説明

車両用開閉体の制御装置

【課題】車両用開閉体自体が形状変更可能な構造を有する構成において、該開閉体の制御をより好適に行うことができる車両用開閉体の制御装置を提供する。
【解決手段】CPU11は、バックドアを開閉させる電動モータ5を駆動制御する。バックドアは、それ自体が形状変更可能な構造を有する。CPU11は、バックドア自体の形状変更に応じて検出された重量情報に基づいて制御態様を変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用開閉体の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車などの車両用開閉体の制御装置として、該開閉体がどのような使用環境にあるかを適宜のセンサにて検出するとともに、その検出結果に応じて開閉に係る駆動力などを補正制御するものが知られている。
【0003】
すなわち、例えば特許文献1では、車両用開閉体としてのバックドアにおいて、その作動に係るガスダンパの使用環境及び温度を検出するセンサを搭載し、その検出結果に応じて駆動力を補正制御している。
【0004】
また、特許文献2では、車両用開閉体としてのバックドアにおいて、停車状態を検出する傾斜センサを搭載し、その検出結果に応じて駆動力を補正制御している。
【特許文献1】特開2005−336772号公報
【特許文献2】特開2002−364249号公報
【特許文献3】特開2002−67697号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、これらの従来技術は、車両用開閉体の使用環境の検出結果に応じて制御態様を変更するものである。一方、車両用開閉体としては、その利便性等を考慮して該開閉体自体が形状変更可能なものが提案されている。例えば特許文献3では、車両用開閉体としてのバックドアの中間部位を屈曲可能な構造にすることで、該バックドアを狭小な空間内で効率的に開閉することが提案されている。このように車両用開閉体自体が形状変更する場合、車両用開閉体自体の重心の位置が変化する。このため、従来のように実質的に剛体と見なした車両用開閉体の制御と同じ制御では、バランスを保ちながら車両用開閉を作動させることが困難となり得る。
【0006】
本発明の目的は、車両用開閉体自体が形状変更可能な構造を有する構成において、該開閉体の制御をより好適に行うことができる車両用開閉体の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、車両用開閉体を開閉させる駆動部材を駆動制御する車両用開閉体の制御装置において、前記車両用開閉体は、それ自体が形状変更可能な構造を有し、前記車両用開閉体自体の形状変更に応じた該車両用開閉体の重量情報を検出する検出手段と、前記検出された重量情報に応じて制御態様を変更する変更手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の車両用開閉体の制御装置において、前記車両用開閉体は、該車両用開閉体に組み込まれた開閉部材の作動に伴ってそれ自体が形状変更することを要旨とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の車両用開閉体の制御装置において、前記検出手段は、前記開閉部材の開閉位置を検出することを要旨とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の車両用開閉体の制御装置において、前記車両用開閉体は、屈曲又は伸縮による外形の変化に伴ってそれ自体が形状変更することを要旨とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の車両用開閉体の制御装置において、前記検出手段は、前記車両用開閉体の外形の変化を検出することを要旨とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の車両用開閉体の制御装置において、前記車両用開閉体は、該車両用開閉体に着脱自在な付属部材の存否によってそれ自体が形状変更することを要旨とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の車両用開閉体の制御装置において、前記検出手段は、前記付属部材の存否を検出することを要旨とする。
