説明

車両用暖機システム

【課題】蓄熱装置を備えた車両用暖機システムにおいて、蓄熱材への蓄熱を短時間で効率良く行えるようにする。
【解決手段】エンジン30の冷却水と熱交換が可能な蓄熱材20を有する蓄熱装置10と、該冷却水をラジエター47に流通させる主流路35aとラジエター47をバイパスするバイパス流路35bとからなるラジエター用循環路(冷却用流路)35と、主流路35aとバイパス流路35bを切り替える電子制御サーモスタット弁(切替弁)37と、冷却水の温度を検出する水温センサ38と、冷却水の温度に応じて切替弁37を作動させるECU50と、を備えた車両用暖機システム1において、冷却水の熱を蓄熱材20に蓄熱する際、蓄熱完了前は蓄熱完了後よりも冷却水温度が高くなるように切替弁37の作動温度を設定し、蓄熱材20への蓄熱を短時間で効率良く行えるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関や自動変速機などの早期暖機あるいは車内の即効暖房を行うことができる蓄熱装置を備えた車両用暖機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1、2に示すように、蓄熱により内燃機関(以下、「エンジン」という)や自動変速機の暖機を行う蓄熱装置を備えた車両用暖機システムがある。特許文献1に記載の蓄熱装置(蓄熱タンク)は、エンジンの冷却水を蓄熱媒体として用い、該蓄熱媒体を断熱性の高い容器に収容したものである。また、特許文献2に記載の蓄熱装置は、自動変速機の作動油が流通する流路を、セラミックや酸化マグネシウムなどの高熱容量材からなる蓄熱材層で被覆した構造である。また、これ以外にも、エンジンの冷却水と熱交換を行う蓄熱媒体を備えた蓄熱装置がある。これらの蓄熱装置を備えた暖気システムによれば、車両の運転時に冷却水や作動油の熱を蓄熱媒体に蓄熱しておき、次回の車両始動時にこの蓄熱を利用して、エンジンや自動変速機の早期暖機、あるいは車内の即効暖房などを効果的に行うことが可能となる。
【0003】
ところで、水冷式エンジンには、エンジンの冷却水をラジエター(冷却用熱交換器)に流通させる冷却用流路が設けられている。該冷却用流路は、ラジエターに連通する主流路とラジエターをバイパスするバイパス流路とからなり、主流路とバイパス流路の分岐点には、これら流路を切り替える切替弁が設置されている。従来の切替弁は、冷却水温度に応じて開閉する機械式サーモスタット弁である。この機械式のサーモスタット弁では、冷却水温度が設定温度以上になると、サーモスタットが作動して主流路が開かれ、ラジエターに冷却水が流通するようになっている。
【特許文献1】特開平10−71837号公報
【特許文献2】特開2002−39335号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
機械式サーモスタット弁は、構造上、実際の作動温度にばらつきがあるので、開弁温度は冷却水の沸点に対して比較的余裕を持たせた温度(70℃〜80℃程度)に設定されている。この設定温度は、エンジンの運転状態に関係なく常に一定である。また、実際には、設定温度よりも低い温度で開くことも多い。その結果、エンジン運転時の冷却水の温度が設定温度よりも低下してしまう。そうすると、冷却水の熱を蓄熱材に供給するタイプの蓄熱装置において、蓄熱完了までに長時間を要するという問題があった。また、エンジンの運転が短時間の場合には、蓄熱量が少なくなってしまい、蓄熱装置による暖機で得られる燃費向上や車内の即効暖房などの効果が減少してしまうという問題があった。
【0005】
一方、特許文献1に記載の蓄熱装置は、エンジンの冷却水を蓄熱媒体として用いている。しかし、冷却水は温度が低下すると蓄熱を保持できず、外部に放出してしまう。そのため、装置外に熱が逃げることを防止するために、冷却水の容器に断熱性の高い構造を採用する必要がある。ところが、それにより、蓄熱装置の構造が複雑化して装置が大掛かりになり、車両のコスト高や重量増につながるおそれがあった。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、冷却水の温度を設定温度に正確に調節でき、且つ、従来よりも高い温度に設定できるようにすることで、蓄熱要素への蓄熱を短時間で効率良く行うことができる車両用暖機システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため本発明にかかる車両用暖機システムは、内燃機関(30)の冷却水と熱交換が可能な蓄熱要素(20)を有する蓄熱装置(10)と、内燃機関(30)の冷却水を冷却用熱交換器(47)に流通させる主流路(35a)と該冷却用熱交換器(47)をバイパスするバイパス流路(35b)とからなる冷却用流路(35)と、主流路(35a)とバイパス流路(35b)とを切り替える切替弁(37)と、冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段(38)と、冷却水の温度に応じて切替弁(37)を作動させる制御手段(50)と、を備え、蓄熱要素(20)に蓄熱する際、該蓄熱要素(20)の蓄熱完了を判断し、蓄熱完了前は蓄熱完了後よりも冷却水の温度が高くなるように、切替弁(37)の作動温度を設定することを特徴とする。なお、ここでの括弧内の符号は、後述する実施形態の対応する構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【0008】
