説明

車両用空調装置

【課題】車室内を優先的に冷房する必要がある場合の車室内の冷房性能が優れているとともに、蓄冷効率が向上した車両用空調装置を提供する。
【解決手段】車両用空調装置1は、コンプレッサ3、コンプレッサ3から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ4、コンデンサ4を通過した冷媒を減圧する膨張弁5、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ6を備えた冷媒循環経路7と、蓄冷材が封入された蓄冷器8、蓄冷器8が内蔵され、かつ蓄冷器8内の蓄冷材を冷却するとともに冷却された蓄冷材から冷熱を受け取るブライン11が入れられたブライン容器9、エバポレータ6の通風方向下流側に配置され、かつ内部をブライン11が流れる受放冷器12、およびブライン容器11と受放冷器12との間でブライン11を循環させるポンプ13を有するブライン循環経路7とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、たとえば停車時に圧縮機の駆動源であるエンジンを一時的に停止させる車両に用いられる車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護や自動車の燃費向上などを目的として、信号待ちなどの停車時にエンジンを自動的に停止させる自動車が提案されている。
【0003】
ところで、コンプレッサ、コンプレッサから吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器、冷媒冷却器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを備えた冷媒循環経路を有する通常の車両用空調装置においては、エンジンを停止させると、エンジンを駆動源とするコンプレッサが停止するので、エバポレータに冷媒が供給されなくなり、冷房能力が急激に低下するという問題がある。
【0004】
そこで、このような問題を解決した車両用空調装置として、コンプレッサ、コンプレッサから吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器、冷媒冷却器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを有する冷媒循環経路と、エバポレータの通風方向下方に配置され、かつ蓄冷材が封入された蓄冷器とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1記載の車両用空調装置によれば、エンジンによりコンプレッサが作動させられている場合、エバポレータを通過した冷風により蓄冷器内の蓄冷材が冷却されるとともに、車室内が冷房されるようになっている。そして、エンジンが停止してコンプレッサが停止した場合には、蓄冷器内の蓄冷材の有する冷熱がエバポレータおよび蓄冷器を通過する風に伝えられて、当該風が冷却され、冷却された風によって車室内が冷房されるようになっている。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載の車両用空調装置によれば、蓄冷器内の蓄冷材を冷却する際に、エバポレータを通過した風の冷熱が奪われるので、車室内を優先的に冷房する必要のある場合には、車室内の冷房性能が不足するという問題がある。たとえば、車両が炎天下に駐車された後に、運転者が乗り込んで走り出す場合には、車両用空調装置のコンプレッサを作動させて、エバポレータを通過するとともに冷媒により冷却された風により車室内を急速に冷却することが好ましいが、この場合にも、蓄冷材に必要量の冷熱を蓄えるまでの間は、エバポレータを通過した風の有する冷熱が蓄冷器内の蓄冷材に奪われるので、車室内の冷房性能が低下する。
【0007】
また、蓄冷材が封入された蓄冷器がエバポレータの通風方向下流側に配置されているので、蓄冷器の大きさは、エバポレータが配置される通風ダクトの大きさにより制限されることになって、蓄冷器内に封入される蓄冷材の量も制限されることになる。したがって、蓄冷材に蓄えられる冷熱の量も制限され、蓄冷効率が低くなるという問題がある。
【特許文献1】特許3899993号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
この発明の目的は、上記問題を解決し、車室内を優先的に冷房する必要がある場合の車室内の冷房性能が優れているとともに、蓄冷効率が向上した車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために以下の態様からなる。
【0010】
