説明

車両用空調装置

【課題】暖房性能を確保しつつ、自動車の燃費効率の悪化を抑制する。
【解決手段】目標吹出温度(TAO)が30℃よりも低温の場合、あるいは水温センサ75にて検出した冷却水温(TW)が設定冷却水温(TWS)よりも高温の場合には、走行用エンジン1が始動されない。目標吹出温度(TAO)が30℃以上で、且つ水温センサ75にて検出した冷却水温(TW)が設定冷却水温(TWS)未満の場合には、エンジン始動装置3によって走行用エンジン1を始動させる。したがって、冷却水温度が早期に上昇する。設定冷却水温(TWS)の最大値(ガード値)は、補助暖房レベルが高くなる程、低くなる。したがって、補助暖房レベルが高くなる程、走行用エンジン1が始動し難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの廃熱を利用して車室内の空気を加熱する車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハイブリット自動車の空調装置において、内気温センサおよび外気温センサからのセンサ信号等に基づいて、水温センサにて検出した走行用エンジンの冷却水温が低くても、車室内を暖房する必要があるか否かを判定する。そして、車室内を暖房する必要があると判定した場合には、ハイブリッド自動車の運転状態が発進時または低速走行時であっても、走行用エンジンを作動させることにより、走行用エンジンのウォータジャケット内で充分に暖められた冷却水をヒータコア内に供給して、車室内を暖房するようにするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−278569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述の空調装置では、車室内を暖房する必要があると判定した場合には、走行用エンジンを作動させることにより、暖房能力を確保できるものの、燃費の悪化を招いていた。
【0004】
本発明は、上記点に鑑み、暖房性能を確保しつつ、燃費効率の悪化を抑制するようにした車両用空調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明では、エンジンの冷却水を熱源として車室内の空気を加熱する主加熱装置(51)と、前記エンジンの廃熱以外の熱源を用いて車室内の空気を加熱する補助加熱装置(7b、7c、7d)と、前記エンジンの冷却水の温度が閾値よりも低いと判定したとき、前記エンジンの始動を要求する要求信号を出力する信号出力手段(S23)と、を備える車両用空調装置であって、
前記補助加熱装置の作動状態に基づいて、前記補助加熱装置の発熱量が増加するほど前記閾値を下げるように調整する調整手段(S302、S302C、S1002)を備えることを第1の特徴とする。
【0006】
したがって、補助加熱装置の発熱量が増加する程、エンジンの冷却水の温度が閾値よりも低いと判定し難くなるので、エンジンの始動を要求する要求信号を出力し難くなる。これに伴い、エンジンの始動が行われ難くなるので、暖房性能を確保しつつ、燃費の悪化を抑制できる。
【0007】
本発明では、車室内に吹き出す吹出口(18〜20)を有する空調ケース(10)と、前記空調ケース内に配置され、前記吹出口に向けて送風する送風機(30)と、前記空調ケース内に配置され、前記送風機からの送風空気を冷却する冷却装置(45)と、エンジンの冷却水を熱源として前記冷却装置からの冷風を加熱する主加熱装置(51)と、前記冷風に対して前記主加熱装置から加える熱量を調整して、前記吹出口から車室内に吹き出す空気温度を調整する温度調整手段(52)と、前記車室内の環境状態を検出する検出手段(71〜75)と、前記検出手段の検出値に基づいて、前記車室内の空気温度を設定温度に維持するために必要である前記吹出口から目標吹出温度(TAO)を算出する算出手段(S4)と、前記吹出口からの吹出空気温度を前記目標吹出温度に近づけるように前記温度調整手段を制御する温度制御手段(S10)と、前記エンジンの廃熱以外の熱源を用いて車室内の空気を加熱する補助加熱装置(7b、7c、7d)と、前記目標吹出温度が高くなるほど、高い回転数で前記エンジンを回転させるように要求する要求信号を出力する信号出力手段(7)と、前記補助加熱装置の発熱量が増加するほど前記要求するエンジン回転数が下げるように設定されていることを第2の特徴とする。
【0008】
したがって、目標吹出温度が高くなるほど、高い回転数でエンジンを回転させるように要求する要求信号を出力する。これに伴い、目標吹出温度が高くなる程、エンジンの廃熱が増えるので、主加熱装置から発生する熱量が増加する。このため、暖房性能を確保することができる。
【0009】
また、補助加熱装置の発熱量が増加するほど前記要求するエンジン回転数が下げるように設定されているので、燃費効率の悪化を抑制できる。
【0010】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1実施形態)
図1〜図3は、本発明の車両用空調装置をハイブリット自動車に適用した実施形態を示したもので、図1はハイブリッド自動車の概略構成を示した図で、図2はハイブリッド自動車用空調装置の全体構成を示した図で、図3はハイブリッド自動車用空調装置の制御系を示した図である。
【0012】
本実施形態のハイブリッド自動車5は、走行用エンジン1、走行用電動モータ2、エンジン始動装置3、バッテリ4、エアコンユニット6、エアコンECU7、シートECU7A、切替設定器7a、シート空調ユニット7b、ハイブリットECU8、およびエンジンECU9を備えている。
【0013】
走行用エンジン1は、ハイブリッド自動車5の車軸に係脱自在に駆動連結されている。走行用電動モータ2は、ハイブリッド自動車5の車軸に係脱自在に駆動連結され、走行用エンジン1と車軸とが連結していない時に車軸と連結されるようになっている。
【0014】
走行用電動モータ2は、ハイブリッドECU8により自動制御(例えばインバータ制御)されるように構成されている。エンジン始動装置3は、走行用エンジン1を始動させる。エンジンECU9は、ハイブリッド自動車5の走行およびバッテリ4の充電が必要な時に、エンジン始動装置3を通電制御して走行用エンジン1を稼働する。ハイブリットECU8は、エンジンECU9と通信して、ガソリン(燃料)の燃焼効率が最適になるように、走行時に必要に応じて走行用エンジン1を停止して走行用電動モータ2を稼働させる。
【0015】
