車両用減速制御装置
【課題】運転者に違和感を与えることなく、適切なタイミングでカーブ状況に応じた減速制御を行う。
【解決手段】ナビゲーション装置6の経路誘導による推奨経路上のカーブ情報を予め取得し、この推奨経路への自車両の進行確信度Cfを算出し、例えば分岐路において、自車両が分岐点を通過して推奨経路側に進入したと判断されて進行確信度Cfが高まった時点で、分岐手前で予め取得した推奨経路上のカーブ情報に基づいて自車両を減速する減速制御を行う。
【解決手段】ナビゲーション装置6の経路誘導による推奨経路上のカーブ情報を予め取得し、この推奨経路への自車両の進行確信度Cfを算出し、例えば分岐路において、自車両が分岐点を通過して推奨経路側に進入したと判断されて進行確信度Cfが高まった時点で、分岐手前で予め取得した推奨経路上のカーブ情報に基づいて自車両を減速する減速制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーブ等を旋回走行する車両の減速制御を行うようにした車両用減速制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用減速制御装置としては、カーナビゲーションシステムによって現在の自車位置から目的地までの推奨経路を設定すると共に、推奨経路上のカーブ形状を検出し、このカーブ形状に基づいて自車両が進入しようとしているカーブの曲率半径に応じた適正車速を算出し、自車速が前記適正車速を越えたとき、その偏差に応じて警報及び減速制御を行うというものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−236699号公報(第6頁、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の車両用減速制御装置にあっては、例えば、自車両が分岐点手前を走行している場合、推奨経路上のカーブ形状を予め取得して、このカーブの曲率半径に応じた適正車速と自車速との関係のみを用いて警報や減速制御の作動を判断する。そのため、分岐手前で進行方向が確定する前に推奨経路側のカーブに対する警報や減速制御が作動することになり、自車両が推奨経路でない方向へ進行しようとした場合に、運転者に違和感を与えてしまうという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、運転者に違和感を与えることなく、適切なタイミングで減速制御を作動することができる減速制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用減速制御装置は、車速検出手段で自車両の車速を検出し、自車位置検出手段で自車両の走行位置を検出し、道路情報提供手段で自車両が走行する道路情報を有し、推奨経路選択手段で、前記自車位置検出手段で検出された走行位置と前記道路情報提供手段で提供された道路情報とに基づいて自車両が走行すべき推奨経路を選択し、進行度合算出手段で、少なくとも自車両の走行位置に基づいて前記推奨経路への自車両の進行度合を算出し、減速制御手段で、前記進行度合算出手段で算出された進行度合と前記推奨経路の道路情報と前記車速検出手段で検出された車速とに基づいて自車両を減速する減速制御を行う。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、分岐点手前において分岐点後の推奨経路上のカーブ情報を予め取得し、この推奨経路側への進行度合を算出して、進行度合が高まった時点で、予め取得したカーブ情報を用いて警報や減速制御を行うので、分岐点通過後のカーブ開始点手前でカーブ情報の取得遅れによる警報や減速制御の作動遅れを防止することができると共に、分岐点手前で進行方向が確定する前に警報や減速制御が作動してしまうことを防止することができるなど、適切なタイミングで警報及び減速制御を作動することができ、運転者の違和感を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明における減速制御装置を適用した車両の概略構成図である。
図中1は、制動流体圧制御ユニットであって、各車輪2FL〜2RRの図示しない各ホイールシリンダに供給される制動流体圧を制御するように構成されている。つまり、通常は、ドライバによるブレーキペダルの踏込み量に応じて、マスタシリンダで昇圧された制動流体圧が各ホイールシリンダに供給されるようになっているが、マスタシリンダと各ホイールシリンダとの間に介挿された制動流体圧制御ユニット1によって、ブレーキペダルの操作とは別に各ホイールシリンダへの制動流体圧を制御するように構成されている。
【0007】
前記制動流体圧制御ユニット1は、例えばアンチスキッド制御やトラクション制御に用いられる制動流体圧制御回路を利用したものである。
この制動流体圧制御ユニット1は、後述する減速制御コントローラ10からの制動流体圧指令値に応じて各ホイールシリンダの制動流体圧を制御する。
また、この車両には、図示しないスロットルバルブのスロットル開度を制御可能なエンジンスロットル制御ユニット3が設けられており、このエンジンスロットル制御ユニット3は、単独で、スロットル開度を制御可能であるが、前述した減速制御コントローラ10からのスロットル開度指令値が入力されたときには、そのスロットル開度指令値に応じてスロットル開度を制御するように構成されている。
【0008】
また、この車両には、自車両に発生するヨーレートφ′を検出するヨーレートセンサ11、ステアリングホイールの操舵角δを検出する操舵角検出手段としての操舵角センサ12、各車輪2FL〜2RRの回転速度、いわゆる車輪速度Vwi(i=FL〜RR)を検出する車速検出手段としての車輪速度センサ13FL〜13RR、図示しないアクセルペダルの踏込み量、即ちアクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ14、方向指示器による方向指示操作を検出する方向指示操作検出手段としての方向指示スイッチ15が設けられ、それらの検出信号は前記減速制御コントローラ10に出力される。なお、検出された車両の走行状態データに左右の方向性がある場合には、何れも左方向を正方向とする。即ち、操舵角δ等は、左旋回時に正値となる。
【0009】
また、この車両には、自車両の周辺の道路状況に関する情報を、情報提供するためのナビゲーション装置6が搭載されている。このナビゲーション装置6は、公知のナビゲーション装置と同様に、地図データや道路形状データ等を記憶するための記憶手段6aと、GPSアンテナ6bからの情報に基づいて自車両の現在位置を検出する自車位置検出手段6cと、自車位置検出手段6cで検出した自車両の現在位置と前記記憶手段6aに格納された自車両の現在位置周辺の地図データ、道路形状データとを対応付けるマップマッチング手段6dと、マップマッチング手段6dでの対応付けに基づいて、自車両周辺の地図データ、道路形状データを獲得する道路情報取得手段6eとを備えている。
【0010】
さらに、ビーコンアンテナ6fにより走行路側に配設された図示しないインフラシステムとの間での路車間通信や、FM多重放送等の放送情報を受信し、インフラシステムからのインフラ情報や放送情報を獲得するインフラ受信器6gとを備えており、前記道路情報取得手段6eは、インフラ受信器6gで獲得したインフラ情報も含めて自車両周囲の走行環境を獲得するように構成されている。
【0011】
このナビゲーション装置6で検出したナビゲーション情報は、前記減速制御コントローラ10に出力され、この減速制御コントローラ10では、入力される各種情報に基づいて、制動流体圧制御ユニット1及びエンジンスロットル制御ユニット3への制御信号を生成するように構成されている。
また、運転席前方には、減速制御コントローラ10からの警報信号ALに応じて運転者に減速の必要性を呈示する情報呈示装置7が設置されており、この情報呈示装置7にはドライバに減速を促す表示をするディスプレイや、警報音や音声メッセージを発生するためのスピーカーが備えられている。
【0012】
そして、この減速制御コントローラ10では、上記各種センサから入力される検出信号をもとに、自車走行路のカーブ情報を検出すると共に、ナビゲーション装置6による経路誘導の推奨経路側への進行度合即ち進行確信度を算出し、この進行確信度に応じて、予め取得したカーブ情報をもとに警報及び減速制御の作動判断を実行する。そして、警報作動時には、情報呈示装置7に対して警報信号ALを出力し、減速制御時には、目標減速度に応じて前記エンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値を出力すると共に、前記制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値を出力する。
【0013】
ところで、現行のナビゲーション装置における道路形状データの送信周期は、一般的に1[sec]以上であり、車両の警報や減速制御の実行周期に対して長い。例えば、図2(a)に示すような高速道路のIC出口やJCTの分岐点Pbにおいて、自車両MCが本線側からIC出口やJCT側の経路を走行する場合、ナビゲーション装置からのデータ送信タイミングはT1〜T3で示される。
【0014】
そして、分岐点Pb直後のカーブ開始点C1の手前で警報や減速制御を行う場合、経路誘導の推奨経路情報を利用しないと、通常は分岐点Pbを通過して次のデータ送信が行われるT2に達するまでは、それまで走行していた本線側の道路形状を対象に警報や減速制御の作動判定を行い、カーブ情報である曲率半径R1を取得できるタイミングはT2以降となる。そのため、カーブ状況に応じた警報及び減速制御を行うタイミングがT2以降となってしまい、カーブ開始点手前での警報や減速制御の作動タイミングが遅れてしまうという問題があった。
【0015】
これを回避するために、カーナビゲーションシステムによる経路誘導の推奨経路情報を用いて、推奨経路であるIC出口やJCT側のカーブ情報R1をT1以前に予め取得して、分岐点Pbの手前からカーブ情報R1に対して警報や減速制御の作動判定を行うというものがある。しかしながら、自車両が経路誘導に従わずに本線側へ進行する場合には、分岐点手前で進行方向が確定する前にIC出口やJCT側のカーブ情報R1に対して警報や減速制御アシストが作動してしまい、誤作動となってしまうと共に運転者に違和感を与えるという問題がある。
【0016】
そこで、本発明では、分岐点と自車位置との関係や、分岐点近傍における車両挙動及び運転操作履歴を用いて経路誘導の推奨経路側への進行確信度を判別し、この進行確信度をもとに分岐点直後に警報及び減速制御の作動判断を実行する。つまり、図2(b)に示すように、経路誘導設定時に、分岐点手前T’でIC出口やJCT側のカーブ情報R1を取得し、自車両が経路誘導に従ってIC出口やJCT側へ進行することにより分岐点通過後に進行確信度が高まると、その時点T”で予め取得したカーブ情報R1をもとに警報や減速制御の作動判定を行うようにする。
これにより、警報や減速制御の作動タイミングを従来のT2からT”まで早めることができると共に、経路誘導に従わず自車両が推奨経路でない側に進行する場合における警報や減速制御の誤作動を防止することができる。
【0017】
次に、前記減速制御コントローラ10で行われる減速制御処理手順を図3のフローチャートに従って説明する。この減速制御処理は、例えば、10msec毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS1で各種データを読込む。具体的には、前記各センサで検出された各車輪速度Vwi、アクセル開度Acc、操舵角δ、ウィンカー信号WSを読込む。
【0018】
次にステップS2では、ナビゲーション装置6より自車両進行方向の道路形状データをプレビューする。先ず、プレビュー距離Lを算出する。プレビュー距離Lは、所定の長さ(例えば、400[m])に固定してもよく、車速Vに基づいて下記(1)式をもとに算出するようにしてもよい。
L=max(200,V/3.6×7.5) ………(1)
ここで、max( )は、括弧内の数値のうち大きい方の値を選択する関数である。
【0019】
次に、現行のナビゲーション装置に用いられている地図データについて、図4をもとに説明する。地図データは、図4に白丸で示すノード及び黒丸で示す補間点のポイントデータと、それら同士を結ぶリンクデータとから構成される。ノードは、交差点やJCTなどの分岐点があるポイントの位置座標であり、補間点は、道路の屈曲を描画するためのポイントの位置座標である。
【0020】
ノード及び補間点とリンクデータとは、それぞれ経路誘導の推奨経路であるか否かを示すフラグや、道路種別や中央分離帯の有無などの属性情報を持っている。例えば、補間点は、推奨経路フラグ、曲率、標高、信号の有無、一時停止の有無などの情報を持ち、リンクデータは、勾配、制限速度、道路種別、車線数、道路幅などの情報を持つ。
このステップS2では、自車両進行方向の直後のノード又は補間点から、自車両進行方向へプレビュー距離Lの範囲内にある全ての分岐先のノード及び補間点を読込む。例えば、自車両MCが高速道路のIC出口への分岐付近を走行している場合には、図5(a)に示すようにノード及び補間点P0〜P8が読込まれる。ここで、ノードP1がIC出口への分岐点である。
【0021】
次に、ステップS3では、前記ステップS2で読込んだノード及び補間点より道路形状情報の取得対象とする経路を選択する。具体的には、図5の例で説明すると、IC出口側が経路誘導の推奨経路の場合には、道路形状情報の取得対象経路はP0−P1−P3−…−P8となる。つまり、図5(b)に示す太線で示す経路が道路形状情報の取得対象経路として選択される。
なお、ナビゲーション装置による経路誘導が設定されていない場合の分岐ポイントにおける道路形状情報の取得対象経路の選択ロジックとしては、例えば、各分岐先へのリンクのなす角が最も小さな方向を選択することを基本に、道路種別やリンク種別を考慮するようにしてもよい。
【0022】
このような技術として、例えば、特開2004−86450号公報に記載されているように、自車位置と分岐先の道路種別を判別し、自車位置と分岐先との道路種別が共に国道や主要地方道などの幹線道路であり且つ分岐先が細道路でない場合には、分岐先のうち最も曲率半径の大きなカーブのある方向が進路に選択されたり、分岐先に細道路が含まれる場合には、分岐先の幹線道路のうち最も曲率半径の大きなカーブのある方向が進路に選択されたり、さらに、自車位置が高速道路本線であるときには、分岐先のカーブの曲率半径に関係なく本線側に進路が選択されたりする方法が提案されている。