請求項8に記載の発明は、請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両用開閉体の制御装置において、前記変更手段は、前記駆動部材の駆動力の制御態様を変更することを要旨とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、2、4又は6に記載の発明では、前記車両用開閉体自体の形状変更によってその重心の位置が変化しても、前記検出手段の重量情報によりその重心の位置を検出することができる。このため、その重量情報を用いて実質的に形状変更していない(剛体と見なした)車両用開閉体の作動と同様に、バランスを保ちながら車両用開閉体を作動させることができる。このような発明であれば、車両用開閉体自体の形状変更によってその重心の位置を変化させる車両用開閉体を制御することができ、また、従来のように実質的に形状変更していない(剛体と見なした)車両用開閉体も(重心の位置が変わらないため)制御することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明では、前記検出手段は、前記開閉部材の開閉位置を検出することで、該開閉位置に応じて変動する前記車両用開閉体の重心位置をその重量情報として検出することができる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、前記検出手段は、前記車両用開閉体の外形の変化を検出することで、該外形の変化に応じて変動する前記車両用開閉体の重心位置をその重量情報として検出することができる。
【0015】
請求項7に記載の発明では、前記検出手段は、前記付属部材の存否を検出することで、該付属部材の存否に応じて変動する前記車両用開閉体の総重量又は重心位置をその重量情報として検出することができる。
【0016】
請求項8に記載の発明では、前記変更手段により、前記検出された重量情報に応じて前記駆動部材の駆動力の制御態様が変更される。従って、例えば前記検出された重量情報が、前記車両用開閉体の開閉のためにより大きな前記駆動部材の駆動力を必要としている状態を表している場合に、これに対応して前記駆動部材の駆動力が大きくなるような制御態様の変更を行うことで、前記駆動部材の駆動制御をより好適に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1及び図2は、車両用開閉体としてのバックドア(テールゲート)1及びその周辺構造を概略的に示す側面図である。同図に示されるように、車両2の後部には、バックドア1がドアヒンジ3を介して開閉自在に取着されるとともに、該バックドア1は、ガスダンパ4によって支持される。なお、バックドア1は、車両2の上縁に設置された前記ドアヒンジ3を中心に上方に押し上げられる態様で開放されるもので、ガスダンパ4は、そのガス反力にてこのときのバックドア1の押し上げを助勢する。
【0018】
また、車両2の後部には、駆動部材としての電動モータ5が設置されるとともに、該電動モータ5の回転軸は、減速機構6を介して長尺状のアーム部材7に駆動連結される。さらに、アーム部材7の先端は、棒状のロッド8の一端に回転自在に連結されるとともに、該ロッド8の他端は、前記バックドア1に回転自在に連結される。従って、前記電動モータ5(回転軸)を回転させると、該電動モータ5の回転が減速機構6を介して減速されてアーム部材7に伝達され、該アーム部材7の回動に伴いロッド8が押し引きされることで前記バックドア1が開方向又は閉方向に駆動される。そして、バックドア1は、完全に閉鎖状態となる全閉位置(図1参照)から、最大限の開放状態となる全開位置(図2参照)までの間を移動する。
【0019】
さらに、前記バックドア1には、開閉部材としての窓ガラス31が組み込まれるとともに、該窓ガラス31と適宜の動力伝達機構(例えばXアーム式レギュレータ)を介して連結された窓用モータ32が組み込まれている。なお、窓用モータ32は、その回転が動力伝達機構を介して上下方向の運動に変換されることで、前記窓ガラス31を上下方向に摺動させる態様で開閉させる。図1に示したように、窓ガラス31の開放量(開度)の増大に伴い該窓ガラス31がバックドア1の先端側(下側)に移動すると、該バックドア1の重心位置は、該先端側に移動する。つまり、前記バックドア1は、それ自体の形状変化を伴う窓ガラス31の開閉位置に応じてその重心位置が変動するようになっている。そして、前記ドアヒンジ3からバックドア1の重心位置までの距離が、窓ガラス31の開閉位置に応じて変動することで、該バックドア1を開閉させる際の前記ドアヒンジ3を中心とする力のモーメント、即ち該バックドア1を開閉させるために前記電動モータ5の要する駆動力(操作力)が変化する。
【0020】
