説明

車両用走行制御装置

【課題】先行車に追従するように走行制御を実施する際に、より適切なタイミングで加減速を発生可能とする。
【解決手段】目標車間時間とするための第1目標加減速度指令値、または目標車間距離を達成するための第2目標加減速度指令値のいずれかの目標加減速度指令値を、自車の走行状態及び自車周囲の他車両の走行状態の少なくとも一方の走行状態に基づき選択する。そして、選択した目標加減速度指令値で自車の駆動装置及び制動装置の少なくとも一方を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車周囲に他車が存在している状態で走行する場面などにおける、先行車に追従する走行制御の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
追従走行を行う車両用走行制御装置としては、例えば特許文献1、2に記載の技術がある。この特許文献1、2に記載の技術では、隊列を構成する各車両にそれぞれ通信用IDを搭載していることを前提とし、車両相互で車車間通信を行いながら小隊列を組んで走行する。この隊列走行では、例えば、車車間通信によって先行車から制御操作量、走行状態量、車両諸元などのデータを受信し、受信したデータと自車両の状況に基づいて、先行車に追従するように自車の制御操作量を演算する。また路車間通信を行いながら走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−46820号公報
【特許文献2】特開平9−81899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車車間通信や路車間通信などの通信遅れや、アクチュエータの応答遅れなどの無駄時間が存在すると、制御による減速タイミングが遅くなってしまうことがある。そして、この遅れが発生すると、運転者に違和感を与える可能性がある。またこのとき、車群を形成する車間距離が短くなることに起因して、先行車の減速に対して後続車(自車)の運転者がブレーキ操作を行ってしまうことで、隊列走行が解除されて車群が維持できなくなる可能性がある。
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、先行車に追従するように走行制御を実施する際に、より適切なタイミングで加減速を発生可能とすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一形態は、目標車間時間とするための第1目標加減速度指令値、または目標車間距離を達成するための第2目標加減速度指令値のいずれかの目標加減速度指令値を、自車の走行状態及び自車周囲の他車両の走行状態の少なくとも一方の走行状態に基づき選択する。そして、選択した目標加減速度指令値で自車の駆動装置及び制動装置の少なくとも一方を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自車の走行状態及び自車周囲の他車両の走行状態の少なくとも一方の走行状態に応じて、目標車間時間による制御と目標車間距離による制御との切り換えを実施する。これによって、先行車への追従の状態に応じた制御を選択可能となる。この結果、より適切なタイミングで加減速を発生可能とすることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に基づく実施形態に係る車両構成を示す図である。
【図2】本発明に基づく実施形態に係る制御構成を示す図である。
【図3】本発明に基づく実施形態に係る走行制御コントローラの構成を示す図である。
【図4】本発明に基づく第1実施形態に係る処理例を説明するフローチャート図である。
【図5】本発明に基づく第1実施形態に係る動作例を説明する図である。
【図6】本発明に基づく第1実施形態に係る別の動作例を説明する図である。
【図7】本発明に基づく第2実施形態に係る処理例を説明するフローチャート図である。
【図8】本発明に基づく第2実施形態に係る動作例を説明する図である。
【図9】本発明に基づく第2実施形態に係る別の動作例を説明する図である。
【図10】本発明に基づく第2実施形態に係る別の動作例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
「第1実施形態」
(構成)
車両は、制動力を発生する制動装置、及び駆動力(駆動トルク)を発生する駆動装置を備える。
制動装置は、図1に示すように、車輪13に設けられるブレーキ装置10と、その各ブレーキ装置10に接続する配管を含む流体圧回路11と、ブレーキコントローラ6Aとを備える。ブレーキコントローラ6Aは、上記流体圧回路15を介して各ブレーキ装置10で発生する制動力を、制動力指令値に応じた値に制御する。ブレーキ装置10は、流体圧で制動力を付与する装置に限定されず、電動ブレーキ装置等であっても良い。
【0009】
駆動装置は、図1に示すように、駆動源としてのエンジン12と、エンジン12で発生するトルク(駆動力)を制御するエンジンコントローラ6Bとを備える。駆動装置の駆動源は、エンジン12に限定されず、電動モータであっても良いし、エンジン12とモータを組み合わせたハイブリッド構成であっても良い。
上記ブレーキコントローラ6Aとエンジンコントローラ6Bは、それぞれ上位コントローラである走行制御コントローラ5からの制動指令、駆動指令の各指令値(制駆動力制御量)を受け付ける構成とする。ブレーキコントローラ6Aとエンジンコントローラ6Bは、加減速制御装置を構成する。
【0010】
また車両は、図1及び図2に示すように、制御作動用スイッチ1、車輪速センサ2、外界認識装置3、通信装置4を備える。また、車両は、走行制御コントローラ5を備える。
制御作動用スイッチ1は、走行制御の作動の開始指示及び終了指示、または走行制御の設定車速の変更指示を行うための操作子である。制御作動用スイッチ1は、先行車に追従するための加減速制御を行うメインスイッチや、追従時の目標車間時間を切り替えるスイッチ、設定車速を変更するためのスイッチを備える。この制動作動用スイッチの状態は、走行制御コントローラ5に出力される。またこの制御作動用スイッチ1は、例えばステアリングホイールに設けられている。