シート空調ユニット7bは、シート表面の各孔から乗員に向けて温風、或いは冷風を吹き出す周知の空調機(補助暖房装置)であって、送風機と、送風機からの送風空気を加熱、或いは冷却するペルチェ素子とからなる。シートECU7Aは、ペルチェ素子に印加する電圧の極性を切り替えることにより、送風空気に対して加熱するか冷却するかを切り替える。シートECU7Aは、ペルチェ素子に印加する電圧レベルを調整して、送風空気に対する加熱量(或いは吸熱量)を調整する。切替設定器7aは、乗員による操作により、シート空調ユニット7bの冷暖房の切替、冷房レベルの調整、および暖房レベルの調整を実施する。
【0016】
エアコンユニット6は、図2に示すように、車室内に空調空気を導く空気通路を形成する空調ケース10、空調ケース10内において空気流を発生させる遠心式送風機30、空調ケース10内を流れる空気を冷却するための冷凍サイクル40、および空調ケース10内を流れる空気を加熱するための冷却水回路50等から構成されている。
【0017】
空調ケース10は、ハイブリッド自動車5の車室内の前方側に配設されている。その空調ケース10の最も上流側(風上側)は、吸込口切替箱(内外気切替箱)を構成する部分で、車室内空気(以下内気と言う)を取り入れる内気吸込口11、および車室外空気(以下外気と言う)を取り入れる外気吸込口12を有している。
【0018】
内気吸込口11および外気吸込口12の内側には、内外気(吸込口)切替ダンパ13が回動自在に取り付けられている。この内外気切替ダンパ13は、サーボモータ等のアクチュエータ14により駆動されて、吸込口モードを内気循環モード、外気導入モード等に切り替える。
【0019】
空調ケース10の最も下流側(風下側)には、吹出口切替箱を構成する部分で、デフロスタ(DEF)開口部、フェイス(FACE)開口部およびフット(FOOT)開口部が形成されている。そして、DEF開口部には、デフロスタダクト15が接続されて、このデフロスタダクト15の最下流端には、ハイブリッド自動車5のフロント窓ガラスの内面に向かって主に温風を吹き出すデフロスタ(DEF)吹出口18が開口されている。
【0020】
FACE開口部には、フェイスダクト16が接続されて、このフェイスダクト16の最下流端には、乗員の頭胸部に向かって主に冷風を吹き出すフェイス(FACE)吹出口19が開口している。さらに、FOOT開口部には、フットダクト17が接続されて、このフットダクト17の最下流端には、乗員の足元部に向かって主に温風を吹き出すフット(FOOT)吹出口20が開口されている。
【0021】
各吹出口の内側には、2個の吹出口切替ダンパ21が回動自在に取り付けられている。2個の吹出口切替ダンパ21は、サーボモータ等のアクチュエータ22によりそれぞれ駆動されて、吹出口モードをフェイス(FACE)モード、バイレベル(B/L)モード、フット(FOOT)モード、フットデフ(F/D)モードまたはデフロスタ(DEF)モードのいずれに切り替える。
【0022】
遠心式送風機30は、空調ケース10と一体的に構成されたスクロールケースに回転自在に収容された遠心式ファン31、およびこの遠心式ファン31を回転駆動するブロワモータ32を有している。ブロワモータ32は、ブロワ駆動回路33を介して印加されるブロワ端子電圧(以下ブロワ電圧と言う)に基づいて、送風量(遠心式ファン31の回転速度)が制御される。
【0023】
冷凍サイクル40は、走行用エンジン1にベルト駆動されて冷媒を圧縮するコンプレッサ41、圧縮された冷媒を凝縮液化させるコンデンサ(冷媒凝縮器)42、凝縮液化された冷媒を気液分離して液冷媒のみを下流に流すレシーバ(受液器、気液分離器)43、液冷媒を減圧膨張させるエキスパンションバルブ(膨張弁)44、減圧膨張された冷媒を蒸発気化させるエバポレータ(冷却装置)45、およびこれらを環状に接続する冷媒配管等から構成されている。
【0024】
このうち、エバポレータ45は、空調ケース10内に配設され、自身を通過する空気を冷却する空気冷却作用および自身を通過する空気を除湿する空気除湿作用を行う室内熱交換器である。また、コンプレッサ41には、走行用エンジン1からコンプレッサ41への回転動力の伝達を断続するクラッチ手段としての電磁クラッチ46が連結されている。この電磁クラッチ46は、クラッチ駆動回路47により制御される。
【0025】
電磁クラッチ46が通電(ON)された時に、走行用エンジン1の回転動力がコンプレッサ41に伝達されて、エバポレータ45による空気冷却作用が行われ、電磁クラッチ46の通電が停止(OFF)した時に、走行用エンジン1とコンプレッサ41とが遮断され、エバポレータ45による空気冷却作用が停止される。
【0026】
ここで、コンデンサ42は、ハイブリッド自動車5が走行する際に生じる走行風を受け易い場所に配設され、内部を流れる冷媒と冷却ファン48により送風される外気および走行風とを熱交換する室外熱交換器である。
【0027】
冷却水回路50は、図示しないウォータポンプによって、走行用エンジン1のウォータジャケットで暖められた冷却水を循環させる回路で、ラジエータ、サーモスタット(いずれも図示せず)およびヒータコア51を有している。このヒータコア51は、本発明の主加熱装置に相当するもので、内部に走行用エンジン1を冷却した冷却水が流れ、この冷却水を暖房用熱源として冷風を再加熱する。
【0028】
ヒータコア51は、空気通路を部分的に塞ぐように空調ケース10内においてエバポレータ45よりも下流側に配設されている。ヒータコア51の空気上流側には、エアミックスダンパ52が回動自在に取り付けられている。エアミックスダンパ52は、サーボモータ等のアクチュエータ53に駆動されて、その停止位置によって、ヒータコア51を通過する空気量とヒータコア51を迂回する空気量との割合を調節して、車室内へ吹き出す空気の吹出温度を調整する温度調整手段を構成する。
【0029】
次に、本実施態様の制御系の構成を図1、図3および図4に基づいて説明する。エアコンECU7には、エンジンECU9から出力される通信信号、車室内前面に設けられたコントロールパネル60上の各スイッチからのスイッチ信号、および各センサからのセンサ信号が入力される。
【0030】
ここで、コントロールパネル60上の各スイッチとは、図4に示したように、冷凍サイクル40(コンプレッサ41)の起動および停止を指令するためのエアコン(A/C)スイッチ61、吸込口モードを切り替えるための吸込口切替スイッチ62、車室内の温度を所望の温度に設定するための温度設定レバー63、遠心式ファン31の送風量を切り替えるための風量切替レバー64、および吹出口モードを切り替えるための吹出口切替スイッチ等である。
【0031】
この吹出口切替スイッチには、FACEモードに固定するためのフェイス(FACE)スイッチ65、B/Lモードに固定するためのバイレベル(B/L)スイッチ66、FOOTモードに固定するためのフット(FOOT)スイッチ67、F/Dモードに固定するためのフットデフ(F/D)スイッチ68、およびDEFモードに固定するためのデフロスタ(DEF)スイッチ69等がある。
【0032】