1)コンプレッサ、コンプレッサから吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器、冷媒冷却器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを備えた冷媒循環経路と、蓄冷材が封入された蓄冷器、蓄冷器が内蔵され、かつ蓄冷器内の蓄冷材を冷却するとともに冷却された蓄冷材から冷熱を受け取るブラインが入れられたブライン容器、エバポレータの通風方向下流側に配置され、かつ内部をブラインが流れる受放冷器、およびブライン容器と受放冷器との間でブラインを循環させるポンプを有するブライン循環経路とを備えている車両用空調装置。
【0011】
2)エバポレータが、間隔をおいて配置された複数の熱交換管部を備えているとともに、受放冷器が、間隔をおいて配置された複数のブライン流通管部を備えており、エバポレータの熱交換管部どうしの間に配置されるフィンと、受放冷器の隣り合うブライン流通管部どうしの間に配置されるフィンとが共通化されている上記1)記載の車両用空調装置。
【0012】
3)エバポレータが、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間にヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置されるとともに、両端部が両ヘッダタンクに接続された複数の熱交換管とを備え、受放冷器が、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向にエバポレータの熱交換管と同一の間隔をおいて配置されるとともに、両端部が両ヘッダタンクに接続された複数のブライン流通管とを備えており、フィンが、エバポレータの隣り合う熱交換管どうしの間、および受放冷器の隣り合うブライン流通管どうしの間に跨るように配置されてエバポレータの熱交換管および受放冷器のブライン流通管に接合されている上記1)または2)記載の車両用空調装置。
【発明の効果】
【0013】
上記1)の車両用空調装置によれば、たとえば炎天下に駐車されていた車両が走り出す場合などのように、車室内を優先的に冷房する必要がある場合には、冷媒循環経路蓄のコンプレッサを作動させるとともに、ブライン循環経路のポンプを停止させておき、蓄冷材を冷却することなく、エバポレータを通過した冷風により車室内を冷房することができる。したがって、車室内を優先的に冷房する必要がある場合の車室内の冷房性能が優れたものになる。
【0014】
また、車室内温度が低下すると、エバポレータによる必要冷房能力を低くしてもよいので、ブライン循環経路のポンプを作動させてブライン容器と受放冷器との間でブラインを循環させる。すると、受放冷器を通過するブラインがエバポレータを通過した冷風により冷却され、冷却されたブラインによりブライン容器の蓄冷器内の蓄冷材が冷却されて、蓄冷材に冷熱が蓄えられる。蓄冷材に所定量の冷熱が蓄えられると、ポンプを停止させる。そして、ブライン容器を、通風ダクトの外側に配置することが可能になるので、ブライン容器および蓄冷器の大きさを比較的自由に設定することが可能になって、使用する蓄冷材の量を特許文献1記載の車両用空調装置に比べて多くすることができ、その結果蓄冷効率が向上する。
【0015】
さらに、車両のエンジンが停止してコンプレッサが停止した場合には、ブライン循環経路のポンプを作動させ続けると、蓄冷器内の蓄冷材の有する冷熱がブライン容器内のブラインに伝えられ、冷却されたブラインが受放冷器を通過する際に、ブラインの有する冷熱が、受放冷器を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータを通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は受放冷器により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0016】
上記2)の車両用空調装置によれば、エバポレータが、間隔をおいて配置された複数の熱交換管部を備えているとともに、受放冷器が、間隔をおいて配置された複数のブライン流通管部を備えており、エバポレータの熱交換管部どうしの間に配置されるフィンと、受放冷器の隣り合うブライン流通管管部どうしの間に配置されるフィンとが共通化されているので、受放冷器を通過するブラインは、フィンを介してエバポレータの熱交換管内を流れる冷媒から伝えられる冷熱により冷却されることになり、ブラインを効率良く冷却することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
以下の説明において、通風方向下流側(図1〜図3に矢印Xで示す方向)を前、これと反対側を後というものとし、前方から後方を見た際の上下、左右(図1の上下、左右)を上下、左右というものとする。
【0019】
また、以下の説明において、「アルミニウム」という用語には、純アルミニウムの他にアルミニウム合金を含むものとする。
【0020】
図1はこの発明による車両用空調装置の全体構成を示し、図2および図3はエバポレータおよび受放冷器を示す。
【0021】
