説明

車両用運転操作補助装置および車両用運転操作補助装置を備えた車両

【課題】触覚情報に加えて視覚情報を用いてリスクポテンシャルを運転者に伝達する車両用運転操作補助装置を提供する。
【解決手段】車両用運転操作補助装置は、自車両と前方障害物との接近度合を表すリスクポテンシャルに応じた操作反力を発生するようにアクセルペダル操作反力制御を行う。このとき、自車両前方に存在するどの障害物を対象としてリスクポテンシャルを算出し、反力制御を行っているかをわかりやすく運転者に伝えるために、HUDの先行車に対応する位置に参照枠を表示する。参照枠の大きさ、表示色、および輝度をリスクポテンシャルに応じて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の操作を補助する車両用運転操作補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車間距離制御を行うシステムにおいて、自車両の前方に先行車が出現すると車両前方画像中に先行車の存在を示す先行車捕捉表示を重ね合わせて表示する表示装置が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−58919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自車両周囲の障害物状況に基づくリスクポテンシャルに応じて操作反力制御を行う車両用運転操作補助装置は、操作反力を用いて触覚を介した情報提供を行うことができる。ただし、触覚による情報提供を行う装置では、どの障害物を対象にして制御が行われているか、また、どの程度のリスクポテンシャルが発生しているかを視覚情報として運転者に伝えることができない。そこで、リスクポテンシャルに応じて操作反力制御を行う装置において、操作反力の制御状態をわかりやすくするために視覚的な情報も運転者に伝えることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による車両用運転操作補助装置は、自車両前方に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、障害物検出手段からの信号に基づいて、自車両の障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段で算出されるリスクポテンシャルを、運転者が自車両を運転操作するときの運転操作機器を介した触覚情報として運転者に伝達する触覚情報伝達手段と、リスクポテンシャル算出手段においてリスクポテンシャルを算出する際の対象となった障害物(以降、対象障害物と呼ぶ)を、視覚情報として伝達する視覚情報伝達手段とを備える。
本発明による車両用運転操作補助方法は、自車両前方に存在する障害物を検出し、障害物に検出結果に基づいて、自車両の障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、リスクポテンシャルを、運転者が自車両を運転操作するときの運転操作機器を介した触覚情報として運転者に伝達し、リスクポテンシャルを算出する際の対象となった障害物を、視覚情報として伝達する。
本発明による車両は、自車両前方に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、障害物検出手段からの信号に基づいて、自車両の障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段で算出されるリスクポテンシャルを、運転者が自車両を運転操作するときの運転操作機器を介した触覚情報として運転者に伝達する触覚情報伝達手段と、リスクポテンシャル算出手段においてリスクポテンシャルを算出する際の対象となった障害物を、視覚情報として伝達する視覚情報伝達手段とを有する車両用運転操作補助装置を備える。
本発明による車両用運転操作補助装置は、自車両前方に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、障害物検出手段からの信号に基づいて、自車両の前記障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、リスクポテンシャル算出手段で算出されるリスクポテンシャルを、運転者が自車両を運転操作するときの運転操作機器を介した触覚情報として運転者に伝達する触覚情報伝達手段と、触覚情報伝達手段における制御の対象である障害物(以降、対象障害物と呼ぶ)に対するリスクポテンシャルを、視覚情報として伝達する視覚情報伝達手段とを備える。
【発明の効果】
【0006】
リスクポテンシャルを触覚情報として伝達するとともに、リスクポテンシャルの算出の対象となった障害物を視覚情報として伝達するので、運転操作機器を介した触覚情報がどの障害物を対象として制御されているかを運転者に視覚的に確認させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図2】図1に示す車両用運転操作補助装置を搭載した車両の構成図。
【図3】第1の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図4】相対走行状態判定処理の処理手順を示すフローチャート。
【図5】(a)〜(d)シーンB〜シーンEの具体的な走行状態を示す図。
【図6】(a)(b)自車両と先行車との関係と、HUDを通してみた自車両前方領域を示す図。
【図7】(a)(b)参照点高さの算出方法を説明する図。
【図8】(a)(b)参照点横位置の算出方法を説明する図。
【図9】表示制御処理の処理手順を示すフローチャート。
【図10】リスクポテンシャルと参照枠の大きさとの関係を示す図。
【図11】リスクポテンシャルと参照枠の表示色との関係を示す図。
【図12】(a)〜(c)参照枠の形状の例を示す図。
【図13】(a)〜(e)シーンA〜シーンEにおける参照枠の輝度の時間変化を示す図。
【図14】リスクポテンシャルとアクセルペダル反力制御指令値との関係を示す図。
【図15】シーンA〜シーンEの作動内容を説明する図。
【図16】第2の実施の形態における表示例を示す図。
【図17】(a)〜(c)先行車を後方、側方、および上方から見た場合の表示画像例を示す図。
【図18】第3の実施の形態においてHUDを通してみた自車両前方領域を示す図。
【図19】自車両と先行車との接近度合と参照枠オフセット量との関係を示す図。
【図20】本発明の第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図21】第4の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図22】(a)(b)第4の実施の形態による表示例を示す図。
【図23】(a)(b)自車両のリスクポテンシャルの概念を説明する図。
【図24】リスクポテンシャル算出処理の処理手順を説明するフローチャート。
【図25】リスクポテンシャルとアクセルペダル反力制御指令値との関係を示す図。
【図26】第5の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図27】各仮想点におけるリスクポテンシャルの算出方法を説明する図。
【図28】第5の実施の形態による表示例を示す図。
【図29】リスクポテンシャルと表示色との関係を示す図。
【図30】第6の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図31】(a)〜(c)マーカの形状の例を示す図。
【図32】第6の実施の形態による表示例を示す図。
【図33】本発明の第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図34】第7の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図35】(a)(b)車線変更意図の有無に応じた制御対象となり得る障害物の選定方法を説明する図。
【図36】第7の実施の形態による表示例を示す図。
【図37】本発明の第8の実施の形態による車両用運転操作補助装置のシステム図。
【図38】アクセルペダル操作量とドライバ要求駆動力との関係を示す図。
【図39】第8の実施の形態における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャート。
【図40】第8の実施の形態による表示例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
《第1の実施の形態》
図1は、本発明の第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の構成を示すシステム図であり、図2は、車両用運転操作補助装置1を搭載する車両の構成図である。
【0009】
まず、車両用運転操作補助装置1の構成を説明する。レーザレーダ10は、車両の前方グリル部もしくはバンパ部等に取り付けられ、水平方向に赤外光パルスを照射して自車両の前方領域を走査する。レーザレーダ10は、前方にある複数の反射物(通常、先行車の後端)で反射された赤外光パルスの反射波を計測し、反射波の到達時間より、先行車までの車間距離と相対速度を検出する。検出した車間距離及び相対速度はコントローラ50へ出力される。レーザレーダ10によりスキャンされる前方の領域は、自車正面に対して±6deg程度であり、この範囲内に存在する前方物体が検出される。
【0010】
前方カメラ20は、フロントウィンドウ上部に取り付けられた小型のCCDカメラ、またはCMOSカメラ等であり、前方道路の状況を画像として検出し、コントローラ50へと出力する。前方カメラ20による検知領域は車両の前後方向中心線に対して水平方向に±30deg程度であり、この領域に含まれる前方道路風景が画像として取り込まれる。
【0011】
車速センサ30は、車輪の回転数や変速機の出力側の回転数を計測することにより自車両の車速を検出し、検出した自車速をコントローラ50に出力する。舵角センサ35は、ステアリングホイール36もしくはステアリングコラム(不図示)付近に取り付けられた角度センサ等であり、ステアリングシャフトの回転を操舵角として検出し、コントローラ50へ出力する。
【0012】
アイポイント検出装置37は、例えばステアリングホイール36付近に設けられた小型の赤外線カメラを備え、地面から着座した運転者の目までの高さ(以降、アイポイント高さと呼ぶ)を算出するために運転者の顔画像を撮影する。コントローラ50は、アイポイント検出装置37からの信号に基づいて運転者のアイポイント高さを算出する。なお、アイポイント検出装置37によって運転席シートの前後方向位置、シートベルトのアジャスタ位置やシートベルト巻き取り量を検出し、これらの検出値に基づいて推定される運転者の体重/身長(体格)に基づいてアイポイント高さを推定することもできる。
【0013】
コントローラ50は、車速センサ30から入力される自車速、レーザレーダ10から入力される距離情報、および前方カメラ20で検出される自車両前方の画像情報から、自車両周囲の障害物状況、例えば自車両と各障害物との相対距離および相対速度といった障害物に対する走行状態を認識する。なお、コントローラ50は、前方カメラ20の撮像画像に所定の画像処理を施すことにより、自車両前方の障害物状況を認識する。コントローラ50は、障害物状況に基づいて各障害物に対する自車両の接近度合を表すリスクポテンシャルを算出する。
【0014】
コントローラ50は、障害物に対するリスクポテンシャルに基づいて、運転者が自車両を運転操作する際の運転操作機器に発生する操作反力を制御する。ここでは、運転操作機器としてアクセルペダル72を用いる。さらに、リスクポテンシャルに応じた操作反力制御の制御状態を視覚情報としても運転者に伝え、運転者の運転操作を適切な方向に導くように表示制御を行う。コントローラ50における制御の詳細は後述する。
【0015】
アクセルペダル反力制御装置70は、コントローラ50からの指令に応じて、アクセルペダル72のリンク機構に組み込まれたサーボモータユニット71で発生させるトルクを制御する。サーボモータユニット71は、アクセルペダル反力制御装置70からの指令値に応じて発生させる反力を制御し、運転者がアクセルペダル72を操作する際に発生する操作反力(踏力)を任意に制御することができる。なお、操作反力制御が行われていない場合の通常の反力特性は、例えばねじりバネのばね力により、アクセルペダル72の踏み込み量の増加に比例して操作反力が大きくなるように設定されている。
【0016】
表示制御装置80は、コントローラ50からの指令に応じて表示装置81に表示する画像を生成する。表示装置81はヘッドアップディスプレイ(HUD)であり、フロントガラス全体を映像投影面として構成している。HUD81は、表示制御装置80からの信号に応じた画像を表示し、運転者が前方を視認している状態で、リスクポテンシャル等の情報を運転者に提供できるようにしている。
【0017】
警報装置90は、スピーカを備え、コントローラ50からの指令に応じて警報音を発生し、運転者の注意を喚起する。
【0018】
次に、本発明の第1の実施の形態における車両用運転操作補助装置1の動作を、図3を用いて詳細に説明する。図3は、コントローラ50における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。
【0019】
まず、ステップS1000でリスクポテンシャルに応じた操作反力制御が実行されているか否かを判定する。具体的には、レーザレーダ10によって自車両前方の障害物が検知され、リスクポテンシャルRPに応じた操作反力制御が実行可能な状態であるか否かを判定する。ステップS1000が肯定判定されるとステップS1010へ進み、否定判定されるとこの処理を終了する。
【0020】
ステップS1010では、自車両周囲の環境情報を読み込む。ここで、環境情報は、自車前方の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。そこで、レーザレーダ10により検出される前方障害物までの車間距離Dと相対速度Vr,および前方障害物の存在方向θ1、車速センサ30によって検出される自車両の走行車速Vを読み込む。また、舵角センサ35で検出されるステアリング操舵角Sも読み込む。
【0021】
