説明

車両用成形内装材

【課題】ポリウレタン発泡層の両側にガラス繊維補強層を設け、ガラス繊維補強層の外側にそれぞれ表皮層と裏面層とを有する車両用内装材であって、車両用内装材全体の曲げ剛性を十分に向上させる。
【解決手段】硬質ウレタン発泡体からなる基材層11と、該基材層11の両側に接合された第1ガラス繊維補強層12及び第2ガラス繊維補強層14と、該第1ガラス繊維補強層12の外側に接合された表皮層13と、該第2ガラス繊維補強層14の外側に接合された裏面層とからなる車両用成形内装材1であって、該基材層11と該第1ガラス繊維補強層12との間、該基材層11と該第2ガラス繊維補強層14との間、又は該第2ガラス繊維補強層14と該裏面層15との間の少なくとも1つに、不織布に熱硬化性樹脂を混合した強化層20が配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高強度な車両用成形天井材、成形ドアトリム、リヤパッケージトレイ、トノボード、車両用フロア材等の車両用成形内装材、特に曲げ剛性に優れた車両用成形天井材、成形ドアトリム、リヤパッケージトレイ、トノボード、車両用フロア材等の車両用成形内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車両用成形内装材としては、例えば、成形天井材を構成するものとして硬質ウレタン等を基材として、その両側にガラス繊維補強層を設け、両補強層の外側にそれぞれ表皮層、裏面層を設けたものが知られている。この場合、ガラス補強層としては、基材の補強と表皮/裏面との接着強度を得るためにウレタン系樹脂(例えば、イソシアネート系樹脂)からなる接着剤を塗布(含浸)させたガラスマット等を基材の両側にサンドイッチ状に設けている(特許文献1)。表皮層としては、不織布、織布、編物、プラスチックシート等が用いられている。
【特許文献1】特開2001−301539号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
最近では、レジャーカーやワンボックス車等において、天井面積が広くまた大きく膨らんだ形状にしたものが見受けられる。天井の車両前方側で車幅方向中央部にオーバーヘッドコンソールを設けたものも見受けられる。また、空調機器や各種電装品等の装備品が単体或いはモジュールとして天井に装着するものも見受けられる。このように天井に対して各種装備品などが付加されるようになっているために、成形天井に対して、強度アップ、特に曲げ剛性アップが強く要求されて来ている。
【0004】
そこで、一般的な成形天井において、成形天井の曲げ剛性不足を補う場合に、天井全体の曲げ強度(曲げ剛性)を司るのは主として基材、ガラス繊維補強層及びガラス繊維補強層に塗布したウレタン系樹脂の接着剤であり、基材の厚みが厚い方が、またガラス繊維補強層は目付の多い方が、更に接着剤は塗布料が多い方が高強度になる。その上、基材の両側に接着剤を塗布したガラス繊維補強層が基材と一体化し、サンドイッチ構造となることによって、天井全体の強度及び剛性が保たれており、特にガラス繊維補強層は車がそのライフサイクル中に受けるであろう冷湿熱サイクル(冷たい雰囲気、暑い雰囲気、多湿雰囲気などを繰り返し受ける状態を言う)による天井の耐変形性に対して大きく貢献している。今までにも、ガラス繊維補強層に代わる材料としてカーボンや天然繊維等の種々の材料が試みられたが、性能及びコストの点でガラス繊維が主流となっている。
【0005】
そのために、上記のようにウレタン系基材とガラス繊維補強層を使用した成形天井において、例えば、基材ウレタンの厚さを厚くするとしても、成形天井の天井裏面側と車体のルーフ用金属板との隙間、特に車体レインホースメントとの間隙や天井裏面側に配設されるモジュール部品(例えば、コンソール、空調機器、電装品等の装備品、ワイヤーハーネス等)の取付条件等で成形天井の厚さが制限される。また、成形天井を厚くすればするほど成形性が劣化するため、あまり厚くできない点もある。基材としては、ある程度の基本厚さは必要であるが、あまり厚くしても厚さの割に強度アップ機能が期待できず、コスト的にも不利である。したがって、基材を必要以上に厚くしても、あまり意味が無いものである。
【0006】
ガラス繊維補強層の目付量を多くする場合、表皮側のガラス繊維補強層を厚くしすぎると、成形後にガラス繊維補強層に起因する表面シワが目立つようになり、製品として成り立たなくなるので、経験的には150g/m程度までが限界である。裏面側のガラス繊維補強層の目付量を多くする場合、表皮側ほどシワが気にならないので、表皮側に比較して更に厚くすることが可能であるが、取り扱い可能な厚さとしてはせいぜい250g/m程度までである。これ以上に厚くする場合には、例えば230g/mの厚さのガラス繊維補強層を2枚重ねにすることも考えられるが、作業性が悪化するとともに成形性が大幅に悪化する不具合を有する。
