説明

車両用空調装置

【課題】乗員快適性の悪化を抑制しつつ省能力化を図る。
【解決手段】車室内空間へ空気を送風する送風手段71と、空調モードを切り替える空調モード切替手段19、20、21、22、23、40とを備え、空調モードは、車室内空間のうち運転席を含む特定領域および車室内空間のうち特定領域を含まない非特定領域を空調する通常空調モードと、通常空調モードに比べて非特定領域に対する空調能力が小さくされる特定領域優先空調モードとを含み、空調モード切替手段は、特定領域優先空調モードの場合、非特定領域に対する空調能力を、送風手段71に押し込まれる空気の圧力に応じて調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1、2には、車室内の座席に設けられて在席状態を判定する在席検知手段を有し、在席検知手段からの信号に応じて空調ユニットの吹き出し状態を制御する空調装置が記載されている。
【0003】
この従来技術では、運転席側吹出口、助手席側吹出口、右後部座席側吹出口および左後部座席側吹出口を備え、在席と判定された座席側の吹出口のみから空調空気を吹き出し、乗員が不在と判定された座席側の吹出口から空調空気を吹き出さないようにすることで省能力化を図っている。
【0004】
なお、この従来技術では、空調ユニットに内気および外気を導入できるようになっており、さらに、内気と外気の導入割合を必要に応じて調整できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2960243号公報号公報
【特許文献2】特許第3573682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術によると、外気を導入している場合に車速が上昇すると、空調ユニットに導入される外気の風量がラム圧(走行動圧)によって増加し、それに伴って車室内に吹き出される空調空気の風量も増加する。
【0007】
このため、在席と判定された座席側の吹出口のみから空調空気を吹き出し、乗員が不在と判定された座席側の吹出口から空調空気を吹き出さないようにすると、在席と判定された座席側の吹出口から吹き出される空調空気の風量が過剰になってしまう虞がある。換言すると、乗員に対して空調能力が必要以上に集中して、乗員の快適感を損なってしまう虞がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑みて、乗員快適性の悪化を抑制しつつ省能力化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、車室内空間へ空気を送風する送風手段(71)と、
空調モードを切り替える空調モード切替手段(19、20、21、22、23、40)とを備え、
空調モードは、車室内空間のうち運転席を含む特定領域および車室内空間のうち特定領域を含まない非特定領域を空調する通常空調モードと、通常空調モードに比べて非特定領域に対する空調能力が小さくされる特定領域優先空調モードとを含み、
空調モード切替手段は、特定領域優先空調モードの場合、非特定領域に対する空調能力を、送風手段(71)に押し込まれる空気の圧力に応じて調整することを特徴とする。
【0010】
これにより、送風手段(71)に押し込まれる空気の圧力に応じて、特定領域の乗員に対する空調能力の集中度合いを変えることができるので、乗員快適性の悪化を抑制しつつ省能力化を図ることができる。
【0011】
具体的には、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の発明において、空調モード切替手段は、特定領域優先空調モードの場合、送風手段(71)に押し込まれる空気の圧力が大きい程、非特定領域に対する空調能力を大きくすればよい。
【0012】
また具体的には、請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の発明において、空調モード切替手段は、非特定領域へ吹き出される空気の風量、および非特定領域へ吹き出される空気の温度のうち少なくとも1つを調整することによって、非特定領域に対する空調能力を調整するものである。
【0013】
より具体的には、請求項4に記載の発明のように、請求項3に記載の発明において、非特定領域へ空気を吹き出すための非特定領域側吹出部(14、16、17)を備え、
空調モード切替手段は、非特定領域側吹出部(14、16、17)の開度を調整することによって、非特定領域へ吹き出される空気の風量を調整するものである。
【0014】
また具体的には、請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の発明において、空調モード切替手段は、車速(SPD)、送風手段(71)に導入される車室内空気と車室外空気との割合を調整する内外気切替手段(70c)の作動状態、走行時のラム圧を低減させるラム圧低減手段(45)の作動状態、および送風手段(71)の吸込み圧力(Ps)のうち少なくとも1つに基づいて、送風手段(71)に押し込まれる空気の圧力の度合いを算出すればよい。
【0015】
請求項6に記載の発明では、請求項1ないし5のいずれか1つに記載の発明において、空調モード切替手段は、特定領域優先空調モードの場合、非特定領域に対する空調能力を、送風手段(71)に押し込まれる空気の圧力と、空調負荷とに応じて調整することを特徴とする。
【0016】
これにより、乗員快適性の悪化を効果的に抑制することができる。
【0017】
具体的には、請求項7に記載の発明のように、請求項6に記載の発明において、空調モード切替手段は、外気温度(Tam)、日射量(TS)、車室内温度(Tr)、空調設定温度(TSET)および乗員の表面温度(Tm)のうち少なくとも1つに基づいて空調負荷を算出すればよい。
【0018】
また具体的には、請求項8に記載の発明のように、請求項6または7に記載の発明において、特定領域優先空調モードは、低負荷時空調モードと、低負荷時空調モードよりも空調能力の高い高負荷時空調モードとを含み、
空調モード切替手段は、空調負荷が所定負荷よりも小さい場合、低負荷時空調モードとし、空調負荷が所定負荷よりも大きい場合、高負荷時空調モードとすればよい。
【0019】
請求項9に記載の発明では、請求項8に記載の発明において、空調能力を省能力化する省エネモードを設定するため省エネモード設定手段(62)を備え、
空調モード切替手段は、省エネモードが設定されている場合、所定負荷を高負荷側に変更することを特徴とする。
【0020】
これにより、空調能力を省能力化したいという乗員の要求を反映して省能力化を図ることができる。
【0021】
請求項10に記載の発明では、請求項8または9に記載の発明において、空調モード切替手段は、補助空調装置(43、44)が作動している場合、所定負荷を高負荷側に変更することを特徴とする。
【0022】
これにより、省能力化を図るとともに、補助空調装置(43、44)によって乗員快適性を確保することができる。
【0023】
請求項11に記載の発明では、請求項8ないし10のいずれか1つに記載の発明において、空調モード切替手段は、空調負荷が冷房負荷であり、且つ日射量(TS)が所定日射量よりも大きい場合、所定負荷を冷房低負荷側に変更することを特徴とする。
【0024】
これによると、空調負荷が冷房負荷である場合、日射量(TS)が所定日射量よりも大きいと空調能力の高い高負荷時空調モードに切り替わりやすくなるので、乗員快適性と省能力化とを効果的に両立させることができる。
【0025】
請求項12に記載の発明では、請求項8ないし11のいずれか1つに記載の発明において、空調モード切替手段は、空調負荷が暖房負荷であり、且つ日射量(TS)が所定日射量よりも大きい場合、所定負荷を暖房高負荷側に変更することを特徴とする。
【0026】
これによると、空調負荷が暖房負荷である場合、日射量(TS)が所定日射量よりも大きいと空調能力のより低い低負荷時空調モードに切り替わりやすくなるので、乗員快適性と省能力化とを効果的に両立させることができる。
【0027】
請求項13に記載の発明では、請求項1ないし12のいずれか1つに記載の発明において、空調モード切替手段は、特定領域優先空調モードのときに窓曇りの危険があると判断した場合、非特定領域に対する空調能力を大きくする、または通常空調モードに切り替えることを特徴とする。
【0028】
これにより、窓曇りの危険がある場合に非特定領域の窓の防曇性能を向上させることができる。
【0029】
具体的には、請求項14に記載の発明のように、請求項13に記載の発明において、空調モード切替手段は、乗員によるスイッチ操作があった場合、または窓曇り危険度が所定以上となった場合、窓曇りの危険があると判断すればよい。
【0030】
請求項15に記載の発明では、請求項1ないし14のいずれか1つに記載の発明において、特定領域の空調設定と非特定領域の空調設定とを独立して行うことのできる空調操作手段(64、65)を備え、
空調モード切替手段は、特定領域優先空調モードのときに空調操作手段(64、65)によって非特定領域の空調設定が行われた場合、非特定領域に対する空調能力を大きくする、または通常空調モードに切り替えることを特徴とする。
【0031】
これによると、特定領域優先空調モードが実行されている時であっても、乗員の要求に応じて非特定領域に対する空調能力を大きくすることができる。
【0032】
請求項16に記載の発明では、請求項1ないし15のいずれか1つに記載の発明において、空調モード切替手段は、特定領域優先空調モードの場合、特定領域に対する空調能力および非特定領域に対する空調能力のうち少なくとも一方を時間の経過に従って増減させることを特徴とする。
【0033】
これにより、特定領域において揺らぎ空調が実現されるので、乗員の快適感を一層向上させることができる。
【0034】
請求項17に記載の発明では、請求項1ないし16のいずれか1つに記載の発明において、特定領域へ空気を吹き出すための特定領域側吹出部(13、15)と、
非特定領域へ空気を吹き出すための非特定領域側吹出部(14、16、17)と、
窓へ空気を吹き出すためのデフロスタ吹出部(12)と、
特定領域側吹出部(13、15)の開度を調整する特定領域側開閉ドア(19、21)と、
非特定領域側吹出部(14、16、17)の開度を調整する非特定領域側開閉ドア(20、22、23)と、
デフロスタ吹出部(12)の開度を調整するデフロスタ開閉ドア(18)と、
特定領域側開閉ドア(19、21)とデフロスタ開閉ドア(18)とを連動して駆動する特定領域側リンク機構(75)と、
非特定領域側開閉ドア(20、22、23)を駆動する非特定領域側リンク機構(76)とを備え、
特定領域側リンク機構(75)は、デフロスタ開閉ドア(18)をデフロスタ吹出部(12)の開口位置に駆動し且つ特定領域側開閉ドア(19、21)を特定領域側吹出部(13、15)の全閉位置に駆動するデフロスタモードと、特定領域側開閉ドア(19、21)を特定領域側吹出部(13、15)の開口位置に駆動する非デフロスタモードとに作動するようになっており、
非特定領域側リンク機構(76)は、非特定領域側開閉ドア(20、22、23)を非特定領域側吹出部(14、16、17)の全閉位置に駆動するデフロスタモードと、非特定領域側開閉ドア(20、22、23)を非特定領域側吹出部(14、16、17)の開口位置に非デフロスタモードとに作動するようになっており、
特定領域優先空調モードの場合、特定領域側リンク機構(75)は非デフロスタモードになり、非特定領域側リンク機構(76)はデフロスタモードになることを特徴とする。
【0035】
これにより、特定領域側リンク機構(75)および非特定領域側リンク機構(76)をデフロスタモードにすることで特定領域優先空調モードに切り替えることができる。このため、デフロスタモードを有する既存のリンク機構で特定領域優先空調を実現することができる。
【0036】
具体的には、請求項18に記載の発明のように、請求項1ないし17のいずれか1つに記載の発明において、空調モード切替手段は、
特定領域および非特定領域に両方に乗員がいる場合、および特定領域優先空調モードを設定するための特定領域優先スイッチ(62)が押されていない場合のうち少なくとも一方の場合、通常空調モードとし、
非特定領域に乗員がいない場合、および特定領域優先スイッチ(62)が押されている場合のうち少なくとも一方の場合、特定領域優先空調モードとすればよい。
【0037】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】第1実施形態における車両用空調装置の空調ユニットを示す模式図である。
【図2】第1実施形態が適用される車両の車室内最前部を示す斜視図である。
【図3】第1実施形態における1席集中モードを説明する図である。
【図4】第1実施形態における電気制御部を示すブロック図である。
【図5】第1実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図6】第1実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図7】第1実施形態における通常吹出モードの作動例を説明する図である。
【図8】第1実施形態における特定領域優先空調モードの作動例を説明する図である。
【図9】第1実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図10】第1実施形態における非特定領域への吹き出し風量の例を説明する図である。
【図11】第1実施形態の変形例における非特定領域への吹き出し風量の例を説明する図である。
【図12】第2実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図13】第2実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図14】第2実施形態の変形例で用いられる制御マップを示す図である。