ステップS1011では、ドライバ情報を取得する。具体的には、アイポイント検出装置37からの信号に基づいて運転者のアイポイント高さheを算出する。さらに、自車両の先端(最前部)から運転者の目(アイポイント)までの前後方向距離dc、およびHUD81からアイポイントまでの前後方向距離ddを、運転席シートのシート位置に基づいて算出する。なお、前後方向距離dc,ddは所定値として予め設定しておくこともできる。
【0022】
ステップS1020では、前方障害物に対する自車両のリスクポテンシャルRPを算出する。まず、自車両と前方障害物との余裕時間TTCおよび車間時間THWを算出する。
余裕時間TTCは、前方障害物、例えば先行車に対する現在の自車両の接近度合を示す物理量である。余裕時間TTCは、現在の走行状況が継続した場合、つまり自車速V、先行車速Vfおよび相対車速Vrが一定の場合に、何秒後に車間距離Dがゼロとなり自車両と先行車両とが接触するかを示す値である。なお、相対速度Vr=V−Vfとする。余裕時間TTCは、以下の(式1)により求められる。
TTC=D/Vr ・・・(式1)
【0023】
余裕時間TTCの値が小さいほど、先行車への接触が緊迫し、先行車への接近度合が大きいことを意味している。例えば先行車への接近時には、余裕時間TTCが4秒以下となる前に、ほとんどの運転者が減速行動を開始することが知られている。
【0024】
車間時間THWは、自車両が先行車に追従走行している場合に、想定される将来の先行車の車速変化による余裕時間TTCへの影響度合、つまり相対車速Vrが変化すると仮定したときの影響度合を示す物理量である。車間時間THWは、以下の(式2)で表される。
THW=D/V ・・・(式2)
【0025】
車間時間THWは、車間距離Dを自車速Vで除したものであり、先行車の現在位置に自車両が到達するまでの時間を示す。この車間時間THWが大きいほど、周囲の環境変化に対する予測影響度合が小さくなる。つまり、車間時間THWが大きい場合には、もしも将来に先行車の車速が変化しても、先行車までの接近度合には大きな影響を与えず、余裕時間TTCはあまり大きく変化しないことを示す。なお、自車両が先行車に追従し、自車速V=先行車速Vfである場合は、(式2)において自車速Vの代わりに先行車速Vfを用いて車間時間THWを算出することもできる。
【0026】
つぎに、余裕時間TTCと車間時間THWとを用いて以下の(式3)からリスクポテンシャルRPを算出する。
RP=A/THW+B/TTC ・・・(式3)
A、Bは、車間時間THWの逆数および余裕時間TTCの逆数にそれぞれ適切な重み付けをするための定数であり、予め適切な値、例えばA=1,B=8(A<B)に設定する。
【0027】
リスクポテンシャル(Risk Potential)は、「潜在的なリスク/危急」を意味し、ここでは特に、自車両と自車両周囲に存在する障害物とが接近していくことにより増大するリスクの大きさを表す。したがって、リスクポテンシャルは、自車両と障害物とがどれほど近づいているか、すなわち自車両と障害物とが近づいている程度(接近度合)を表す物理量であるといえる。
【0028】
ステップS1030では、自車両と前方障害物との相対的な走行状態を判定する。ここでの処理を、図4のフローチャートを用いて説明する。
ステップS1100では、ステップS1010で読み込んだ操舵角Sに基づいて、自車両が車線変更を行っているかを推定する。例えば、自車両が車線内を維持して走行する場合の標準的な操舵角範囲よりも大きな操舵角Sが検出された場合に、自車両が車線変更しようとしていると判断することができる。あるいは、運転者によるウィンカ操作や、種々の手法による車線変更意図推定に基づいて、自車両の車線変更を推定することもできる。
【0029】
ステップS1100で車線変更が行われていないと判定されると、ステップS1105へ進み、レーザレーダ10あるいは前方カメラ20によって自車両前方の障害物、例えば先行車を検知しているか否かを判定する。先行車を検知している場合は、ステップS1110へ進み、前回周期においても先行車を検知していたかを判定する。前回周期から先行車を検知している場合はステップS1115へ進み、自車両が先行車に追従している(シーンA)と判断する。
【0030】
ステップS1100で車線変更が行われていると判定されると、ステップS1120へ進み、先行車を検知しているか否かを判定する。先行車を検知していない場合は、ステップS1125へ進む。この場合は、図5(a)に示すように自車両が車線変更を行うことによって先行車が検知されなくなったと判断する。このときの相対的な走行状態をシーンBとする。一方、ステップS1120で先行車が検知されていると判定されると、ステップS1130へ進む。この場合は、図5(c)に示すように自車両が車線変更することにより先行車が検知されるようになったと判断する。このときの相対的な走行状態をシーンDとする。
【0031】
ステップS1105で先行車を検知していないと判定されると、ステップS1132へ進み、前回周期においても先行車を検知していなかったか否かを判定する。前回周期では先行車を検知していた場合は、ステップS1135へ進む。この場合は、図5(b)に示すように先行車が車線変更していくことにより先行車が検知されなくなったと判断する。このときの相対的な走行状態をシーンCとする。一方、ステップS1132で前回周期から先行車を検知していないと判定されると、ステップS1137へ進み、先行車を検知していない(シーンF)と判断する。
【0032】
ステップS1110で前回周期では先行車を検知していなかったと判定されると、ステップS1140へ進む。この場合は、図5(d)に示すように先行車が車線変更してくることにより先行車が検知されるようになったと判断する。このときの相対的な走行状態をシーンEとする。なお、シーンEは、自車両が遠方に存在していた先行車に接近して検知開始した場合も含む。
【0033】
このようにステップS1030で自車両と先行車との相対的な走行状態を判定した後、ステップS1040へ進む。ステップS1040では、HUD81に表示する画像の参照点を算出する。図6(a)(b)に自車両と先行車との関係と、HUD81を通して先行車を見た場合のイメージを示す。
【0034】
図6(b)において、運転者のアイポイント、すなわち視線方向に対応する位置をP1,先行車の最後尾中心位置をP2で示す。ここでは、先行車の最後尾中心位置P2を参照点とする。アイポイント位置P1は、ドライバセンタとアイポイント高さheに基づいて設定する。HUD81には、参照点P2を中心として丸い参照枠82が表示される。参照枠82は、リスクポテンシャルRPを算出する際の対象となった障害物を示しており、運転者から見て先行車に重畳する位置に表示される。HUD81には、タイムカウンタ83も表示されるが、これについては後述する。
【0035】
参照点P2は、HUD81上でのアイポイント位置P1に対する相対高さ(参照点高さ)ΔRP1と相対横位置(参照点横位置)ΔRP2から表される。まず、参照点高さΔRP1の算出方法について説明する。図7(a)(b)に自車両と先行車との関係と、参照点高さΔRP1の算出概念図を示す。
【0036】
図7(b)において、アイポイント高さをhe、アイポイントからHUD81までの距離をdd、アイポイントから先行車最後部までの距離をdl、先行車の中心までの高さをhlとする。アイポイントから先行車最後部までの距離dlは、レーザレーダ10によって検出される車間距離Dに、アイポイントから自車両最前部までの距離dcを加算した値として設定する。先行車高さhlは、先行車の車高の半分として設定する。HUD81上における参照点高さΔRP1は、以下の(式4)から算出できる。
ΔRP1=dd(he−hl)/dl ・・・(式4)
【0037】
つぎに、参照点横位置ΔRP2の算出方法について説明する。図8(a)(b)に自車両と先行車との関係と、参照点横位置ΔRP2の算出概念図を示す。図8(b)において、レーザレーダ10によって検出される自車両に対する先行車の存在方向(角度)をθ1、自車両の前後方向中心(車両センタ)からアイポイント(ドライバセンタ)までの距離をlc、アイポイントから先行車最後部までの距離を(dc+d・cosθ1)、アイポイントから先行車の横方向中心位置までの距離を(d・sinθ1−lc)とする。HUD81上における参照点横位置ΔRP2は、以下の(式5)から算出できる。
ΔRP2=dd{(d・sinθ1−lc)/(d・cosθ1)} ・・・(式5)
【0038】
つづくステップS1050では、ステップS1030で判定した先行車との相対走行状態およびステップS1040で算出した参照点に基づいて、HUD81の表示制御を行う。ここでの処理を、図9のフローチャートを用いて説明する。
【0039】
まず、ステップS1052で、ステップS1030でシーンA(追従)と判断されたか否かを判定する。シーンAと判断されている場合はステップS1053へ進み、先行車に対する追従走行状態が安定しているか否かを判定する。具体的には、ステップS1020で算出された車間時間THWが所定時間、継続して所定の範囲内であるか否かを判定する。例えば、車間時間THWが2±0.25秒の範囲内で、5秒以上継続している場合に、安定した追従走行状態と判定してステップS1054へ進む。ステップS1054では、所定範囲内の車間時間THWが所定時間継続してから、すなわちステップS1053が最初に肯定判定されてからの経過時間(追従時間)をカウントアップする。
【0040】
ステップS1052またはステップ1053が否定判定された場合は、ステップS1055へ進み、追従時間をリセットする。
【0041】
つづくステップS1056では、リスクポテンシャルRP、先行車との相対走行状態、および参照点位置等に基づいて、HUD81に画像を表示させる表示形態を決定し、表示制御処理を行う。リスクポテンシャルRPの算出対象、すなわち反力制御の対象の障害物であることを示す参照枠82は、ステップS1040で算出した参照点P2を中心として表示する。参照枠82の外形の大きさは、図10に示すようにリスクポテンシャルRPが大きくなるほど大きくなるように設定する。リスクポテンシャルRPが所定値、例えばRP=2以上の場合は、運転者の注意を喚起するように参照枠82を点滅させる。
【0042】
また、参照枠82の大きさを変化させるとともに、リスクポテンシャルRPに応じて参照枠82の表示色を変化させる。具体的には、図11に示すように、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど表示色を緑、青、黄、赤と徐々に変化させていく。ここでは、緑から赤まで表示色が徐々に変化するように設定しているが、リスクポテンシャルRPを複数の領域に分割し、領域ごとに表示色を割り当てるように設定することもできる。
【0043】
参照枠82は、図12(a)に示すような円形、図12(b)に示すような四角形、および図12(c)に示すような多角形等の複数のパターンを予め設定しておく。これら以外の形状の参照枠82を設定することももちろん可能である。そして、先行車が入れ替わるたびに参照枠82の形状を切り替える。なお、参照枠82の太さは、HUD81に先行車に重畳して表示した場合に車両前方の視認性を妨げないように設定しておく。
【0044】
参照枠82の輝度は、自車両と先行車との相対走行状態に応じて設定する。図13(a)〜(e)に、シーンAからシーンEにおける参照枠82の輝度の時間変化を示す。自車両が先行車に追従しているシーンAの場合は、図13(a)に示すように参照枠82の輝度を一定とする。シーンBの場合は、図13(b)に示すようにシーンBと判断された時間t1から輝度が0となるまで徐々に低下するように設定する。シーンCの場合は、図13(c)に示すようにシーンCと判断された時間t2から輝度が0となるまで徐々に低下するように設定する。このときの輝度の変化速度は、シーンBの場合よりもゆっくりと変化するように設定する。
【0045】
シーンDの場合は、図13(d)に示すようにシーンDと判断された時間t3で、参照枠82をフラッシュのように最大輝度で点灯する。参照枠82を瞬間的に最大輝度で点灯した後、輝度を所定値まで低下して点灯を継続する。シーンEの場合は、図13(e)に示すようにシーンEと判断された時間t4で、参照枠82を最大輝度で点灯し、輝度を一時的に低下させた後、再び輝度を最大とする。すなわち、参照枠82を二回フラッシュのように点灯してから、参照枠82の輝度を所定値まで低下して点灯を継続する。なお、参照枠82をフラッシュのように点灯するときの最大輝度は、運転者の運転操作を妨げないように適切に設定しておく。
【0046】
このように参照枠82の表示形態を決定し、設定した大きさ、色、および輝度でHUD81上に参照枠82を表示するように表示制御装置80に信号を出力する。また、自車両が先行車に追従するシーンAと判断された場合で、追従時間がカウントされている場合は、図6(b)に示すように参照枠82とともに追従時間をタイムカウンタ83として表示させる。タイムカウンタ83は、車両前方の視認性を妨害しないようにHUD81の下方に表示することが望ましい。なお、追従時間がカウントされていない場合は、ランダムの数値を表示したり、タイムカウンタ83を消灯する。
【0047】
つづくステップS1060では、警報装置90に指令を出力して警報音を発生させる。具体的には、シーンDやシーンEのように、レーザレーダ10または前方カメラ20により新たに先行車を検知した場合には、例えば「ポーン」という報知音を発生して先行車を検知し始めたことを運転者に知らせる。また、リスクポテンシャルRPが所定値、例えばRP=2よりも高い場合は、運転者の注意を喚起するように「ピピ」という報知音を発生する。
【0048】
ステップS1070では、ステップS1020で算出したリスクポテンシャルRPに基づいてアクセルペダル72に発生する操作反力を制御する。そこで、図14に示すマップに従って、リスクポテンシャルRPに応じたアクセルペダル反力制御指令値FAを算出する。アクセルペダル反力制御指令値FAは、図14に示すようにリスクポテンシャルRPが所定値RPminよりも大きくなるほど大きくなるように設定されている。リスクポテンシャルRPが所定値RPmaxよりも大きくなると反力制御指令値FAは所定の最大値FAmaxに固定される。
【0049】
コントローラ50は、算出したアクセルペダル反力制御指令値FAをアクセルペダル反力制御装置70に出力する。アクセルペダル反力制御装置70は、コントローラ50から入力される指令値に応じてアクセルペダル72に発生する操作反力を制御する。具体的には、アクセルペダル操作量SAに応じた通常の反力特性に反力制御指令値FAを加算した値を、アクセルペダル72から発生させる。これにより、今回の処理を終了する。
【0050】