なお、経路誘導が設定されていない場合の分岐ポイントにおける道路形状情報の取得対象経路の選択ロジックは、上記の技術に限定されるものではない。
【0023】
次に、ステップS4では、前記ステップS3で選択した道路形状情報の取得対象経路上のノード及び補間点より、カーブの曲率半径を算出する。図5の例では、前記ステップS3で、道路形状情報の取得対象経路はP0−P1−P3−…−P8に選択されているので、この経路P0−P1−P3−…−P8における曲率半径R1,R2,…,R7を算出する。
通常、公知のナビゲーション装置で保持している地図データは、経路誘導と道路地図表示とを目的として作成されているため、ノード又は補間点の間隔が不規則であって、必ずしもカーブの形状を精度よく表していない場合もある。このような場合には、地図データからカーブ曲率を精度よく検出する技術を適用するようにしてもよい。
【0024】
このような技術として、例えば、特開平11−232599号公報、特開平11−232600号公報、特開2001−6098号公報等に記載されているように、例えば、カーブであると予測される検出点周辺の、ノードや補間点を結ぶリンクの屈折角の和を算出し、この屈折角の和が閾値を超えるときにカーブであると判断することにより、ノードや補間点が不等間隔に配置されている場合のカーブの検出精度を向上したり、また、ノードや補間点の間隔が閾値よりも短い場合には、2点のうちの一方を削除することで、ノードや補間点の間隔が短いことに起因して実際よりも急なカーブであると誤判断されることを回避したり、逆に、ノード又は補間点の間隔が閾値を超えるときにはこの部分をカーブの検出に用いないようにすることで、カーブの検出精度を向上したりする方法等が提案されている。
【0025】
また、この他にも例えば、ノード又は補間点の間隔とリンク同士のなす角とを用いて、ノード及び補間点が密集し、且つリンク同士のなす角が大きな区間をカーブ区間として抽出し、その区間内のノード及び補間点を用いて曲率半径を算出するようにしてもよい。さらに、各ノード及び補間点に予め曲率半径を記録して、その値をナビゲーション装置6より直接読込むようにしてもよい。
【0026】
なお、本実施形態においては、前記ステップS2〜S4における処理を減速制御コントローラ10で行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、これらの処理をナビゲーション装置6で行い、曲率半径やカーブ開始点までの距離や分岐ポイントまでの距離など、警報や減速制御に必要な情報のみを減速制御コントローラ10に送信するようにしてもよい。
【0027】
次に、ステップS5では、前記ステップS2で取得した道路形状データより、自車位置から分岐点までの距離を算出する。具体的には、先ず、取得した道路形状データより自車両進行方向のノードを抽出し、ナビゲーション装置6より出力されたノードまでの距離Lbを読込み、次にナビゲーション装置6から道路形状データが出力されるまでは、自車速Vを積算して走行距離を算出しノードまでの距離Lbを補正する。
【0028】
そして、当該ノードを通過後は、所定距離(例えば、200[m])走行するまで自車速Vを積算して走行距離を算出することでノードまでの距離Lbを求める。ここで、距離Lbの符号は、分岐点通過前を負、通過後を正とする。図5の例では、自車両MCからの自車位置VPから分岐点P1までの距離を算出することになる。
次に、ステップS6では、経路誘導の推奨経路方向への進行確信度を算出する。この進行確信度Cfは、例えば、自車前方に分岐路を検出している場合、分岐点までの距離Lbに基づいて下記(2)式をもとに算出する。
Cf=0(Lb<δL),
Cf=1(Lb≧δL) ………(2)
ここで、δLはナビゲーション装置による自車位置の測定誤差を考慮した定数であり、自車位置の測定精度に応じてD−GPSを用いている場合では、例えば20[m]に設定する。
【0029】
また、自車前方に分岐路が検出されない場合には、自車両は直進路を走行中であり、推奨経路を走行しているものと判断されるので、進行確信度Cf=1とする。
なお、ここでは、進行確信度Cfを上記(2)式をもとに算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図6に示すように、分岐点を通過した後にカーブ開始点までの距離に応じて、カーブ開始点に近づくにつれて進行確信度Cfを0から1へ増加させるようにしてもよい。
【0030】
図6は、自車位置から分岐点までの距離Lbに応じて進行確信度Cfを算出するマップであり、実線で示すように、分岐点までの距離Lbが定数δLまでの間ではCf=0に固定され、分岐点までの距離LbがδLからLsまでの間では、距離Lbの増加に伴ってCf=0から1まで単調増加し、分岐点までの距離LbがLs以上の領域ではCf=1に固定されるように設定されている。
ここで、進行確信度Cfが1に到達する位置Lsは、例えばカーブ開始点手前の所定値(例えば、100[m])と、分岐点とカーブ開始点の中間点とのうち分岐点に近い方に設定する。
【0031】
なお、進行確信度Cfが1に到達する位置Lsは、カーブの曲率半径に応じて補正するようにしてもよい。すなわち、図7に示すように、横軸にカーブの曲率半径、縦軸にLsの補正値ΔLを取り、所定の曲率半径閾値RTH1(例えば、30[m])から所定の曲率半径閾値RTH2(例えば、150[m])にかけて、補正値ΔLが所定値Lt(例えば、100[m])から0にかけて単調減少するように設定する。そして、このようにして算出された補正値ΔLによってLsを減少補正する。
【0032】
これにより、曲率半径が小さいほど補正値ΔLは大きい値に設定されるので、曲率半径が小さな場合ほどLsを分岐点側に近づけ、急カーブの場合にはカーブ開始点のより手前で確実に警報や減速制御が作動することができる。このときの進行確信度算出マップは、図6の破線に示すように、進行確信度Cfが1に到達する位置がLsからLs−ΔLに移動する。
【0033】
なお、図7のマップを用いて補正値ΔLを算出した結果、Ls−ΔL<δLとなった場合には、Ls−ΔL=δLとする。
次に、ステップS7では、前記ステップS6で算出された進行確信度Cfを、カーブ手前での警報及び減速制御の作動判断に反映させる。具体的には、警報の作動開始判断を行うための警報作動判断閾値Xgw(例えば、0.08[g])と、減速制御の作動開始判断を行うための減速制御作動判断閾値Xgd(例えば、0.1[g])とを、進行確信度Cfに応じて下記(3)及び(4)式のように補正する。
Xgw’=Xgw/Cf ………(3)
Xgd’=Xgd/Cf ………(4)
ここで、Xgw’及びXgd’は、それぞれ補正後の作動判断閾値である。
但し、Cf≒0のとき、作動判断閾値Xgw’及びXgd’は所定の上限値(例えば、99.9[g])に設定する。
【0034】
本実施形態では、自車速やカーブでの目標車速等から算出される目標減速度が各作動判断閾値以上となったときに、警報や減速制御を作動させるように構成されており、上記のように作動判断閾値を設定することで、進行確信度Cfの値が小さくなるほど作動判断閾値を大きく設定して、警報や減速制御を作動しにくくすることができる。そして、進行確信度Cfが0に近い時には、実質的に警報や減速制御を作動しないようにすることができる。
【0035】
最後に、ステップS8では、カーブ情報と分岐点での推奨経路側への進行確信度とを用いて、カーブ手前での警報及び減速制御を行う。先ず、目標減速度Xgsを算出する。具体的には、各車輪の車輪速度より算出した自車速V、カーブの曲率半径Rn並びにカーブまでの距離Ln、及び予め設定されたカーブ通過時の横加速度許容値Yglmitに基づいて、下記(5)式をもとに算出する。
Xgs=(V2−Vr2)/(2・Ln)
=(V2−Yglmit・|Rn|/(2・Ln) ………(5)
ここで、Vr(=(Yglmit・|Rn|)1/2)はカーブでの目標車速である。また、この目標減速度Xgsは減速時に正値となる。
【0036】
次に、このようにして算出された目標減速度Xgsに基づいて、警報作動開始判断及び減速制御作動開始判断を行う。この判断は、目標減速度Xgsが、前記ステップS7で補正した作動判断閾値Xgw’(Xgd’)以上であるか否かによって行い、Xgs≧Xgw’であるときには、警報を作動するものと判断して警報作動フラグFwを“1”にセットし、Xgs<Xgw’であるときには、警報を非作動とするものと判断して警報作動フラグFwを“0”にリセットする。
【0037】
また、Xgs≧Xgd’であるときには、減速制御を作動するものと判断して減速制御作動フラグFdを“1”にセットし、Xgs<Xgd’であるときには、減速制御を非作動とするものと判断して減速制御作動フラグFdを“0”にリセットする。
そして、警報作動フラグFw=1であるときには、情報呈示装置7に対して警報信号ALを出力し、減速制御作動フラグFd=1であるときには、算出された目標減速度Xgsに応じて、前記エンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値を出力すると共に、前記制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値を出力してからタイマ割込み処理を終了し、所定のメインプログラムに復帰する。
【0038】
この図3の処理において、ステップS3の処理が推奨経路選択手段に対応し、ステップS6の処理が進行確信度判定手段に対応し、ステップS7及びS8の処理が減速制御手段に対応している。
したがって、今、自車両が高速道路において、分岐路の存在しない本線を走行中であり、自車前方にカーブが存在するものとする。この場合には、図3の減速制御処理において、ステップS3で現在走行中である本線が推奨経路に選択され、ステップS4で本線上のノード及び補間点より曲率半径を算出される。自車前方に分岐路は存在しないため、ステップS6で進行確信度Cfが1に算出されるので、前記(5)式をもとに算出された目標減速度Xgsと、補正後の作動判断閾値Xgw’(=Xgs)又はXgd’(=Xgd)とを比較して、Xgs≧Xgw’(Xgd’)であるときには自車両を減速させるための警報及び減速制御を作動させる。
【0039】
即ち、情報呈示装置7に対して警報信号ALが出力されると共に、エンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値が、制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値が出力される。これにより、情報呈示装置7から運転者に対して減速を促す音声メッセージ等が発せられると共に、自車両がカーブ曲率半径に応じた適正車速で走行できるように減速される。これにより、自車両が自車前方のカーブ曲率半径に応じた適正車速で走行できるように減速される。
【0040】
また、自車両が高速道路の本線を直進走行中であり、自車前方にIC出口との分岐路が存在するものとする。そして、ナビゲーション装置6の経路誘導により現在走行中である本線が推奨経路に選択されているものとすると、ステップS3で道路形状情報の取得対象とする経路として本線が選択されて、ステップS4で本線上のノード及び補間点より曲率半径を算出される。自車走行路は直進路であるため、目標減速度Xgsは0に算出され、自車両が分岐点を通過後もXgs≧Xgw’(Xgd’)とならないので、警報及び減速制御を行うことなく運転者によるアクセル及びブレーキ操作に応じた直進走行を継続する。
【0041】
また、自車両が高速道路の本線を直進走行中であり、自車前方にIC出口との分岐路が存在するものとする。そして、ナビゲーション装置6の経路誘導によりIC出口側が推奨経路に選択されているものとすると、ステップS3で道路形状情報の取得対象とする経路としてIC出口側経路が選択される。IC出口側への分岐路は、分岐直後は略直線でその後急カーブとなっている場合があり、ステップS4でIC出口側経路上のノード及び補間点よりカーブの曲率半径が算出される。
【0042】
自車両が分岐点手前を走行中であるとすると、ステップS5で自車位置から分岐点までの距離Lbが負値として算出されるので、進行確信度Cfは前記(2)式をもとに零に算出される。そのため、ステップS7で警報作動判断閾値Xgw’及び減速制御作動判断閾値Xgd’が99.9[g]に設定されるので、目標減速度Xgsがこれらの作動判断閾値以上となることがなく、警報及び減速制御を非作動として運転者によるアクセル及びブレーキ操作に応じた走行を継続する。
【0043】
その後、自車両が分岐点を通過し、経路誘導に従ってIC出口側に進行したものとする。この場合には、ステップS5で自車位置から分岐点までの距離Lbが正値として算出され、進行確信度Cfは前記(2)式をもとに1に算出される。そのため、ステップS7で警報作動判断閾値Xgw’が0.08、減速制御作動判断閾値Xgd’が0.1に設定される。このとき、ステップS8で前記(5)式をもとに算出された目標減速度Xgsが各作動判断閾値以上となっているときには、運転者に警報を発するものと判断して情報呈示装置7に対して警報信号ALを出力し、自車両を減速させる必要があるものと判断してエンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値を出力すると共に、制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値を出力する。これにより、情報呈示装置7から運転者に対して減速を促す音声メッセージ等が発せられると共に、自車両がカーブ曲率半径に応じた適正車速で走行できるように減速される。
【0044】
このように、自車前方に分岐路が存在する場合には、分岐手前において経路誘導の推奨経路のカーブ情報を取得し、自車両が分岐点を通過した後、当該推奨経路側への進行の確信度が高まった時点で、予め分岐手前で取得していたカーブ情報を用いて警報及び減速制御を行うので、分岐点通過後のカーブ開始点手前での警報及び減速制御の作動タイミングの遅れを解消することができる。
【0045】
