説明

車両用操舵装置および車両用操舵装置の伝達比判定方法

【課題】ロック機構が伝達比を固定していないにも拘わらず伝達比が固定されていることを判定できる車両用操舵装置を提供する。
【解決手段】車両用操舵装置1は、伝達比可変機構13と、伝達比制御モータ14と、伝達比を固定するためのロック機構25と、反力補償モータ15と、制御部とを備える。ロック機構25は、キャリア57の回転を規制するためのロック部材62と、ロック部材62をキャリア57に係合する第1位置P1と係合しない第2位置P2とに変位可能に支持するソレノイド61と、を含む。制御部の第1判定部は、ロック部材62によって伝達比が固定されておらず、且つ伝達比制御モータ14のロータ14aが第1所定角度θa1回転された場合において、反力補償モータ15用の第2レゾルバ32の検出値θb1と第1所定角度θa1との差が所定角度以下のとき、伝達比が固定されていると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操舵装置および車両用操舵装置の伝達比判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
操舵部材に連結される入力軸と、転舵機構に連結される出力軸との間に、入力軸と出力軸との間の回転伝達比を変更可能な伝達比可変機構を備える車両用操舵装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。伝達比可変機構は、例えば、遊星歯車機構により構成されており、電動モータ(伝達比制御モータ)が遊星歯車機構のキャリアを回転させること等により、回転伝達比を変更できるようになっている。
【0003】
各上記特許文献の車両用操舵装置は、伝達比制御モータに異常が生じたことで回転伝達比を制御できなくなったフェール時等に伝達比制御モータの回転をロックするロック機構を備えている。ロック機構が伝達比制御モータの回転をロックすることにより、回転伝達比が機械的に固定される。
より具体的には、特許文献3の遊星歯車機構は、入力側のサンギヤと、出力側のサンギヤとが、遊星ギヤを介して連結されている。遊星ギヤは、キャリアに支持されている。キャリアの外周には、歯部が形成されており、この歯部にウォームが噛み合っている。ウォームは、モータに連結されている。ロック機構は、ウォームに形成されたスロットにピンを差し込むことで、ウォーム、電動モータのロータおよびキャリアの回転をロックする。これにより、回転伝達比が機械的に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−145102号公報
【特許文献2】特開2008−24058号公報
【特許文献3】特表2006−521957号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、伝達比可変機構は、遊星ギヤ等を備えており、遊星ギヤがサンギヤに対して回転(自転)できるようになっている。しかしながら、何らかの異常により、例えば、遊星ギヤとサンギヤとの間に異物が混入し、遊星ギヤがサンギヤにロックされてしまう可能性がある。このようなロック状態が生じると、遊星ギヤがサンギヤに対して回転(自転)できなくなる。この場合、サンギヤと遊星ギヤとがサンギヤの中心軸線回りを一体回転する。その結果、入力側のサンギヤと出力側のサンギヤの回転伝達比は1となり、回転伝達比が機械的に固定される。すなわち、遊星ギヤがサンギヤにロックした場合には、ロック機構を用いることなく、伝達比可変機構における回転伝達比が固定される。
【0006】
このように、ロック機構を用いることなく回転伝達比が固定されている場合には、ロック機構を動作させる必要がないので、ロック機構の動作を禁止することが考えられる。そのためには、ロック機構が回転伝達比を固定していないにもかかわらず回転伝達比が固定されている状態を判定できるようにする必要がある。
しかしながら、特許文献1〜3では、ロック機構が回転伝達比を固定していないにも拘わらず回転伝達比が固定されている状態を判定する構成となっていない。
【0007】
本発明は、かかる背景のもとでなされたもので、ロック機構が伝達比を固定していないにも拘わらず伝達比が固定されていることを判定できる車両用操舵装置、および車両用操舵装置の伝達比判定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、操舵部材(2)の操舵に応じて回転する入力軸(18)と転舵機構(9)の動作に連動して回転する出力軸(19)との間に介在し、入力軸および出力軸間の伝達比を変更可能な伝達比可変機構(13)と、前記伝達比可変機構の前記伝達比を変更するための伝達比制御モータ(14)と、前記伝達比制御モータの回転位置を検出する第1センサ(31)と、前記伝達比可変機構に係合することにより前記伝達比を固定するためのロック部材(62)、および前記ロック部材を前記伝達比可変機構に係合する第1位置(P1)と前記伝達比可変機構との係合が解除された第2位置(P2)とに変位可能に支持する支持装置(61)を含むロック機構(25)と、前記伝達比可変機構の動作による前記操舵部材の操舵反力を補償するための反力補償モータ(15)と、前記反力補償モータの回転位置を検出する第2センサ(32)と、前記伝達比制御モータ、前記ロック機構および前記反力補償モータを制御する制御部(37)と、を備え、前記制御部は、前記伝達比が固定されているか否かを判定する第1判定部(50)を含み、前記第1判定部は、前記ロック部材が前記第2位置にあり、且つ前記伝達比制御モータおよび反力補償モータの何れか一方からなる所定のモータが第1所定角度(θa1;θb3)回転された場合において、前記伝達比制御モータおよび反力補償モータの何れか他方に対応するセンサの検出値(θb1;θa3)と前記第1所定角度との差(Δθ;ΔθA)が所定角度(ゼロを含む)(δ;δA)以下のとき、前記伝達比が固定されていると判定することを特徴とする車両用操舵装置(1)を提供する(請求項1)。
【0009】
本発明によれば、例えば、伝達比可変機構の一の回転要素と他の回転要素との間に異物が混入すること等により、一の回転要素が他の回転要素にロックされ、その結果、伝達比が機械的に固定される可能性がある。このように、回転要素のロックにより伝達比が固定されている場合には、伝達比制御モータの回転に連動して入力軸および出力軸が回転する結果、反力補償モータが回転する。すなわち、伝達比が固定されている場合、伝達比制御モータと反力補償モータとは、連動して回転する。したがって、所定のモータが第1所定角度回転された場合において、他方のモータの回転角度と第1所定角度との差が所定角度以下のとき、伝達比が固定されていると判定することができる。これにより、ロック機構が伝達比を固定していないにも拘わらず伝達比が固定されていることを判定することができる。
【0010】
また、本発明において、前記操舵部材に作用するトルクを検出するトルクセンサ(30)をさらに備え、前記制御部は、前記伝達比が固定されているか否かを判定する第2判定部(51)を含み、前記第2判定部は、前記ロック部材が前記第2位置にあり、且つ前記伝達比制御モータが第2所定角度(θa2)回転された場合において、前記トルクセンサの検出値の変化量(ΔT)が所定トルク(Tt)を超えているとき、前記伝達比が固定されていると判定する場合がある(請求項2)。
【0011】
前述したように、伝達比が固定されている場合には、伝達比制御モータが回転したとき、伝達比制御モータに連動して入力軸および出力軸が回転する。その結果、入力軸や操舵部材にはトルクが作用する。したがって、伝達比制御モータが第2所定角度回転された場合において、トルクセンサの検出値の変化量が所定トルクを超えているとき、伝達比が固定されていると判定することができる。第1判定部に加えて、第2判定部で伝達比が固定されているか否かを判定することにより、伝達比が固定されているか否かを、より確実に判定できる。