次に、バックドア1の開閉等の制御に係る制御装置10の電気的な構成について説明する。図3は、車両2に設置される制御装置10及びその周辺構造の電気的構成を示すブロック図である。同図に示されるように、制御装置10は、CPU(中央処理装置)11と、該CPU11に電気的に接続された入力回路12,13,16及び駆動回路14,17とを備えて構成されている。なお、CPU11は、その演算処理に係る各種制御プログラムを格納するROM、各種データ(演算処理結果等)を一時記憶するRAM、タイマ等の機能を一体的に有するものである。このCPU11には、バッテリのバッテリ電圧+Bを電源回路15を介して所定電圧(例えば5V)に変換した電源電圧が供給されている。
【0021】
CPU11は、入力回路12を介してバッテリ電圧+Bを入力するとともに、該バッテリ電圧+Bに基づいてバッテリの実際の電圧Vを検出する。また、CPU11は、入力回路12を介して車外操作スイッチ21に接続されるとともに、該車外操作スイッチ21からの信号に基づいて前記バックドア1の車外側からの開閉操作の有無を検出する。さらに、CPU11は、入力回路12を介して室内操作スイッチ22に接続されるとともに、該室内操作スイッチ22からの信号に基づいて前記バックドア1の室内側からの開閉操作の有無を検出する。また、CPU11は、入力回路12を介して窓操作スイッチ33に接続されるとともに、該窓操作スイッチ33からの信号に基づいて前記窓ガラス31の開閉操作の有無を検出する。
【0022】
さらにまた、CPU11は、入力回路13を介してパルスセンサ23に接続されるとともに、該パルスセンサ23からのパルス信号に基づいて前記電動モータ5の回転角度及び回転速度N等を検出する。すなわち、このパルスセンサ23は、電動モータ5により回転駆動される環状の磁石の、所定角度ごとに極性(N極、S極)の切り替わる外周面に対向配置される一対のホール素子を備えるとともに、該磁石即ち電動モータ5の所定角度ごとの回転の都度にこれらホール素子から互いに位相の異なるパルス信号を出力する。従って、CPU11は、例えばいずれか一方のパルス信号の立ち上がりエッジ(又は立ち下がりエッジ)をカウントすることで電動モータ5の回転角度を検出するとともに、該立ち上がりエッジ(又は立ち下がりエッジ)の時間間隔に基づいて電動モータ5の回転速度Nを検出し、更に両パルス信号の位相差に基づいて該電動モータ5の回転方向(正転又は逆転)を検出する。なお、電動モータ5の回転角度、回転速度N及び回転方向は、基本的に前記バックドア1の開閉位置、開閉速度及び開閉方向とそれぞれ一対一で対応(同期)することはいうまでもない。
【0023】
また、CPU11は、入力回路16を介して検出手段としてのパルスセンサ34に接続されるとともに、該パルスセンサ34からのパルス信号に基づいて前記窓用モータ32の回転角度等を検出する。すなわち、このパルスセンサ23は、窓用モータ32により回転駆動される環状の磁石の、所定角度ごとに極性(N極、S極)の切り替わる外周面に対向配置される一対のホール素子を備えるとともに、該磁石即ち窓用モータ32の所定角度ごとの回転の都度にこれらホール素子から互いに位相の異なるパルス信号を出力する。従って、CPU11は、例えばいずれか一方のパルス信号の立ち上がりエッジ(又は立ち下がりエッジ)をカウントすることで窓用モータ32の回転角度を検出するとともに、両パルス信号の位相差に基づいて該窓用モータ32の回転方向(正転又は逆転)を検出する。なお、窓用モータ32の回転角度及び回転方向は、基本的に前記窓ガラス31の開閉位置及び開閉方向とそれぞれ一対一で対応(同期)することはいうまでもない。従って、窓用モータ32の回転角度が検出されることで、窓ガラス31の開閉位置即ち前記バックドア1の重量情報としての重心位置が検出される。
【0024】
前記駆動回路14には、バッテリのバッテリ電圧+Bが供給されるとともに、前記電動モータ5が接続される。駆動回路14は、CPU11からの出力デューティ値DUTYに基づいて、電動モータ5に供給されるバッテリ電圧+Bの極性を切り替えるとともに、該バッテリ電圧+Bを供給/非供給とするオン/オフの比率(デューティ比)を変化させる。つまり、電動モータ5は、CPU11からの出力デューティ値DUTYに基づき、供給されるバッテリ電圧+Bの極性が制御されることでその回転方向(正転又は逆転)が制御されるとともに、デューティ比が制御(いわゆるPWM制御)されることで、供給される平均的な電圧即ち回転速度Nが制御される。
【0025】