一方、自車両が分岐点を通過し、経路誘導に従わず本線側に進行したものとする。この場合には、進行確信度Cfは零に算出される。そのため、ステップS7で警報作動判断閾値Xgw’及び減速制御作動判断閾値Xgd’が99.9[g]に設定されるので、目標減速度Xgsがこれらの作動判断閾値以上となることがなく、警報及び減速制御を非作動として運転者によるアクセル及びブレーキ操作に応じた走行を継続する。
【0046】
このように、推奨経路側であるIC出口側への進行確信度Cfを判定し、IC出口側への進行確信度Cfが高まった時点で警報及び減速制御を作動させるようにしているので、経路誘導の推奨経路としてIC出口側が選択されている場合で、自車両が経路誘導に逆らって本線側に進行する場合であっても、分岐手前で予め取得したIC出口側のカーブ情報に基づいて警報及び減速制御が行われることなく、確実に誤作動を防止することができる。
【0047】
このように、上記第1の実施形態では、経路誘導情報を用いて分岐点手前で分岐後の推奨経路上のカーブ情報を予め取得し、経路誘導の推奨経路側への進行確信度を判別して、この進行確信度が高まった時点で、分岐手前において予め取得したカーブ情報を用いて警報及び減速制御を作動させるので、分岐点直後のカーブ開始点手前でカーブ情報の取得遅れによる警報及び減速制御の作動遅れを解消することができると共に、分岐点手前の進行方向が確定する前に警報及び減速制御が作動してしまうことによる運転者の違和感を抑制することができる。
【0048】
また、自車位置から分岐点までの距離を求め、自車両が分岐点を通過して経路誘導の推奨経路側に進入したと判定したときに、推奨経路側への進行確信度を高めるので、分岐点手前の進行方向が確定する前に警報及び減速制御が作動してしまうことによる運転者の違和感を確実に防止することができる。
さらに、自車両が分岐点を通過して経路誘導の推奨経路側に進入したと判定したときには、自車走行位置から推奨経路上のカーブ開始点までの距離が短いほど進行確信度を高めることで、分岐点直後における警報及び減速制御の作動を抑制するので、自車両が推奨経路でない側へ侵入したにもかかわらず、ナビゲーション装置によって分岐直後に推奨経路側にマップマッチングされた場合の警報や減速制御の誤作動を抑制することができる。
【0049】
また、自車両が分岐点を通過して経路誘導の推奨経路側に進入したと判定したときには、推奨経路上のカーブの曲率半径に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、分岐点後のカーブの曲率半径が小さく警報や減速制御を早めに作動させる必要がある場合にも、適切なタイミングで警報及び減速制御を作動させることができ、運転者に違和感のない走行を行うことができる。
【0050】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における自車速の減速量、操舵角変化、又はウィンカー操作履歴等に基づいて、推奨経路側への進行確信度を算出するようにしたものである。
すなわち、前述した第1の実施形態における図3の減速制御処理において、ステップS6で図8に示す進行確信度算出処理を行うことを除いては図3と同様の処理を行うため、図3との対応部分の詳細な説明は省略する。
【0051】
図8は、図3の減速制御処理のステップS6で行われる進行確信度算出処理手順を示すフローチャートであって、先ず、ステップS61で自車位置が推奨経路上における分岐点前後の所定範囲内であるか否かを判定する。具体的には、前記ステップS5で算出した自車位置から分岐点までの距離Lbが、所定範囲内(例えば、−500[m]以上200[m]未満)であるか否かを判定し、所定範囲外であるときにはステップS62に移行して進行確信度Cf=1に設定してから進行確信度算出処理を終了し、所定のメインプログラムに復帰する。一方、分岐点までの距離Lbが所定範囲内であるときにはステップS63に移行する。
【0052】
ステップS63では、自車両が分岐点前後の所定範囲に進入したと判定された時点から、所定範囲を出たと判定される時点までの車両情報を記録して、ステップS64に移行する。具体的には、自車両が分岐点前後の所定範囲に進入したと判定された時点から、所定範囲を出たと判定される時点までの自車速V、操舵角δ及びウィンカー信号WSを記録する。
【0053】
ステップS64では、前記ステップS63で記録した車両情報に基づいて、推奨経路側への進行推定を行う。図9は、前記ステップS63で記録した所定範囲内での車両情報を示す図であり、図9(a)に示すように、自車両が所定範囲に進入した時点での車速V1からの減速量ΔVが所定の減速量閾値VTH(例えば、20[km/h])に到達したときに、IC出口やJCTに向けて減速されたものと判断し、第1の進行推定フラグFvを推奨経路側へ進行していることを示すON状態とする。
【0054】
なお、ここでは、減速量ΔVが減速量閾値VTHに到達したときに第1の進行推定フラグFvをON状態とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、所定範囲内において自車速Vが所定値(例えば、60[km/h])以下となったときに、第1の進行推定フラグFvをON状態とするようにしてもよい。
なお、この第1の進行推定フラグFvは、分岐点の手前(Lb<0)で第1の進行推定フラグFvがON状態となった時点からの加速量が、所定値(例えば、10[km/h])に到達したときにOFF状態とするようにしてもよく、第1の進行推定フラグFvがON状態となった後、自車速Vが所定値(例えば、70[km/h])以上になるように加速されたときにOFF状態とするようにしてもよい。
【0055】
次に、所定範囲内での操舵角変化に基づいて第2の進行推定フラグFsを設定する。即ち、推奨経路が分岐のどちら側であるかを判断し、例えば図2に示すように推奨経路が分岐の左側であるときには、図9(b)に示すように、左方向への操舵の後に続いて右方向への操舵が検出されたときに、自車両が推奨経路側に進路変更されたものと判断し、第2の進行推定フラグFsをON状態とする。
なお、この第2の進行推定フラグFsは、分岐点の手前で推奨経路と逆側への進路変更を示す操舵パターンが検出されたときにはOFF状態とする。
【0056】
次に、所定範囲内でのウィンカー操作履歴に基づいて第3の進行推定フラグFwを設定する。即ち、推奨経路が分岐のどちら側であるかを判断し、例えば図2に示すように推奨経路が分岐の左側であるときには、図9(c)に示すように、左方向へのウィンカースイッチがONになったことが検出されたときに、自車両が推奨経路側に進路変更するものと判断し、第3の進行推定フラグFwをON状態とする。
なお、この第3の進行推定フラグFwは、分岐点の手前で推奨経路と逆側のウィンカースイッチがONになったことが検出されたときにはOFF状態とする。
また、これらの進行推定フラグFv、Fs及びFwは、自車両が分岐点前後の所定範囲を出たときにOFF状態とする。
【0057】
次にステップS65では、自車両が推奨経路側への分岐点を通過したか否かを判定する。具体的には、前記ステップS5で算出した自車位置から分岐点までの距離Lbが定数δL以上であるか否かを判定し、Lb≧δLであるときには分岐点を通過したものと判断して分岐点通過フラグFbをON状態とする。この分岐点通過フラグFbは、自車両が分岐点前後の所定範囲を出たときにOFF状態とする。
【0058】
次にステップS66に移行して、推奨経路方向への進行推定結果に応じて進行確信度Cfを算出する。具体的には、前記ステップS64で車両情報をもとに設定した進行推定フラグFv、Fs及びFwと、前記ステップS65で設定した分岐点通過フラグFbとが全てON状態であるとき、推奨経路側への進行確信度Cfを1とする。
【0059】
なお、ここでは、進行推定フラグFv、Fs及びFwと分岐点通過フラグFbとが全てON状態であるときに進行確信度Cf=1とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、進行推定フラグのうち2つがON状態で且つ分岐点通過フラグFbがON状態であるときに進行確信度Cf=0.7、進行推定フラグのうち1つがON状態で且つ分岐点通過フラグFbがON状態であるときに進行確信度Cf=0.3に設定するなど、段階的に値を設定するようにしてもよい。このとき、上記以外の場合即ち分岐点通過フラグFbがOFF状態であるときには、進行確信度Cf=0とする。
【0060】
このようにして設定した進行確信度Cfは、前述した図3のステップS7以降の処理で警報及び減速制御の作動判断に反映される。
したがって、今、自車両が高速道路の本線を直進走行中であり、自車前方にIC出口との分岐路が存在するものとする。自車両が分岐点手前500[m]を走行中であるとすると、図3の減速制御処理において、ステップS5で自車位置から分岐点までの距離Lbが−500として算出され、図8の進行確信度算出処理において、ステップS61で自車位置が分岐点前後の所定範囲内であると判断されてステップS63に移行し、所定範囲内での車両情報を記憶する。
【0061】
ナビゲーション装置6の経路誘導により分岐左側のIC出口側経路が推奨経路に選択されており、自車両が経路誘導に従ってIC出口側に侵入しようとしているものとする。通常、高速道路の本線を走行中である自車両がIC出口に向かって走行する場合、運転者は左方向へのウィンカースイッチをONとし、操舵操作を行ってIC出口側へ進路変更すると共に、自車両を減速させながら分岐点を通過する。
【0062】
このときの車両情報は図9に示すようになり、自車速の減速量ΔVが所定の減速量閾値VTHに到達したときに第1の進行推定フラグFvがON状態にセットされ、推奨経路側への進路変更を示す操舵パターンが検出されたとき、即ち左方向への操舵の後に続いて右方向への操舵が検出されたときに第2の進行推定フラグFsがON状態にセットされ、ウィンカースイッチが推奨経路側である左方向にONされたことを検出したときに第3の進行推定フラグFwがON状態にセットされる。
この状態から、自車両が分岐点を通過してIC出口側へ進入し、自車位置から分岐点までの距離Lb≧δLとなると、ステップS65で分岐点通過フラグFbがON状態にセットされ、各進行推定フラグ及び分岐点通過フラグが全てON状態となるため、ステップS66で、推奨経路側への進行確信度Cfが1にセットされる。
【0063】
そのため、前記ステップS7で警報作動判断閾値Xgw’がXgw(=0.08)、減速制御作動判断閾値Xgd’がXgd(=0.1)に設定され、ステップS8で前記(5)式をもとに算出された目標減速度Xgsが各作動判断閾値以上となっているときには、運転者に警報を発するものと判断して情報呈示装置7に対して警報信号ALを出力し、自車両を減速させる必要があるものと判断してエンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値を出力すると共に、制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値を出力する。これにより、情報呈示装置7から運転者に対して減速を促す音声メッセージ等が発せられると共に、自車両がカーブ曲率半径に応じた適正車速で走行できるように減速される。
【0064】
このように、上記第2の実施形態では、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における車両情報に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、進行確信度の算出精度を向上させることができる。
また、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における自車速の減速量に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、当該減速量が所定の閾値に到達したとき、IC出口やJCTに向けて減速されたものと判断して推奨経路側への進行確信度を高めることができるなど、進行確信度の算出精度を確実に向上させることができる。
【0065】
さらに、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における操舵角変化に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、例えば推奨経路が分岐の左側であるときには、左側への進路変更を示す操舵パターンが検出されたときに、自車両が推奨経路側に進路変更したものと判断して進行確信度を高めることができるなど、進行確信度の算出精度を確実に向上させることができる。
【0066】
また、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内におけるウィンカー操作履歴に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、例えば推奨経路が分岐の左側であるときには、左方向へのウィンカースイッチがONとなったときに、自車両が推奨経路側に進路変更しようとしているものと判断して進行確信度を高めることができるなど、進行確信度の算出精度を確実に向上させることができる。
なお、上記第2の実施形態においては、自車速の減速量、操舵角変化及びウィンカー操作履歴に応じて推奨経路側への進行推定を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、この他に横加速度やヨーレートなどの車両情報を用いるようにしてもよい。
【0067】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態は、自車両の各方向(車幅方向、上下方向)の移動量を検出し、この移動量の積算値に応じて進行確信度を算出するようにしたものである。
すなわち、図10に示すように、前述した第2の実施形態における図8の進行確信度算出処理において、ステップS63の処理が分岐点前後の所定範囲内における自車両の横移動量を積算するステップS161に置換され、ステップS64の処理が前記ステップS161で積算された横移動量に基づいて推奨経路側への進行推定を行って進行推定フラグを設定するステップS162に置換され、ステップS66の処理が前記ステップS162で設定された進行推定フラグと前記ステップS65で設定された分岐点通過フラグFbとに基づいて進行確信度Cfを算出するステップS163に置換されていることを除いては図8と同様の処理を行うため、図8との対応部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0068】