【図15】第2実施形態の変形例における非特定領域への吹き出し風量の例を説明する図である。
【図16】1席優先スイッチを示す図である。
【図17】第3実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図18】第4実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図19】第5実施形態における作動例を示すタイムチャートである。
【図20】第6実施形態における車両用空調装置の空調ユニットを示す模式図である。
【図21】第7実施形態における1席集中モードおよび中間吹出モードを説明する図である。
【図22】第7実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図23】第7実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図24】第7実施形態の空調能力を吹出モード毎に示すグラフである。
【図25】第7実施形態の変形例における中間吹出モードを説明する図である。
【図26】第8実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図27】第9実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図28】第10実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図29】第11実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図30】第12実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図31】第13実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図32】第14実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図33】第15実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図34】第16実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図35】第16実施形態における制御処理で用いられるフラグを示す図である。
【図36】第17実施形態における制御処理で用いられるフラグを示す図である。
【図37】第18実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図38】第19実施形態における制御処理の要部を示すフローチャート、および第13実施形態における中間フットデフロスタモードを説明する図である。
【図39】第20実施形態における制御処理の要部を示すフローチャート、および第14実施形態における制御結果の一例を示す図である。
【図40】第21実施形態で用いられる制御マップを示す図である。
【図41】第22実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートである。
【図42】第23実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態を説明する。本実施形態における車両用空調装置は、図1に示す空調ユニット10(HVAC)を備えている。空調ユニット10は、図2に示す車室内最前部のダッシュボード1の内側に配置されて、その外殻を形成するケーシング11内に送風機、冷却用熱交換器をなす蒸発器、加熱用熱交換器をなすヒータコア、温度調整手段をなすエアミックスドア(いずれも図示せず)等を収容したものである。
【0040】
ケーシング11は、車室内に送風される送風空気の空気通路を形成しており、ある程度の弾性を有し、強度的にも優れた樹脂で成形されている。ケーシング11内の空気通路において送風空気が蒸発器やヒータコアを通過することで、所望温度の空調風が作り出される。
【0041】
ケーシング11内で作り出された空調風を空調対象空間である車室内へ吹き出すために、ケーシング11の送風空気流れ最下流部には吹出開口部12〜17(吹出部)が設けられている。吹出開口部12〜17は、開閉ドア18〜23(開閉機構)により開閉される。
【0042】
本例では、吹出開口部12〜17としてデフロスタ開口部12(デフロスタ吹出部)、運転席側フェイス開口部13、助手席側フェイス開口部14、運転席側フット開口部15、助手席側フット開口部16、および後席側フット開口部17が設けられており、開閉ドア18〜23としてデフロスタ開閉ドア18(デフロスタ開閉機構)、運転席側フェイス開閉ドア19(運転席側フェイス開閉機構)、助手席側フェイス開閉ドア20(助手席側フェイス開閉機構)、運転席側フット開閉ドア21(運転席側フット開閉機構)、助手席側フット開閉ドア22(助手席側フット開閉機構)および後席側フット開閉ドア23(後席側フット開閉機構)が設けられている。
【0043】
開閉ドア18〜23は、吹出モードを切り替える吹出モード切替手段を構成するものであって、例えば電動アクチュエータによって回転操作される。
【0044】
開閉ドア18〜23は、ケーシング11内に設けられていてもよいし、ケーシング11外に設けられていてもよい。また、開閉ドア18〜23は、アタッチメント構造になっていてもよい。
【0045】
デフロスタ開口部12には、樹脂製のデフロスタダクト24が接続され、このデフロスタダクト先端部のデフロスタ吹出口25から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0046】
運転席側フェイス開口部13には、樹脂製の運転席側フェイスダクト26が接続され、運転席側フェイスダクト先端部の運転席側フェイス吹出口27から運転席の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0047】
助手席側フェイス開口部14には、樹脂製の助手席側フェイスダクト28が接続され、助手席側フェイスダクト先端部の助手席側フェイス吹出口29から助手席の乗員の上半身に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0048】
運転席側フット開口部15には、樹脂製の運転席側フットダクト30が接続され、運転席側フットダクト先端部の運転席側フット吹出口31から運転席側の乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0049】
助手席側フット開口部16には、樹脂製の助手席側フットダクト32が接続され、助手席側フットダクト先端部の助手席側フット吹出口33から助手席側の乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0050】
後席側フット開口部17には、樹脂製の後席側フットダクト34が接続され、後席側フットダクト先端部の後席側フット吹出口35から後席側の乗員の足元部に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0051】
運転席側フットダクト30からは運転席側ニーダクト36が分岐しており、運転席側ニーダクト先端部の運転席側ニー吹出口37から運転席側の乗員の膝部に向けて空調風を吹き出すようになっている。
【0052】
運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37は、運転席に対応して設けられた運転席側吹出口であり、助手席側フェイス吹出口29、助手席側フット吹出口33および後席側フット吹出口35は、運転席以外の座席(非運転席)に対応して設けられた非運転席側吹出口である。
【0053】
助手席側フット吹出口33および後席側フット吹出口35を、非運転席側フット吹出口と表現することもできる。したがって、助手席側フット開閉ドア22および後席側フット開閉ドア23を、非運転席側フット開閉ドア(非運転席側フット開閉機構)と表現することもできる。
【0054】
助手席側フェイスダクト28、助手席側フットダクト32および後席側フットダクト34は、空調ユニット10から非運転席側吹出口に至る非運転席側ダクトである。
【0055】
開閉ドア18〜23によって実行される吹出モード(空調モード)は、4席吹出モード(通常空調モード)と、1席集中モード(特定領域優先空調モード)とに大別される。
【0056】
4席吹出モードは、車室内空間の全領域を空調する場合に選択される吹出モードである。1席集中モードは、車室内空間のうち運転席を含む領域(特定領域)を優先的に空調するときに選択される吹出モードである。
【0057】
4席吹出モードとしては、フェイス吹出口27、29から空調風を吹き出す4席フェイスモード、フェイス吹出口27、29とフット吹出口31、33、35とから空調風を吹き出す4席バイレベルモード、およびフット吹出口31、33、35から空調風を吹き出す4席フットモード等がある。なお、本例では、4席フットモードにおいてフェイス吹出口27、29からも空調風を少量吹き出すようになっている。
【0058】
1席集中モードとしては、1席集中フェイスモード(図3(a))、1席集中バイレベルモード(図3(b))および1席集中フットモード(図3(c))がある。
【0059】
1席集中フェイスモードは、4席フェイスモードに対して助手席側フェイス吹出口29からの吹き出しを遮断する吹出モードであり、主に夏季に実行される。1席集中バイレベルモードは、4席バイレベルモードに対して助手席側フェイス吹出口29、助手席側フット吹出口33および後席側フット吹出口35からの吹き出しを遮断する吹出モードであり、主に中間季に実行される。1席集中フットモードは、4席フットモードに対して助手席側フット吹出口33および後席側フット吹出口35からの吹き出しを遮断する吹出モードであり、主に冬季に実行される。
【0060】
本実施形態では、運転席側ニーダクト36が運転席側フットダクト30から分岐しているので、運転席側ニー吹出口37からの吹き出しは運転席側フット吹出口31からの吹き出しと連動する。すなわち、運転席側フット開閉ドア21が運転席側フット開口部15を開けると運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37から空調風が吹き出され、運転席側フット開閉ドア21が運転席側フット開口部15を閉じると運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37からの空調風の吹き出しが遮断される。
【0061】
図1に模式的に示すように、ケーシング11内の送風空気流れ最上流側には、内気(車室内空気)と外気(車室外空気)とを切替導入する内外気切替箱70が配置されている。内外気切替箱70には、ケーシング11内に内気を導入させる内気導入口70aおよび外気を導入させる外気導入口70bが形成されている。内外気切替箱70の内部には、内気の風量と外気の風量との風量割合を変化させる内外気切替ドア70c(内外気切替手段)が配置されている。内外気切替ドア70cは、内外気切替ドア70c用の電動アクチュエータによって駆動されるようになっている。
【0062】
図1では図示を省略しているが、内外気切替箱70の内部には、高速走行時のラム圧を低減させるラム圧低減機構(ラム圧低減手段)が設けられている。ラム圧とは、車両走行風によって生じる圧力(走行動圧)のことである。ラム圧調整機構は、例えば、高速走行時に外気導入口70bの開度を小さくしてラム圧を低減させる外気導入口ドアを内外気切替ドア70cと別個に設けることによって構成することができる。なお、ラム圧低減機構は必須の構成ではない。
【0063】
内外気切替箱70の空気流れ下流側には、内外気切替箱70を介して吸入した空気を車室内へ向けて送風する送風機71(ブロワ)が配置されている。送風機71は、空調ユニット10内の空気通路に空気流れを発生させる送風手段である。この送風機71は、遠心多翼ファンを電動モータにて駆動する電動送風機であって、空調制御装置から出力される制御信号によって目標回転数、すなわち目標送風量が制御される。
【0064】
図示を省略しているが、ケーシング11内において送風機71の空気流れ下流側には蒸発器が配置されている。蒸発器は、その内部を流通する冷媒と送風空気とを熱交換させて送風空気を冷却する。蒸発器は、図示しない圧縮機、凝縮器、気液分離器、膨張弁等とともに、冷凍サイクルを構成している。
【0065】
図示を省略しているが、蒸発器の空気流れ下流側には、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路といった空気通路、並びに加熱用冷風通路および冷風バイパス通路から流出した空気を混合させる混合空間が形成されている。
【0066】
図示を省略しているが、加熱用冷風通路には、蒸発器通過後の冷風を加熱するヒータコアが配置されている。ヒータコアは、車両走行用駆動力を出力するエンジンの冷却水と蒸発器通過後の冷風とを熱交換させて、蒸発器通過後の空気を加熱する。
【0067】
冷風バイパス通路は、蒸発器通過後の冷風を、ヒータコアを通過させることなく混合空間に導くための空気通路である。したがって、混合空間にて混合された送風空気の温度は、加熱用冷風通路を通過する空気および冷風バイパス通路を通過する空気の風量割合によって変化する。
【0068】
図示を省略しているが、蒸発器の空気流れ下流側であって、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路の入口側にはエアミックスドアが配置されている。エアミックスドアは、加熱用冷風通路および冷風バイパス通路へ流入させる冷風の風量割合を連続的に変化させることによって、混合空間内の空気温度(車室内へ送風される送風空気の温度)を調整する。
【0069】
エアミックスドアは、エアミックスドア用の電動アクチュエータによって駆動され、この電動アクチュエータは、空調制御装置から出力される制御信号によって、その作動が制御される。