【0007】
接着剤の量を多くする場合、表皮側のガラス繊維補強層の接着剤を多くする場合には、表皮材質により差はあるが、25g/m以上になると接着剤が染み出して表皮を黄変させ、商品性を損なう結果となるので、あまり多くできない。接着剤の染み出しを防止するために、染み出し防止用のフイルムを介在させることもあるが、この場合には吸音性能が大きく損なわれる。裏面側のガラス繊維補強層の接着剤層を多くする場合には、ある程度の自由度があるが、ガラス繊維補強層の接着剤保持力に限界があり余り多くできない、又ガラス繊維補強層からはみ出し成形設備や作業者の手等に付着した接着剤が、間接的に表皮に転移して商品性を著しく損なう危険性があることと、べとつき感が強く出て作業性が悪化する恐れがある。
【0008】
以上説明したように、基材、ガラス繊維補強層又は接着剤層を厚くすることには限界があり、いずれも必要とする剛性アップが得られない結果となっており、他の手段で剛性を向上する技術が研究されている。
【0009】
特許文献1に示すものでは、ポリウレタン発泡層の両側にガラス繊維補強層を設け、ガラス繊維補強層の外側にそれぞれ表皮層と裏面層とを有するものであって、更にガラス繊維補強層と表皮層との間に不織布或いはガラスマットからなる吸音性能向上材を配設したものが開示されている。不織布層をガラス繊維補強層と表皮層との間に配設することで、吸音性能を向上できるようにしているが、成形天井としての強度、特に曲げ剛性が不足する不具合を有する。
【0010】
本発明では、上記従来技術の問題点を考慮し、ポリウレタン発泡層の両側にガラス繊維補強層を設け、ガラス繊維補強層の外側にそれぞれ表皮層と裏面層とを有するものにおいて、成形天井全体の曲げ剛性を十分に向上できるものを追求して、各種の材料を研究しテストしてみた。その結果、通常ではガラス繊維、植物繊維、カーボン繊維等の繊維体を補強部材とするのであるが、本発明では、発想を変換して、通常は接着剤として補強繊維等に含浸されているウレタン系等の熱硬化性樹脂を成型時の熱で硬化させてシート材として使用できないかと考えた。そのために、この熱硬化性樹脂を保持するための素材について、各種の素材を実験研究した。その結果、上記熱硬化性樹脂と不織布とを混在させて混在マット状に形成し、この混在マットを成形すると補強効果を有する強化層とすることができることを見いだした。特に、上記熱硬化性樹脂が不織布繊維の間に入り込んで両者が混在する形となり、上記熱硬化性樹脂に不織布が補強繊維として充填されたマットのようになっており、この構造によって、補強効果が得られるものができたと思われる。
【0011】
特に、上記混在マットとしたものを、表皮側のガラス繊維補強層と基材との間、裏面層側のガラス繊維補強層と基材との間、又は裏面層側のガラス繊維補強層と裏面層との間の少なくとも1箇所に配置して一緒に成形すれば、曲げ剛性の高い成形内装材が得られることを見いだした。即ち、従来では不織布は吸音材やクッション材として成形天井に使用されているが、発明者らは、この不織布を従来のような使用形態ではなく、不織布と熱硬化性樹脂と混在させてマット状にして、成形することによって、高剛性な混在マットとして使用することとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
具体的には、請求項1の発明は、硬質ウレタン発泡体からなる基材層と、
該基材層の両側に接合された第1ガラス繊維補強層及び第2ガラス繊維補強層と、
該第1ガラス繊維補強層の外側に接合された表皮層と、
該第2ガラス繊維補強層の外側に接合された裏面層とからなる車両用成形内装材において、
該基材層と該第1ガラス繊維補強層との間、該基材層と該第2ガラス繊維補強層との間、又は該第2ガラス繊維補強層と該裏面層との間の少なくとも1つに、不織布に熱硬化性樹脂を混合した強化層が配置されている構成である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車両用成形内装材において、該熱硬化性樹脂がウレタン系樹脂である構成である。
【0014】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の車両用成形内装材において、車両用成形内装材が成形天井であり、該強化層が該成形天井全面に設けられている構成である。
【0015】
