説明

車両用運転支援装置及び運転支援方法

【課題】適切なタイミングで注意喚起情報を提供すること。
【解決手段】交通インフラからの提供情報から、当該車両の停止すべき位置に関する情報を取得する取得部と、該車両の停止すべき位置に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する減速タイミング推定部と、該減速すべきタイミングが経過したと判定された場合に、注意喚起情報を提供するかを判定する注意喚起判定部とを有する。注意喚起判定部は、車両の速度に応じて、該速度が所定の閾値以上である場合には、減速すべきタイミングが経過した際における遅延時間が許容できる時間以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定し、該車両の速度が所定の閾値未満である場合には、該車両と停止線との間の距離と該車両の速度から、該停止線に停止するために必要な減速度を求め、該減速度が所定値以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナビゲーションシステムに係り、特に、交通インフラから送信された交通情報を車両乗員に提供する車両用運転支援装置及び運転支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路交通情報は、各道路上に設置された路側機から送信される「ビーコン」などを利用して、カーナビゲーションに伝達される。交通情報提供センタは、予め定められた地域ごとに道路交通情報を収集し、「ビーコン」などを用いて、該収集した交通情報を送信する。「ビーコン」を用いて道路交通情報を送信するシステムには、VICS(Vehicle Information and Communication System)が含まれる。VICSとは、VICSセンターで編集、処理された渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信し、カーナビゲーションなどの車載機に文字・図形により表示するシステムである。「ビーコン」では自車位置をもとにした直近の道路の詳細な情報など、その場所で必要な道路交通情報が提供される。「ビーコン」には「電波ビーコン」と「光ビーコン」がある。「電波ビーコン」は主に高速道路で使用され、「光ビーコン」は主要な一般道路で使用される。
【0003】
表示モニタに、「ビーコン」などの交通インフラにより提供された交通情報提供センタからの道路交通情報を表示させるナビゲーションシステムが知られている。車両に搭載されたナビゲーションシステムは、交通インフラにより道路交通情報が提供される地域に車両が進入した後、一定間隔ごとに該地域における交通情報を取得する。
【0004】
一定間隔ごとに該地域における交通情報を取得する機能を有するナビゲーションシステムが搭載された車両では、例えば誘導経路に関する案内、道路交通情報に基づく案内、利用者による施設検索案内などの種々の案内を音声により行うことができる。
【0005】
例えば、誘導経路に関する案内には、右左折予定交差点の案内が含まれる。右左折予定交差点の案内では、交差点までの距離に応じて、車両の状況に応じて種々の音声案内が行われる。誘導経路に関する案内には、注意を喚起する案内が含まれる。注意を喚起する案内には、右左折予定交差点の案内よりもその重要度が低い音声案内が含まれる。道路交通情報に基づく案内には、注意を喚起する案内が含まれる。注意を喚起する案内には、ある程度記憶に留めておいた方がよい音声案内が含まれる。
【0006】
一方、高度道路交通システム(ITS: Intelligent Transport Systems)のひとつとして、インフラ協調システムが知られている。インフラ協調システムとは「インフラ協調による安全運転支援システム」の略称である。インフラ協調システムでは、道路に設置された通信インフラや他の車両などから無線通信によって、ドライバーから直接見ることのできない情報や管制情報を受信し、ドライバーに知らせる。インフラ協調システムでは、ドライバーから直接見ることのできない情報や管制情報を受信することで、安全運転の支援や事故防止を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−191972号公報
【特許文献2】特開2008−033617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
インフラ協調システムでは、インフラ側では、光ビーコンを送信する路側機を設置し、該光ビーコンにより信号機に関する情報(信号機の表示色)や一時停止規制情報を送信する。例えば、信号機が設置されている交差点に設置された路側機から、該信号機のサイクル情報及び/又は停止線までの距離が送信される。また、例えば、信号機が設置されていない交差点に設置された路側機からは一時停止線までの距離が送信される。
【0009】