上記各センサは、図3に示すように、車室内の空気温度(内気温度)を検出する内気温センサ71、車室外の空気温度(外気温度)を検出する外気温センサ72、車室内に照射される日射量を検出する日射センサ73、エバポレータ45の空気冷却度合を検出するエバ後温度センサ74、およびヒータコア51に流入する冷却水の温度(冷却水温)を検出する水温センサ75等がある。なお、上記各センサは、特許請求範囲に記載の検出手段に相当する。
【0033】
エアコンECU7は、図示しないCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータを備え、各センサ71〜75からのセンサ信号は、エアコンECU7内の図示しない入力回路によってA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0034】
また、エンジンECU9には、ハイブリッド自動車5の運転状態を検出する運転状態検出手段としての各センサ信号や、エアコンECU7およびハイブリッドECU8からの通信信号が入力される。センサとしては、エンジン回転速度センサ、車速センサ、スロットル開度センサ、バッテリ電圧計および冷却水温センサ(いずれも図示せず)等が使用される。そして、エンジンECU9の内部には、図示しないCPU、ROM、RAM等からなるマイクロコンピュータが設けられ、各センサからのセンサ信号は、エンジンECU9内の図示しない入力回路によってA/D変換された後にマイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0035】
次に、本実施形態のエアコンECU7の制御処理を図5〜図12に基づいて説明する。図5はエアコンECU7による基本的な制御処理を示したフローチャートである。
【0036】
先ず、イグニッションスイッチがON(オン)されてエアコンECU7に直流電源が供給されると、図5のルーチンが起動され、各イニシャライズを行う(ステップS1)。続いて、温度設定レバー63等の各スイッチからスイッチ信号を読み込む(ステップS2)。
【0037】
続いて、内気温センサ71、外気温センサ72、日射センサ73、エバ後温度センサ74および水温センサ75からセンサ信号をA/D変換した信号を読み込む(ステップS3)。
【0038】
次に、切替設定器7aにより設定される能力設定スイッチ位置を読み込む(ステップS300)。能力設定スイッチ位置とは、暖房レベルの「大」、「中」、「小」、冷房レベルの「大」、「中」、「小」、および「停止」のうち1つが選択設定される。
【0039】
ここで、暖房の「大」とは、送風空気に対する加熱量が最も大きい暖房モードを示し、暖房の「中」とは、送風空気に対する加熱量が中間レベルである暖房モードを示し、暖房の「小」とは、送風空気に対する加熱量が最も少ない暖房モードを示す。
【0040】
冷房の「大」とは、送風空気から吸熱する吸熱量が最も大きい冷房モードを示し、冷房の「中」とは、送風空気から吸熱する吸熱量が中間レベルである冷房モードを示し、冷房の「小」とは、送風空気から吸熱する吸熱量が最も少ない冷房モードを示す。「停止」とは、冷房および暖房を停止するモードである。
【0041】
次に、シート空調ユニット7b(補助暖房装置)の能力判定を行う(ステップS301)。すなわち、暖房の「大」が設定されているときには、補助暖房レベル=3とし、暖房の「中」が設定されているときには、補助暖房レベル=2とし、暖房の「小」が設定されているときには、補助暖房レベル=1とし、「停止」および冷房の「大、中、小」が設定されているときには、補助暖房レベル=0とする。補助暖房レベルは、後述する走行用エンジン1のONを要求するか否かの判定(S8)に用いられる。
【0042】
続いて、予めROMに記憶された下記の数式1に基づいて車室内に吹き出す空気の目標吹出温度(TAO)を算出する(ステップS4)。
【0043】
TAO=Kset×Tset−KR×TR
−KAM×TAM−KS×TS+C…(数式1)
なお、Tsetは温度設定レバー63にて設定した設定温度、TRは内気温センサ71にて検出した内気温度、TAMは外気温センサ72にて検出した外気温度、TSは日射センサ73にて検出した日射量である。Kset、KR、KAMおよびKSはゲインで、Cは補正用の定数である。
【0044】
続いて、予めROMに記憶された特性図(図6参照)から、水温センサ75にて検出した冷却水温(TW)に対応するブロワ電圧を決定するウォームアップ制御(ブロワ遅動制御)を行う。このウォームアップ制御は、外気温度の低い冬期や、吹出口モードがB/LモードまたはFOOTモード時に実行される。
【0045】
そして、冷却水温(TW)が例えば60℃以上に上昇したら、予めROMに記憶された特性図(図7参照)から、目標吹出温度(TAO)に対応するブロワ電圧(ブロワモータ32に印加する電圧:V)を決定する(ステップS5)。
【0046】
続いて、予めROMに記憶された特性図(マップ、図8参照)から、目標吹出温度(TAO)に対応する吸込口モードを決定する(ステップS6)。吸込口モードの決定においては、目標吹出温度(TAO)が低い温度から高い温度にかけて、内気循環モード、外気導入モードとなるように決定される。
【0047】
内気循環モードとは、内外気切替ダンパ13を図2の一点鎖線位置に設定して、内気を内気吸込口11から吸い込む吸込口モードである。また、外気導入モードとは、内外気切替ダンパ13を図2の実線位置に設定して、外気を外気吸込口12から吸い込む吸込口モードである。
【0048】
ここで、吹出口モードは、コントロールパネル60上のFACEスイッチ65、B/Lスイッチ66、FOOTスイッチ67、F/Dスイッチ68またはDEFスイッチ69のいずれかの吹出口切替スイッチにより設定された吹出口モードに設定される。
【0049】
続いて、予めROMに記憶された下記の数式2に基づいてエアミックスダンパ52の目標ダンパ開度(SW)を算出する(ステップS7)。
【0050】
SW={(TAO−TE)/(TW−TE)}×100(%)…数式2
TEはエバ後温度センサ74にて検出したエバ後温度および水温センサ75にて検出した冷却水温である。
【0051】
そして、SW≦0(%)として算出されたとき、エアミックスダンパ52は、エバポレータ45からの冷風の全てをヒータコア51から迂回させる位置(MAXCOOL位置)に制御される。また、SW≧100(%)として算出されたとき、エアミックスダンパ52は、エバポレータ45からの冷風の全てをヒータコア51へ通す位置(MAXHOT位置)に制御される。
【0052】
さらに、0(%)<SW<100(%)として算出されたとき、エアミックスダンパ52は、エバポレータ45からの冷風の一部をヒータコア51に通し、冷風の残部をヒータコア51から迂回させる位置に制御される。
【0053】