【0012】
また、本発明において、前記操舵部材に作用するトルクを検出するトルクセンサをさらに備え、前記制御部は、前記伝達比が固定されているか否かを判定する第2判定部を含み、前記第2判定部は、前記ロック部材が前記第2位置にあり、且つ前記伝達比制御モータが所定の回転位置(θa4)にある場合において、前記トルクセンサの検出値(T1)が所定トルク(T(θa4))を超えているとき、前記伝達比が固定されていると判定する場合がある(請求項3)。
【0013】
前述したように、伝達比が固定されている場合には、伝達比制御モータに連動して入力軸および出力軸が回転する。その結果、入力軸や操舵部材には、トルクが作用する。したがって、伝達比制御モータが所定の回転位置にある場合において、トルクセンサの検出値が所定トルクを超えているとき、伝達比が固定されていると判定することができる。第1判定部に加えて、第2判定部で伝達比が固定されているか否かを判定することにより、伝達比が固定されているか否かを、より確実に判定できる。
【0014】
また、本発明において、前記制御部は、車両が直進状態にあるか否かを判定する第3判定部(52)を含み、前記制御部は、車両が直進状態にあると判定されたとき、前記伝達比が固定されているか否かを判定する場合がある(請求項4)。
この場合、伝達比制御モータや反力補償モータが駆動されていない車両の直進状態において、制御部によって、伝達比が固定されているか否かを判定することができる。したがって、伝達比制御モータや反力補償モータを有効活用できる。また、車両が転舵している最中に伝達比の判定のために伝達比制御モータ等を駆動させると、操舵フィーリングに影響を与え易い。これに対し、車両の直進走行時に伝達比の判定のために伝達比制御モータ等を回転させても、操舵フィーリングに与える影響は少ない。したがって、伝達比の判定に関連して操舵フィーリングが損なわれることを抑制できる。
【0015】
この場合において、前記第3判定部は、前記第2センサの検出値が所定の基準値にあるときに前記車両が直進状態にあると判定する場合がある。この場合、前記操舵部材と連動回転する第2センサを用いることで、車両の直進状態を確実に判定できる。
また、本発明において、前記制御部は、前記伝達比が固定されていると判定したときに、前記ロック部材の前記第1位置への変位を禁止させる場合がある(請求項5)。この場合、ロック機構を用いることなく伝達比が固定されているので、ロック部材を用いて伝達比を固定する必要がない。したがって、ロック機構の無駄な動作を抑制できる。
【0016】
また、前記伝達比可変機構は、前記入力軸に連結される入力サンギヤと、この入力サンギヤと同軸に配置され前記出力軸に連結される出力サンギヤと、前記入力サンギヤおよび前記出力サンギヤの双方に噛み合う遊星ギヤと、この遊星ギヤを前記入力サンギヤの回りに公転可能且つ遊星ギヤの中心軸線回りに自転可能に支持するキャリアとを含み、前記伝達比制御モータのロータは、前記キャリアに一体回転可能に連結されてもよい。
【0017】
また、本発明は、操舵部材の操舵に応じて回転する入力軸と転舵機構の動作に連動して回転する出力軸との間に介在し、入力軸および出力軸間の伝達比を変更可能な伝達比可変機構と、前記伝達比可変機構の前記伝達比を変更するための伝達比制御モータと、前記伝達比可変機構に係合することにより前記伝達比を固定するためのロック部材、および前記ロック部材を前記伝達比可変機構に係合する第1位置と前記伝達比可変機構との係合が解除された第2位置とに変位可能に支持する支持装置を含むロック機構と、前記伝達比可変機構の動作による前記操舵部材の操舵反力を補償するための反力補償モータと、を備える車両用操舵装置の伝達比判定方法において、前記ロック部材が前記第2位置にあり、且つ前記伝達比制御モータおよび反力補償モータの何れか一方からなる所定のモータが第1所定角度回転された場合において、前記伝達比制御モータおよび反力補償モータの何れか他方の回転角度と前記第1所定角度との差が所定角度(ゼロを含む)以下のとき、前記伝達比が固定されていると判定することを特徴とする車両用操舵装置の伝達比判定方法を提供する(請求項6)。
【0018】
この場合、例えば、伝達比可変機構の一の回転要素と他の回転要素との間に異物が混入すること等により、一の回転要素が他の回転要素にロックされ、その結果、伝達比が機械的に固定される可能性がある。このように、回転要素のロックにより伝達比が固定されている場合には、伝達比制御モータの回転に連動して入力軸および出力軸が回転する結果、反力補償モータが回転する。すなわち、伝達比が固定されている場合、伝達比制御モータと反力補償モータとは、連動して回転する。したがって、所定のモータが第1所定角度回転された場合において、他方のモータの回転角度と第1所定角度との差が所定角度以下のとき、伝達比が固定されていると判定することができる。これにより、ロック機構が伝達比を固定していないにも拘わらず伝達比が固定されていることを判定することができる。
【0019】
なお、上記において、括弧内の数字等は、後述する実施形態における対応構成要素の参照符号を表すものであるが、これらの参照符号により特許請求の範囲を限定する趣旨ではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】伝達比可変機構の概略構成を示す一部断面図である。
【図3】(A)は、ロック機構の主要部の断面図であり、ロック部材が第2位置にある状態を示しており、(B)は、ロック部材が第1位置にある状態を示している。
【図4】第1判定部による伝達比判定に関して、操舵制御部での処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図5】第2判定部による伝達比判定に関して、操舵制御部での処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図6】は、モータフェール時の操舵制御部の制御の流れを説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の別の実施形態において、伝達比判定を行う際の処理の流れを説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明のさらに別の実施形態のフローチャートであり、第1判定部による伝達比判定に関して、操舵制御部での処理の流れを説明するためのものである。
【図9】本発明のさらに別の実施形態のフローチャートであり、第2判定部による伝達比判定に関して、操舵制御部での処理の流れを説明するためのものである。
【図10】伝達比制御モータの回転角度(第1レゾルバの検出値)とトルクセンサの検出値との関係を示すマップである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施の形態を添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る車両用操舵装置の概略構成を示す模式図である。
図1を参照して、車両用操舵装置1は、ステアリングホイール等の操舵部材2に連結しているステアリングシャフト3と、ステアリングシャフト3に自在継手4を介して連結された中間軸5と、中間軸5に自在継手6を介して連結されたピニオン軸7と、ピニオン軸7の端部近傍に設けられたピニオン7aに噛み合うラック8aを有し、自動車等の車両の左右方向に延びる転舵軸としてのラック軸8とを有している。ピニオン軸7およびラック軸8によりラックアンドピニオン機構からなる転舵機構9が構成されている。
【0022】
ラック軸8は、車体に固定されるハウジング(図示せず)内に、複数の軸受(図示せず)を介して、軸方向X1に沿って直線往復動可能に支持されている。ラック軸8の各端部には、それぞれタイロッド10が結合されている。各タイロッド10は対応するナックルアーム(図示せず)を介して対応する転舵輪11に連結されている。