一方、車両側では、インフラ側から送信された情報を受信し、例えばカーナビゲーションの画面に、該情報を表示することによりドライバーに通知する。車両側では、光ビーコンから受信した信号機のサイクル情報及び/又は停止線までの距離と当該車両の速度とから、該停止線に停止するために減速を開始するタイミングを推定し、該タイミングとなっても減速運転を行わないドライバーに対して注意喚起情報を提供する。また、車両側では、光ビーコンから受信した一時停止線までの距離と当該車両の速度とから、該一時停止線に停止するために減速を開始するタイミングを推定し、該タイミングとなっても減速運転を行わないドライバーに対して注意喚起情報を提供する。
【0010】
ドライバーは注意喚起情報により停止すべきことを判断し、ブレーキ操作を行う。従って、インフラ協調システムは、ドライバーが注意喚起情報により停止すべきことを判断できるように、ある程度余裕のあるタイミングで注意喚起情報を提供するのが好ましい。
【0011】
しかし、光ビーコンの受信遅れなどのシステム側の問題により、注意喚起情報の提供が遅れる場合がある。システム側では、注意喚起情報の提供が遅れることが判明した場合に、該注意喚起情報の提供を禁止することが行われる場合もある。
【0012】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、適切なタイミングで注意喚起情報を提供することができる車両用運転支援装置及び運転支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本車両用運転支援装置は、
交通インフラにより提供される情報に基づいて、運転支援を行う車両用運転支援装置であって、
交通インフラにより提供される情報を受信する受信部と、
該受信部により受信された情報から、当該車両運転支援装置が搭載された車両の停止すべき位置に関する情報を取得する取得部と、
該取得部により取得された車両の停止すべき位置に関する情報に基づいて、該停止すべき位置に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する減速タイミング推定部と、
該減速タイミング推定部により推定された減速すべきタイミングが経過したかを判定するタイミング経過判定部と、
該タイミング経過判定部により減速すべきタイミングが経過したと判定された場合に、注意喚起情報を提供するかを判定する注意喚起判定部と
を有し、
前記注意喚起判定部は、
前記車両の速度に応じて、該車両の速度が所定の閾値以上である場合には、前記減速すべきタイミングが経過した際における遅延時間が許容できる時間以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定し、
該車両の速度が所定の閾値未満である場合には、該車両と停止線との間の距離と該車両の速度から、該停止線に停止するために必要な減速度を求め、該減速度が所定値以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定する。
【0014】
他の例では、
交通インフラにより提供される情報には、信号機のサイクル情報及び/又は停止線までの距離情報が含まれる。
【0015】
他の例では、
前記所定の閾値は、注意喚起を禁止する減速度の閾値と停止線までの距離に基づいて設定される。
【0016】
他の例では、
減速運転が行われたことを検出する検出部
を有し、
前記注意喚起判定部は、前記検出部において減速運転が行われたことが検出されず、且つ前記タイミング経過判定部により減速すべきタイミングが経過したと判定された場合に、注意喚起情報を提供するかを判定する。
【0017】
本運転支援方法は、
交通インフラにより提供される情報に基づいて、運転支援を行う車両用運転支援装置における運転支援方法であって、
交通インフラにより提供される情報を受信する受信ステップと、
該受信ステップにより受信された情報から、当該車両運転支援装置が搭載された車両の停止すべき位置に関する情報を取得する取得ステップと、
該取得ステップにより取得された車両の停止すべき位置に関する情報に基づいて、該停止すべき位置に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する減速タイミング推定ステップと、
該減速タイミング推定ステップにより推定された減速すべきタイミングが経過したかを判定するタイミング経過判定ステップと、
該タイミング経過判定ステップにより減速すべきタイミングが経過したと判定された場合に、注意喚起情報を提供するかを判定する注意喚起判定ステップと
を有し、
前記注意喚起判定ステップは、
前記車両の速度に応じて、該車両の速度が所定の閾値以上である場合には、前記減速すべきタイミングが経過した際における遅延時間が許容できる時間以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定し、
該車両の速度が所定の閾値未満である場合には、該車両と停止線との間の距離と該車両の速度から、該停止線に停止するために必要な減速度を求め、該減速度が所定値以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定する。
