説明

車両用放送受信機

【課題】ユーザが望まない状況であってもプログラムの更新が行われてしまうことを防ぎ、適切な状況でプログラムの更新を実行できる車両用放送受信機を提供する。
【解決手段】地上波デジタル放送により放送される書き換えデータをデジタル放送受信部19によって受信し、データ記憶部20に記憶しておく。TV画面の出力状態や車両の状態に基づいて、ユーザがその時点からしばらくの間はTVを使用しないと考えられる状況に合わせて予め設定された書き換え開始条件を満たす場合には、データ記憶部20に記憶された書き換えデータを用いて、デジタル放送受信部19のファームウェアを書き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載して用いられる放送受信機に関し、特に各種コンテンツと自身の書き換えプログラムとを放送によって受信する車両用放送受信機に関する。
【背景技術】
【0002】
衛星放送や地上波などのデジタル放送によって提供されるバージョンアップ用データを車両に搭載された車上端末で受信し、車上端末のプログラムを更新するシステムが知られている(特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−53699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるシステムでは、プログラムの更新タイミングについては何ら開示がないため、ユーザが望まない状況であってもプログラムの更新が行われてしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明による車両用放送受信機は、車両に搭載される放送受信機であって、各種のコンテンツと、放送受信機自身のプログラムを書き換えるための書き換えデータとを放送波によって受信する受信手段と、受信手段により受信された各種のコンテンツ内容を画像および/または音声により出力する出力手段と、受信手段により受信された書き換えデータを記憶する記憶手段と、予め設定された書き換え開始条件を満たすか否かを判定する判定手段と、判定手段により書き換え開始条件を満たすと判定された場合、記憶手段により記憶された書き換えデータを用いてプログラムを書き換える書き換え手段とを備えるものである。
請求項2の発明は、請求項1の車両用放送受信機において、車両を目的地まで誘導するための道路地図を画像出力するナビゲーション手段と、コンテンツ内容と道路地図のいずれか一方を切り替えて出力する出力切替手段とをさらに備え、判定手段は、出力切替手段による出力がコンテンツ内容から道路地図へと切り替えられた場合に、書き換え開始条件を満たすと判定するものである。
請求項3の発明は、請求項1の車両用放送受信機において、車両を目的地まで誘導するための道路地図を画像出力するナビゲーション手段と、コンテンツ内容と道路地図のいずれか一方を切り替えて出力する出力切替手段とをさらに備え、判定手段は、出力切替手段による出力が道路地図からコンテンツ内容へと切り替えられた場合に、書き換え開始条件を満たすと判定し、出力切替手段は、書き換え手段によりプログラムが書き換えられた後にコンテンツ内容を出力するものである。
請求項4の発明は、請求項1の車両用放送受信機において、判定手段は、放送波の受信電界強度が所定値以下である地域を車両が走行している場合に、書き換え条件を満たすと判定するものである。
請求項5の発明は、請求項1の車両用放送受信機において、車両を目的地まで誘導するための道路地図を画像出力するナビゲーション手段をさらに備え、判定手段は、道路地図を運転者が注視する地域を車両が走行している場合に、書き換え条件を満たすと判定するものである。
請求項6の発明は、請求項5の車両用放送受信機において、道路地図を運転者が注視する地域とは、現在地から目的地までの推奨経路上に設定された誘導交差点から手前の所定距離以内の地域であることとするものである。
請求項7の発明は、請求項1の車両用放送受信機において、判定手段は、車両のエンジンの作動状態に基づいて、エンジンが始動した直後に書き換え条件を満たすと判定するものである。
請求項8の発明は、請求項1の車両用放送受信機において、判定手段は、車両のエンジンの作動状態に基づいて、エンジンが停止した直後に書き換え条件を満たすと判定するものである。
請求項9の発明は、請求項1の車両用放送受信機において、判定手段は、車両のパーキングブレーキの作動状態に基づいて、パーキングブレーキがオンしたときに書き換え条件を満たすと判定するものである。
請求項10の発明は、請求項1〜9のいずれかの車両用放送受信機において、書き換え手段によりプログラムを書き換える前に、書き換えを行うか否かを確認するための書き換え確認画面を表示する第1の表示手段をさらに備え、書き換え手段は、書き換え確認画面において書き換えが指示された場合に、プログラムの書き換えを開始するものである。