請求項4の発明は、請求項2又は3記載の車両用成形内装材において、該強化層の不織布の目付け量が20g/m〜100g/mであり、ウレタン系樹脂が不織布の80重量%〜120重量%であること構成である。
【0016】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用成形内装材において、該第1ガラス繊維補強層はウレタン系樹脂からなる接着剤を含有し、該第1ガラス繊維補強層の目付け量が50g/m〜150g/mであり、ウレタン系樹脂が該第1ガラス繊維補強層の10重量%〜50重量%である構成である。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用成形内装材において、該第1ガラス繊維補強層はウレタン系樹脂からなる接着剤を含有し、該第2ガラス繊維補強層の目付け量が50g/m〜250g/mであり、ウレタン系樹脂が該第2ガラス繊維補強層の10重量%〜50重量%である構成である。
【0018】
請求項7の発明は、硬質ウレタン発泡体からなる基材層と、該基材層の両側に接合された第1カーボン繊維補強層及び第2カーボン繊維補強層と、該第1カーボン繊維補強層の外側に接合された表皮層と、該第2カーボン繊維補強層の外側に接合された裏面層とからなる車両用成形内装材において、該基材層と該第1カーボン繊維補強層との間、該基材層と該第2カーボン繊維補強層との間、又は該第2カーボン繊維補強層と該裏面層との間の少なくとも1つに、不織布に熱硬化性樹脂を混合した強化層が配置されていることを特徴とする。
【0019】
請求項8の発明は、硬質ウレタン発泡体からなる基材層と、該基材層の両側に接合された第1繊維補強層及び第2繊維補強層と、該第1繊維補強層の外側に接合された表皮層と、該第2繊維補強層の外側に接合された裏面層とからなる車両用成形内装材において、第1繊維補強層又は第2繊維補強層の一方がガラス繊維であり、他方がカーボン繊維からなり、該基材層と該第1繊維補強層との間、該基材層と該第2繊維補強層との間、又は該第2繊維補強層と該裏面層との間の少なくとも1つに、不織布に熱硬化性樹脂を混合した強化層が配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、不織布と熱硬化性樹脂とを混在させた混在マットからなる強化層が、成形内装材全体の曲げ剛性を向上できるとともに吸音性能も向上できる。
【0021】
請求項2の発明によれば、ウレタン系樹脂の硬化により、ウレタン系樹脂と不織布が混在するマット状の強化層が高剛性な混在マット層として所定形状に成形されると共に、吸音性能も優れたものが得られる。また、曲げ剛性向上を目指しガラス繊維の目付け量を増加したものやウレタン系樹脂からなる接着剤の含浸量を限界まで増加させたものに比較して極めて表面が滑らかであり、表面にシワや接着剤の染み出しが生じ難い。
【0022】
請求項3の発明によれば、成形天井全体の曲げ剛性を大幅に向上できる。
【0023】
請求項4の発明によれば、不織布の間に入り込んだウレタン系樹脂が溢れ出ることなく、不織布とウレタン系樹脂との混在状態が良好に維持され、高剛性な成形強度を確保できる。
【0024】
請求項5の発明によれば、該不織布に入り込んだウレタン系樹脂が溢れ出ることなく、高剛性な成形強度を確保できる。
【0025】
請求項6の発明によれば、該不織布に入り込んだウレタン系樹脂が溢れ出ることなく、高剛性な成形強度を確保できる。
【0026】
請求項7の発明によれば、表面がしなやかで強曲げ強度な内装材を得られる。
【0027】
請求項8の発明によれば、表面がしなやかで強曲げ強度な内装材を得られる。特に、カーボン繊維を用いるとその効果が顕著である。
【0028】
本発明においては、不織布と熱硬化性樹脂(ウレタン系樹脂)との混在マットである強化層は、基材と第1ガラス繊維補強層(表面側)との間、基材と第2ガラス繊維補強層(裏面側)との間、第2ガラス繊維補強層(裏面側)と裏面材の間の少なくとも1つに設け、第1ガラス繊維補強層(表面側)と表皮材との間には設けるようにしてない。本発明では、熱硬化性樹脂を不織布と同量程度として多く混在させる(通常に接着剤として使用する量レベルでない)ので、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂が表面側に染み出る可能性が有るので、第1ガラス繊維補強層(表面側)と表皮材との間には設けるようにしてない。
【0029】
特に、基材と第1ガラス繊維補強層(表面側)との間、或いは基材と第2ガラス繊維補強層(裏面側)との間に設けると、ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂が基材であるウレタンフォームに吸収される傾向にあるので、熱硬化性樹脂が染み出ることが予防できるので、特に好ましい。