操舵部材2が操作されてステアリングシャフト3が回転されると、この回転がピニオン7aおよびラック8aによって、ラック軸8の軸方向X1の直線運動に変換される。これにより、転舵輪11の転舵が達成される。
【0023】
また、車両用操舵装置1は、転舵機構9に操舵補助力を付与するための操舵補助機構12と、操舵部材2の操舵角に対する転舵輪11の転舵角の比(伝達比)を変更することのできる伝達比可変機構13とを備えている。伝達比可変機構13には、伝達比を変更することのできるブラシレスモータからなる所定のモータとしての伝達比制御モータ14が設けられている。また、伝達比可変機構13には、操舵部材2に操舵反力を付与することのできるブラシレスモータからなる反力補償モータ15が設けられている。
【0024】
ステアリングシャフト3は、操舵部材2と伝達比可変機構13との間に配置され操舵部材2の操舵に応じて回転する入力軸18と、伝達比可変機構13と中間軸5との間に配置され転舵機構9の動作に連動して回転する出力軸19とを含む。
入力軸18は、操舵部材2に一体回転可能に連結される第1軸18aと、第1軸18aにトーションバー20を介して連結される第2軸18bとを含む。トーションバー20を介した第1軸18aと第2軸18bの相対回転量は小さく、実質的に第1軸18aと第2軸18bとは一体回転していると考えることができる。
【0025】
操舵補助機構12は、ブラシレスモータからなる操舵補助モータ21と、操舵補助モータ21の出力回転を減速する減速機構22と、を含む。減速機構22は、例えば、ウォーム減速機構であり、操舵補助モータ21のロータ21aに一体回転可能に連結されるウォーム軸23と、出力軸19に一体回転可能に連結されウォーム軸23に噛み合うウォームホイール24とを含む。
【0026】
操舵補助モータ21は、減速機構22、出力軸19および中間軸5を介して転舵機構9に動力伝達可能に連結されている。操舵補助モータ21の出力は、減速機構22を介して出力軸19に伝達され、運転者の操舵を補助するようになっている。
車両用操舵装置1は、伝達比制御モータ14の回転をロックすることで伝達比を機械的に固定可能なロック機構25を備えている。
【0027】
また、車両用操舵装置1は、複数のセンサとして、トルクセンサ30、第1センサとしての第1レゾルバ31、第2センサとしての第2レゾルバ32、第3センサとしての第3レゾルバ33、および走行状態センサ36を備えている。
トルクセンサ30は、トーションバー20に隣接して配置されており、トーションバー20のねじれに伴う第1軸18aと第2軸18bとの相対回転量を検出することで、操舵部材2に負荷される操舵トルクを検出する。
【0028】
第1レゾルバ31は、伝達比制御モータ14の後述するロータ14aの回転位置を検出するレゾルバであり、伝達比制御モータ14に隣接して配置されている。伝達比制御モータ14は、第1レゾルバ31の検出値を用いるフィードバック制御により駆動制御される。
第2レゾルバ32は、反力補償モータ15の後述するロータ15aの回転位置を検出するレゾルバであり、反力補償モータ15に隣接して配置されている。反力補償モータ15は、第2レゾルバ32の検出値を用いるフィードバック制御により駆動制御される。反力補償モータ15は、伝達比可変機構13の動作による操舵部材2の操舵反力(操舵反力の変化)を補償するためのモータである。
【0029】
第3レゾルバ33は、操舵補助モータ21のロータ21aの回転位置を検出するレゾルバであり、操舵補助モータ21に設けられている。操舵補助モータ21は、第3レゾルバ33の検出値を用いるフィードバック制御により駆動制御される。
走行状態センサ36は、車両の走行状態(車速、転舵角、車両のヨーレート等の、車両用操舵装置1の制御に関連する車両走行状態)を検出するセンサであり、複数のセンサによって構成されている。
【0030】
車両用操舵装置1は、制御部37を備えている。制御部37は、伝達比制御モータ14、反力補償モータ15、およびロック機構25の動作を制御することにより操舵を制御する操舵制御部38と、操舵補助モータ21の動作を制御する操舵補助制御部39とを含んでいる。
操舵制御部38および操舵補助制御部39は、それぞれ電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)により構成され、例えば車載ネットワーク40を介して互いに信号伝達可能に接続されている。
【0031】
操舵制御部38には、トルクセンサ30、第1レゾルバ31、第2レゾルバ32、第3レゾルバ33、および走行状態センサ36がそれぞれ接続されており、各センサ30〜33,36からの検出信号が、操舵制御部38に入力されるようになっている。
操舵制御部38は、ドライバ41を介して伝達比制御モータ14に接続されており、ドライバ42を介して反力補償モータ15に接続されている。また、操舵制御部38は、ロック機構25と、報知手段としての警告ランプ44およびスピーカ45とに接続されている。
【0032】
操舵制御部38は、所定のプログラムを実行することによってソフトウェア的に実現される機能処理部として、伝達比制御部46と、反力制御部47と、ロック制御部48と、検出手段としてのロック部材位置検出部49と、第1判定部50と、第2判定部51と、第3判定部53と、を含んでいる。
伝達比制御部46は、伝達比を制御するべく、伝達比制御モータ14の駆動を制御するようになっている。反力制御部47は、操舵部材2に負荷される反力を制御するべく、反力補償モータ15の駆動を制御するようになっている。
【0033】
ロック制御部48は、ロック機構25の駆動を制御するようになっている。ロック部材位置検出部49は、後述するロック部材62の位置を検出するようになっている。第1判定部50および第2判定部51は、それぞれ、伝達比可変機構13における伝達比を判定するようになっている。第3判定部53は、車両が直進状態にあるか否かを判定するようになっている。
【0034】
ロック部材位置検出部49は、伝達比制御部46および第1レゾルバ31からの信号に基づいて、ロック部材62の位置を検出するようになっている。
車両用操舵装置1は、報知手段としての警告ランプ44およびスピーカ45を含んでいる。警告ランプ44およびスピーカ45は、操舵制御部38に接続されており、フェール状態が確定したときに、警告ランプ44が点灯するとともに、スピーカ45が警告音を発するようになっている。これにより、フェール状態を運転者に報知可能となっている。なお、フェール状態とは、車両用操舵装置1に何らかの異常が生じ、この異常が制御部37によって検出された状態をいう。本実施形態において、フェール状態は、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15の少なくとも一方に異常が生じたときのモータフェール状態と、ロック機構25によって伝達比が固定されていないにも拘わらず伝達比が固定されたときの伝達比可変機構フェール状態とを含む。操舵補助制御部39は、ドライバ43を介して操舵補助モータ21に接続されている。
【0035】
図2は伝達比可変機構13の概略構成を示す一部断面図である。図2に示すように、入力軸18の第2軸18bおよび出力軸19は、互いの先端を相対向させて同軸上に配置されている。
伝達比可変機構13は、入力軸18の第2軸18bと出力軸19との間の伝達比を変更可能とされている。伝達比可変機構13は、全体として筒状をなすハウジング53に収容されている。
【0036】
伝達比可変機構13は、入力軸18の第2軸18bと同軸に並んで一体回転可能な入力サンギヤ54と、入力サンギヤ54と同軸に配置され、出力軸19と一体回転可能な出力サンギヤ55と、各サンギヤ54,55の双方に噛み合う遊星ギヤ56と、遊星ギヤ56を遊星ギヤ56の中心軸線L2回りに自転可能且つ各サンギヤ54,55の中心軸線L1回りに公転可能に支持するキャリア57と、を含んでいる。