【0011】
車輪速センサ2は、車輪速を検出し、検出した車輪速情報を走行制御コントローラ5に出力する。車輪速センサ2は、例えば車輪速パルスを計測するロータリエンコーダなどのパルス発生器で構成する。
外界認識装置3は、自車前方に存在する先行車を認識し、その認識した先行車の状態として、当該先行車両の有無及び走行状態を検出を検出する。検出した先行車の状態に関する情報は、走行制御コントローラ5に出力される。外界認識装置3は、例えばレーザ距離計やカメラによって構成する。
【0012】
通信装置4は、車車間通信若しくは路車間通信などの通信手段を用いて、自車両周囲の車両の走行状態を取得し、取得した走行状態を走行制御コントローラ5に出力する。
走行制御コントローラ5は、制御作動用スイッチ1がON(制御作動要求)であると判定した場合には、制御作動用スイッチ1の作動状態と、車輪速センサ2からの信号に基づく自車速と、外界認識装置3が検出した先行車の走行状態に関する情報と、通信装置4が取得した自車両周囲の車両の走行状態とに基づき、先行車に対する追従走行その他の走行制御を行う。本実施形態の走行制御コントローラ5は、予め設定した目標車間時間に基づく車間時間制御と目標車間距離に基づく車間距離維持制御との2つの制御状態を、自車の走行状態及び自車周囲の車両の走行状態に応じて選択して遷移させる。そして、走行制御コントローラ5は、制御の状態遷移に応じた制御指令値を加減速制御装置6へ出力する。上記目標車間距離維持制御は、通信装置4から得られる自車両周囲車両の走行状態を用いて、制御指令値を算出する。そして、加減速制御装置6を構成するブレーキコントローラ6A及びエンジンコントローラは、受信した加減速制御量(制御指令値)となるように車両の加減速を制御する。
【0013】
上記走行制御コントローラ5は、マイクロコンピュータおよびその周囲回路を備えるコントローラである。この走行制御コントローラ5は、本実施形態の走行制御を実現するために、図3に示すような処理ロジックを備える。すなわち、走行制御コントローラ5は、図3に示すように、制御状態設定部5A、先行車検出状態判定部5B、先行車車速・減速度推定部5C、目標応答特性算出部5D、目標車速算出部5E、目標加減速度算出部5F、車速指令値算出部5G、車速サーボ演算部5J、トルク配分制御演算部5K、エンジントルク演算部5L、及びブレーキ液圧演算部5Mを備える。さらに、走行制御コントローラ5は、自車両周囲走行車両状態検出部5N、車間距離制御指令値算出部5P、車間距離制御作動判断部5Q、及び制御状態遷移判断部5Iを備える。
【0014】
制御状態設定部5Aは、上記制御作動用スイッチ1の作動状態に基づき、制御を作動させるための各種スイッチ操作の有無判断を行う。運転者による制御作動用スイッチ1の操作状態を検出し、検出結果を、先行車検出状態判定部5B及び車速指令値算出部5Gに出力する。ここで、隊列走行を行うと判定した場合には、追従時の目標車間時間は固定とする構成であっても良い。なお、予め設定した車両前方に対し、先行車の存在を検出しない場合には、設定車速を車速指令値とする。
【0015】
先行車検出状態判定部5Bは、追従制御対象となる先行車の検出状態を判断する。すなわち、先行車検出状態判定部5Bは、外界認識装置3から得られる自車前方を走行する先行車両と自車との間の車間相対値と、制御状態設定部5Aから得られた運転者のスイッチ操作とに基づき、追従制御対象となる先行車の有無を判断する。そして、判断結果を先行車車速・減速度推定部5Cへ出力する。ここで、本実施形態の上記車間相対値は、車間距離及び相対速度である。
【0016】
先行車車速・減速度推定部5Cは、先行車検出状態判定部5Bが追従制御対象が存在すると判定した場合に、当該追従制御対象となる先行車の車速及び加減速度の推定値を算出する。そして、算出した先行車車速推定値、及び先行車加減速度推定値を目標応答特性算出部5Dへ出力する。
目標応答特性算出部5Dは、先行車の加減速度に対して、どのような応答特性とするかを算出する。目標応答特性算出部5Dは、先行車車速・減速度推定部5Cが算出した先行車速度推定値と先行車加減速度推定値と、制御状態設定部5Aから取得した追従時の目標車間時間設定値を基に、目標応答特性を算出する。ここで、追従時の目標車間時間は運転者のスイッチ操作により選択可能としているが、複数台での隊列走行を行うと判定した場合は、目標車間時間設定値を固定としても良い。
【0017】
目標車速算出部5Eは、目標応答特性算出部5Dで算出された目標応答特性を満足する目標車速を算出する。目標車速算出部5Eは、算出した目標車速を目標加減速度算出部5Fへ出力する。
目標加減速度算出部5Fは、目標車速算出部5Eが算出した目標車速を基に、目標加減速度を算出し、算出した目標加減速度を車速指令値算出部5Gへ出力する。
【0018】
車速指令値算出部5Gは、目標加減速度算出部5Fが算出した目標加減速度に対し加減速度の変化率リミッタを付加し、そのリミッタ処理をした目標加減速度から車速指令値を算出する。そして、車速指令値算出部5Gで算出された車速指令値は、車速サーボ演算部5Jで使用される。ここで、本実施形態では先行車に追従しているものとして記述する。自車前方の予め設定した先方距離内に先行車両が存在しないなど、先行車非追従時の場合は、運転者が設定した設定車速が車速指令値となる。
【0019】
自車両周囲走行車両状態検出部5Nは、通信装置4から得られる自車両の周囲を走行する車両の有無を含む自車両周囲の車両の走行状態を検出し、検出した走行状態を車間距離制御指令値算出部5Pに出力する。
車間距離制御指令値算出部5Pは、自車両周囲走行車両状態検出部5Nが検出した自車両の周囲を走行している車両の走行状態から、追従走行を行うための車間距離維持制御のための指令値を算出する。また目標車間距離の設定を行う。
【0020】
車間距離制御作動判断部5Qは、車間距離制御指令値算出部5Pが算出した車間距離制御指令値に対して、車間距離維持制御を作動させるか否かを判定する。そして、判断する。車間距離制御作動判断部5Qは、判定結果を制御状態遷移判断部5Iに出力する。