【0030】
本発明では、成形内装材を成形天井材として使用する際には、基材層であるウレタンフォームはシート状であってよく、その厚さは、3〜12mmのものが使用される。強化層では、不織布の目付量が20g/mよりも少ないと曲げ強度が不十分であり、100g/mより多いと成型性が劣化すると共に重量増加・コストアップになるので、20g/m〜100g/mが好ましく、特に30g/m〜60g/mが好ましい。混在する熱硬化性樹脂、特にウレタン系樹脂の量は、少ないと強化マットとしての剛性が不足し、量が多過ぎると染み出過ぎて形状の見栄えを悪くすることがあるので、成形型内で不織布層から僅かに染み出ている程度とすることが好ましい。即ち、不織布に対して、ウレタン系樹脂は、不織布の目付け量と略同程度で飽和限界になるので、不織布の80重量%〜120重量%とすることが好ましい。特に、通常接着剤としてイソシアネート樹脂等のウレタン系樹脂をガラス繊維等に塗布する際には、ガラス繊維の約4分の1程度をガラス繊維の表面に塗布するのみであるが、本発明では、ガラス繊維等の接着剤としてウレタン系樹脂を用いるのではなく、ウレタン系樹脂と不織布が混在する混在マット状の強化層とするものであるから、上記範囲とすることが好ましい。
【0031】
本発明の第1ガラス繊維補強層の目付量は、少ないと補強層としての強度が不足し、目付け量が多いと成形後にガラス繊維補強層に起因するシワが目立つようになり、製品として成り立たなくなるので、50g/m〜150g/mとすることが好ましく、特に80g/m〜120g/mとすることが好ましい。ウレタン系樹脂等の熱硬化性樹脂からなる接着剤の目付け量は、少ないと補強層としての強度が不足し、目付け量が多いと成形後にガラス繊維補強層に起因するシワが目立つようになり、製品として成り立たなくなるので、該第1ガラス繊維補強層の10重量%〜50重量%とすることが好ましく、特に10g/m〜25g/mとすることが好ましい。
【0032】
本発明の第2ガラス繊維補強層の目付量は、少ないと補強層としての強度が不足し、目付量を多くするとしても取り扱い可能な目付量としてはせいぜい250g/m程度までであり、50g/m〜250g/mとすることが好ましく、特に80g/m〜200g/mとすることが好ましい。ウレタン系樹脂等の熱硬化性接着剤の目付量は、少ないと補強層としての強度が不足し、目付量を多くするとしても取り扱い可能な厚さで限界があり、該第2ガラス繊維補強層の10重量%〜50重量%とすることが好ましく、10g/m〜40g/mとすることが好ましい。
【0033】
また、第1ガラス繊維補強層のガラス繊維や第2ガラス繊維補強層のガラス繊維については、コスト的に許容できれば、ガラス繊維に代えてカーボン繊維とすることも可能である。なお、補強層のガラス繊維やカーボン繊維については、必要最小限の量に低減して、サイザル、竹繊維などの天然植物繊維を混在させた補強層としても良い。
【0034】
表面装飾用の表皮材としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド系の織布または不織布、ビニールレザーが挙げられる。
【0035】
製造方法としては、ウレタンフォーム、第1ガラス繊維層にウレタン系樹脂の接着剤を塗布した第1ガラス繊維補強材シート、第2ガラス繊維層にウレタン系樹脂の接着剤を塗布した第2ガラス繊維補強材シート、不織布にウレタン系樹脂を塗布したマット状の強化層用シートを用意し、ウレタンフォームの表面側に、強化層用シート及び第1ガラス繊維補強材シートを順に積層し、裏面側に第2ガラス繊維補強材シートを積層し、次いで、第1ガラス繊維補強材シートの外側に表皮材を積層するとともに、第2ガラス繊維補強材シートの外側に裏面材を積層し、しかる後、この積層体を加熱した成形型内に配置して加熱加圧により一体成形する。
【0036】
或いは、上記強化層用シートを第2ガラス繊維補強材シートとウレタンフォームとの間、又は第2ガラス繊維補強材シートと裏面材との間に介在させて、この積層体を加熱した成形型内に配置して加熱加圧により一体成形する。
【0037】
また、ウレタンフォームの裏面側に、ウレタン系樹脂の接着剤を塗布(例えば、スプレー塗布)し、補強材用ガラス繊維を散布するようにして第2ガラス繊維補強層を設けるようにしても良い。ウレタンフォームの表面側に、不織布とウレタン系樹脂の強化層用シートを積層した後に、その強化層シートの上にウレタン系樹脂の接着剤を塗布(例えば、スプレー塗布)し、補強材用ガラス繊維を散布するようにして第1ガラス繊維補強層を設けるようにしても良い。