【発明の効果】
【0018】
開示の車両用運転支援装置及び運転支援方法によれば、適切なタイミングで注意喚起情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】一実施例に従った車両用運転支援装置が適用されるインフラ協調システムを示す機能ブロック図である。
【図2】路側機により送信される通信データの例を示す説明図である。
【図3】注意喚起情報の提供が禁止される条件(その1)を示す説明図である。
【図4】注意喚起情報の提供が禁止される条件(その2)を示す説明図である。
【図5】本実施例に従った車両用運転支援装置の動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明を実施するための形態を、以下の実施例に基づき図面を参照しつつ説明する。
なお、実施例を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(インフラ協調システム)
図1は、本実施例に従った車両用運転支援装置が適用されるインフラ協調システムの構成例を示す。
【0022】
本インフラ協調システムは、運転支援装置としてのナビゲーションシステム100と、光受信回路200と、路側機300とを有する。
【0023】
ナビゲーションシステム100及び光受信回路200は、車両に搭載される。路側機300は、光ビーコンにより、VICSデータ、インフラ協調データを送信する。
【0024】
路側機300は、交通情報提供センタ(図示なし)と接続される。該交通情報提供センタは、道路における停止線の位置情報を提供する。路側機300は、例えば「ビーコン」などの交通インフラにより構成される。例えば、路側機300は、交通情報提供センタからの道路交通情報を「ビーコン」により提供する。該「ビーコン」を用いて道路交通情報を送信するシステムには、VICSが含まれる。VICSとは、VICSセンターで編集、処理された渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信し、カーナビゲーションなどの車載機に文字・図形で表示するシステムである。「ビーコン」には「電波ビーコン」と「光ビーコン」があるがどちらを用いてもよい。「電波ビーコン」は主に高速道路で使用され、「光ビーコン」は主要な一般道路で使用される。
【0025】
図2は、路側機300により提供される情報を示す。
【0026】
路側機300は、ヘッダーとVICSデータとを含む通信データを送信する。ヘッダーにより情報の種別、VICSデータであることが示される。また、路側機300は、ヘッダーとインフラ協調データとを含む通信データを送信する。ヘッダーにより情報の種別、インフラ協調データであることが示される。通信データは、1Mbps程度の伝送速度で提供されてもよい。
【0027】
インフラ協調データには、該車両が停止すべき位置に関する情報が含まれる。車両が停止すべき位置に関する情報には、該路側機300の設置された交差点に設置された信号機のサイクル情報が含まれてもよい。信号機のサイクル情報は、信号機の色が変更されるタイミングを示す情報であってもよい。また、車両が停止すべき位置に関する情報には、停止線までの距離情報が含まれてもよい。
【0028】
車両が信号機の設置された交差点近傍を通過する場合について説明する。路側機300は、車両が停止すべき位置に関する情報として、交差点に設置された信号機のサイクル情報と、停止線までの距離情報を送信する。ナビゲーションシステム100は、路側機300により送信された光ビーコンから信号機のサイクル情報及び停止線までの距離情報を取得する。ナビゲーションシステム100は、信号機のサイクル情報及び停止線までの距離情報を利用し、交差点を通過できるか否かを推定する。また、ナビゲーションシステム100は、該交差点を通過できないと判定した場合に、停止線に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する。
【0029】
車両が信号機の設置されていない交差点近傍を通過する場合について説明する。路側機300は、車両が停止すべき位置に関する情報として、一時停止線までの距離情報を送信する。ナビゲーションシステム100は、路側機300により送信された光ビーコンから一時停止線までの距離情報を取得する。ナビゲーションシステム100は、一時停止線までの距離情報を利用し、停止線に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する。
【0030】
ナビゲーションシステム100は、当該ナビゲーションシステム100が搭載された車両(以下、車両と記されることもある)の速度と停止線までの距離から、該停止線への到達時間や停止するために必要な減速度などを推定することにより、停止線に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する。減速度は減速した後の速度を示すようにしてもよい。そして、減速すべきタイミングとなっても、減速運転を行っていないドライバーに対して、ナビゲーションシステム100は、減速運転を開始するように注意喚起を行う。