本発明にかかる車両用暖機システムによれば、冷却水の温度に応じて切替弁を作動させる制御手段を備え、蓄熱完了前は蓄熱完了後よりも冷却水の温度が高くなるように設定したので、冷却水の熱を蓄熱要素に短時間で効率良く蓄熱することが可能となる。一方、蓄熱完了後は蓄熱完了前よりも冷却水の温度が低くなるので、冷却水の温度を内燃機関の運転に最適な温度に設定することができる。これにより、燃費の向上、排ガスの浄化が図れる。また、従来の機械式サーモスタット弁と比べて、切替弁を設定温度で正確に作動させることが可能となるので、主流路の開弁温度を冷却水の沸点近くの高い温度に設定できる。また、切替弁の作動温度のばらつきを無くすことができるので、冷却水の温度を正確に調節することが可能となる。これらにより、蓄熱完了に要する時間や蓄熱量を安定させることができる。
【0009】
また、この車両用暖機システムでは、内燃機関(30)の運転状態を判断する手段(38)を備え、蓄熱要素(20)に蓄熱する際、内燃機関(30)の運転状態に応じて冷却水の熱を蓄熱要素(20)に蓄熱可能か否かを判断し、可能な場合には、冷却水の温度が所定温度以上となるように、切替弁(37)の作動温度を設定してもよい。これによれば、内燃機関の運転に影響が少ない状態であれば、蓄熱可能と判断することができ、その場合に冷却水温を高くすることで、蓄熱要素への蓄熱に要する時間を短縮しながら、内燃機関の運転を最適化することができる。なお、内燃機関の運転状態は、例えば、冷却水の温度あるいは内燃機関のケース温度などで判断することができる。
【0010】
また、本発明の車両用暖機システムは、内燃機関(30)の冷却水と熱交換が可能な蓄熱要素(20)を有する蓄熱装置(10)と、内燃機関(30)の冷却水を冷却用熱交換器(47)に流通させる主流路(35a)と該冷却用熱交換器(47)をバイパスするバイパス流路(35b)とからなる冷却用流路(35)と、主流路(35a)とバイパス流路(35b)とを切り替える切替弁(37)と、冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段(38)と、冷却水の温度に応じて切替弁(37)を作動させる制御手段(50)と、を備え、内燃機関(30)の始動後、冷却水の温度が所定温度に達してから所定時間が経過する前は、それ以降よりも冷却水の温度が高くなるように、切替弁(37)の作動温度を設定することを特徴とする。これによれば、内燃機関の始動直後に冷却水による蓄熱要素への蓄熱を行う場合において、短時間の運転で蓄熱要素に多くの熱を蓄えることができるようになる。
【0011】
上記の車両用暖機システムにおいては、蓄熱要素(20)の蓄熱完了の判断は、冷却水の温度が所定温度以上となり、且つ、所定時間が経過したことに基づいて行うとよい。また、蓄熱要素(20)の温度が所定温度以上になったことに基づいて行ってもよい。また、蓄熱要素(20)が変速機(40)の作動油と熱交換可能である場合は、蓄熱要素(20)の蓄熱完了の判断は、変速機(40)の作動油の温度が所定温度以上になったことに基づいて行ってもよい。また、変速機(40)の作動油の温度が所定温度以上になり、且つ、所定時間が経過したことに基づいて行ってもよい。また、変速機(40)のケース温度が所定温度以上となったことに基づいて行ってもよい。これらいずれによっても、蓄熱要素の蓄熱完了を適切に判断することが可能となる。
【0012】
また、蓄熱装置(10)が備える蓄熱要素(20)は、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材(20)からなるものが望ましい。これによれば、液状の蓄熱材が凝固点以下になっても固化せず、蓄熱を保持したまま過冷却状態をとり得る。したがって、外気温が低下しても蓄熱を保持でき、かつ、長期間放置しても蓄熱を安定的に保持できるので、蓄熱材容器の断熱構造を簡素化できる。また、解除手段による過冷却状態の解除により、所望のタイミングで蓄熱材を発熱させることができるので、対象機関の早期暖機や車内の即効暖房をより効果的に行えるようになる。また、上記の蓄熱装置が備える蓄熱要素は、化学変化による熱の吸収・放出が可能な化学蓄熱材(21)からなるものでもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる車両用暖機システムによれば、冷却水の温度を設定温度に正確に調節でき、且つ、従来よりも高い温度に設定することができるので、蓄熱要素への蓄熱を短時間で効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかる蓄熱装置を備えた車両用暖機システムの構成例を示す概略図である。車両用暖機システム1は、蓄熱材20を有してなる蓄熱装置10と、エンジン30の冷却水(LLC)を蓄熱装置10および車内暖房装置44のヒータコア45へ循環させる冷却水循環路31とを備えている。冷却水循環路31は、エンジン30に形成された水ジャケット(図示せず)から導出されて、蓄熱装置10に連通し、蓄熱装置10の下流側でヒータコア45を通り、エンジン30の水ジャケットに再度導入されている。エンジン30に導入される直前位置には、冷却水ポンプ32が介装されている。冷却水ポンプ32は、エンジン30のクランク軸(図示せず)の回転に連動して駆動するようになっている。蓄熱装置10は、詳細な構成は後述するが、冷却水循環路31に連通する第一室15と、蓄熱材20を配設した第二室16とを備えている。また、第二室16内には、蓄熱材20の過冷却状態を解除する解除手段(以下、「発核装置」という。)25と、蓄熱材20の温度を検出する蓄熱材温度センサ24が設置されている。なお、符号40は変速機である。
【0015】