図1において、車両用空調装置(1)は、車両のエンジンを駆動源とするコンプレッサ(3)、コンプレッサ(3)から吐出された冷媒を冷却するコンデンサ(4)(冷媒冷却器)、コンデンサ(4)を通過した冷媒を減圧する膨張弁(5)(減圧器)、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータ(6)を備えた冷媒循環経路(2)と、蓄冷材(図示略)が封入された蓄冷器(8)、蓄冷器(8)が内蔵され、かつ蓄冷器(8)内の蓄冷材を冷却するとともに、冷却された蓄冷材から冷熱を受け取るブライン(11)が入れられたブライン容器(9)、エバポレータ(6)の通風方向下流側に配置され、かつ内部をブライン(11)が流れる受放冷器(12)、およびブライン容器(9)と受放冷器(12)との間でブライン(11)を循環させる電動ポンプ(13)を有するブライン循環経路(7)とを備えている。なお、ここでは、冷媒循環経路(2)にはフロン系の冷媒が循環させられる。
【0022】
ブライン循環経路(7)の蓄冷器(8)内へ封入される蓄冷材としては、グリコール系の化合物であって、凝固点が8℃程度に調整されたものを用いることが好ましい。また、ブライン(11)としては、たとえば水とエチレングリコールとの混合物からなるものを用いることが好ましい。
【0023】
図2および図3に示すように、冷媒循環経路(2)のエバポレータ(6)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(20)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(21)と、両ヘッダタンク(20)(21)間に前後方向に間隔をおいて設けられた前後2列の熱交換管列(22A)(22B)とを備えている。
【0024】
第1ヘッダタンク(20)は、前側(通風方向下流側)に位置する冷媒入口ヘッダ部(23)と、後側(通風方向上流側)に位置しかつ冷媒入口ヘッダ部(23)に一体化された冷媒出口ヘッダ部(24)とを備えている。冷媒入口ヘッダ部(23)の右端部に冷媒入口(25)が設けられ、冷媒出口ヘッダ部(24)の右端部に冷媒出口(26)が設けられている。第2ヘッダタンク(21)は、前側に位置する第1中間ヘッダ部(27)と、後側に位置しかつ第1中間ヘッダ部(27)に一体化された第2中間ヘッダ部(28)とを備えている。第2ヘッダタンク(21)の右端部には、内部が第1中間ヘッダ部(27)内および第2中間ヘッダ部(28)内を通じさせる連通路となった連通部材(29)が接合されている。
【0025】
前側の熱交換管列(22A)は、第1ヘッダタンク(20)の冷媒入口ヘッダ部(23)と第2ヘッダタンク(21)の第1中間ヘッダ部(27)との間に、幅方向を前後方向に向けるとともに左右方向に間隔をおいて配置され、かつ上下両端部が上下両ヘッダタンク(20)(21)にろう付された複数のアルミニウム製扁平状熱交換管(31)(熱交換管部)からなる。後側の熱交換管列(22B)は、第1ヘッダタンク(20)の冷媒出口ヘッダ部(24)と第2ヘッダタンク(21)の第2中間ヘッダ部(28)との間に、幅方向を前後方向に向けるとともに左右方向に間隔をおいて配置され、かつ上下両端部が上下両ヘッダタンク(20)(21)にろう付された複数のアルミニウム製扁平状熱交換管(31)(熱交換管部)からなる。両熱交換管列(22A)(22B)の熱交換管(31)は、左右方向に同一位置にある。
【0026】
ブライン循環経路(7)の受放冷器(12)は、上下方向に間隔をおいて配置された左右方向にのびるアルミニウム製第1ヘッダタンク(32)およびアルミニウム製第2ヘッダタンク(33)と、両ヘッダタンク(32)(33)に設けられた1列のブライン流通管列(34)とを備えている。第1ヘッダタンク(32)の一端部に、その内部にブライン(11)を流入させるブライン入口(35)が設けられ、第2ヘッダタンク(33)の一端部に、その内部からブライン(11)を流出させるブライン出口(36)が設けられている。ブライン流通管列(34)は、第1ヘッダタンク(32)と第2ヘッダタンク(33)との間に、幅方向を前後方向に向けるとともに左右方向に間隔をおいて配置され、かつ上下両端部が上下両ヘッダタンク(32)(33)にろう付された複数のアルミニウム製扁平状ブライン流通管(37)(ブライン流通管部)からなる。
【0027】
エバポレータ(6)の各熱交換管列(22A)(22B)の左右方向に隣り合う熱交換管(31)どうしの間隔と、受放冷器(12)のブライン流通管列(34)の左右方向に隣り合うブライン流通管(37)どうしの間隔とは等しくなっている。そして、エバポレータ(6)の各熱交換管列(22A)(22B)の左右方向に隣り合う熱交換管(31)どうしの間および各熱交換管列(22A)(22B)の左右両端の熱交換管(31)の外側、ならびに受放冷器(12)のブライン流通管列(34)の左右方向に隣り合うブライン流通管(37)どうしの間およびブライン流通管列(34)の左右両端のブライン流通管(37)の外側に、それぞれアルミニウム製コルゲートフィン(38)が、エバポレータ(6)と受放冷器(12)とに跨るように配置されて熱交換管(31)(37)にろう付されている。すなわち、コルゲートフィン(38)は、エバポレータ(6)の後側熱交換管列(22B)の熱交換管(31)の後側縁部から受放冷器(12)のブライン流通管列(34)のブライン流通管(37)の前側縁部まで至っている。また、左右両端のコルゲートフィン(38)の外側にはアルミニウム製サイドプレート(39)が、エバポレータ(6)と受放冷器(12)とに跨るように配置されてコルゲートフィン(38)にろう付されている。