【0031】
ナビゲーションシステム100は、ドライバーの運転操作により減速運転を行ったことを判定してもよい。ドライバーの運転操作には、アクセル操作やブレーキ操作が含まれてもよい。また、ナビゲーションシステム100は、車両の速度などの指標に基づいて、減速運転を行ったことを判定してもよい。
【0032】
ナビゲーションシステム100は、ドライバーが注意喚起情報を聞いて停止すべきことを判断し、該判断後にブレーキ操作により停止できるように、該注意喚起情報の提供をある程度余裕を持ったタイミングで提供する。該タイミングは、停止線への到達時間や該停止線に停止するために必要とされる減速度に基づいて決定されてもよい。
【0033】
インフラ協調システムの構成によっては、データ伝送及び/又はデータ処理により生じる遅延などにより、システムにより認識されている停止線までの距離と実際の距離との間に誤差が生じる場合がある。
【0034】
ナビゲーションシステム100は、ある程度余裕を持ったタイミングで注意喚起情報を提供できないと判断した場合には、該注意喚起情報の提供を禁止する。例えば、ナビゲーションシステム100は、認識している停止線までの距離に補正距離を加えた距離と当該車両の速度から求められる減速度が一定以上の場合には、注意喚起情報の提供を禁止する。注意喚起情報を提供するタイミングが遅れると判断されるためである。補正距離は、データ伝送及び/又はデータ処理により生じる遅延時間と当該車両の速度から求められる距離であってもよい。
【0035】
図3は、ナビゲーションシステム100において、注意喚起情報の提供が禁止される条件(その1)を示す。図3において、横軸は停止線までの距離(D)を示し、縦軸は車速(V)を示す。図3には、注意喚起タイミング線、注意喚起禁止減速度線が示される。また、停止線までの距離と車速により示される注意喚起を禁止する領域を斜線により示す。
【0036】
注意喚起タイミング線は、D=(注意喚起実施判断時間閾値)×Vにより示される。注意喚起実施判断時間は、注意喚起情報を提供するか否かを判断するための時間(以下、TTCと呼ばれることもある)を示す。注意喚起タイミング線により示されるタイミングより後の時間では、注意喚起情報を提供するタイミングが遅れると判断される。注意喚起タイミング線により、ナビゲーションシステム100がドライバーに注意喚起情報を提供するタイミングが示される。
【0037】
注意喚起禁止減速度線は、D=V2/{2×(注意喚起禁止減速度閾値)}により示される。注意喚起禁止減速度は、停止線に停止するために要求される減速度を示す。例えば、注意喚起禁止減速度線により示される速度以上である場合には、注意喚起情報を提供するタイミングが遅れると判断される。注意喚起禁止減速度線により、注意喚起情報の提供が禁止される場合の速度が示される。
【0038】
また、図3には、注意喚起タイミング線に、データ伝送・データ処理に基づいて推定される遅延時間により求められる補正距離を加えた場合の注意喚起タイミング線も示される。
【0039】
しかし、車両の速度と停止線までの距離から求められる時間(TTC)に基づいて、注意喚起情報を提供するかを判定する場合、車両の速度が高いが、適切なタイミングで注意喚起情報を提供できる場合があるにもかかわらず、注意喚起情報の提供が禁止される場合がある。例えば、図3において、走行パターンBに示される場合には、速度が高いが停止線までの距離も長いため、適切なタイミングで注意喚起情報を提供できると想定される。しかし、注意喚起情報の提供が禁止される。注意喚起禁止減速度線に基づいて、注意喚起情報を提供するかが決定されるためである。
【0040】
本実施例に従ったナビゲーションシステムでは、車速に応じて、注意喚起情報の提供を禁止するかを判定するための条件を異ならせる。車速に応じて注意喚起情報の提供を禁止するかを判定するための条件を異ならせることにより、車両の速度と停止線までの距離から求められる時間(TTC)に基づいて判断される場合よりも注意喚起情報の提供を行う機会を増加させることができる。
【0041】
本インフラ協調システムでは、上述したように、信号機の設置された交差点に設置された路側機300により、信号機のサイクル及び停止線までの距離情報が提供される。また、本インフラ協調システムでは、信号機の設置されていない交差点に設置された路側機300により、一時停止線までの距離情報が提供される。
【0042】
(ナビゲーションシステム)
本実施例に従ったナビゲーションシステム100は、ナビ位置推定部102と、注意喚起判定部104と、ビーコン受信部106と、VICSアプリ108と、ヒューマンマシンインターフェース(HMI: Human Machine Interface)110とを有する。
【0043】