ヒータコア45は、詳細な図示は省略するが、車内に臨む空気導入ダクト内に設置されている。空気導入ダクト内には、ヒータコア45に風を送るための送風ファン46が組み込まれている。送風ファン46は、電子制御ユニット(以下、「ECU」という。)50によって作動を制御されるようになっている。ヒータコア45の送風下流側には、車内に連通する送風ダクトが設けられている。
【0016】
また、車内のコントロールパネル(図示せず)には、車内暖房用の暖房スイッチ51、及びデフロスタ吹出口から温風を吹き出すためのデフロスタスイッチ55が設けられている。暖房スイッチ51およびデフロスタスイッチ55のオン/オフ信号は、ECU50に出力されるようになっている。したがって、送風ファン46は、暖房スイッチ51やデフロスタスイッチ55のオン信号に応じて作動し、空気導入ダクトを介して吸い込んだ車内の空気を、ヒータコア45を通して送風ダクトから再び車内に吹き込むようになっている。また、暖機システム1は、外気温を検出する外気温センサ54を備えている。外気温センサ54の検出信号は、ECU50に出力されるようになっている。また、イグニッションスイッチ(以下、IGスイッチという。)56の操作信号は、ECU50に送られるようになっている。
【0017】
冷却水循環路31には、ヒータコア45をバイパスするバイパス流路31bが設けられている。バイパス流路31bは、冷却水循環路31における蓄熱装置10とヒータコア45の間から分岐して、ヒータコア45と冷却水ポンプ32の間に合流している。バイパス流路31bの分岐点には、流通を切り替える切替バルブ33が設置されている。切替バルブ33は、ECU50からの信号で開方向が制御されるようになっている。以下では、切替バルブ33がオフであるというときは、ヒータコア45側の主流路31aが開かれてバイパス流路31bが閉じられ、ヒータコア45に冷却水が流通する状態を示し、切替バルブ33がオンであるというときは、ヒータコア45側の主流路31aが閉じられてバイパス流路31bが開かれ、ヒータコア45に冷却水が流通しない状態を示す。
【0018】
また、エンジン30の冷却水をラジエター47へ循環させるラジエター用循環路(冷却水流路)35が設けられている。ラジエター用循環路35は、エンジン30の水ジャケットから出て、冷却水循環路31における冷却水ポンプ32の上流側に合流している。ラジエター用循環路35には、ラジエター47に連通する主流路35aと、該主流路35aをバイパスするバイパス流路35bとが設けられている。ラジエター47の下流側におけるバイパス流路35bの合流点には、電子制御サーモスタット弁(切替弁)37が介装されている。電子制御サーモスタット弁37は、ECU50からの信号で開方向が制御されるようになっている。また、ラジエター用循環路35には、冷却水の温度を検出する水温センサ38が組み込まれている。水温センサ38の検出信号は、ECU50に出力されるようになっている。
【0019】
図2は、電子制御サーモスタット弁37の構成例を示す図である。以下では、電子制御サーモスタット弁37がオフであるというときは、同図(a)に示す状態、すなわち、主流路35aを開いてバイパス流路35bを閉じた状態を指し、電子制御サーモスタット弁37がオンであるというときは、同図(b)に示す状態、すなわち、主流路35aを閉じてバイパス流路35bを開いた状態を指すものとする。
【0020】
ECU50は、水温センサ38で検出した冷却水温が所定温度(例えば100℃)未満の場合、電子制御サーモスタット弁37をオンにすることで、バイパス流路35bを開き主流路35aを閉じて、冷却水がラジエター47へ流れないように制御する。一方、冷却水温が所定温度(例えば110℃)以上になった場合、電子制御サーモスタット弁37をオフにすることで、バイパス流路35bを閉じて主流路35aを開き、冷却水をラジエター47へ導くように制御する。
【0021】
ECU50には、無線により外部機器からの信号を受信可能な受信装置52が接続されている。これにより、ECU50は、エンジンスタートキー53に設けたウォームアップスイッチ53aのオン/オフ信号を受信できるようになっている。したがって、乗員が車外でエンジンスタートキー53のウォームアップスイッチ53aを操作した場合、それに応じてECU50でその信号が受信され、ECU50は暖機システム1にウォームアップ指令を発することができる。
【0022】
図3は、蓄熱装置10の詳細構成を示す図で、(a)は、分解斜視図、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。蓄熱装置10は、長手状の筒状体からなる筐体11と、筐体11の内部に設置された仕切部材13とを備えた二重構造になっている。仕切部材13は複数のフィン13aを有している。フィン13aは、筐体11の長手方向に沿って延びる板状で、多数が横方向(短手方向)に所定間隔で配列されている。フィン13aの内部には、同図(b)に示すように、仕切部材13の外側に通じる隙間13bが設けられている。フィン13aの隙間13bを含む筐体11と仕切部材13の間は、エンジン30の冷却水が導入される第一室15になっており、仕切部材13の内側は、蓄熱材20が密封状態で充填される第二室16になっている。
【0023】
筐体11の上下端の開口には、蓋部材14a,14bが取り付けられている。また、筐体11の上端近傍と下端近傍の側面には、それぞれ第一室15に冷却水を導入する冷却水入口15aと、冷却水を導出する冷却水出口15bとが設けられている。
【0024】
筐体11は、冷却水に対する防錆性などの耐久性があり、且つ断熱性の良好な材料、例えば、銅、アルミニウム、ステンレスなどの金属材料で構成されている。この筐体11は、図示は省略するが、断熱性を高めるため、内部に真空の断熱層を形成してもよい。また、仕切部材13は、冷却水、作動油、蓄熱材20に対する耐久性があり、且つ比較的熱伝導性の高い材料、例えば、ステンレスなどの金属材料で構成するとよい。