前記駆動回路17には、バッテリのバッテリ電圧+Bが供給されるとともに、前記窓用モータ32が接続される。駆動回路17は、CPU11からの駆動信号に基づいて、窓用モータ32に供給されるバッテリ電圧+Bの極性を切り替えるとともに、該バッテリ電圧+Bを供給/非供給とするオン/オフの比率(デューティ比)を変化させる。つまり、窓用モータ32は、CPU11からの駆動信号に基づき、供給されるバッテリ電圧+Bの極性が制御されることでその回転方向(正転又は逆転)が制御されるとともに、デューティ比が制御(いわゆるPWM制御)されることで、供給される平均的な電圧即ち回転速度が制御される。
【0026】
なお、本実施形態では、電動モータ5の回転角度(バックドア1の開閉位置)に対応して、目標回転速度Ntが予め設定されており、CPU11は、前記検出された回転速度Nが該目標回転速度Ntに一致するように出力デューティ値DUTYを制御(フィードバック制御)する。このとき、CPU11は、前記検出された窓ガラス31の開閉位置、即ちバックドア1の重心位置に応じて、必要な駆動力を確保すべく、前記出力デューティ値DUTYを補正する。つまり、CPU11は、窓ガラス31の開閉位置に応じて、電動モータ5の速度制御態様(目標回転速度Ntに対する回転速度Nの制御態様)を変更する。
【0027】
具体的には、CPU11は、前記検出された窓ガラス31の開閉位置が全閉位置から所定の半開位置までの間にあるときにはそのときの出力デューティ値DUTYが、一方、該検出された窓ガラス31の開閉位置が上記所定の半開位置から全開位置までの間にあるときには、必要な駆動力を確保すべく、そのときの出力デューティ値DUTYを増大した値がそれぞれ設定されるように、該出力デューティ値DUTYを選択的に補正する。これにより、前記バックドア1の重心位置の変化に対応して該バックドア1を開閉させるための電動モータ5の駆動力が好適に確保される。
【0028】
次に、CPU11によるバックドア1の開閉駆動態様について説明する。図4は、前記バックドア1の開作動時における電動モータ5のフィードバック制御態様を示すフローチャートである。この処理は、前記車外操作スイッチ21又は室内操作スイッチ22からの信号に基づき前記バックドア1の開操作が検出されて、該バックドア1が開作動を開始していることを条件に、電動モータ5が駆動停止されるまでの間で所定時間ごとの定時割り込みにより繰り返し実行される。
【0029】
処理がこのルーチンに移行すると、CPU11は、S(ステップ)1において、各種データの入力処理を実行する。そして、CPU11は、S2において、前記検出された窓ガラス31の開閉位置が閉側(全閉位置から所定の半開位置までの間)にあるか開側(所定の半開位置から全開位置までの間)にあるかを判断する。
【0030】
そして、窓ガラス31の開閉位置が閉側にあると判断されると、CPU11は、S3において、電動モータ5の回転速度Nを目標回転速度Ntに一致させるべく算出された出力デューティ値DUTYをそのまま設定して該電動モータ5を回転駆動する、「制御1」の作動を実行する。一方、窓ガラス31の開閉位置が開側にあると判断されると、CPU11は、必要な駆動力を確保すべく、S4において、上記出力デューティ値DUTYを増大した値を設定して前記電動モータ5を回転駆動する、「制御2」の作動を実行する。そして、S3、4のいずれかの処理を行ったCPU11は、その後の処理を一旦終了する。なお、CPU11によるS2での判断に応じたS3又はS4の処理が、変更手段に相当する。
【0031】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、バックドア1自体の形状変更によってその重心の位置が変化しても、パルスセンサ34の重量情報(窓ガラス31の開閉位置)によりその重心の位置を検出することができる。このため、その重量情報を用いて実質的に形状変更していない(剛体と見なした)バックドアの作動と同様に、バランスを保ちながらバックドア1を作動させることができる。このような発明であれば、バックドア1自体の形状変更によってその重心の位置を変化させるバックドア1を制御することができ、また、従来のように実質的に形状変更していない(剛体と見なした)バックドアも(重心の位置が変わらないため)制御することができる。
【0032】
(2)本実施形態では、パルスセンサ34により窓ガラス31の開閉位置を検出することで、該開閉位置に応じて変動するバックドア1の重心位置をその重量情報として検出することができる。
【0033】
(3)本実施形態では、バックドア1自体の形状変更に応じた制御(開閉制御)を行うことで、信頼性の高い制御を行うことができる。
(第2の実施形態)