請求項11の発明は、請求項1〜10のいずれかの車両用放送受信機において、書き換え手段によりプログラムを書き換えているときに、出力手段からの出力を禁止する旨を表すための書き換え中画面を表示する第2の表示手段をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、予め設定された書き換え開始条件を満たすか否かを判定し、書き換え開始条件を満たすと判定された場合、記憶手段に記憶された書き換えデータを用いてプログラムを書き換えることとした。このようにしたので、ユーザが望まない状況であってもプログラムの更新が行われてしまうことを防ぎ、適切な状況でプログラムの更新を実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成を図1に示す。このナビゲーション装置は車両に搭載されており、道路地図を表示して設定された目的地までユーザを案内する。さらに、地上波デジタル放送を受信することにより、テレビ番組をユーザに視聴させたり、自身の動作用プログラムであるファームウェアの一部を書き換えたりすることもできる。図1に示すナビゲーション装置1は、制御回路11、ROM12、RAM13、現在地検出装置14、画像メモリ15、表示モニタ16、スピーカ17、入力装置18、デジタル放送受信部19、データ記憶部20およびディスクドライブ21を有している。デジタル放送受信部19には、アンテナ22が接続されている。ディスクドライブ21には、地図データが記録されたDVD−ROM23が装填される。
【0008】
制御回路11は、マイクロプロセッサおよびその周辺回路からなり、RAM13を作業エリアとしてROM12に格納された制御プログラムを実行することにより、後で説明するような各種の処理や制御を行う。現在地検出装置14は、自車両の現在地を検出する装置であり、たとえば、自車両の進行方位を検出する振動ジャイロ14a、車速を検出する車速センサ14b、GPS衛星からのGPS信号を検出するGPSセンサ14c等からなる。ナビゲーション本体1は、この現在地検出装置14により検出される自車両の現在地に基づいて、後述する経路探索開始点を決定することができる。
【0009】
画像メモリ15は、表示モニタ16に表示するための画像データを一時的に格納する。この画像データは、道路地図を表示するための道路地図描画用データや各種の図形データ等からなり、DVD−ROM23に記録されている地図データに基づいて、制御回路11において作成される。制御回路11により作成された画像データが画像メモリ15に出力されることによって、表示モニタ16に道路地図が表示され、さらに、その道路地図上に様々な道路交通情報が表示される。
【0010】
表示モニタ16は、たとえば液晶ディスプレイなどを用いた映像表示用のディスプレイであり、上記の道路地図や道路交通情報が表示される。さらに、デジタル放送受信部19から後で説明するようにして出力されるTV(テレビジョン)映像信号を制御回路11を介して入力することにより、TV映像の表示を行うこともできる。以下の説明では、道路地図や道路交通情報を表示するときの画面をナビゲーション画面といい、TV映像を表示するときの画面をTV画面という。ユーザは、入力装置17の操作によって表示モニタ16に表示する画面を切り替えることができ、上記のナビゲーション画面またはTV画面のいずれか一方を表示モニタ16に表示させることができる。
【0011】
スピーカ17は、音声出力用のスピーカであり、設定された目的地までユーザを案内するための各種の案内用音声、たとえば右左折をユーザに指示する音声などが出力される。また、デジタル放送受信部19から後で説明するようにして出力されるTV音声を制御回路11を介して入力することにより、TV音声を出力することもできる。なお、スピーカ17から出力される音声と、前述の表示モニタ16において表示される画面とは必ずしも連動していなくてもよい。たとえば、表示モニタ16にナビゲーション画面を表示しているときに、スピーカ17からTV音声が出力されるようにしてもよい。
【0012】
入力装置18は、車両の目的地や経由地(以下、これらを合わせて単に目的地という)をユーザが設定したり、表示モニタ16に表示するナビゲーション画面とTV画面を切り替えたりするための各種の入力スイッチを有している。この入力装置18は、操作パネルやリモコンなどによって実現される。ユーザは、表示モニタ16に表示される画面指示に従って入力装置18を操作することにより、地名や地図上の位置などを指定して目的地を設定することができる。また、表示モニタ16にTV画面が表示されているときには、入力装置18の操作によってデジタル放送受信部19に対して受信周波数の切り替えを指示することができる。これにより、TV画面において表示するTV映像のチャンネルを切り替えることができる。