【0070】
そして、混合空間から空調対象空間である車室内へ温度調整された送風空気を吹き出すために、ケーシング11の送風空気流れ最下流部に、上述した吹出開口部12〜17が設けられている。
【0071】
次に、本実施形態の電気制御部を図4に基づいて説明する。制御手段をなす空調制御装置40は、CPU、ROMおよびRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成され、そのROM内に記憶された空調制御プログラムに基づいて各種演算・処理を行い、出力側に接続された送風機71用電動モータ、各種電動アクチュエータ等の作動を制御する。したがって、空調制御装置40をエアコンECUと表現することもできる。
【0072】
空調制御装置40によって制御される電動アクチュエータとしては、例えば開閉ドア18〜23を回転操作する電動アクチュエータ群41がある。空調制御装置40が電動アクチュエータ群41を制御して開閉ドア18〜23を回転操作することによって吹出モード(空調モード)が切り替えられる。したがって、空調制御装置40および開閉ドア18〜23を空調モード切替手段と表現することができる。
【0073】
空調制御装置40の出力側のうち送風機71に対する出力について説明すると、空調制御装置40は、送風機用電動モータ42への供給電力を制御することで、送風機71の目標送風量を制御する。具体的には、空調制御装置40は、電動モータ42を駆動する駆動回路(図示せず)に制御信号を出力して、駆動回路から電動モータ42に供給される電力を設定することで、電動モータ42の回転数を制御する。
【0074】
送風機71の目標送風量は、図5に示す制御マップを用いて決定される。図5の横軸は車両熱負荷または空調負荷である。本例では、車両熱負荷または空調負荷(冷房負荷および暖房負荷)の度合いを示す指標としてTAO(目標吹出空気温度)を用いる。TAOは、次の数式(1)により算出される。
【0075】
TAO=A*TSET−B*TR−C*TS−D*TAM+E …(1)
但し、A〜Eは車両毎の定数、TSETは空調設定温度、TRは車室内温度、TSは日射量、TAMは外気温度である。冷房負荷が高いとTAOは低温になり、暖房負荷が高いとTAOは高温になる。
【0076】
図5の縦軸はブロワレベル(ブロワLv)である。ブロワレベルとは、送風機71の目標送風量、すなわち電動モータ42の目標回転数に相当するものであり、電動モータへの供給電力に対応している。例えば、電動モータを電圧制御する場合、駆動回路が電動モータに印加する電圧値がブロワレベルに対応し、電動モータを電流制御する場合、電動モータのON時間とOFF時間の割合であるデューティー比がブロワレベルに対応する。
【0077】
図5に示す制御マップは、TAOに対してブロワレベルがいわゆるバスタブカーブを描く関係を有するものである。すなわち、TAOの極低温域(最大冷房域)および極高温域(最大暖房域)でブロワレベルを最大値付近にして、送風機71の風量を最大風量付近に制御する。また、TAOが極低温域から中間温度域に向かって上昇すると、TAOの上昇に応じてブロワレベルを減少して、送風機71の風量を減少させる。さらに、TAOが極高温域から中間温度域に向かって低下すると、TAOの低下に応じてブロワレベルを減少して、送風機71の風量を減少させる。また、TAOが所定の中間温度域内に入ると、ブロワレベルを最小値にして送風機71の風量を最小値にするようになっている。
【0078】
図5の例では、TAOの極高温域(最大暖房域)でのブロワレベルは、TAOの極低温域(最大冷房域)でのブロワレベルよりも若干低く設定されている。これは、最大冷房域では、吹出面積が比較的大きいフェイス吹出口27、29から空調風が吹き出されるのに対し、最大暖房域では、吹出面積が比較的小さいフット吹出口31、33から空調風が吹き出されるので、最大暖房域でのブロワレベルが最大冷房域でのブロワレベルと同じであると最大暖房域での送風音が大きくなって乗員が不快に感じてしまうからである。
【0079】
図4に示すように、空調制御装置40の出力側には、補助空調装置であるシート空調装置43(シート送風手段)とシートヒータ44とが接続されている。シート空調装置43は、運転席に配置され、運転席の乗員に向かって送風する。シートヒータ44は、運転席に配置され、運転席の乗員を温める。また、空調制御装置40の出力側には、ラム圧低減機構の電動アクチュエータ45が接続されている。
【0080】
空調制御装置40の入力側には、車室内温度TRを検出する車室内温度検出手段をなす内気センサ51、外気温度TAMを検出する外気温度検出手段をなす外気センサ52、車室内の日射量TSを検出する日射量検出手段をなす日射センサ53、蒸発器から吹き出される空気温度である蒸発器吹出空気温度(冷風温度)TEを検出する冷風温度検出手段をなす蒸発器温度センサ54、エンジン冷却水温度TWを検出する冷却水温度検出手段をなす冷却水温度センサ55等のセンサ群の検出信号が入力される。
【0081】
また、空調制御装置40の入力側には、在席検出用センサ56(在席検出手段)の検出信号が入力される。在席検出用センサ56は、助手席および後席の各座席について乗員の有無を検出するものである。在席検出用センサ56としては、着座センサ、シートベルトセンサ、赤外線センサ等を用いることができる。
【0082】
また、空調制御装置40の入力側には、送風機71の吸込み圧力Psを検出する吸込み圧センサ57(吸込み圧力検出手段)、乗員の表面温度Tmを検出する赤外線センサ58(表面温度検出手段)、および車速SPDを検出する車速センサ59(車速検出手段)の検出信号も入力される。赤外線センサ58は、乗員の皮膚の温度や衣服の温度等を検出する。
【0083】
さらに、空調制御装置40の入力側には、車室内最前部のダッシュボード1に配置された空調操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチからの操作信号が入力される。空調操作パネル60に設けられた各種空調操作スイッチとしては、具体的に、車両用空調装置の作動スイッチ、エアコンのオン・オフを切り替えるエアコンスイッチ、車両用空調装置の自動制御を設定・解除するオートスイッチ、運転モードの切替スイッチ、内気導入と外気導入とを切り替える内外気切替スイッチ、吹出モードを切り替える吹出モードスイッチ、送風機71の風量設定スイッチ、空調温度TSETを設定する空調温度設定スイッチ66、デフロスタモードを設定するデフロスタスイッチ61等が設けられている。デフロスタモードは、デフロスタ吹出口25から車両前面窓ガラスの内面に向けて空調風を吹き出して車両前面窓ガラスの曇りを防止する吹出モードである。
【0084】
さらに、空調操作パネル60には、1席集中モードおよび中間吹出モードを設定する1席優先スイッチ62(特定領域優先スイッチ)と、運転席側の空調状態(空調温度等)を設定する運転席側空調スイッチ63と、助手席側の空調状態(空調温度等)を設定する助手席側空調スイッチ64(非運転席側空調操作手段)とが設けられている。図2に、ダッシュボード1における1席優先スイッチ62、運転席側空調スイッチ63および助手席側空調スイッチ64の配置例を示す。
【0085】
また、空調制御装置40の入力側には、後席側空調スイッチ65(非運転席側空調操作手段)からの操作信号も入力される。後席側空調スイッチ65は、後席側の空調状態(空調温度等)を設定するためのスイッチであり、例えば車室内後席のアームレストに配置されている。図2には、後席側空調スイッチ65を概略的に示している。
【0086】
運転席側空調スイッチ63、助手席側空調スイッチ64および後席側空調スイッチ65により、車室内の運転席側領域、助手席側領域および後席側領域の各領域毎に空調設定(空調温度等の設定)を独立して行うことができるようになっている。
【0087】
なお、後席側の空調設定は、空調操作パネル60に設けられたスイッチによっても行うことができるようになっている。
【0088】
図6は、空調制御装置40の制御処理の要部を示すフローチャートである。空調制御装置は、まずステップS100にて、特定領域のみに乗員が在席しているか否かを判定する。この判定は、在席検出用センサ56の検出信号に基づいて行われる。
【0089】
本例では、車室内空間のうち運転席側領域を特定領域とし、それ以外の助手席側領域および後席側領域を非特定領域としている。
【0090】
したがって、運転席側フェイス開口部13および運転席側フット開口部15を特定領域側吹出部と表現することができ、運転席側フェイス開閉ドア19および運転席側フット開閉ドア21を特定領域側開閉ドアと表現することができる。
【0091】
また、助手席側フェイス開口部14、助手席側フット開口部16および後席側フット開口部17を非特定領域側吹出部と表現することができ、助手席側フェイス開閉ドア20、助手席側フット開閉ドア22および後席側フット開閉ドア23を非特定領域側開閉ドアと表現することができる。
【0092】
特定領域以外(すなわち非特定領域)に乗員が在席していると判定した場合(NO判定)、ステップS110へ進み、通常吹出モード(4席吹出モード)に決定する。
【0093】
上述のごとく、通常吹出モード(4席吹出モード)は、4席フェイスモード、4席バイレベルモード、および4席フットモード等がある。このため、特定領域および非特定領域の両方へ空調風が吹き出される。
【0094】
図7は、通常吹出モードの作動例を説明する図であり、車速が高い場合(例えば100km)を示している。図7(a)〜(c)は、車室内空間の平面視であり、運転席側領域Dr、助手席側領域Paおよび後席側領域Rrに吹き出される空調風の風量を、矢印の長さで模式的に表現している。
【0095】
図7(a)に示す内気導入モードから図7(b)に示す外気導入モードに切り替えた場合、図7(b)の破線矢印で模式的に示すように、特定領域および非特定領域へ吹き出される空調風の風量が、ラム圧の影響によって増加する。
【0096】
そこで、特定領域および非特定領域へ吹き出される空調風の風量が内気導入モード時と同等に維持されるように、図7(c)に示すようにブロワレベルを下げる。図7の例では、ブロワレベルをM3からM1に下げている。
【0097】
ステップS100で特定領域のみに乗員が在席していると判定した場合(YES判定)、ステップS120へ進み、特定領域優先空調モード(1席集中モード)に決定する。
【0098】
上述のごとく、特定領域優先空調モード(1席集中モード)としては、1席集中フェイスモード、1席集中バイレベルモードおよび1席集中フットモードがある。このため、通常吹出モード(4席吹出モード)に比べ、特定領域へ集中して空調風が吹き出され、非特定領域への空調風の吹き出しが抑制される。
【0099】
図8は、特定領域優先空調モードの作動例を説明する図であり、車速が高い場合(例えば100km)を示している。図8(a)〜(d)は、車室内空間の平面視であり、運転席側領域Dr、助手席側領域Paおよび後席側領域Rrに吹き出される空調風の風量を、矢印の長さで模式的に表現している。
【0100】
図8(a)に示す内気導入モードから図8(b)に示す外気導入モードに切り替えた場合、図8(b)の破線矢印で模式的に示すように、特定領域および非特定領域へ吹き出される空調風の風量が、ラム圧の影響によって増加する。そこで、特定領域へ吹き出される空調風の風量が減少するように、図8(c)に示すようにブロワレベルを下げる。図8の例では、ブロワレベルをM3からLoに下げている。
【0101】
ここで、特定領域優先空調モードでは、特定領域へ集中して空調風が吹き出されるので、ブロワレベルを下げるだけでは特定領域へ吹き出される空調風の風量が内気導入モード時よりも多くなることがある。
【0102】
そこで、ステップS130、S140にて、特定領域へ吹き出される空調風の風量を内気導入モード時と同等に維持するための制御処理を行う。
【0103】
ステップS130では、送風機吸込圧力(換言すると、送風機71に押し込まれる空気の圧力)を算出する。本例では、内外気切替ドア70cの作動状態と車速SPDとに基づいてラム圧を算出し、このラム圧を送風機吸込圧力として用いる。なお、導入空気に占める外気の割合が大きい程、ラム圧は大きくなり、車速SPDが高い程、ラム圧は大きくなる。
【0104】
なお、送風機吸込圧力は、車速SPD、内外気切替ドア70cの作動状態、ラム圧低減機構の作動状態、および吸込み圧力Psのうち少なくとも1つに基づいて算出すればよい。上述のように、吸込み圧力Psは、吸込み圧センサ57によって検出することができる。
【0105】
続くステップS140では、非特定領域に対する空調能力を算出する。具体的には、ステップS130で算出した送風機吸込圧力に基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、非特定領域に対する空調能力を算出する。
【0106】
図9は、ステップS140で参照する制御マップの例を示すものであり、ラム圧が大きくなるにつれて、非特定領域に対する空調能力を大きくする。実線で示すように、ラム圧が大きくなるにつれて、非特定領域に対する空調能力を連続的に大きくするようにしてもよいし、破線で示すように、ラム圧が大きくなるにつれて、非特定領域に対する空調能力を段階的に大きくするようにしてもよい。なお、図9のマップにおいて、ラム圧の代わりに車速SPDを用いてもよい。
【0107】
そして、ステップS140で算出した非特定領域に対する空調能力に応じて、非特定領域に吹き出される空調風の風量を調整する。具体的には、ステップS140で算出した非特定領域に対する空調能力が大きい程、助手席側吹出口29、33および後席側吹出口35のうち少なくとも1つの開度を大きくして、非特定領域への吹き出し風量を増加させる。非特定領域への吹き出し風量が増加することで、特定領域への吹き出し風量が減少するので、特定領域へ吹き出される空調風の風量が内気導入モード時と同等に維持される。
【0108】