続いて、次のステップS8で用いられる設定冷却水温(TWS)を求める(ステップS302)。設定冷却水温(TWS)は、図11に示すように、補助暖房レベル毎に異なるように設定されており、設定冷却水温(TWS)の詳細は後述する。なお、ステップS302は特許請求範囲に記載の「調整手段」に相当する。
【0054】
続いて、ステップS8において、走行用エンジン1(E/G)のONを要求するか否かの判定を行う。つまり、図10に示すサブルーチンがコールされ、エンジンECU9に、走行用エンジン1の始動を要求するエンジン作動要求(E/GON)信号を出力するか、走行用エンジン1の運転停止を要求するエンジン停止要求(E/GOFF)信号を出力するかを判定するエンジン作動要求判定を行う。判定処理の詳細は後述する。
【0055】
続いて、A/Cスイッチ61がONされている時に、コンプレッサ41の運転状態を決定する。すなわち、エバ後温度センサ74にて検出したエバ後温度(TE)に基づいて、コンプレッサ41の起動および停止を決定する(ステップS9)。具体的には、予めROMに記憶された特性図(図9参照)に示したように、エバ後温度センサ74にて検出したエバ後温度(TE)が第1着霜温度(例えば4℃)以上のときには、コンプレッサ41が起動(ON)するように電磁クラッチ46を通電制御(ON)して冷凍サイクル40を作動させる。つまり、エバポレータ45を作動させる。
【0056】
また、エバ後温度センサ74にて検出したエバ後温度(TE)が第1着霜温度よりも低温の第2着霜温度(例えば3℃)以下のときには、コンプレッサ41の作動が停止(OFF)するように電磁クラッチ46を通電制御(OFF)して冷凍サイクル40の作動を停止させる。つまり、エバポレータ45の空気冷却作用を停止させる。
【0057】
続いて、各ステップS5〜ステップS9にて算出または決定した各制御状態が得られるように、アクチュエータ14、22、53、ブロワ駆動回路33およびクラッチ駆動回路47に対して制御信号を出力する(ステップS10)。なお、ステップS10の制御処理が特許請求範囲に記載の温度制御手段に相当する。
【0058】
そして、ステップS11で、制御サイクル時間であるt(例えば0.5秒間〜2.5秒間)の経過を待ってステップS2の制御処理に戻る。
【0059】
次に、エンジン作動要求判定(S8)の制御処理を図10および図11に基づいて説明する。ここで、図10はエンジン作動要求判定の制御処理を示したフローチャートである。なお、この図10のフローチャートは、風量切替レバー64がAUTO位置に設定されている時に実行される。
【0060】
先ず、吹出口モードがB/LモードまたはFOOTモードに設定されているか否かを判定する。すなわち、B/Lスイッチ66またはFOOTスイッチ67が押されているか否かを判定する(ステップS21)。
【0061】
この判定結果がNOの場合には、ステップS24の制御処理に移行する。また、ステップS21の判定結果がYESの場合には、ブロワ遅動制御(ウォームアップ制御)中であるか否かを判定する(ステップS22)。この判定結果がYESの場合には、エンジンECU9に対してE/GON信号を送信する(ステップS23)。その後にこのサブルーチンを抜ける。
【0062】
また、ステップS22の判定結果がNOの場合には、ブロワモータ32がOFF(=送風量が0)されているか否かを判定する(ステップS24)。この判定結果がYESの場合には、エンジンECU9に対してE/GOFF信号を送信する(ステップS25)。その後にこのサブルーチンを抜ける。
【0063】
また、ステップS24の判定結果がNOの場合には、図5のステップS4で決定した目標吹出温度(TAO)が所定温度(例えば30℃)以上か否かを判定する(ステップS26)。この判定結果がNOの場合には、ステップS25の制御処理に移行して、エンジンECU9に対してE/GOFF信号を送信する。
【0064】
また、ステップS26の判定結果がYESの場合には、水温センサ75にて検出した冷却水温(TW)が設定冷却水温(TWS)以下か否かを判定する(ステップS27)。
【0065】
ステップS27の判定結果がNOの場合には、ステップS25の制御処理に移行して、エンジンECU9に対してE/GOFF信号を送信する。
【0066】
また、ステップS27の判定結果がYESの場合には、ステップS23の制御処理に移行して、エンジンECU9に対してE/GON信号を送信する。なお、ステップS27、S23が、特許請求範囲に記載の「前記エンジンの冷却水の温度が閾値よりも低いと判定したとき、前記エンジンの始動を要求する要求信号を出力する信号出力手段」を構成することになる。
【0067】
ここで、設定冷却水温(TWS)は、予めROMに記憶された特性図(図11参照)に示すように、目標吹出温度(TAO)および補助暖房レベルにより変わる。
【0068】
具体的には、補助暖房レベル=3のときには、30<TAO<T1(例えば、42)の場合には、設定冷却水温(TWS)は55から68(最高値)まで徐々に増加し、T1<TAOの場合には、設定冷却水温(TWS)は最高値(ガード値)68のまま一定になる。
【0069】
補助暖房レベル=2のときには、30<TAO<T2(例えば、48)の場合には、設定冷却水温(TWS)は55から70(最高値)まで徐々に増加し、T2<TAOの場合には、設定冷却水温(TWS)は最高値(ガード値)70のまま一定になる。
【0070】
補助暖房レベル=1のときには、30<TAO<T3(例えば、52)の場合には、設定冷却水温(TWS)は55から72(最高値)まで徐々に増加し、T1<TAOの場合には、設定冷却水温(TWS)は最高値(ガード値)72のまま一定になる。
【0071】
補助暖房レベル=0のときには、30<TAO<55の場合には、設定冷却水温(TWS)は55から75(最高値)まで徐々に増加し、T1<TAOの場合には、設定冷却水温(TWS)は最高値(ガード値)75のまま一定になる。
【0072】
本実施形態では、T1、T2、T3、55は、特許請求範囲に記載の第2温度に相当し、補助暖房レベル毎に異なる。以下、T1、T2、T3、55を総じて、Ty1とする。
【0073】
目標吹出温度(TAO)が中間温度(すなわち、30<TAO<Ty1)である場合には、TWSに対するTAOの傾き(TWS/TAO)が補助暖房レベルに関わらず、同一になっている。
【0074】
すなわち、目標吹出温度(TAO)が中間温度である場合には、補助暖房レベル毎の、TWSに対するTAOの傾き(TWS/TAO)がそれぞれ同一になっている。
【0075】
以上のように補助暖房レベル(すなわち、補助加熱装置の発熱量)が増加するほど、設定冷却水温(TWS)は下がるように設定されている。補助暖房レベル(すなわち、補助加熱装置の作動状態)に対応して、設定冷却水温(TWS:閾値)が選択され、水温センサ75の検出冷却水温(TW)が、前記選択された設定冷却水温(TWS)以下か否かが判定される。この判定結果に対してE/GOFF信号、或いはE/GON信号が送信されることになる。