【0013】
デジタル放送受信部19は、不図示の放送局によって放送される地上波デジタル放送をアンテナ22を介して受信する。ここでいう地上波デジタル放送とは、近年になって日本国内の一部地域などでサービスの提供が開始されたデジタル方式による地上波TV放送サービスのことである。この地上波デジタル放送では、従来のアナログ方式によるTV放送サービスとは異なり、TV映像やTV音声がデジタルデータとして放送される。さらに地上波デジタル放送では、これらのTV映像データやTV音声データに加えて他の様々なデータも放送される。たとえば、テレビ番組の放送予定のデータなどが放送される。以下の説明では、これらのTV映像データやTV音声データ以外のデータのことを、付加データということとする。この付加データとして、デジタル放送受信部19のファームウェアを書き換えてバージョンアップするために用いられる書き換えデータ(以下、単に書き換えデータという)が放送される場合がある。
【0014】
デジタル放送受信部19により受信されたTV映像データは、デジタル放送受信部19において復調された後、TV映像信号として制御回路11を介して表示モニタ16へ出力される。これにより、表示モニタ16においてTV画面が表示される。また、デジタル放送受信部19により受信されたTV音声データは、デジタル放送受信部19において復調された後、TV音声信号として制御回路11を介してスピーカ17へ出力される。これにより、スピーカ17においてTV音声が出力される。
【0015】
一方、デジタル放送受信部19により受信された付加データは、制御回路11に出力された後、制御部11においてそのデータ内容に応じた処理が実行される。以下では、付加データとして前述の書き換えデータが受信された場合の処理内容について、説明を行うものとする。なお、その他の内容の付加データが受信された場合の処理内容については、本発明には関係しないため説明を省略する。
【0016】
デジタル放送受信部19から制御回路11に出力された書き換えデータは、制御回路11においてファームウェアのバージョン照合や機種照合などが行われた後、適用可能な書き換えデータである場合にはデータ記憶部20へ出力される。データ記憶部20は、メモリなどデータを一時的に記憶可能な部材を用いて構成されており、データ記憶部20から出力された書き換えデータを一時的に記憶しておく。データ記憶部20に記憶された書き換えデータは、制御回路11の制御によって後で説明するような書き換えタイミングにおいて読み出される。これを用いて、デジタル放送受信部19のファームウェアが書き換えられる。
【0017】
ディスクドライブ21は、装填されたDVD−ROM23より、ナビゲーション画面において道路地図を表示するための地図データを読み出す。この地図データには、ルート探索に用いられる経路計算データや、交差点名称および道路名称など、推奨経路に従って自車両を目的地まで誘導するために用いられる経路誘導データ、さらに道路を表す道路データなどが含まれている。また、河川や鉄道、地図上の各種施設等(ランドマーク)など、道路以外の地図形状を表す背景データなども地図データに含まれている。
【0018】
道路データにおいて、道路区間を表す最小単位はリンクと呼ばれており、各道路は複数のリンクによって構成されている。リンク同士を接続している点はノードと呼ばれ、このノードはそれぞれに位置情報(座標情報)を有している。このノードの位置情報によって、リンク形状、すなわち道路の形状が決定される。なお、ここではDVD−ROMを用いた例について説明しているが、DVD−ROM以外の他の記録メディア、たとえばCD−ROMやハードディスクなどより、地図データを読み出すこととしてもよい。
【0019】
ユーザが入力装置18を操作して目的地を設定すると、ナビゲーション装置1は、現在地検出装置14により検出された現在地を経路探索開始点として、前述の経路計算データに基づいて所定のアルゴリズムの演算を行うことにより、現在地から目的地までのルート探索を行う。ルート探索の結果求められた推奨経路は、その表示形態、たとえば表示色などを変えることによって、他の道路とは区別してナビゲーション画面において道路地図上に表される。これにより、ユーザは推奨経路を表示モニタ16に表示された道路地図上において認識することができる。また、この推奨経路に従って自車両が走行できるよう、ナビゲーション装置1は、ユーザに対して画像や音声などによる進行方向指示を行うことにより、自車両を誘導する。このように、道路地図を表示して推奨経路に従って自車両を目的地まで誘導することにより、目的地までのルート案内が行われる。
【0020】