以下、本発明を具体化した第2の実施形態を図面に従って説明する。なお、第2の実施形態は、第1の実施形態のバックドア1に組み込まれる開閉部材の構造を変更した構成であるため、同様の構成については同一の符号を付してその説明を一部省略する。
【0034】
図5は、本実施形態のバックドア1及びその周辺構造を概略的に示す側面図である。なお、図5では、便宜的にガスダンパ4及びロッド8を割愛して図示している。同図に示されるように、前記バックドア1には、開閉部材としてのガラスハッチ41が組み込まれている。このガラスハッチ41は、ヒンジピン42を介してバックドア1の主要部分をなすバックドア本体43に対し開閉自在に取着されるとともに、ガスダンパ44によって支持される。
【0035】
また、ガラスハッチ41の下端部には、ストライカ46が設置されるとともに、バックドア本体43には、ストライカ46に対向してロック装置47が設置されている。ガラスハッチ41は、その閉作動に際しストライカ46及びロック装置47が係合することで全閉位置に保持されるとともに、これらストライカ46及びロック装置47の係合が解除されることでガスダンパ44のガス反力にて全開位置まで押し上げられる。このとき、ガラスハッチ41は、バックドア本体43の上縁に設置された前記ヒンジピン42を中心に上方に押し上げられる態様で開放される。つまり、ガラスハッチ41は、ストライカ46及びロック装置47が係合状態にあるときに全閉位置に配置され、ストライカ46及びロック装置47の係合が解除される非係合状態にあるときに全開位置に配置される。
【0036】
なお、バックドア本体43には、ロック装置47のストライカ46との係合・非係合状態を検出する検出手段としてのロックスイッチ48が設置されている。従って、このロックスイッチ48により、ガラスハッチ41が全閉位置又は全開位置に配置されていることが検出される。ガラスハッチ41の開閉位置(全閉位置又は全開位置)に応じて、前記バックドア1の重心位置が移動することはいうまでもない。つまり、前記バックドア1は、それ自体の形状変化を伴うガラスハッチ41の開閉位置に応じてその重心位置が変動するようになっている。従って、ストライカ46及びロック装置47の係合・非係合状態が検出されることで、ガラスハッチ41の開閉位置即ち前記バックドア1の重量情報としての重心位置が検出される。そして、前記バックドア1の重心位置が、ガラスハッチ41の開閉位置に応じて変動することで、該バックドア1を開閉させる際の前記ドアヒンジ3を中心とする力のモーメント、即ち該バックドア1を開閉させるために前記電動モータ5の要する駆動力が変化する。加えて、前記バックドア1のドア剛性が変化する。
【0037】
次に、バックドア1の開閉等の制御に係る制御装置10の電気的な構成について説明する。図6は、本実施形態の制御装置10及びその周辺構造の電気的構成を示すブロック図である。同図に示されるように、CPU11は、入力回路12を介して前記ロックスイッチ48に接続されるとともに、該ロックスイッチ48からの信号に基づいてストライカ46及びロック装置47の係合・非係合状態、即ちガラスハッチ41の開閉位置(全閉位置又は全開位置)を検出する。
【0038】
そして、CPU11は、前述の出力デューティ値DUTYの制御(フィードバック制御)に際し、前記検出されたガラスハッチ41の開閉位置、即ちバックドア1の重心位置に応じて、必要な駆動力を確保すべく、前記出力デューティ値DUTYを補正する。つまり、CPU11は、ガラスハッチ41の開閉位置に応じて、電動モータ5の速度制御態様(目標回転速度Ntに対する回転速度Nの制御態様)を変更する。
【0039】
次に、CPU11によるバックドア1の開閉駆動態様について説明する。図7は、前記バックドア1の開作動時における電動モータ5のフィードバック制御態様を示すフローチャートである。この処理は、前記車外操作スイッチ21又は室内操作スイッチ22からの信号に基づき前記バックドア1の開操作が検出されて、該バックドア1が開作動を開始していることを条件に、電動モータ5が駆動停止されるまでの間で所定時間ごとの定時割り込みにより繰り返し実行される。
【0040】
処理がこのルーチンに移行すると、CPU11は、S11において、各種データの入力処理を実行する。そして、CPU11は、S12において、前記検出されたガラスハッチ41の開閉位置が全閉位置にあるか全開位置にあるかを判断する。
【0041】