図10は、非特定領域への吹き出し風量の例を示すものである。図10では、矢印の面積で風量を表している。図10(a)〜(e)に示すように、送風機吸込圧力(送風機71に押し込まれる空気の圧力)に応じて非特定領域(助手席側領域Paおよび後席側領域Rr)への吹き出し風量を調整することによって、特定領域(運転席側領域Dr)へ吹き出される空調風の風量が内気導入モード時と同等に維持される。なお、図10(a)の状態よりもさらに非特定領域への吹き出し風量を多くする必要がある場合、通常空調モード(4席吹出モード)に切り替えるようにしてもよい。
【0109】
本実施形態によると、送風機吸込圧力(送風機71に押し込まれる空気の圧力)に応じて、特定領域の乗員に対する空調能力の集中度合いを変えることができる。具体的には、送風機吸込圧力(送風機71に押し込まれる空気の圧力)が大きい程、非特定領域に対する空調能力を大きくすることができる。このため、乗員快適性の悪化を抑制しつつ省能力化を図ることができる。
【0110】
なお、上述の実施形態では、運転席側領域を特定領域とし、助手席側領域および後席側領域を非特定領域としているが、変形例として、運転席側領域および助手席側領域を特定領域とし、後席側領域を非特定領域としてもよい。
【0111】
したがって、この変形例では、運転席側フェイス開口部13、運転席側フット開口部15、助手席側フェイス開口部14および助手席側フット開口部16を特定領域側吹出部と表現することができ、運転席側フェイス開閉ドア19、運転席側フット開閉ドア21、助手席側フェイス開閉ドア20および助手席側フット開閉ドア22を特定領域側開閉ドアと表現することができる。また、後席側フット開口部17を非特定領域側吹出部と表現することができ、後席側フット開閉ドア23を非特定領域側開閉ドアと表現することができる。
【0112】
図11は、この変形例における通常吹出モードおよび特定領域優先空調モードの具体的な吹き出しパターンの一例を示すものである。
【0113】
図11(a)、(b)に示すように、送風機吸込圧力(送風機71に押し込まれる空気の圧力)に応じて非特定領域(後席側領域)への吹き出し風量を調整することによって、特定領域(運転席側領域および助手席側領域)へ吹き出される空調風の風量が内気導入モード時と同等に維持される。なお、図11(a)の状態よりもさらに非特定領域への吹き出し風量を多くする必要がある場合、通常空調モード(4席吹出モード)に切り替えるようにしてもよい。
【0114】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、送風機吸込圧力に応じて非特定領域の空調能力を決定するが、本第2実施形態では、送風機吸込圧力と、車両熱負荷もしくは空調負荷とに応じて非特定領域の空調能力を決定する。
【0115】
ここで車両熱負荷もしくは空調負荷とは、外気温度Tam、日射量Ts、車室内温度Tr、空調設定温度TSET、乗員の表面温度Tm等から算出される値であり、例えば目標吹出空気温度TAOを用いることができる。
【0116】
中間季、夏の日射がない時、冬の日射がある時など低負荷時には、非特定領域の空調能力を小さくすることにより、乗員の快適性を損なうことなく空調能力を削減できる。
【0117】
ただし、夏の高外気温かつ日射がある時や、冬の低外気温かつ日射がない時など、中負荷〜高負荷時には、非特定領域を空調しないことにより、特定領域の乗員の温熱快適性が悪化する可能性がある。
【0118】
そこで、本実施形態では、中負荷〜高負荷時に非特定領域の空調能力を上げることにより、特定領域の乗員の温熱快適性を維持する。
【0119】
図12は、本実施形態における空調制御装置40の制御処理の要部を示すフローチャートである。まずステップS200にて、特定領域のみに乗員が在席しているか否かを判定する。この判定は、在席検出用センサ56の検出信号に基づいて行われる。
【0120】
本例では、運転席側領域を特定領域とし、助手席側領域および後席側領域を非特定領域としている。
【0121】
特定領域以外に乗員が在席していると判定した場合(NO判定)、ステップS210へ進み、通常吹出モードに決定する。通常吹出モードの作動は、上述の第1実施形態と同様である。
【0122】
ステップS200で特定領域のみに乗員が在席していると判定した場合(YES判定)、ステップS220へ進み、特定領域優先空調モードに決定する。
【0123】
続くステップS230〜S270にて、特定領域へ吹き出される空調風の風量を内気導入モード時と同等に維持するための制御処理を行う。
【0124】
ステップS230では送風機吸込圧力を算出する。送風機吸込圧力の算出方法は、上記第1実施形態のステップS130と同様である。
【0125】
続くステップS240では、送風機吸込圧力に基づいて、非特定領域に対する空調能力を算出する。具体的には、ステップS230で算出した送風機吸込圧力に基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、非特定領域に対する空調能力を算出する。本例では、制御マップとして、上述の図9と同様のものを用いている。
【0126】
一方、ステップS250では、空調負荷の度合いを示す指標として、TAO(目標吹出空気温度)を上述の数式(1)により算出する。
【0127】
続くステップS260では、空調負荷に基づいて、非特定領域に対する空調能力を算出する。具体的には、ステップS250で算出した空調負荷(TAO)に基づいて、予め空調制御装置40に記憶された制御マップを参照して、非特定領域に対する空調能力を算出する。
【0128】
図13は、ステップS260で参照する制御マップの例を示すものであり、空調負荷(TAO)が大きくなるにつれて、非特定領域に対する空調能力を大きくする。実線で示すように、空調負荷(TAO)が大きくなるにつれて、非特定領域に対する空調能力を連続的に大きくするようにしてもよいし、破線で示すように、空調負荷(TAO)が大きくなるにつれて、非特定領域に対する空調能力を段階的に大きくするようにしてもよい。
【0129】
そして、ステップS270では、ステップS240で算出した、ラム圧に基づく非特定領域に対する空調能力と、ステップS260で算出した、空調負荷に基づく非特定領域に対する空調能力とを比較して、大きい方の空調能力を採用する。
【0130】
本実施形態によると、特定領域優先空調モード(1席集中モード)において、車両熱負荷もしくは空調負荷に応じて非特定領域の空調能力を決定するので、乗員の快適性を良好に確保できる。
【0131】
また、特定領域優先空調モード(1席集中モード)時の特定領域の空調能力を通常吹出モード(4席吹出モード)時の特定領域の空調能力と同等とし、不必要な非特定領域の空調能力を削減するので、効率的な空調が可能である。
【0132】
上述のステップS260では、空調負荷(TAO)が大きくなるにつれて非特定領域に対する空調能力を大きくするが、本実施形態の変形例として、空調負荷が所定負荷よりも小さい場合、低負荷時空調モードとし、空調負荷が所定負荷よりも大きい場合、低負荷時空調モードよりも空調能力の高い高負荷時空調モードとするようにしてもよい。
【0133】
以下、この変形例について説明する。まず、TAOが図14に示す領域(1)〜(5)のいずれにあるかを判定する。具体的には、TAOが低温側所定負荷C1以下の場合に領域(1)にあると判定し、TAOが低温側所定負荷C1より大きく低温側所定負荷C2より小さい場合に領域(2)にあると判定し、TAOが低温側所定負荷C2以上かつ高温側所定負荷H2以下の場合に領域(3)にあると判定し、TAOが高温側所定負荷H2より大きく高温側所定負荷H1より小さい場合に領域(4)にあると判定し、TAOが高温側所定負荷H1以上の場合に領域(5)にあると判定する。
【0134】
本例では、低温側所定負荷C1、C2および高温側所定負荷H1、H2は、予め空調制御装置40に記憶された固定値である。なお、図13に示すように、本実施形態における領域(1)〜(5)を、その順番に、夏季高負荷、夏季中負荷、低負荷、冬季中負荷および冬季高負荷と表現することができる。
【0135】
そして、TAOが領域(1)または(5)にある高負荷時は、図15(a)に示すように非特定領域に対する空調能力を通常吹出モードと同等の大きな能力に決定し、TAOが領域(2)または(4)にある中負荷時は、図15(b)に示すように非特定領域に対する空調能力を高負荷時よりも小さな能力に決定し、TAOが領域(3)にある低負荷時は、図15(c)に示すように非特定領域に対する空調能力を中負荷時よりもさらに小さな能力に決定する。
【0136】
この変形例では、低温側所定負荷C1、C2および高温側所定負荷H1、H2は、予め空調制御装置40に記憶された固定値であるが、低温側所定負荷C1、C2および高温側所定負荷H1、H2のうち少なくとも1つを種々の条件に応じて変更するようにしても良い。
【0137】
例えば、省エネモードが選択されたときに、低温側所定負荷C1、C2および高温側所定負荷H1、H2を高負荷側に変更するようにしてもよい。具体的には、省エネモードが選択されたときに、低温側所定負荷C1、C2を低温側に変更し、高温側所定負荷H1、H2を高温側に変更すれば、空調能力を低減して省エネルギー効果を得ることができる。る。
【0138】
なお、本例では、省エネモードは、乗員が1席優先スイッチ62を操作することによって設定される。図15に示すように、1席優先スイッチ62は、1席優先モードの選択に加え、快適モード(快適)および省エネモード(eco)の選択もできるようになっている。したがって、1席優先スイッチ62を省エネモード設定手段と表現することができる。
【0139】
また、シート空調装置43、シートヒータ44、輻射ヒータ等の補助空調装置が作動している時に、低温側所定負荷C1、C2および高温側所定負荷H1、H2を高負荷側に変更するようにしてもよい。
【0140】
また、日射量TSに応じて低温側所定負荷C1、C2および高温側所定負荷H1、H2を変更するようにしてもよい。具体的には、冷房時に、日射量TSが多いほど低温側所定負荷C1、C2および高温側所定負荷H1、H2を低負荷側に変更すれば、乗員の快適性を向上することができる。一方、暖房時には、日射量TSが多いほど低温側所定負荷C1、C2および高温側所定負荷H1、H2を高負荷側に変更すれば、過剰な暖房能力を削減して、乗員快適性と省能力化とを両立することができる。
【0141】
また、非特定領域への空調能力を座席の位置に応じて変更してもよい。例えば、助手席の位置が最後端にあり且つ助手席の背もたれ部が倒されている場合、助手席乗員はほぼ後席にいるのと同じ状態であるため、助手席乗員の快適感を損なわないように後席領域の空調能力を増加するのが好ましい。また、非特定領域への空調能力を風向きに応じて変更してもよい。
【0142】
(第3実施形態)
上記第2実施形態では、送風機吸込圧力と、車両熱負荷もしくは空調負荷とに応じて非特定領域の空調能力を決定するが、本第3実施形態では、窓曇りが懸念される場合、非特定領域に対する空調能力を上昇させる。
【0143】
図17は、空調制御装置40の制御処理の要部を示すフローチャートである。空調制御装置は、まずステップS300にて、特定領域のみに乗員が在席しているか否かを判定する。この判定は、在席検出用センサ56の検出信号に基づいて行われる。
【0144】
本例では、運転席側領域を特定領域とし、助手席側領域および後席側領域を非特定領域としている。
【0145】
特定領域以外に乗員が在席していると判定した場合(NO判定)、ステップS310へ進み、通常吹出モードに決定する。通常吹出モードの作動は、上述の第1、第2実施形態と同様である。
【0146】
ステップS300で特定領域のみに乗員が在席していると判定した場合(YES判定)、ステップS320へ進み、特定領域優先空調モードに決定する。続くステップS330〜S350にて、特定領域へ吹き出される空調風の風量を内気導入モード時と同等に維持するとともに、窓曇りを防止するための制御処理を行う。
【0147】
ステップS330では、送風機吸込圧力、空調負荷、および窓曇りの危険度を算出する。送風機吸込圧力および空調負荷の算出方法は、上述の第2実施形態のステップS230、S250と同様である。
【0148】
本例では、窓曇りの危険度を、外気温度Tam、エンジン冷却水温度TW、車室内の日射量TS、車速SPDおよび乗車人数等に基づいて算出する。例えば、外気温度Tamが高い場合、エンジン冷却水温度TWが低い場合、車速SPDが高い場合や乗車人数が多い場合などは窓曇りの危険度が高くなると判断される。なお、窓曇りの危険度を、ガラス湿度センサの検出値や、乗員によるスイッチ操作の有無(例えばデフロスタスイッチの操作の有無)等に基づいて算出しても良い。
【0149】
また、窓曇りの危険度を、外気温度Tam、エンジン冷却水温度TW、車室内の日射量TS、車速SPD、乗車人数、ガラス湿度センサの検出値、および乗員によるスイッチ操作の有無等のうち少なくとも1つに基づいて算出してもよい。
【0150】
ステップS340では非特定領域に対する空調能力を算出する。具体的には、送風機吸込圧力に基づいて非特定領域に対する空調能力を算出し、空調負荷に基づいて非特定領域に対する空調能力を算出する。
【0151】
送風機吸込圧力に基づく非特定領域に対する空調能力の算出方法、および空調負荷に基づく非特定領域に対する空調能力の算出方法は、上述の第2実施形態のステップS240、S260と同様である。
【0152】
さらに、ステップS330で算出した窓曇りの危険度に基づいて、非特定領域に対する空調能力を算出する。具体的には、窓曇り危険度が所定以上となった場合、窓曇りの危険があると判断して非特定領域に対する空調能力を大きな能力に決定する。また、窓曇りの危険度が高い程、非特定領域に対する空調能力を大きな能力に決定するようにしてもよい。
【0153】
そして、ステップS350では、ステップS340で算出した3つの空調能力(送風機吸込圧力に基づく非特定領域に対する空調能力、空調負荷に基づく非特定領域に対する空調能力、および窓曇りの危険度に基づく非特定領域に対する空調能力)を比較して、最も大きい空調能力を採用する。