【0076】
なお、E/GON信号は、特許請求範囲に記載の「前記エンジンの始動を要求する要求信号」に相当する。「30」(=目標吹出温度(TAO))が特許請求範囲に記載の第1の温度に相当する。
【0077】
次に、本実施形態のエンジンECU9の制御処理を図12に基づいて説明する。ここで、図12はエンジンECU9による基本的な制御処理を示したフローチャートである。
【0078】
先ず、イグニッションスイッチがON(オン)されてエンジンECU9に直流電源が供給されると、図12のルーチンが起動され、各イニシャライズおよび初期設定を行う(ステップS31)。続いて、各センサ信号を読み込む(ステップS32)。
【0079】
続いて、ハイブリッドECU8との通信(送信および受信)を行う(ステップS33)。続いて、エアコンECU7との通信(送信および受信)を行う(ステップS34)。続いて、各センサ信号に基づいて、走行用エンジン1のオン、オフを判定する(ステップS35)。この判定結果がONの場合には、始動用モータや点火装置を含むエンジン始動装置3に対して、走行用エンジン1を始動(ON)させるように制御信号を出力する(ステップS36)。その後にステップS32に戻る。
【0080】
また、ステップS35の判定結果がOFFの場合には、走行用エンジン1を始動することを要求するE/GON信号を、エアコンECU7から受信しているか否かを判定する(ステップS37)。この判定結果がNOの場合には、エアコンECU7からE/GOFF信号を受信していることになるため、エンジン始動装置3に対して、走行用エンジン1の作動を停止(OFF)させるように制御信号を出力する(ステップS38)。その後にステップS32に戻る。
【0081】
また、ステップS37の判定結果がYESの場合には、ステップS36に移行して、エンジン始動装置3に対して、走行用エンジン1を始動(ON)させるように制御信号を出力する。
【0082】
次に、本実施形態の空調装置の作用を説明する。
【0083】
本実施形態では、温度設定レバー63にて設定した設定温度(Tset)、内気温センサ71にて検出した内気温度(TR)、外気温センサ72にて検出した外気温度(TAM)および日射センサ73にて検出した日射量(TS)から、空調ケース10の吹出口から車室内に向けて吹き出される空気の目標吹出温度(TAO)が決定される。
【0084】
ここで、エアコンECU7で決定された目標吹出温度(TAO)が所定温度(例えば30℃)よりも低温の場合、あるいは水温センサ75にて検出した冷却水温(TW)が設定冷却水温(TWS)よりも高温の場合には、走行用エンジン1が始動されない。
【0085】
一方、目標吹出温度(TAO)が所定温度(例えば30℃)以上で、且つ水温センサ75にて検出した冷却水温(TW)が設定冷却水温(TWS)未満の場合には、エンジン始動装置3によって走行用エンジン1を始動させる。したがって、走行用エンジン1によりベルト駆動されるコンプレッサ41を起動させることができるので、冷凍サイクル40を作動させることができる。
【0086】
これに伴い、走行用エンジン1を運転することにより、走行用エンジン1のウォータジャケット内に還流する冷却水の温度が早期に上昇するので、ヒータコア51に供給される冷却水の温度が所定冷却水温(例えば80℃程度)に維持される。
【0087】
このため、空調ケース10内に吸い込まれる空気は、エバポレータ45を通過する際に例えば4℃程度まで冷やされた後に、ヒータコア51を通過する際に加熱(リヒート)されて、車室内に吹き出される。これにより、車室内に吹き出す空気を目標吹出温度(TAO)に早期に近づけることができる。
【0088】
本実施形態では、設定冷却水温(TWS)の最大値(ガード値)は、補助暖房レベルが高くなる程(すなわち、シート空調ユニット7bの発熱量が多くなる程)、低くなる。したがって、補助暖房レベルが高くなる程、走行用エンジン1が始動し難くなる。これに伴い、暖房性能を確保しつつ、ハイブリッド自動車5の燃費効率の悪化を抑制できる。
【0089】
(第2実施形態)
上述の第1実施形態では、図11に示すように、設定冷却水温(TWS)に対する目標吹出温度(TAO)の傾き(TWS/TAO)が補助暖房レベルに関わらず、同一になっている例について説明したが、これに代えて、図13に示すように、設定冷却水温(TWS)に対する目標吹出温度(TAO)の傾き(TWS/TAO)が補助暖房レベル毎に異なるように設定するようにしてもよい。
【0090】
具体的には、30<TAO<55の場合、傾き(TWS/TAO)が補助暖房レベル毎に異なり、55<TAOの場合、設定冷却水温(TWS)は、補助暖房レベル毎に異なる最高値(ガード値)になる。各最高値(75、72、70、68)は、それぞれ、上述の第1実施形態と同一である。
【0091】
これにより、補助暖房レベル毎に設定冷却水温(TWS)を詳細に設定することができるので、エンジン作動要求判定(S8)の処理を精度良く行うことができる。
【0092】
(第3実施形態)
上述の第1実施形態では、切替設定器7aがシートECU7Aに対して直接的に接続されて、切替設定器7aの出力信号がシートECU7Aに対して直接的に入力される例について説明したが、これに限らず、図14に示すように、切替設定器7aおよびシートECU7Aの間にエアコンECU7を介在させて、切替設定器7aの出力信号がエアコンECU7を介してシートECU7Aに対して入力されるようにしてもよい。
【0093】
(第4実施形態)
上述の第1実施形態では、本発明に係る補助暖房装置としてシート空調ユニット7bを用いる例について説明したが、これに代えて、本第4実施形態では、補助暖房装置としてステアリングヒータ7cを用いてよい。
【0094】
ステアリングヒータ7cは、ステアリングの外表面側に配置されるシート状の電気ヒータであり、ステアリングヒータ7cは、通電により、ステアリングの外表面側を加熱する。
【0095】
本実施形態では、図15に示すように、シートECU7Aに代えてステアリングヒータECU7Bが用いられており、ステアリングヒータECU7Bには切替設定器7aが接続されている。ステアリングヒータECU7Bは、切替設定器7aから出力信号に基づいて、ステアリングヒータ7cに流す電流を調整することにより、ステアリングヒータ7cから発生する発熱量(すなわち、暖房レベル)を「大」、「中」、「小」の三段階に切り替える。
【0096】
本実施形態の切替設定器7aは、操作により、暖房レベルを「大」、「中」、「小」の三段階に切り代え可能に構成されているだけで、冷房レベルの設定が操作されないようになっている。なお、図15において、図1と同一符号のものは、同一ものを示し、その説明を省略する。