ここで、付加データとして書き換えデータが受信された場合の処理内容について説明する。制御回路11は、書き換えデータが受信されてデータ記憶部20に記憶されており、さらに後で説明する所定の書き換え開始条件を満たす場合には、図2に示すような画面を表示モニタ16に表示する。以下の説明では、この画面を書き換え確認画面という。この書き換え確認画面が表示されることにより、ユーザに対してデジタル放送受信部19のファームウェアを書き換えるか否かの確認が行われる。
【0021】
図2の書き換え確認画面において、書き換え開始ボタン31が入力装置18の操作によって押されると、制御回路11によってデータ記憶部20に記憶されている書き換えデータが読み込まれ、デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えが開始される。一方、キャンセルボタン32が押された場合は、デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えは開始されない。その場合には、所定時間の経過後や車両のエンジンが再度オンされたときなどに、再び図2の書き換え確認画面が表示される。
【0022】
デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えが開始されると、図3に示すような画面が表示モニタ16に表示される。以下の説明では、この画面を書き換え中画面という。デジタル放送受信部19のファームウェアを書き換えている間は、デジタル放送受信部19を動作させることができないため、表示モニタ16にTV画面を表示することができず、スピーカ17からはTV音声が出力されない。そこで、図3のような書き換え中画面が表示されることにより、ユーザはデジタル放送受信部19のファームウェアが書き換え中であることを認識できると共に、書き換え中はTV画面への切り替えやTV音声の出力ができないことを知ることができる。
【0023】
なお、上述した書き換え中画面は、デジタル放送受信部19のファームウェアを書き換えている間、表示され続ける。その間はデジタル放送受信部19の動作が禁止され、TV映像とTV音声の出力が禁止される旨がこの書き換え中画面によって表されている。このときの書き換えに要する時間は、書き換えるファームウェアのデータ量や制御回路11の処理能力などによって変化するが、たとえば書き換えるファームウェアのデータ量が10メガバイト程度であるときに、数分程度とすることができる。
【0024】
デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えが終了すると、図4のような画面が表示モニタ16に表示される。以下の説明では、この画面を書き換え終了画面という。この書き換え終了画面が表示されることにより、ユーザはデジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えが終了したことを認識でき、TV画面への切り替えの禁止が解除されたことを知ることができる。なお、書き換え前にTV音声がスピーカ17から出力されていた場合には、書き換え終了画面が表示されたときに再びTV音声を出力できるようになる。
【0025】
次に、前述の書き換え開始条件について説明する。書き換え開始条件は、TV画面の出力状態に基づいて、ユーザがその時点からしばらくの間はTVを使用しないと考えられる状況に合わせて書き換えが開始されるように、予め設定しておくことができる。たとえば次のような場合には、書き換え開始条件を満たすものと判断することができる。
(a)表示モニタ16の表示がTV画面からナビゲーション画面に切り替えられた場合
(b)地上波デジタル放送の受信電界強度が弱くてTVを使用できない地域を、自車両が一定時間以上走行する場合
(c)ユーザがナビゲーション画面を注視すると考えられる地域を自車両が走行している場合
【0026】
上記(a)の場合は、ユーザが自らナビゲーション機能を使用することを選択しているため、しばらくの間はTVを使用しないと考えられる。そのため、(a)を書き換え開始条件に設定して、これを満たす場合にはデジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを開始することができる。(a)の書き換え開始条件を満たすか否かは、入力装置18の操作状態によって判断することができる。
【0027】
(b)の場合は、その地域を自車両が走行している間はTV画面を出力できない。そのため、(b)を書き換え開始条件に設定して、これを満たす場合にはデジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを開始することができる。(b)の書き換え開始条件を満たすか否かは、地域ごとの地上波デジタル放送の受信電界強度に関する情報(受信電界強度マップ)を地図データに予め記録しておくことで判断できる。すなわち、この受信電界強度マップにおいて受信電界強度が所定値以下とされている地域を、自車両が一定時間以上走行するような場合には、(b)の書き換え開始条件を満たすものと判断することができる。