【0038】
又は、前例においては、不織布強化層用シートとガラス繊維補強層用シートとを単独に準備しているが、予め圧縮成形した不織布マットを準備し、その上に補強材用ガラス繊維を散布するようにして第1ガラス繊維補強層を重ねて設け、それから不織布マット及びガラス繊維層にウレタン樹脂を含浸させて、不織布層及びガラス層にウレタン樹脂が含浸された二重層を形成しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態に基づいて、本発明を具体的に説明する。
【0040】
図1は本発明の実施形態1に係わる成形天井の部分図を示す。図2は、図1の実施形態1に使用する成形天井材の積層状態を説明する図である。なお、図1中、左側が車両のフロント側であり、右側が車両のリヤ側である。
【0041】
成形天井1のフロント側の両側には、サンバイザー用の凹部2(片方のみ図示)が形成され、その中間位置にオーバーヘッドコンソール用の開口部3が形成されている。この部分の断面は、図示を省略するが、通常の平面から大きく窪んで形成されている。4は、両側部に設けられるアシストグリップの位置を示し、5はルームランプの位置を示す。
【0042】
本発明では、このような成形天井の全体の剛性不足を補うために、図1に示すように、成形天井の全体に、強化層20を配置している。
【0043】
この部分の断面は、図2に示すように、発泡ウレタンからなる基材層11の表皮側に、強化層20、その外側に第1ガラス繊維補強層12、更にその外側に表皮層13が積層され、基材層11の裏面側には、第2ガラス繊維補強層14、その外側に裏面材15が積層されている構造である。強化層20は、ほぼ同量のウレタン系樹脂と不織布との混在マットであり、成型天井1の全面に配置され、成形天井の成形型で基材等と共に成形される際に、高い曲げ剛性を有するシート材として形成される。また、後で説明するが、吸音性能、特に低周波域から高周波域までの吸音性能に優れたものが得られる。
(実施形態2)
次に、図3に基づいて、実施形態2を説明する。実施形態1と異なる箇所のみ説明し、同じ箇所の説明は省略する。実施形態2では、強化層20の代わりに強化層21を基材層11と第2ガラス繊維補強層14との間に設けたものである。この実施形態2においても、実施形態1と同様に、曲げ剛性が高く、低周波域から高周波域までの吸音性能に優れた成形天井が得られた。
【0044】
(実施形態3)
次に、図4に基づいて、実施形態3を説明する。実施形態1と異なる箇所のみ説明し、同じ箇所の説明は省略する。実施形態3では、強化層20の代わりに強化層22を第2ガラス繊維補強層14と裏面材15との間に設けたものである。この実施形態3においても、実施形態1と同様に、曲げ剛性が高く、低周波域から高周波域までの吸音性能に優れた成形天井が得られた。
【0045】
(実施形態4)
次に、図5に基づいて、実施形態4を説明する。実施形態1と異なる箇所のみ説明し、同じ箇所の説明は省略する。実施形態4では、強化層20を基材層11と第1ガラス繊維補強層12との間に設け、更に強化層21を基材層11と第2ガラス繊維補強層14との間に設けたものである。この実施形態4においては、実施形態1〜3に比較して大幅に曲げ剛性に優れた成形天井が得られると共に、実施形態1と同様に低周波域から高周波域までの吸音性能に優れた成形天井が得られた。
【0046】
次に、本発明に係る成形内装材としての成形天井材を製造した場合の実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、単位面積重量180g/mの連続気泡を有する熱成形可能な硬質ウレタンフォームシート(1200mm×1600mm×厚さ5.5mm)を用意する。直径0.5mm以下、長さ30〜50mmのガラス繊維を約100g/mの目付で均一に散布し、バインダ−で互いに接着した第1ガラス繊維補強材及び第1ガラス繊維補強材と同様な第2ガラス繊維補強材を用意する。第1ガラス繊維補強材及び第2ガラス繊維補強材にはウレタン系樹脂の接着剤を15g/mの目付けで塗布する。そして、ウレタン系樹脂:目付け50g/m、不織布:目付け50g/mのウレタン系樹脂と不織布とが混在した強化層用の混在マットを用意する。この混在マットは成型天井の全面の大きさとする。さらに、トリコットとスラブウレタンとのラミネート製表皮材及び目付け30g/mの不織布とPP(ポリプロピレン)フイルムとのラミネート製裏面材を用意する。
【0047】