【0025】
蓄熱材20は、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材であり、凝固点以下になっても液状のままで固化しない性質を有している。このような蓄熱材20として、例えば、酢酸ナトリウム水和物からなる蓄熱材が挙げられる。酢酸ナトリウム水和物は、後述する解除手段による過冷却状態の解除によって、平衡状態に戻って固化する際に発熱し、温度の低い他の媒体を加熱することができる。
【0026】
図4は、第二室16の蓄熱材20中に設置された発核装置25を示す概略側面図である。発核装置25は、蓄熱材20中に設置された円形平板状の金属バネ部材26と、金属バネ部材26に打撃を与えるソレノイド27とを備えている。ソレノイド27は、ECU50の指令に応じて動作する。金属バネ部材26は、同図(a)に示す状態において、ソレノイド27による打撃で中央部26aが押圧されると、同図(b)に示すように、該中央部26aが反転するようになっている。これにより、蓄熱材20中に核が生成(発核)され、蓄熱材20の過冷却状態が解除されて固化が始まる。なお、解除手段としては、蓄熱材20中に核を生成可能な手段であれば、何れの手段でもよく、上記以外にも、例えば、蓄熱材20中で金属摩擦あるいは電圧印加などを施す手段であってもよい。
【0027】
ここでは、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材の代表例として酢酸ナトリウム水和物を挙げたが、他にも、水和塩化合物(化学式としてMx・nH2O(n:整数)で表わされるもの)を挙げることができ、Na2SO4・10H2O,CaCl2・6H2Oを例示することができる。
【0028】
また、蓄熱材は、化学反応を利用して熱の吸収・放出を行うことができる化学蓄熱材からなるものであってもよい。このような化学蓄熱材として、例えば、ゼオライトからなる蓄熱材がある。図5は、ゼオライトからなる蓄熱材21を備えた蓄熱装置10の構成例を示す図である。この場合、蓄熱装置10は、ゼオライトからなる蓄熱材21に反応媒体である水22を供給して化学反応を生じさせる反応媒体供給部23を備えて構成される。この蓄熱装置10では、エンジン30の運転時に、冷却水との熱交換でゼオライト21を加熱して脱水させ、これにより、蓄熱材21に蓄熱する。一方、エンジン30の始動時には、反応媒体供給部23から蓄熱材21に水22を供給して吸着させることで、蓄熱材21に吸着熱を発生させて冷却水を加熱する。化学蓄熱材としては、ゼオライトの他にも、例えば、シリカゲル・活性炭・生石灰などがあり、化学反応を生じさせる反応媒体としては、水の他にも、エタノール・メタノール・エチレングリコール系不凍液・塩化カルシウム系不凍液などがある。また、化学蓄熱材の例としては、他にも水素吸蔵合金を用いた蓄熱材などが挙げられる。
【0029】
図6は、上記構成の暖機システム1における運転モードのタイムチャートを示すグラフである。同図に示すように、暖機システム1の運転モードは、モード0からモード3までの4段階に切り替わる。モード0は、エンジン30が始動する前のモードである。この間にウォームアップ信号が入力されると、ECU50は発核装置25を作動させて、蓄熱材20の過冷却状態を解除する。これにより、蓄熱材20が発熱し、蓄熱装置10の自己暖機が行われる。モード1は、IGスイッチ56がオンされてエンジン30が始動してから、冷却水温度が所定温度(♯TW1L)に達するまでのモードであり、この間、蓄熱材20の発熱が冷却水循環路31を循環する冷却水に供給されることで、蓄熱装置10によるエンジン30の暖機が行われる。モード2は、冷却水温度が前記所定温度(♯TW1L)に達した後、蓄熱材20への蓄熱が行われるモードである。この間、エンジン30の冷却水から蓄熱材20へ熱が供給される。また、エンジン30の冷却水は、電子制御サーモスタット弁37の開閉制御によって、所定の温度範囲を維持するように制御(DUTY制御)される。このモード2は、冷却水温が前記の所定温度(♯TW1L)に達してから所定時間が経過したことで蓄熱材20への蓄熱が完了したと判断された時点で終了する。モード3は、蓄熱材20への蓄熱が完了したと判断された後のモードであり、この間、エンジン30の冷却水は、モード2と同様、電子制御サーモスタット弁37の開閉制御によって所定の温度範囲を維持するように制御される。そしてここでは、後述するように、蓄熱材20への蓄熱完了前であるモード2の方が蓄熱完了後であるモード3よりも冷却水の温度が高くなるように、電子制御サーモスタット弁37の作動温度が設定される。
【0030】
図7は、暖機システム1の制御手順を示すメインフローである。この制御手順では、まず、後述するモード切替のサブルーチンを実行する(ステップST1)。その結果に基づき、モード0であるか否かを判定する(ステップST2)。モード0であれば(Y)、モード0のサブルーチンを実行し(ステップST3)、モード0でなければ(N)、モード1か否かを判定する(ステップST4)。その結果、モード1であれば(Y)、モード1のサブルーチンを実行し(ステップST5)、モード1でなければ(N)、モード2か否かを判定する(ステップST6)。その結果、モード2であれば(Y)、モード2のサブルーチンを実行し(ステップST7)、モード2でなければ(N)、モード3のサブルーチンを実行する(ステップST8)。
【0031】
