説明

車両用表示装置

【課題】メイン表示器と外部表示器を有するものにあって、ドライバの視認性と操作性を両立させることができる車両用表示装置を提供する。
【解決手段】ドライバの前方位置に配置され、車両情報を表示するメイン表示器2と、メイン表示器2とは別にドライバの前方位置に配置され、車両情報を表示すると共に操作部として機能する画面3aを有する外部表示器3と、周回軌跡上に配置されたギアベルトと、ギアベルトに駆動源の駆動力を伝達するギア機構とを有し、ギアベルトの周回移動によって外部表示器3を車両前後方向に移動させる表示器移動機構10とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバの前方位置に配置される車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用表示装置は、各種の車両情報(走行速度情報、各種警報情報等)を表示するものであるが、その表示情報は年々増している。このような要求を満たすため、複数の表示部を備えた車両用表示装置が従来より提案されている(特許文献1、2参照)。図6には、この種の車両用表示装置の一従来例が示されている。
【0003】
図6において、車両用表示装置50は、走行速度等を表示するメイン表示器(自動車メータ)51と、このメイン表示器51とは別に、その近傍に配置された外部表示器52とを備えている。外部表示器52は、メイン表示器51に固定されている。外部表示器52は、メイン表示器51で表示しきれない車両情報を表示する。ここで、外部表示器52に、表示内容の変更等を行うための操作部(例えばタッチパネル式)を設ければ、表示情報量の増大、機能性の向上、使い勝手の向上等になり、好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−196690号公報
【特許文献2】特開2008−1120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車両用表示装置50は、ドライバの視認性を配慮してドライバの前方位置に配置する必要があるため、外部表示器52に操作部を設けると次のような問題が発生する。
【0006】
つまり、外部表示器52は、ドライバの視認性を優先すると、ドライバよりもなるべく遠い位置(車両前方側の位置)に配置することが望ましい。しかし、外部表示器52の操作部が操作し難くなる。一方、外部表示器52は、ドライバの操作部への操作性を優先すると、ドライバに近い位置(車両後方側の位置)に設置することが望ましい。しかし、ドライバの視認性が劣る。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、第1表示器と第2表示器を有するものにあって、ドライバの視認性と操作性を両立させることができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ドライバの前方位置に配置され、車両情報を表示する第1表示器と、前記第1表示器とは別にドライバの前方位置に配置され、車両情報を表示すると共に操作部を有する第2表示器と、周回軌跡上に配置されたギアベルトと、前記ギアベルトに駆動源の駆動力を伝達するギア機構とを有し、前記ギアベルトの周回移動によって前記第2表示器を車両前後方向に移動する表示器移動機構とを備えたことを特徴とする車両用表示装置である。
【0009】
前記ギアベルトのギア部に噛み合い可能なギア噛合部を有するロック部と、前記ロック部を前記ギアベルトのギア部に噛み合うロック位置と噛み合わないロック解除位置に移動させるロック部移動手段とを有するストッパ機構を備えることが好ましい。
【0010】
前記表示器移動機構は、ケース内に収容され、前記ケースには、前記ギアベルトの移動に追従して前記第2表示器の支持部が移動するスライド穴が設けられ、前記スライド穴を塞いだ状態を保持しつつ前記支持部の移動に追従して前記ケース内を移動する防塵シートが設けられ、前記防塵シートが所定の経路に従って移動を行うようガイドするガイド部が設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第2表示器の操作部を操作しない時には、第2表示器をドライバから遠い位置とし、ドライバの視認性を確保し、第2表示器の操作部を操作する時には第2表示器をドライバの近い位置とし、ドライバの操作性を確保することができるため、ドライバの視認性と操作性を両立できる。また、駆動源からの駆動力が伝達部品の噛み合いによってギアベルトまで伝達されるため、確実な動作が可能である。