上記のように用意した各素材を、成形型内に表皮材−第1ガラス繊維補強材−混在マットー発泡ウレタンフォームシート−第2ガラス繊維補強材−裏面材の順で配置して積層する。成形型内で加圧成形するとともに、互いを接着させる。成形接着後、成形品を成形型から取り出し、幅:1200mm×1600mm、そして天井を形成する全ての材料を含めた総厚が7.5mmとなった成形天井を製造した。
(実施例2)
実施例2では、実施例1と異なるのは、強化シートの配置位置を変更したものである。即ち、ウレタン系樹脂:目付け50g/m、不織布:目付け50g/mのウレタン系樹脂と不織布とが混在した強化層用の混在マットを基材層と第2ガラス繊維補強層の間に変更して配置したものである。
(実施例3)
実施例3では、実施例1と異なるのは、強化シートの配置位置を変更したものである。即ち、ウレタン系樹脂:目付け50g/m、不織布:目付け50g/mのウレタン系樹脂と不織布とが混在した強化層用の混在マットを、実施例1の位置と実施例2の位置の両方に配置したものである。具体的には、強化層用の混在マットを基材層と第1ガラス繊維補強層との間と、基材層と第2ガラス繊維補強層の間の両方に配置したものである。
(比較例1)
実施例1に対して強化層の入ってない成形天井を比較例1とした。即ち、基材層の両側にガラス繊維補強層、その一方の外側に表皮層、その他方の外側に裏面層を配したものである。
(比較例2)
比較例1に対して、曲げ剛性を強化するために、ガラス繊維補強層を厚くしたものを比較例2とした。即ち、裏面側のガラス繊維補強層として、230g/mの目付けのガラス繊維と目付け35g/mのウレタン系樹脂の接着剤を用いた。
【0048】
(比較例3)
比較例2に対して、曲げ剛性を強化するために、ガラス繊維補強層を厚くしたものを比較例3とした。即ち、裏面側のガラス繊維補強層として、230g/mの目付けのガラス繊維と目付け35g/mのウレタン系樹脂の接着剤からなるガラス繊維補強層を2枚重ねにしたものである。
【0049】
実施例1〜3、比較例1〜3との性能評価を表1に示す。
【0050】
【表1】

【0051】
表中「裏面側ガラス繊維補強層」の「ガラス」及び「接着剤」の数値は目付け量を示し、単位はg/mである。強化層の数値は目付け量であって、単位はg/mで示す。
【0052】
なお、実施例1〜3、比較例1〜3について、以下に説明する曲げ強度や評価などの結果は、実施例1〜3、比較例1〜3それぞれについて全て20個のサンプルでの平均値で表わす。
【0053】
*1:比較例1の重量をヘ゛ースとした場合の重量増加量を示す。
【0054】
*2:比較例1の曲げ強度を1とした場合の増加割合を示す。
【0055】
注1:比較例2では、曲げ強度を比較例1の2倍にするのに、比較例1に対して150g/mの重量アップが必要である。
【0056】
注2:実施例1及び2において、比較例2と同等の曲げ強度(比較例1の約2倍の曲げ強度)を得るために、比較例1に対して100g/mの重量アップで可能である。即ち、実施例1及び2は、比較例2に対して、2/3の重量アップで同程度の曲げ強度を得られる。
【0057】
注3:実施例3は、比較例1の3倍の曲げ強度が200g/mの重量アップで可能である。重量アップ割合に対して、効果的に曲げ強度アップを得られる。
【0058】
注4:比較例3は、230g/mのガラス繊維と35g/mのウレタン系樹脂とを2枚重ねで使用した場合であって、実施例3と同様に、比較例1の3倍の曲げ強度が得られる可能性が有る。しかし、曲げ強度は40g/m〜50g/mの範囲でバラツキを生じて不安定なものになっている。この原因は、ウレタン系樹脂の接着剤は略ガラス繊維束の密度に比例して保持されるが、ガラス繊維束の分布が必ずしも均一でないためにウレタン樹脂の接着剤の均一性が損なわれることによるのではないと予測される。
【0059】
また、実施例1〜3及び比較例1〜3についてコストを比較して見ると、ベース<+α<+2α<+βの関係にある。即ち、比較例1に対して、比較例2及び実施例1,2は同程度のコストアップで済む。実施例3は+2αで実施例1及び2に対して、少しコストアップになるが、大幅な曲げ強度アップを得られるので、コスト対曲げ強度アップの観点では効率的である。一方、比較例3は、実施例3に比較してもコストアップになっており、コスト対曲げ強度アップの観点では効率が悪い結果となっている。
【0060】
実施例1〜3及び比較例1〜3について生産性で比較すると、実施例1〜3は、比較例1と遜色ない生産性を有している。それに対して、比較例2は、ガラス繊維が厚いために、ゴワゴワして扱い難く、成形時に裏面材側にシワが発生し、時には裏面材がたくれることがある。また、厚さが厚いために、成形天井と車体ルーフ金属板材との間に配置されるコンソール等のモジュールとの干渉が問題になることがある。更に、比較例3は、比較例2に対して更にガラス繊維が厚いために、更にいっそう取扱い性が大幅に悪くなり、生産性が大幅に劣ることとなる。