【0028】
なお、過去に各地点において測定された受信電界強度の履歴を記録しておき、この測定履歴によって受信電界強度マップを求めてもよい。このとき過去の測定履歴がない地点については、その周囲の地点における測定履歴から受信電界強度を推測することもできる。このとき、受信電界強度の替わりに地上波デジタル放送の受信データにおける誤り率(ビットエラーレート)を測定し、この誤り率が所定値以上となったときを(b)の書き換え開始条件を満たすものとしてもよい。
【0029】
あるいは、地図データの地形的特徴によって判断してもよい。たとえば、トンネルや山岳地帯、市街地、地下駐車場など、受信電界強度が比較的低いと考えられる地域を自車両が一定時間以上走行する場合には、(b)の書き換え開始条件を満たすものと判断することができる。なお、上記のような地域を自車両が一定時間以上走行するか否かは、設定された推奨経路がその地域を通過している距離に基づいて判断してもよいし、自車位置と自車走行速度から判断してもよい。
【0030】
(c)の場合は、ユーザがナビゲーション画面を注視するため、しばらくの間はTVを使用しないと考えられる。そのため、(c)を書き換え開始条件に設定して、これを満たす場合にはデジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを開始することができる。(c)の書き換え開始条件を満たすか否かは、設定された推奨経路と自車位置に基づいて判断することができる。たとえば、誘導交差点や目的地から手前の所定距離以内の地域などを走行している場合には、(c)の書き換え開始条件を満たすものと判断することができる。あるいは、市街地のように道路が込み入っている地域を走行している場合にも、(c)の書き換え開始条件を満たすものと判断してもよい。
【0031】
または、自車両の走行開始前や走行後には、しばらくの間TVを使用しないと考えられるため、これに合わせて書き換え開始条件を設定してもよい。たとえば次のような場合には、書き換え開始条件を満たすものと判断することができる。
(d)自車両のエンジン始動直後
(e)自車両のエンジン停止直後
(f)パーキングブレーキをオンした場合
【0032】
上記(d)の場合は走行開始前であり、(e)の場合は走行後であると判断できるため、これらを書き換え開始条件に設定して、デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを開始することができる。上記(d)や(e)の書き換え開始条件を満たすか否かは、ナビゲーション装置1に供給されているACC電源のオンオフによって判断することができる。なお、(e)の場合には、エンジンを停止してから書き換えが終了するまでの間はナビゲーション装置1の電源がオンになるようにしておき、書き換え終了後に電源をオフするようにすることが好ましい。
【0033】
(f)の場合は、エンジンをつけたままユーザが一時的に運転席から離れるような状況が想定されるため、これを書き換え開始条件に設定して、デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを開始することができる。(f)の書き換え開始条件を満たすか否かは、自車両から入力されるパーキングブレーキ信号によって判断することができる。
【0034】
なお、上記の(e)や(f)の書き換え開始条件を満たすか否かの判断については、設定された推奨経路の目的地に自車両が到達したときに行うようにしてもよい。このようにすれば、目的地に到達する前に推奨経路の途中で自車両が停車した場合に、書き換えが開始されるのを防ぐことができる。
【0035】
あるいは、ユーザがTVを使用する前に、デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを開始するようにしてもよい。たとえば次のような場合には、書き換え開始条件を満たすものと判断することができる。
(g)表示モニタ16の表示がナビゲーション画面からTV画面に切り替えられた場合
【0036】
上記(g)の書き換え開始条件を満たすか否かは、入力装置18の操作状態によって判断することができる。なお、この場合には書き換え中はTV画面への切り替えを行わず、書き換え終了後にTV画面へ切り替わるようにすることが好ましい。以上説明した(a)〜(g)のような書き換え開始条件を予め設定し、これらのいずれかを満たす場合には、デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを開始することができる。