以下に、第1の実施の形態による車両用運転操作補助装置1の作用を説明する。図15に、シーンA〜シーンFにおける作動内容をまとめる。シーンAの場合は、自車両が車線変更等を行うことなく先行車に追従しているので、適切な車間距離を保って追従走行が行えるように運転者の運転操作を導くようにする。そこで、反力制御の対象となっている障害物に重畳するように一定の輝度の参照枠82を表示するとともに、安定した追従走行状態となってからの経過時間をタイムカウンタ83としてHUD81に表示する。このタイムカウンタ83は、安定した追従走行状態が継続していることを運転者に知らせるインジケータとして機能する。
【0051】
シーンBの場合は、自車両が車線変更することにより先行車が検知されなくなることを、運転者に知らせるようにする。そこで、先行車に重畳して表示していた参照枠82の残像が残るように、フェードアウトしながら消灯する。これにより、反力制御の対象となっていた先行車がいなくなるためアクセルペダル反力が低下していることを、運転者に視覚情報として確実に認識させることができる。
【0052】
シーンCの場合は、先行車が車線変更等を行うことにより検知されなくなることを、運転者に知らせるようにする。このときも、先行車に重畳して表示していた参照枠82の残像が残るように、フェードアウトしながら消灯する。先行車の挙動により非検知となるので、参照枠82はゆっくりとフェードアウトさせる。これにより、反力制御の対象となっていた先行車がいなくなるためアクセルペダル反力が低下していることを、運転者に視覚情報として確実に認識させることができる。先行車が非検知となった後に、新たに別の先行車を検知した場合は、参照枠82の形状を変更して表示するとともに、報知音(ポーン)を発生させる。これにより、聴覚情報としても先行車の検知を知らせることができる。
【0053】
シーンDの場合は、自車両が車線変更することにより先行車を検知し始めたことを運転者に知らせるようにする。そこで、参照枠82をフラッシュのように瞬間的に明るく表示した後、新たに反力制御の対象となる先行車に重畳するように表示する。また、報知音(ポーン)を発生させる。これにより、どの障害物を対象としてリスクポテンシャルRPが算出され、反力制御が行われるのかを運転者に明確に認識させることができる。また、リスクポテンシャルRPの大きさに応じて参照枠82および表示色が変更するので、アクセルペダル72から発生する操作反力を、視覚情報により確認することが出来る。
【0054】
シーンEの場合は、先行車が車線変更することにより先行車を検知し始めたこと、または自車両前方に新たな先行車を検知し始めたことを運転者に知らせるようにする。この場合は、自車両の運転操作に関わらず先行車が検知されるようになるので、先行車の検知を確実に認識させるように、参照枠82を2回、フラッシュのように瞬間的に明るく表示した後、新たに反力制御の対象となる先行車に重畳するように表示する。また、報知音(ポーン)を発生させる。これにより、どの障害物を対象としてリスクポテンシャルRPが算出され、反力制御が行われるのかを運転者に明確に認識させることができる。また、リスクポテンシャルRPの大きさに応じて参照枠82および表示色が変更するので、アクセルペダル72から発生する操作反力を、視覚情報により確認することが出来る。
【0055】
シーンFは、先行車が存在しないのでアクセルペダル反力制御および表示制御を行わない。
【0056】
このように、以上説明した第1の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置1は、自車両前方に存在する障害物を検出し、障害物の検出結果に基づいて、自車両の障害物に対するリスクポテンシャルRPを算出する。そして、算出されるリスクポテンシャルRPを、運転者が自車両を運転操作するときの運転操作機器を介した触覚情報として運転者に伝達するとともに、リスクポテンシャルRPを視覚情報として運転者に伝達する。具体的には、リスクポテンシャルRPの算出の対象となった障害物(対象障害物)を視覚情報として伝達する。リスクポテンシャルRPを触覚情報とともに視覚情報としても運転者に伝達することにより、運転操作機器を介した触覚情報の伝達状態を運転者に視覚的に確認させ、触覚情報の理解を補助してわかりやすい制御を行うことができる。対象障害物を視覚情報として伝達することにより、運転操作機器から発生している操作反力が、どの障害物を対象として制御されているかを運転者に把握させることができる。
(2)車両用運転操作補助装置1は、リスクポテンシャルRPに基づいて運転操作機器に発生する操作反力を制御することにより触覚情報の伝達を行う。運転操作時に運転者が頻繁に接触する運転操作機器から発生する操作反力としてリスクポテンシャルRPを伝達することにより、リスクポテンシャルRPを連続的に、また、直感的に運転者に伝えることができる。
(3)車両用運転操作補助装置1は、対象障害物に対するリスクポテンシャルRPの大きさを視覚情報として伝達する。これにより、操作反力の大きさに加えて、視覚的に自車両のリスクポテンシャルRPの大きさを運転者に認識させることができる。
(4)車両用運転操作補助装置1は、リスクポテンシャルRPを表す表示を対象障害物に重畳する。これにより、どの障害物が対象障害物であるかをわかりやすく伝えることができる。
(5)車両用運転操作補助装置1はヘッドアップディスプレイ(HUD)81を備え、リスクポテンシャルRPを表す表示をHUD81の対象障害物に対応する位置に重ね合わせて表示する。例えば、図6(b)に示すようにHUD81の先行車に対応する位置に参照枠82を表示し、運転者から見て先行車に参照枠82が重なり合うように表示する。ここでは、参照枠82がリスクポテンシャルRPを表す表示である。これにより、運転者は走行中に自車両前方を視認しながら、どの障害物に対してリスクポテンシャルRPが算出され、操作反力制御が行われているかを、瞬時に確実に把握することが可能となる。
(6)コントローラ50は、対象障害物が変化すると、リスクポテンシャルRPを表す表示の形状を変更する。例えば図12(a)〜(c)に示すように円形、四角形、および多角形の参照枠82を用意し、車線変更等により先行車が入れ替わる場合、また、先行車を新たに検知した場合に、前回とは異なる形状の参照枠82を表示する。これにより、対象障害物の入れ替わりを運転者に確実に認識させることができる。
(7)コントローラ50は、リスクポテンシャルRPの大きさに応じて、リスクポテンシャルRPを表す表示の大きさを変更する。具体的には、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど参照枠82の外形の大きさを大きくする。これにより、リスクポテンシャルRPが大きくなっていることを視覚的にわかりやすく伝えることができる。
(8)コントローラ50は、リスクポテンシャルRPの大きさに応じて、リスクポテンシャルRPを表す表示の色を変更する。具体的には、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど参照枠82の色を緑、青、黄、赤へと変化させていく。道路に設置される信号機のように表示色が変化するので、リスクポテンシャルRPの増加を運転者に直感的に知らせることができる。
(9)コントローラ50は、リスクポテンシャルRPの大きさに基づいて、リスクポテンシャルRPを表す表示を点滅する。具体的には、リスクポテンシャルRPが高く(例えばRP≧2)、自車両と障害物との接触の可能性が高いと判断されるような状況において参照枠82を点滅することにより、運転者の注意を喚起することができる。
(10)コントローラ50は、自車両と対象障害物との相対的な走行状態を判定し、相対的な走行状態に応じて、リスクポテンシャルRPを表す表示の輝度を変化させる。具体的には、図15に示すように自車両と先行車との相対的な走行状態を6つのシーンに分類し、それぞれのシーンに応じて図13(a)〜(e)に示すように参照枠82の輝度を変化させる。先行車が検知されなくなるシーンB、Cでは、輝度を徐々に低下して参照枠82をフェードアウトすることにより、将来的に先行車に対するリスクポテンシャルRPがなくなることを視覚的に運転者に伝えることができる。先行車の検知を開始するシーンD,Eでは、最大の輝度で点灯することにより参照枠82をフラッシュのように光らせるので、新たな対象障害物に対して操作反力制御が開始することを視覚的に運転者に伝えることができる。
【0057】
《第2の実施の形態》
以下に、本発明の第2の実施の形態における車両用運転操作補助装置について説明する。第2の実施の形態における車両用運転操作補助装置の基本構成は、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0058】
第2の実施の形態による車両用運転操作補助装置は、表示装置81として、HUDの代わりに、ナビゲーション装置の表示用モニタを利用する。リスクポテンシャルRPに応じた反力制御が開始されると、表示用モニタ81に、前方カメラ20で撮像した自車両前方領域の画像を表示するとともに、リスクポテンシャルRPの算出対象である前方障害物に参照枠82を重畳して表示する。図16に、表示用モニタ81の表示画像の一例を示す。
【0059】
表示用モニタ81に表示する画像の表示形態は、上述した第1の実施の形態と同様に決定するが、参照枠82の大きさや表示位置は、表示用モニタ81の表示画面にあわせて調整する。参照枠82は、第1の実施の形態で説明した手法以外に、例えば前方カメラ20の撮影画像にパターン認識等の画像処理を施して表示位置を決定し、重畳表示させることもできる。具体的には、パターン認識により自車線前方に存在する先行車を認識し、認識した先行車の中心位置を表示用モニタ81上の参照点P2として設定する。
【0060】
なお、ナビゲーション装置の表示用モニタの代わりに、メータクラスタ内に設置された液晶モニタを表示装置81として用いることも可能である。
【0061】
このように、以上説明した第2の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置1は、自車両の前方領域を撮影する前方カメラ20を備えており、前方カメラ20によって撮影された前方領域の画像において対象障害物に対応する位置にリスクポテンシャルRPを表す表示を重ね合わせて表示する。例えば、図16に示すように自車線の前方に存在する先行車に重ね合わせて参照枠82を表示する。図16に示すように前方カメラ20で撮影される前方領域の画像には複数の障害物が含まれているが、参照枠82を付すことにより、どの障害物を対象としてリスクポテンシャルRPが算出され、操作反力制御が実行されているかを運転者にわかりやすく伝えることができる。
(2)車両用運転操作補助装置1は、前方領域の画像およびリスクポテンシャルRPを表す表示を、ナビゲーション装置のモニタ装置81に表示する。ナビゲーション装置のモニタ装置81を表示装置として利用することにより、新たな表示装置の追加によるコストの上昇を避けることができる。
【0062】
−第2の実施の形態の変形例−
ここでは、前方カメラ20の撮影画像の代わりに、レーザレーダ10および前方カメラ20の検出結果に基づいてリスクポテンシャルRPの算出対象となっている障害物の画像を生成し、生成した画像を表示用モニタ81に表示する。また、障害物を異なる方向から見た場合の複数の画像を生成し、運転者の操作に応じて選択した画像を表示する。
【0063】
図17(a)〜(c)に生成画像の表示例を示す。表示画像中の先行車84上には、リスクポテンシャルRPの算出対象であることを表す参照枠82が重畳して表示される。参照枠82の大きさ、表示色、形状等は、上述した第1の実施の形態と同様に決定される。図17(a)は先行車を後方から見た場合の表示画像を示しており、運転者が実際に車内から先行車を見たときのように先行車84と参照枠82と自車線を示すレーンマーカ85が表示される。
【0064】
図17(b)は先行車を側方から見た場合の表示画像を示している。この表示画像においては、自車両と先行車との相対走行状態に応じて表示される先行車84の大きさを変更する。具体的には、先行車の車線変更等により先行車が検知されなくなるシーンCにおいて、表示される先行車84の大きさを小さくしたり、先行車の車線変更等により先行車が検知され始めるシーンEにおいて、表示される先行車84の大きさを大きくしたりする。また、表示画面中において先行車84の後方に相当する位置には、自車両と先行車との車間距離DやリスクポテンシャルRPの大きさを表すインジケータ86を表示する。
【0065】
図17(c)は先行車を上方から見た場合の表示画像を示している。この表示画像においては、自車両と先行車との相対走行状態に応じて、表示される先行車84の横方向位置を矢印で示すように変化させる。例えば、自車両が右方向に車線変更していく場合には、表示画面において先行車84を左方向にシフトし、自車両が左方向に車線変更していく場合には、先行車84を右方向にシフトする。表示画面において先行車の後方に相当する位置には、自車両と先行車との車間距離DやリスクポテンシャルRPの大きさを表すインジケータ86を表示する。
【0066】
表示画像は、例えば表示用モニタ81の近傍に設けられたジョイスティックレバー(不図示)を運転者が操作することにより切り替えることができる。あるいは、ナビゲーション装置に設けられる十字キー等を利用することもできる。ナビゲーション装置の表示用モニタの代わりに、メータクラスタ内に設置された液晶モニタを表示装置81として用いることも可能である。
【0067】
このように、コントローラ50は、対象障害物を後方から見た場合、側方から見た場合、および上方から見た場合の少なくともいずれかの画像を生成し、生成した対象障害物の画像にリスクポテンシャルRPを表す表示を重ね合わせて表示する。これにより、様々な角度からみた対象障害物と自車両との関係を表示することができる。
【0068】
《第3の実施の形態》
以下に、本発明の第3の実施の形態における車両用運転操作補助装置について説明する。第3の実施の形態における車両用運転操作補助装置の基本構成は、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様である。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0069】