先ずステップS61で、前述したように自車位置が推奨経路上における分岐点前後の所定範囲内であるか否かを判定し、所定範囲内であるときにはステップS161に移行し、所定範囲外であるときには進行確信度算出処理を終了し、所定のメインプログラムに復帰する。
ステップS161では、自車両が分岐点前後の所定範囲に進入したと判定された時点から、所定範囲を出たと判定される時点までの自車両の各方向の移動量を記録して、ステップS162に移行する。具体的には、ナビゲーション装置6に搭載されているジャイロによって車幅方向の移動量を検出し、その値を積算することにより横移動量Ymを記録する。また、ナビゲーション装置6に記録されている道路勾配や道路の標高データによって上下方向の移動量を検出し、その値を積算することにより上下移動量Zmを記録する。
【0069】
次にステップS162では、前記ステップS161で記録した各方向の移動量に基づいて、推奨経路側への進行推定を行う。図11は、前記ステップS161で記録した所定範囲内での移動量を示す図である。推奨経路が分岐のどちら側であるかを判断し、例えば図2に示すように推奨経路が分岐の左側であるときには、図11(a)に示すように、左方向への横移動量Ymが所定の横移動量閾値YmTH以上(例えば、4[m]以上)になったときに、自車両が推奨経路側に進路変更したものと判断し、第4の進行推定フラグFyをON状態とする。
【0070】
なお、この第4の進行推定フラグFyは、分岐点の手前で推奨経路側への横移動量Ymが所定値以下(例えば、3[m]以下)に戻ったときにはOFF状態とする。
次に、所定範囲内での上下方向の移動量に基づいて第5の進行推定フラグFzを設定する。即ち、例えば本線側が平坦路であり、推奨経路であるIC出口側が下り勾配となっている分岐では、図11(b)に示すように、下方向への移動量Zmが所定の上下移動量閾値ZmTH以上(例えば、1[m]以上)となったときに、自車両が推奨経路側に進入したものと判断し、第5の進行推定フラグFzをON状態とする。
また、これらの進行推定フラグFy及びFzは、自車両が分岐点前後の所定範囲を出たときにOFF状態とする。
【0071】
次にステップS65では、前述したように自車両が推奨経路側への分岐点を通過したか否かを判定し、ステップS163に移行する。このステップS163では、推奨経路方向への進行推定結果に応じて進行確信度Cfを算出する。具体的には、前記ステップS162で各方向の移動量をもとに設定した進行推定フラグFy及びFzと、前記ステップS65で設定した分岐点通過フラグFbとが全てON状態であるとき、推奨経路側への進行確信度Cfを1とする。このとき、上記以外の場合には進行確信度Cf=0とする。
【0072】
なお、ここでは、進行推定フラグFy及びFzと分岐点通過フラグFbとが全てON状態であるときに進行確信度Cf=1とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、推奨経路方向への進行推定は、車幅方向及び上下方向の何れか一方の移動量をもとに設定し、進行推定フラグFy又はFzと分岐点通過フラグFbとに基づいて、進行確信度Cfを算出するようにしてもよい。例えば、車幅方向の移動量Ymのみを検出した場合、進行推定フラグFyと分岐点通過フラグFbとが共にON状態であるときに進行確信度Cf=1とし、上下方向の移動量Zmのみを検出した場合、進行推定フラグFzと分岐点通過フラグFbとが共にON状態であるときに進行確信度Cf=1とする。
【0073】
このようにして設定した進行確信度Cfは、前述した図3のステップS7以降の処理で警報及び減速制御の作動判断に反映される。
したがって、今、自車両が高速道路の本線を直進走行中であり、自車前方にIC出口との分岐路が存在するものとする。自車両が分岐点手前500[m]を走行中であるとすると、図3の減速制御処理において、ステップS5で自車位置から分岐点までの距離Lbが−500として算出され、図10の進行確信度算出処理において、ステップS61で自車位置が分岐点前後の所定範囲内であると判断されてステップS161に移行し、所定範囲内での車幅方向及び上下方向の移動量を記憶する。
【0074】
ナビゲーション装置6の経路誘導により分岐左側のIC出口側経路が推奨経路に選択されており、自車両が経路誘導に従ってIC出口側に侵入しようとしているものとする。この場合、自車両の横移動量Ymは左方向に増加することになる。また、IC出口側が下り勾配となっている場合には、自車両の上下移動量Zmは下方向に増加することになる。
このときの各方向の移動量は図11に示すようになり、横移動量Ymが所定の横移動量閾値YmTHに到達したときに第4の進行推定フラグFyがON状態にセットされ、上下移動量Zmが所定の上下移動量閾値ZmTHに到達したときに第5の進行推定フラグFyがON状態にセットされる。
【0075】
この状態から、自車両が分岐点を通過してIC出口側へ進入し、自車位置から分岐点までの距離Lb≧δLとなると、ステップS65で分岐点通過フラグFbがON状態にセットされ、各進行推定フラグ及び分岐点通過フラグが全てON状態となるため、ステップS163で、推奨経路側への進行確信度Cfが1にセットされる。
【0076】
そのため、前記ステップS7で警報作動判断閾値Xgw’がXgw(=0.08)、減速制御作動判断閾値Xgd’がXgd(=0.1)に設定され、ステップS8で前記(5)式をもとに算出された目標減速度Xgsが各作動判断閾値以上となっているときには、運転者に警報を発するものと判断して情報呈示装置7に対して警報信号ALを出力し、自車両を減速させる必要があるものと判断してエンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値を出力すると共に、制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値を出力する。これにより、情報呈示装置7から運転者に対して減速を促す音声メッセージ等が発せられると共に、自車両がカーブ曲率半径に応じた適正車速で走行できるように減速される。
【0077】
このように、上記第3の実施形態では、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における自車両の各方向の移動量に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、進行確信度の算出精度を向上させることができる。
また、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における横移動量に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、例えば推奨経路が分岐の左側であるときには、左側への進路変更を示す横移動量が検出されたときに、自車両が推奨経路側に進路変更したものと判断して進行確信度を高めることができるなど、進行確信度の算出精度を確実に向上させることができる。
【0078】
さらに、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における上下移動量に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、例えば推奨経路が分岐手前の走行路に対して下り勾配となっているときには、下方向への移動を示す上下移動量が検出されたときに、自車両が推奨経路側に進路変更したものと判断して進行確信度を高めることができるなど、進行確信度の算出精度を確実に向上させることができる。
【0079】
なお、上記第3の実施形態においては、ナビゲーション装置に搭載されたジャイロによって車幅方向及び上下方向の移動量を検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、車両に加速度センサを搭載して各方向の移動量を検出するようにしてもよく、さらに、キネマティックGPSのように10cm以下の精度で絶対位置を測定可能な測位センサを搭載している場合には、その自車位置測定結果を用いるようにしてもよい。
【0080】
また、上記第3の実施形態においては、進行確信度の算出に用いる車両情報として各方向への移動量を適用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、上記第1の実施形態のように自車位置からカーブ開始点までの距離やカーブの曲率半径と組み合わせて実施してもよく、さらに、上記第2の実施形態のように自車速の減速量、操舵角変化、ウィンカー操作等と組み合わせて実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】IC出口やJCT分岐における減速アシスト制御作動タイミングを説明する図である。
【図3】図1の減速制御コントローラで実行される減速制御処理を示すフローチャートである。
【図4】現行ナビゲーション装置の地図データを説明する図である。
【図5】道路形状データ読込みから曲率半径算出までの手順を説明する図である。
【図6】進行確信度算出マップである。
【図7】曲率半径による進行確信度補正マップである。
【図8】第2の実施形態における図3の進行確信度算出部で実行される進行確信度算出処理を示すフローチャートである。
【図9】分岐点前後における車両信号の測定結果の一例を示す図である。
【図10】第3の実施形態における図3の進行確信度算出部で実行される進行確信度算出処理を示すフローチャートである。
【図11】分岐点前後における横方向及び上下方向への移動量積算値の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 制動液体圧制御ユニット
2FL〜2RR 車輪
3 エンジンスロットル制御ユニット
6 ナビゲーション装置
7 情報呈示装置
10 減速制御コントローラ
11 ヨーレートセンサ
12 操舵角センサ
13FL〜13RR 車輪速センサ
14 アクセル開度センサ
15 方向指示スイッチ
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーブ等を旋回走行する車両の減速制御を行うようにした車両用減速制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用減速制御装置としては、カーナビゲーションシステムによって現在の自車位置から目的地までの推奨経路を設定すると共に、推奨経路上のカーブ形状を検出し、このカーブ形状に基づいて自車両が進入しようとしているカーブの曲率半径に応じた適正車速を算出し、自車速が前記適正車速を越えたとき、その偏差に応じて警報及び減速制御を行うというものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平4−236699号公報(第6頁、図8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の車両用減速制御装置にあっては、例えば、自車両が分岐点手前を走行している場合、推奨経路上のカーブ形状を予め取得して、このカーブの曲率半径に応じた適正車速と自車速との関係のみを用いて警報や減速制御の作動を判断する。そのため、分岐手前で進行方向が確定する前に推奨経路側のカーブに対する警報や減速制御が作動することになり、自車両が推奨経路でない方向へ進行しようとした場合に、運転者に違和感を与えてしまうという未解決の課題がある。
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされたものであり、運転者に違和感を与えることなく、適切なタイミングで減速制御を作動することができる減速制御装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用減速制御装置は、車速検出手段で自車両の車速を検出し、自車位置検出手段で自車両の走行位置を検出し、道路情報提供手段で自車両が走行する道路情報を有し、推奨経路選択手段で、前記自車位置検出手段で検出された走行位置と前記道路情報提供手段で提供された道路情報とに基づいて自車両が走行すべき推奨経路を選択し、進行度合算出手段で、少なくとも自車両の走行位置に基づいて前記推奨経路への自車両の進行度合を算出し、減速制御手段で、前記進行度合算出手段で算出された進行度合と前記推奨経路の道路情報と前記車速検出手段で検出された車速とに基づいて自車両を減速する減速制御を行う。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、分岐点手前において分岐点後の推奨経路上のカーブ情報を予め取得し、この推奨経路側への進行度合を算出して、進行度合が高まった時点で、予め取得したカーブ情報を用いて警報や減速制御を行うので、分岐点通過後のカーブ開始点手前でカーブ情報の取得遅れによる警報や減速制御の作動遅れを防止することができると共に、分岐点手前で進行方向が確定する前に警報や減速制御が作動してしまうことを防止することができるなど、適切なタイミングで警報及び減速制御を作動することができ、運転者の違和感を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明における減速制御装置を適用した車両の概略構成図である。
図中1は、制動流体圧制御ユニットであって、各車輪2FL〜2RRの図示しない各ホイールシリンダに供給される制動流体圧を制御するように構成されている。つまり、通常は、ドライバによるブレーキペダルの踏込み量に応じて、マスタシリンダで昇圧された制動流体圧が各ホイールシリンダに供給されるようになっているが、マスタシリンダと各ホイールシリンダとの間に介挿された制動流体圧制御ユニット1によって、ブレーキペダルの操作とは別に各ホイールシリンダへの制動流体圧を制御するように構成されている。
【0007】
前記制動流体圧制御ユニット1は、例えばアンチスキッド制御やトラクション制御に用いられる制動流体圧制御回路を利用したものである。