制御状態遷移判断部5Iは、車間距離制御作動判断部5Qの判定結果に基づき、車間時間制御と車間距離維持制御の間の制御の状態遷移を行う。すなわち、制御状態遷移判断部5Iは、車間時間制御と車間距離維持制御のいずれかの選択を行って、制御状態の遷移を行う。
【0021】
車速サーボ演算部5Jは、制御状態遷移判断部5Iが車間時間制御を選択と判定した場合には、車速指令値演算部で演算された車速指令値となるように車両を制駆動制御する処理を行う。すなわち、車速サーボ演算部5Jは、選択された車速指令値を達成するための目標加減速度を演算し、演算した車速指令値に対し演算した目標加減速度をトルク分配制御演算部へ出力する。
【0022】
トルク配分制御演算部5Kは、車速サーボ演算部5Jが演算した目標加減速度に応じたエンジントルク、ブレーキトルクのトルク配分を演算する。そして、分配されたトルクを、それぞれエンジントルク演算部5L及び、ブレーキ液圧演算部5Mへ出力する。
エンジントルク演算部5Lは、トルク配分制御演算部5Kで配分されたトルクを達成するためのエンジントルク指令値を算出する。エンジントルク指令値はスロットル開度等である。エンジントルク演算部5Lは、算出したエンジントルク指令値をエンジンコントローラ6Bに出力する。
ブレーキ液圧演算部5Mは、トルク配分制御演算部5Kで配分されたトルクを達成するためのブレーキ液圧指令値を算出し、算出したブレーキ液圧指令値をブレーキコントローラ6Aに出力する。
【0023】
次に、上記走行制御コントローラ5における追従走行の走行制御に関わる処理を、図4のフローチャートを参照して説明する。この処理は、予め設定した制御時間毎に実施される。
先ずステップS10では、走行制御コントローラ5は、各センサ及び他のコントローラからの各種データを読み込む。具体的には、制御作動用スイッチ1の、各種スイッチ、外界認識装置3から先車両情報として車間距離vDistance、相対速度vVR、各輪の車輪速Vwi(i=1〜4)を読み込む。
【0024】
次に、ステップS20では、自車速Vを算出する。本実施形態では、通常走行時には、例えば後輪駆動の車両の場合は、下記(1)式により前輪の車輪速Vw1,Vw2の平均値として自車速Vを算出する。Vw1,Vw2は、タイヤ径に基づき求めた車速換算値とする。
V=(Vw1+Vw2)/2 ・・・(1)
なお、ABS制御などの車速を用いた他のシステムが作動している場合には、そのような他のシステムで使用している自車速(推定車速)を用いても良い。
【0025】
ステップS30では、設定された目標車間時間を達成するための目標車間距離Ltを算出する。
例えば、車間時間をTgap、先行車車速Vtとすると、目標車間距離Ltは、下記(2)式によって算出できる。
Lt=Vt×Tgap ・・・(2)
【0026】
ここで、先行車車速Vtは相対速度vVRと自車速Vから算出する。車間時間Tgapは、運転者のスイッチ操作に基づき選択する。ただし、交通効率を向上させるための複数台での隊列走行を行う際には、予め設定した固定値としても良い。また、隊列走行に設定する車間時間は、ACC制御の車間時間よりも短い車間時間とすることで、より交通効率を向上させることが可能となる。
【0027】
ステップS33では、自車両周囲走行車両状態検出部5Nが、自車の周囲を走行する車両の走行状態を検出する。具体的には、車車間通信や、路車間通信を用いて自車の周囲を走行している車両の走行状態を検出する。すなわち、通信装置4を用いて、自車の周囲の車両の車速、加減速度など走行状態を送受信する。なお、自車の周囲は、自車から予め設定した範囲内の領域を指す。例えば自車両を中心に進行方向に長軸を向けた予め設定した大きさの楕円形形状の領域内を対象とする。
【0028】
本実施形態では、ステップS33において、先行車の走行状態として先行車の減速開始を検出する。例えば、ブレーキ操作を検出するブレーキスイッチがONとなったことを、通信装置4を介して受信することで、先行車の減速を検出するとする。
ステップS36では、ステップS33の処理で先行車の減速開始を検出した場合には、そのときの車間距離を目標車間距離に設定する。また、車間距離用の制御指令値として、追従時の車間距離を維持するための予め設定した制駆動力指令値を車間距離制御指令値として算出する。本実施形態では、制駆動力指令値としてブレーキ液圧指令値を車間距離制御指令値として算出する。
ステップS39では、車間距離制御作動判断部5Qが、ステップS36にて制駆動力指令値を車間距離制御指令値として算出したと判定すると、車間距離維持制御作動フラグを「1」に設定する。
【0029】
ステップS40では、目標応答特性を算出する。ステップS40では、ステップS30で設定した目標車間距離Ltを実現するための応答特性として、目標車速Vtargetを算出する。先ず、第1目標車速Vrefを、先行車と自車両との間の車間相対値と目標車間相対値との偏差に基づき算出する。本実施形態では、車間相対値として、先行車と自車両との間の車間距離及び相対速度を使用する場合とする。すなわち本実施形態では、下記(3)式のように、目標車間距離と車間距離とのと車間距離偏差、目標相対速度vVTと相対速度の相対速度偏差、及び先行車速のそれぞれに対して、それぞれにゲインK1、K2、K3をかけた値を変数とする関数から、第1目標速度Vref求める。目標相対速度vVTは、例えばゼロとする。
Vref = f( K1×(vVR−vVT)、
K2×(Lt−vDistance)、
K3×vVR)・・・(3)
【0030】
そして、上記第1目標車速Vrefに対して、下記(4)式に基づき、予め設定した伝達特性を持たせた目標車速Vtargetを算出する。ここで、上記(4)式では、伝達特性として1次遅れ系のフィルタを施す場合を例示している。
【0031】
【数1】

【0032】
次に、ステップS50では、上記目標車速Vtargetに基づき目標加減速度を算出する。ステップS50では、ステップS40で算出した目標応答特性を実現するための目標加減速度Xgtを、下記(5)式に基づき算出する。ここでは、変数が自車速Vと目標車速Vtargetの関数を採用する。