そして、ガラスハッチ41の開閉位置が全閉位置にあると判断されると、CPU11は、S13において、電動モータ5の回転速度Nを目標回転速度Ntに一致させるべく算出された出力デューティ値DUTYを第1の態様で補正した値を設定して、そのときの重心位置に対応して必要な駆動力が確保されるように前記電動モータ5を回転駆動する、「制御1」の作動を実行する。一方、ガラスハッチ41の開閉位置が全開位置にあると判断されると、CPU11は、S14において、上記出力デューティ値DUTYを第2の態様で補正した値を設定して、そのときの重心位置に対応して必要な駆動力が確保されるように前記電動モータ5を回転駆動する、「制御2」の作動を実行する。そして、S13、14のいずれかの処理を行ったCPU11は、その後の処理を一旦終了する。なお、CPU11によるS12での判断に応じたS13又はS14の処理が、変更手段に相当する。
【0042】
以上詳述したように、本実施形態によれば、前記第1の実施形態と同様の効果が得られるようになる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0043】
・前記第1の実施形態において、窓ガラス31を開閉駆動する際に窓用モータ32に供給した電流又は電圧に基づいて、バックドア1の重量情報(重心位置)を検出してもよい。
【0044】
・前記第1の実施形態において、窓ガラス31の開閉位置が全閉位置又は全開位置にあることを検出するセンサ(開閉認識スイッチ)を備える場合には、当該センサによりバックドア1の重量情報(重心位置)を検出してもよい。
【0045】
・前記第1の実施形態においては、窓ガラス31の開閉位置が閉側にあるか開側にあるかの二者択一で電動モータ5の制御態様(速度制御態様)を変更する構成を採用したが、全閉位置及び全開位置の間でリニアに検出された窓ガラス31の開閉位置に応じて、3種類以上に段階的に電動モータ5の制御態様を変更する構成を採用してもよい。
【0046】
・前記第1の実施形態において、バックドア1に対して昇降する風切り用のスポイラやバックミラー等の部材及びその昇降位置を検出する検出部材(パルスセンサ等)を備える場合には、検出された各部材の昇降位置に応じて、電動モータ5の制御態様を変更する構成を採用してもよい。
【0047】
・前記第2の実施形態において、ガラスハッチ41の開閉位置が全閉位置又は全開位置にあることを検出するセンサ(接触スイッチ、開閉認識スイッチ)を備える場合には、当該センサによりバックドア1の重量情報(重心位置)を検出してもよい。
【0048】
・前記第2の実施形態において、ロック装置47を作動させる適宜の電動モータ(リリースモータ、クローザモータ)を備えていてもよい。
・前記各実施形態においては、検出されたバックドア1の重心位置に応じて、電動モータ5の速度制御に係る出力デューティ値DUTY、即ち電動モータ5に供給される平均的な電圧を補正する構成を採用したが、例えば電動モータ5に供給される電流を補正する構成を採用してもよい。
【0049】
・前記各実施形態においては、検出されたバックドア1の重心位置に応じて、電動モータ5の速度制御態様(バックドア1の速度制御態様)を変更する構成を採用したが、例えば電動モータ5の加速度制御態様(バックドア1の加速度制御態様)を変更する構成を採用してもよい。
【0050】
・前記各実施形態においては、検出されたバックドア1の重心位置に応じて、電動モータ5の速度制御態様を変更する構成を採用したが、例えば回転速度N又は回転速度Nに基づく適宜の値(加速度等)によりバックドア1の挟み込みを検出する挟み込み検出手段を備える場合には、検出されたバックドア1の重心位置に応じて、当該手段による挟み込みの検出態様を変更する構成を採用してもよい。具体的には、挟み込みの検出に係る回転速度N等や、これと大小比較される適宜の挟み込み判定閾値を補正する。なお、挟み込み検出手段は、例えばバックドア1の開作動において車両2の後方に障害物や人など存在する場合、若しくはバックドア1の閉作動において該バックドア1と車両2後部との間に荷物や人などが存在する場合に異物の挟み込みを検出する。
【0051】
また、電動モータ5の起動直後等、回転速度Nの不安定な状態において、挟み込み検出手段による挟み込み検出を禁止する禁止手段を備える場合には、検出されたバックドア1の重心位置に応じて、当該手段による挟み込み検出の禁止態様を変更する構成を採用してもよい。具体的には、挟み込み検出の禁止を解除するタイミング(電動モータ5の起動開始からの経過時間等)を補正する。
【0052】
・前記各実施形態において、電動モータ5の回転速度Nを、例えばポテンショメータなどで検出してもよい。
・前記各実施形態において、電動モータ5の回転軸と減速機構6又はアーム部材7との間の動力伝達を接続・非接続とし得るクラッチを設けてもよい。この場合、バックドア1を手動で開閉操作する場合には上記動力伝達を非接続とすることで、円滑な操作が実現される。