【0037】
以上説明した処理内容を制御回路11において実行するときのフローチャートを図5に示す。このフローチャートは予め決められた間隔ごとに実行される。たとえば、所定時間が経過したときや、車両のエンジンがオンされたときなどに実行される。ステップS1では、書き換えデータが受信されてデータ記憶部20に記憶されているか否かを判定する。データ記憶部20に受信した書き換えデータが記憶されている場合は、ステップS2へ進む。書き換えデータが記憶されていない場合は、図5の処理フローを終了する。
【0038】
ステップS2では、予め設定された前述のような書き換え開始条件を満たしているか否かを判定する。書き換え開始条件を満たしている場合は、次のステップS3へ進む。書き換え開始条件を満たしていない場合は、書き換え開始条件を満たすと判定されるまで、ステップS2を繰り返す。ステップS3では、図2の書き換え確認画面を表示モニタ16に表示する。
【0039】
ステップS4では、ステップS3で表示した書き換え確認画面において、ユーザから書き換え開始を指示されたか否かを判定する。この判定は、図2の書き換え開始ボタン31とキャンセルボタン32のいずれが押されたかによって行われる。書き換え開始ボタン31が押された場合には、書き換え開始を指示されたと判定して次のステップS5へ進む。一方、キャンセルボタン32が押された場合には、書き換え開始を指示されなかったと判定して図5の処理フローを終了する。ステップS5では、図3の書き換え中画面を表示モニタ16に表示する。
【0040】
ステップS6では、デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを実行する。次のステップS7では、ステップS6の書き換えが正常に終了したか否かを判定する。この判定は、たとえば、デジタル放送受信部19の書き換え後のファームウェアの内容と、データ記憶部20に記憶されている書き換えデータの内容とを照合することによって行うことができる。この場合、両者の照合結果が一致していれば、書き換えが正常に終了したと判定して次のステップS8へ進み、両者の照合結果が一致していなければ、書き換えが正常に終了しなかったと判定してステップS2へ戻る。なお、これ以外の方法によって書き換えが正常に終了したか否かを判定してもよい。
【0041】
ステップS8では、図4の書き換え終了画面を表示モニタ16に表示する。なお、書き換え終了画面を表示した後は、TV画面とナビゲーション画面のいずれを表示するようにしてもよい。ステップS8を実行した後は、図5の処理フローを終了する。このとき、データ記憶部20に記憶されている書き換えデータを消去するようにしてもよい。以上説明したようにして、受信した書き換えデータを用いてデジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えが行われる。
【0042】
以上説明した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)予め設定された書き換え開始条件を満たすか否かを判定し(ステップS2)、書き換え開始条件を満たすと判定された場合、データ記憶部20に記憶された書き換えデータを用いてデジタル放送受信部19のファームウェアを書き換えることとした(ステップS6)。このようにしたので、ユーザが望まない状況であってもファームウェアの書き換えが行われてしまうことを防ぎ、適切な状況でファームウェアの書き換えを実行することができる。
【0043】
(2)書き換え開始条件をTV画面の出力状態に基づいて設定することとし、上記(a)〜(c)あるいは(g)のいずれかの場合には、書き換え開始条件を満たすものと判断することとした。また、書き換え開始条件を車両の状態に基づいて設定することとし、上記(d)〜(f)のいずれかの場合には、書き換え開始条件を満たすものと判断することとした。このようにしたので、ユーザがその時点からしばらくの間はTVを使用しないと考えられる状況に合わせて書き換えが開始されるように、書き換え開始条件を設定することができる。
【0044】
(3)デジタル放送受信部19のファームウェアを書き換える前に、書き換えを行うか否かを確認するための書き換え確認画面を表示して(ステップS3)、この書き換え確認画面において書き換えが指示された場合に、デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを開始することとした(ステップS4)。このようにしたので、ユーザの選択に応じてより適切な状況でファームウェアの書き換えを実行することができる。
【0045】