第3の実施の形態においては、自車両と先行車との接近度合に応じてHUD81に表示する参照枠82の表示位置を変化させる。具体的には、自車両が先行車に接近している場合には参照枠82が仮想的に自車両に近づくように表示位置を下げる。一方、自車両が先行車から遠ざかる場合は、参照枠82が仮想的に離れていくように表示位置を上げる。図18に、自車両が先行車に接近していく場合にHUD81を通して先行車を見た場合のイメージを示す。参照枠82は、接近度合に応じてオフセット量ΔRP1’だけ参照点P2よりも下方にオフセットされて表示されている。
【0070】
図19に、余裕時間TTCの逆数TTCiとオフセット量ΔRP1’との関係を示す。自車両と先行車とが接近するほど(TTCi>0)オフセット量ΔRP1’を負の方向に大きくし、自車両と先行車とが離れるほど(TTCi<0)オフセット量ΔRP1’を正の方向に大きくする。アイポイント位置P1に対する参照枠82の中心位置P3の相対高さは、(ΔRP1+ΔRP1’)と表される。
【0071】
このように、以上説明した第3の実施の形態においては、上述した第1の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)コントローラ50は、自車両と対象障害物との接近度合を算出し、算出した接近度合に応じて、リスクポテンシャルRPを表す表示の表示位置をオフセットする。接近度合としては、例えば、余裕時間TTCの逆数TTCiや相対速度Vrを用いる。このように対象障害物に対してリスクポテンシャルRPを表す表示の表示位置をオフセットすることにより、自車両と対象障害物との接近状態が変化していることを視覚的に運転者に知らせることができる。
(2)コントローラ50は、自車両と対象障害物とが近づいている場合はリスクポテンシャルRPを表す表示を対象障害物に対して下方にオフセットし、遠ざかっている場合はリスクポテンシャルRPを表す表示を対象障害物に対して上方にオフセットする。対象障害物に近づいており、将来的にリスクポテンシャルRPが増大すると予測される場合には、参照枠82があたかも自車両に近づいているように下方にオフセットすることにより、将来的なリスクポテンシャルRPの増加を視覚的に運転者に知らせることができる。また、対象障害物が遠ざかっており、将来的にリスクポテンシャルRPが低下すると予測される場合には、参照枠82があたかも自車両から遠のいているように上方にオフセットすることにより、将来的なリスクポテンシャルRPの低下を視覚的に運転者に知らせることができる。
【0072】
なお、第3の実施の形態を上述した第2の実施の形態と組み合わせることも可能である。すなわち、前方カメラ20の撮影画像に参照枠82を重畳して表示する場合に、接近度合に応じて対象障害物に対して参照枠82をオフセットして表示する。図17(a)〜(c)に示すような生成画像に参照枠82を重畳する場合に適用することも可能である。ただし、図17(b)に示すように対象障害物を側方から見た図を表示する場合は、接近度合に応じて参照枠82を左右方向、すなわち表示される対象障害物の前方あるいは後方にオフセットさせる。
【0073】
以上説明した第1〜第3の実施の形態においては、自車両と障害物との余裕時間TTCおよび車間時間THWを用いてリスクポテンシャルRPを算出した。ただし、これには限定されず、例えば余裕時間TTCの逆数をリスクポテンシャルRPとして用いたり、車間時間THWの逆数や車間距離DをリスクポテンシャルRPとして用いることも可能である。また、自車両の前方に仮想的な弾性体を設定し、仮想弾性体が先行車に当たって圧縮される場合の反発力をリスクポテンシャルRPとして算出することもできる。
【0074】
上述した第1の実施の形態では、HUD81をフロントガラス全体に構成するとして説明した。ただし、これには限定されず、フロントガラスのうち、少なくとも自車線前方を含む運転者側の領域にHUD81を構成することもできる。上述した第2の実施の形態では、リスクポテンシャルRPに応じた操作反力制御が行われる場合は、ナビゲーション装置のモニタ装置81に前方画像と参照枠82を表示するとして説明したが、スイッチ操作等によりナビゲーション装置の地図情報と前方画像とを切り替えられるように構成することもできる。
【0075】
以上説明した第1〜第3の実施の形態においては、リスクポテンシャルRPの大きさに応じて、参照枠82の大きさおよび表示色を変更するとして説明したが、大きさおよび表示色のいずれか一方を変更するように構成することもできる。また、先行車が入れ替わった場合でも参照枠82の形状を固定とすることも可能である。自車両と先行車との相対的な走行状態に応じて参照枠82の輝度を変化させるようにしたが、単純に、対象障害物が検知され始めると参照枠82を点灯し、検知されなくなると参照枠82を消灯するように構成することも可能である。シーンC、Dにおいて参照枠82がフェードアウトするように消灯できれば、輝度の低下速度は上述した実施の形態には限定されない。また、シーンD,Eにおいてそれぞれ参照枠82がフラッシュするように点灯したが、フラッシュの回数は上述した実施の形態に限定されない。
【0076】
以上説明した第1〜第3の実施の形態においては、図14を用いてリスクポテンシャルRPからアクセルペダル反力制御指令値FAを算出した。しかし、リスクポテンシャルRPと反力制御指令値FAとの関係は、図14に示すものには限定されず、例えばリスクポテンシャルRPの増加に対して反力制御指令値FAが指数関数的に増加するように構成することも可能である。また、リスクポテンシャルRPに応じて、アクセルペダル72以外の運転操作機器、例えばブレーキペダルやステアリングホイール36から操作反力を発生させることも可能である。
【0077】
上述した第1〜第3の実施の形態では、図7(a)(b)および図8(a)(b)に示すように参照点高さΔRP1および参照点横位置ΔRP2を算出した。ただし、これらの算出方法は、上述した実施の形態に限定されず、種々の手法を採用することができる。また、参照点高さΔRP1および参照点横位置ΔRP2の算出の際にアイポイントから先行車最後部までの距離として異なる数値(dl、dc+d・cosθ1)を用いたが、同一の数値を用いることも可能である。ただし、上述したように異なる数値を用いることにより、より詳細な参照点の算出を行うことができる。
【0078】
以上説明した第1から第3の実施の形態においては、レーザレーダ10および前方カメラ20が障害物検出手段として機能し、コントローラ50がリスクポテンシャル算出手段、相対走行状態判定手段、および接近度合算出手段として機能し、コントローラ50およびアクセルペダル反力制御装置70が触覚情報伝達手段および操作反力制御手段として機能し、コントローラ50、表示制御装置80および表示装置81が視覚情報伝達手段として機能し、前方カメラ20が撮影手段として機能することができる。ただし、これらには限定されず、障害物検出手段として、レーザレーダ10の代わりに例えば別方式のミリ波レーダを用いることも可能である。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【0079】
《第4の実施の形態》
以下に、本発明の第4の実施の形態における車両用運転操作補助装置について説明する。図20に、第4の実施の形態による車両用運転操作補助装置2の構成を示すシステム図を示す。図20において、図1および図2に示した第1の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第1の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0080】
車両用運転操作補助装置2は、レーザレーダ10、前方カメラ20、車速センサ30、舵角センサ35、アイポイント検出装置37、アクセルペダル反力制御装置70、表示制御装置80、警報装置90およびコントローラ100を備えている。さらに、後述するように参照枠(マーカ、マーク)82の表示サイズの決定方法を選択するために運転者によって操作される選択スイッチ95も設けられている。
【0081】
コントローラ100は、障害物に対するリスクポテンシャルに基づいて、運転者が自車両を運転操作する際の運転操作機器に発生する操作反力を制御する。運転操作機器は、例えアクセルペダル72である。さらに、リスクポテンシャルに応じた操作反力制御の制御状態を視覚情報としても運転者に伝え、運転者の運転操作を適切な方向に導くように表示制御を行う。具体的には、反力制御の対象となっている障害物に重畳するようにHUD81上にマーカ82を表示する。さらに、リスクポテンシャルRPの大きさとマーカ82の大きさに対する運転者の感覚とが同等になるように、マーカ82の大きさを変更する。
【0082】
次に、本発明の第4の実施の形態における車両用運転操作補助装置2の動作を、図21を用いて詳細に説明する。図21は、コントローラ100における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。
【0083】
まず、ステップS2000でリスクポテンシャルに応じた操作反力制御が実行されているか否かを判定する。具体的には、レーザレーダ10によって自車両前方の障害物が検知され、リスクポテンシャルRPに応じた操作反力制御が実行可能な状態であるか否かを判定する。ステップS2000が肯定判定されるとステップS2010へ進み、否定判定されるとこの処理を終了する。
【0084】
ステップS2010では、自車両周囲の環境情報を読み込む。ここで、環境情報は、自車前方の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。そこで、レーザレーダ10により検出される前方障害物までの車間距離Dと相対速度Vr,および前方障害物の存在方向θ1、車速センサ30によって検出される自車両の走行車速Vを読み込む。
【0085】
ステップS2011では、ドライバ情報を取得する。具体的には、アイポイント検出装置37からの信号に基づいて運転者のアイポイント高さheを算出する。さらに、自車両の先端(最前部)から運転者の目(アイポイント)までの前後方向距離dc、およびHUD81からアイポイントまでの前後方向距離ddを、運転席シートのシート位置に基づいて算出する。なお、前後方向距離dc,ddは所定値として予め設定しておくこともできる。
【0086】
ステップS2020では、前方障害物に対する自車両のリスクポテンシャルRPを算出する。リスクポテンシャルRPは、余裕時間TTCと車間時間THWとを用いて上述した(式3)から算出する。ステップS2030では、HUD81に表示する画像の参照点P2を算出する。参照点P2の算出方法は、図3のフローチャートのステップ1040での処理と同様である(図6(a)〜図8(b)参照)。
【0087】
つづくステップS2040では、ステップS2020で算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、マーカ82の大きさを算出する。マーカ82はHUD81上において制御対象の障害物に重畳して表示される環状の表示枠であり、マーカ82の大きさとはHUD81に表示されるマーカ82の外径の大きさを表す。ここで、リスクポテンシャルRPの基準値RPsに対するマーカ82の大きさをMsとすると、任意のリスクポテンシャルRP(=RPl)に対するマーカ82の大きさMcは、以下の(式6)から算出することができる。
Mc=Ms×(RPl/RPs) ・・・(式6)
【0088】
リスクポテンシャルRPの基準値RPsは、例えば0.8程度に設定する。マーカ82の基準の大きさMsは、運転者のアイポイントから見て視角で3度程度となるように設定する。例えば、アイポイントからHUD81までの距離を1mとすると、マーカ82の基準の大きさMsは約5cmとなる。これにより、基準値RPsに対してリスクポテンシャルRPが大きくなると、マーカ82の大きさも基準の大きさに対して大きくなり、反対に基準値RPsに対してリスクポテンシャルRPが小さくなると、マーカ82の大きさも小さくなる。
【0089】
ステップS2050では、ステップS2030で算出した参照点P2を中心として、ステップS2040で大きさを設定したマーカ82を、HUD81上に表示するように表示制御装置80に信号を出力する。
【0090】
つづくステップS2060では、警報装置90に指令を出力して警報音を発生させる。具体的には、レーザレーダ10または前方カメラ20により新たに先行車を検知した場合には、例えば「ポーン」という報知音を発生して先行車を検知し始めたことを運転者に知らせる。また、リスクポテンシャルRPが所定値、例えばRP=2よりも高い場合は、運転者の注意を喚起するように「ピピ」という報知音を発生する。
【0091】
ステップS2070では、ステップS2020で算出したリスクポテンシャルRPに基づいてアクセルペダル72に発生する操作反力を制御する。具体的には、図3のフローチャートのステップS1070での処理と同様に、図14のマップに従って、リスクポテンシャルRPに応じたアクセルペダル反力制御指令値FAを算出し、算出したアクセルペダル反力制御指令値FAをアクセルペダル反力制御装置70に出力する。これに応じて、アクセルペダル反力制御装置70は、コントローラ50から入力される指令値に応じてアクセルペダル72に発生する操作反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0092】
図22(a)(b)に、マーカ82の表示例を示す。マーカ82は、反力制御の対象となる自車両前方の障害物(先行車)に重畳するように表示されている。自車両が先行車との車間距離を略一定に保って略一定速度で先行車に追従し、リスクポテンシャルRPが変動しない状態では、図22(a)に示すように先行車に重畳して表示されたマーカ82の大きさは変化しない。その後、自車両と先行車とが接近してリスクポテンシャルRPが大きくなると、マーカ82の大きさも大きくなる。これにより、リスクが大きくなっているという運転者のリスク感に合わせたマーカ82の表示を行うことができる。
【0093】
なお、自車両や障害物の車線変更等により反力制御の対象となる障害物が切り替わった場合には、マーカ82の表示形態を変える。例えば、マーカ82の表示形状を円形から四角形や多角形に変えることにより、対象障害物が切り替わったことを運転者に容易に認識させることができる。
【0094】
なお、リスクポテンシャルRPの代わりに、リスクポテンシャルRPに基づいて算出されるアクセルペダル反力制御指令値FAを用いてマーカ82の大きさMcを算出することも可能である。
【0095】