【0154】
これにより、特定領域優先空調モードであっても窓曇りの危険がある場合に非特定領域に対する空調能力が増加させることができるので、特定領域優先空調モード時に非特定領域の窓の曇りを防止することができる。
【0155】
(第4実施形態)
本第4実施形態では、非特定領域の空調設定が操作された時には、特定領域優先空調モードをやめ、通常吹出モードに切り替える。
【0156】
図18は、空調制御装置40の制御処理の要部を示すフローチャートである。空調制御装置は、まずステップS400にて、特定領域のみに乗員が在席しているか否かを判定する。この判定は、在席検出用センサ56の検出信号に基づいて行われる。
【0157】
本例では、運転席側領域を特定領域とし、助手席側領域および後席側領域を非特定領域としている。
【0158】
特定領域以外に乗員が在席していると判定した場合(NO判定)、ステップS410へ進み、通常吹出モードに決定する。通常吹出モードの作動は、上述の第1〜第4実施形態と同様である。
【0159】
ステップS400で特定領域のみに乗員が在席していると判定した場合(YES判定)、ステップS420へ進み、非特定領域空調スイッチの操作があったか否かを判定する。非特定領域空調スイッチとは、非特定領域の空調設定を行うためのスイッチ(空調操作手段)のことであり、本例では、空調操作パネル60に設けられた各種スイッチのうち助手席側領域および後席側領域の空調設定を行うためのスイッチの操作あったか否かを判定する。
【0160】
非特定領域空調スイッチの操作がなかったと判定した場合(NO判定)、ステップS410へ進み、通常吹出モードに決定する。非特定領域空調スイッチの操作があったと判定した場合(YES判定)、ステップS430へ進み、特定領域優先空調モードに決定する。
【0161】
本実施形態によると、乗員のスイッチ操作に応じて特定領域優先空調モードから通常吹出モードに切り替えるので、乗員の要求に応じた空調を行うことができる。また、既存の非特定領域空調スイッチを使用して、特定領域優先空調モードから通常吹出モードへの切り替えを行うので、新たな専用スイッチを設ける必要がなく、コストの上昇を抑制できる。
【0162】
(第5実施形態)
本第5実施形態では、特定領域優先空調モードの場合、非特定領域側の吹出口の開度を時間の経過に従って増減することにより、特定領域への吹き出し風量を揺らがせ、揺らぎ空調により運転席乗員の快適感を向上させる。
【0163】
図19は本実施形態の作動例を示すタイムチャートである。例えばフェイスモード時は、助手席側フェイス開口部14の開度を、助手席側フェイス開閉ドア20によって時間とともに増減させる。これにより、助手席側風量(助手席側フェイス開口部14からの吹き出し風量)が増減し、それに伴い運転席側風量(運転席側フェイス開口部13からの吹き出し風量)が助手席側風量とは逆に増減する。これにより、運転席側領域(特定領域)において揺らぎ空調が実現される。
【0164】
(第6実施形態)
本第6実施形態では、特定領域優先空調モードに切り替えるための具体的機構について述べる。図20は、本実施形態の空調ユニット10を示す模式図である。
【0165】
ケーシング11の外部には、運転席側リンクモジュール75(特定領域側リンク機構)および助手席側リンクモジュール76(非特定領域側リンク機構)が配置されている。
【0166】
運転席側リンクモジュール75は、デフロスタ開閉ドア18、運転席側フェイス開閉ドア19、および運転席側フット開閉ドア21を連動駆動する。具体的には、運転席側リンクモジュール75は、デフロスタ開閉ドア18、運転席側フェイス開閉ドア19、および運転席側フット開閉ドア21に連結されたリンク部材と、リンク部材を駆動するアクチュエータとを有している。
【0167】
助手席側リンクモジュール76は、助手席側フェイス開閉ドア20および助手席側フット開閉ドア22を連動駆動する。具体的には、助手席側リンクモジュール76は、助手席側フェイス開閉ドア20および助手席側フット開閉ドア22に連結されたリンク部材と、リンク部材を駆動するアクチュエータとを有している。
【0168】
運転席側リンクモジュール75および助手席側リンクモジュール76は、作動モードとして、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモードおよびデフロスタモードの5つのモードを有している。この5つのモードを以下に説明する。
【0169】
(1)フェイスモード
運転席側リンクモジュール75は、デフロスタ開閉ドア18をデフロスタ開口部12の全閉位置に駆動し、運転席側フェイス開閉ドア19を運転席側フェイス開口部13の開口位置に駆動し、運転席側フット開閉ドア21を運転席側フット開口部15の全閉位置に駆動する。
【0170】
一方、助手席側リンクモジュール76は、助手席側フェイス開閉ドア20を助手席側フェイス開口部14の開口位置に駆動し、助手席側フット開閉ドア22を助手席側フット開口部16の全開位置に駆動する。
【0171】
(2)バイレベルモード
運転席側リンクモジュール75は、デフロスタ開閉ドア18をデフロスタ開口部12の全閉位置に駆動し、運転席側フェイス開閉ドア19を運転席側フェイス開口部13の開口位置に駆動し、運転席側フット開閉ドア21を運転席側フット開口部15の開口位置に駆動する。
【0172】
一方、助手席側リンクモジュール76は、助手席側フェイス開閉ドア20を助手席側フェイス開口部14の開口位置に駆動し、助手席側フット開閉ドア22を助手席側フット開口部16の開口位置に駆動する。
【0173】
(3)フットモード
運転席側リンクモジュール75は、デフロスタ開閉ドア18をデフロスタ開口部12の全閉位置に駆動し、運転席側フェイス開閉ドア19を運転席側フェイス開口部13の全閉位置に駆動し、運転席側フット開閉ドア21を運転席側フット開口部15の開口位置に駆動する。
【0174】
一方、助手席側リンクモジュール76は、助手席側フェイス開閉ドア20を助手席側フェイス開口部14の全閉位置に駆動し、助手席側フット開閉ドア22を助手席側フット開口部16の開口位置に駆動する。
【0175】
(4)フットデフロスタモード
運転席側リンクモジュール75は、デフロスタ開閉ドア18をデフロスタ開口部12の開口位置に駆動し、運転席側フェイス開閉ドア19を運転席側フェイス開口部13の全閉位置に駆動し、運転席側フット開閉ドア21を運転席側フット開口部15の開口位置に駆動する。
【0176】
一方、助手席側リンクモジュール76は、助手席側フェイス開閉ドア20を助手席側フェイス開口部14の全閉位置に駆動し、助手席側フット開閉ドア22を助手席側フット開口部16の開口位置に駆動する。
【0177】
(5)デフロスタモード
運転席側リンクモジュール75は、デフロスタ開閉ドア18をデフロスタ開口部12の開口位置に駆動し、運転席側フェイス開閉ドア19を運転席側フェイス開口部13の全閉位置に駆動し、運転席側フット開閉ドア21を運転席側フット開口部15の全閉位置に駆動する。
【0178】
一方、助手席側リンクモジュール76は、助手席側フェイス開閉ドア20を助手席側フェイス開口部14の全閉位置に駆動し、助手席側フット開閉ドア22を助手席側フット開口部16の全閉位置に駆動する。
【0179】
なお、フェイスモード、バイレベルモード、フットモード、フットデフロスタモードを非デフロスタモードと表現することができる。
【0180】
次に、特定領域優先空調モードの作動を説明する。特定領域優先空調モードでは、運転席側リンクモジュール75を非デフロスタモードにし、助手席側リンクモジュール76をデフロスタモードにする。これにより、助手席側フェイス開口部14および助手席側フット開口部16が閉じられるので、助手席側の吹き出しをシャットすることがができる。なお、図20は、特定領域優先空調モードのフェイスモード時の作動状態を示している。
【0181】
本実施形態によると、既存の5つの作動モードを組み合わせることで特定領域優先空調モードに切り替えることができる。このため、特定領域優先空調モード用にリンク部材を新たに設計、製造することなく、特定領域優先空調を実現することができる。
【0182】
(第7実施形態)
本第7実施形態では、開閉機構18〜23によって実行される吹出モードは、4席吹出モード(通常吹出モード)と、1席集中モード(運転席優先吹出モード)と、中間吹出モードとに大別される。
【0183】
4席吹出モードとしては、フェイス吹出口27、29から空調風を吹き出す4席フェイスモード、フェイス吹出口27、29とフット吹出口31、33、35とから空調風を吹き出す4席バイレベルモード、およびフット吹出口31、33、35から空調風を吹き出す4席フットモード等がある。なお、本例では、4席フットモードにおいてフェイス吹出口27、29からも空調風を少量吹き出すようになっている。
【0184】
1席集中モードとしては、1席集中フェイスモード(図21(b))、1席集中バイレベルモード(図21(c))および1席集中フットモード(図21(d))がある。
【0185】
1席集中フェイスモードは、4席フェイスモードに対して助手席側フェイス吹出口29からの吹き出しを遮断する吹出モードであり、主に夏季低負荷時に実行される。
【0186】
1席集中バイレベルモードは、4席バイレベルモードに対して助手席側フェイス吹出口29、助手席側フット吹出口33および後席側フット吹出口35からの吹き出しを遮断する吹出モードであり、主に中間季に実行される。
【0187】
1席集中フットモードは、4席フットモードに対して助手席側フット吹出口33および後席側フット吹出口35からの吹き出しを遮断する吹出モードであり、主に冬季低負荷時に実行される。
【0188】
中間吹出モードとしては、図21(a)に示す中間フェイスモード、および図21(e)に示す中間フットモードがある。
【0189】
中間フェイスモードは、4席フェイスモードと1席集中フェイスモードとの中間のモードであり、主に夏季中負荷時に実行される。具体的には、中間フェイスモードでは、助手席側フェイス吹出口29(Pa−Face)の風量割合(開度)がフェイスモードと1席集中フェイスモードとの中間になる。
【0190】
中間フットモードは、フットモードと1席集中フットモードとの中間のモードであり、主に冬季中負荷時に実行される。具体的には、中間フットモードでは、助手席側フット吹出口23(Pa−Foot)の風量割合(開度)がフットモードと1席集中フットモードとの中間になる。
【0191】
図22は、空調制御装置40の制御処理の要部を示すフローチャートである。空調制御装置は、まずステップS500にて1席優先スイッチ62が押されているか否かを判定する。1席優先スイッチ62が押されていない(OFF時)と判定した場合(NO判定の場合)はステップS510へ進んで通常の吹出モード切替制御を実行する。通常の吹出モード切替制御では、TAO(目標吹出空気温度)を上述の数式(1)により算出し、算出したTAOに応じて4席フェイスモード、4席バイレベルモードおよび4席フットモードを切り替える。
【0192】
具体的には、TAOの低温域(冷房域)では4席フェイスモードに、TAOの中間温度域では4席バイレベルモードに、TAOの高温域(暖房域)では4席フットモードに切り替える。
【0193】
ステップS500において1席優先スイッチ62が押されている(ON時)と判定した場合(YES判定の場合)はステップS520へ進み、空調負荷の度合いを示す指標としてTAO(目標吹出空気温度)を上述の数式(1)により算出する。
【0194】
次いで、ステップS530にて空調条件をTAOに基づいて判定する。本例では、TAOが図23に示す領域(1)〜(7)のいずれにあるかを判定する。具体的には、TAOが低温側所定負荷C1以下の場合に領域(1)にあると判定し、TAOが低温側所定負荷C1より大きく低温側所定負荷C2より小さい場合に領域(2)にあると判定し、TAOが低温側所定負荷C2以上かつ低温側所定負荷C3以下の場合に領域(3)にあると判定し、TAOが低温側所定負荷C3より大きく高温側所定負荷H3より小さい場合に領域(4)にあると判定し、TAOが高温側所定負荷H3以上かつ高温側所定負荷H2以下の場合に領域(5)にあると判定し、TAOが高温側所定負荷H2より大きく高温側所定負荷H1より小さい場合に領域(6)にあると判定し、TAOが高温側所定負荷H1以上の場合に領域(7)にあると判定する。
【0195】
なお、図23に示すように、本実施形態における領域(1)〜(7)を、その順番に、夏季高負荷、夏季中負荷、夏季低負荷、中間季、冬季低負荷、冬季中負荷および冬季高負荷と表現することができる。
【0196】
ステップS530においてTAOが領域(1)または領域(7)にあると判定した場合はステップS510へ進んで通常の吹出モード切替制御(通常制御)を実行する。具体的には、領域(1)にあると判定した場合は4席フェイスモードを実行し、領域(7)にあると判定した場合は4席フットモードを実行する。
【0197】
すなわち、空調ユニット10からの冷風または温風が運転席側領域のみならず助手席側領域および後席側領域にも吹き出される。このため、車室内の温度分布が抑制される。
【0198】
このとき、図23に示すようにブロワレベルが最大値付近に設定され、送風機71の風量が最大風量付近に制御される。これにより、運転席の乗員の上半身および下半身(膝部および足元部)に対する吹出風量が十分に確保される。このため、運転席の乗員の快適性が確保される。
【0199】
一方、TAOが領域(2)〜(6)のいずれかにあると判定した場合、ステップS540へ進み、ステップS530での判定結果に基づいて1席優先制御を実行する。
【0200】
具体的には、ステップS530において領域(2)にあると判定した場合はステップS5401へ進んで中間フェイスモードを実行する。中間フェイスモードでは主に運転席側フェイス吹出口27から冷風が吹き出されるとともに、助手席側フェイス吹出口29からも少量の冷風が吹き出される。すなわち、空調ユニット10からの冷風が運転席側領域のみならず助手席側領域にも吹き出される。このため、運転席の乗員の温熱感が効果的に向上されるとともに、車室内の温度分布が抑制される。