図8は、モード切替手順を説明するためのフローチャートである。モード切替では、まず、IGスイッチ56がオンであるか否かを判定する(ステップST10)。その結果、IGスイッチ56がオンでなければ(N)、モード0をセットする(ステップST11)。IGスイッチ56がオンであれば(Y)、モード2以上か否かを判定し(ステップST12)、モード2以上でなければ(N)、冷却水温TWが♯TW1Lより低いか否かを判定し(ステップST13)、冷却水温TWが♯TW1Lより低ければ(Y)、モード1をセットする(ステップST14)。♯TW1Lの具体例は、100℃である。また、先のステップST12でモード2以上である場合(Y)は、続けてモード2か否かを判定し(ステップST15)、モード2である場合(Y)、あるいは先のステップST13で冷却水温TWが♯TW1L以上である場合(N)は、蓄熱材20への蓄熱が完了したか否かを判定する(ステップST16)。その結果、蓄熱が完了してなければ(N)、モード2をセットし(ステップST17)、蓄熱が完了していれば(Y)、モード3をセットする(ステップST18)。また、先のステップST15でモード2でない場合(N)は、モード3をセットする(ステップST18)。
【0032】
図9は、モード0の手順を説明するためのフローチャートである。モード0では、まず、ウォームアップ信号が入力されたか否かを判定する(ステップST0−1)。この結果、ウォームアップ信号の入力が無い場合(N)は、発核装置25をオフする(ステップST0−2)。ウォームアップ信号の入力が有る場合(Y)は、冷却水温TWが♯TW3より低いか否かを判定する(ステップST0−3)。♯TW3の具体例は、60℃である。その結果、冷却水温TWが♯TW3以上であれば(N)、発核装置25をオフする(ステップST0−2)。つまり、始動時に冷却水温が十分に高い場合は、蓄熱装置10によるエンジン30の暖機は不要であると判断して、蓄熱材20を発核させず、蓄熱材20による冷却水の加熱は行わない。一方、冷却水温TWが♯TW3より低ければ(Y)、発核装置25が既にオンしているか否かを判定する(ステップST0−4)。その結果、発核装置25がオンしていなければ(N)、発核装置25をオンする(ステップST0−5)。発核装置25がオンしていれば(Y)、発核装置25がオンしてから所定時間以内か否かを判定する(ステップST0−6)。その結果、所定時間以内でなければ(N)、すなわち発核装置25がオンしてから所定時間以上が経過していれば、発核装置25をオフする(ステップST0−2)。また、このモード0では、切替バルブ33はオフにしておき(ステップST0−7)、電子制御サーモスタット弁37はオフにしておく(ステップST0−8)。その後、モード0の手順を終了してメインフローに戻る。
【0033】
図10は、モード1の手順を説明するためのフローチャートである。モード1は、イグニッションスイッチ56のオンによりスタートし、冷却水温TWが♯TW3より低いか否かを判定する(ステップST1−1)。その結果、冷却水温TWが♯TW3以上であれば(N)、発核装置25をオフする(ステップST1−2)。つまり、始動時に冷却水温がある程度高い場合は、蓄熱装置10によるエンジン30の暖機は不要であると判断し、蓄熱材20による冷却水の加熱を行わない。一方、冷却水温TWが♯TW3より低ければ(Y)、発核装置25が既にオンしているか否かを判定する(ステップST1−3)。その結果、発核装置25がオンしていなければ(N)、発核装置25をオンする(ステップST1−4)。発核装置25がオンしていれば(Y)、発核装置25がオンしてから所定時間以内か否かを判定する(ステップST1−5)。その結果、所定時間以内でなければ(N)、すなわち発核装置25がオンしてから所定時間以上が経過していれば、発核装置25をオフする(ステップST1−2)。その後、外気温が所定温度以上であり、かつ車内のデフロスタスイッチ55がオフであるか否かを判定する(ステップST1−6)。その結果、外気温が所定温度以下、またはデフロスタスイッチ55がオンである場合(N)は、切替バルブ33をオフすることで(ステップST1−7)、蓄熱装置10から出た冷却水をヒータコア45に流通させる。つまりこの場合は、蓄熱装置10によるエンジン30の暖機を行いながら、蓄熱装置10による車内暖房も行う。一方、外気温が所定温度以上であり、かつデフロスタスイッチ55がオフである場合(Y)は、切替バルブ33をオンすることで(ステップST1−8)、蓄熱装置10から出た冷却水をヒータコア45には流通させない。つまりこの場合は、エンジン30の暖機を優先的に行い、車内暖房は行わない。また、モード1では、電子制御サーモスタット弁37をオンしておき(ステップST1−9)、ラジエター47には冷却水を流通させず、冷却水が早期に温まるようにする。その後、モード1の手順を終了してメインフローに戻る。
【0034】
図11は、モード2の手順を説明するためのフローチャートである。モード2では、発核装置25をオフする(ステップST2−1)。さらに、切替バルブ33をオフすることで(ステップST2−2)、蓄熱装置10からの冷却水をヒータコア45に流通させる。そして、電子制御サーモスタット弁37がオンであるか否かを判定する(ステップST2−3)。その結果、オンであれば(Y)、冷却水温TWが♯TW1Hより低いか否かを判定する(ステップST2−4)。♯TW1Hの具体例は、105℃である。その結果、冷却水温TWが♯TW1H以上である場合(N)は、電子制御サーモスタット弁37をオフすることで(ステップST2−6)、ラジエターに冷却水を流通させる。一方、冷却水温TWが♯TW1Hより低い場合(Y)は、電子制御サーモスタット弁37をオンのままとし(ステップST2−7)、ラジエター47に冷却水を流通させない。