(4)デジタル放送受信部19のファームウェアを書き換えているとき、デジタル放送受信部19の動作を禁止して、TV映像とTV音声の出力を禁止する旨を表す書き換え中画面を表示することとした(ステップS5)。このようにしたので、書き換え中はTV画面への切り替えやTV音声の出力ができないことをユーザに知らせることができる。
【0046】
なお、上記の実施の形態では、地上波デジタル放送を受信してTV映像とTV音声を出力する例について説明したが、本発明はこの内容に限定されない。たとえば、衛星からのデジタル放送を受信してもよいし、あるいはラジオ放送を受信して音声のみを出力するようにしてもよい。テレビ番組やラジオ番組などの各種のコンテンツと、書き換えデータとを放送によって受信して、そのコンテンツ内容を画像や音声として出力すると共に、書き換えデータを用いて自身のファームウェアを書き換えるものである限り、本発明の適用範囲内に含まれる。
【0047】
また、上記の実施の形態では、書き換え開始条件を満たす場合には図2のような書き換え画面を表示して、その書き換え画面に対してユーザが書き換えを指示したときに、デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを開始することとしていた。しかし、書き換え画面を表示せずに書き換えを開始するようにしてもよい。その場合、図5のステップS2において書き換え開始条件を満たすと判定された場合は、ステップS3およびS4の処理は実行せずにステップS5へと進むようにすればよい。
【0048】
さらに、上記の実施の形態では、デジタル放送受信部19のファームウェアの書き換え中には図3のような書き換え中画面を表示して、TV画面への切り替えを禁止することとしていた。しかし、入力装置18の操作によってユーザからTV画面への切り替えを指示された場合には、ファームウェアの書き換えを中止してTV画面へと切り替えるようにしてもよい。この場合、図2の書き換え確認画面においてキャンセルボタン32が押された場合と同様に、所定時間の経過後や車両のエンジンが再度オンされたときなどに再び書き換え確認画面を表示して、ファームウェアの書き換えをユーザに促すようにすることが好ましい。
【0049】
上記の実施の形態では、(a)〜(g)の書き換え開始条件のいずれかを満たすときにデジタル放送受信部19のファームウェアの書き換えを開始することとした。しかし、目的地までの推奨経路が設定されており、その長さが所定距離よりも短いような場合には、目的地までの所要時間が短く書き換え時間が確保できないことがある。そのため、このような場合には(a)〜(g)の書き換え開始条件のいずれかを満たす場合であっても、書き換え開始を禁止するようにしてもよい。
【0050】
上記実施の形態では、ナビゲーション装置において、DVD−ROMなどの記憶メディアに記録された地図データに基づいて経路探索を行い、探索された推奨経路にしたがって自車両を案内する例について説明しているが、本発明はこの内容には限定されない。たとえば、携帯電話などによる無線通信を用いて、地図データを情報配信センターからダウンロードする通信ナビゲーション装置などにおいても、本発明を適用できる。
【0051】
上記実施の形態では、たとえば、受信手段をデジタル放送受信部19、出力手段を表示モニタ16およびスピーカ17、記憶手段をデータ記憶部20、判定手段および書き換え手段を制御回路11などによってそれぞれ実現し、第1および第2の表示手段を表示モニタ16により実現する例を説明した。しかし、本発明はこれらの内容に限定されない。本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も、本発明の範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施形態によるナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図2】書き換え開始条件を満たす場合に表示される書き換え確認画面の例を示す図である。
【図3】書き換えが開始されたときに表示される書き換え中画面の例を示す図である。
【図4】書き換えが終了したときに表示される書き換え終了画面の例を示す図である。
【図5】書き換えデータを用いてデジタル放送受信部のファームウェアの書き換えが行われるときに実行される処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0053】
1 ナビゲーション本体
11 制御回路
12 ROM
13 RAM
14 現在地検出装置
15 画像メモリ
16 表示モニタ
17 スピーカ
18 入力装置
19 デジタル放送受信部
20 データ記憶部
21 ディスクドライブ
22 アンテナ
23 DVD−ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される放送受信機であって、