【0201】
ステップS530において領域(3)にあると判定した場合はステップS5402へ進んで1席集中フェイスモードを実行する。1席集中フェイスモードでは運転席側フェイス吹出口27のみから冷風が吹き出される。すなわち、空調ユニット10からの冷風が運転席の乗員の上半身に集中する。このため、運転席の乗員の温熱感が早期に向上される。
【0202】
ステップS530において領域(4)にあると判定した場合はステップS5403へ進んで1席集中バイレベルモードを実行する。1席集中バイレベルモードでは運転席側フェイス吹出口27、運転席側フット吹出口31および運転席側ニー吹出口37から空調風が吹き出される。すなわち、運転席の乗員の上半身だけでなく下半身(膝部および足元部)にも空調風が吹き出される。このため、運転席の乗員の快適性が効果的に確保される。
【0203】
ステップS530において領域(5)にあると判定した場合はステップS5404へ進んで1席集中フットモードを実行する。1席集中フットモードでは主に運転席側フット吹出口31から温風が吹き出され、運転席側フェイス吹出口27および運転席側ニー吹出口37からも少量の温風が吹き出される。すなわち、空調ユニット10からの温風が主に運転席の乗員の足元に吹き出される。このため、運転席の乗員の温熱感が効果的に向上される。
【0204】
ステップS530において領域(6)にあると判定した場合はステップS5405へ進んで中間フットモードを実行する。中間フットモードでは主に運転席側フット吹出口31から温風が吹き出され、運転席側フェイス吹出口27、運転席側ニー吹出口37、助手席側フェイス吹出口29、助手席側フット吹出口33および後席側フット吹出口35からも少量の温風が吹き出される。すなわち、空調ユニット10からの温風が運転席側領域のみならず助手席側領域および後席側領域にも吹き出される。このため、運転席の乗員の温熱感が効果的に向上されるとともに、車室内の温度分布が抑制される。
【0205】
本実施形態によると、車両熱負荷や空調負荷に応じて4席吹出モード、1席集中モードおよび中間吹出モードを切り替えるので、乗員快適性を確保しつつ省能力化を図ることができる。
【0206】
具体的には、冷房負荷が第1所定負荷C1以上の時、または暖房負荷が第1所定負荷H1以上の時には、車室内温度分布が非常に生じやすい高負荷時(夏季高負荷時または冬季高負荷時)であると判断して4席吹出モード(4席フェイスモードまたは4席フットモード)を実行する。これにより、車室内温度分布を抑制して乗員の快適性を確保することができる。
【0207】
また、冷房負荷が第2所定負荷C2以下の時、または暖房負荷が第2所定負荷H2以下の時には、車室内温度分布が生じにくい低負荷時(夏季低負荷時または冬季低負荷時)であると判断して、1席集中モード(1席集中フェイスモードまたは1席集中フットモード)を実行する。これにより、省能力化を図ることができる。
【0208】
そして、冷房負荷が第1所定負荷C1より大きく第2所定負荷C2より小さい時、または暖房負荷が第1所定負荷H1より大きく第2所定負荷H2より小さい時には、中負荷時(夏季中負荷時または冬季中負荷時)であると判断して中間吹出モード(中間フェイスモードまたは中間フットモード)を実施する。これにより、車室内温度分布を抑制して乗員の快適性を確保しつつ省能力化を図ることができる。
【0209】
図24は、4席吹出モード、中間吹出モード、1席集中モードで空調能力を比較したものである。図24の例では、中間吹出モード(中間フェイス、中間フット)では、4席吹出モード(4席フェイス、4席フット)の25%程度の省能力効果が得られ、1席集中モード(1席集中フェイス、1席集中バイレベル、1席集中フット)では4席吹出モード(4席フェイス、4席バイレベル、4席フット)の50%程度の省能力効果が得られる。
【0210】
なお、本実施形態の変形例として、中間フェイスモードおよび中間フットモードを図25のようにしてもよい。すなわち、助手席側フェイス吹出口29のうち運転席に近い側に配置された助手席側センターフェイス吹出口29aと、運転席から離れた側に配置された助手席側サイドフェイス吹出口29bとを独立して開閉可能に構成し、中間フェイスモードおよび中間フットモードでは助手席側センターフェイス吹出口29aを開いて助手席側サイドフェイス吹出口29bを閉じるようにしてもよい。
【0211】
この変形例によると、運転席に近い助手席側センターフェイス吹出口29aから空調風を吹き出すことで、運転席近傍における車室内温度分布を効果的に抑制することができる。このため、乗員の快適性を確保しつつ省能力化を図ることができる。
【0212】
(第8実施形態)
上記第7実施形態では、夏季高負荷時に4席フェイスモードを実行するが、本第8実施形態では、省エネモード(エコモード)が選択された場合またはシート空調装置43が作動している場合、夏季高負荷時に中間フェイスモードを実行する。
【0213】
本例では、省エネモードは、乗員が1席優先スイッチ62を操作することによって設定される。上述の図16に示すように、1席優先スイッチ62は、1席優先モードの選択に加え、快適モード(快適)および省エネモード(eco)の選択もできるようになっている。
【0214】
図26に示すように、1席優先モードが選択された場合において、省エネモードが選択されておらず且つシート空調装置43が作動していない時(通常or快適時)は、上記第1実施形態と同様に、夏季高負荷時に4席フェイスモードを実行し、省エネモードが選択された時(省エネモード時)またはシート空調装置43が作動している時(シート空調作動時)は、夏季高負荷時に中間フェイスモードを実行する。
【0215】
具体的には、図22のステップS530において、空調条件判定に用いる低温側所定負荷C1をTAOの下限値(最低温度)に変更すればよい。
【0216】
これにより、1席優先モードが選択された場合において、省エネモードを選択することで夏季高負荷時に快適性よりも省能力を優先して省能力効果を得ることができる。また、1席優先モードが選択された場合であっても、シート空調装置43の作動時にはシート空調装置43からの送風空気によって運転席乗員の冷感が効果的に得られるので、夏季高負荷時に中間フェイスモードを実行することで、運転席乗員の快適性を損なうことなく省能力効果を一層得ることができる。
【0217】
なお、省エネモードの選択は、1席優先スイッチ62の操作のみならず、空調制御装置40によって自動的に行われるようにしてもよい。
【0218】
(第9実施形態)
上記第7実施形態では、夏季高負荷時に4席フェイスモードを実行し、夏季中負荷時に中間フェイスモードを実行するが、本第9実施形態では、省エネモード(エコモード)が選択された場合またはシート空調装置43が作動している場合、夏季高負荷時に中間フェイスモードを実行し、夏季中負荷時に1席集中フェイスモードを実行する。
【0219】
図27に示すように、1席優先モードが選択された場合において、省エネモードが選択されておらず且つシート空調装置43が作動していない時(通常or快適時)は、上記第1実施形態と同様に、夏季高負荷時に4席フェイスモードを、夏季中負荷時に中間フェイスモードを実行し、省エネモードが選択された時(省エネモード時)またはシート空調装置43が作動している時(シート空調作動時)は、夏季高負荷時に中間フェイスモードを、夏季中負荷時に1席集中フェイスモードを実行する。
【0220】
具体的には、図22のステップS530において、空調条件判定に用いる低温側所定負荷C1をTAOの下限値(最低温度)に変更し、低温側所定負荷C2を所定量、低温側(冷房高負荷側)の値に変更すればよい。
【0221】
これにより、1席優先モードが選択された場合であっても、省エネモードを選択することで夏季高負荷時に快適性よりも省能力を優先して省能力効果を得ることができる。また、1席優先モードが選択された場合であっても、シート空調装置43の作動時にはシート空調装置43からの送風空気によって運転席乗員の冷感が効果的に得られるので、夏季高負荷時に中間フェイスモードを実行し、夏季中負荷時に1席集中フェイスモードを実行することで、運転席乗員の快適性を損なうことなく省能力効果を一層得ることができる。
【0222】
(第10実施形態)
上記第7実施形態では、夏季高負荷時に4席フェイスモードを、夏季中負荷時に中間フェイスモードを、夏季低負荷時に1席集中フェイスモードを実行するが、本第10実施形態では、省エネモード(エコモード)が選択された場合またはシート空調装置43が作動している場合、4席フェイスモード、中間フェイスモードおよび1席集中フェイスモードの切り替わり判定を高負荷側とする。
【0223】
図28に示すように、1席優先モードが選択された場合において、省エネモードが選択されておらず且つシート空調装置43が作動していない時(通常or快適時)は、上記第1実施形態と同様に、夏季高負荷時に4席フェイスモード、夏季中負荷時に中間フェイスモードを実行し、省エネモードが選択された時(省エネモード時)またはシート空調装置43が作動している時(シート空調作動時)は、4席フェイスモード、中間フェイスモードおよび1席集中フェイスモードの切り替わり判定を高負荷側とする。
【0224】
具体的には、図22のステップS530において、空調条件判定に用いる低温側所定負荷C1および低温側所定負荷C2を所定量、低温側(冷房高負荷側)の値に変更する。
【0225】
これにより、1席優先モードが選択された場合であっても、省エネモードを選択することで夏季高負荷時、夏季中負荷時および夏季低負荷時に快適性よりも省能力を優先して省能力効果を得ることができる。また、1席優先モードが選択された場合であっても、シート空調装置43の作動時にはシート空調装置43からの送風空気によって運転席乗員の冷感が効果的に得られるので、4席フェイスモード、中間フェイスモードおよび1席集中フェイスモードの切り替わり判定を高負荷側とすることで、運転席乗員の快適性を損なうことなく省能力効果を一層得ることができる。
【0226】
(第11実施形態)
上記第7実施形態では、夏季高負荷時に4席フェイスモードを実行し、夏季中負荷時に中間フェイスモードを実行するが、本第11実施形態では、省エネモード(エコモード)が選択された場合またはシート空調装置43が作動している場合、夏季高負荷時および夏季中負荷時に1席集中フェイスモードを実行する。
【0227】
図29に示すように、1席優先モードが選択された場合において、省エネモードが選択されておらず且つシート空調装置43が作動していない時(通常or快適時)は、上記第1実施形態と同様に、夏季高負荷時に4席フェイスモード、夏季中負荷時に中間フェイスモードを実行し、省エネモードが選択された時(省エネモード時)またはシート空調装置43が作動している時(シート空調作動時)は、夏季高負荷時および夏季中負荷時に1席集中フェイスモードを実行する。
【0228】
具体的には、図22のステップS530において、空調条件判定に用いる低温側所定負荷C1および低温側所定負荷C2をTAOの下限値(最低温度)に変更すればよい。
【0229】
これにより、1席優先モードが選択された場合であっても、省エネモードを選択することで夏季高負荷時に快適性よりも省能力を優先して省能力効果を得ることができる。また、1席優先モードが選択された場合であっても、シート空調装置43の作動時にはシート空調装置43からの送風空気によって運転席乗員の冷感が効果的に得られるので、夏季高負荷時および夏季中負荷時に1席集中フェイスモードを実行することで、運転席乗員の快適性を損なうことなく省能力効果を一層得ることができる。
【0230】
(第12実施形態)
上記第7実施形態では、冬季高負荷時に4席フットモードを実行するが、本第12実施形態では、省エネモード(エコモード)が選択された場合またはシートヒータ44が作動している場合、冬季高負荷時に中間フットモードを実行する。
【0231】
図30に示すように、1席優先モードが選択された場合において、省エネモードが選択されておらず且つシートヒータ44が作動していない時(通常or快適時)は、上記第1実施形態と同様に、冬季高負荷時に4席フットモードを実行し、省エネモードが選択された時(省エネモード時)またはシートヒータ44が作動している時(シートヒータ作動時)は、冬季高負荷時に中間フットモードを実行する。
【0232】
具体的には、図22のステップS530において、空調条件判定に用いる高温側所定負荷H1をTAOの上限値(最高温度)に変更すればよい。
【0233】
これにより、1席優先モードが選択された場合であっても、省エネモードを選択することで冬季高負荷時に快適性よりも省能力を優先して省能力効果を得ることができる。また、1席優先モードが選択された場合であっても、シートヒータ44の作動時にはシートヒータ44によって運転席乗員の温感が効果的に得られるので、冬季高負荷時に中間フットモードを実行することで、運転席乗員の快適性を損なうことなく省能力効果を一層得ることができる。
【0234】
(第13実施形態)
上記第7実施形態では、冬季高負荷時に4席フットモードを実行し、冬季中負荷時に中間フットモードを実行するが、本第13実施形態では、省エネモード(エコモード)が選択された場合またはシートヒータ44が作動している場合、4席フットモードおよび中間フットモードの切り替わり判定を高負荷側とする。
【0235】
図31に示すように、1席優先モードが選択された場合において、省エネモードが選択されておらず且つシートヒータ44が作動していない時(通常or快適時)は、上記第1実施形態と同様に、冬季高負荷時に4席フットモードを、冬季中負荷時に中間フットモードを実行し、省エネモードが選択された時(省エネモード時)またはシートヒータ44が作動している時(シートヒータ作動時)は、4席フットモードおよび中間フットモードの切り替わり判定を高負荷側とする。
【0236】
具体的には、図22のステップS530において、空調条件判定に用いる高温側所定負荷H1を所定量、高温側(暖房高負荷側)の値に変更する。