このように、以上説明した第4の実施の形態においては、以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置2は、自車両前方に存在する障害物を検出し、障害物の検出結果に基づいて、自車両の障害物に対するリスクポテンシャルRPを算出する。そして、算出されるリスクポテンシャルRPを、運転者が自車両を運転操作するときの運転操作機器を介した触覚情報として運転者に伝達するとともに、触覚情報伝達制御の対象である障害物に対するリスクポテンシャルRPを視覚情報として運転者に伝達する。具体的には、対象障害物に対するリスクポテンシャルRPの大きさを視覚情報として伝達する。これにより、運転操作機器を介した触覚情報の伝達状態を運転者に視覚的に確認させ、触覚情報の理解を補助してわかりやすい制御を行うことができる。対象障害物を視覚情報として伝達することにより、運転操作機器から発生している操作反力が、どの障害物を対象としてどの程度の大きさで制御されているかを運転者に把握させることができる。
(2)コントローラ100は、対象障害物が切り替わった場合に、リスクポテンシャルRPを表すマーカの表示形態を変更する。例えば、対象障害物に重畳して表示するマーカ82の形状を変更する。これにより、操作反力制御の対象となる障害物が切り替わったことを運転者に容易に認識させることができる。
【0096】
−第4の実施の形態の変形例−
マーカ82の大きさは、上述したようにリスクポテンシャルRPに基づいて算出する以外に、複数の算出方法の中から運転者が好みの算出方法を選択できるように構成することも可能である。
【0097】
マーカ82の大きさの算出方法には、例として以下のものがある。
(a)リスクポテンシャルRPに基づいて算出。
(b)自車両と障害物との車間距離Dに基づいて算出。
(c)投影面積に基づいて算出。
(d)投影面積の大きさ感に応じて算出。
(e)制御反発力に基づいて算出。
(f)減速制御の制御内容に応じて算出。
【0098】
運転者は、マーカサイズ選択スイッチ95を操作することにより、上記(a)〜(f)のいずれか一つを選択することができる。なお、デフォルトは(a)リスクポテンシャルRPに基づいてマーカ82の大きさを選択するように設定されている。
【0099】
以下に、各算出方法について説明する。(a)リスクポテンシャルRPに基づく算出については、上述したのでここでは省略する。
【0100】
(b)車間距離Dに基づく算出
運転者から見た場合の前方障害物の幅および高さは、自車両と障害物との車間距離Dが長くなるほど小さくなり、車間距離Dが短くなるほど大きくなる。そこで、車間距離Dの基準値Dsに対するマーカ82の大きさをMsとすると、任意の車間距離D(=Dl)に対するマーカ82の大きさMcは、以下の(式7)から算出することができる。
Mc=Ms×(Ds/Dl) ・・・(式7)
【0101】
車間距離Dの基準値Dsは、例えば20m程度に設定する。マーカ82の基準の大きさMsは、運転者のアイポイントから見て視角で3度程度となるように設定する。これにより、基準値Dsに対して車間距離Dが大きくなると、マーカ82の大きさは基準の大きさに対して小さくなり、反対に基準値RPsに対して車間距離Dが小さくなると、マーカ82が大きくなる。
【0102】
(c)投影面積に基づく算出。
運転者から見た場合の障害物の見た目の大きさは、自車両との距離に応じて変化する。そこで、マーカ82の投影面積を、車間距離Dの2乗に反比例させる。そこで、車間距離Dの基準値Dsに対するマーカ82の大きさをMsとすると、任意の車間距離D(=Dl)に対するマーカ82の大きさMcは、以下の(式8)から算出することができる。
Mc=Ms×(Ds/Dl) ・・・(式8)
【0103】
車間距離Dの基準値Dsは、例えば20m程度に設定する。マーカ82の基準の大きさMsは、運転者のアイポイントから見て視角で3度程度となるように設定する。これにより、基準値Dsに対して車間距離Dが大きくなり、前方障害物の見た目の面積が小さくなると、マーカ82の大きさは基準の大きさに対して小さくなり、反対に基準値RPsに対して車間距離Dが小さくなり、前方障害物の見た目の面積が大きくなると、マーカ82が大きくなる。
【0104】
(d)投影面積の大きさ感に応じた算出。
スティーブンスの冪関数の法則から、面積とその面積を知覚する感覚の強さとの関係は0.7乗の冪関数で表すことができるとの報告がある。すなわち、ある物体が接近したり遠ざかったりする場合に、面積(物理的な大きさ)の0.7乗の大きさを、その物体の大きさとして感じるというものである。そこで、車間距離Dの基準値Dsに対するマーカ82の大きさをMsとすると、任意の車間距離D(=Dl)に対するマーカ82の大きさMcは、以下の(式9)から算出することができる。
Mc={Ms×(Ds/Dl)0.7 ・・・(式9)
【0105】
車間距離Dの基準値Dsは、例えば20m程度に設定する。マーカ82の基準の大きさMsは、運転者のアイポイントから見て視角で3度程度となるように設定する。これにより、基準値Dsに対して車間距離Dが大きくなり、前方障害物の面積が小さくなると、マーカ82の大きさは基準の大きさに対して小さくなり、反対に基準値RPsに対して車間距離Dが小さくなり、前方障害物の面積が大きくなると、マーカ82が大きくなる。
【0106】
(e)制御反発力に基づく算出
上述した各実施の形態においては、障害物に対する自車両のリスクポテンシャルRPに基づいて運転操作装置に発生する操作反力を制御するように構成した。ただしこれには限定されず、リスクポテンシャルRPに応じて自車両に発生する制駆動力も制御するように構成することもできる。この場合、上述した(式3)から算出されるリスクポテンシャルRPに基づいて制駆動力制御を行うことももちろん可能であるが、以下のようなコンセプトに基づいて制駆動力制御を行うこともできる。
【0107】
図23(a)に示すように、自車両210の前方に仮想的な弾性体220を設けたと仮定し、この仮想的な弾性体220が前方障害物230、例えば先行車に当たって圧縮され、自車両210に対する擬似的な走行抵抗を発生するというモデルを考える。ここで、前方障害物に対するリスクポテンシャルRPは、図23(b)に示すように仮想弾性体220が先行車230に当たって圧縮された場合のバネ力と定義する。リスクポテンシャルRPの算出方法を、図24のフローチャートを用いて説明する。
【0108】
まず、ステップS10で、自車両と先行車との余裕時間TTC(Time To Contact)を算出する。ステップS20では、ステップS10で算出した余裕時間TTCが閾値Thよりも小さいか否かを判定する。閾値Thは、リスクポテンシャルRPに応じた制駆動力制御を開始するか否かを判断するためのしきい値であり、予め適切な値を設定しておく。TTC<Thの場合は、ステップS30へ進み、仮想弾性体220の長さを表す基準距離Lを算出する。
【0109】
基準距離Lは、閾値Thおよび自車両と障害物との相対距離Vrを用いて以下の(式10)から算出する。
L=Th×Vr ・・・(式10)
【0110】
ステップS40では、ステップS30で算出した基準距離Lを用いて、以下の(式11)から、自車両の障害物に対するリスクポテンシャルRPを算出する。
RP=K・(L−D) ・・・(式11)
ここで、Kは仮想弾性体220のバネ定数である。これにより、自車両と障害物との車間距離Dが短くなり仮想弾性体220が圧縮されるほど、リスクポテンシャルRPが大きくなる。
【0111】
ステップS20が否定判定されて余裕時間TTC≧Thの場合は、自車両と先行車との接触のリスクが低いと判断してステップS50へ進み、リスクポテンシャルRP=0とする。
【0112】
このようにリスクポテンシャルRPを算出した後、制駆動力制御における駆動力補正量と制動力補正量を算出するための反発力Fcを算出する。ここで、反発力Fcは、図23(a)(b)に示した仮想弾性体220の反発力として考えることができる。そこで、図25に示すような関係にしたがって、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど反発力Fcが大きくなるように反発力Fcを算出する。そして、反発力Fc分だけ駆動力を低減し、制動力を増加させるように制駆動力補正量を算出し、リスクポテンシャルRPに応じた制駆動力制御を行う。
【0113】
以上説明したような制駆動力制御を行う際には、制駆動力制御の制御量である反発力Fcに基づいてマーカ82の大きさを設定することができる。反発力Fcの基準値Frepsに対するマーカ82の大きさをMsとすると、任意の反発力Fc(=Frepc)に対するマーカ82の大きさMcは、以下の(式12)から算出することができる。
Mc=Ms×(Frepc/Freps) ・・・(式12)
【0114】
反発力Fcの基準値Frepsは、例えば400N程度に設定する。マーカ82の基準の大きさMsは、運転者のアイポイントから見て視角で3度程度となるように設定する。これにより、基準値Frepsに対して反発力Fcが大きくなると、マーカ82の大きさは基準の大きさに対して大きくなり、反対に基準値Frepsに対して反発力Fcが小さくなると、マーカ82が小さくなる。
【0115】
(f)減速制御の制御内容に応じた算出
上述したような制駆動力制御において自車両に減速度を発生させる場合には、自車両に発生させる減速度に基づいてマーカ82の大きさを設定することもできる。制駆動力制御における減速度は、上述した反発力Fcから求めることが可能である。減速度の基準値asに対するマーカ82の大きさをMsとすると、任意の減速度acに対するマーカ82の大きさMcは、以下の(式13)から算出することができる。
Mc=Ms×(ac/as) ・・・(式13)
【0116】
減速度の基準値asは、例えば0.02G程度に設定する。マーカ82の基準の大きさMsは、運転者のアイポイントから見て視角で3度程度となるように設定する。これにより、基準値asに対して減速度が大きくなると、マーカ82の大きさは基準の大きさに対して大きくなり、反対に基準値asに対して減速度が小さくなると、マーカ82が小さくなる。
【0117】
《第5の実施の形態》
以下に、本発明の第5の実施の形態における車両用運転操作補助装置について説明する。第5の実施の形態による車両用運転操作補助装置の基本構成は、図20に示した第4の実施の形態と同様である。ここでは、第4の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0118】
第5の実施の形態においては、障害物に対する自車両のリスクポテンシャルRPの分布を等高線で表示する。第5の実施の形態における車両用運転操作補助装置2の動作を、図26を用いて詳細に説明する。図26は、コントローラ100における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。
【0119】
ステップS3000でリスクポテンシャルに応じた操作反力制御が実行されているか否かを判定する。ステップS2000が肯定判定されるとステップS3010へ進み、否定判定されるとこの処理を終了する。ステップS3010では、自車両周囲の環境情報を読み込む。ここで、環境情報は、自車前方の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。そこで、レーザレーダ10により検出される前方障害物までの車間距離Dと相対速度Vr,および前方障害物の存在方向θ1、車速センサ30によって検出される自車両の走行車速Vを読み込む。さらに、隣接車線上に存在する隣接車両等、自車両周囲に存在する他車両の情報、および自車両が走行する車線のレーン情報も取得する。
【0120】
ステップS3020では、自車両周囲に存在する各障害物について、自車両のリスクポテンシャルRPを算出する。以降では、説明を簡単にするため、自車両前方に存在する制御対象の障害物(先行車)のみが検知されているとする。そこで、上述した(式3)を用いて先行車に対するリスクポテンシャルRPを算出する。
【0121】
ステップS3030ではHUD81に表示する等高線を算出する。等高線を算出するために、図27に示すような仮想平面上にリスクマップを作成する。仮想平面上において、例えば縦横2m間隔で複数の仮想点を設定し、仮想点xにおけるリスクポテンシャルRPxを算出する。
【0122】
(式3)を用いて算出したリスクポテンシャルRPは、A/THWを、相対速度Vrと車間距離Dが変動し、自車両と障害物との接近状態が変化する過度状態におけるリスクポテンシャルRPsteady、B/TTCを、相対速度Vrが略0で車間距離Dを略一定に保ちながら自車両が障害物に追従する定常状態におけるリスクポテンシャルRPtransientとすると、以下の(式14)で表すことが出来る。
RP=RPsteady+RPtransient
=A/THW+B/TTC ・・・(式14)
【0123】
仮想点xにおけるリスクポテンシャルRPxは、自車両と障害物との車間距離D,自車両と仮想点xとの距離rx1、仮想点xと障害物との距離rx2とを用いて、以下の(式15)から算出することができる。
RPx=RPsteady×(rx1/D)+RPtransient×(rx2/D) ・・・(式15)
【0124】
仮想平面上の各仮想点xについて(式15)からリスクポテンシャルRPxを算出した後、所定間隔、例えば0.5ずつ、リスクポテンシャルRPの算出値を結んで自車両を中心とした等高線を描く。
【0125】
続くステップS3040では、ステップS3030で算出した等高線をHUD81に表示する。リスクポテンシャルRPの分布を表す等高線の表示例を、図28に示す。ここで、リスクポテンシャルRPの大きさに応じて等高線の表示色を変更する。具体的には、図29に示すように、リスクポテンシャルRPが大きくなるほど表示色を緑、青、黄、赤と徐々に変化させていく。
【0126】
図28に示す表示例では、自車両に最も近い2本の等高線が赤色で表示され、自車両から離れるに従って等高線の表示色が黄色、青色、緑色へと変化している。ここでは、緑から赤まで表示色が徐々に変化するように設定しているが、リスクポテンシャルRPを複数の領域に分割し、領域ごとに表示色を割り当てるように設定することもできる。
【0127】
最後に、ステップS3050で、ステップS3020で算出したリスクポテンシャルRPに基づいてアクセルペダル72に発生する操作反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0128】
なお、レーザレーダ10や前方カメラ20によって自車両周囲に存在する複数の障害物が検出されている場合は、各仮想点xにおけるリスクポテンシャルRPxを、以下の(式16)から算出する。
RPx=ΣRPx(n)