【0061】
以上のように、本発明では、上記実施例と比較例の評価結果からも理解できるように、本発明では、不織布と熱硬化性樹脂が混在する強化層を、基材と第1ガラス繊維補強層(表面側)との間、基材と第2ガラス繊維補強層(裏面側)との間、第2ガラス繊維補強層(裏面側)と裏面材との間の少なくとも1箇所に配設することによって、曲げ剛性が大幅に向上できるだけでなく、生産性に優れ、コスト的に効率的に曲げ剛性を改善できる。
【0062】
本発明では、更に可聴域の周波数域及び高周波域においても優れた吸音性を有する。この吸音性能について評価した結果を説明する。
【0063】
一般的に、自動車の天井に求められる吸音性能は、500Hz〜4.5kHzであり、その中でも可聴範囲とされる1kHz〜2.5kHzが特に重要とされている。ウレタンを基材とするウレタン天井に場合の吸音性能は、図6に示すように、Ha:基材厚さ5.5mm、Hb:6.5mm、Hc:7.5mm、Hd:8.5mmとウレタン基材の厚さを増加することによって、可聴範囲の吸音特性が容易に改善可能である。これらHa、Hb、Hc、Hdは、比較例1において、基材厚さを変更したものである。
【0064】
しかし、近年自動車の高性能化に伴い、所謂一般的な可聴範囲とされる1kHz〜2.5kHz領域を越えて、3.0kHz〜4.5kHzの高周波領域の吸音性能を向上したい要求が強まってきている。高周波域の吸音性能を向上するためには、吸音性能の異なる他の層を組み合わせると効果があることはわかっている。しかし、吸音性能の異なる吸音材を組み合わせて使用する場合には、天井全体の層厚さが大幅にアップすることになるので、基材であるウレタンの厚さを削減して、高周波領域の吸音性能を向上させることが行われている。例えば、ウレタン基材厚さを3.0mmと薄くし、ウレタン基材の両側にガラス繊維補強層、表皮材、裏面材に加えて、多種の吸音材を4種類積層して、成形天井の総厚さ10mmとしたものが知られている。この比較例の吸音性能を、図7にHeで示す。図7に示すように、3kHz〜4.5kHzの高周波域の吸音性能は改善されているが、ウレタン基材の厚さを抑えた結果、逆に1kHz〜2.5kHzの可聴領域の吸音性能が犠牲にされている。
(実施例4)
それに対して、本発明では、実施例1に対して、ウレタンフォームシートの厚さを7.5mmに変更し、実施例1と同様にガラス繊維補強層、強化層用の混在マット、表皮材及び裏面材を重ねて総厚が10mmとなった成形天井を製造し、これを実施例4とした。この実施例4の吸音性能を、図7にJ1で示す。強化層に使用する不織布の厚みは非常に薄いものであるために、所謂可聴範囲とされる周波数(1kHz〜2.5kHz)に効果のある基材ウレタン厚さを削減することなしに、図7に示すように、中〜高周波数域(2.5kHz〜4.5kHz)の広範囲にわたって大幅に吸音性能を改善させることができた。
【0065】
また、実施例4では、強化層が基材と第1ガラス繊維補強層(表面側)との間に積層されていたが、この位置に強化層を配置する代わりに、強化層を基材と第2ガラス繊維補強層(裏面側)との間に積層した場合を実施例5とし、強化層を基材と第1ガラス繊維補強層(表面側)との間及び基材と第2ガラス繊維補強層(裏面側)との間の両方に積層した場合を実施例6として、実施例4〜6の吸音性能を求めた。その結果を、実施例4〜6をJ1〜J3として図8に示す。いずれの実施例でも吸音性能に差は無く、いずれも高い吸音効果を示した。なお、強化層を、第2ガラス繊維補強層(裏面側)と裏面材との間に配置したものを実験してないが、上記実施例4〜6と同様な結果が得られるものと推測されるので、ここではテストしなかった。以上のように、本発明では、強化層を、基材と第1ガラス繊維補強層(表面側)との間、基材と第2ガラス繊維補強層(裏面側)との間、第2ガラス繊維補強層(裏面側)と裏面材との間の少なくとも1箇所に配設することによって、可聴領域の吸音性能を良好に維持できると同時に、中高周波数域の吸音性能も向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の成形内装材は、自動車用成形内装材、例えば自動車用成形天井材、成形ドアトリム、リヤパッケージトレイ、フロア材等に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0067】

【図1】本発明の実施形態1に係わり、自動車の成形天井の部分図を示す。