【0037】
遊星ギヤ56は、入力サンギヤ54および出力サンギヤ55を互いに関連付けるための一体成形品であり、中心軸線L1回りに複数(本実施の形態において、2つ)配置されている。入力サンギヤ54、出力サンギヤ55および遊星ギヤ56は、キャリア57の回転がロックされているときに、入力サンギヤ54と出力サンギヤ55の回転伝達比が例えば1になるように設計されている。
【0038】
キャリア57は、筒状に形成されており、出力軸19が挿通されている。キャリア57は、各サンギヤ54,55の中心軸線L1の回りを回転可能である。キャリア57は、第1軸受58を介してハウジング53に支持され、且つ各遊星ギヤ56の支軸56aの一端を支持する第1部分57aと、支軸56aの他端を支持する第2部分57bと、第2部分57bから減速機構22に向けて延び第2軸受59を介してハウジング53に支持される第3部分57cと、を含んでいる。
【0039】
キャリア57の第2部分57bを取り囲むようにして、伝達比制御モータ14が配置されている。伝達比制御モータ14は、第2部分57bの外周に一体回転可能に連結されたロータ14aと、ロータ14aを取り囲みハウジング53に固定されたステータ14bとを含んでいる。伝達比制御モータ14の駆動によって、キャリア57が中心軸線L1回りを回転するようになっている。
【0040】
伝達比制御モータ14に関連して、第1レゾルバ31が配置されている。第1レゾルバ31は、キャリア57の第3部分57cの外周に一体回転可能に連結されたロータ31aと、ロータ31aを取り囲みハウジング53に固定されたステータ31bとを含んでいる。キャリア57に伝達比制御モータ14のロータ14aおよび第1レゾルバ31のロータ31aの双方が連結されていることにより、第1レゾルバ31は、キャリア57の回転位置(回転角)および伝達比制御モータ14のロータ14aの回転位置を検出することが可能である。
【0041】
伝達比制御モータ14に対して入力軸18側(図2の右側)には、反力補償モータ15が配置されている。反力補償モータ15は、入力軸18の第2軸18bの外周に連結されたロータ15aと、ロータ15aを取り囲みハウジング53に固定されたステータ15bとを含んでいる。
反力補償モータ15に隣接して、第2レゾルバ32が配置されている。第2レゾルバ32は、第2軸18bの外周に連結されたロータ32aと、ロータ32aを取り囲みハウジング53に固定されたステータ32bとを含んでいる。第2軸18bに反力補償モータ15のロータ15aおよび第2レゾルバ32のロータ32aの双方が連結されていることにより、第2レゾルバ32は、入力軸18の回転位置(転舵角)および反力補償モータ15のロータ15aの回転位置を検出することが可能である。
【0042】
ロック機構25は、モータフェール時にキャリア57の回転をロックすることにより、入力軸18と出力軸19との間の伝達比を所定値(本実施形態において、1)に固定するためのものである。
図3(A)は、ロック機構25の主要部の断面図であり、ロック部材62が第2位置P2にある状態を示している。図2および図3(A)を参照して、ロック機構25は、キャリア57の第3部分57cに一体回転可能に連結されたリング部材60と、このリング部材60に係合可能な軸状のロック部材62と、ロック部材62が一端に固定されたロッド61aを有するソレノイド61とを含んでいる。本実施形態において、ロック部材62は、ロッド61aとは単一の材料を用いて一体に形成されている。
【0043】
リング部材60の外周には、複数の溝60aが周方向に等間隔に複数配置されている。ソレノイド61は、ハウジング53に取り付けられている。ソレノイド61は、ロック部材62を第1位置P1と第2位置P2とに変位可能に支持する支持装置である。このソレノイド61は、ロッド61aと、電磁石(図示せず)と、ロッド61aをリング部材60に向けて付勢するばね61bとを含んでおり、操舵制御部38(図1参照)によって駆動制御される。
【0044】
図2および図3(B)を参照して、車両の電源オフ時には、ソレノイド61への通電がオフされている。このとき、ロッド61aに固定されたロック部材62は、ばね61bの付勢力によって、リング部材60の溝60aに嵌まるようになっている。モータフェール時も同様に、原則として、ソレノイド61への通電がオフにされることで、ロッド61aに固定されたロック部材62は、リング部材60の溝60aに嵌まるようになっている。ロック部材62がリング部材60の溝60aに嵌まっているとき、ロック部材62は、リング部材60を介してキャリア57に係合している。このときのロック部材62の位置が、第1位置P1として定義される。
【0045】
一方、車両用操舵装置1がフェール状態にない主モード状態のときには、図3(A)に示すように、ソレノイド61への通電がオンにされた状態となっている。このときのソレノイド61の磁力によって、ロック部材62は、リング部材60に係合しない第2位置P2に維持される。これにより、ロック部材62がキャリア57の回転を規制しないようになっている。このように、リング部材60およびキャリア57に係合していないときのロック部材62の位置が、第2位置P2として定義される。
【0046】
図1および図2を参照して、上記の構成を有する車両用操舵装置において、車両の通常走行時(異常が生じていない状態での走行時。主モード時。)、操舵部材2が操舵されると、この操舵部材2に連結された入力軸18が回転することで、伝達比可変機構13の入力サンギヤ54が回転する。
このとき、操舵制御部38の伝達比制御部46は、操舵制御部38に接続された各センサ30〜33,36からの入力信号等に基づいて、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15の目標駆動量を設定する。そして、操舵制御部38は、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15のロータ14a,15aの回転位置と目標回転位置との偏差がゼロになるように、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15を駆動する。
【0047】
この操舵制御部38の伝達比制御部46の制御により、伝達比制御モータ14のロータ14aが回転されない場合、入力サンギヤ54の回転により、各遊星ギヤ56、出力サンギヤ55および出力軸19が回転する。
このとき、入力軸18から出力軸19への回転伝達比は、前述の所定の伝達比(例えば、1)である。この結果、転舵輪11は、操舵部材2の操作方向に、この操舵部材2の操舵角に前記回転比を乗じた角度相当分だけ転舵されることになり、操舵部材2から操舵用の転舵輪11への伝達比は一定値となる。
【0048】
一方、操舵制御部38の伝達比制御部46の制御により、伝達比制御モータ14を駆動することでキャリア57を回転させた場合、入力軸18から出力軸19への回転伝達は、前述した所定の伝達比からキャリア57の回転分だけ増減された伝達比にてなされる。これにより、入力軸18および出力軸19間の伝達比、すなわち操舵部材2から転舵輪11への伝達比を無段階に変更することができることになる。
【0049】
また、伝達比制御モータ14の駆動に伴う操舵部材2への反力を補償するために、反力制御部47は、反力補償モータ15を駆動する。これにより、伝達比制御モータ14の駆動に伴う操舵部材2のトルク変動を打ち消すように、反力トルクが入力軸18に伝達される。これにより、運転者の違和感が軽減される。
図2を参照して、制御部37が主モードを設定しているとき(車両用操舵装置1が主モード状態にあるとき)には、ロック部材62が第2位置P2に位置している。この状態で、上記のように、伝達比制御モータ14によって伝達比が制御され、且つ、反力補償モータ15によって操舵部材2に作用する操舵反力が制御される。