【0053】
・前記各実施形態において、電動モータ5のフィードバック制御にあたっては、バッテリ電圧+Bの実際の電圧Vを考慮して出力デューティ値DUTYを調整することが好ましい。
【0054】
・前記実施形態において、電動モータ5のフィードバック制御にあたっては、回転速度N及び目標回転速度Ntのずれ量の大きさに応じて出力デューティ値DUTYの調整幅を変更してもよい。
【0055】
・前記各実施形態においては、回転速度Nが目標回転速度Ntとなるように電動モータ5を駆動制御(フィードバック制御)する構成として説明したが、該回転速度Nに基づくバックドア1の開閉速度が目標回転速度Ntに対応するバックドア1の目標開閉速度となるように電動モータ5を駆動制御する構成としてもよい。また、バックドア1の開閉速度を直に検出する適宜のセンサを備える場合には、当該センサにより検出されたバックドア1の開閉速度が目標回転速度Ntに対応するバックドア1の目標開閉速度となるように電動モータ5を駆動制御する構成としてもよい。
【0056】
・前記各実施形態において、前記バックドア1の閉作動時における電動モータ5を駆動制御(フィードバック制御)に、本発明を適用してもよい。
・前記各実施形態において、検出されたバックドア1の重量情報に応じて、適宜の制御方式を変更する構成を採用してもよい。例えば各種報知等に係る音装置(ブザー)の発声パターンや光装置(ハザードランプ)の点滅パターンを変更したり、バックドア1の開閉許可態様を変更したりする構成を採用してもよい。また、バックドア1の開閉に関連性を有する適宜の制御装置を備える場合には、当該制御装置の制御態様を変更する構成を採用してもよい。
【0057】
・本発明に係る車両用開閉体としては、横開きのバックドア、車両側部に設けられる乗降ドア(スウィングドア、スライドドア)、トランクリッド、サンルーフ、ヴァリオルーフ(電動メタルトップオープン等)、窓ガラス等への適用が可能である。
【0058】
また、例えば車両側部に設けられる車両用開閉体としてのスライドドアにおいて、電動式の開閉部材としてのスウィングドアが組み込まれた構成を採用してもよい。あるいは、車両後部に設けられる車両用開閉体としてのバックドアにおいて、電動式の開閉部材としてのスライドドアが組み込まれた構成を採用してもよい。
【0059】
これらの各場合に、車両用開閉体の重量情報を、対応する開閉部材の開閉位置を検出するセンサ(パルスセンサ、開閉認識スイッチ)、該開閉部材の開閉駆動に係る電動モータに供給した電流又は電圧に基づいて検出してもよい。あるいは、圧電素子や電気抵抗等の接触センサ、接触スイッチ、作動トリガ(メカ、電気信号、命令)、状態認識スイッチ、クローザ信号、ラッチ信号、物体検知用の超音波センサ等により検出してもよい。
【0060】
さらに、車両用開閉体に組み込まれた開閉部材は、該車両用開閉体に適宜の着脱機構(ロック装置等)を介して着脱自在な付属部材であってもよい。この場合、車両用開閉体の重量情報(総重量又は重心位置)を、接触スイッチ、クローザ信号、ラッチ信号等により検出してもよい。
【0061】
・本発明に係る車両用開閉体としては、屈曲又は伸縮による外形の変化に伴ってそれ自体が形状変更するものであってもよい。このような車両用開閉体では、その重心位置が変動することで、該車両用開閉体を開閉させるために要する駆動力(操作力)及び開閉時の脈動が変化する。加えて、前記バックドア1のドア剛性が変化する。
【0062】
これらの各場合に、車両用開閉体の重量情報(重心位置)を、対応する外形の変化を検出するセンサ(パルスセンサ、開閉認識スイッチ)、該外形の変化に係る電動モータに供給した電流又は電圧に基づいて検出してもよい。あるいは、圧電素子や電気抵抗等の接触センサ、接触スイッチ、作動トリガ(メカ、電気信号、命令)、状態認識スイッチ、クローザ信号、ラッチ信号、物体検知用の超音波センサ、加速度センサ、物体検知用の光センサ(赤外線センサ)、歪みゲージ、体積変化検知用の流量センサ(例えば、水などの液体)、温度センサ、撓みゲージ、重量検知用歪みゲージ等により検出してもよい。
【0063】
・本発明に係る車両用開閉体としては、該車両用開閉体に適宜の着脱機構(ロック装置等)を介して着脱自在な付属部材の存否(取付け・取外し、分裂・合体)による外形の変化(体積変化)に伴ってそれ自体が形状変更するものであってもよい。
【0064】
この場合、車両用開閉体の重量情報(総重量又は重心位置)を、対応する付属部材の存否を検出するセンサ(開閉認識スイッチ)、圧電素子や電気抵抗等の接触センサ、接触スイッチ、作動トリガ(メカ、電気信号、命令)、クローザ信号、ラッチ信号、物体検知用の超音波センサ、物体検知用の光センサ(赤外線センサ)等により検出してもよい。