【0097】
また、本実施形態では、エアコンECU7の制御処理としては図5に代えて、図16のフローチャートが用いられている。図16において、図5のステップS300に代わるステップS300A、ステップS301に代わるステップS301B、およびステップS302に代わるステップS302Cが用いられ、ステップS300A、301B、302C以外のステップSは、図5中の同一符号のステップSと同一であるので、説明を省略する。
【0098】
ステップS300Aにおいては、切替設定器7aにより設定される能力設定スイッチ位置(すなわち、暖房の「大」、「中」、「小」、「停止」)を読み込む。
【0099】
ステップS301Bでは、ステアリングヒータ7c(補助暖房装置)の能力判定を行う。すなわち、暖房の「大」が設定されているときには、補助暖房レベル=3とし、暖房の「中」が設定されているときには、補助暖房レベル=2とし、暖房の「小」が設定されているときには、補助暖房レベル=1とし、「停止」が設定されているときには、補助暖房レベル=0とする。
【0100】
ステップS302Cでは、上述の第1実施形態と同様、設定冷却水温(TWS)を求める。すなわち、設定冷却水温(TWS)は、図11に示す如く、補助暖房レベル毎に異なるように設定されている。なお、設定冷却水温(TWS)としては、図11に示す特性マップに代えて、図13に示す特性マップを用いても良い。
【0101】
(第5実施形態)
上述の第4実施形態では、図15に示すように、ステアリングヒータECU7Bに対して切替設定器7aが直接的に接続される例について説明したが、これに代えて、図17に示すように、ステアリングヒータECU7Bおよび切替設定器7aの間にエアコンECU7を介在させて、切替設定器7aの出力信号がエアコンECU7を介してステアリングヒータECU7Bに入力されるようにしてもよい。
【0102】
なお、図17において、図15と同一符号のものは、同一物を示し、そのものの説明を省略する。
【0103】
(第6実施形態)
上述の第1実施形態では、本発明に係る補助暖房装置としてシート空調ユニット7bを用いる例について説明したが、これに代えて、本第6実施形態では、補助暖房装置として、ヒータコア51に対して補助的に作動する電気ヒータ7dが用いられる。電気ヒータ7dは、図18に示すように、ヒータコア51の下流側に配置され、ヒータコア51を通過した温風を加熱する。
【0104】
電気ヒータ7dは、図19に示すように、ニクロム線等からなるヒータ線h1、h2、h3からなり、ヒータ線h1、h2、h3は、電源Baおよびグランドの間に並列に接続されている。ヒータ線h1、h2、h3のそれぞれに対して、スイッチ素子SW1、SW2、SW3が設けられ、スイッチ素子SW1、SW2、SW3は、そのオン、オフにより電源Baからヒータ線h1、h2、h3への通電、および通電停止を行う。スイッチ素子SW1、SW2、SW3のオン/オフは、エアコンECU7により制御される。
【0105】
また、本実施形態では、エアコンECU7の制御処理としては図5に代えて、図20のフローチャートが用いられている。図20において、ステップS1〜ステップS11は、図5のステップS1〜ステップS11と同一である。
【0106】
本実施形態では、ステップS1〜ステップS11の処理後、電気ヒータ7dの作動本数の算出処理(ステップS1000)を実施する。この算出処理では、図21に示すように、風量スイッチがONになっているか否かを判定する(S1001)。つまり、風量切替レバー64が、「OFF」以外の「AUTO」、「LO」、「ME」、「HI」に設定されているとき、風量スイッチがONになっているとして、YESと判定する。このとき、電気ヒータ7dの作動本数を冷却水温(TW)に基づいて算出する。
【0107】
図22の特性マップに示すように、冷却水温(TW)<71のとき、電気ヒータ7dの作動本数を3本とし、71<冷却水温(TW)<74のとき、電気ヒータ7dの作動本数を2本とし、74<冷却水温(TW)<77のとき、電気ヒータ7dの作動本数を1本とし、77<冷却水温(TW)のとき、電気ヒータ7dの作動本数を0本とする。
【0108】
なお、S1001において、風量切替レバー64が、「OFF」に設定されているとき、風量スイッチがOFFになっているとして、NOと判定して、電気ヒータ7dをOFF、すなわち作動本数を0本とする。
【0109】
このように、電気ヒータ7dの作動本数を決定すると、この決定本数に対応してスイッチ素子SW1、SW2、SW3のオン/オフする。これにより、電気ヒータ7dの作動本数に対応して、ヒータコア51の通過温風に対する発熱量が、変わることになる。
【0110】
また、電気ヒータ7dの作動本数の算出処理(ステップS1000)の処理後において、補助暖房装置の能力判定(ステップS1001)を実施する。すなわち、
電気ヒータ7dの作動本数が3本のときに補助暖房レベル=3とし、電気ヒータ7dの作動本数が2本のとき補助暖房レベル=2とし、電気ヒータ7dの作動本数が1本のとき補助暖房レベル=1とし、電気ヒータ7dの作動本数が0本のとき補助暖房レベル=0とする。
【0111】
次に、上述の第1実施形態と同様、補助暖房レベルに応じて設定冷却水温(TWS)を求める(ステップS1002)。その他の制御処理の説明は、第1実施形態と同様であるため、詳細を省略する。
【0112】
(第7実施形態)
上述の第6実施形態では、本発明に係る補助暖房装置としての電気ヒータ7dは、ヒータコア51を通過した温風を加熱するものを用いた例について説明したが、これに代えて、図23に示すように、電気ヒータ7dを冷却水回路50中に配置して、電気ヒータ7dにより冷却水を加熱して、ヒータコア51の暖房レベルを増加させるようにしてもよい。
【0113】
本実施形態の電気ヒータ7dは、上述の第6実施形態の電気ヒータ7dと同様、ヒータ線h1〜h3およびスイッチ素子SW1〜SW3等から構成され、電気ヒータ7dは、エアコンECU7により制御されて、通電がなされる。
【0114】
(第8実施形態)
上述の第1〜7実施形態では、目標吹出温度(TAO)に応じて変化する設定冷却水温(TWS)の特性を補助暖房レベル毎に代えるようにした例について説明したが、これに代えて、次のようにする。
【0115】
すなわち、本実施形態において、図24の特性マップ(要求エンジン回転数−TAO)を用いて、エアコンECU7は、目標吹出温度(TAO)に応じて要求エンジン回転数を決定し、この要求エンジン回転数と実際のエンジン回転数とを比較する。
【0116】
ここで、要求エンジン回転数が実際のエンジン回転数より低いとき、走行用エンジン1を停止して要求エンジン回転数を「0」にするように要求する要求信号をエンジンECU9に対して出力する。