ギアベルトが周回軌跡上に設置されるため、表示器移動手段の設置スペースを小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示し、車両用表示装置の斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態を示し、表示器移動機構の分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態を示し、表示器移動機構の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態を示し、ケースのスライド穴周辺の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態を示し、ストッパ機構の斜視図である。
【図6】従来例を示し、車両用表示装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1〜図5は本発明の一実施形態を示す。図1〜図3に示すように、車両用表示装置1は、ドライバの前方のインストルメントパネル(図示せず)に配置されている。車両用表示装置1は、車両情報を表示する第1表示器であるメイン表示器2と、このメイン表示器2では表示できなかった補足の車両情報を表示する第2表示器である外部表示器3と、この外部表示器3を車両前後方向FRに移動する表示器移動機構10とを備えている。
【0015】
メイン表示器2は、車両情報である走行速度を表示する速度メータ2a、車両情報であるエンジン回転数を表示するタコメータ(図示せず)、燃料計(図示せず)等を有する。
【0016】
外部表示器3は、メイン表示器2とは別体に設けられている。外部表示器3は、メイン表示器2の直ぐ左横に配置されている。外部表示器3は、液晶ディスプレイより構成されている。液晶ディズプレイの画面3aは、タッチパネル機能を有し、タッチパネル表示モードでは操作部として機能する。
【0017】
表示器移動機構10は、ケース11と、このケース11内に配置された第1取付ステー14と、ケース11内にそれぞれ収容された駆動源であるモータ20、ギア機構21、ギアベルト30及びストッパ機構40とを有する。ケース11は、下ケース部12とこれに組み付けされた上ケース部13から構成されている。下ケース部12は、インストルメントパネル(図示せず)の上面に固定されている。上ケース部13の上面には、車両前後方向FRに長いスライド穴15が開口されている。
【0018】
第1取付ステー14は、下ケース部12にネジ16によって固定されている。
【0019】
モータ20は、ステップモータである。ギア機構21は、モータ20の回転軸に固定された小ギア22と、この小ギア22に噛み合う中間ギア23と、この中間ギア23に噛み合う駆動ギア24とから構成されている。モータ20は、第1取付ステー14に固定されている。中間ギア23及び駆動ギア24は、それぞれ小径歯部23a,24aと大径歯部23b,24bを一体に有するギアである。中間ギア23及び駆動ギア24は、第1取付ステー14にそれぞれ回転自在に支持されている。このようなギア群から成るギア機構21は、モータ20の回転を減速してギアベルト30に出力する。
【0020】
ギアベルト30は、無限端の形態で、例えば硬質ゴムより形成されている。ギアベルト30には、内周側の全周に亘ってギア部30aが設けられている。ギアベルト30は、車両前後方向FRに間隔を置いて配置された一対のローラ31に掛け渡されている。これにより、ギアベルト30は、周回軌跡状に配置され、その周回軌跡を移動する。各ローラ31は、第1取付ステー14にそれぞれ回転自在に支持されている。
【0021】
ギアベルト30には、その周回軌跡の上面箇所に支持ブラケット32が溶着等で固定されている。ギアベルト30と支持ブラケット32は、一体成形しても良い。支持ブラケット32には、スライド穴15より挿入された外部表示器3の支持部4が固定されている。支持ブラケット32の両端の下方には、2箇所にガイドローラ33が回転自在に支持されている。各ガイドローラ33は、第1取付ステー14に架設されたガイドロッド34上に載置されている。これにより、支持ブラケット32は、外部表示器3の荷重を支えつつギアベルト30の移動に伴って一体となってスムーズに移動することができる。
【0022】
上ケース部13には、図3及び図4に示すように、スライド穴15の両方の側面に沿って一対のシートガイド部であるシートスライドガイド部35が固定されている。一対のシートスライドガイド部35には、スライド穴15の長手方向に沿って、且つ、互いに対向する位置にシート差し込み溝35aが形成されている。