【0050】
次に、車両用操舵装置1の主な制御の流れを説明する。
以下では、操舵制御部38による、(1)第1判定部50による伝達比判定に関する操舵制御部38の処理の流れと、(2)第2判定部51による伝達比判定に関する操舵制御部38の処理の流れと、(3)モータフェール時の操舵制御部38の制御の流れと、を説明する。
【0051】
図4は、第1判定部50による伝達比判定に関して、操舵制御部38での処理の流れを説明するためのフローチャートである。本実施形態において、第1判定部50による伝達比判定は、車両のエンジンがオンにされるイグニッションオンの直後に行われる。
図4に示すように、運転者によって、車両のイグニッションがオンにされると(ステップS1)でYES)、ロック制御部48は、ソレノイド61を駆動させることで、ロック部材62を第1位置P1から第2位置P2に変位させる。これにより、ロック部材62による伝達比の固定(キャリア57のロック)が解除される(ステップS2)。
【0052】
次に、伝達比制御部46は、伝達比制御モータ14のロータ14aを一方向に第1所定角度θa1回転させる制御を行う(ステップS3)。第1所定角度θa1は、例えば、数(deg)〜100(deg)である。そして、この制御に伴う反力補償モータ15のロータ15aの回転角度を検出する。具体的には、操舵制御部38は、ステップS3の制御を行ったときの第2レゾルバ32の検出値(検出値の変化量)θb1を取得する(ステップS4)。
【0053】
次いで、第1判定部50は、ロック部材62が第2位置P2に位置している状態(ステップS2)において、伝達比可変機構13の伝達比が固定されているか否かを判定する(ステップS5)。具体的には、第1判定部50は、θa1とθb1との差であるΔθ=|θa1−θb1|、すなわち、伝達比制御モータ14のロータ14aの回転角度と反力補償モータ15のロータ15aの回転角度との差が、所定角度δ以下であるか否かを判定する。所定角度δは、例えば、ゼロである。
【0054】
伝達比可変機構13の各ギヤ54,55,56の何れもが自転可能であることにより伝達比可変機構13がフェール状態にないときにおいて、伝達比制御モータ14のロータ14aが回転すると、キャリア57および各遊星ギヤ56は、各サンギヤ54,55の回りを空転する。したがって、伝達比可変機構13がフェール状態にないときには、伝達比制御モータ14のロータ14aは回転するけれども、反力補償モータ15のロータ15aおよび第2レゾルバ32のロータ15aは、実質的に回転しない。すなわち、θb1=ゼロとなり、Δθ=|θa1−θb1|>δとなる(ステップS5でNO)。このとき、第1判定部50は、伝達比可変機構13の伝達比は固定されていないと判定し、fix_flag1=0を設定する(ステップS6)。
【0055】
一方、例えば、遊星ギヤ56と各サンギヤ54,55との間に異物が混入したことで遊星ギヤ56が各サンギヤ54,55にロックされ、遊星ギヤ56の自転が規制されている場合、伝達比可変機構13は、フェール状態にある。このとき、伝達比制御モータ14のロータ14aが回転すると、キャリア57および各遊星ギヤ56は、各サンギヤ54,55と一体回転する。したがって、伝達比可変機構13がフェール状態にあるときには、伝達比制御モータ14のロータ14aと、反力補償モータ15のロータ15aと、第2レゾルバ32のロータ32aとは一体回転する。すなわち、θa1=θb1となり、Δθ=|θa1−θb1|≦δ=0となる(ステップS5でYES)。このとき、第1判定部50は、伝達比可変機構13の伝達比は固定されていると判定し、fix_flag1=1を設定する(ステップS7)。
【0056】
伝達比可変機構13の伝達比が固定されていると判定されると、制御部37は、ロック機構25により伝達比が固定されていないにも拘わらず伝達比が固定されている旨を運転者に報知する(ステップS8)。具体的には、警告ランプ44が点灯されるとともに、スピーカ45から警告音が発せられることで、伝達比が固定されていることが運転者に報知される。これにより、車両を整備工場に入庫させることを運転者に促すことができる。
【0057】
次いで、第2判定部51によって伝達比可変機構13の伝達比が判定される(上記の(2))。なお、本実施形態では、第1判定部50によって伝達比可変機構13の伝達比が判定された後に、第2判定部51によって伝達比可変機構13の伝達比が判定される。しかしながら、第2判定部51によって伝達比可変機構13の伝達比が判定された後に、第1判定部50によって伝達比可変機構13の伝達比が判定されてもよい。
【0058】
図5は、第2判定部51による伝達比判定に関して、操舵制御部38での処理の流れを説明するためのフローチャートである。図5に示すように、運転者によって、車両のイグニッションがオンにされると(ステップR1でYES)、ロック制御部48は、ソレノイド61を駆動させることで、ロック部材62を第1位置P1から第2位置P2に変位させる。これにより、ロック部材62による伝達比の固定(キャリア57のロック)が解除される(ステップR2)。
【0059】
次に、操舵制御部38は、トルクセンサ30の検出値Tを、初期値Taとして取得する(ステップR3)。その後、伝達比制御部46は、伝達比制御モータ14のロータ14aを一方向に第2所定角度θa2回転させる制御を行う(ステップR4)。第2所定角度θa2は、例えば、数(deg)である。そして、操舵制御部38は、伝達比制御モータ14のロータ14aを第2所定角度θ2a回転させたときのトルクセンサ30の検出値Tbを取得する(ステップR5)。
【0060】
次いで、第2判定部51は、ロック部材62が第2位置P2に位置している状態(ステップR2)において、伝達比可変機構13の伝達比が固定されているか否かを判定する(ステップR6)。具体的には、第2判定部51は、TaとTbとの差であるΔT=|Ta−Tb|、すなわち、伝達比制御モータ14のロータ14aを第2所定角度θ2回転させた前後でのトルクセンサ30の検出値の変化量が、所定トルクとしての閾トルクTtを超えている(ΔT=|Ta−Tb|>Tt)か否かを判定する(ステップR6)。閾トルクTtは、例えば、1(N・m)である。
【0061】
伝達比可変機構13の各ギヤ54,55,56の何れもが自転可能であることにより伝達比可変機構13がフェール状態にないときにおいて、伝達比制御モータ14のロータ14aが回転すると、キャリア57および各遊星ギヤ56は、各サンギヤ54,55の回りを空転する。したがって、伝達比可変機構13がフェール状態にないときには、伝達比制御モータ14のロータ14aは回転するけれども、入力軸18には、トルクが実質的に伝わらない。すなわち、例えば、Ta=Tb=ゼロであり、ΔT=|Ta−Tb|≦Ttとなる(ステップR6でNO)。このとき、第2判定部51は、伝達比可変機構13の伝達比は固定されていないと判定し、fix_flag2=0を設定する(ステップR7)。
【0062】
一方、伝達比可変機構13が前述したフェール状態にあるときには、伝達比制御モータ14のロータ14aが回転すると、キャリア57および各遊星ギヤ56は、各サンギヤ54,55と一体回転する。したがって、伝達比可変機構13がフェール状態にあるときには、伝達比制御モータ14のロータ14aと、入力サンギヤ54と、入力軸18の第2軸18bとは一体回転する。したがって、入力軸18の第2軸18bと第1軸18aとの間には、トーションバー20を介してトルクが作用する。すなわち、Ta<Tbとなり、ΔT=|Ta−Tb|>Ttとなる(ステップR6でYES)。このとき、第2判定部51は、伝達比可変機構13の伝達比が固定されていると判定し、fix_flag2=1を設定する(ステップR8)。
【0063】
