含む。制御工程は、前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような傾斜カットオフラインを有する付加配光パターンであって、当該傾斜カットオフラインの形状が異なる複数の付加配光パターンから選択された1つの付加配光パターンを形成すべく遮光部を制御する第1の工程と、前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、複数の付加配光パターンから選択された1つの付加配光パターンを形成すべく遮光部を制御するとともに、灯具ユニット10の光軸を旋回させるべくスイブルアクチュエータ222を制御する第2の工程と、を有する。
【0117】
この態様によると、車両が第1の領域に位置する場合、シェード機構18を制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、車両が第2の領域に位置する場合、シェード機構18とスイブルアクチュエータ222とを制御することで前方視認性と前方に存在する車両に対するグレア低減とを両立し得る。また、第1の領域に車両が存在する場合には、スイブルアクチュエータ222を用いて灯具ユニット10の光軸を旋回させる必要がなく、光軸の変化に伴う運転者の違和感を少なくすることができる。
【0118】
以上、本発明を上述の実施の形態を参照して説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではなく、実施の形態の構成を適宜組み合わせたものや置換したものについても本発明に含まれるものである。また、当業者の知識に基づいて実施の形態における組合せや処理の順番を適宜組み替えることや各種の設計変更等の変形を実施の形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0119】
例えば、本実施の形態では、それぞれ3つの第1付加配光パターンおよび第2付加配光パターンを形成しているが、その数は特に限定されない。しかしながら、第1付加配光パターンおよび第2付加配光パターンの数が多い方が前方車両の存在位置に応じた配光パターンの変化をより高精度に実現することができるため好ましい。また、第1傾斜カットオフラインRCL1〜RCL3、および第2傾斜カットオフラインLCL1〜LCL3は、照射領域の高さが段階的に変化するような形状であってもよく、また、曲線形状などであってもよい。
【0120】
また、本実施の形態の回転シェード12については、回転シェード12の外周面12bにシェードプレート24を設けず、外周面12b自体の形状を配光パターンのカットオフラインに対応する形状にしてもよい。この場合には、第1傾斜カットオフラインおよび第2傾斜カットオフラインの傾斜角度を連続的に変化させることができる。
【0121】
さらに、本実施の形態の回転シェード12については、光軸方向から見て、光軸O上に配置されたシェードプレート24における傾斜カットオフラインの外側領域部分に対応するプレート部分から、隣接するシェードプレート24の一部が臨まれるように、各シェードプレート24を配置してもよい。この場合には、傾斜カットオフラインの外側領域部分の鮮明度を中心領域部分よりも低くすることができる。
【0122】
また、上述の実施の形態では、照射制御部228L,228Rが、前方車両の存在状態等を判断しているが、車両制御部302がこれらの判断を実行するようにしてもよく、上述した実施の形態と同様の効果を得ることができる。この場合、照射制御部228L,228Rは、車両制御部302からの指示に基づいてバルブ14の点消灯や、スイブルアクチュエータ222およびモータ238の駆動等を制御する。
【符号の説明】
【0123】
LCL1 第2傾斜カットオフライン、 LHi1 第2付加配光パターン、 RCL1 第1傾斜カットオフライン、 RHi1 第1付加配光パターン、 LCL2 第2傾斜カットオフライン、 LHi2 第2付加配光パターン、 RCL2 第1傾斜カットオフライン、 RHi2 第1付加配光パターン、 LCL3 第2傾斜カットオフライン、 LHi3 第2付加配光パターン、 RCL3 第1傾斜カットオフライン、 RHi3 第1付加配光パターン、 10 灯具ユニット、 12 回転シェード、 12a 回転軸、 14 バルブ、 18 シェード機構、 24 シェードプレート、 200 車両用前照灯装置、 222 スイブルアクチュエータ、 228 照射制御部、 230 電源回路、 232 可変シェード制御部、 234 スイブル制御部、 306 カメラ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源から出射された光の一部を遮光可能に構成されている遮光部を有する灯具ユニットと、
前記灯具ユニットの光軸を車幅方向に旋回可能な駆動部と、
前方に存在する車両の位置に応じて所定の配光パターンを形成すべく前記遮光部および前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記遮光部は、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような傾斜カットオフラインを有する付加配光パターンであって、当該傾斜カットオフラインの形状が異なる複数の付加配光パターンを形成可能に構成されており、
前記制御部は、
前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、前記複数の付加配光パターンから選択された、該車両への光の照射が遮光される1つの付加配光パターンを形成すべく前記遮光部を制御し、
前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、該車両が光で照射されないように、前記複数の付加配光パターンから選択された1つの付加配光パターンを形成すべく前記遮光部を制御するとともに、前記灯具ユニットの光軸を旋回させるべく前記駆動部を制御することを特徴とする車両用前照灯装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前方に存在する車両の位置が、前記第1の領域よりも車幅方向外側の所定の第2の領域であって前記複数の付加配光パターンのいずれを選択しても該車両への遮光ができない第2の領域にある場合、前記複数の付加配光パターンから選択された、遮光域の最も広い1つの付加配光パターンを形成すべく前記遮光部を制御するとともに、選択された該1つの付加配光パターンによって該車両が光で照射されないように前記灯具ユニットの光軸を旋回させるべく前記駆動部を制御することを特徴とする請求項1に記載の車両用前照灯装置。