Xgt = f(V、Vtarget)・・・(5)
(5)式の関数は、例えば、自車速と目標車速との車速偏差(V−Vtarget)が予め設定した値より小さい場合は、前回の目標加減速度を小さくし、その車速偏差が予め設定した値より大きい場合は、前回の目標加減速度を大きくするような関数とする。
【0033】
ステップS60では、ステップS50で算出した目標加減速度Xgtから目標車速指令値を算出する。具体的には、ステップS50で算出した目標加減速度Xgtに対して、予め設定した範囲に変化量を抑える加減速度リミッタ処理を施して、リミッタ処理後の目標加減速度Xgtargetを求め、そのリミッタ処理後の目標加減速度Xgtargetに基づき、(6)式によって目標車速指令値Vtargetを算出する。加減速度リミッタ処理は、例えば前回値と今回値との差分を取り、その差分が予め設定した差分閾値以上の場合には、前回値に差分閾値を加えた値を今回の目標加減速度Xgtargetとする。目標加減速度Xgtargetは、第1目標加減速度指令値に相当する。
Vtarget=f(Xgtarget)× Stime・・・(6)
ここで、ここで、Stimeは予め設定した時間をあらわす。
【0034】
ステップS65では、制御状態を遷移させるか否かを判断する。具体的には、先行車の走行状態に応じて、車間距離維持制御と車間時間制御のいずれの制御状態を選択する。そして、その選択によって制御状態が変更する場合には、制御状態を遷移させる。
本実施形態では、先行車に一定速度で追従走行していると判定した場合には、自車の制御状態として、予め設定された車間時間で追従する車間時間制御を選択する。
【0035】
その車間時間制御を選択している状態で、先行車が加減速を行ったと判定した場合には、車間距離維持制御を選択して車間距離維持制御の制御状態に遷移すると判定する。
また、車間距離維持制御の制御状態が選択されている状態では、先行車と自車の走行状態に応じて車間時間制御を選択し、車間時間制御を選択した場合には再度車間時間制御モードへ遷移させる。
【0036】
本実施形態のステップS65では、ステップS39にて車間距離維持制御作動フラグが「1」に設定されている場合には、制御状態を車間距離維持制御モードを選択し、現在の制御状態が車間時間制御モードの場合には、制御状態を車間距離維持制御モードへ遷移させる。また、車間距離維持制御作動フラグが「1」に設定されていない場合には、制御状態として車間時間制御モードを選択する。
【0037】
また、ステップS65では、車間距離維持制御モード中(車間距離維持制御作動フラグ=「1」)に、「車間距離制御指令値≦車間時間制御指令値」となったと判定すると、車間距離維持制御作動フラグを「0」に設定して車間時間制御モードする。そして、制御状態を車間時間制御へ遷移させる。これによって、目標車間時間を達成させるための制御指令値が、各制御装置へ出力される。ここで、車間距離制御指令値は、ステップS36で算出したブレーキ液圧指令値である。車間時間制御指令値は、ステップS70で求めたブレーキ液圧指令値である。この車間距離制御指令値及び車間時間制御指令値は、例えば前回値を使用する。
【0038】
ステップS70では、トルク配分制御を算出する。具体的には、ステップS60で算出した目標車速指令値Vtargetを実現するための、エンジントルク指令値と、ブレーキ液圧指令値に配分する。
例えば、加速度もしくは、車速からATギア比などを含めたホイル端トルク指令値を求め、その後、ホイル端トルク指令値からエンジントルク指令値を求める。その後、ホイル端トルクから算出したエンジントルク指令値から、エンジンブレーキ+走行抵抗分を差し引いた分をブレーキ液圧指令値とする。
【0039】
ステップS80では、エンジン制御作動判断を行う。具体的には、ステップS70で算出されたエンジントルク指令値が予め設定した所定値以下となった場合に、エンジン制御作動フラグfengを「1」に設定して、エンジントルク指令値を出力する。
ステップS85では、車間距離維持制御作動フラグが「1」と判定した場合には、ステップS36で算出した第2目標加減速度指令であるブレーキ液圧指令値を、最終的なブレーキ液圧指令値として出力する。なお、この場合には、エンジントルク指令値を「0」に設定しても良い。
【0040】
ステップS90では、ブレーキ制御作動判断を行う。具体的には、ステップS70で算出されたブレーキ液圧指令値が予め設定した所定値以上となった場合に、ブレーキ制御作動フラグfbrを「1」に設定して、ブレーキ液圧指令値を出力する。なお、ステップS36で算出したブレーキ液圧指令値は、予め設定した所定値以上の値である。
ステップS100では、上記ステップS80、S9で算出された各制御量を加減速制御装置に出力する。
【0041】
(動作その他)
先行車が一定速度で走行し、自車も一定速度で追従走行している場合には、目標車間時間となる第1目標加減速度指令値に基づき自車の加減速度が制御されている。
この状態で、通信によって先行車の制動開始(第1走行状態変化)を検出すると、図5に示すように、車間距離維持制御モードとなって制動が早期に開始する。すなわち、図5に示すように、先行車が制動すると、車間距離が短くなるが、本実施形態では、先行車の制動開始に応じて自車も制動を開始することで、車間距離が維持される。
【0042】
更に、車間距離維持制御モード中に、「車間距離制御指令値(第2目標加減速度指令値)≦車間時間制御指令値(第1目標加減速度指令値)」となった場合(第2走行状態変化を検出した場合)には、車間時間制御へ制御状態が遷移して、目標車間時間を達成させるための制御指令値が、各制御装置へ出力する。
このように、先行車のブレーキスイッチを検出するなど先行車の制動開始(第1走行状態変化)を検出すると、予め設定した減速度を発生させることで、先行車が減速を開始する直前の車間距離を維持させることが可能となる。
【0043】
またこの車間維持制御は、車間時間制御と比較して制御作動タイミングが早くなるので、先行車減速に対する制御応答性を向上させることが出来る。この結果、車間が詰まることに起因下、自車の運転者がブレーキを踏むことを減らすことに繋がる。このことは、車群を維持する状態をより長くすることに繋がる。