ナビ位置推定部102は、当該ナビゲーションシステム100の位置を推定する。例えば、ナビ位置推定部102は、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信装置を有するようにしてもよい。衛星航法(GNSS: Global Navigation Satellite System)とは、航空機から3つの航法衛星(GNSS用周回衛星)(以下、GNSS衛星と呼ぶ)を捕捉することで各GNSS衛星からの距離を得るとともに、4つ目の航法衛星からの信号で時刻合わせを行い、航空機の3次元での飛行位置を得ることができる航法システムである。衛星航法には、全地球的測位システム(GPS: Global Positioning System)、ガリレオ(GALILEO)などが含まれる。
【0044】
例えば、GNSS受信装置は移動体に搭載され、該移動体の位置及び速度を測定する。例えば、GNSS受信装置は、複数のGNSS衛星からの電波を受信することによって、複数のGNSS衛星から当該GNSS受信装置までの距離(擬似距離)をそれぞれ算出し、該擬似距離に基づいて当該GNSS受信装置が搭載された移動体の測位を行う。GNSS衛星により発射された信号は、GNSS衛星とGNSS受信装置との間の距離を電波が伝搬する時間だけ遅れてGNSS受信装置に到達する。従って、複数のGNSS衛星について電波伝搬に要する時間を求めれば、測位演算によってGNSS受信装置の位置を求めることができる。例えば、複数のGNSS衛星により発射された電波は、GNSS受信装置の測距部において、各GNSS衛星からGNSS受信装置までの距離が求められる。そして、測位演算部において、測距部において求められた距離に基づいて、GNSS受信装置の位置が求められる。
【0045】
ビーコン受信部106は、光受信回路200と接続される。ビーコン受信部106は、光受信回路200により受信された光ビーコンから通信データを取得する。該通信データには、VICSデータと、インフラ協調データが含まれる。インフラ協調データには、路側機300の設置された環境によっても異なるが、信号機のサイクル及び停止線までの距離情報、一時停止線までの距離情報が含まれる。ビーコン受信部106は、信号のサイクル及び停止線までの距離情報、一時停止線までの距離情報を注意喚起判定部104に入力する。ビーコン受信部106は、VICSデータをVICSアプリ108に入力する。
【0046】
VICSアプリ110は、ビーコン受信部106と接続される。VICSアプリ110は、HMI110に、ビーコン受信部106により入力されたVICSデータを文字・図形で表示する制御を行う。
【0047】
注意喚起判定部104は、ナビ位置推定部102と、ビーコン受信部106と、HMI110と接続される。注意喚起判定部104は、当該ナビゲーションシステム100が搭載された車両の速度と停止線までの距離から、該停止線への到達時間や停止するために必要な減速度などを推定し、停止線に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する。減速度は減速した後の速度を示す。注意喚起判定部104は、信号機のサイクル情報が入力された場合には、該信号機が設置された交差点を通過できるか否かを判定し、該交差点を通過できないと判定した場合に、車両の速度と停止線までの距離から、該停止線への到達時間や停止するために必要な減速度などを推定するようにしてもよい。そして、注意喚起判定部104は、停止するために要求される減速すべきタイミングとなっても、減速運転を行っていないドライバーに対して、減速運転を開始するように注意喚起情報を提供するかを判定する。
【0048】
注意喚起判定部104は、ドライバーの運転操作により減速運転を行ったことを判定してもよい。ドライバーの運転操作には、アクセル操作やブレーキ操作が含まれてもよい。また、注意喚起判定部104は、車両の速度などの指標に基づいて、減速運転を行ったことを判定してもよい。注意喚起判定部104は、ドライバーが注意喚起情報を聞いて停止すべきことを判断し、ブレーキ操作により停止できるように、該注意喚起情報の提供を適切なタイミングで提供する。
【0049】
図4は、本実施例に従ったナビゲーションシステム100において、注意喚起情報の提供が禁止される条件(その2)を示す。図4において、横軸は停止線までの距離(D)を示し、縦軸は車速(V)を示す。図4には、注意喚起タイミング線、注意喚起禁止減速度線が示される。また、停止線までの距離と車速により示される注意喚起を禁止する領域を斜線により示す。
【0050】
注意喚起タイミング線は、D=(注意喚起実施判断時間閾値)×Vにより示される。注意喚起実施判断時間は、注意喚起情報を提供するか否かを判断するための時間を示す。
【0051】
注意喚起禁止減速度線は、D=V2/{2×(注意喚起禁止減速度閾値)}により示される。注意喚起禁止減速度線により、注意喚起情報の提供が禁止される場合の速度が示される。
【0052】
注意喚起判定部104は、車両の速度に応じて以下の処理を行う。
(1)車両の速度が、注意喚起禁止減速度線と停止線までの距離情報から求められる速度よりも低い場合(換言すれば、車両の速度が、注意喚起禁止減速度線と停止線までの距離情報から求められる速度未満である場合)