=Σ{RPsteady(n)×(rx1/D)+RPtransient(n)×(rx2/D)} ・・・(式16)
【0129】
また、自車両周囲に存在する複数の障害物が検出されている場合に、車両用運転操作補助装置2による操作反力制御の対象である障害物と対象外の障害物とで、リスクポテンシャルRPの重みを変更することもできる。例えば、上記(式16)から各仮想点xにおけるリスクポテンシャルRPxを算出する際に、自車線前方に存在する制御対象の障害物に対するリスクポテンシャルRP(=RPsteady+RPtransient)に対する重みを、隣接車線等に存在する制御対象外の障害物に対するリスクポテンシャルRP(=RPsteady+RPtransient)に対する重みよりも大きくする。
【0130】
このように、以上説明した第5の実施の形態においては、上述した第4の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置2は、対象障害物に対するリスクポテンシャルRPの大きさを表す等高線を表示装置81に表示させる。これにより、自車両周囲のリスクポテンシャルRPの分布を等高線としてリアルタイムに表示することができる。また、等高線の表示色をリスクポテンシャルRPに応じて変更するようにすれば、等高線の表示色と等高線の間隔からリスクポテンシャルRPの大きさと分布を容易に運転者に把握させることが可能となる。
【0131】
《第6の実施の形態》
以下に、本発明の第6の実施の形態における車両用運転操作補助装置について説明する。第6の実施の形態による車両用運転操作補助装置の基本構成は、図20に示した第4の実施の形態と同様である。ここでは、第4の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0132】
第6の実施の形態においては、センサによって検知された自車両周囲に存在する全ての障害物に対する自車両のリスクポテンシャルRPをマーカ82によって表示する。第6の実施の形態における車両用運転操作補助装置2の動作を、図30を用いて詳細に説明する。図30は、コントローラ100における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。
【0133】
まず、ステップS4000でリスクポテンシャルに応じた操作反力制御が実行されているか否かを判定する。ステップS4000が肯定判定されるとステップS4010へ進み、否定判定されるとこの処理を終了する。ステップS4010では、自車両周囲の環境情報を読み込む。ここで、環境情報は、自車前方の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。そこで、レーザレーダ10により検出される前方障害物までの車間距離Dと相対速度Vr,および前方障害物の存在方向θ1、車速センサ30によって検出される自車両の走行車速Vを読み込む。さらに、隣接車線上に存在する隣接車両等、自車両周囲に存在する他車両の情報、および自車両が走行する車線のレーン情報も取得する。
【0134】
ステップS4011では、ドライバ情報を取得する。具体的には、アイポイント検出装置37からの信号に基づいて運転者のアイポイント高さheを算出する。さらに、自車両の先端(最前部)から運転者の目(アイポイント)までの前後方向距離dc、およびHUD81からアイポイントまでの前後方向距離ddを、運転席シートのシート位置に基づいて算出する。なお、前後方向距離dc,ddは所定値として予め設定しておくこともできる。
【0135】
ステップS4020では、自車両周囲に存在する各障害物について、自車両のリスクポテンシャルRPを算出する。自車線前方に存在する先行車が検出されている場合は、上述した(式3)を用いて先行車に対するリスクポテンシャルRPを算出する。隣接車線上に他車両が存在する場合は、自車両と他車両との前後方向距離(車間距離)、自車速Vと他車両速度との差(相対速度)、および自車速Vを用いて、(式3)と同様の算出式からリスクポテンシャルRPを算出する。
【0136】
なお、自車両の進行方向には存在せず、自車両の走行に対して大きな影響を与えない障害物、例えば隣接車線上の他車両に対しては、算出したリスクポテンシャルRPに所定の係数ko(ko<1)をかけた値をリスクポテンシャルRPとして用いる。所定の係数koは、自車線上の障害物と自車線外の障害物がそれぞれ自車両の走行に与える影響の大きさを考慮して、例えば0.2程度に設定する。
【0137】
さらに、自車両周囲の障害物について算出したリスクポテンシャルRPのうち所定値以下のものについては、以降の処理においてRP=0として扱う。ここで、所定値は、例えば0.2程度に設定する。
【0138】
ステップS4030では、ステップS4020で算出したリスクポテンシャルRPがRP>0となる各障害物について、HUD81に表示する画像の参照点P2を算出する。参照点P2の算出方法は、図3のフローチャートのステップS1040での処理と同様である(図6(a)〜図8(b)参照)。
【0139】
つづくステップS4040では、ステップS4020で算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、各障害物についてのマーカ82の大きさを算出する。マーカ82の大きさは、例えばマーカ82を重畳して表示する障害物のリスクポテンシャルRPの大きさに基づいて、上述した(式6)から算出することができる。
【0140】
ステップS4050では、ステップS4030で算出した参照点P2を中心として、ステップS4040で大きさを設定した各障害物についてのマーカ82を、HUD81上に表示するように表示制御装置80に信号を出力する。マーカ82を表示する際には、障害物ごとに異なる形状のマーカ82を割り当てる。マーカ82の形状としては、例えば、図31(a)に示すような円形、図31(b)に示すような四角形、および図31(c)に示すような多角形等の複数のパターンを予め設定しておく。なお、同一の障害物が継続して検出されている間は、同一の形状のマーカを重畳して表示する。
【0141】
つづくステップS4060では、ステップS4020で算出した複数の障害物に対するリスクポテンシャルRPのうち、最も値の大きなリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル72に発生する操作反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0142】
図32に、マーカ82の表示例を示す。図32には、自車両前方領域に3つの障害物A,B,Cが検出されている場合を例として示している。ステップS4020で算出されたリスクポテンシャルRPの値の最も大きな自車線前方の先行車Aには、円形のマーカ82Aが重畳して表示されている。自車線の右側隣接車線上を走行する自車両に近い他車両Bには、三角形のマーカ82Bが重畳して表示され、他車両Bよりも遠方の他車両Cにはひし形のマーカ82Cが重畳して表示されている。これらのマーカ82A,82B,82Cの表示色はリスクポテンシャルRPに応じてそれぞれ設定されている。自車両と各障害物とのリスクポテンシャルRPが変化すると、マーカ82A,82B,82Cの大きさも変化する。
【0143】
このように、以上説明した第6の実施の形態においては、上述した第4および第5の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置2は、自車両前方に存在する複数の障害物に対するリスクポテンシャルRPをそれぞれ算出し、複数の障害物に対するリスクポテンシャルRPを表示装置81に表示させる。具体的には、図32に示すように、レーザレーダ10や前方カメラ20によって検出された自車両前方領域に存在する複数の障害物について、マーカ82A〜82Cを表示する。これにより、センサによって検出される複数の障害物のリスクポテンシャルRPをそれぞれ表示させることが可能となる。
(2)複数の障害物のうち、リスクポテンシャルRPが所定値以上の障害物に対するリスクポテンシャルRPのみを表示させる。これにより、多数の障害物が検出された場合でも、自車両の走行に対するリスクをもつもののみを表示させることができる。
【0144】
なお、HUD81にマーカ82を表示する代わりに、ナビゲーションシステムの表示画面を用いることもできる。この場合、前方カメラ20で撮像した自車両前方領域の画像を表示画面に表示し、表示画面中の障害物の上にマーカ82を重畳して表示する。このように、HUD81以外の表示装置を用いても、HUD81を用いる場合と同様な作用効果を得ることができる。
【0145】
《第7の実施の形態》
以下に、本発明の第7の実施の形態における車両用運転操作補助装置について説明する。図33に、第7の実施の形態による車両用運転操作補助装置3の構成を示すシステム図を示す。図33において、図20に示した第4の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第4の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0146】
図33に示すように、車両用運転操作補助装置3は、運転者の車線変更意図を推定する車線変更意図推定装置97を備えている。車線変更意図推定装置97は、例えばウィンカ操作レバーの操作信号を取得して運転者が車線変更を行おうとする運転操作意図を推定する。なお、ウィンカ操作以外にも、種々の手法を用いて車線変更意図を推定するように車線変更意図推定装置97を構成することももちろん可能である。
【0147】
第7の実施の形態においては、自車両の向きに応じて、操作反力制御の対象となりうる障害物を先行して表示する。上述した第6の実施の形態で説明したように、自車両周囲に複数の障害物が存在する場合は、センサによって検知された複数の障害物のうち、リスクポテンシャルRPの最も大きい物体が制御対象の障害物として取り扱われる。ただし、隣接車線上に存在する他車両等、自車両との相対的な向きの傾き(相対角度)の小さい障害物は、自車両の車線変更等により将来的に制御対象となり得る可能性がある。そこで、第7の実施の形態に応じては、自車両周囲に存在する複数の障害物が検出されている場合に、将来的に制御対象となり得る障害物について、実際に制御対象となる以前から表示を行う。
【0148】
第7の実施の形態における車両用運転操作補助装置3の動作を、図34を用いて詳細に説明する。図34は、コントローラ150における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。
【0149】
まず、ステップS5000でリスクポテンシャルに応じた操作反力制御が実行されているか否かを判定する。ステップS5000が肯定判定されるとステップS5010へ進み、否定判定されるとこの処理を終了する。ステップS5010では、自車両周囲の環境情報を読み込む。ここで、環境情報は、自車前方の障害物状況を含む自車両の走行状況に関する情報である。そこで、レーザレーダ10により検出される前方障害物までの車間距離Dと相対速度Vr,および前方障害物の存在方向(相対角度)θ1、車速センサ30によって検出される自車両の走行車速Vを読み込む。さらに、隣接車線上に存在する隣接車両等、自車両周囲に存在する他車両の情報、および自車両が走行する車線のレーン情報も取得する。また、車線変更意図推定装置97から運転者のウィンカ操作に関する信号も取得する。
【0150】
ステップS5011では、ドライバ情報を取得する。具体的には、アイポイント検出装置37からの信号に基づいて運転者のアイポイント高さheを算出する。さらに、自車両の先端(最前部)から運転者の目(アイポイント)までの前後方向距離dc、およびHUD81からアイポイントまでの前後方向距離ddを、運転席シートのシート位置に基づいて算出する。なお、前後方向距離dc,ddは所定値として予め設定しておくこともできる。
【0151】
ステップS5020では、ステップS5010で検出した複数の障害物について、車両用運転操作補助装置3による操作反力制御の対象となり得る障害物を選定する。具体的には、自車両との向き、すなわち相対角度θ1が所定範囲内となる障害物を制御対象となり得る障害物とする。制御対象となり得る障害物は、現在、操作反力制御の対象である障害物、および将来的に制御対象となる可能性のある障害物を含む。
【0152】
図35(a)に示すように、自車両の前後方向中心線を基準(=0)とした場合に、自車両との相対角度θ1が所定範囲θl内にはいる障害物(−θl/2°≦θ1≦+θl/2°)を、制御対象となり得る障害物とする。所定範囲θlは、自車両が走行する車線の車線幅Wlと自車両前方の先行車までの車間距離Dとを用いて、以下の(式17)から算出することができる。
θl=2arctanWl/2D ・・・(式17)
【0153】
所定範囲θl内に複数の障害物が存在する場合は、それら全てを制御対象となり得る障害物として選定する。なお、障害物を検出するレーザレーダ10の検知可能範囲は、(式17)で表される所定範囲θlよりも十分広い。
【0154】
車線変更意図推定装置97からのウィンカ操作に関する信号に基づいて、車線変更をしようとする運転者の意図が推定される場合は、所定範囲θlを車線変更方向に拡張する。例えば、運転者が右隣接車線に車線変更しようとしていることが推定されると、図35(b)に示すように所定範囲θlを、右方向に補正角度θm拡張する。したがって、車線変更意図が推定される場合の所定範囲θlは、以下の(式18)から求めることができる。
θl=2arctanWl/2D+θm ・・・(式18)
ここで、補正角度θmは、例えば10°程度とする。
【0155】
図35(b)に示すように、所定範囲θlを右方向に拡張することにより、図35(a)に示すような車線変更意図のない場合には選定されなかった隣接車両も制御対象となり得る障害物として選定される。このように、車線変更意図が推定される場合に所定範囲θlを拡張することにより、より広い角度から将来的に制御対象となる可能性のある障害物を検出することができる。
【0156】
ステップS5030では、ステップS5020で選定した制御対象となり得る障害物の中に、現在は制御対象ではないが、将来的に制御対象となる可能性のある障害物があるか否かを判定する。例えば図35(b)に示す隣接車両は、現在、操作反力制御の制御対象ではないが、自車両が車線変更しようとしているため将来的に制御対象となる可能性がある。このような他車両が検出されている場合は、ステップS5030を肯定判定してステップS5090へ進む。一方、現在の制御対象のみが検出されている場合等、将来的に制御対象となる可能性のある障害物が検出されていない場合は、ステップS5040へ進む。