また、より減速度変化が少なくなるため、車群の安定性も向上させることができる。
【0044】
また、車間時間制御だけの走行制御では、無駄時間や、推定誤差などが要因となり、作動タイミングが遅くなるシーンがあり、先行車は緩減速しているのに対して、急減速となる可能性があった。このことは、隊列走行において、後続車へのショックウェーブを伝播させる傾向を生じる原因となっていた。これに対し、本実施形態では、制動の作動タイミングを早めることが出来るので、制御量を小さく抑えることが可能となる。この結果、目標値への追従性が向上すると共に、後続車へのショックウェーブの伝播を低減させることが可能となる。
【0045】
ここで、上記実施形態では、車間距離維持制御モード中に、「車間距離制御指令値≦車間時間制御指令値」となった場合には、車間時間制御へ制御状態が遷移するとしている。車間時間制御モード中に、車間距離維持制御作動フラグが「1」に設定されても、「車間距離制御指令値≦車間時間制御指令値」の場合には、車間距離維持制御モードへの遷移(車間距離維持制御の選択)を行うことなく、車間距離維持制御作動フラグを「0」に再設定しても良い。
【0046】
(変形例)
上記ステップS36では、先行車の減速開始を検出した場合には予め設定した制駆動力指令値を車間距離制御指令値として算出(設定)している。その予め設定した制駆動力指令値を車間距離制御指令値として算出した後には、先行車の減速度に応じた値に、ブレーキ液圧指令値を算出しても良い。例えば、先行車減速度に予め設定したゲインを掛けたものをブレーキ液圧指令値とする。
【0047】
次に、この場合の動作その他を説明する。
ここでは、図6に示すように、一定速度で先行車に追従中に先行車が減速した場合を想定する。このとき、先行車のブレーキ操作(ブレーキスイッチ)を検出すると、追従時の車間距離を維持させるため、予め設定した減速度となるブレーキ液圧指令値を出力する。
その後、先行車の減速度に応じてブレーキ液圧指令値を補正若しくは更新する。
その後、車間距離維持指令値 ≦ 車間時間制御指令値となった場合に、車間時間制御へ遷移させる。
【0048】
この場合には、先行車の減速度に応じて、制御量を補正することで、先行車が急減速を行ったときに、後続車の追突する可能性を低減させることが可能となる。
また、先行車の減速度を用いているので、車間距離の維持が容易となる。
ここで、車輪速センサ2は走行状態検出部を構成する。外界認識装置3は先行車検出部を構成する。ステップS30は目標車間時間設定部を構成する。ステップS40〜ステップS70は第1目標加減速度算出部を構成する。ステップS36は目標車間距離設定部を構成する。ステップS36は第2目標加減速度算出部、ステップS65、ステップS85は制御状態選択部を構成する。エンジンコントローラ及びブレーキコントローラは制駆動制御部を構成する。通信装置4は自車周囲車両走行状態検出部を構成する。
【0049】
(本実施形態の効果)
次に、本実施形態の効果を説明する。
(1)走行制御コントローラ5は、先行車と自車との間の相対値である車間相対値を検出する。走行制御コントローラ5は、目標車間時間を設定する。走行制御コントローラ5は、自車の走行状態及び上記車間相対値に基づき、上記目標車間時間とするための第1目標加減速度指令値を算出する。走行制御コントローラ5は、目標車間距離を設定する。走行制御コントローラ5は、上記設定した目標車間距離を達成するための第2目標加減速度指令値を算出する。走行制御コントローラ5は、先行車及び自車の少なくとも一方の走行状態に基づき第1目標加減速度指令値若しくは第2目標加減速度指令値を選択する。走行制御コントローラ5は、上記選択された目標加減速度指令値で自車の駆動装置及び制動装置の少なくとも一方を制御する。
【0050】
この構成によって、自車の走行状態及び自車周囲の他車両の走行状態の少なくとも一方の走行状態に応じて、目標車間時間による制御と目標車間距離による制御との切り換えを実施する。これによって、先行車への追従の状態に応じた制御を選択可能となる。この結果、より適切なタイミングで加減速を発生可能とすることも可能となる。
【0051】
ここで、目標車間距離維持制御は、目標車間時間制御と比較し、制御作動タイミングが早くなる。このことから、例えば制御作動タイミングを早めたい状態と判定したときに、目標車間距離維持制御を実施するように選択する。これによると、短い車間での隊列走行を実現する場合でも、先行車の減速に対する運転者への違和感が減少するとともに、運転者のブレーキキャンセルが減り、車群の維持が可能となる。さらに減速度の変化を小さくすることができるので、目標車速に対するオーバーシュート量が低減し、目標値を維持することが可能となる。
【0052】
(2)通信装置4によって自車両周囲の他車両の走行状態を検出する。走行制御コントローラ5は、通信装置4が検出した自車両周囲の他車両の車両走行状態に基づき、第2目標加減速度指令値を算出する。通信装置4が検出した自車両周囲の他車両の車両走行状態は、例えば先行車の走行状態とする。
この構成によれば、自車両周囲の他車両の走行状態に応じた、第2目標加減速度指令値で車間距離維持制御が可能となる。
【0053】
(3)通信装置4によって自車両周囲の他車両の走行状態を検出する。走行制御コントローラ5は、自車の走行状態、先行車の走行状態、及び通信装置4が検出する他車両の走行状態の少なくとも一つの走行状態に基づき、目標加減速度指令値の選択を実施する。
この構成によれば、自車の走行状態、先行車の走行状態、及び通信装置4が検出する他車両の走行状態の少なくとも一つの走行状態に合わせて、車間時間制御と車間距離維持制御との選択が可能となる。
【0054】
(4)走行制御コントローラ5は、先行車に対して自車両の速度が一定速度で追従していると判定すると第1目標加減速度指令値を選択し、その第1目標加減速度指令値を選択している状態で、先行車の走行状態が予め設定した第1走行状態変化に変化したことを検出すると、第1目標加減速度指令値から第2目標加減速度指令値に選択を遷移させる。