【0117】
一方、要求エンジン回転数が実際のエンジン回転数より高いとき、要求エンジン回転数に実際のエンジン回転数を近づけるように要求する要求信号をエンジンECU9に対して出力する。
【0118】
ここで、図24に示すように、目標吹出温度(TAO)が高くなるほど、要求エンジン回転を高くする。これに伴い、目標吹出温度(TAO)が高くなる程、エンジンの廃熱が増え、冷却水温度が上昇するので、ヒータコア(主加熱装置)から発生する熱量が増加する。このため、暖房性能を確保することができる。
【0119】
これに加えて、目標吹出温度(TAO)に対する要求エンジン回転数の特性を補助暖房レベル毎に異なるようにする。具体的には、補助暖房レベル=3のときには、30<TAO<T1(例えば、64)の場合には、要求エンジン回転数は500から1700(最高値)まで徐々に増加し、T1<TAOの場合には、要求エンジン回転数は最高値(ガード値)1700のまま一定になる。
【0120】
補助暖房レベル=2のときには、30<TAO<T2(例えば、66)の場合には、要求エンジン回転数は500から1800(最高値)まで徐々に増加し、T2<TAOの場合には、要求エンジン回転数は最高値(ガード値)1800のまま一定になる。
【0121】
補助暖房レベル=1のときには、30<TAO<T3(例えば、68)の場合には、要求エンジン回転数は500から1900(最高値)まで徐々に増加し、T3<TAOの場合には、要求エンジン回転数は最高値(ガード値)1900のまま一定になる。
【0122】
補助暖房レベル=0のときには、30<TAO<70の場合には、要求エンジン回転数は500から2000(最高値)まで徐々に増加し、70<TAOの場合には、要求エンジン回転数は最高値(ガード値)2000のまま一定になる。
【0123】
本実施形態では、T1、T2、T3、70は、特許請求範囲に記載の第2温度に相当し、補助暖房レベル毎に異なる。以下、T1、T2、T3、70を総じて、Ty2とする。
【0124】
目標吹出温度(TAO)が中間温度(すなわち、30<TAO<Ty2)である場合には、要求エンジン回転数に対するTAOの傾きが補助暖房レベルに関わらず、同一になっている。
【0125】
なお、「30」(=目標吹出温度(TAO))が特許請求範囲に記載の第1の温度に相当する。
【0126】
(第9実施形態)
上述の第8実施形態では、図24に示すように、目標吹出温度(TAO)が中間温度(すなわち、30<TAO<Ty2)である場合には、要求エンジン回転数に対する目標吹出温度(TAO)の傾きが補助暖房レベルに関わらず、同一になっている例について説明したが、これに代えて、図25に示すように、要求エンジン回転数に対する目標吹出温度(TAO)の傾き(要求エンジン回転数/目標吹出温度)が補助暖房レベル毎に異なるように設定するようにしてもよい。
【0127】
具体的には、30<TAO<70の場合、傾き(要求エンジン回転数/目標吹出温度)が補助暖房レベル毎に異なる最高値(ガード値)になる。各最高値(2000、1900、1800、1700)は、それぞれ、上述の第8実施形態と同一である。
【0128】
これにより、補助暖房レベル毎に要求エンジン回転数を詳細に設定することができるので、要求エンジン回転数を精度良く求めることができる。
【0129】
(他の実施形態)
上述の各実施形態では、本発明に係る自動車(すなわち、走行時に必要に応じて走行用エンジン1を停止する自動車)として、ハイブリッド自動車を用いた例について説明したが、これに限らず、走行用電動モータ2を搭載していなく、走行用エンジン1だけを搭載し、走行中において信号待ち等の一旦停止時に走行用エンジン1を停止する自動車を本発明に係る自動車として用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】本発明に係るハイブリット自動車の第1実施形態の概略構成を示すブロック図である
【図2】図1のエアコンユニットの構成を示す図である。
【図3】図2のエアコンユニットの電気的構成を示す図である。
【図4】図3のコントロールパネルの構成を示す図である。
【図5】図3のエアコンECUの制御処理を示すフローチャートである。
【図6】図3のエアコンECUでブロア電圧を決めるための特性図である。
【図7】図3のエアコンECUでブロア電圧を決めるための特性図である。
【図8】図3のエアコンECUで吸込口モードを決めるための特性図である。
【図9】図3のエアコンECUでコンプレッサのオン/オフを決めるための特性図である。
【図10】図5のS8の処理の詳細を示すフローチャートである。
【図11】図5のS8の処理で設定冷却水温(TWS)を決めるのに用いる特性図である。
【図12】図1のエンジンECUの制御処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第2実施形態で設定冷却水温(TWS)を決めるのに用いる特性図である。
【図14】本発明の第3実施形態のハイブリット自動車の概略構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の第4実施形態のハイブリット自動車の概略構成を示すブロック図である。
【図16】上述の第4実施形態のエンジンECUの制御処理を示すフローチャートである。
【図17】本発明の第5実施形態のハイブリット自動車の概略構成を示すブロック図である。
【図18】本発明の第6実施形態のエアコンユニットの構成を示す図である。
【図19】図18の電気ヒータの構成を示す図である。
【図20】上述の第6実施形態のエンジンECUの制御処理を示すフローチャートである。
【図21】図20の一部の処理を詳細に示すフローチャートである。
【図22】上述の第6実施形態で電気ヒータの作動本数を決めるための特性図である。
【図23】本発明の第7実施形態のエアコンユニットの構成を示す図である。
【図24】本発明の第7実施形態において要求エンジン回転数を決めるための特性図である。
【図25】本発明の第8実施形態において要求エンジン回転数を決めるための特性図である。
【符号の説明】
【0131】
1…走行用エンジン、2…走行用電動モータ、
3…エンジン始動装置、4…バッテリ、5…ハイブリッド自動車、
6…エアコンユニット、7…エアコンECU、7A…シートECU、
7a…切替設定器、7b…シート空調ユニット、8…ハイブリットECU、
9…エンジンECU、45…エバポレータ、51…ヒータコア、
72…外気温センサ、73…日射センサ、74…エバ後温度センサ、
75…水温センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの冷却水を熱源として車室内の空気を加熱する主加熱装置(51)と、
前記エンジンの廃熱以外の熱源を用いて車室内の空気を加熱する補助加熱装置(7b、7c、7d)と、