この制動流体圧制御ユニット1は、後述する減速制御コントローラ10からの制動流体圧指令値に応じて各ホイールシリンダの制動流体圧を制御する。
また、この車両には、図示しないスロットルバルブのスロットル開度を制御可能なエンジンスロットル制御ユニット3が設けられており、このエンジンスロットル制御ユニット3は、単独で、スロットル開度を制御可能であるが、前述した減速制御コントローラ10からのスロットル開度指令値が入力されたときには、そのスロットル開度指令値に応じてスロットル開度を制御するように構成されている。
【0008】
また、この車両には、自車両に発生するヨーレートφ′を検出するヨーレートセンサ11、ステアリングホイールの操舵角δを検出する操舵角検出手段としての操舵角センサ12、各車輪2FL〜2RRの回転速度、いわゆる車輪速度Vwi(i=FL〜RR)を検出する車速検出手段としての車輪速度センサ13FL〜13RR、図示しないアクセルペダルの踏込み量、即ちアクセル開度Accを検出するアクセル開度センサ14、方向指示器による方向指示操作を検出する方向指示操作検出手段としての方向指示スイッチ15が設けられ、それらの検出信号は前記減速制御コントローラ10に出力される。なお、検出された車両の走行状態データに左右の方向性がある場合には、何れも左方向を正方向とする。即ち、操舵角δ等は、左旋回時に正値となる。
【0009】
また、この車両には、自車両の周辺の道路状況に関する情報を、情報提供するためのナビゲーション装置6が搭載されている。このナビゲーション装置6は、公知のナビゲーション装置と同様に、地図データや道路形状データ等を記憶するための記憶手段6aと、GPSアンテナ6bからの情報に基づいて自車両の現在位置を検出する自車位置検出手段6cと、自車位置検出手段6cで検出した自車両の現在位置と前記記憶手段6aに格納された自車両の現在位置周辺の地図データ、道路形状データとを対応付けるマップマッチング手段6dと、マップマッチング手段6dでの対応付けに基づいて、自車両周辺の地図データ、道路形状データを獲得する道路情報取得手段6eとを備えている。
【0010】
さらに、ビーコンアンテナ6fにより走行路側に配設された図示しないインフラシステムとの間での路車間通信や、FM多重放送等の放送情報を受信し、インフラシステムからのインフラ情報や放送情報を獲得するインフラ受信器6gとを備えており、前記道路情報取得手段6eは、インフラ受信器6gで獲得したインフラ情報も含めて自車両周囲の走行環境を獲得するように構成されている。
【0011】
このナビゲーション装置6で検出したナビゲーション情報は、前記減速制御コントローラ10に出力され、この減速制御コントローラ10では、入力される各種情報に基づいて、制動流体圧制御ユニット1及びエンジンスロットル制御ユニット3への制御信号を生成するように構成されている。
また、運転席前方には、減速制御コントローラ10からの警報信号ALに応じて運転者に減速の必要性を呈示する情報呈示装置7が設置されており、この情報呈示装置7にはドライバに減速を促す表示をするディスプレイや、警報音や音声メッセージを発生するためのスピーカーが備えられている。
【0012】
そして、この減速制御コントローラ10では、上記各種センサから入力される検出信号をもとに、自車走行路のカーブ情報を検出すると共に、ナビゲーション装置6による経路誘導の推奨経路側への進行度合即ち進行確信度を算出し、この進行確信度に応じて、予め取得したカーブ情報をもとに警報及び減速制御の作動判断を実行する。そして、警報作動時には、情報呈示装置7に対して警報信号ALを出力し、減速制御時には、目標減速度に応じて前記エンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値を出力すると共に、前記制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値を出力する。
【0013】
ところで、現行のナビゲーション装置における道路形状データの送信周期は、一般的に1[sec]以上であり、車両の警報や減速制御の実行周期に対して長い。例えば、図2(a)に示すような高速道路のIC出口やJCTの分岐点Pbにおいて、自車両MCが本線側からIC出口やJCT側の経路を走行する場合、ナビゲーション装置からのデータ送信タイミングはT1〜T3で示される。
【0014】
そして、分岐点Pb直後のカーブ開始点C1の手前で警報や減速制御を行う場合、経路誘導の推奨経路情報を利用しないと、通常は分岐点Pbを通過して次のデータ送信が行われるT2に達するまでは、それまで走行していた本線側の道路形状を対象に警報や減速制御の作動判定を行い、カーブ情報である曲率半径R1を取得できるタイミングはT2以降となる。そのため、カーブ状況に応じた警報及び減速制御を行うタイミングがT2以降となってしまい、カーブ開始点手前での警報や減速制御の作動タイミングが遅れてしまうという問題があった。
【0015】
これを回避するために、カーナビゲーションシステムによる経路誘導の推奨経路情報を用いて、推奨経路であるIC出口やJCT側のカーブ情報R1をT1以前に予め取得して、分岐点Pbの手前からカーブ情報R1に対して警報や減速制御の作動判定を行うというものがある。しかしながら、自車両が経路誘導に従わずに本線側へ進行する場合には、分岐点手前で進行方向が確定する前にIC出口やJCT側のカーブ情報R1に対して警報や減速制御アシストが作動してしまい、誤作動となってしまうと共に運転者に違和感を与えるという問題がある。
【0016】
そこで、本発明では、分岐点と自車位置との関係や、分岐点近傍における車両挙動及び運転操作履歴を用いて経路誘導の推奨経路側への進行確信度を判別し、この進行確信度をもとに分岐点直後に警報及び減速制御の作動判断を実行する。つまり、図2(b)に示すように、経路誘導設定時に、分岐点手前T’でIC出口やJCT側のカーブ情報R1を取得し、自車両が経路誘導に従ってIC出口やJCT側へ進行することにより分岐点通過後に進行確信度が高まると、その時点T”で予め取得したカーブ情報R1をもとに警報や減速制御の作動判定を行うようにする。
これにより、警報や減速制御の作動タイミングを従来のT2からT”まで早めることができると共に、経路誘導に従わず自車両が推奨経路でない側に進行する場合における警報や減速制御の誤作動を防止することができる。
【0017】
次に、前記減速制御コントローラ10で行われる減速制御処理手順を図3のフローチャートに従って説明する。この減速制御処理は、例えば、10msec毎のタイマ割込処理として実行され、先ず、ステップS1で各種データを読込む。具体的には、前記各センサで検出された各車輪速度Vwi、アクセル開度Acc、操舵角δ、ウィンカー信号WSを読込む。
【0018】
次にステップS2では、ナビゲーション装置6より自車両進行方向の道路形状データをプレビューする。先ず、プレビュー距離Lを算出する。プレビュー距離Lは、所定の長さ(例えば、400[m])に固定してもよく、車速Vに基づいて下記(1)式をもとに算出するようにしてもよい。
L=max(200,V/3.6×7.5) ………(1)
ここで、max( )は、括弧内の数値のうち大きい方の値を選択する関数である。
【0019】
次に、現行のナビゲーション装置に用いられている地図データについて、図4をもとに説明する。地図データは、図4に白丸で示すノード及び黒丸で示す補間点のポイントデータと、それら同士を結ぶリンクデータとから構成される。ノードは、交差点やJCTなどの分岐点があるポイントの位置座標であり、補間点は、道路の屈曲を描画するためのポイントの位置座標である。
【0020】
ノード及び補間点とリンクデータとは、それぞれ経路誘導の推奨経路であるか否かを示すフラグや、道路種別や中央分離帯の有無などの属性情報を持っている。例えば、補間点は、推奨経路フラグ、曲率、標高、信号の有無、一時停止の有無などの情報を持ち、リンクデータは、勾配、制限速度、道路種別、車線数、道路幅などの情報を持つ。
このステップS2では、自車両進行方向の直後のノード又は補間点から、自車両進行方向へプレビュー距離Lの範囲内にある全ての分岐先のノード及び補間点を読込む。例えば、自車両MCが高速道路のIC出口への分岐付近を走行している場合には、図5(a)に示すようにノード及び補間点P0〜P8が読込まれる。ここで、ノードP1がIC出口への分岐点である。
【0021】
次に、ステップS3では、前記ステップS2で読込んだノード及び補間点より道路形状情報の取得対象とする経路を選択する。具体的には、図5の例で説明すると、IC出口側が経路誘導の推奨経路の場合には、道路形状情報の取得対象経路はP0−P1−P3−…−P8となる。つまり、図5(b)に示す太線で示す経路が道路形状情報の取得対象経路として選択される。
なお、ナビゲーション装置による経路誘導が設定されていない場合の分岐ポイントにおける道路形状情報の取得対象経路の選択ロジックとしては、例えば、各分岐先へのリンクのなす角が最も小さな方向を選択することを基本に、道路種別やリンク種別を考慮するようにしてもよい。
【0022】
このような技術として、例えば、特開2004−86450号公報に記載されているように、自車位置と分岐先の道路種別を判別し、自車位置と分岐先との道路種別が共に国道や主要地方道などの幹線道路であり且つ分岐先が細道路でない場合には、分岐先のうち最も曲率半径の大きなカーブのある方向が進路に選択されたり、分岐先に細道路が含まれる場合には、分岐先の幹線道路のうち最も曲率半径の大きなカーブのある方向が進路に選択されたり、さらに、自車位置が高速道路本線であるときには、分岐先のカーブの曲率半径に関係なく本線側に進路が選択されたりする方法が提案されている。
なお、経路誘導が設定されていない場合の分岐ポイントにおける道路形状情報の取得対象経路の選択ロジックは、上記の技術に限定されるものではない。
【0023】
次に、ステップS4では、前記ステップS3で選択した道路形状情報の取得対象経路上のノード及び補間点より、カーブの曲率半径を算出する。図5の例では、前記ステップS3で、道路形状情報の取得対象経路はP0−P1−P3−…−P8に選択されているので、この経路P0−P1−P3−…−P8における曲率半径R1,R2,…,R7を算出する。
通常、公知のナビゲーション装置で保持している地図データは、経路誘導と道路地図表示とを目的として作成されているため、ノード又は補間点の間隔が不規則であって、必ずしもカーブの形状を精度よく表していない場合もある。このような場合には、地図データからカーブ曲率を精度よく検出する技術を適用するようにしてもよい。
【0024】
このような技術として、例えば、特開平11−232599号公報、特開平11−232600号公報、特開2001−6098号公報等に記載されているように、例えば、カーブであると予測される検出点周辺の、ノードや補間点を結ぶリンクの屈折角の和を算出し、この屈折角の和が閾値を超えるときにカーブであると判断することにより、ノードや補間点が不等間隔に配置されている場合のカーブの検出精度を向上したり、また、ノードや補間点の間隔が閾値よりも短い場合には、2点のうちの一方を削除することで、ノードや補間点の間隔が短いことに起因して実際よりも急なカーブであると誤判断されることを回避したり、逆に、ノード又は補間点の間隔が閾値を超えるときにはこの部分をカーブの検出に用いないようにすることで、カーブの検出精度を向上したりする方法等が提案されている。
【0025】
また、この他にも例えば、ノード又は補間点の間隔とリンク同士のなす角とを用いて、ノード及び補間点が密集し、且つリンク同士のなす角が大きな区間をカーブ区間として抽出し、その区間内のノード及び補間点を用いて曲率半径を算出するようにしてもよい。さらに、各ノード及び補間点に予め曲率半径を記録して、その値をナビゲーション装置6より直接読込むようにしてもよい。
【0026】
なお、本実施形態においては、前記ステップS2〜S4における処理を減速制御コントローラ10で行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、これらの処理をナビゲーション装置6で行い、曲率半径やカーブ開始点までの距離や分岐ポイントまでの距離など、警報や減速制御に必要な情報のみを減速制御コントローラ10に送信するようにしてもよい。
【0027】
次に、ステップS5では、前記ステップS2で取得した道路形状データより、自車位置から分岐点までの距離を算出する。具体的には、先ず、取得した道路形状データより自車両進行方向のノードを抽出し、ナビゲーション装置6より出力されたノードまでの距離Lbを読込み、次にナビゲーション装置6から道路形状データが出力されるまでは、自車速Vを積算して走行距離を算出しノードまでの距離Lbを補正する。
【0028】
そして、当該ノードを通過後は、所定距離(例えば、200[m])走行するまで自車速Vを積算して走行距離を算出することでノードまでの距離Lbを求める。ここで、距離Lbの符号は、分岐点通過前を負、通過後を正とする。図5の例では、自車両MCからの自車位置VPから分岐点P1までの距離を算出することになる。
次に、ステップS6では、経路誘導の推奨経路方向への進行確信度を算出する。この進行確信度Cfは、例えば、自車前方に分岐路を検出している場合、分岐点までの距離Lbに基づいて下記(2)式をもとに算出する。
Cf=0(Lb<δL),
Cf=1(Lb≧δL) ………(2)
ここで、δLはナビゲーション装置による自車位置の測定誤差を考慮した定数であり、自車位置の測定精度に応じてD−GPSを用いている場合では、例えば20[m]に設定する。
【0029】
また、自車前方に分岐路が検出されない場合には、自車両は直進路を走行中であり、推奨経路を走行しているものと判断されるので、進行確信度Cf=1とする。
なお、ここでは、進行確信度Cfを上記(2)式をもとに算出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、図6に示すように、分岐点を通過した後にカーブ開始点までの距離に応じて、カーブ開始点に近づくにつれて進行確信度Cfを0から1へ増加させるようにしてもよい。
【0030】
図6は、自車位置から分岐点までの距離Lbに応じて進行確信度Cfを算出するマップであり、実線で示すように、分岐点までの距離Lbが定数δLまでの間ではCf=0に固定され、分岐点までの距離LbがδLからLsまでの間では、距離Lbの増加に伴ってCf=0から1まで単調増加し、分岐点までの距離LbがLs以上の領域ではCf=1に固定されるように設定されている。