この構成によれば、安定して先行車に追従している場合には、車間時間制御を採用し、走行状態の変化に応じて適宜車間距離維持制御に移行することが可能となる。
【0055】
(5)走行制御コントローラ5は、第1目標加減速度指令値から第2目標加減速度指令値に選択を遷移させた後に、更に先行車の走行状態が予め設定した第2走行検出状態に変化したことを検出すると、その走行状態の変化に応じて、第2目標加減速度指令値から第1目標加減速度指令値に選択を遷移させる。
この構成によれば、一旦車間距離維持制御に繊維しても、車間時間制御に復帰することが可能となる。
(6)走行制御コントローラ5は、先行車追従時の自車の車速に応じて、目標加減速度指令値の遷移を判断する。
この構成によれば、追従状態を示す自車速に応じて制御状態の遷移を行うことが出来る。
【0056】
(7)走行制御コントローラ5は、予め設定した1以上の車速閾値と上記先行車追従時の自車の車速との関係に基づき、上記目標加減速度指令値の遷移を判断する。
この構成によれば、追従状態を示す自車速に応じて段階的に制御状態の遷移を行うことが出来る。
(8)走行制御コントローラ5は、先行車の制動開始を第1走行状態変化として検出する。
この構成によれば、先行車の制動開始によって車間距離が小さくなると判定されると車間距離維持制御に移行して、早いタイミングで制御を開始することが可能となる。
【0057】
(9)走行制御コントローラ5は、先行車の制動開始を検出した場合に、予め設定した減速度を発生可能な制動指令値を第2目標加減速度指令値とする。
これによって、目標車間距離を達成するための制御指令値を発生可能となる。先行車の制動によって車間距離が短くなるため、制御指令値が制動を指令する指令値となっている。
(10)走行制御コントローラ5は、上記制動指令値を、先行車の減速度に応じて変更する。
これによって、先行車の状態に応じた、より適切な制御指令値を発生可能となる。
【0058】
(11)走行制御コントローラ5は、第2目標加減速度指令値を選択している状態で、第2目標加減速度指令値よりも第1目標加減速度指令値の方が大きくなったと判定すると、第2目標加減速度指令値から第1目標加減速度指令値に遷移する。
この構成によって、車間時間制御による加減速度と車間距離維持制御による加減速度が同等な状態で車間時間制御に復帰することが可能となる。
(12)走行制御コントローラ5は、第1目標加減速度指令値から第2目標加減速度指令値に目標加減速度指令値が遷移する際の実車間距離を目標車間距離に設定する。
これによって、車間時間制御から車間距離維持制御に遷移したときの車間距離を維持可能となる。
【0059】
(13)走行制御コントローラ5は、先行車に追従するために、予め設定した目標車間時間とするための第1目標加減速度指令値を算出し、第1目標加減速度指令値を目標加減速度指令値で自車の駆動装置及び制動装置の少なくとも一方を制御する。また走行制御コントローラ5は、目標車間距離を設定する。走行制御コントローラ5は、先行車の減速開始を検出すると、上記目標加減速度指令値として、第1目標加減速度指令値から、上記目標車間距離を達成するための第2目標加減速度指令値に遷移させる。
この構成によれば、先行車が船側を開始する際には、制御開始タイミングが相対的に早い車間距離維持制御に遷移する。この結果、より適切なタイミングで制御を開始することが出来る。
【0060】
「第2実施形態」
次に、第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお上記第1実施形態と同様な構成については同一の符号を付して説明する。
本実施形態の基本的構成は、上記第1実施形態と同様である。
本実施形態の走行制御コントローラの処理は、図7に示すように、基本的に上記第1実施形態の処理(図4)と同様である。但し、ステップS36,ステップS65の処理が異なる。またステップS85の処理が無い。
【0061】
次に、本実施形態における、ステップS36、ステップS65の処理について説明する。
ステップS36では、車間距離を維持させるための制御指令値を算出する。すなわち、ステップS36では、車間距離維持制御モードの選択(遷移)を検出するトリガとなる、先行車の減速開始を検出したら、予め設定されている車間距離を目標車間距離として設定する。そして、上記設定した車間距離を維持するための制御指令値を算出する。本実施形態では、例えば、制御指令値として目標車速指令値を算出する。目標車間距離の設定は、自車速に応じた値としても良い。例えば自車速が大きいほど目標車間距離を大きく設定する。
【0062】
ここで、制御指令値となる、目標車速指令値は、例えば、自車速、車間距離偏差と、相対速度偏差に、それぞれフィードバックゲインをかけたものをとする。例えばステップS40の処理と同様な処理によって、車間維持制御の制御指令値としての目標車速指令値を求める。
ステップS65では、ステップS39にて車間距離維持制御作動フラグが「1」に設定されている場合には、制御状態を車間距離維持制御モードを選択し、現在の制御状態が車間時間制御モードの場合には、制御状態を車間距離維持制御モードへ遷移させる。また、車間距離維持制御作動フラグが「1」に設定されていない場合には、制御状態として車間時間制御モードを選択する。
【0063】
また、ステップS65では、実際の車間時間が目標車間時間を越えたと判定(第2走行状態変化を検出)すると、車間距離維持制御作動フラグを「0」に設定して車間時間制御モードする。そして、制御状態を車間時間制御へ遷移させる。
そして、車間距離維持制御作動フラグが「1」の場合には、ステップS36で算出した制御指令値としての目標車速指令値を選択する。一方、車間距離維持制御作動フラグが「1」で無い場合には、ステップS60で算出した目標車速指令値を選択する。
そして、ステップS65で選択した目標車速指令値を、ステップS70で使用する。
【0064】
(動作その他)
例えば、図8に示すように、先行車のブレーキスイッチを検出した場合に、目標車間維持制御モードのための制御状態遷移用の目標車間時間を設定する。ここではブレーキスイッチを検出している例を示しているが、先行車の減速開始を検出できれば良い。