【0157】
ステップS5040では、現在の制御対象に対するリスクポテンシャルRPを上述した(式3)から算出する。ステップS5050では、HUD81に表示する画像の参照点P2を算出する。参照点P2の算出方法は、図3のフローチャートのステップ1040での処理と同様である(図6(a)〜図8(b)参照)。つづくステップS5060では、ステップS5040で算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、制御対象である障害物についてのマーカ82の大きさを算出する。マーカ82の大きさは、例えばマーカ82を重畳して表示する障害物のリスクポテンシャルRPの大きさに基づいて、上述した(式6)から算出することができる。
【0158】
ステップS5090では、現在の制御対象と、将来的に制御対象となる可能性のある障害物の両方について、リスクポテンシャルRPを算出する。現在の制御対象、例えば自車線前方に存在する先行車については、上述した(式3)を用いてリスクポテンシャルRPを算出する。将来的に制御対象となる可能性のある障害物、例えば隣接車線を走行する他車両については、自車両と他車両との前後方向距離(車間距離)、自車速Vと他車両速度との差(相対速度)、および自車速Vを用いて、(式3)と同様の算出式からリスクポテンシャルRPを算出する。
【0159】
なお、将来的に制御対象となる可能性のある障害物に対しては、算出したリスクポテンシャルRPに所定の係数ko(ko<1)をかけた値をリスクポテンシャルRPとして用いる。所定の係数koは、自車線上の障害物と自車線外の障害物がそれぞれ自車両の走行に与える影響の大きさを考慮して、例えば0.2程度に設定する。
【0160】
ステップS5100では、ステップS5090でリスクポテンシャルRPを算出した制御対象と将来的に制御対象となる可能性のある障害物について、HUD81に表示する画像の参照点P2を算出する。参照点P2の算出方法は、図3のフローチャートのステップS1040での処理と同様である(図6(a)〜図8(b)参照)。
【0161】
つづくステップS5110では、ステップS5090で算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、制御対象と将来的に制御対象となる可能性のある障害物についてのマーカ82の大きさを算出する。マーカ82の大きさは、例えばマーカ82を重畳して表示する障害物のリスクポテンシャルRPの大きさに基づいて、上述した(式6)から算出することができる。
【0162】
ステップS5070では、HUD81上にマーカ82を表示するように表示制御装置80に信号を出力する。現在の制御対象のみが検出されている場合は、ステップS5050で算出した参照点P2を中心として、ステップS5060で大きさを設定したマーカ82を制御対象に重畳するように表示する。将来的に制御対象となる可能性のある障害物も検出されている場合は、ステップS5100で算出した参照点P2を中心として、ステップS5110で大きさを設定したマーカ82を、将来的に制御対象となる可能性のある障害物に重畳するように表示する。このとき、将来的に制御対象となる可能性のある障害物に重畳するマーカ82は、現在の制御対象に重畳するマーカ82とは表示色および形状が異なるように設定される。
【0163】
つづくステップS5080では、ステップS5040もしくはS5090で算出した現在の制御対象の障害物に対するリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル72に発生する操作反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0164】
図36に、マーカ82の表示例を示す。図36は、自車両の右側隣接車線への車線変更意図が推定された状態で、自車両前方の制御対象の障害物Aと、右側隣接車線上に将来的に制御対象となる可能性のある障害物Bが検出されている場合を例として示している。制御対象の障害物Aには、円形のマーカ82Aが重畳して表示されている。右側隣接車線上を走行する障害物Bには、三角形のマーカ82Bが重畳して表示されている。マーカ82Bは、リスクポテンシャルRPに応じてマーカ82Aとは異なる表示色で表示されている。マーカ82Aは常時点灯され、マーカ82Bは点滅し、将来的に制御対象となる可能性のある障害物であることを示す。
【0165】
このように、以上説明した第7の実施の形態においては、上述した第4〜第6の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置3は、自車両周囲に存在する複数の障害物のうち、将来的に制御対象の障害物となる可能性のある障害物に対するリスクポテンシャルRPを表示する。これにより、将来の制御対象を早い段階から報知して運転者の注意を喚起することができる。また、図36に示すように、将来的に制御対象となる可能性のある障害物を表すマーカ82Bと、現在の制御対象を表すマーカ82Aとが明確に区別できるように表示することにより、現在の制御対象と将来の制御対象とを運転者に容易に認識させることができる。
【0166】
《第8の実施の形態》
以下に、本発明の第8の実施の形態における車両用運転操作補助装置について説明する。図37に、第8の実施の形態による車両用運転操作補助装置4の構成を示すシステム図を示す。図37において、図20に示した第4の実施の形態と同様の機能を有する箇所には同一の符号を付している。ここでは、第4の実施の形態との相違点を主に説明する。
【0167】
図37に示すように、車両用運転操作補助装置4は、自車両に発生する駆動力を制御する駆動力制御装置260と、自車両に発生する制動力を制御する制動力制御装置270と、アクセルペダル72の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルストロークセンサ73とをさらに備えている。
【0168】
駆動力制御装置260は、エンジンへの制御指令を算出し、コントローラ250から入力される目標減速度を実現するように自車両に発生する駆動力を制御する。具体的には、駆動力制御装置260は、図38に示すような関係に従って、アクセルペダル操作量SAに応じたドライバ要求駆動力drv_trqを算出する。そして、ドライバ要求駆動力drv_trqから目標減速度に相当する値を減算することにより、エンジンへの制御指令を算出する。なお、略一定の車間距離を保って先行車に追従するよう制御する追従走行制御においては、アクセルペダル操作量SAに関わらず、設定された目標車間時間を実現するために自車両の加速制御を行う。
【0169】
制動力制御装置270は、ブレーキ液圧指令を出力し、コントローラ250から入力される目標減速度を実現するように、自車両に発生する制動力を制御する。制動力制御装置270からの指令に応じて各車輪に設けられたブレーキ装置が作動する。
【0170】
コントローラ250は、リスクポテンシャルRPに基づいてアクセルペダル72に発生する操作反力を制御するとともに、自車両に減速度を発生させることにより、リスクポテンシャルRPを伝達して運転者の注意を喚起する(RP伝達制御)。さらに、コントローラ250は、運転者によって設定された目標車間時間に基づいて自車両と先行車との車間距離が略一定距離に保たれるように自車両の加減速度を制御する(追従走行制御)。コントローラ250は、RP伝達制御として自車両に減速度を発生させる場合は、図23(a)(b)に示すように自車両の前方に設けた仮想弾性体220の反発力Fcに基づいて目標減速度を算出する。
【0171】
このように、コントローラ250は自車両に発生する減速度を制御する複数の異なる制御を実行可能である。ただし、RP伝達制御も追従走行制御も作動可能な状態では、RP伝達制御の作動に対して追従走行制御の作動が優先される。すなわち、実際には追従走行制御のみが作動する。この状態で、アクセルペダル72が踏み込み操作されると追従走行制御がオーバーライド状態となり、RP伝達制御のみを作動させる状態に遷移する。すなわち、追従走行制御は運転者の運転操作状態に応じてオーバーライドされる。
【0172】
このように、RP伝達制御も追従走行制御も作動可能な状態でアクセルペダル72が踏み込み操作されると、実際に作動する制御が追従走行制御からRP伝達制御へ切り替わる。このとき、追従走行制御で目標としていた目標減速度とRP伝達制御で新たに目標とする目標減速度との差に起因して、追従走行制御作動時よりも大きな減速度が自車両に発生する場合がある。この場合、運転者は自らアクセルペダル72を踏み込み操作して加速しようとしたにも関わらず、運転者の意図に反した車両挙動となってしまう。
【0173】
そこで、第8の実施の形態においては、追従走行制御がオーバーライド状態となってRP伝達制御のみを作動させる状態に遷移するときに、制御対象の障害物を示すマーカ82を点滅させる。これにより、オーバーライド状態であることを運転者に知らせる。
【0174】
第8の実施の形態における車両用運転操作補助装置4の動作を、図39を用いて詳細に説明する。図39は、コントローラ250における運転操作補助制御プログラムの処理手順を示すフローチャートである。本処理内容は、一定間隔(例えば50msec)毎に連続的に行われる。ステップS6000〜S6040での処理は、図21のフローチャートのステップS2000〜S2040での処理と同様であるので説明を省略する。
【0175】
ステップS6050では、アクセルペダル72が踏み込まれているか否かを判定する。具体的には、アクセルペダルストロークセンサ73で検出されるアクセルペダル操作量SAが0よりも大きい場合は、アクセルペダル72が踏み込まれていると判断してステップS6080へ進む。この場合、アクセルペダル72の踏み込み操作によって追従走行制御がオーバーライド状態となったと判断する。
【0176】
アクセルペダル操作量SA=0の場合は、ステップS6060へ進む。ステップS6060では、ステップS6030で算出した参照点P2を中心として、ステップS6040で大きさを設定したマーカ82を制御対象に重畳するように表示する。つづくステップS6070では、運転者によって設定された目標車間時間に基づいて自車両と先行車との車間距離が略一定距離に保たれるように自車両の加減速度を制御し、追従走行制御処理を行う。
【0177】
ステップS6080では、アクセルペダル操作量SAに応じたドライバ要求駆動力drv_trqを反発トルクFcと比較する。ここで、反発トルクFcは、図23(a)(b)に示すような自車両の前方に設けた仮想弾性体220の反発力として図25のマップに基づいて算出する。drv_trq<Fcの場合は、RP伝達制御によってドライバ要求駆動力drv_trqよりも大きな反発トルクFcが設定されており、アクセルペダル72は踏み込まれているが自車両は加速していない状態である。この場合は、ステップS6080を肯定判定してステップS6090へ進む。
【0178】
ステップS6090では、ステップS6030で算出した参照点P2を中心として、ステップS6040で大きさを設定したマーカ82を制御対象に重畳するように表示する。このとき、追従走行制御がオーバーライド状態で、かつアクセルペダル72は踏み込まれているが自車両は加速していない状態であることを運転者に知らせるために、マーカ82を遅い点滅で表示する。遅い点滅とは、例えばマーカ82をゆっくりとした周波数、例えば0.8Hzで点滅させる。
【0179】
一方、drv_trq≧Fcの場合は、RP伝達制御によって設定された反発トルクFcよりもドライバ要求駆動力drv_trqが大きい。したがって、RP伝達制御が作動中で自車両が加速すると判断し、ステップS6100へ進む。ステップS6100では、ステップS6030で算出した参照点P2を中心として、ステップS6040で大きさを設定したマーカ82を制御対象に重畳するように表示する。このとき、追従走行制御がオーバーライド状態で、かつアクセルペダル72の踏み込みによって自車両が加速していることを運転者に知らせるために、マーカ82を速い点滅で表示する。速い点滅とは、例えばマーカ82を速い周波数、例えば2.0Hzで点滅させる。
【0180】
その後、ステップS6110へ進み、ステップS6020で算出したリスクポテンシャルRPに基づいて、アクセルペダル72に発生する操作反力を制御する。これにより、今回の処理を終了する。
【0181】
図40に、追従走行制御のオーバーライド状態におけるマーカ82の表示例を示す。アクセルペダル72が踏み込まれて追従走行制御がオーバーライド状態となると、制御対象の障害物に重畳して表示されるマーカ82が点滅表示される。このときの点滅周期は、オーバーライドした時点でのアクセルペダル操作量SAと反発力Fcとの関係から決定される。
【0182】
このように、以上説明した第8の実施の形態においては、上述した第4〜第7の実施の形態による効果に加えて以下のような作用効果を奏することができる。
(1)車両用運転操作補助装置4は、リスクポテンシャルRPに応じた操作反力制御を行うとともに、リスクポテンシャルRPに基づいて自車両に発生する制駆動力を制御し(第1の制駆動力制御手段)、また、対象障害物までの車間距離を維持するように自車両の制駆動力を制御する(第2の制駆動力制御手段)。そして、運転者の運転操作状態に基づいて、車間距離を維持する追従走行制御がオーバーライド状態であることが検出されると、リスクポテンシャルRPを表すマーカ82の表示形態を変える。例えば、追従走行制御の作動中は対象障害物に重畳してマーカ82を点灯表示し、追従走行制御がオーバーライド状態となると、図40に示すようにマーカ82を点滅表示する。これにより、車両用運転操作補助装置4による制御の作動状態を運転者に認識させることができる。
【0183】
上述した第4の実施の形態と第5の実施の形態とを組み合わせることもできる。第5の実施の形態では、図28に示すようにリスクポテンシャルRPの分布を等高線で示したが、これに加えて現在の制御対象の障害物に重畳するようにマーカ82を表示することもできる。または、第5の実施の形態と第6や第7の実施の形態とを組み合わせることももちろん可能である。
【0184】
マーカ82を表示装置81に表示する際に、リスクポテンシャルRP等に応じてマーカ82の輝度を変更するように構成することもできる。また、リスクポテンシャルRP等に応じてマーカ82の表示色と輝度のいずれか一方を変更することもできる。
【0185】