伝達比可変機構13の伝達比が固定されていると判定されると、制御部37は、ロック機構25により伝達比が固定されていないにも拘わらず、伝達比が固定されている旨を運転者に報知する(ステップR9)。具体的には、警告ランプ44が点灯されるとともに、スピーカ45から警告音が発せられることで、伝達比が固定されていることが運転者に報知される。これにより、車両を整備工場に入庫させることを運転者に促すことができる。
【0064】
以上が、イグニッションオン時(車両のエンジン始動直後)における、伝達比が固定されているか否かの判定についての説明である。なお、図4に示す処理および図5に示す処理は、それぞれ、数十(msec)程度の短い時間に行われる。
次に、モータフェール時の操舵制御部38の制御の流れを説明する(上記の(3))。
図6は、モータフェール時の操舵制御部38の制御の流れを説明するためのフローチャートである。伝達比制御モータ14および反力補償モータ15の少なくとも一方が故障し、制御部37が当該モータの故障を検出すると、操舵制御部38は、モータフェールモードを設定するようになっている。モータフェールモードが設定されると、図6に示すように、操舵制御部38は、fix_flag1=0且つfix_flag2=0であるか否かを判定する(ステップQ1)。
【0065】
伝達比が固定されていないとの旨が、第1判定部50および第2判定部51によって判定されている場合、すなわち、fix_flag1=0且つfix_flag2=0である場合(ステップQ1でYES)、操舵制御部38は、ロック部材62によって、キャリア57をロックさせる(ステップQ2)。具体的には、ロック制御部48は、ソレノイド61への電力供給を遮断する。これにより、ソレノイド61のばね61bの付勢力により、ロッド61aがキャリア57に向かって変位し、ロック部材62が第2位置P2から第1位置P1に変位される。
【0066】
その結果、ロック部材62は、リング部材60の溝60aに嵌まり、リング部材60を介してキャリア57の回転を規制する。
このとき、ロック部材62は、リング部材60、キャリア57および伝達比制御モータ14のロータ14aの回転を規制する。これにより、遊星ギヤ56の公転が規制される。その結果、入力サンギヤ54と出力サンギヤ55との間の回転の伝達比が前記所定値(本実施形態において、1)に固定される。
【0067】
一方、ロック機構25が伝達比を固定していないにも拘わらず、伝達比が固定されているとの旨が、第1判定部50および第2判定部51の少なくとも一方によって判定されている場合、すなわち、fix_flag1=1およびfix_flag2=1の少なくとも一方が設定されている場合(ステップQ1でNO)、ロック制御部48は、ロック部材62によるキャリア57の回転を禁止する(ステップQ3)。具体的には、ロック制御部48は、ロック部材62を第2位置P2から第1位置P1に変位させることを禁止し、その後、ステップQ4に進む。
【0068】
この場合、例えば、遊星ギヤ56が各サンギヤ54,55にロックされている結果、伝達比が固定されているので、ロック部材62によってキャリア57の回転(伝達比)を固定しなくてもよい。したがって、ロック部材62による伝達比の固定は行われない。
上記のように、ロック部材62によって伝達比が固定されているか(ステップQ2)、または、遊星ギヤ56が各サンギヤ54,55にロックされていること等により伝達比が固定されている状態(ステップQ3)で、伝達比制御モータ14および反力補償モータ15のへの電力供給が停止される(ステップQ4)。
【0069】
モータフェールモードにおいては、伝達比制御モータ14による伝達比制御および反力補償モータ15による反力制御は停止される。しかしながら、伝達比可変機構13の伝達比が機械的に固定されていることにより、このようなフェール時の操舵を、操舵部材2から転舵機構9への機械的な動力伝達によるマニュアル操舵によって行わせることができる。
【0070】
次いで、制御部37は、モータフェール状態にある旨を運転者に報知する(ステップQ5)。具体的には、警告ランプ44が点灯されるとともに、スピーカ45から警告音が発せられることで、モータフェール状態にあることが運転者に報知される。これにより、車両を整備工場に入庫させることを運転者に促すことができる。
以上説明したように、本実施形態によれば、例えば、伝達比可変機構13の遊星ギヤ56と各サンギヤ54,55との間に異物が混入すること等により、遊星ギヤ56が各サンギヤ54,55にロックされ、その結果、伝達比が機械的に固定される可能性がある。このように、遊星ギヤ56の各サンギヤ54,55に対するロックにより、伝達比が固定されている場合には、伝達比制御モータ14のロータ14aの回転に連動して入力軸18および出力軸19が一体回転する結果、反力補償モータ15のロータ15aも一体回転する。すなわち、ロータ14aとロータ15aとは、連動回転する。
【0071】
したがって、伝達比制御モータ14のロータ14aが第1所定角度θa1回転された場合において、第2レゾルバ32の検出値θb1(反力補償モータ15の回転角度)と第1所定角度θa1との差Δθが所定角度δ以下のとき、第1判定部50は、伝達比が固定されていると判定することができる。これにより、ロック機構25が伝達比を固定していないにも拘わらず伝達比が固定されていることを判定することができる。
【0072】
また、伝達比可変機構13がフェール状態にあることにより伝達比が固定されている場合には、伝達比制御モータ14のロータ14aが回転したとき、伝達比制御モータ14のロータ14aに連動して入力軸18および出力軸19が回転する。その結果、入力軸18や操舵部材2には、トルクが作用する。したがって、伝達比制御モータ14のロータ14aが第2所定角度θ2a回転された場合において、トルクセンサ30の検出値の変化量ΔTが閾トルクTtを超えているとき、第2判定部51は、伝達比が固定されていると判定することができる。第1判定部50に加えて、第2判定部51で伝達比が固定されているか否かを判定することにより、伝達比が固定されているか否かをより確実に判定できる。
【0073】
また、操舵制御部38のロック制御部48は、ロック部材62によらずに伝達比が固定されていると判定したときに、ロック部材62の第1位置P1への変位を禁止させるようになっている。このように、ロック機構25を用いることなく伝達比が固定されている場合には、ロック部材62を用いて伝達比を固定する必要がない。したがって、ロック機構25の無駄な動作を抑制できる。
【0074】
本発明は、以上の実施形態の内容に限定されるものではなく、請求項記載の範囲内において種々の変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、車両のイグニッションオン直後に、第1判定部50および第2判定部51が伝達比の固定の有無を判定する構成としたけれども、これに限定されない。例えば、車両が直進走行しているときに、第1判定部50および第2判定部51が伝達比の固定の有無を判定してもよい。
【0075】
具体的には、車両のイグニッションがオンにされた後(走行時等)において、図7に示すように、第2レゾルバ32の検出値θbが所定の基準値θb2(本実施形態において、ゼロ)にある(ステップT1でYES)ことにより、操舵部材2が直進走行時の位置にあるときに、第3判定部53によって、車両が直進状態にあると判定されてもよい。
なお、所定の基準値θb2は、所定の数値範囲を有していてもよく、例えば所定の基準値θb2は、車両の直進走行時における基準値θb2=ゼロ(deg)として、ゼロ(deg)±数(deg)の範囲を有するようにしてもよい。
【0076】
このとき、反力制御部47は、反力補償モータ15のロータ15aの位置を保持するように反力補償モータ15を制御する(ステップT2)。これにより、伝達比判定の際に、操舵部材2および入力軸18が運転者によって回転されることを抑制できる。
次いで、第1判定部50および第2判定部51によって、伝達比が固定されているか否かが判定される(ステップT3)。ステップT3では、図4に示す処理が行われ、且つ、図5に示す処理が行われる。