【0237】
これにより、1席優先モードが選択された場合であっても、省エネモードを選択することで冬季高負荷時に快適性よりも省能力を優先して省能力効果を得ることができる。また、1席優先モードが選択された場合であっても、シートヒータ44の作動時にはシートヒータ44によって運転席乗員の温感が効果的に得られるので、4席フットモードおよび中間フットモードの切り替わり判定を高負荷側とすることで、運転席乗員の快適性を損なうことなく省能力効果を一層得ることができる。
【0238】
(第14実施形態)
上記第7実施形態では、冬季高負荷時に4席フットモードを、冬季中負荷時に中間フットモードを、冬季低負荷時に1席集中フットモードを実行するが、本第14実施形態では、省エネモード(エコモード)が選択された場合またはシートヒータ44が作動している場合、4席フットモード、中間フットモードおよび1席集中フットモードの切り替わり判定を高負荷側とする。
【0239】
図32に示すように、1席優先モードが選択された場合において、省エネモードが選択されておらず且つシートヒータ44が作動していない時(通常or快適時)は、上記第1実施形態と同様に、冬季高負荷時に4席フットモード、冬季中負荷時に中間フットモードを実行し、省エネモードが選択された時(省エネモード時)またはシートヒータ44が作動している時(シートヒータ作動時)は、4席フットモード、中間フットモードおよび1席集中フットモードの切り替わり判定を高負荷側とする。
【0240】
具体的には、図22のステップS530において、空調条件判定に用いる高温側所定負荷H1および高温側所定負荷H2を所定量、高温側(暖房高負荷側)の値に変更する。
【0241】
これにより、1席優先モードが選択された場合であっても、省エネモードを選択することで冬季高負荷時、冬季中負荷時および冬季低負荷時に快適性よりも省能力を優先して省能力効果を得ることができる。また、1席優先モードが選択された場合であっても、シートヒータ44の作動時にはシートヒータ44によって運転席乗員の温感が効果的に得られるので、4席フットモード、中間フットモードおよび1席集中フットモードの切り替わり判定を高負荷側とすることで、運転席乗員の快適性を損なうことなく省能力効果を一層得ることができる。
【0242】
(第15実施形態)
上記第7実施形態では、冬季高負荷時に4席フットモードを実行し、冬季中負荷時に中間フットモードを実行するが、本第15実施形態では、省エネモード(エコモード)が選択された場合またはシートヒータ44が作動している場合、冬季高負荷時および冬季中負荷時に1席集中フットモードを実行する。
【0243】
図33に示すように、1席優先モードが選択された場合において、省エネモードが選択されておらず且つシートヒータ44が作動していない時(通常or快適時)は、上記第1実施形態と同様に、冬季高負荷時に4席フットモード、冬季中負荷時に中間フットモードを実行し、省エネモードが選択された時(省エネモード時)またはシートヒータ44が作動している時(シートヒータ作動時)は、冬季高負荷時および冬季中負荷時に1席集中フットモードを実行する。
【0244】
具体的には、図22のステップS530において、空調条件判定に用いる高温側所定負荷H1および高温側所定負荷H2をTAOの上限値(最高温度)に変更すればよい。
【0245】
これにより、1席優先モードが選択された場合であっても、省エネモードを選択することで冬季高負荷時に快適性よりも省能力を優先して省能力効果を得ることができる。また、1席優先モードが選択された場合であっても、シートヒータ44の作動時にはシートヒータ44によって運転席乗員の温感が効果的に得られるので、冬季高負荷時および冬季中負荷時に1席集中フットモードを実行することで、運転席乗員の快適性を損なうことなく省能力効果を一層得ることができる。
【0246】
(第16実施形態)
上記第7実施形態では、1席優先モードが選択された場合、冬季中負荷時に中間フットモードを実行するが、本第16実施形態では、1席優先モードが選択された場合であっても、窓曇りが発生すると推定される条件下においては、冬季中負荷時に4席フットモードを実行する。
【0247】
図34は、本実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートであり、図22のフローチャートに対してステップS600を追加している。具体的には、ステップS530においてTAOが領域(6)にあると判定した場合、ステップS600へ進み、全フラグが1であるか否かを判定する。
【0248】
ここで、全フラグとは、図35に示す水温TWに関するフラグ、外気温TAMに関するフラグ、および日射量TSに関するフラグであり、水温TWが所定値以下、外気温TAMが所定値以下かつ日射量TSが所定値以下のとき全フラグが1になる。換言すれば、窓曇りが発生すると推定される条件が揃うと全フラグが1になる。
【0249】
ステップS600において全フラグが1であると判定された場合、ステップS510へ進んで通常の吹出モード切替制御を実行する。具体的には、TAOが領域(6)(高温域)にあるので、4席フットモードに切り替えられることとなる。
【0250】
ステップS600において全フラグが1でないと判定された場合、ステップS540へ進んで1席優先制御を実行する。具体的には、TAOが領域(6)にあるので中間フットモードに切り替えられることとなる。
【0251】
本実施形態によると、窓曇りが発生すると推定される条件下においては、冬季中負荷時に中間フットモードの代わりに4席フットモードを実行するので、窓曇りが発生すると推定される条件下において室内温度分布を抑制することができ、ひいては窓曇りを良好に抑制することができる。
【0252】
(第17実施形態)
上記第16実施形態では、窓曇りが発生すると推定される条件として、水温TW、外気温TAMおよび日射量TSを考慮しているが、本第17実施形態では、水温TW、外気温TAMおよび日射量TSに加えて車速SPDも考慮している。
【0253】
すなわち、図32のステップS600における全フラグを、図36に示す水温TWに関するフラグ、外気温TAMに関するフラグ、日射量TSに関するフラグ、および車速SPDに関するフラグとし、水温TWが所定値以上、外気温TAMが所定値以下、日射量TSが所定値以下かつ車速SPDが所定値以上のとき全フラグが1になるようにする。
【0254】
本実施形態では、水温TW、外気温TAMおよび日射量TSに加えて車速SPDも考慮することにより、窓曇りが発生すると推定される条件下にあるか否かをより精度良く判定することができるので、窓曇りを一層良好に抑制することができる。
【0255】
(第18実施形態)
本第18実施形態では、1席優先スイッチ62が押されていても、デフロスタスイッチ61が押された場合には1席優先制御を解除して通常制御に戻る。
【0256】
図37は、本実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートであり、図22のフローチャートに対してステップS610を追加している。具体的には、ステップS530においてTAOが領域(6)にあると判定した場合はステップS610へ進んでデフロスタスイッチ61が押されているか否かを判定し、デフロスタスイッチ61が押されていると判定した場合(DEFスイッチON)はステップS510へ進み、通常制御を実行する。具体的には、デフロスタスイッチ61が押されているので、デフロスタモード(デフロスタ吹出モード)を実行する。
【0257】
ステップS610にてデフロスタスイッチ61が押されていないと判定した場合、ステップS540へ進んで1席優先制御を実行する。具体的には、TAOが領域(6)にあるので中間フットモードが実行される。
【0258】
本実施形態によると、窓ガラスの防曇を行う緊急性が高い場合に、1席優先制御よりも窓ガラスの防曇を優先して運転の安全性を確保できる。
【0259】
(第19実施形態)
上記第18実施形態では、1席優先スイッチ62が押されていても、デフロスタスイッチ61が押された場合(DEFスイッチON)には1席優先制御を解除して通常制御に戻るが、本第19実施形態では、1席優先スイッチ62が押されていても、窓曇りの危険があると判定された場合にはデフロスタ吹出口25からも空調風を吹き出す。
【0260】
図38(a)は、本実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートであり、図37のフローチャートに対して、ステップS610をステップS620に置き換えるとともにステップS630、S640を追加している。
【0261】
具体的には、ステップS530においてTAOが領域(6)にあると判定した場合はステップS620へ進んで窓曇りの危険があるか否かを判定する。
【0262】
窓曇り危険の有無は、種々の方法により判定することができる。例えば、窓ガラス部に湿度センサを設置して窓曇り度合いを演算し窓曇り危険度を判定してもよい。また、日射量TS、外気温度TAM、ブロワレベル、吹出口モードのうち少なくとも1つの値に基づいて窓曇り危険度を判定してもよい。
【0263】
窓曇りの危険があると判定した場合はステップS630へ進み、中間フットデフロスタモード(デフロスタ吹出モード)を実行する。中間フットデフロスタモードは、図38(b)に示すように、中間フットモードに対してデフロスタ吹出口25からも空調風を吹き出すようにしたモードである。
【0264】
次いで、ステップS640に進み、ブロワレベルを増加補正する。すなわち、中間フットデフロスタモードではデフロスタ吹出口25からも空調風を吹き出すので、中間フットデフロスタモードと中間フットモードとでブロワレベルが同じであるとすれば、中間フットデフロスタモードでは中間フットモード比較して運転席側に吹き出される風量が減少する。このため、ステップS640でブロワレベルを増加補正することで、中間フットデフロスタモードで運転席側に吹き出される風量を中間フットモードと同等にする。
【0265】
本実施形態においても、窓ガラスの防曇を行う緊急性が高い場合に、窓ガラスの防曇性を向上することができる。
【0266】
(第20実施形態)
本第20実施形態は、外気導入時における運転席側吹出風量の制御に関するものである。外気導入時、車速が上がった時にはラム圧により空調風の風量が増える。通常、不必要に上昇にした風量によって乗員の快適感悪化を防ぐためにブロワレベルを補正し風量を通常の内気モード時の風量と同等とするが、1席優先制御時(1席集中モード時、中間吹出モード時)には、運転席以外の吹出口を閉じている、または絞っているので、ブロワレベルによる補正の限界を超える可能性がある。
【0267】
このため、1席優先制御かつ外気導入モードで所定車速以上の時には、非運転席側の吹出口を開け、運転席側の吹出風量が通常制御時(4席吹出モード時)の風量と同等となるようにする。この時、吹出モード、非運転席側吹出口の開度、ブロワレベル、車速等の情報から非運転席側吹出口の開度を算出し、車速が非常に大きい時は車速に応じて非運転席側からの空調風漏れ量を増やす。
【0268】
図39(a)は、本実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートであり、図22のフローチャートに対してステップS650、S660、S670を追加している。
【0269】
具体的には、ステップS530においてTAOが領域(2)〜(6)にあると判定した場合、ステップS650へ進んで外気導入モード(外気モード)であるか否かを判定し、外気導入モードであると判定した場合、ステップS660へ進み車速が所定値以上であるか否かを判定する。車速が所定値以上であると判定した場合、ステップS670へ進み第2の1席優先制御を実行する。
【0270】
第2の1席優先制御は、ステップS540の1席優先制御に対して非運転席側吹出口の開度を変更したものである。具体的には、吹出モード、非運転席側吹出口の開度、ブロワレベル、車速等の情報から非運転席側吹出口の開度を算出し、車速が非常に大きい時は車速に応じて非運転席側からの空調風漏れ量を増やす。
【0271】
図39(b)は、第2の1席優先制御の制御結果の一例を示すものであり、熱負荷一定の時の例を示している。このように、車速の増加に応じて非運転席側吹出口の開度を増加させて非運転席側吹出口からの風量を増やすことにより、運転席側吹出口からの風量を車速によらずほぼ一定にすることができる。
【0272】
なお、ステップS650にて外気導入モードでないと判定した場合、またはステップS660にて車速が所定値以上でないと判定した場合、ステップS540へ進み1席優先制御を実行する。
【0273】
(第21実施形態)
本第21実施形態では、4席フットモード、中間フットモードおよび1席集中フットモードの切り替わり判定に関して、日射量TSに対する補正項を持たせている。
【0274】
日射量が大きい時には、乗員は車両に対する熱負荷もしくは空調負荷と違った熱負荷を感じることとなる。具体的には、夏季に日射量が大きい時には乗員の空調要求が高くなり、冬季に日射量が大きい時には乗員の空調要求が低くなる。そこで、本実施形態では、日射量に対する補正項を持つことにより乗員快適性と省能力化とを効果的に両立させる。
【0275】
具体的には、図40に示すように、日射量TSが所定日射量よりも大きい時には、低温側所定負荷C1〜C3および高温側所定負荷H1〜H3をTAOの高温側(冷房低負荷側、暖房高負荷側)へシフトさせる。
【0276】
これにより、夏季に日射量が大きい時には空調能力のより高いモード(1席集中フェイス→中間フェイス→4席フェイス)に切り替わりやすくなり、冬季に日射量が大きい時には空調能力のより低いモード(4席フット→中間フット→1席集中フット)に切り替わりやすくなるので、乗員快適性と省能力化とを効果的に両立させることができる。
【0277】
(第22実施形態)
本第22実施形態では、1席優先制御中であっても非運転席の乗員を検知した時には、1席優先制御をやめて通常制御に切り替える。
【0278】