ここで、進行確信度Cfが1に到達する位置Lsは、例えばカーブ開始点手前の所定値(例えば、100[m])と、分岐点とカーブ開始点の中間点とのうち分岐点に近い方に設定する。
【0031】
なお、進行確信度Cfが1に到達する位置Lsは、カーブの曲率半径に応じて補正するようにしてもよい。すなわち、図7に示すように、横軸にカーブの曲率半径、縦軸にLsの補正値ΔLを取り、所定の曲率半径閾値RTH1(例えば、30[m])から所定の曲率半径閾値RTH2(例えば、150[m])にかけて、補正値ΔLが所定値Lt(例えば、100[m])から0にかけて単調減少するように設定する。そして、このようにして算出された補正値ΔLによってLsを減少補正する。
【0032】
これにより、曲率半径が小さいほど補正値ΔLは大きい値に設定されるので、曲率半径が小さな場合ほどLsを分岐点側に近づけ、急カーブの場合にはカーブ開始点のより手前で確実に警報や減速制御が作動することができる。このときの進行確信度算出マップは、図6の破線に示すように、進行確信度Cfが1に到達する位置がLsからLs−ΔLに移動する。
【0033】
なお、図7のマップを用いて補正値ΔLを算出した結果、Ls−ΔL<δLとなった場合には、Ls−ΔL=δLとする。
次に、ステップS7では、前記ステップS6で算出された進行確信度Cfを、カーブ手前での警報及び減速制御の作動判断に反映させる。具体的には、警報の作動開始判断を行うための警報作動判断閾値Xgw(例えば、0.08[g])と、減速制御の作動開始判断を行うための減速制御作動判断閾値Xgd(例えば、0.1[g])とを、進行確信度Cfに応じて下記(3)及び(4)式のように補正する。
Xgw’=Xgw/Cf ………(3)
Xgd’=Xgd/Cf ………(4)
ここで、Xgw’及びXgd’は、それぞれ補正後の作動判断閾値である。
但し、Cf≒0のとき、作動判断閾値Xgw’及びXgd’は所定の上限値(例えば、99.9[g])に設定する。
【0034】
本実施形態では、自車速やカーブでの目標車速等から算出される目標減速度が各作動判断閾値以上となったときに、警報や減速制御を作動させるように構成されており、上記のように作動判断閾値を設定することで、進行確信度Cfの値が小さくなるほど作動判断閾値を大きく設定して、警報や減速制御を作動しにくくすることができる。そして、進行確信度Cfが0に近い時には、実質的に警報や減速制御を作動しないようにすることができる。
【0035】
最後に、ステップS8では、カーブ情報と分岐点での推奨経路側への進行確信度とを用いて、カーブ手前での警報及び減速制御を行う。先ず、目標減速度Xgsを算出する。具体的には、各車輪の車輪速度より算出した自車速V、カーブの曲率半径Rn並びにカーブまでの距離Ln、及び予め設定されたカーブ通過時の横加速度許容値Yglmitに基づいて、下記(5)式をもとに算出する。
Xgs=(V2−Vr2)/(2・Ln)
=(V2−Yglmit・|Rn|/(2・Ln) ………(5)
ここで、Vr(=(Yglmit・|Rn|)1/2)はカーブでの目標車速である。また、この目標減速度Xgsは減速時に正値となる。
【0036】
次に、このようにして算出された目標減速度Xgsに基づいて、警報作動開始判断及び減速制御作動開始判断を行う。この判断は、目標減速度Xgsが、前記ステップS7で補正した作動判断閾値Xgw’(Xgd’)以上であるか否かによって行い、Xgs≧Xgw’であるときには、警報を作動するものと判断して警報作動フラグFwを“1”にセットし、Xgs<Xgw’であるときには、警報を非作動とするものと判断して警報作動フラグFwを“0”にリセットする。
【0037】
また、Xgs≧Xgd’であるときには、減速制御を作動するものと判断して減速制御作動フラグFdを“1”にセットし、Xgs<Xgd’であるときには、減速制御を非作動とするものと判断して減速制御作動フラグFdを“0”にリセットする。
そして、警報作動フラグFw=1であるときには、情報呈示装置7に対して警報信号ALを出力し、減速制御作動フラグFd=1であるときには、算出された目標減速度Xgsに応じて、前記エンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値を出力すると共に、前記制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値を出力してからタイマ割込み処理を終了し、所定のメインプログラムに復帰する。
【0038】
この図3の処理において、ステップS3の処理が推奨経路選択手段に対応し、ステップS6の処理が進行確信度判定手段に対応し、ステップS7及びS8の処理が減速制御手段に対応している。
したがって、今、自車両が高速道路において、分岐路の存在しない本線を走行中であり、自車前方にカーブが存在するものとする。この場合には、図3の減速制御処理において、ステップS3で現在走行中である本線が推奨経路に選択され、ステップS4で本線上のノード及び補間点より曲率半径を算出される。自車前方に分岐路は存在しないため、ステップS6で進行確信度Cfが1に算出されるので、前記(5)式をもとに算出された目標減速度Xgsと、補正後の作動判断閾値Xgw’(=Xgs)又はXgd’(=Xgd)とを比較して、Xgs≧Xgw’(Xgd’)であるときには自車両を減速させるための警報及び減速制御を作動させる。
【0039】
即ち、情報呈示装置7に対して警報信号ALが出力されると共に、エンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値が、制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値が出力される。これにより、情報呈示装置7から運転者に対して減速を促す音声メッセージ等が発せられると共に、自車両がカーブ曲率半径に応じた適正車速で走行できるように減速される。これにより、自車両が自車前方のカーブ曲率半径に応じた適正車速で走行できるように減速される。
【0040】
また、自車両が高速道路の本線を直進走行中であり、自車前方にIC出口との分岐路が存在するものとする。そして、ナビゲーション装置6の経路誘導により現在走行中である本線が推奨経路に選択されているものとすると、ステップS3で道路形状情報の取得対象とする経路として本線が選択されて、ステップS4で本線上のノード及び補間点より曲率半径を算出される。自車走行路は直進路であるため、目標減速度Xgsは0に算出され、自車両が分岐点を通過後もXgs≧Xgw’(Xgd’)とならないので、警報及び減速制御を行うことなく運転者によるアクセル及びブレーキ操作に応じた直進走行を継続する。
【0041】
また、自車両が高速道路の本線を直進走行中であり、自車前方にIC出口との分岐路が存在するものとする。そして、ナビゲーション装置6の経路誘導によりIC出口側が推奨経路に選択されているものとすると、ステップS3で道路形状情報の取得対象とする経路としてIC出口側経路が選択される。IC出口側への分岐路は、分岐直後は略直線でその後急カーブとなっている場合があり、ステップS4でIC出口側経路上のノード及び補間点よりカーブの曲率半径が算出される。
【0042】
自車両が分岐点手前を走行中であるとすると、ステップS5で自車位置から分岐点までの距離Lbが負値として算出されるので、進行確信度Cfは前記(2)式をもとに零に算出される。そのため、ステップS7で警報作動判断閾値Xgw’及び減速制御作動判断閾値Xgd’が99.9[g]に設定されるので、目標減速度Xgsがこれらの作動判断閾値以上となることがなく、警報及び減速制御を非作動として運転者によるアクセル及びブレーキ操作に応じた走行を継続する。
【0043】
その後、自車両が分岐点を通過し、経路誘導に従ってIC出口側に進行したものとする。この場合には、ステップS5で自車位置から分岐点までの距離Lbが正値として算出され、進行確信度Cfは前記(2)式をもとに1に算出される。そのため、ステップS7で警報作動判断閾値Xgw’が0.08、減速制御作動判断閾値Xgd’が0.1に設定される。このとき、ステップS8で前記(5)式をもとに算出された目標減速度Xgsが各作動判断閾値以上となっているときには、運転者に警報を発するものと判断して情報呈示装置7に対して警報信号ALを出力し、自車両を減速させる必要があるものと判断してエンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値を出力すると共に、制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値を出力する。これにより、情報呈示装置7から運転者に対して減速を促す音声メッセージ等が発せられると共に、自車両がカーブ曲率半径に応じた適正車速で走行できるように減速される。
【0044】
このように、自車前方に分岐路が存在する場合には、分岐手前において経路誘導の推奨経路のカーブ情報を取得し、自車両が分岐点を通過した後、当該推奨経路側への進行の確信度が高まった時点で、予め分岐手前で取得していたカーブ情報を用いて警報及び減速制御を行うので、分岐点通過後のカーブ開始点手前での警報及び減速制御の作動タイミングの遅れを解消することができる。
【0045】
一方、自車両が分岐点を通過し、経路誘導に従わず本線側に進行したものとする。この場合には、進行確信度Cfは零に算出される。そのため、ステップS7で警報作動判断閾値Xgw’及び減速制御作動判断閾値Xgd’が99.9[g]に設定されるので、目標減速度Xgsがこれらの作動判断閾値以上となることがなく、警報及び減速制御を非作動として運転者によるアクセル及びブレーキ操作に応じた走行を継続する。
【0046】
このように、推奨経路側であるIC出口側への進行確信度Cfを判定し、IC出口側への進行確信度Cfが高まった時点で警報及び減速制御を作動させるようにしているので、経路誘導の推奨経路としてIC出口側が選択されている場合で、自車両が経路誘導に逆らって本線側に進行する場合であっても、分岐手前で予め取得したIC出口側のカーブ情報に基づいて警報及び減速制御が行われることなく、確実に誤作動を防止することができる。
【0047】
このように、上記第1の実施形態では、経路誘導情報を用いて分岐点手前で分岐後の推奨経路上のカーブ情報を予め取得し、経路誘導の推奨経路側への進行確信度を判別して、この進行確信度が高まった時点で、分岐手前において予め取得したカーブ情報を用いて警報及び減速制御を作動させるので、分岐点直後のカーブ開始点手前でカーブ情報の取得遅れによる警報及び減速制御の作動遅れを解消することができると共に、分岐点手前の進行方向が確定する前に警報及び減速制御が作動してしまうことによる運転者の違和感を抑制することができる。
【0048】
また、自車位置から分岐点までの距離を求め、自車両が分岐点を通過して経路誘導の推奨経路側に進入したと判定したときに、推奨経路側への進行確信度を高めるので、分岐点手前の進行方向が確定する前に警報及び減速制御が作動してしまうことによる運転者の違和感を確実に防止することができる。
さらに、自車両が分岐点を通過して経路誘導の推奨経路側に進入したと判定したときには、自車走行位置から推奨経路上のカーブ開始点までの距離が短いほど進行確信度を高めることで、分岐点直後における警報及び減速制御の作動を抑制するので、自車両が推奨経路でない側へ侵入したにもかかわらず、ナビゲーション装置によって分岐直後に推奨経路側にマップマッチングされた場合の警報や減速制御の誤作動を抑制することができる。
【0049】
また、自車両が分岐点を通過して経路誘導の推奨経路側に進入したと判定したときには、推奨経路上のカーブの曲率半径に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、分岐点後のカーブの曲率半径が小さく警報や減速制御を早めに作動させる必要がある場合にも、適切なタイミングで警報及び減速制御を作動させることができ、運転者に違和感のない走行を行うことができる。
【0050】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
この第2の実施形態は、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における自車速の減速量、操舵角変化、又はウィンカー操作履歴等に基づいて、推奨経路側への進行確信度を算出するようにしたものである。
すなわち、前述した第1の実施形態における図3の減速制御処理において、ステップS6で図8に示す進行確信度算出処理を行うことを除いては図3と同様の処理を行うため、図3との対応部分の詳細な説明は省略する。
【0051】
図8は、図3の減速制御処理のステップS6で行われる進行確信度算出処理手順を示すフローチャートであって、先ず、ステップS61で自車位置が推奨経路上における分岐点前後の所定範囲内であるか否かを判定する。具体的には、前記ステップS5で算出した自車位置から分岐点までの距離Lbが、所定範囲内(例えば、−500[m]以上200[m]未満)であるか否かを判定し、所定範囲外であるときにはステップS62に移行して進行確信度Cf=1に設定してから進行確信度算出処理を終了し、所定のメインプログラムに復帰する。一方、分岐点までの距離Lbが所定範囲内であるときにはステップS63に移行する。
【0052】
ステップS63では、自車両が分岐点前後の所定範囲に進入したと判定された時点から、所定範囲を出たと判定される時点までの車両情報を記録して、ステップS64に移行する。具体的には、自車両が分岐点前後の所定範囲に進入したと判定された時点から、所定範囲を出たと判定される時点までの自車速V、操舵角δ及びウィンカー信号WSを記録する。
【0053】
ステップS64では、前記ステップS63で記録した車両情報に基づいて、推奨経路側への進行推定を行う。図9は、前記ステップS63で記録した所定範囲内での車両情報を示す図であり、図9(a)に示すように、自車両が所定範囲に進入した時点での車速V1からの減速量ΔVが所定の減速量閾値VTH(例えば、20[km/h])に到達したときに、IC出口やJCTに向けて減速されたものと判断し、第1の進行推定フラグFvを推奨経路側へ進行していることを示すON状態とする。