また、先のステップST2−3で電子制御サーモスタット弁37がオフである場合(N)は、冷却水温TWが♯TW1Lより高いか否かを判定する(ステップST2−5)。その結果、冷却水温TWが♯TW1Lより高ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオフのままとし(ステップST2−6)、冷却水温TWが♯TW1L以下であれば(N)、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST2−7)。その後、スタートに戻り上記の手順を反復する。つまり、モード2では、冷却水温TWが♯TW1H以上に上昇した場合は、ラジエター47による冷却を行い、冷却水温TWが♯TW1L以下に低下した場合は、ラジエター47による冷却を停止する。これにより、図6に示すように、冷却水温TWが常に♯TW1Lと♯TW1Hの間の範囲内に収まるように制御する。
【0035】
図12は、モード3の手順を説明するためのフローチャートである。モード3は、蓄熱材20の蓄熱が完了したと判断した時点でスタートする。まず、発核装置25はオフであり(ステップST3−1)、切替バルブ33もオフであり(ステップST3−2)、蓄熱装置10からの冷却水がヒータコア45に流通している。そして、電子制御サーモスタット弁37がオンである否かを判定し(ステップST3−3)、オンであれば(Y)、冷却水温TWが♯TW2Hより低いか否かを判定する(ステップST3−4)。♯TW2Hの具体例は、85℃である。冷却水温TWが♯TW2H以上である場合(N)は、電子制御サーモスタット弁37をオフする(ステップST3−6)。冷却水温TWが♯TW2Hより低ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオンのままとする(ステップST3−7)。一方、先のステップST3−4で電子制御サーモスタット弁37がオンでない場合(N)は、冷却水温TWが♯TW2Lより高いか否かを判定する(ステップST3−5)。♯TW2Hの具体例は、80℃である。その結果、冷却水温TWが♯TW2Lより高ければ(Y)、電子制御サーモスタット弁37をオフし(ステップST3−6)、冷却水温TWが♯TW1L以下であれば(N)、電子制御サーモスタット弁37をオンする(ステップST3−7)。その後、スタートに戻り上記の手順を反復する。つまり、蓄熱完了後のモード3では、冷却水温は蓄熱完了前のモード2よりも低くてよいため、燃費優先のいわゆる燃費狙い値(♯TW1L:80℃<TW<♯TW1H:85℃)になるように制御する。これにより、冷却水を比較的低い温度に維持でき、燃費向上を図ることができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の車両用暖機システム1によれば、水温センサ38で検出された冷却水の温度に応じて電子制御サーモスタット弁37を作動させ、蓄熱材20への蓄熱完了前は蓄熱完了後よりも冷却水の温度が高くなるようにするので、冷却水の熱を蓄熱材20に短時間で効率良く蓄熱することが可能となる。また、ラジエター47への冷却水の流通を設定温度で正確に切り替えることができる。したがって、従来の機械式サーモスタット弁を備えた場合よりも、主流路35aの開温度を冷却水の沸点近くの高い温度に設定できる。また、従来の機械式サーモスタット弁の課題であった作動温度のばらつきが無くなるので、冷却水の温度を正確に調節することが可能となる。これにより、蓄熱材20への蓄熱完了に要する時間や蓄熱量を安定させることができる。一方、蓄熱完了後は冷却水の温度を低くすることで、冷却水の温度をエンジン30の運転に最適な温度にできる。これにより、燃費の向上や排ガス中の有害物質の低減が図れる。
【0037】
また、この暖機システム1では、水温センサ38の検出温度に基づいてエンジン30の運転状態を判断し、該判断に応じて冷却水の熱を蓄熱材20に蓄熱可能か否かを判断(モード0からモード1への切替判断)し、可能な場合には、冷却水の温度を高める(♯TW1L以上にする)ように電子制御サーモスタット弁37の作動温度を設定している。したがって、エンジン30の運転に影響が少ない状態であれば、蓄熱可能と判断することができ、その場合に冷却水温を高くすることで、蓄熱材20への蓄熱に要する時間を短縮しながら、エンジン30の運転の最適化を図ることができる。
【0038】
そして、蓄熱材20の蓄熱完了の判断は、冷却水の温度が所定温度以上となり、且つ、所定時間が経過したことに基づいて行っている。これにより、蓄熱材20の蓄熱完了を的確に判断することができる。なお、蓄熱材20の蓄熱完了の判断は、これ以外にも、蓄熱材温度センサ24で検出された蓄熱材20の温度が所定温度以上になったことに基づいて行ってもよい。
【0039】
また、この車両用暖機システム1では、エンジン30の始動後、冷却水の温度が所定温度(♯TW1L)に達してから所定時間が経過する前(モード2以前)は、それ以降(モード3以降)よりも冷却水の温度が高くなるように、電子制御サーモスタット弁37の作動温度を設定している。したがって、エンジン30の始動直後に蓄熱材20への蓄熱を行う際、短時間の運転で蓄熱材20に多くの熱を蓄えることが可能となる。
【0040】
さらに、蓄熱装置10が備える蓄熱材20は、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材なので、外気温が低下しても蓄熱を保持でき、かつ、長期間放置しても蓄熱を安定的に保持できる。したがって、蓄熱材20の容器(筐体11、中間部材12、仕切部材13)の断熱構造を簡素化でき、蓄熱装置10の構成の簡素化、小型化、軽量化を図ることができる。また、発核装置25による過冷却状態の解除(発核)により、所望のタイミングで蓄熱材20を発熱させることができるので、エンジン30の早期暖機、あるいは車内の即効暖房をより効果的に行えるようになる。