【0023】
遮蔽シート36は、支持ブラケット32に固定され、支持部4が貫通している。遮蔽シート36は、可撓性の長尺な扁平部材である。遮蔽シート36は、その両側端が一対のシートスライドガイド部35のシート差し込み溝35aに差し込まれ、スライド穴15を塞いだ状態で配置されている。これにより、遮蔽シート36は、スライド穴15を塞ぎつつ支持部4と一体に移動する。遮蔽シート36は、その移動方向の両端側がケース11内に入り込んでいる。ケース11内で、且つ、スライド穴15の長手方向の両端の直ぐ下方位置には、一対のシートガイド部であるシート受け部37が設けられている。一対のシート受け部37は、第1取付ステー14に一体に設けられ、遮蔽シート36の下方への垂れを規制する。ケース11内で、且つ、スライド穴15の長手方向の両端を越えた位置には、垂直方向に延びる一対のシートガイド部であるシート曲げガイド部38が設けられている。一対のシート曲げガイド部38は、上ケース部13に一体に設けられ、遮蔽シート36の両端側を強制的に曲げてケース11内の余剰スペースを利用してスムーズに移動するよう規制する。
【0024】
ストッパ機構40は、図5に詳しく示すように、ギアベルト30のギア部30aに噛み合い可能なギア噛合部41aを有するロック部41と、このロック部41をギアベルト30のギア部30aに噛み合うロック位置と噛み合わないロック解除位置に移動させるロック部移動手段42とを備えている。ギア噛合部41aは、ギアベルト30の1つのギア部30aに噛み合うことができる形態である。尚、ギアベルト30の2つ以上のギア部30aに噛み合うことができる形態としても良い。
【0025】
ロック部移動手段42は、第2取付ステー43に固定されたソレノイド44と、このソレノイド44の出力ロッドに一端が連結され、他端にロック部41が連結されたリンクロッド45とを有する。リンクロッド45は、その一端近くの位置で第2取付ステー43に回転自在に支持されている。ロック部41と第2取付ステー43の間には、バネ46が介在されている。このバネ46のバネ力によって、ロック部41は、ギアベルト30のギア部30aに噛み合うロック位置側に付勢されている。ソレノイド44のオフ(非通電)時には、ロック部41はバネ46のバネ力によってロック位置に位置する。ソレノイド44のオン(通電)時には、ロック部41はバネ46のバネ力に抗してロック解除位置に位置する。
【0026】
上記構成において、外部スイッチ(図示せず)等により外部表示器3の移動要求が出力されると、所定条件の下で、ストッパ機構40のソレノイド44がオンされ、ギアベルト30のロックが解除される。そして、モータ20が回転される。モータ20が回転すると、モータ20の回転がギア機構21を介してギアベルト30に伝達され、ギアベルト30が周回軌跡上を移動する。このギアベルト30の移動に追従して外部表示器3が車両前後方向FRに移動する。外部表示器3の移動後は、ストッパ機構40のソレノイド44がオフされ、ギアベルト30がロックされる。
【0027】
従って、外部表示器3の画面3aを操作部として操作しない時には、外部表示器3をドライバから遠い位置(車両前方側の位置)とし、ドライバの視認性を確保できる。又、外部表示器3の画面3aを操作部として使用する時には、外部表示器3をドライバの近い位置(車両後方側の位置)とし、ドライバの操作性を確保できる。
【0028】
以上説明したように、車両用表示装置1は、外部表示器3を車両前後方向FRに移動できるので、ドライバの視認性と操作性を両立できる。
【0029】
また、表示器移動機構10は、周回軌跡上に配置されたギアベルト30と、ギアベルト30にモータ20の駆動力を伝達するギア機構21とを有し、ギアベルト30の周回移動によって外部表示器3を車両前後方向FRに移動させる。従って、モータ20からの駆動力がギア機構21、つまり、伝達部品の噛み合いによってギアベルト30まで伝達されるため、確実な動作が可能である。ギアベルト30は、周回軌跡上に設置されるため、表示器移動機構10の設置スペースを小さくできる。
【0030】
ギアベルト30のギア部30aに噛み合い可能なギア噛合部41aを有するロック部41と、このロック部41をギアベルト30のギア部30aに噛み合うロック位置と噛み合わないロック解除位置に移動させるロック部移動手段42とを有するストッパ機構40を備えている。従って、外部表示器3を安全、且つ、確実に所定の位置に固定できる。又、ソレノイド44のオフ時にロック部41がロック位置となるため、省電力化になる。
【0031】