【0054】
なお、ここでは、減速量ΔVが減速量閾値VTHに到達したときに第1の進行推定フラグFvをON状態とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、所定範囲内において自車速Vが所定値(例えば、60[km/h])以下となったときに、第1の進行推定フラグFvをON状態とするようにしてもよい。
なお、この第1の進行推定フラグFvは、分岐点の手前(Lb<0)で第1の進行推定フラグFvがON状態となった時点からの加速量が、所定値(例えば、10[km/h])に到達したときにOFF状態とするようにしてもよく、第1の進行推定フラグFvがON状態となった後、自車速Vが所定値(例えば、70[km/h])以上になるように加速されたときにOFF状態とするようにしてもよい。
【0055】
次に、所定範囲内での操舵角変化に基づいて第2の進行推定フラグFsを設定する。即ち、推奨経路が分岐のどちら側であるかを判断し、例えば図2に示すように推奨経路が分岐の左側であるときには、図9(b)に示すように、左方向への操舵の後に続いて右方向への操舵が検出されたときに、自車両が推奨経路側に進路変更されたものと判断し、第2の進行推定フラグFsをON状態とする。
なお、この第2の進行推定フラグFsは、分岐点の手前で推奨経路と逆側への進路変更を示す操舵パターンが検出されたときにはOFF状態とする。
【0056】
次に、所定範囲内でのウィンカー操作履歴に基づいて第3の進行推定フラグFwを設定する。即ち、推奨経路が分岐のどちら側であるかを判断し、例えば図2に示すように推奨経路が分岐の左側であるときには、図9(c)に示すように、左方向へのウィンカースイッチがONになったことが検出されたときに、自車両が推奨経路側に進路変更するものと判断し、第3の進行推定フラグFwをON状態とする。
なお、この第3の進行推定フラグFwは、分岐点の手前で推奨経路と逆側のウィンカースイッチがONになったことが検出されたときにはOFF状態とする。
また、これらの進行推定フラグFv、Fs及びFwは、自車両が分岐点前後の所定範囲を出たときにOFF状態とする。
【0057】
次にステップS65では、自車両が推奨経路側への分岐点を通過したか否かを判定する。具体的には、前記ステップS5で算出した自車位置から分岐点までの距離Lbが定数δL以上であるか否かを判定し、Lb≧δLであるときには分岐点を通過したものと判断して分岐点通過フラグFbをON状態とする。この分岐点通過フラグFbは、自車両が分岐点前後の所定範囲を出たときにOFF状態とする。
【0058】
次にステップS66に移行して、推奨経路方向への進行推定結果に応じて進行確信度Cfを算出する。具体的には、前記ステップS64で車両情報をもとに設定した進行推定フラグFv、Fs及びFwと、前記ステップS65で設定した分岐点通過フラグFbとが全てON状態であるとき、推奨経路側への進行確信度Cfを1とする。
【0059】
なお、ここでは、進行推定フラグFv、Fs及びFwと分岐点通過フラグFbとが全てON状態であるときに進行確信度Cf=1とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、進行推定フラグのうち2つがON状態で且つ分岐点通過フラグFbがON状態であるときに進行確信度Cf=0.7、進行推定フラグのうち1つがON状態で且つ分岐点通過フラグFbがON状態であるときに進行確信度Cf=0.3に設定するなど、段階的に値を設定するようにしてもよい。このとき、上記以外の場合即ち分岐点通過フラグFbがOFF状態であるときには、進行確信度Cf=0とする。
【0060】
このようにして設定した進行確信度Cfは、前述した図3のステップS7以降の処理で警報及び減速制御の作動判断に反映される。
したがって、今、自車両が高速道路の本線を直進走行中であり、自車前方にIC出口との分岐路が存在するものとする。自車両が分岐点手前500[m]を走行中であるとすると、図3の減速制御処理において、ステップS5で自車位置から分岐点までの距離Lbが−500として算出され、図8の進行確信度算出処理において、ステップS61で自車位置が分岐点前後の所定範囲内であると判断されてステップS63に移行し、所定範囲内での車両情報を記憶する。
【0061】
ナビゲーション装置6の経路誘導により分岐左側のIC出口側経路が推奨経路に選択されており、自車両が経路誘導に従ってIC出口側に侵入しようとしているものとする。通常、高速道路の本線を走行中である自車両がIC出口に向かって走行する場合、運転者は左方向へのウィンカースイッチをONとし、操舵操作を行ってIC出口側へ進路変更すると共に、自車両を減速させながら分岐点を通過する。
【0062】
このときの車両情報は図9に示すようになり、自車速の減速量ΔVが所定の減速量閾値VTHに到達したときに第1の進行推定フラグFvがON状態にセットされ、推奨経路側への進路変更を示す操舵パターンが検出されたとき、即ち左方向への操舵の後に続いて右方向への操舵が検出されたときに第2の進行推定フラグFsがON状態にセットされ、ウィンカースイッチが推奨経路側である左方向にONされたことを検出したときに第3の進行推定フラグFwがON状態にセットされる。
この状態から、自車両が分岐点を通過してIC出口側へ進入し、自車位置から分岐点までの距離Lb≧δLとなると、ステップS65で分岐点通過フラグFbがON状態にセットされ、各進行推定フラグ及び分岐点通過フラグが全てON状態となるため、ステップS66で、推奨経路側への進行確信度Cfが1にセットされる。
【0063】
そのため、前記ステップS7で警報作動判断閾値Xgw’がXgw(=0.08)、減速制御作動判断閾値Xgd’がXgd(=0.1)に設定され、ステップS8で前記(5)式をもとに算出された目標減速度Xgsが各作動判断閾値以上となっているときには、運転者に警報を発するものと判断して情報呈示装置7に対して警報信号ALを出力し、自車両を減速させる必要があるものと判断してエンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値を出力すると共に、制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値を出力する。これにより、情報呈示装置7から運転者に対して減速を促す音声メッセージ等が発せられると共に、自車両がカーブ曲率半径に応じた適正車速で走行できるように減速される。
【0064】
このように、上記第2の実施形態では、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における車両情報に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、進行確信度の算出精度を向上させることができる。
また、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における自車速の減速量に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、当該減速量が所定の閾値に到達したとき、IC出口やJCTに向けて減速されたものと判断して推奨経路側への進行確信度を高めることができるなど、進行確信度の算出精度を確実に向上させることができる。
【0065】
さらに、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における操舵角変化に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、例えば推奨経路が分岐の左側であるときには、左側への進路変更を示す操舵パターンが検出されたときに、自車両が推奨経路側に進路変更したものと判断して進行確信度を高めることができるなど、進行確信度の算出精度を確実に向上させることができる。
【0066】
また、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内におけるウィンカー操作履歴に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、例えば推奨経路が分岐の左側であるときには、左方向へのウィンカースイッチがONとなったときに、自車両が推奨経路側に進路変更しようとしているものと判断して進行確信度を高めることができるなど、進行確信度の算出精度を確実に向上させることができる。
なお、上記第2の実施形態においては、自車速の減速量、操舵角変化及びウィンカー操作履歴に応じて推奨経路側への進行推定を行う場合について説明したが、これに限定されるものではなく、この他に横加速度やヨーレートなどの車両情報を用いるようにしてもよい。
【0067】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
この第3の実施形態は、自車両の各方向(車幅方向、上下方向)の移動量を検出し、この移動量の積算値に応じて進行確信度を算出するようにしたものである。
すなわち、図10に示すように、前述した第2の実施形態における図8の進行確信度算出処理において、ステップS63の処理が分岐点前後の所定範囲内における自車両の横移動量を積算するステップS161に置換され、ステップS64の処理が前記ステップS161で積算された横移動量に基づいて推奨経路側への進行推定を行って進行推定フラグを設定するステップS162に置換され、ステップS66の処理が前記ステップS162で設定された進行推定フラグと前記ステップS65で設定された分岐点通過フラグFbとに基づいて進行確信度Cfを算出するステップS163に置換されていることを除いては図8と同様の処理を行うため、図8との対応部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0068】
先ずステップS61で、前述したように自車位置が推奨経路上における分岐点前後の所定範囲内であるか否かを判定し、所定範囲内であるときにはステップS161に移行し、所定範囲外であるときには進行確信度算出処理を終了し、所定のメインプログラムに復帰する。
ステップS161では、自車両が分岐点前後の所定範囲に進入したと判定された時点から、所定範囲を出たと判定される時点までの自車両の各方向の移動量を記録して、ステップS162に移行する。具体的には、ナビゲーション装置6に搭載されているジャイロによって車幅方向の移動量を検出し、その値を積算することにより横移動量Ymを記録する。また、ナビゲーション装置6に記録されている道路勾配や道路の標高データによって上下方向の移動量を検出し、その値を積算することにより上下移動量Zmを記録する。
【0069】
次にステップS162では、前記ステップS161で記録した各方向の移動量に基づいて、推奨経路側への進行推定を行う。図11は、前記ステップS161で記録した所定範囲内での移動量を示す図である。推奨経路が分岐のどちら側であるかを判断し、例えば図2に示すように推奨経路が分岐の左側であるときには、図11(a)に示すように、左方向への横移動量Ymが所定の横移動量閾値YmTH以上(例えば、4[m]以上)になったときに、自車両が推奨経路側に進路変更したものと判断し、第4の進行推定フラグFyをON状態とする。
【0070】
なお、この第4の進行推定フラグFyは、分岐点の手前で推奨経路側への横移動量Ymが所定値以下(例えば、3[m]以下)に戻ったときにはOFF状態とする。
次に、所定範囲内での上下方向の移動量に基づいて第5の進行推定フラグFzを設定する。即ち、例えば本線側が平坦路であり、推奨経路であるIC出口側が下り勾配となっている分岐では、図11(b)に示すように、下方向への移動量Zmが所定の上下移動量閾値ZmTH以上(例えば、1[m]以上)となったときに、自車両が推奨経路側に進入したものと判断し、第5の進行推定フラグFzをON状態とする。
また、これらの進行推定フラグFy及びFzは、自車両が分岐点前後の所定範囲を出たときにOFF状態とする。
【0071】
次にステップS65では、前述したように自車両が推奨経路側への分岐点を通過したか否かを判定し、ステップS163に移行する。このステップS163では、推奨経路方向への進行推定結果に応じて進行確信度Cfを算出する。具体的には、前記ステップS162で各方向の移動量をもとに設定した進行推定フラグFy及びFzと、前記ステップS65で設定した分岐点通過フラグFbとが全てON状態であるとき、推奨経路側への進行確信度Cfを1とする。このとき、上記以外の場合には進行確信度Cf=0とする。
【0072】
なお、ここでは、進行推定フラグFy及びFzと分岐点通過フラグFbとが全てON状態であるときに進行確信度Cf=1とする場合について説明したが、これに限定されるものではなく、推奨経路方向への進行推定は、車幅方向及び上下方向の何れか一方の移動量をもとに設定し、進行推定フラグFy又はFzと分岐点通過フラグFbとに基づいて、進行確信度Cfを算出するようにしてもよい。例えば、車幅方向の移動量Ymのみを検出した場合、進行推定フラグFyと分岐点通過フラグFbとが共にON状態であるときに進行確信度Cf=1とし、上下方向の移動量Zmのみを検出した場合、進行推定フラグFzと分岐点通過フラグFbとが共にON状態であるときに進行確信度Cf=1とする。
【0073】
このようにして設定した進行確信度Cfは、前述した図3のステップS7以降の処理で警報及び減速制御の作動判断に反映される。
したがって、今、自車両が高速道路の本線を直進走行中であり、自車前方にIC出口との分岐路が存在するものとする。自車両が分岐点手前500[m]を走行中であるとすると、図3の減速制御処理において、ステップS5で自車位置から分岐点までの距離Lbが−500として算出され、図10の進行確信度算出処理において、ステップS61で自車位置が分岐点前後の所定範囲内であると判断されてステップS161に移行し、所定範囲内での車幅方向及び上下方向の移動量を記憶する。
【0074】
ナビゲーション装置6の経路誘導により分岐左側のIC出口側経路が推奨経路に選択されており、自車両が経路誘導に従ってIC出口側に侵入しようとしているものとする。この場合、自車両の横移動量Ymは左方向に増加することになる。また、IC出口側が下り勾配となっている場合には、自車両の上下移動量Zmは下方向に増加することになる。
