説明

車両用熱交換器における遮熱板の取付構造

【課題】 別体の締結部品を必要とすることなしに、僅かな作業スペースがあれば遮熱板の取り付けを容易かつ迅速に行うことができ、作業能率の向上とコスト低減化を可能にする。
【解決手段】 ゴム等の弾性材料で構成された遮熱板2の取付部には車体側の遮熱板取付部に形成された係合孔7に対し弾性的に係合する係合突起6が一体に形成され、係合突起6はその基部側から係合孔7の内径と略同一外径の小径軸部6aと係合孔7の内径より大径の係合部kを有する先細り状の大径係合部6bと係合孔7の内径より小径の引き込み用摘み部6cとを備え、かつ、係合突起6における小径軸部6aと大径係合部6bの軸心部には外気と連通する中空部6dが形成され、係合孔7に差し込んだ引き込み用摘み部6cを反対側から摘んで引っ張って大径係合部を6b係合孔7に引き込んで通過させることにより係合孔7の開口縁部に大径係合部6bを係合させた状態で遮熱板2を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用熱交換器における遮熱板の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンルーム内の高温空気は、アイドリング時に熱交換器の前面にまで回り込んでくるため、熱交換器の外周に遮熱板を幾種も設定し、これをラジエータコアサポート等に対し取り付けることにより遮熱が行われていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−253230号公報 (明細書(3)頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来は、上述のような遮熱板を、ラジエータコアサポート等に対し、クリップやボルト等で取り付けが行われていたため、以下に述べるような問題点があった
即ち、遮熱板の他に、クリップやボルト等の締結部品が必要であるため、部品点数の増加によりコストが高く付くと共に、クリップやボルトで締結を行うためには、所定の作業スペースが必要であるため、この作業スペースを確保することが困難な箇所への対応に苦慮するという問題点がある。
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、別体の締結部品を必要とすることなしに、僅かな作業スペースがあれば遮熱板の取り付けを容易かつ迅速に行うことができ、これにより、作業能率の向上とコスト低減化が可能な車両用熱交換器における遮熱板の取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造は、ゴム等の弾性材料で構成された遮熱板の取付部には車体側の遮熱板取付部に形成された係合孔に対し弾性的に係合する係合突起が一体に形成され、該係合突起は、その基部側から前記係合孔の内径と略同一外径の小径軸部と該小径軸部の先端側に前記係合孔の内径より大径の係合部を有する先細り状の大径係合部と該大径係合部の先端に前記係合孔の内径より小径の引き込み用摘み部とを備えた構造に形成され、前記係合突起における前記小径基部と大径係合部の軸心部には外気と連通する中空部が形成され、前記係合孔に差し込んだ前記引き込み用摘み部を反対側から摘んで引っ張って前記大径係合部を前記係合孔に引き込んで通過させることにより該係合孔の開口縁部に対し大径係合部を係合させた状態で前記遮熱板の取り付けが行われるように構成されていることを特徴とする手段とした。
【0007】
請求項2記載の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造は、請求項1に記載の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造において、前記中空部を前記遮熱板における前記係合突起の突出方向とは反対側の面で開口させることにより前記中空部が外気と連通されていることを特徴とする手段とした。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造では、上述のように、ゴム等の弾性材料で構成された遮熱板の取付部には車体側の遮熱板取付部に形成された係合孔に対し弾性的に係合する係合突起が一体に形成され、該係合突起は、その基部側から係合孔の内径と略同一外径の小径軸部と該小径軸部の先端側に前記係合孔の内径より大径の係合部を有する先細り状の大径係合部と該大径係合部の先端に前記係合孔の内径より小径の引き込み用摘み部とを備えた構造に形成され、係合孔に差し込んだ引き込み用摘み部を反対側から摘んで引っ張って大径係合部を係合孔に引き込んで通過させることにより該係合孔の開口縁部に対し大径係合部を係合させた状態で遮熱板の取り付けが行われるように構成されたことで、僅かな作業スペースがあれば遮熱板の取り付けを容易かつ迅速に行うことができ、これにより、作業能率の向上が図れるようになる。
【0009】
また、クリップやボルト等の別体の締結部品を必要としないため、コスト低減化が可能になる。
また、前記係合突起における小径基部と大径係合部の軸心部には外気と連通する中空部が形成されることにより、係合孔に対する大径係合部の通過を容易にしつつ、係合強度を高めることができるようになる。
【0010】
請求項2記載の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造では、前記中空部を遮熱板における係合突起の突出方向とは反対側の面で開口させることにより中空部が外気と連通されている構成としたことで、成形型との関係で中空部を有する係合突起の一体成形が容易になると共に、大径係合部が縮小する方向に変形し易くなるため、係合孔に対する大径係合部の通過をより容易に行うことができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下にこの発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