【請求項3】
前記灯具ユニットは、車両前方へ光を照射可能な光源を更に有し、
前記遮光部は、回転駆動することにより回転位置に応じて前記複数の付加配光パターンのうちいずれか1つを形成可能な回転体を有することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用前照灯装置。
【請求項4】
前記複数の付加配光パターンは、それぞれの傾斜カットオフラインの傾斜角度が異なり、
前記制御部は、前記遮光部を制御することで前記複数の付加配光パターンの切替えによって前記傾斜角度を段階的または連続的に変化させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用前照灯装置。
【請求項5】
前記灯具ユニットは、
光源から出射された光の一部を遮光可能に構成されている第1の遮光部を有する第1の灯具ユニットと、
光源から出射された光の一部を遮光可能に構成されている第2の遮光部を有する第2の灯具ユニットとを備え、
前記駆動部は、
前記第1の灯具ユニットの光軸を車幅方向に旋回可能な第1の駆動部と、
前記第2の灯具ユニットの光軸を車幅方向に旋回可能な第2の駆動部とを備え、
前記第1の遮光部は、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方の対向車線側の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような第1の傾斜カットオフラインを有する第1の付加配光パターンであって、当該第1の傾斜カットオフラインの形状が異なる複数の第1の付加配光パターンを形成可能に構成されており、
前記第2の遮光部は、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方の自車線側の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような第2の傾斜カットオフラインを有する第2の付加配光パターンであって、当該第2の傾斜カットオフラインの形状が異なる複数の第2の付加配光パターンを形成可能に構成されており、
前記制御部は、
前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、(i)前記複数の第1の付加配光パターンから選択された、該車両への光の照射が遮光される1つの第1の付加配光パターンを形成すべく前記第1の遮光部を制御し、および、(ii)前記複数の第2の付加配光パターンから選択された、該車両への光の照射が遮光される1つの第2の付加配光パターンを形成すべく前記第2の遮光部を制御し、
前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、(i)該車両が光で照射されないように、前記複数の第1の付加配光パターンから選択された1つの第1の付加配光パターンを形成すべく前記第1の遮光部を制御し、および、(ii)該車両が光で照射されないように、前記複数の第2の付加配光パターンから選択された1つの第2の付加配光パターンを形成すべく前記第2の遮光部を制御するとともに、(iii)前記第1の灯具ユニットの光軸を旋回させるべく前記第1の駆動部を制御し、および/または、(iv)前記第2の灯具ユニットの光軸を旋回させるべく前記第2の駆動部を制御する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の車両用前照灯装置。
【請求項6】
前記制御部は、取得した車両前方の情報に基づいて車両前方を複数の領域に分割するとともに、該複数の領域のいずれかに車両が存在する場合、車両が存在する領域に応じて前記遮光部および駆動部を制御し、所定の配光パターンを形成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の車両用前照灯装置。
【請求項7】
光源から出射された光の一部を遮光可能に構成されている遮光部を有する灯具ユニットと、
前記灯具ユニットの光軸を車幅方向に旋回可能な駆動部と、
前方に存在する車両の位置に応じて所定の配光パターンを形成すべく前記遮光部および前記駆動部を制御する制御部と、を備え、
前記遮光部は、複数の配光パターンを形成可能に構成されており、
前記制御部は、
前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、前記複数の配光パターンから選択された、該車両への光の照射が遮光される1つの配光パターンを形成すべく前記遮光部を制御し、
前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、該車両が光で照射されないように、前記複数の配光パターンから選択された1つの配光パターンを形成すべく前記遮光部を制御するとともに、前記灯具ユニットの光軸を旋回させるべく前記駆動部を制御することを特徴とする車両用前照灯装置。
【請求項8】
光源から出射された光の一部を遮光可能に構成されている遮光部を有する灯具ユニットと、前記灯具ユニットの光軸を車幅方向に旋回可能な駆動部とを備える車両用前照灯装置の配光制御方法であって、
取得した情報に基づいて前方に存在する車両の位置を判別する判別工程と、
前方に存在する車両の位置に応じて所定の配光パターンを形成すべく前記遮光部および前記駆動部を制御する制御工程と、を含み、
前記制御工程は、
前方に存在する車両の位置が所定の第1の領域にある場合、ロービーム用配光パターンのカットオフラインから上方の領域に、車幅方向外側にいくにつれて照射領域の高さが段階的または連続的に高くなるような傾斜カットオフラインを有する付加配光パターンであって、当該傾斜カットオフラインの形状が異なる複数の付加配光パターンから選択された、該車両への光の照射が遮光される1つの付加配光パターンを形成すべく前記遮光部を制御する第1の工程と、
前方に存在する車両の位置が所定の第2の領域にある場合、該車両が光で照射されないように、前記複数の付加配光パターンから選択された1つの付加配光パターンを形成すべく前記遮光部を制御するとともに、前記灯具ユニットの光軸を旋回させるべく前記駆動部を制御する第2の工程と、
を有することを特徴とする配光制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−38038(P2013−38038A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175604(P2011−175604)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】