【0028】
そして、ブライン(11)は、コンプレッサ(3)および電動ポンプ(13)の作動時には、受放冷器(12)のブライン流通管(37)内を流れる間に、エバポレータ(6)を通過した冷風から冷熱を受け取るとともに、エバポレータ(6)の熱交換管(31)内を流れる冷媒からコルゲートフィン(38)を介して冷熱を受け取る。また、ブライン(11)は、コンプレッサ(3)の停止時でかつ電動ポンプ(13)の作動時には、エバポレータ(6)の隣り合う熱交換管(31)どうしの間の通風間隙、および受放冷器(12)の隣り合うブライン流通管(37)どうしの間の通風間隙を通過する空気に冷熱を放出する。
【0029】
上述した車両用空調装置(1)において、炎天下に駐車されていた車両が走り出す場合などのように、車室内を優先的に冷房する必要がある場合には、冷媒循環経路(2)のコンプレッサ(3)を作動させるとともに、ブライン循環経路(7)の電動ポンプ(13)を停止させておく。すると、コンプレッサ(3)、コンデンサ(4)および膨張弁(5)を通過した低圧の気液混相の2相冷媒が、冷媒入口(25)を通って第1ヘッダタンク(20)の冷媒入口ヘッダ部(23)内に入る。冷媒入口ヘッダ部(23)内に入った冷媒は左方に流れ、分流して前側熱交換管列(22A)の熱交換管(31)内に流入する。熱交換管(31)内に流入した冷媒は、熱交換管(31)内を下方に流れて第2ヘッダタンク(21)の第1中間ヘッダ部(27)内に入る。第1中間ヘッダ部(27)内に入った冷媒は右方に流れ、連通部材(29)内の連通路を通って第2中間ヘッダ部(28)内に入る。第2中間ヘッダ部(28)内に入った冷媒は、分流して後側熱交換管列(22B)の熱交換管(31)内に流入する。熱交換管(31)内に流入した冷媒は、熱交換管(31)内を上方に流れて第1ヘッダタンク(20)の冷媒出口ヘッダ部(24)内に入る。冷媒出口ヘッダ部(24)内に入った冷媒は、冷媒出口ヘッダ部(24)内を右方に流れ、冷媒出口(26)を通って流出する。そして、冷媒が前側熱交換管列(22A)の熱交換管(31)内、および後側熱交換管列(22B)の熱交換管(31)内を流れる間に、隣り合う熱交換管(31)どうしの間の通風間隙を通過する空気(図1〜図3矢印X参照)と熱交換をし、冷媒は気相となって流出する。
【0030】
したがって、エバポレータ(6)を通過した冷風により、蓄冷材を冷却することなく車室内を冷房することが可能となり、車室内の冷房性能が優れたものになる。このとき、受放冷器(12)内に溜まっているブライン(11)もエバポレータ(6)を通過した空気により冷却されるが、受放冷器(12)に溜まっているブライン(11)の量は少ないので、エバポレータ(6)による冷房能力の低下は、実用上は問題はない。
【0031】
車室内温度が所定温度まで低下すると、冷媒循環経路(2)のエバポレータ(6)に要求される冷房能力は小さくなるので、電動ポンプ(13)を作動させて受放冷器(12)とブライン容器(9)との間でブライン(11)を循環させ、エバポレータ(6)の有する冷房能力の余力を利用して、エバポレータ(6)を通過した冷却風からブライン(11)に冷熱を与えるとともに、エバポレータ(6)の熱交換管(31)内を流れる低温の冷媒からコルゲートフィン(38)を介してブライン(11)に冷熱を与える。すると、ブライン容器(9)に内蔵された蓄冷器(8)内の蓄冷材が、ブライン容器(9)内を流れるブライン(11)により冷却されて凝固し、蓄冷材に冷熱が蓄えられる。ここで、エバポレータ(6)が低負荷、すなわち低風量のときにエバポレータ(6)を通過した空気の温度はより低温になるので、低負荷の定常運転時に蓄冷効率が高まる。なお、蓄冷材がすべて凝固した時点で電動ポンプ(13)を停止してブライン(11)の循環を止めてもよい。
【0032】
エンジンが停止してコンプレッサ(3)が停止した場合には、電動ポンプ(13)を作動させて受放冷器(12)とブライン容器(9)との間でブライン(11)を循環させると、蓄冷器(8)内の蓄冷材の有する冷熱がブライン(11)により受放冷器(12)に運ばれ、ブライン(11)の有する冷熱がコルゲートフィン(38)を介してエバポレータ(6)および受放冷器(12)を通過する風に伝えられる。したがって、エバポレータ(6)を通過した風の温度が上昇したとしても、当該風は受放冷器(12)により冷却されるので、冷房能力の急激な低下が防止される。
【0033】