注意喚起判定部104は、認識している停止線までの距離にデータ伝送及び/又はデータ処理に基づいて推定される遅延時間により求められる補正距離を加えた距離を求める。そして、注意喚起判定部104は、該距離と車両の速度により、必要とされる減速度を求める。そして、注意喚起判定部104は、該減速度が所定値以上の場合には注意喚起情報の提供を禁止すると判定し、該減速度が所定値未満の場合には注意喚起情報の提供を行うと判定する。該所定値は注意喚起情報の提供が遅れるか否かに応じて設定される。
(2)車両の速度が、注意喚起禁止減速度線と停止線までの距離情報から求められる速度よりも高い場合(換言すれば、車両の速度が、注意喚起禁止減速度線と停止線までの距離情報から求められる速度以上である場合)
注意喚起判定部104は、停止するために要求される減速すべきタイミングにおけるデータ伝送及び/又はデータ処理に基づいて推定される遅延時間が許容できる時間であるかを判定する。注意喚起判定部104は、許容できる時間であると判定できない場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定し、許容できる時間であると判定できる場合に注意喚起情報の提供を行うと判定する。
【0053】
注意喚起判定部104は、注意喚起情報を提供するかの判定結果をHMI110に入力する。
【0054】
HMI110は、VICSアプリ108と接続される。HMI110は、VICSアプリによる制御により、VICSデータを文字・図形で表示する。HMI110は、ディスプレイを有するようにしてもよいし、該ディスプレイはタッチパネル機能を有していてもよい。また、HMI110は、注意喚起判定部104により入力された注意喚起情報を提供するかの判定結果にしたがって、注意喚起情報を提供すると判定された場合に注意喚起情報を提供する。
【0055】
(運転支援方法)
図5は、本実施例に従った車両用運転支援装置としてのナビゲーションシステムの動作を示す。
【0056】
ナビゲーションシステム100は、光ビーコンを受信する(ステップS502)。光受信回路200は、路側機300により送信される光ビーコンを受信する。
【0057】
ナビゲーションシステム100は、停止すべき位置に関する情報を取得する(ステップS504)。ビーコン受信部106は、光受信回路200により入力された光ビーコン信号から、車両が停止すべき位置に関する情報を取得する。光受信回路200は、ビーコン受信部106に38.4kbps程度の伝送速度で情報を入力する。ビーコン受信部106は、光ビーコン信号の復調・復号を行う。停止すべき位置に関する情報には、停止線までの距離情報、信号機のサイクル情報が含まれる。
【0058】
ナビゲーションシステム100は、停止すべき位置に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する(ステップS506)。注意喚起判定部104は、車両の速度と停止線までの距離から、該停止線への到達時間や停止するために必要な減速度などを推定する。そして、注意喚起判定部104は、停止線に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する。
【0059】
ナビゲーションシステム100は、減速すべきタイミングが経過したかを判定する(ステップS508)。注意喚起判定部104は、ステップS506により推定された減速すべきタイミングが経過したかを判定する。
【0060】
減速すべきタイミングが経過していない場合(ステップS508:NO)、ステップS508に戻る。減速すべきタイミングが経過するまで継続される。
【0061】
減速すべきタイミングが経過した場合(ステップS508:YES)、ナビゲーションシステム100は、減速運転が行われたかを判定する。注意喚起判定部104は、減速すべきタイミングが経過するまでに、ドライバーにより減速運転が行われたかを判定する(ステップS510)。
【0062】
減速運転が行われたと判定された場合(ステップS510:YES)、車両は停止すべき位置に停止すると判定される。そして、ステップS502に戻り、他の路側機300からの情報に基づいて運転支援が行われる。
【0063】
減速運転が行われないと判定された場合(ステップS510:NO)、ナビゲーションシステム100は、注意喚起情報を提供するかを判定する(ステップS512)。
【0064】
注意喚起判定部104は、車両の速度が、注意喚起禁止減速度線と停止線までの距離情報から求められる速度以上であるか未満であるかに応じて、異なる条件により注意喚起情報を提供するかを判定する。
【0065】
車両の速度が注意喚起禁止減速度線と停止線までの距離情報から求められる速度未満である場合には、注意喚起判定部104は、認識している停止線までの距離にデータ伝送及び/又はデータ処理に基づいて推定される遅延時間により求められる補正距離を加えた距離を求める。そして、注意喚起判定部104は、該距離と車両の速度により、必要とされる減速度を求める。そして、注意喚起判定部104は、該減速度が所定値以上の場合には注意喚起情報の提供を禁止すると判定し、該減速度が所定値未満の場合には注意喚起情報の提供を行うと判定する。