【0041】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態にかかる車両用暖機システムについて説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項、及び図示する以外の事項については、第1実施形態と同じである。
【0042】
図13は、第2実施形態にかかる車両用暖機システムの構成例を示す概略図である。第2実施形態の車両用暖機システム1−2は、自動変速機(AT)40の作動油(ATF)を蓄熱装置10−2へ循環させる作動油循環路41を備えている。また、作動油循環路41には、作動油を流通させる作動油ポンプ(電動ポンプ)42と、作動油の温度を検出する油温センサ43が設置されている。また、自動変速機40には、該自動変速機40のケース温度を検出する変速機ケース温度センサ48が設置されている。油温センサ43及び変速機ケース温度センサ48の検出温度は、ECU50に出力される。蓄熱装置10−2は、冷却水循環路31に連通する第一室75と、蓄熱材20を配設した第二室76と、作動油循環路41に連通する第三室77とを備えている。そして、第二室76と第三室77とが隣接して配置され、かつ、第三室77と第一室75とが隣接して配置されている。したがって、第二室76の蓄熱材20と第三室77の作動油との間で直接的に熱交換を行え、かつ、第三室77の作動油と第一室75の冷却水との間で直接的に熱交換を行えるようになっている。なお、第一室75の作動油と第二室76の蓄熱材20との間でも、第三室77の作動油を介して間接的に熱交換が行えるようになっている。
【0043】
図14は、暖機システム1−2における運転モードのタイムチャートを示すグラフである。同図に示すように、暖機システム1−2の運転モードは、モード0からモード3までの4段階に切り替わる。モード0は、エンジン30が始動する前のモードである。この間にウォームアップ信号が入力されると、ECU50は発核装置25を作動させて、蓄熱材20の過冷却状態を解除する。これにより、蓄熱材20が発熱し、蓄熱装置10の自己暖機が行われる。モード1は、IGスイッチ56がオンされてエンジン30が始動してから、冷却水温度が所定温度(♯TW1L)に達するまでのモードであり、この間、蓄熱材20の発熱が冷却水循環路31を循環する冷却水及び作動油循環路41を循環する作動油に供給されることで、蓄熱装置10によるエンジン30及び自動変速機40の暖機が行われる。モード2は、冷却水温度が前記の所定温度(♯TW1L)に達した後、蓄熱材20への蓄熱が行われるモードである。この間、エンジン30の冷却水あるいは自動変速機40の作動油から蓄熱材20へ熱が供給される。また、エンジン30の冷却水は、電子制御サーモスタット弁37の開閉制御によって、所定の温度範囲を維持するように制御(DUTY制御)される。このモード2は、油温センサ43で検出された作動油温度TATFが所定温度(♯TATF1L)に達したことで蓄熱材20への蓄熱が完了したと判断された時点で終了する。♯TATF1Lは、一例として100℃である。モード3は、蓄熱材20への蓄熱が完了したと判断された後のモードであり、この間、エンジン30の冷却水は、モード2と同様、電子制御サーモスタット弁37の開閉制御によって所定の温度範囲を維持するように制御される。この場合、第1実施形態と同様、蓄熱材20への蓄熱完了前のモード2の方が蓄熱完了後のモード3よりも冷却水の温度が高くなるように、電子制御サーモスタット弁37の作動温度が設定される。
【0044】
第2実施形態の車両用暖機システム1−2では、蓄熱材20の蓄熱完了の判断は、油温センサ43で検出された自動変速機40の作動油の温度が所定温度以上になったことに基づいて行われる。これによれば、蓄熱材20の蓄熱完了を的確に判断できる。また、これ以外にも、蓄熱材20の蓄熱完了の判断は、自動変速機40の作動油の温度が所定温度以上になり、且つ、所定時間が経過したことに基づいて行うことも可能である。あるいは、変速機ケース温度センサ48で検出した自動変速機40のケース温度が所定温度以上となったことに基づいて行うことも可能である。
【0045】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載のない何れの形状・構造・材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる車両用暖機システムの構成例を示す概略図である。
【図2】電子制御サーモスタット弁の構成例を示す図である。
【図3】蓄熱装置の構成例を示す図で、(a)は、分解斜視図、(b)は、(a)のA−A矢視断面図である。
【図4】発核装置の構成例を示す図である。
【図5】化学蓄熱材を備えた蓄熱装置の構成例を示す図である。
【図6】暖機システムの運転モードのタイムチャートを示すグラフである。
【図7】暖機システム1の制御手順を示すメインフローである。
【図8】運転モード切替手順を説明するためのフローチャートである。
【図9】モード0の手順を説明するためのフローチャートである。
【図10】モード1の手順を説明するためのフローチャートである。
【図11】モード2の手順を説明するためのフローチャートである。
【図12】モード3の手順を説明するためのフローチャートである。
【図13】本発明の第2実施形態にかかる車両用暖機システムの構成例を示す概略図である。
【図14】第2実施形態にかかる暖機システムの運転モードのタイムチャートを示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