具体的には、ある所定の目標車間時間とする。車速などに応じて設定値は可変にしても良い。
【0065】
そして、車間距離維持制御中には、設定された目標車間距離を維持するように制御される。更に、この車間距離維持制御中に、実車間時間が上記設定した目標車間時間を超えた場合には、車間時間制御へ制御状態を遷移させる。
このように、目標車間時間によって車間距離維持制御から車間時間制御への遷移が実施される。この結果、車間距離維持制御から、車間時間制御へ制御状態が遷移するときの制御指令値の変動を小さく抑えることができる。このため、車群の安定性を向上させることができる。
【0066】
(変形例)
ここで、上記各実施形態では、車間距離維持制御モードから車間時間制御モードへの遷移(選択の切り替わり)の判定を、次のように判定している。
すなわち、第1実施形態では、車間時間制御の制御指令値が車間距離維持制御の制御指令値を越えた場合に、車間時間制御モードへ遷移すると判定している。また、第2実施形態では、実車間時間が目標車間時間を超えた場合に、車間時間制御モードへ遷移すると判定している。
車間時間制御モードへの遷移判定は、これらに限定されない。
次のようにして、車間時間制御モードへの遷移判定を実施しても良い。
【0067】
(変形例1)
車間距離離維持制御へ制御状態が遷移すると時間の計測を開始し、計測時間が予め設定した経過時間以上となった場合に、車間時間制御モードへ遷移すると判定しても良い。
この場合のタイムチャート例を図9に示す。
図9の例では、車間距離維持制御に遷移した後、車間距離維持制御での液圧指令値が、車間時間制御での液圧指令値より大きくても、予め設定した経過時間だけ、車間時間制御状態が継続すると、車間時間制御へ制御状態が遷移する。
【0068】
(変形例2)
自車両が自立的に求める、つまり先行車車速・減速度推定部で算出する加減速度推定値と、通信によって得られる先行車の加減速度を比較する。そして、図10に示すように、加減速度推定値に基づき減速度が、通信で取得する減速度より大きくなった場合に、車間時間制御モードへの遷移と判定しても良い。
【0069】
(変形例3)
先行車に追従するときの自車の走行状態である自車速によって、車間時間制御モードへの遷移を判定しても良い。例えば、自車速が予め設定した車速以下と判定すると、車間時間制御モードへの遷移と判定する。又は先行車が予め設定した車速以下と判定すると、車間時間制御モードへの遷移と判定する。
ここで、一定速度で走行している先行車に追従する際は、予め設定された車間時間となる車間距離で追従することになる。この状態から、先行車が減速した場合を想定すると、減速中は車間距離を維持するための車間距離維持制御とし、その後先行車が一定速となった時に、予め設定した車速以下まで減速していると判断したときは、その車速帯で設定された車間時間となる車間距離となるように、車間時間制御へ遷移する。但し、先行車が予め設定した車速まで減速しなかった場合は、車間距離維持制御のまま継続させる。
【0070】
(変形例4)
先行車の加減速度に応じて、車間距離維持制御モードと車間時間制御モードの切り換えを行っても良い。
例えば、先行車の減速度が予め設定した減速度閾値よりも高い場合は、車間距離維持制御とし、先行車の減速度が予め設定した減速度閾値よりも低い場合は、車間時間制御とする。
ここで、上述の説明では、自車の走行状態及び先行車の走行状態の少なくとも一方の走行状態に応じて、車間距離維持制御と車間時間制御のいずれかを選択して遷移することで説明している。先行車以外の自車両周囲の他車両の走行状態に応じて、車間距離維持制御と車間時間制御との選択を判定しても良い。
【0071】
また上述の説明では、制御指令のうち、主として減速度制御指令値を、車間距離維持制御と車間時間制御で変更することを説明しているが。加速度制御指令値を主として変更するように設定しても良い。
また、走行制御コントローラ5は、第1実施形態の構成と第2実施形態の構成を適宜組み合わせて制御しても良い。
【0072】
ここで、車輪速センサ2は走行状態検出部を構成する。外界認識装置3は先行車検出部を構成する。ステップS30は目標車間時間設定部を構成する。ステップS40〜ステップS70は第1目標加減速度算出部を構成する。ステップS36は目標車間距離設定部を構成する。ステップS36は第2目標加減速度算出部を構成する。ステップS65、ステップS85は制御状態選択部を構成する。エンジンコントローラ及びブレーキコントローラは制駆動制御部を構成する。通信装置4は自車周囲車両走行状態検出部を構成する。
【0073】
(本実施形態の効果)
本実施形態は、第1実施形態での効果の他、次の効果を奏する。
(1)通信装置4は、自車両周囲の他車両の走行状態を検出する。走行制御コントローラ5は、自車の走行状態、先行車の走行状態、及び通信装置4が検出する他車両の走行状態の少なくとも一つの走行状態に基づき、目標加減速度指令値の選択を実施する。
この構成によれば、自車の走行状態、先行車の走行状態、及び通信装置4が検出する他車両の走行状態の少なくとも一つの走行状態に応じて、車間時間制御と車間距離維持制御の間の制御状態の遷移が可能となる。
【0074】
(2)走行制御コントローラ5は、第2目標加減速度指令値を選択している状態で、実車間時間が目標車間時間よりも大きくなると、第2目標加減速度指令値から第1目標加減速度指令値に遷移する。
この構成によれば、車間時間制御の目標車間時間となったとき車間時間制御に遷移する。この結果、制御状態の遷移による制動制御指令値の変動を小さくすることが出来る。
【符号の説明】
【0075】
1 制御作動用スイッチ
2 車輪速センサ
3 外界認識装置
4 通信装置
5 走行制御コントローラ
5A 制御状態設定部
5B 先行車検出状態判定部
5C 先行車車速・減速度推定部
5D 目標応答特性算出部
5E 目標車速算出部
5F 目標加減速度算出部
5G 車速指令値算出部
5I 制御状態遷移判断部
5J 車速サーボ演算部
5K トルク配分制御演算部
5L エンジントルク演算部
5M ブレーキ液圧演算部