【0066】
車両の速度が注意喚起禁止減速度線と停止線までの距離情報から求められる速度以上である場合には、注意喚起判定部104は、停止するために要求される減速すべきタイミングにおけるデータ伝送及び/又はデータ処理に基づいて推定される遅延時間が許容できる時間であるかを判定する。注意喚起判定部104は、許容できる時間であると判定できない場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定し、許容できる時間であると判定できる場合に注意喚起情報の提供を行うと判定する。
【0067】
注意喚起情報を提供しないと判定された場合(ステップS512:NO)、ステップS502に戻る。そして、他の路側機300からの情報に基づいて運転支援が行われる。
【0068】
注意喚起情報を提供すると判定された場合(ステップS512:YES)、ナビゲーションシステム100は、注意喚起情報を提供する(ステップS514)。注意喚起判定部104は、注意喚起情報を提供するという判定結果をHMI110に入力する。
【0069】
HMI110は、注意喚起判定部104による判定結果に従って、注意喚起情報を提供する。例えば、停止すべき位置が近いことを通知するようにしてもよい。
【0070】
本実施例によれば、該注意喚起情報の提供を禁止するか否かを適切に判定できる。減速タイミングが経過し、通常であれば、注意喚起情報を提供するタイミングが遅れるとされる場合であっても、該注意喚起情報の提供を禁止するか否かを適切に判定できる。
【0071】
本実施例によれば、車両の速度に応じて、該車両の速度が所定の閾値以上である場合には、前記減速すべきタイミングが経過した際における遅延時間が許容できる時間以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止する。遅延時間が許容できる時間以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止することにより、データ伝送及び/又はデータ処理に基づいて推定される遅延時間が許容できる時間以上である場合に、注意喚起情報の提供の遅れが生じると判定され、注意喚起情報の提供が禁止される。一方、データ伝送及び/又はデータ処理に基づいて推定される遅延時間が許容できる時間未満である場合に、注意喚起情報の提供の遅れが生じないと判定され、注意喚起情報の提供が行われる。
【0072】
本実施例によれば、車両の速度が所定の閾値未満である場合には、該車両と停止線との間の距離と該車両の速度から、該停止線に停止するために必要な減速度を求め、該減速度が所定値以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定する。該車両と停止線との間の距離にデータ伝送及び/又はデータ処理に基づいて推定される遅延時間により求められる補正距離を加えた距離を求めるようにしてもよい。減速度が所定値以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定することにより、減速度が所定値以上である場合には、注意喚起情報の提供の遅れが生じると判定され、注意喚起情報の提供が禁止される。一方、減速度が所定値未満である場合には、注意喚起情報の提供の遅れが生じない判定され、注意喚起情報の提供が行われる。
【0073】
交通インフラにより提供される情報には、信号機のサイクル情報及び/又は停止線までの距離情報が含まれる。交通インフラにより提供される情報に信号機のサイクル情報及び/又は停止線までの距離情報が含まれることにより、停止すべき位置に関する情報を取得できる。
【0074】
所定の閾値は、注意喚起を禁止する減速度の閾値と停止線までの距離に基づいて決定され、設定される。所定の閾値が注意喚起を禁止する減速度の閾値と停止線までの距離に基づいて決定されることにより、当該ナビゲーションシステムの搭載された車両の速度に基づいて、注意喚起情報を提供するかを判定できる。
【0075】
本実施例によれば、減速運転が行われたことを検出する検出部を有し、注意喚起判定部は、前記検出部において減速運転が行われたことが検出されず、且つ前記タイミング経過判定部により減速すべきタイミングが経過したと判定された場合に、注意喚起情報を提供するかを判定する。減速運転が行われたことが検出されず、且つ減速すべきタイミングが経過したと判定された場合に、注意喚起情報を提供するかを判定することにより、ドライバーに対して減速運転を行うように注意喚起できる。
【0076】
説明の便宜上、発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明されるが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてよい。
【0077】