1,1−2 車両用暖機システム
10,10−2 蓄熱装置
11 筐体
13 仕切部材
15 第一室
16 第二室
20 蓄熱材(蓄熱要素)
21 ゼオライト(化学蓄熱材)
24 蓄熱材温度センサ
25 発核装置(解除手段)
30 エンジン(内燃機関)
31 冷却水循環路
32 冷却水ポンプ
33 切替バルブ
35 ラジエター用循環路(冷却水流路)
37 電子制御サーモスタット弁(切替弁)
38 水温センサ(冷却水温度検出手段)
40 自動変速機
41 作動油循環路
42 作動油ポンプ
43 油温センサ(作動温度検出手段)
44 自動変速機ケース温度センサ
44 車内暖房装置
45 ヒータコア
46 送風ファン
47 ラジエター(冷却用熱交換器)
50 電子制御ユニット:ECU(制御手段)
51 暖房用スイッチ
52 受信装置
53a ウォームアップスイッチ
53 エンジンスタートキー
54 外気温センサ
55 デフロスタスイッチ
56 イグニッションスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の冷却水と熱交換が可能な蓄熱要素を有する蓄熱装置と、
前記内燃機関の冷却水を冷却用熱交換器に流通させる主流路と該冷却用熱交換器をバイパスするバイパス流路とからなる冷却用流路と、前記主流路と前記バイパス流路を切り替える切替弁と、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に応じて前記切替弁を作動させる制御手段と、
を備え、
前記蓄熱要素に蓄熱する際、該蓄熱要素の蓄熱完了を判断し、蓄熱完了前は蓄熱完了後よりも前記冷却水の温度が高くなるように、前記切替弁の作動温度を設定することを特徴とする車両用暖機システム。
【請求項2】
前記内燃機関の運転状態を判断する手段を備え、
前記蓄熱要素に蓄熱する際、前記内燃機関の運転状態に応じて前記冷却水の熱を蓄熱可能か否かを判断し、可能な場合には、前記冷却水の温度が所定温度以上となるように、前記切替弁の作動温度を設定することを特徴とする請求項1に記載の車両用暖機システム。
【請求項3】
内燃機関の冷却水と熱交換が可能な蓄熱要素を有する蓄熱装置と、
前記内燃機関の冷却水を冷却用熱交換器に流通させる主流路と該冷却用熱交換器をバイパスするバイパス流路とからなる冷却用流路と、前記主流路と前記バイパス流路を切り替える切替弁と、
前記冷却水の温度を検出する冷却水温度検出手段と、
前記冷却水の温度に応じて前記切替弁を作動させる制御手段と、
を備え、
前記内燃機関の始動後、前記冷却水の温度が所定温度に達してから所定時間が経過する前は、それ以降よりも前記冷却水の温度が高くなるように、前記切替弁の作動温度を設定することを特徴とする車両用暖機システム。
【請求項4】
前記蓄熱要素の蓄熱完了の判断は、前記冷却水の温度が所定温度以上となり、且つ、所定時間が経過したことに基づいて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用暖機システム。
【請求項5】
前記蓄熱要素の温度を検出する蓄熱要素温度検出手段を備え、
前記蓄熱要素の蓄熱完了の判断は、前記蓄熱要素の温度が所定温度以上になったことに基づいて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用暖機システム。
【請求項6】
前記蓄熱要素は、変速機の作動油と熱交換が可能であり、
前記作動油の温度を検出する作動温度検出手段を備え、
前記蓄熱要素の蓄熱完了の判断は、前記作動油の温度が所定温度以上になったことに基づいて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用暖機システム。
【請求項7】
前記蓄熱要素は、変速機の作動油と熱交換が可能であり、
前記作動油の温度を検出する作動温度検出手段を備え、
前記蓄熱要素の蓄熱完了の判断は、前記作動油の温度が所定温度以上になり、且つ、所定時間が経過したことに基づいて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用暖機システム。
【請求項8】
前記蓄熱要素は、変速機の作動油と熱交換が可能であり、
前記変速機のケース温度を検出する変速機ケース温度検出手段を備え、
前記蓄熱要素の蓄熱完了の判断は、前記変速機のケース温度が所定温度以上となったことに基づいて行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用暖機システム。
【請求項9】
前記蓄熱要素は、過冷却状態で蓄熱が可能な潜熱蓄熱材からなり、
前記蓄熱装置は、前記蓄熱要素の過冷却状態を解除する手段を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用暖機システム。
【請求項10】
前記蓄熱要素は、化学変化による熱の吸収・放出が可能な化学蓄熱材からなり、
前記蓄熱装置は、前記蓄熱要素に化学変化を生じさせる手段を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の車両用暖機システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−228430(P2009−228430A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71039(P2008−71039)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】