前記エンジンの冷却水の温度が閾値よりも低いと判定したとき、前記エンジンの始動を要求する要求信号を出力する信号出力手段(S27、S23)と、を備える車両用空調装置であって、
前記補助加熱装置の作動状態に基づいて、前記補助加熱装置の発熱量が増加するほど前記閾値を下げるように調整する調整手段(S302、S302C、S1002)を備えることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
車室内に吹き出す吹出口(18〜20)を有する空調ケース(10)と、
前記空調ケース内に配置され、前記吹出口に向けて送風する送風機(30)と、
前記空調ケース内に配置され、前記送風機からの送風空気を冷却する冷却装置(45)と、を備え、
前記主加熱装置は、前記冷却装置からの冷風を加熱するものであり、
前記冷風に対して前記主加熱装置から加える熱量を調整して、前記吹出口から車室内に吹き出す空気温度を調整する温度調整手段(52)と、
前記車室内の環境状態を検出する検出手段(71〜75)と、
前記検出手段の検出値に基づいて、前記車室内の空気温度を設定温度に維持するために必要である前記吹出口から吹き出される目標吹出温度(TAO)を算出する算出手段(S4)と、
前記吹出口からの吹出空気温度を前記目標吹出温度に近づけるように前記温度調整手段を制御する温度制御手段(S10)と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記目標吹出温度が第1の温度未満であるときには、前記信号出力手段による前記要求信号を出力しないようになっており、
前記目標吹出温度が第1の温度以上で、かつ第2の温度未満であるときには、前記目標吹出温度が高くなるほど前記閾値が高くなり、
前記目標吹出温度が前記第2の温度以上である場合において、前記閾値は一定値で、この一定値は、前記補助加熱装置の発熱量が増加するほど下がるように設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記第2の温度が前記補助加熱装置の発熱量毎に異なるように設定されており、
前記目標吹出温度が第1の温度以上で、かつ第2の温度未満である場合、前記補助加熱装置の発熱量毎の、前記閾値に対する前記目標吹出温度のそれぞれの傾きは、同一に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記補助加熱装置の発熱量毎の、それぞれの前記第2の温度が同一に設定されており、
前記目標吹出温度が第1の温度以上で、かつ第2の温度未満である場合、前記閾値に対する前記目標吹出温度の傾きが前記補助加熱装置の発熱量毎に異なるように設定されていることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項6】
車室内に吹き出す吹出口(18〜20)を有する空調ケース(10)と、
前記空調ケース内に配置され、前記吹出口に向けて送風する送風機(30)と、
前記空調ケース内に配置され、前記送風機からの送風空気を冷却する冷却装置(45)と、
エンジンの冷却水を熱源として前記冷却装置からの冷風を加熱する主加熱装置(51)と、
前記冷風に対して前記主加熱装置から加える熱量を調整して、前記吹出口から車室内に吹き出す空気温度を調整する温度調整手段(52)と、
前記車室内の環境状態を検出する検出手段(71〜75)と、
前記検出手段の検出値に基づいて、前記車室内の空気温度を設定温度に維持するために必要である前記吹出口から目標吹出温度(TAO)を算出する算出手段(S4)と、
前記吹出口からの吹出空気温度を前記目標吹出温度に近づけるように前記温度調整手段を制御する温度制御手段(S10)と、
前記エンジンの廃熱以外の熱源を用いて車室内の空気を加熱する補助加熱装置(7b、7c、7d)と、
前記目標吹出温度が高くなるほど、高い回転数で前記エンジンを回転させるように要求する要求信号を出力する信号出力手段(7)と、を備える車両用空調装置であって、
前記補助加熱装置の発熱量が増加するほど前記要求するエンジン回転数が下げるように設定されていることを特徴とする車両用空調装置。
【請求項7】
前記目標吹出温度が第1の温度未満であるときには、前記要求するエンジン回転数は一定であり、
前記目標吹出温度が第1の温度以上で、かつ第2の温度未満であるときには、前記要求するエンジン回転数は、前記目標吹出温度が高くなるほど高くなり、
前記目標吹出温度が前記第2の温度以上である場合において、前記要求するエンジン回転数は、一定値で、この一定値が前記補助加熱装置の発熱量が増加するほど下がるように設定されていることを特徴とする請求項5に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記第2の温度が前記補助加熱装置の発熱量毎にそれぞれ異なり、
前記目標吹出温度が第1の温度以上で、かつ前記第2の温度未満である場合、前記補助加熱装置の発熱量毎の、前記要求するエンジン回転数に対する前記目標吹出温度のそれぞれの傾きが同一になっていることを特徴とする請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
前記補助加熱装置の発熱量毎のそれぞれの前記第2の温度が同一になっており、
前記目標吹出温度が第1の温度以上で、かつ前記第2の温度未満である場合、前記要求するエンジン回転数に対する前記目標吹出温度の傾きが前記補助加熱装置の発熱量毎に異なるようになっていることを特徴とする請求項7に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記補助加熱装置として、ステアリングを加熱するステアリングヒータ、座席を加熱するシートヒータ、前記車室内の空気を加熱する空気ヒータユニット、および前記エンジンの冷却水を加熱する冷却水ヒータユニットのうち1つ以上のものが用いられていることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記補助加熱装置は、電気ヒータであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項12】
走行時に必要に応じて前記エンジンを停止する車両に適用されていることを特徴とする請求項1ないし11のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2008−174042(P2008−174042A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7976(P2007−7976)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】