この実施例の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造は、請求項1および2に記載の発明に対応する。
まず、この実施例の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は遮熱板取り付け前のラジエータコアサポートを示す車両前方からの斜視図、図2は遮熱板取り付け前のラジエータコアサポートの要部を示す車両後方からの斜視図、図3は遮熱板を示す側面図、図4は遮熱板を示す車両後方からの斜視図、図5はこの実施例の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造の要部を示す車両前方からの斜視図、図6は同遮熱板の取付構造の要部を示す車両後方からの斜視図、図7は同遮熱板の取付構造を示す車両後方からの要部拡大斜視図、図8は図7のA−A線における拡大断面図である。
この車両用熱交換器における遮熱板の取付構造は、ラジエータコアサポート(遮熱板取付部)1と、遮熱板2と、を主な構成として備えている。
【0014】
さらに詳述すると、前記ラジエータコアサポート1は、図1に示すように、車幅方向に伸びるラジエータコアアッパ11と、このラジエータコアアッパ11に並設するラジエータコアロア12と、前記ラジエータコアアッパ11とラジエータコアロア12の略中央部を上下方向に結合するフードロックステイ13と、前記ラジエータコアアッパ11とラジエータコアロア12の両側部同士を上下方向に結合するラジエータコアサイド14、14と、前記ラジエータコアアッパ11の両端部から車両後方側に伸びるラジエータコアアッパサイド部15、15と、を主要な構成として全体が金属で形成されている。
【0015】
そして、前記左右両ラジエータコアアッパサイド15、15の下面側と左右両ラジエータコアサイド14、14の外側には、前記遮熱板2を取り付けるためのフランジ部3、4がそれぞれ備えられている。
また、前記ラジエータコアロア12の上端縁部には、図2に示すように、車両前方へ向けて折曲されたフランジ部5が形成されている。
【0016】
前記遮熱板2は、図3、4に示すように、ゴム等の弾性材料により、前記左右両ラジエータコアサイド14、14の外側で左右両ラジエータコアアッパサイド15、15とラジエータコアロア12との間を閉塞可能な広さを有する薄板状に形成され、前記フランジ部3と対向する上縁部に1箇所と、前記フランジ部4と対向する内側縁部に2箇所に、それぞれ係合突起6が一体に形成されている。
そして、図1、2に示すように、各係合突起6の位置に対応する前記フランジ部3、4には、係合突起6を係合させるための係合孔7が形成されている。
【0017】
前記各係合突起6は、図8の詳細拡大断面図に示すように、その基部側から係合孔7の内径と略同一外径の小径軸部6aと該小径軸部6aの先端側に係合孔7の内径より大径の係合部kを有する先細り状の大径係合部6bと該大径係合部6bの先端に係合孔7の内径より小径の引き込み用摘み部6cとを備えた構造に形成されると共に、小径軸部6aと大径係合部6bの軸心部には、遮熱板2における係合突起6の突出方向とは反対側の面に開口する中空部6dが形成されている。
【0018】
また、前記遮熱板2の下端縁部には、図3、4、9、10に示すように、ラジエータコアロア12の上端縁部に車両前方へ向けて折曲形成されたフランジ部5に対し装着係止可能な係止溝8が形成されている。
【0019】
この係止溝8は、遮熱板2の下端縁部の後面に一体に突出形成された2本の突条8a、8b間にできる隙間で構成されている。そして、上方の突条8aより下方の突条8bが高く形成されることにより、係止溝8における上側の内壁面81より下側の内壁面82が車両後方へ向けて長く形成されると共に、係止溝8における下側の内壁面の開口縁部にテーパ部83が形成された構成となっている。
【0020】
また、前記遮熱板2の車両後方面で上側の突条8aの上方には、該上側の突条8aの先端面と同一の高さで上方へ向けて連なる3本のリブ21が一体に形成されている。
【0021】
この実施例1では、上述のように構成されるため、前記遮熱板2取り付けに際しては、まず、図9に示すように、遮熱板2の下端縁部に形成された係止溝8をラジエータコアロア12の上端縁部に車両前方へ向けて折曲形成されたフランジ部5に対し押し付けて装着係止させることにより、遮熱板2の下端縁部がラジエータコアロア12に対し取り付けられた状態となる(図5、6参照)。
【0022】
さらに、フランジ部5に対する係止溝8の装着手順を図10の工程を示す断面図に基づいて説明する。
まず、図10(イ)に示すように、遮熱板2を一端大きく下方へ差し込み、次に、同図(ロ)に示すように、リブ21がフランジ部5に当接するまで遮熱板2を車両後方へ移動させた状態で、同図(ハ)に示すように、遮熱板2を上方へスライドさせてフランジ部5に下側の突条8bが当接した時点で、遮熱板2の下端縁部を車両後方へ向けて押圧することにより、同図(ニ)に示すように、フランジ部5に対し係止溝8を装着することができる。
【0023】
次に、前記遮熱板2の上端縁部および内側縁部を取り付けるには、ラジエータコアサポート1の車両前方側から各係合孔7に対し各係合突起6の引き込み用摘み部6cを差し込み、この引き込み用摘み部6cを反対側(車両後方側)から摘んで引っ張って大径係合部6bを係合孔7に引き込んで通過させることにより、係合孔7の開口縁部に対し大径係合部6bが係合して抜けが阻止された状態となるもので、これにより、遮熱板2の上端縁部と内側縁部とがラジエータコアアッパサイド15とラジエータコアサイド14に対し取り付けられた状態となる(図5、6参照)。
【0024】
次に、この実施例の作用・効果を説明する。