各種のコンテンツと、前記放送受信機自身のプログラムを書き換えるための書き換えデータとを放送波によって受信する受信手段と、
前記受信手段により受信された各種のコンテンツ内容を画像および/または音声により出力する出力手段と、
前記受信手段により受信された書き換えデータを記憶する記憶手段と、
予め設定された書き換え開始条件を満たすか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段により前記書き換え開始条件を満たすと判定された場合、前記記憶手段により記憶された書き換えデータを用いて前記プログラムを書き換える書き換え手段とを備えることを特徴とする車両用放送受信機。
【請求項2】
請求項1の車両用放送受信機において、
前記車両を目的地まで誘導するための道路地図を画像出力するナビゲーション手段と、
前記コンテンツ内容と前記道路地図のいずれか一方を切り替えて出力する出力切替手段とをさらに備え、
前記判定手段は、前記出力切替手段による出力が前記コンテンツ内容から前記道路地図へと切り替えられた場合に、前記書き換え開始条件を満たすと判定することを特徴とする車両用放送受信機。
【請求項3】
請求項1の車両用放送受信機において、
前記車両を目的地まで誘導するための道路地図を画像出力するナビゲーション手段と、
前記コンテンツ内容と前記道路地図のいずれか一方を切り替えて出力する出力切替手段とをさらに備え、
前記判定手段は、前記出力切替手段による出力が前記道路地図から前記コンテンツ内容へと切り替えられた場合に、前記書き換え開始条件を満たすと判定し、
前記出力切替手段は、前記書き換え手段により前記プログラムが書き換えられた後に前記コンテンツ内容を出力することを特徴とする車両用放送受信機。
【請求項4】
請求項1の車両用放送受信機において、
前記判定手段は、前記放送波の受信電界強度が所定値以下である地域を前記車両が走行している場合に、前記書き換え条件を満たすと判定することを特徴とする車両用放送受信機。
【請求項5】
請求項1の車両用放送受信機において、
前記車両を目的地まで誘導するための道路地図を画像出力するナビゲーション手段をさらに備え、
前記判定手段は、前記道路地図を運転者が注視する地域を前記車両が走行している場合に、前記書き換え条件を満たすと判定することを特徴とする車両用放送受信機。
【請求項6】
請求項5の車両用放送受信機において、
前記道路地図を運転者が注視する地域とは、現在地から目的地までの推奨経路上に設定された誘導交差点から手前の所定距離以内の地域であることを特徴とする車両用放送受信機。
【請求項7】
請求項1の車両用放送受信機において、
前記判定手段は、前記車両のエンジンの作動状態に基づいて、前記エンジンが始動した直後に前記書き換え条件を満たすと判定することを特徴とする車両用放送受信機。
【請求項8】
請求項1の車両用放送受信機において、
前記判定手段は、前記車両のエンジンの作動状態に基づいて、前記エンジンが停止した直後に前記書き換え条件を満たすと判定することを特徴とする車両用放送受信機。
【請求項9】
請求項1の車両用放送受信機において、
前記判定手段は、前記車両のパーキングブレーキの作動状態に基づいて、前記パーキングブレーキがオンしたときに前記書き換え条件を満たすと判定することを特徴とする車両用放送受信機。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかの車両用放送受信機において、
前記書き換え手段により前記プログラムを書き換える前に、書き換えを行うか否かを確認するための書き換え確認画面を表示する第1の表示手段をさらに備え、
前記書き換え手段は、前記書き換え確認画面において書き換えが指示された場合に、前記プログラムの書き換えを開始することを特徴とする車両用放送受信機。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかの車両用放送受信機において、
前記書き換え手段により前記プログラムを書き換えているときに、前記出力手段からの出力を禁止する旨を表すための書き換え中画面を表示する第2の表示手段をさらに備えることを特徴とする車両用放送受信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−20227(P2006−20227A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198182(P2004−198182)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(591132335)株式会社ザナヴィ・インフォマティクス (745)
【Fターム(参考)】