【0065】
・前記各実施形態において、目標回転速度Nt又は作動方向(電動モータの回転方向)を変更してもよい。
・前記各実施形態においては、車両用開閉体の制御装置にて、重心位置を変化させる部材の制御を行っているが、重心位置を変化させる部材に関しては、全く別の制御装置が制御を行ってもよい。また、制御装置に構成される重心位置の変化の認識を、車両用開閉体の制御装置が直接又は間接的(通信等)により検出してもよい。
【0066】
・車両用開閉体の重心を変化させる部材が複数ある場合においても、これらの複数の部材の重心情報を取得し、組み合わせることにより、制御装置の制御態様を変更する構成を採用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す側面図。
【図2】同実施形態を示す側面図。
【図3】同実施形態の電気的構成を示すブロック図。
【図4】同実施形態の制御態様を示すフローチャート。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す側面図。
【図6】同実施形態の電気的構成を示すブロック図。
【図7】同実施形態の制御態様を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0068】
1…車両用開閉体としてのバックドア、5…駆動部材としての電動モータ、10…制御装置、11…CPU、12,13…入力回路、14…駆動回路、31…開閉部材としての窓ガラス、32…窓用モータ、34…検出手段としてのパルスセンサ、41…開閉部材としてのガラスハッチ、46…ストライカ、47…ロック装置、48…検出手段としてのロックスイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用開閉体を開閉させる駆動部材を駆動制御する車両用開閉体の制御装置において、
前記車両用開閉体は、それ自体が形状変更可能な構造を有し、
前記車両用開閉体自体の形状変更に応じた該車両用開閉体の重量情報を検出する検出手段と、
前記検出された重量情報に応じて制御態様を変更する変更手段とを備えたことを特徴とする車両用開閉体の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用開閉体の制御装置において、
前記車両用開閉体は、該車両用開閉体に組み込まれた開閉部材の作動に伴ってそれ自体が形状変更することを特徴とする車両用開閉体の制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用開閉体の制御装置において、
前記検出手段は、前記開閉部材の開閉位置を検出することを特徴とする車両用開閉体の制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用開閉体の制御装置において、
前記車両用開閉体は、屈曲又は伸縮による外形の変化に伴ってそれ自体が形状変更することを特徴とする車両用開閉体の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用開閉体の制御装置において、
前記検出手段は、前記車両用開閉体の外形の変化を検出することを特徴とする車両用開閉体の制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の車両用開閉体の制御装置において、
前記車両用開閉体は、該車両用開閉体に着脱自在な付属部材の存否によってそれ自体が形状変更することを特徴とする車両用開閉体の制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両用開閉体の制御装置において、
前記検出手段は、前記付属部材の存否を検出することを特徴とする車両用開閉体の制御装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の車両用開閉体の制御装置において、
前記変更手段は、前記駆動部材の駆動力の制御態様を変更することを特徴とする車両用開閉体の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−7952(P2008−7952A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−176392(P2006−176392)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】