この実施例では、上述のように遮熱板2に一体に形成された係合突起6を係合孔7に差し込んで引っ張るという簡単な操作で取り付け行うことができるため、僅かな作業スペースがあれば遮熱板2の取り付けを容易かつ迅速に行うことができ、これにより、作業能率の向上が図れるようになる。
【0025】
また、前記係合突起6における小径軸部6aと大径係合部6bの軸心部には外気と連通する中空部6dが形成されることにより、係合孔7に対する大径係合部6bの通過を容易にしつつ、係合強度を高めることができるようになる。
【0026】
また、前記中空部6dを遮熱板2における係合突起6の突出方向とは反対側の面で開口させることにより中空部6dが外気と連通されている構成としたことで、成形型との関係で中空部6dを有する係合突起6の一体成形が容易になると共に、大径係合部6dの係合部kが縮小する方向に変形し易くなるため、係合孔7に対する大径係合部6bの通過をより容易に行うことができるようになる。
【0027】
この実施例1では、上述のように、遮熱板2がゴム等の弾性材料で構成され、ラジエータコアロア12の上端縁部にはフランジ部5が車両前方へ向けて折曲形成されていて、遮熱板2の下端縁部には車両後方へ向けて開口する係止溝8が形成され、係止溝8をフランジ部5に装着係止させることにより遮熱板2の下端縁部の取り付けが成されている構成としたことで、係止溝8をフランジ部5に装着係止するという簡単な操作で取り付け行うことができるため、僅かな作業スペースがあれば遮熱板の取り付けを容易かつ迅速に行うことができ、これにより、作業能率の向上が図れるようになる。
【0028】
また、前記係止溝8はその上側の内壁面81より下側の内壁面82が車両後方へ向けて長く形成されることにより、フランジ部5に対する係止溝8の位置合わせが容易に行えるようになる。
【0029】
また、前記係止溝8における下側の内壁面82の開口縁部にテーパ部83が形成されている構成としたことにより、フランジ部5に対する係止溝8の装着を容易に行うことができるようになる。
また、遮熱板2の取り付けにクリップやボルト等の別体の締結部品を一切必要としないため、コストの低減化が可能になる。
【0030】
以上本実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、実施例では、ラジエータコアサポート1が金属で形成されている例を示したが、その全部または一部が樹脂で構成されたものにも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】遮熱板取り付け前のラジエータコアサポートを示す車両前方からの斜視図である。
【図2】遮熱板取り付け前のラジエータコアサポートの要部を示す車両後方からの斜視図である。
【図3】遮熱板を示す側面図である。
【図4】遮熱板を示す車両後方からの斜視図である。
【図5】この実施例の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造の要部を示す車両前方からの斜視図である。
【図6】この実施例の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造の要部を示す車両後方からの斜視図である。
【図7】この実施例の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造を示す車両後方からの要部拡大斜視図である。
【図8】図7のA−A線における拡大断面図である。
【図9】遮熱板の取り付け方法を示す斜視図である。
【図10】遮熱板の取り付け工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 ラジエータコアサポート(遮熱板取付部)
11 ラジエータコアアッパ
12 ラジエータコアロア
13 フードロックステイ
14 ラジエータコアサイド
15 ラジエータコアアッパサイド
2 遮熱板
21 リブ
3 フランジ部
4 フランジ部
5 フランジ部
6 係合突起
6a 小径軸部
6b 大径係合部
6c 引き込み用摘み部
6d 中空部
7 係合孔
8 係止溝
8a 上側の突条
8b 下側の突条
81 上側の内壁面
82 下側の内壁面
83 テーパ部
k 係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム等の弾性材料で構成された遮熱板の取付部には車体側の遮熱板取付部に形成された係合孔に対し弾性的に係合する係合突起が一体に形成され、
該係合突起は、その基部側から前記係合孔の内径と略同一外径の小径軸部と該小径軸部の先端側に前記係合孔の内径より大径の係合部を有する先細り状の大径係合部と該大径係合部の先端に前記係合孔の内径より小径の引き込み用摘み部とを備えた構造に形成され、
前記係合突起における前記小径基部と大径係合部の軸心部には外気と連通する中空部が形成され、
前記係合孔に差し込んだ前記引き込み用摘み部を反対側から摘んで引っ張って前記大径係合部を前記係合孔に引き込んで通過させることにより該係合孔の開口縁部に対し大径係合部を係合させた状態で前記遮熱板の取り付けが行われるように構成されていることを特徴とする車両用熱交換器における遮熱板の取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用熱交換器における遮熱板の取付構造において、前記中空部を前記遮熱板における前記係合突起の突出方向とは反対側の面で開口させることにより前記中空部が外気と連通されていることを特徴とする車両用熱交換器における遮熱板の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−27318(P2006−27318A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−204999(P2004−204999)
【出願日】平成16年7月12日(2004.7.12)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】