【0077】
その後、反力制御部47は、反力補償モータ15のロータ15aの位置を保持する制御を解除する(ステップT4)。
このように、操舵制御部38は、車両が直進状態にあると判定されたときに(ステップT1でYES)、伝達比が固定されているか否かを判定するようになっている。伝達比制御モータ14や反力補償モータ15が駆動されていない車両の直進状態において、第1判定部50および第2判定部51によって、伝達比が固定されているか否かを判定することができる。したがって、伝達比制御モータ14や反力補償モータ15を有効活用できる。また、車両が転舵している最中に、伝達比の判定のために伝達比制御モータ14を駆動させると、操舵フィーリングに影響を与え易い。これに対し、車両の直進走行時に伝達比の判定のために伝達比制御モータ14を回転させても、操舵フィーリングに与える影響は少ない。したがって、伝達比の判定に関連して操舵フィーリングが損なわれることを抑制できる。
【0078】
さらに、通常、車両直進時の操舵部材2の位置である操舵中立位置付近では、操舵中立位置から数度の角度範囲で、操舵部材2の操舵に拘わらず操舵部材2の回転が転舵機構9に伝達されないようにされている。すなわち、操舵部材2の操舵に関して、いわゆる不感帯領域が設けられている。したがって、車両の直進時において、伝達比制御モータ14が数度回転した程度では、この回転は、実質的に操舵部材2には伝わらない。したがって、伝達比判定に伴って操舵部材2にトルク変動が作用することを抑制できる。これにより、運転者に違和感を与えることを抑制できる。
【0079】
また、第3判定部53は、第2レゾルバ32の検出値θbが所定の基準値θb2にあるときに車両が直進状態にあると判定する。このように、操舵部材2と連動回転するロータ32aを含む第2レゾルバ32を用いることで、車両の直進状態を確実に判定できる。
また、各上記実施形態では、第1判定部50は、伝達比制御モータ14を回転させることで、伝達比が固定されているか否かを判定したけれども、これに限定されない。例えば、所定のモータとして反力補償モータ15を回転させたときの第1レゾルバ31a(伝達比制御モータ14)の回転角度θaを用いて、伝達比が固定されているか否かを判定してもよい。
【0080】
具体的には、図8に示す処理が実行される。図8に示す処理は、図4に示す処理のステップS3,S4,S5をそれぞれステップS9,S10,S11に置き換えたものに相当する。したがって、以下では、図4に示す処理と異なる点について説明し、同様の処理については説明を省略する。
図8に示すように、ロック部材62による伝達比の固定(キャリア57のロック)が解除された(ステップS2)後、反力制御部47は、反力補償モータ15のロータ15aを一方向に第1所定角度θb3回転させる制御を行う(ステップS9)。第1所定角度θb3は、例えば、数(deg)〜100(deg)である。そして、この制御に伴う伝達比制御モータ14のロータ14aの回転角度を検出する。具体的には、操舵制御部38は、ステップS9の制御を行ったときの第1レゾルバ31aの検出値(検出値の変化量)θa3を取得する(ステップS10)。
【0081】
次いで、第1判定部50は、ロック部材62が第2位置P2に位置している状態(ステップS2)において、伝達比可変機構13の伝達比が固定されているか否かを判定する(ステップS11)。具体的には、第1判定部50は、θb3とθa3との差であるΔθA=|θb3−θa3|、すなわち、反力補償モータ15のロータ15aの回転角度と伝達比制御モータ14のロータ14aの回転角度との差が、所定角度δA以下であるか否かを判定する。所定角度δAは、例えば、ゼロである。
【0082】
伝達比可変機構13がフェール状態にないときには、反力補償モータ15のロータ15aの回転に伴って、入力サンギヤ54および各遊星ギヤ56が回転する。このとき、出力サンギヤ55は、転舵輪11に連結されており、回転しないので、各遊星ギヤ56は、入力サンギヤ54との噛み合いにより自転しつつ、出力サンギヤ55の回りを公転する。すなわち、入力サンギヤ54の回転は、所定の変速比で減速されて、各遊星ギヤ56およびキャリア57に伝わり、キャリア57は、ロータ15aおよび入力サンギヤ54よりもゆっくりと回転する。したがって、θb3>θa3となり、ΔθA=|θb3−θa3|>δAとなる(ステップS11でNO)。このとき、第1判定部50は、伝達比可変機構13の伝達比は固定されていないと判定し、fix_flag1=0を設定する(ステップS6)。
【0083】
一方、伝達比可変機構13がフェール状態にあるときにおいて、反力補償モータ15のロータ15aが回転すると、各遊星ギヤ56およびキャリア57は、各サンギヤ54,55と一体回転する。したがって、伝達比可変機構13がフェール状態にあるときには、反力補償モータ15のロータ15aと、伝達比制御モータ14のロータ14aと、第1レゾルバ31のロータ31aとは一体回転する。すなわち、θb3=θa3となり、ΔθA=|θb3−θa3|≦δA=0となる(ステップS11でYES)。このとき、第1判定部50は、伝達比可変機構13の伝達比は固定されていると判定し、fix_flag1=1を設定する(ステップS7)。
【0084】
この実施形態によれば、伝達比可変機構13がフェール状態にあることにより、伝達比可変機構13の伝達比が固定されている場合には、反力補償モータ15のロータ15aの回転に連動して伝達比制御モータ14のロータ14aが回転する。すなわち、伝達比が固定されている場合、伝達比制御モータ14と反力補償モータ15とは、一体回転する。したがって、反力補償モータ15のロータ15aが第1所定角度θb3回転された場合において、伝達比制御モータ14の回転角度(第2レゾルバ32の検出値θa3)と第1所定角度θb3との差ΔθAが所定角度δA以下のとき、伝達比が固定されていると判定することができる。
【0085】
また、図5に示す処理では、伝達比制御モータ14を第2所定角度θa2回転させたときのトルクセンサ30の検出値の変化量ΔTを用いて伝達比の固定の有無を判定したけれども、これに限定されない。例えば、図9に示す処理によって第2判定部51で伝達比が判定されてもよい。なお、図9に示す処理では、図5に示す処理と異なる点について説明し、同様の構成には図に同一の符号を付してその説明を省略する。
【0086】
図9に示す処理の特徴の1つは、ステップR10〜R13を含む点にある。図9に示すように、ロック部材62によるキャリア57(伝達比)の固定が解除された後(ステップR2の後)、伝達比制御部46は、伝達比制御モータ14のロータ14aの回転位置、すなわち、第1レゾルバ31aの検出値θa4を取得する(ステップR10)。続いて、伝達比制御部46は、トルクセンサ30の検出値T1を取得する(ステップR11)。
【0087】
その後、伝達比制御部46は、マップを参照する(ステップR12)。マップは、例えば、制御部37のROMに格納されている。図10に示すように、マップには、予め定められた第1レゾルバ31aの検出値θaとトルクセンサ30の検出値Tとの関係が示されている。
第2判定部51は、第1レゾルバ31aの検出値θa=θa4であるときのマップでのトルクT(θa4)と、トルクセンサ30の検出値T1とを比較することで、伝達比可変機構13の伝達比が固定されているか否かを判定する。
【0088】
トルクセンサ30の検出値T1が、所定トルクとしてのトルクT(θa4)を超えているとき(ステップR13でYES)、伝達比可変機構13の伝達比が固定されていると判定し、ステップR8に進む。一方、トルクセンサ30の検出値T1が、トルクT(θa4)以下であるとき(ステップR13でNO)、伝達比が固定されていないと判定し、ステップR7に進む。
【0089】