表示器移動機構10は、ケース11内に収容され、ケース11には、ギアベルト30の移動に追従して外部表示器3の支持部4が移動するスライド穴15が設けられ、このスライド穴15を塞いだ状態を保持しつつ支持部4の移動に追従してケース11内を移動する遮蔽シート36が設けられ、この遮蔽シート36が所定の経路に従って移動を行うようガイドするシートスライドガイド部35、シート受け部37及びシート曲げガイド部38が設けられている。従って、遮蔽シート36によって、スライド穴15からケース11内に塵埃、異物、水等が侵入するのを確実に防止できる。つまり、防塵性、防水性に優れている。遮蔽シート36によってスライド穴15の内部が見えないため、見栄えが良い。又、遮蔽シート36は、スライド穴15をシートスライドガイド部35にガイドされ、且つ、ケース11内に進入した遮蔽シート36の両端側は、一対のシート受け部37及び一対のシート曲げガイド部38にガイドされることによってケース11内を所定の移動軌跡に沿って移動するため、遮蔽シート36をスムーズに移動させることができる。
【0032】
この実施形態では、外部表示器3の操作部は、タッチパネル機能を有する画面3aにて構成されているが、メカニカル構造の操作部にて構成しても良い。
【0033】
この実施形態では、遮蔽シート36は、支持ブラケット32に固定されているが、外部表示器3の支持部4に固定しても良い。
【0034】
この実施形態では、シートスライドガイド部35は、上ケース部13とは別部材より構成されているが、上ケース部13に一体形成によって構成しても良い。
【0035】
この実施形態では、シートガイド部は、シートスライドガイド部35とシート受け部37とシート曲げガイド部38より構成されているが、遮蔽シート36のケース11内に進入した両端側をガイドすることによって所定の移動軌跡に沿って移動できる構成であれば良く、種々の構成が考えられる。
【0036】
この実施形態では、第2表示器である外部表示器3は、一箇所に配置されているが、複数箇所に分割配置しても良い。そして、複数箇所の一部若しくは全部を移動可能に設けても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 車両用表示装置
2 メイン表示器(第1表示器)
3 外部表示器(第2表示器)
3a 画面(操作部)
10 表示器移動機構
20 モータ(駆動源)
21 ギア機構
30 ギアベルト
30a ギア部
35 シートスライドガイド部(シートガイド部)
36 遮蔽シート
37 シート受け部(シートガイド部)
38 シート曲げガイド部(シートガイド部)
40 ストッパ機構
41 ロック部
42 ロック部移動手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの前方位置に配置され、車両情報を表示する第1表示器と、
前記第1表示器とは別にドライバの前方位置に配置され、車両情報を表示すると共に操作部を有する第2表示器と、
周回軌跡上に配置されたギアベルトと、前記ギアベルトに駆動源の駆動力を伝達するギア機構とを有し、前記ギアベルトの周回移動によって前記第2表示器を車両前後方向に移動する表示器移動機構とを備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項2】
請求項1記載の車両用表示装置であって、
前記ギアベルトのギア部に噛み合い可能なロック部と、前記ロック部を前記ギアベルトのギア部に噛み合うロック位置と噛み合わないロック解除位置に移動させるロック部移動手段とを有するストッパ機構を備えたことを特徴とする車両用表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の車両用表示装置であって、
前記表示器移動機構は、ケース内に収容され、前記ケースには、前記ギアベルトの移動に追従して前記第2表示器の支持部が移動するスライド穴が設けられ、前記スライド穴を塞いだ状態を保持しつつ前記支持部の移動に追従して前記ケース内を移動する遮蔽シートが設けられ、前記遮蔽シートが所定の経路に従って移動を行うようガイドするシートガイド部が設けられたことを特徴とする車両用表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−86710(P2013−86710A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230656(P2011−230656)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】