以上説明した第4から第8の実施の形態においては、レーザレーダ10および前方カメラ20が障害物検出手段として機能し、コントローラ100,150,250がリスクポテンシャル算出手段として機能し、コントローラ100,150およびアクセルペダル反力制御装置70が触覚情報伝達手段として機能し、コントローラ100,150,250、表示制御装置80および表示装置81が視覚情報伝達手段として機能し、コントローラ250、駆動力制御装置260、および制動力制御装置270が第1の制駆動力制御手段、第2の制駆動力制御手段および制駆動力制御手段として機能することができる。ただし、これらには限定されず、障害物検出手段として、レーザレーダ10の代わりに例えば別方式のミリ波レーダを用いることも可能である。なお、以上の説明はあくまで一例であり、発明を解釈する際、上記の実施形態の記載事項と特許請求の範囲の記載事項の対応関係になんら限定も拘束もされない。
【符号の説明】
【0186】
10:レーザレーダ、20:前方カメラ、30:車速センサ、35:舵角センサ、37:アイポイント検出装置、50,100,150,250:コントローラ、70:アクセルペダル反力制御装置、80:表示制御装置、81:表示装置、90:警報装置、95:マーカサイズ選択スイッチ、97:車線変更意図推定装置、260:駆動力制御装置、270:制動力制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両前方に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段からの信号に基づいて、前記自車両の前記障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段で算出される前記リスクポテンシャルを、運転者が前記自車両を運転操作するときの運転操作機器を介した触覚情報として運転者に伝達する触覚情報伝達手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段において前記リスクポテンシャルを算出する際の対象となった障害物(以降、対象障害物と呼ぶ)を、視覚情報として伝達する視覚情報伝達手段とを備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記触覚情報伝達手段は、前記リスクポテンシャルに基づいて前記運転操作機器に発生する操作反力を制御する操作反力制御手段であることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記対象障害物に対する前記リスクポテンシャルの大きさを視覚情報として伝達することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記リスクポテンシャルを表す表示を前記対象障害物に重畳することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、ヘッドアップディスプレイを備え、前記リスクポテンシャルを表す表示を前記ヘッドアップディスプレイの前記対象障害物に対応する位置に重ね合わせて表示することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項6】
請求項4に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記自車両の前方領域を撮影する撮影手段をさらに備え、
前記視覚情報伝達手段は、前記撮影手段によって撮影された前記前方領域の画像において前記対象障害物に対応する位置に前記リスクポテンシャルを表す表示を重ね合わせて表示することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記前方領域の画像および前記リスクポテンシャルを表す表示を、ナビゲーション装置のモニタ装置に表示することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項8】
請求項4に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記対象障害物を後方から見た場合、側方から見た場合、および上方から見た場合の少なくともいずれかの画像を生成し、生成した前記対象障害物の画像に前記リスクポテンシャルを表す表示を重ね合わせて表示することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項9】
請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記対象障害物が変化すると、前記リスクポテンシャルを表す表示の形状を変更することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項10】
請求項4から請求項9のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記リスクポテンシャルの大きさに応じて、前記リスクポテンシャルを表す表示の大きさを変更することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項11】
請求項4から請求項10のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記リスクポテンシャルの大きさに応じて、前記リスクポテンシャルを表す表示の色を変更することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項12】
請求項4から請求項11のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記リスクポテンシャルの大きさに基づいて、前記リスクポテンシャルを表す表示を点滅することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項13】
請求項4から請求項12のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記自車両と前記対象障害物との相対的な走行状態を判定する相対走行状態判定手段をさらに備え、
前記視覚情報伝達手段は、前記相対走行状態判定手段によって判定される前記相対的な走行状態に応じて、前記リスクポテンシャルを表す表示の輝度を変化させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項14】
請求項4から請求項13のいずれか1項に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記自車両と前記対象障害物との接近度合を算出する接近度合算出手段をさらに備え、
前記視覚情報伝達手段は、前記接近度合算出手段によって算出される前記接近度合に応じて、前記リスクポテンシャルを表す表示の表示位置をオフセットすることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項15】
請求項14に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記自車両と前記対象障害物とが近づいている場合は前記リスクポテンシャルを表す表示を前記対象障害物に対して下方にオフセットし、前記自車両と前記対象障害物とが遠ざかっている場合は前記リスクポテンシャルを表す表示を前記対象障害物に対して上方にオフセットすることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項16】
自車両前方に存在する障害物を検出し、
前記障害物に検出結果に基づいて、前記自車両の前記障害物に対するリスクポテンシャルを算出し、
前記リスクポテンシャルを、運転者が前記自車両を運転操作するときの運転操作機器を介した触覚情報として運転者に伝達し、
前記リスクポテンシャルを算出する際の対象となった障害物を、視覚情報として伝達することを特徴とする車両用運転操作補助方法。
【請求項17】
自車両前方に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段からの信号に基づいて、前記自車両の前記障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段で算出される前記リスクポテンシャルを、運転者が前記自車両を運転操作するときの運転操作機器を介した触覚情報として運転者に伝達する触覚情報伝達手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段において前記リスクポテンシャルを算出する際の対象となった障害物を、視覚情報として伝達する視覚情報伝達手段とを有する車両用運転操作補助装置を備えることを特徴とする車両。
【請求項18】
自車両前方に存在する障害物を検出する障害物検出手段と、
前記障害物検出手段からの信号に基づいて、前記自車両の前記障害物に対するリスクポテンシャルを算出するリスクポテンシャル算出手段と、
前記リスクポテンシャル算出手段で算出される前記リスクポテンシャルを、運転者が前記自車両を運転操作するときの運転操作機器を介した触覚情報として運転者に伝達する触覚情報伝達手段と、
前記触覚情報伝達手段における制御の対象である障害物(以降、対象障害物と呼ぶ)に対するリスクポテンシャルを、視覚情報として伝達する視覚情報伝達手段とを備えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項19】
請求項18に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスクポテンシャル算出手段は、自車両前方に存在する複数の障害物に対するリスクポテンシャルをそれぞれ算出し、
前記視覚情報伝達手段は、前記複数の障害物に対する前記リスクポテンシャルを表示手段に表示させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項20】
請求項19に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記複数の障害物のうち、将来的に前記対象障害物となる可能性のある障害物に対するリスクポテンシャルを表示させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項21】
請求項19に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記複数の障害物のうち、前記リスクポテンシャルが所定値以上の障害物に対するリスクポテンシャルを表示させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項22】
請求項18に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記対象障害物に対する前記リスクポテンシャルの大きさを表す等高線を表示手段に表示させることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項23】
請求項18に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記リスクポテンシャルを表すマークを表示する表示手段を含み、前記対象障害物が切り替わった場合に、前記リスクポテンシャルを表す前記マークの表示形態を変えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項24】
請求項18に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記リスクポテンシャルを表すマークを表示する表示手段を含み、前記自車両との距離に応じて変化する前記対象障害物の見た目の面積に応じて前記リスクポテンシャルを表す前記マークの大きさを変更することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項25】
請求項18に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記視覚情報伝達手段は、前記リスクポテンシャルを表すマークを表示する表示手段を含み、前記対象障害物と前記自車両との車間距離に応じて前記リスクポテンシャルを表す前記マークの大きさを変更することを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項26】
請求項18に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルに基づいて、前記自車両に発生する制駆動力を制御する第1の制駆動力制御手段と、
前記対象障害物までの車間距離を維持するように前記自車両の制駆動力を制御する第2の制駆動力制御手段と、
運転者の運転操作状態に基づいて前記第2の制駆動力制御手段の作動がオーバーライド状態であることを検出するオーバーライド検出手段とをさらに備え、
前記視覚情報伝達手段は、前記リスクポテンシャルを表すマークを表示する表示手段を含み、前記オーバーライド検出手段によって前記オーバーライド状態が検出されると前記リスクポテンシャルを表す前記マークの表示形態を変えることを特徴とする車両用運転操作補助装置。
【請求項27】
請求項18に記載の車両用運転操作補助装置において、
前記リスクポテンシャル算出手段によって算出される前記リスクポテンシャルに基づいて、前記自車両に発生する制駆動力を制御する制駆動力制御手段をさらに備え、
前記視覚情報伝達手段は、前記リスクポテンシャルを表すマークを表示する表示手段を含み、前記制駆動力制御手段による前記制駆動力の制御量に応じて前記リスクポテンシャルを表す前記マークの大きさを変更することを特徴とする車両用運転操作補助装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【公開番号】特開2011−70685(P2011−70685A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−233793(P2010−233793)
【出願日】平成22年10月18日(2010.10.18)
【分割の表示】特願2006−233141(P2006−233141)の分割
【原出願日】平成18年8月30日(2006.8.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】