【図2】図1に使用する成形天井材の積層状態を説明する図である。
【図3】本発明の実施形態2に係わり、図2と同様な図を示す。
【図4】本発明の実施形態3に係わり、図2と同様な図を示す。
【図5】本発明の実施形態4に係わり、図2と同様な図を示す。
【図6】従来の成形天井について、吸音性能を評価したグラフを示す。
【図7】本発明と従来の成形天井について、吸音性能を評価したグラフを示す。
【図8】本発明の実施例4〜6の成形天井について、吸音性能を評価したグラフを示す。
【符号の説明】
【0068】
1 車両用成形内装材
11 基材層
12 第1ガラス繊維補強層
13 表皮層
14 第2ガラス繊維補強層
15 裏面層
20 強化層(混在マット)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬質ウレタン発泡体からなる基材層と、
該基材層の両側に接合された第1ガラス繊維補強層及び第2ガラス繊維補強層と、
該第1ガラス繊維補強層の外側に接合された表皮層と、
該第2ガラス繊維補強層の外側に接合された裏面層とからなる車両用成形内装材において、
該基材層と該第1ガラス繊維補強層との間、該基材層と該第2ガラス繊維補強層との間、又は該第2ガラス繊維補強層と該裏面層との間の少なくとも1つに、不織布に熱硬化性樹脂を混合した強化層が配置されていることを特徴とする車両用成形内装材。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用成形内装材において、
該熱硬化性樹脂がウレタン系樹脂であることを特徴とする車両用成形内装材。
【請求項3】
請求項1又は2記載の車両用成形内装材において、
車両用成形内装材が成形天井であり、該強化層が該成形天井全面に設けられていることを特徴とする車両用成形内装材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の車両用成形内装材において、
該強化層の不織布の目付け量が20g/m〜100g/mであり、ウレタン系樹脂が不織布の80重量%〜120重量%であることを特徴とする車両用成形内装材。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用成形内装材において、
該第1ガラス繊維補強層はウレタン系樹脂からなる接着剤を含有し、該第1ガラス繊維補強層の目付け量が50g/m〜150g/mであり、ウレタン系樹脂が該第1ガラス繊維補強層の10重量%〜50重量%であることを特徴とする車両用成形内装材。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用成形内装材において、
該第1ガラス繊維補強層はウレタン系樹脂からなる接着剤を含有し、該第2ガラス繊維補強層の目付け量が50g/m〜250g/mであり、ウレタン系樹脂が該第2ガラス繊維補強層の10重量%〜50重量%であることを特徴とする車両用成形内装材。
【請求項7】
硬質ウレタン発泡体からなる基材層と、
該基材層の両側に接合された第1カーボン繊維補強層及び第2カーボン繊維補強層と、
該第1カーボン繊維補強層の外側に接合された表皮層と、
該第2カーボン繊維補強層の外側に接合された裏面層とからなる車両用成形内装材において、
該基材層と該第1カーボン繊維補強層との間、該基材層と該第2カーボン繊維補強層との間、又は該第2カーボン繊維補強層と該裏面層との間の少なくとも1つに、不織布に熱硬化性樹脂を混合した強化層が配置されていることを特徴とする車両用成形内装材。
【請求項8】
硬質ウレタン発泡体からなる基材層と、
該基材層の両側に接合された第1繊維補強層及び第2繊維補強層と、
該第1繊維補強層の外側に接合された表皮層と、
該第2繊維補強層の外側に接合された裏面層とからなる車両用成形内装材において、
第1繊維補強層又は第2繊維補強層の一方がガラス繊維であり、他方がカーボン繊維からなり、
該基材層と該第1繊維補強層との間、該基材層と該第2繊維補強層との間、又は該第2繊維補強層と該裏面層との間の少なくとも1つに、不織布に熱硬化性樹脂を混合した強化層が配置されていることを特徴とする車両用成形内装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−174073(P2008−174073A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8915(P2007−8915)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(000177461)三和工業株式会社 (13)
【Fターム(参考)】