5N 自車両周囲走行車両状態検出部
5P 車間距離制御指令値算出部
5Q 車間距離制御作動判断部
6 加減速制御装置
6A ブレーキコントローラ
6B エンジンコントローラ
10 ブレーキ装置
12 エンジン
13 車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の走行状態を検出する走行状態検出部と、
自車前方を走行する先行車を検出する先行車検出部と、
上記先行車検出部が検出した先行車と自車との間の相対値である車間相対値を検出する車間相対値検出部と、
目標車間時間を設定する目標車間時間設定部と、
上記走行状態検出部が検出した自車の走行状態及び上記車間相対値検出部が検出した車間相対値に基づき、上記目標車間時間とするための第1目標加減速度指令値を算出する第1目標加減速度算出部と、
目標車間距離を設定する目標車間距離設定部と、
上記目標車間距離設定部が設定した目標車間距離を達成するための第2目標加減速度指令値を算出する第2目標加減速度算出部と、
先行車及び自車の少なくとも一方の走行状態に基づき第1目標加減速度指令値若しくは第2目標加減速度指令値を選択する制御状態選択部と、
制御状態選択部で選択された目標加減速度指令値で自車の駆動装置及び制動装置の少なくとも一方を制御する制駆動制御部と、を備えることを特徴とする車両用走行制御装置。
【請求項2】
通信手段によって自車両周囲の他車両の走行状態を検出する自車周囲車両走行状態検出部を備え、
上記第2目標加減速度指令値部は、自車周囲車両走行状態検出部が検出した自車両周囲の他車両の車両走行状態に基づき、第2目標加減速度指令値を算出することを特徴とする請求項1に記載した車両用走行制御装置。
【請求項3】
通信手段によって自車両周囲の他車両の走行状態を検出する自車周囲車両走行状態検出部を備え、
上記制御状態選択部は、自車の走行状態、先行車の走行状態、及び自車周囲車両走行状態検出部が検出する他車両の走行状態の少なくとも一つの走行状態に基づき、目標加減速度指令値の選択を実施することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した車両用走行制御装置。
【請求項4】
上記制御状態選択部は、先行車に対して自車両の速度が一定速度で追従していると判定すると第1目標加減速度指令値を選択し、その第1目標加減速度指令値を選択している状態で、先行車の走行状態が、予め設定した第1走行状態変化に変化したことを検出すると、第1目標加減速度指令値から第2目標加減速度指令値に選択を遷移させることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車両用走行制御装置。
【請求項5】
上記制御状態選択部は、第1目標加減速度指令値から第2目標加減速度指令値に選択を遷移させた後に、更に先行車の走行状態が、予め設定した第2走行状態変化に変化したことを検出すると、第2目標加減速度指令値から第1目標加減速度指令値に選択を遷移させることを特徴とする請求項4に記載した車両用走行制御装置。
【請求項6】
上記制御状態選択部は、先行車追従時の自車の車速に応じて、目標加減速度指令値の選択を判断することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載した車両用走行制御装置。
【請求項7】
上記制御状態選択部は、予め設定した1以上の車速閾値と上記先行車追従時の自車の車速との関係に基づき、上記目標加減速度指令値の遷移を判断することを特徴とする請求項6に記載した車両用走行制御装置。
【請求項8】
先行車の制動開始を上記走行状態変化とすることを特徴とする請求項4に記載した車両用走行制御装置。
【請求項9】
上記第2目標加減速度算出部は、先行車の制動開始を検出した場合に、予め設定した減速度を発生可能な制動指令値を第2目標加減速度指令値とすることを特徴とする請求項8に記載した車両用走行制御装置。
【請求項10】
第2目標加減速度算出部は、上記制動指令値を、先行車の減速度に応じて変更することを特徴とする請求項9に記載した車両用走行制御装置。
【請求項11】
上記制御状態選択部は、第2目標加減速度指令値を選択している状態で、第2目標加減速度指令値よりも第1目標加減速度指令値の方が大きくなったと判定すると、第2目標加減速度指令値から第1目標加減速度指令値に遷移することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載した車両用走行制御装置。
【請求項12】
上記制御状態選択部は、第2目標加減速度指令値を選択している状態で、実車間時間が目標車間時間よりも大きくなると、第2目標加減速度指令値から第1目標加減速度指令値に遷移することを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載した車両用走行制御装置。
【請求項13】
上記目標車間距離設定部は、第1目標加減速度指令値から第2目標加減速度指令値に目標加減速度指令値が遷移する際の実車間距離を目標車間距離に設定することを特徴とする請求項1〜請求項12に記載した車両用走行制御装置。
【請求項14】
先行車に追従するために、予め設定した目標車間時間とするための第1目標加減速度指令値を算出し、第1目標加減速度指令値を目標加減速度指令値で自車の駆動装置及び制動装置の少なくとも一方を制御する車両用走行制御装置において、
目標車間距離を設定する目標車間距離設定部を備え、
他車両の減速開始を検出すると、上記目標加減速度指令値として、第1目標加減速度指令値から、上記目標車間距離を達成するための第2目標加減速度指令値に遷移させることを特徴とする車両用走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−240532(P2012−240532A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111743(P2011−111743)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】