このときの各方向の移動量は図11に示すようになり、横移動量Ymが所定の横移動量閾値YmTHに到達したときに第4の進行推定フラグFyがON状態にセットされ、上下移動量Zmが所定の上下移動量閾値ZmTHに到達したときに第5の進行推定フラグFyがON状態にセットされる。
【0075】
この状態から、自車両が分岐点を通過してIC出口側へ進入し、自車位置から分岐点までの距離Lb≧δLとなると、ステップS65で分岐点通過フラグFbがON状態にセットされ、各進行推定フラグ及び分岐点通過フラグが全てON状態となるため、ステップS163で、推奨経路側への進行確信度Cfが1にセットされる。
【0076】
そのため、前記ステップS7で警報作動判断閾値Xgw’がXgw(=0.08)、減速制御作動判断閾値Xgd’がXgd(=0.1)に設定され、ステップS8で前記(5)式をもとに算出された目標減速度Xgsが各作動判断閾値以上となっているときには、運転者に警報を発するものと判断して情報呈示装置7に対して警報信号ALを出力し、自車両を減速させる必要があるものと判断してエンジンスロットル制御ユニット3に対してスロットル開度指令値を出力すると共に、制動流体圧制御ユニット1に対して制動流体圧指令値を出力する。これにより、情報呈示装置7から運転者に対して減速を促す音声メッセージ等が発せられると共に、自車両がカーブ曲率半径に応じた適正車速で走行できるように減速される。
【0077】
このように、上記第3の実施形態では、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における自車両の各方向の移動量に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、進行確信度の算出精度を向上させることができる。
また、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における横移動量に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、例えば推奨経路が分岐の左側であるときには、左側への進路変更を示す横移動量が検出されたときに、自車両が推奨経路側に進路変更したものと判断して進行確信度を高めることができるなど、進行確信度の算出精度を確実に向上させることができる。
【0078】
さらに、推奨経路上の分岐点前後の所定範囲内における上下移動量に応じて推奨経路側への進行確信度を算出するので、例えば推奨経路が分岐手前の走行路に対して下り勾配となっているときには、下方向への移動を示す上下移動量が検出されたときに、自車両が推奨経路側に進路変更したものと判断して進行確信度を高めることができるなど、進行確信度の算出精度を確実に向上させることができる。
【0079】
なお、上記第3の実施形態においては、ナビゲーション装置に搭載されたジャイロによって車幅方向及び上下方向の移動量を検出する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、車両に加速度センサを搭載して各方向の移動量を検出するようにしてもよく、さらに、キネマティックGPSのように10cm以下の精度で絶対位置を測定可能な測位センサを搭載している場合には、その自車位置測定結果を用いるようにしてもよい。
【0080】
また、上記第3の実施形態においては、進行確信度の算出に用いる車両情報として各方向への移動量を適用する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、上記第1の実施形態のように自車位置からカーブ開始点までの距離やカーブの曲率半径と組み合わせて実施してもよく、さらに、上記第2の実施形態のように自車速の減速量、操舵角変化、ウィンカー操作等と組み合わせて実施してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】IC出口やJCT分岐における減速アシスト制御作動タイミングを説明する図である。
【図3】図1の減速制御コントローラで実行される減速制御処理を示すフローチャートである。
【図4】現行ナビゲーション装置の地図データを説明する図である。
【図5】道路形状データ読込みから曲率半径算出までの手順を説明する図である。
【図6】進行確信度算出マップである。
【図7】曲率半径による進行確信度補正マップである。
【図8】第2の実施形態における図3の進行確信度算出部で実行される進行確信度算出処理を示すフローチャートである。
【図9】分岐点前後における車両信号の測定結果の一例を示す図である。
【図10】第3の実施形態における図3の進行確信度算出部で実行される進行確信度算出処理を示すフローチャートである。
【図11】分岐点前後における横方向及び上下方向への移動量積算値の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
【0082】
1 制動液体圧制御ユニット
2FL〜2RR 車輪
3 エンジンスロットル制御ユニット
6 ナビゲーション装置
7 情報呈示装置
10 減速制御コントローラ
11 ヨーレートセンサ
12 操舵角センサ
13FL〜13RR 車輪速センサ
14 アクセル開度センサ
15 方向指示スイッチ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の車速を検出する車速検出手段と、自車両の走行位置を検出する自車位置検出手段と、自車両が走行する道路情報を有する道路情報提供手段と、前記自車位置検出手段で検出された走行位置と前記道路情報提供手段で提供された道路情報とに基づいて自車両が走行すべき推奨経路を選択する推奨経路選択手段と、少なくとも自車両の走行位置に基づいて前記推奨経路への自車両の進行度合を算出する進行度合算出手段と、前記進行度合算出手段で算出された進行度合と前記推奨経路の道路情報と前記車速検出手段で検出された車速とに基づいて自車両を減速する減速制御を行う減速制御手段とを備えていることを特徴とする車両用減速制御装置。
【請求項2】
前記減速制御手段は、前記進行度合算出手段で算出された進行度合が大きいほど、前記減速制御を作動し易くすることを特徴とする請求項1に記載の車両用減速制御装置。
【請求項3】
前記進行度合算出手段は、自車両が分岐点を通過して前記推奨経路側に進入したとき、自車両が分岐点手前を走行しているときと比較して当該推奨経路側への進行度合を大きく算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用減速制御装置。
【請求項4】
前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における自車速の減速量に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3に記載の車両用減速制御装置。
【請求項5】
操舵角を検出する操舵角検出手段を有し、前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における操舵角の変化に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用減速制御装置。
【請求項6】
方向指示器による方向指示操作を検出する方向指示操作検出手段を有し、前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における方向指示操作に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項7】
自車両の状態量を検出する車両状態量検出手段を有し、前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における車両状態量に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3乃至6の何れか一項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項8】
前記車両状態量検出手段は自車両の車幅方向の移動量を検出し、前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における車幅方向の移動量に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項7に記載の車両用減速制御装置。
【請求項9】
前記車両状態量検出手段は自車両の上下方向の移動量を検出し、前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における上下方向の移動量に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項7又は8に記載の車両用減速制御装置。
【請求項10】
前記進行度合算出手段は、自車両の走行位置から前記推奨経路上のカーブ開始点までの距離に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3乃至9の何れか一項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項11】
前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上のカーブの曲率半径に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3乃至10の何れか一項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項1】
自車両の車速を検出する車速検出手段と、自車両の走行位置を検出する自車位置検出手段と、自車両が走行する道路情報を有する道路情報提供手段と、前記自車位置検出手段で検出された走行位置と前記道路情報提供手段で提供された道路情報とに基づいて自車両が走行すべき推奨経路を選択する推奨経路選択手段と、少なくとも自車両の走行位置に基づいて前記推奨経路への自車両の進行度合を算出する進行度合算出手段と、前記進行度合算出手段で算出された進行度合と前記推奨経路の道路情報と前記車速検出手段で検出された車速とに基づいて自車両を減速する減速制御を行う減速制御手段とを備えていることを特徴とする車両用減速制御装置。
【請求項2】
前記減速制御手段は、前記進行度合算出手段で算出された進行度合が大きいほど、前記減速制御を作動し易くすることを特徴とする請求項1に記載の車両用減速制御装置。
【請求項3】
前記進行度合算出手段は、自車両が分岐点を通過して前記推奨経路側に進入したとき、自車両が分岐点手前を走行しているときと比較して当該推奨経路側への進行度合を大きく算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用減速制御装置。
【請求項4】
前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における自車速の減速量に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3に記載の車両用減速制御装置。
【請求項5】
操舵角を検出する操舵角検出手段を有し、前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における操舵角の変化に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3又は4に記載の車両用減速制御装置。
【請求項6】
方向指示器による方向指示操作を検出する方向指示操作検出手段を有し、前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における方向指示操作に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3乃至5の何れか一項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項7】
自車両の状態量を検出する車両状態量検出手段を有し、前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における車両状態量に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3乃至6の何れか一項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項8】
前記車両状態量検出手段は自車両の車幅方向の移動量を検出し、前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における車幅方向の移動量に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項7に記載の車両用減速制御装置。
【請求項9】
前記車両状態量検出手段は自車両の上下方向の移動量を検出し、前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上の分岐点近傍の所定範囲内における上下方向の移動量に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項7又は8に記載の車両用減速制御装置。
【請求項10】
前記進行度合算出手段は、自車両の走行位置から前記推奨経路上のカーブ開始点までの距離に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3乃至9の何れか一項に記載の車両用減速制御装置。
【請求項11】
前記進行度合算出手段は、前記推奨経路上のカーブの曲率半径に応じて、当該推奨経路側への進行度合を算出することを特徴とする請求項3乃至10の何れか一項に記載の車両用減速制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−59095(P2006−59095A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239684(P2004−239684)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】
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