上記実施形態においては、冷媒循環経路(2)は、コンプレッサ(3)、コンデンサ(4)、膨張弁(5)およびエバポレータ(6)を備えており、かつフロン系冷媒を循環させるようになっているが、これに代えて、冷媒循環経路は、コンプレッサ、コンプレッサから吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器としてのガスクーラ、ガスクーラを通過した冷媒を減圧する減圧器およびガスクーラから出てきた冷媒とエバポレータから出てきた冷媒とを熱交換させる中間熱交換器を備えており、COなどの超臨界冷媒を循環させるものであってもよい。
【0034】
また、この発明による車両用空調装置のエバポレータとしては、1対の皿状プレートを対向させて周縁部どうしをろう付してなる複数の扁平中空体が並列状に配置されてなり、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダ部と、両ヘッダ部間に、幅方向を前後方向に向けるとともにヘッダ部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がそれぞれ両ヘッダ部に通じさせられた複数の扁平状熱交換管部とを有する、所謂積層型エバポレータが用いられてもよい。さらに、この発明による車両用空調装置の受放冷器としては、1対の皿状プレートを対向させて周縁部どうしをろう付してなる複数の扁平中空体が並列状に配置されてなり、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダ部と、両ヘッダ部間に、幅方向を前後方向に向けるとともにヘッダ部の長さ方向に間隔をおいて配置され、かつ両端部がそれぞれ両ヘッダ部に通じさせられた複数の扁平状ブライン流通管部とを有するものが用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明による車両用空調装置の構成を示すシステム図である。
【図2】図1の車両用空調装置のエバポレータおよび受放冷器を示す分解斜視図である。
【図3】図1の車両用空調装置のエバポレータおよび受放冷器を示す右側方から見た垂直断面図である。
【符号の説明】
【0036】
(1):車両用空調装置
(2):冷媒循環経路
(3):コンプレッサ
(4):コンデンサ(冷媒冷却器)
(5):膨張弁(減圧器)
(6):エバポレータ
(7):ブライン循環経路
(8):蓄冷器
(9):ブライン容器
(11):ブライン
(12):受放冷器
(13):電動ポンプ
(20)(21):ヘッダタンク
(31):熱交換管(熱交換管部)
(32)(33):ヘッダタンク
(37):ブライン流通管(ブライン流通管部)
(38):コルゲートフィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサ、コンプレッサから吐出された冷媒を冷却する冷媒冷却器、冷媒冷却器を通過した冷媒を減圧する減圧器、および減圧された冷媒を蒸発させるエバポレータを備えた冷媒循環経路と、蓄冷材が封入された蓄冷器、蓄冷器が内蔵され、かつ蓄冷器内の蓄冷材を冷却するとともに冷却された蓄冷材から冷熱を受け取るブラインが入れられたブライン容器、エバポレータの通風方向下流側に配置され、かつ内部をブラインが流れる受放冷器、およびブライン容器と受放冷器との間でブラインを循環させるポンプを有するブライン循環経路とを備えている車両用空調装置。
【請求項2】
エバポレータが、間隔をおいて配置された複数の熱交換管部を備えているとともに、受放冷器が、間隔をおいて配置された複数のブライン流通管部を備えており、エバポレータの熱交換管部どうしの間に配置されるフィンと、受放冷器の隣り合うブライン流通管部どうしの間に配置されるフィンとが共通化されている請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
エバポレータが、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間にヘッダタンクの長さ方向に間隔をおいて配置されるとともに、両端部が両ヘッダタンクに接続された複数の熱交換管とを備え、受放冷器が、互いに間隔をおいて配置された1対のヘッダタンクと、両ヘッダタンク間に、ヘッダタンクの長さ方向にエバポレータの熱交換管と同一の間隔をおいて配置されるとともに、両端部が両ヘッダタンクに接続された複数のブライン流通管とを備えており、フィンが、エバポレータの隣り合う熱交換管どうしの間、および受放冷器の隣り合うブライン流通管どうしの間に跨るように配置されてエバポレータの熱交換管および受放冷器のブライン流通管に接合されている請求項1または2記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−126026(P2010−126026A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303816(P2008−303816)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】