図41は、本実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートであり、図22のフローチャートに対してステップS680を追加している。具体的には、ステップS500において1席優先スイッチ62が押されている(ON)と判定した場合(YES判定の場合)、ステップS680へ進み、在席検出用センサ56が非運転席の乗員を検知しているか否かを判定する。具体的には、在席検出用センサ56の検出信号に基づいて、助手席および後席のうち少なくとも1つの座席に乗員がいるか否かを判定する。
【0279】
非運転席の乗員が検知されている場合、ステップS510へ進み通常制御を実行する。非運転席の乗員が検知されていない場合、ステップS520へ進み空調負荷(TAO)を算出する。
【0280】
本実施形態によると、1席優先スイッチ62が押されていても、非運転席の乗員が乗車すると自動的に通常制御に切り替わるので、非運転席の乗員の快適性を適切に確保できる。
【0281】
(第23実施形態)
上記第22実施形態では、非運転席乗員センサが非運転席の乗員を検知した時に1席優先制御をやめて通常制御に切り替えるが、本第23実施形態では、非運転席側空調スイッチ(助手席側空調スイッチ64または後席側空調スイッチ65)が操作された時に1席優先制御をやめて通常制御に切り替える。
【0282】
図42は、本実施形態における制御処理の要部を示すフローチャートであり、図41のフローチャートに対してステップS680をステップS690に置き換えている。具体的には、ステップS500において1席優先スイッチ62が押されている(ON)と判定した場合(YES判定の場合)、ステップS690へ進み、非運転席側空調スイッチ64、65の操作があったか否かを判定する。例えば、直近の一定時間内に非運転席側空調スイッチ64、65の操作があったか否かを判定する。
【0283】
非運転席側空調スイッチ64、65の操作があった場合、ステップS510へ進み通常制御を実行する。非運転席側空調スイッチ64、65の操作がなかった場合、ステップS520へ進み、空調負荷(TAO)を算出する。
【0284】
これにより、1席優先スイッチ62が押されていても、非運転席の乗員の要求により1席優先制御から通常制御へ切り替えることができる。このとき、通常制御への切り替えを要求するために既存のスイッチ64、65を用いるので、専用の切替スイッチを用いることなく1席優先制御から通常制御へ切り替えることができる。
【0285】
(他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、車両熱負荷または空調負荷の度合いを示す指標としてTAO(目標吹出空気温度)を用いているが、これに限定されるものではなく、車両熱負荷または空調負荷を、外気温度TAM、日射量TS、車室内温度TR、および空調設定温度TSETのうち少なくとも1つ以上に基づいて算出するようにしてもよい。
【0286】
また、上記各実施形態では、シート空調装置43およびシートヒータ44が運転席に配置されているが、シート空調装置43およびシートヒータ44は、助手席および後席のそれぞれに配置されていてもよい。この場合、1席優先スイッチ62が押されていない時には全座席のシート空調装置43またはシートヒータ44を作動させ、1席優先スイッチ62が押された時には運転席のシート空調装置43またはシートヒータ44のみ作動させて助手席および後席のシート空調装置43またはシートヒータ44を停止させるようにすれば、省エネルギー化を図ることができて好ましい。
【0287】
また、上記第1〜第6実施形態では、吹出口の開度を調整することによって吹き出し風量を変化させ、その結果として空調能力を変化させているが、空調能力を変化させる手段は、これに限定されるものではない。
【0288】
例えば、送風量を調整することによって吹き出し風量を変化させ、その結果として空調能力を変化させるようにしてもよい。また、エアミックスドアで温風と冷風の混合割合を調整することによって吹き出し空気温度を変化させ、その結果として空調能力を変化させるようにしてもよい。また、蒸発器およびヒータコアのうち少なくとも一方における熱交換量を調整することによって吹き出し空気温度を変化させ、その結果として空調能力を変化させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0289】
10 空調ユニット
19 運転席側フェイス開閉機構(空調モード切替手段)
20 助手席側フェイス開閉機構(空調モード切替手段)
21 運転席側フット開閉機構(空調モード切替手段)
22 助手席側フット開閉機構(空調モード切替手段)
23 後席側フット開閉機構(空調モード切替手段)
25 デフロスタ吹出口
27 運転席側フェイス吹出口(特定領域側吹出部)
29 助手席側フェイス吹出口(非特定領域側吹出部)
31 運転席側フット吹出口(特定領域側吹出部)
33 助手席側フット吹出口(非特定領域側吹出部)
35 後席側フット吹出口(非特定領域側吹出部)
37 運転席側ニー吹出口(特定領域側吹出部)
40 空調制御装置(空調モード切替手段)
71 送風機(送風手段)
C1 低温側所定負荷(所定負荷)
C2 低温側所定負荷(所定負荷)
H1 高温側所定負荷(所定負荷)
H2 高温側所定負荷(所定負荷)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内空間へ空気を送風する送風手段(71)と、
空調モードを切り替える空調モード切替手段(19、20、21、22、23、40)とを備え、
前記空調モードは、前記車室内空間のうち運転席を含む特定領域および前記車室内空間のうち前記特定領域を含まない非特定領域を空調する通常空調モードと、前記通常空調モードに比べて前記非特定領域に対する空調能力が小さくされる特定領域優先空調モードとを含み、
前記空調モード切替手段は、前記特定領域優先空調モードの場合、前記非特定領域に対する空調能力を、前記送風手段(71)に押し込まれる空気の圧力に応じて調整することを特徴とする車両用空調装置。
【請求項2】
前記空調モード切替手段は、前記特定領域優先空調モードの場合、前記送風手段(71)に押し込まれる空気の圧力が大きい程、前記非特定領域に対する空調能力を大きくすることを特徴とする請求項1に記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記空調モード切替手段は、前記非特定領域へ吹き出される空気の風量、および前記非特定領域へ吹き出される空気の温度のうち少なくとも1つを調整することによって、前記非特定領域に対する空調能力を調整するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の車両用空調装置。
【請求項4】
前記非特定領域へ空気を吹き出すための非特定領域側吹出部(14、16、17)を備え、
前記空調モード切替手段は、前記非特定領域側吹出部(14、16、17)の開度を調整することによって、前記非特定領域へ吹き出される空気の風量を調整するものであることを特徴とする請求項3に記載の車両用空調装置。
【請求項5】
前記空調モード切替手段は、車速(SPD)、前記送風手段(71)に導入される車室内空気と車室外空気との割合を調整する内外気切替手段(70c)の作動状態、走行時のラム圧を低減させるラム圧低減手段(45)の作動状態、および前記送風手段(71)の吸込み圧力(Ps)のうち少なくとも1つに基づいて、前記送風手段(71)に押し込まれる空気の圧力の度合いを算出することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項6】
前記空調モード切替手段は、前記特定領域優先空調モードの場合、前記非特定領域に対する空調能力を、前記送風手段(71)に押し込まれる空気の圧力と、空調負荷とに応じて調整することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項7】
前記空調モード切替手段は、外気温度(Tam)、日射量(TS)、車室内温度(Tr)、空調設定温度(TSET)および乗員の表面温度(Tm)のうち少なくとも1つに基づいて前記空調負荷を算出することを特徴とする請求項6に記載の車両用空調装置。
【請求項8】
前記特定領域優先空調モードは、低負荷時空調モードと、前記低負荷時空調モードよりも空調能力の高い高負荷時空調モードとを含み、
前記空調モード切替手段は、前記空調負荷が所定負荷よりも小さい場合、前記低負荷時空調モードとし、前記空調負荷が所定負荷よりも大きい場合、前記高負荷時空調モードとすることを特徴とする請求項6または7に記載の車両用空調装置。
【請求項9】
空調能力を省能力化する省エネモードを設定するため省エネモード設定手段(62)を備え、
前記空調モード切替手段は、前記省エネモードが設定されている場合、前記所定負荷を高負荷側に変更することを特徴とする請求項8に記載の車両用空調装置。
【請求項10】
前記空調モード切替手段は、補助空調装置(43、44)が作動している場合、前記所定負荷を高負荷側に変更することを特徴とする請求項8または9に記載の車両用空調装置。
【請求項11】
前記空調モード切替手段は、前記空調負荷が冷房負荷であり、且つ日射量(TS)が所定日射量よりも大きい場合、前記所定負荷を冷房低負荷側に変更することを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項12】
前記空調モード切替手段は、前記空調負荷が暖房負荷であり、且つ日射量(TS)が所定日射量よりも大きい場合、前記所定負荷を暖房高負荷側に変更することを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項13】
前記空調モード切替手段は、前記特定領域優先空調モードのときに窓曇りの危険があると判断した場合、前記非特定領域に対する空調能力を大きくする、または前記通常空調モードに切り替えることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項14】
前記空調モード切替手段は、前記乗員によるスイッチ操作があった場合、または窓曇り危険度が所定以上となった場合、窓曇りの危険があると判断することを特徴とする請求項13に記載の車両用空調装置。
【請求項15】
前記特定領域の空調設定と前記非特定領域の空調設定とを独立して行うことのできる空調操作手段(64、65)を備え、
前記空調モード切替手段は、前記特定領域優先空調モードのときに前記空調操作手段(64、65)によって前記非特定領域の空調設定が行われた場合、前記非特定領域に対する空調能力を大きくする、または前記通常空調モードに切り替えることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項16】
前記空調モード切替手段は、前記特定領域優先空調モードの場合、前記特定領域に対する空調能力および前記非特定領域に対する空調能力のうち少なくとも一方を時間の経過に従って増減させることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項17】
前記特定領域へ空気を吹き出すための特定領域側吹出部(13、15)と、
前記非特定領域へ空気を吹き出すための非特定領域側吹出部(14、16、17)と、
窓へ空気を吹き出すためのデフロスタ吹出部(12)と、
前記特定領域側吹出部(13、15)の開度を調整する特定領域側開閉ドア(19、21)と、
前記非特定領域側吹出部(14、16、17)の開度を調整する非特定領域側開閉ドア(20、22、23)と、
前記デフロスタ吹出部(12)の開度を調整するデフロスタ開閉ドア(18)と、
前記特定領域側開閉ドア(19、21)と前記デフロスタ開閉ドア(18)とを連動して駆動する特定領域側リンク機構(75)と、
前記非特定領域側開閉ドア(20、22、23)を駆動する非特定領域側リンク機構(76)とを備え、
前記特定領域側リンク機構(75)は、前記デフロスタ開閉ドア(18)を前記デフロスタ吹出部(12)の開口位置に駆動し且つ前記特定領域側開閉ドア(19、21)を前記特定領域側吹出部(13、15)の全閉位置に駆動するデフロスタモードと、前記特定領域側開閉ドア(19、21)を前記特定領域側吹出部(13、15)の開口位置に駆動する非デフロスタモードとに作動するようになっており、
前記非特定領域側リンク機構(76)は、前記非特定領域側開閉ドア(20、22、23)を前記非特定領域側吹出部(14、16、17)の全閉位置に駆動するデフロスタモードと、前記非特定領域側開閉ドア(20、22、23)を前記非特定領域側吹出部(14、16、17)の開口位置に非デフロスタモードとに作動するようになっており、
前記特定領域優先空調モードの場合、前記特定領域側リンク機構(75)は前記非デフロスタモードになり、前記非特定領域側リンク機構(76)は前記デフロスタモードになることを特徴とする請求項1ないし16のいずれか1つに記載の車両用空調装置。
【請求項18】
前記空調モード切替手段は、
前記特定領域および前記非特定領域に両方に乗員がいる場合、および前記特定領域優先空調モードを設定するための特定領域優先スイッチ(62)が押されていない場合のうち少なくとも一方の場合、前記通常空調モードとし、
前記非特定領域に乗員がいない場合、および前記特定領域優先スイッチ(62)が押されている場合のうち少なくとも一方の場合、前記特定領域優先空調モードとすることを特徴とする請求項1ないし17のいずれか1つに記載の車両用空調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【公開番号】特開2012−136212(P2012−136212A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225075(P2011−225075)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】