本実施形態によれば、伝達比が固定されている場合には、伝達比制御モータ14に連動して入力軸18および出力軸19が回転する。その結果、入力軸18や操舵部材2には、トルクが作用する。したがって、伝達比制御モータ14が所定の回転位置θa4にある場合において、トルクセンサ30の検出値T1が所定トルクT(θa4)を超えているとき、伝達比が固定されていると判定することができる。第1判定部50に加えて、第2判定部51で伝達比が固定されているか否かを判定することにより、伝達比が固定されているか否かをより確実に判定できる。
【0090】
また、各上記実施形態において、所定角度δ,δAは、ゼロであるとして説明したけれども、これに限定されない。所定角度δ,δAは、遊星ギヤ56に関する減速比を考慮して設定されてもよい。例えば、図8に示す実施形態の所定角度δAは、伝達比可変機構13がフェール状態にないときの、ロータ15aを所定角度θb3回転させたときのロータ14a(31a)の回転角度よりも小さい数値でもよい。また、反力補償モータ15が入力軸18の第1軸18aに連結される場合、所定角度δ,δAは、トーションバー20のねじれ量を考慮して設定されてもよい。
【0091】
さらに、第2判定部51を廃止してもよい。この場合、第1判定部50による伝達比の判定結果に基づいて、モータフェール時にロック部材62が第1位置P1に変位することを禁止するか否かが判定される。
また、第1センサ、第2センサおよび第3センサとしてレゾルバを用いる構成を例示したけれども、これに限定されない。第1〜第3センサとして、対応するモータ14,15,21の回転位置を検出可能な他の一般のセンサを用いてもよい。
【0092】
また、各上記実施形態では、ロック部材62を支持する支持装置としてソレノイド61を例示したけれども、これに限定されない。支持装置は、ロック部材62を第1位置P1と第2位置P2とに変位可能に支持できるものであればよく、例えば、クラッチ機構等の他の一般の装置を用いて支持装置を構成してもよい。
さらに、各上記実施形態では、ステアリングシャフト3の出力軸19から転舵機構9に操舵補助力を負荷するコラムアシストタイプの操舵補助機構12を説明したけれども、これに限定されない。例えば、ピニオン軸7やラック軸8から転舵機構9に操舵補助力を負荷する構成でもよい。
【符号の説明】
【0093】
1…車両用操舵装置、2…操舵部材、9…転舵機構、13…伝達比可変機構、14…伝達比制御モータ、15…反力補償モータ、18…入力軸、19…出力軸、25…ロック機構、30…トルクセンサ、31…第1レゾルバ(第1センサ)、32…第2レゾルバ(第2センサ)、37…制御部、50…第1判定部、51…第2判定部、52…第3判定部、61…ソレノイド(支持装置)、62…ロック部材、P1…第1位置、P2…第2位置、T1…トルクセンサの検出値、Tt…閾トルク(所定トルク)、T(θa4)…所定トルク、ΔT…トルクセンサの検出値の変化量、θa1,θb3…第1所定角度、θa2…第2所定角度、θa4…所定の回転位置、θb1,θa3…回転位置センサの検出値、Δθ,ΔθA…差、δ,δA…所定角度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操舵部材の操舵に応じて回転する入力軸と転舵機構の動作に連動して回転する出力軸との間に介在し、入力軸および出力軸間の伝達比を変更可能な伝達比可変機構と、
前記伝達比可変機構の前記伝達比を変更するための伝達比制御モータと、
前記伝達比制御モータの回転位置を検出する第1センサと、
前記伝達比可変機構に係合することにより前記伝達比を固定するためのロック部材、および前記ロック部材を前記伝達比可変機構に係合する第1位置と前記伝達比可変機構との係合が解除された第2位置とに変位可能に支持する支持装置を含むロック機構と、
前記伝達比可変機構の動作による前記操舵部材の操舵反力を補償するための反力補償モータと、
前記反力補償モータの回転位置を検出する第2センサと、
前記伝達比制御モータ、前記ロック機構および前記反力補償モータを制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記伝達比が固定されているか否かを判定する第1判定部を含み、
前記第1判定部は、前記ロック部材が前記第2位置にあり、且つ前記伝達比制御モータおよび反力補償モータの何れか一方からなる所定のモータが第1所定角度回転された場合において、前記伝達比制御モータおよび反力補償モータの何れか他方に対応するセンサの検出値と前記第1所定角度との差が所定角度(ゼロを含む)以下のとき、前記伝達比が固定されていると判定することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項2】
請求項1において、前記操舵部材に作用するトルクを検出するトルクセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記伝達比が固定されているか否かを判定する第2判定部を含み、
前記第2判定部は、前記ロック部材が前記第2位置にあり、且つ前記伝達比制御モータが第2所定角度回転された場合において、前記トルクセンサの検出値の変化量が所定トルクを超えているとき、前記伝達比が固定されていると判定することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項3】
請求項1において、前記操舵部材に作用するトルクを検出するトルクセンサをさらに備え、
前記制御部は、前記伝達比が固定されているか否かを判定する第2判定部を含み、
前記第2判定部は、前記ロック部材が前記第2位置にあり、且つ前記伝達比制御モータが所定の回転位置にある場合において、前記トルクセンサの検出値が所定トルクを超えているとき、前記伝達比が固定されていると判定することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項において、前記制御部は、車両が直進状態にあるか否かを判定する第3判定部を含み、
前記制御部は、車両が直進状態にあると判定されたとき、前記伝達比が固定されているか否かを判定することを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項において、前記制御部は、前記伝達比が固定されていると判定したときに、前記ロック部材の前記第1位置への変位を禁止させることを特徴とする車両用操舵装置。
【請求項6】
操舵部材の操舵に応じて回転する入力軸と転舵機構の動作に連動して回転する出力軸との間に介在し、入力軸および出力軸間の伝達比を変更可能な伝達比可変機構と、
前記伝達比可変機構の前記伝達比を変更するための伝達比制御モータと、
前記伝達比可変機構に係合することにより前記伝達比を固定するためのロック部材、および前記ロック部材を前記伝達比可変機構に係合する第1位置と前記伝達比可変機構との係合が解除された第2位置とに変位可能に支持する支持装置を含むロック機構と、
前記伝達比可変機構の動作による前記操舵部材の操舵反力を補償するための反力補償モータと、を備える車両用操舵装置の伝達比判定方法において、
前記ロック部材が前記第2位置にあり、且つ前記伝達比制御モータおよび反力補償モータの何れか一方からなる所定のモータが第1所定角度回転された場合において、前記伝達比制御モータおよび反力補償モータの何れか他方の回転角度と前記第1所定角度との差が所定角度(ゼロを含む)以下のとき、前記伝達比が固定されていると判定することを特徴とする車両用操舵装置の伝達比判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−240782(P2011−240782A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−113352(P2010−113352)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】