以上、本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、各実施例は単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウエアで、ソフトウエアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が包含される。
【符号の説明】
【0078】
100 ナビゲーションシステム
102 ナビ位置推定部
104 注意喚起判定部
106 ビーコン受信部
108 VICS(Vehicle Information and Communication System)アプリ
110 HMI(Human Machine Interface)
200 光受信回路
300 路側機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通インフラにより提供される情報に基づいて、運転支援を行う車両用運転支援装置であって、
交通インフラにより提供される情報を受信する受信部と、
該受信部により受信された情報から、当該車両運転支援装置が搭載された車両の停止すべき位置に関する情報を取得する取得部と、
該取得部により取得された車両の停止すべき位置に関する情報に基づいて、該停止すべき位置に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する減速タイミング推定部と、
該減速タイミング推定部により推定された減速すべきタイミングが経過したかを判定するタイミング経過判定部と、
該タイミング経過判定部により減速すべきタイミングが経過したと判定された場合に、注意喚起情報を提供するかを判定する注意喚起判定部と
を有し、
前記注意喚起判定部は、
前記車両の速度に応じて、該車両の速度が所定の閾値以上である場合には、前記減速すべきタイミングが経過した際における遅延時間が許容できる時間以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定し、
該車両の速度が所定の閾値未満である場合には、該車両と停止線との間の距離と該車両の速度から、該停止線に停止するために必要な減速度を求め、該減速度が所定値以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定することを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用運転支援装置において、
交通インフラにより提供される情報には、信号機のサイクル情報及び/又は停止線までの距離情報が含まれることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両用運転支援装置において、
前記所定の閾値は、注意喚起を禁止する減速度の閾値と停止線までの距離に基づいて設定されることを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用運転支援装置において、
減速運転が行われたことを検出する検出部
を有し、
前記注意喚起判定部は、前記検出部において減速運転が行われたことが検出されず、且つ前記タイミング経過判定部により減速すべきタイミングが経過したと判定された場合に、注意喚起情報を提供するかを判定することを特徴とする車両用運転支援装置。
【請求項5】
交通インフラにより提供される情報に基づいて、運転支援を行う車両用運転支援装置における運転支援方法であって、
交通インフラにより提供される情報を受信する受信ステップと、
該受信ステップにより受信された情報から、当該車両運転支援装置が搭載された車両の停止すべき位置に関する情報を取得する取得ステップと、
該取得ステップにより取得された車両の停止すべき位置に関する情報に基づいて、該停止すべき位置に停止するために要求される減速すべきタイミングを推定する減速タイミング推定ステップと、
該減速タイミング推定ステップにより推定された減速すべきタイミングが経過したかを判定するタイミング経過判定ステップと、
該タイミング経過判定ステップにより減速すべきタイミングが経過したと判定された場合に、注意喚起情報を提供するかを判定する注意喚起判定ステップと
を有し、
前記注意喚起判定ステップは、
前記車両の速度に応じて、該車両の速度が所定の閾値以上である場合には、前記減速すべきタイミングが経過した際における遅延時間が許容できる時間以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定し、
該車両の速度が所定の閾値未満である場合には、該車両と停止線との間の距離と該車両の速度から、該停止線に停止するために必要な減速度を求め、該減速度が所定値以上である場合に注意喚起情報の提供を禁止すると判定することを特徴とする運転支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−191625(P2010−191625A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34364(P2009−34364)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】