説明

車両用防振装置

【課題】懸架装置から車体へ伝達されるタイヤ振動をより効果的に抑制する。
【解決手段】タイヤ振動を受けるサスペンションメンバ11に設けられるとともにサスペンションメンバ11の振動を検出する振動検出部5と、サスペンションメンバに設けられるとともにサスペンションメンバ11に振動を付与する加振ユニット4と、振動検出部5からの検出信号を入力するとともに、振動検出部5で検出された振動を相殺する相殺振動を加振ユニット4が励起するように加振ユニット4に振動駆動信号を出力する制御ユニットとが備えられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸架装置を介して車体へ伝達されるタイヤ振動を抑制する車両用防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
懸架装置は、路面との回転接触等によるタイヤ振動を受けるサスペンションメンバと、当該サスペンションメンバに少なくとも部分的に取り付けられる振動調整部材(ショックアブソーバ、バネ、ゴムなど)とを含んでおり、車体を懸架している。サスペンションメンバは一種のサブフレームであり、振動調整部材を中核構成要素とする機構を取り付けるベースとなる。振動調整部材は振動特性を変更(減衰など)することで不都合な振動が車体に伝達するのを抑制する機能を有する。
【0003】
このような懸架装置を介して車体へ伝達されるタイヤ振動を抑制する車両用防振装置として、振動調整部材による振動抑制だけでなく、より積極的に振動抑制しようとする技術が特許文献1に記載されている。この公知技術は、アクティブノイズキャンセラの原理を採用しており、加振手段としてのアクチュエータと、ショックアブソーバのロッドの軸方向における振動を検出する振動センサと、車室内の音を検出するマイクロフォンと、駆動信号生成部とを備えている。アクチュエータはショックアブソーバを含む懸架機構であるサスペンションサポートに備えられている。駆動信号生成部は振動センサとマイクロフォンからの信号に基づきアクチュエータを駆動制御するための駆動信号を生成する。駆動信号生成部は、アクチュエータの駆動によりショックアブソーバのロッドの所定周波数域の軸方向振動を打ち消す波形の振動(逆位相で同振幅の振動)をロッドに付与するような駆動信号をアクチュエータに与える。この駆動信号により、アクチュエータの可動子が駆動制御されて、ショックアブソーバのロッドの所定周波数域での軸方向振動を打ち消すような振動が該ロッドに付与される。これにより、タイヤからロッドに伝達されるロッドの軸方向における所定周波数域の振動を低減することができる。その結果、この振動に起因する車室内の騒音を低減することができる。
この公知技術では、サスペンションにおける振動調整部材の1つであるショックアブソーバの軸方向振動を打ち消すことでタイヤからロッドに伝達される振動を低減している。タイヤで生じるタイヤ振動を受けて、直接的又は振動調整部材を介して間接的に車体に伝達するサスペンションメンバは、実質的には車体に向かうタイヤ振動の最初の伝達媒体となるので、その振動低減は重要である。しかしながら、この公知技術ではサスペンションメンバ自体の振動低減は考慮されていない。
【0004】
サスペンションメンバの振動低減に関しては、特許文献2に、サイドメンバの段差部付近に取り付けられているサスペンションマウンティングブラケットの下端に、サスペンションメンバが、ゴム製の防振ラバーであるサスペンションインシュレータを介して連結されている技術が記載されている。しかしながら、防振ラバーのような弾性部材を介しての振動抑制には限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007‐15471号公報(段落番号〔0029−0037〕、図1、図7)
【特許文献2】特開平9‐193838号公報(段落番号〔0002−0004〕、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記実情から、タイヤ振動を受けるサスペンションメンバと、当該サスペンションメンバに取り付けられる振動調整部材とを含む懸架装置から当該懸架装置を介して車体へ伝達される振動をより効果的に抑制する技術が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
タイヤ振動を受けるサスペンションメンバと、当該サスペンションメンバに取り付けられる振動調整部材とを含む懸架装置から当該懸架装置を介してタイヤに支持されている車体に伝達される振動を抑制する車両用防振装置であって、本発明の特徴は、前記サスペンションメンバに設けられるとともに前記サスペンションメンバの振動を検出する振動検出部と、前記サスペンションメンバに設けられるとともに前記サスペンションメンバに振動を付与する加振ユニットと、前記振動検出部からの検出信号を入力するとともに、前記振動検出部で検出された振動を相殺する相殺振動を前記加振ユニットが励起するように前記加振ユニットに振動駆動信号を出力する制御ユニットとを備える点にある。
【0008】
この構成によると、懸架装置を経て車体に入る振動を、その振動が実質的にショックアブソーバやスプリングなどの振動調整部材より振動伝達経路に関して上流側に位置するサスペンションメンバのところで抑制することができる。タイヤ振動等の基本的な振動をその発生元に近い位置で抑制し、その抑制された振動を振動調整部材によって適正に調整する。これによって車体に伝わる振動が低減され、結果的に車内の不快な騒音が効果的に低減することができる。
【0009】
自動車などでは種々のタイプの懸架装置が用いられるので、タイプ毎にサスペンションメンバの形状特性も異なる。従って、サスペンションメンバにおける振動検出部と加振ユニットの配置位置も種々の好適形態が提案される。
その1つの好適形態では、対応する前記加振ユニットと前記振動検出部とが独立懸架された各車輪に割り当て配置されている。この構成の場合、左右の各タイヤからの振動が個別に検出され、低減されることになる。
他の1つの好適形態では、前記加振ユニットと前記振動検出部が前記サスペンションメンバにおける同じ位置に配置されている。この構成の場合、加振ユニットと振動検出部とが一体化でき、コンパクトになるだけでなく、振動の検出位置と当該振動を相殺する振動の付加位置が実質的に同じなので、効率的な防振が可能となる。
さらに、具体的なサスペンションメンバにおける振動検出部と加振ユニットの配置の形態として、前記サスペンションメンバの一方端部が右側タイヤと接続しているとともに他方端部が左側タイヤと接続しており、前記振動検出部は前記一方端部の側と前記他方端部の側とに配置され、当該振動検出部の間に前記加振ユニットが配置されることが提案される。この構成では、タイヤからの振動がサスペンショメンバに伝播してくる箇所で、その振動を検出することで精度のよいタイヤ振動検出が可能となり、その2つの振動を相殺する振動を最も適切な位置で付与することができる。
【0010】
本発明の好適な実施形態の1つとして、前記加振ユニットには音楽の低音部信号が入力され、当該低音部信号によって駆動された前記加振ユニットの振動が前記車体に伝達され、前記車体をスーパーウーファ振動体として機能させることが提案される。この構成では、車両用防振装置としての加振ユニットが音楽における重低音部の音響を車内に作り出す機能も持たせることができる。この機能は上述した振動低減機能とともに、あるいは単独でも利用することができる。低い共振振動数を有する車体そのものをスーパーウーファ振動体として振動させることで、車体から空中伝導音として車内空間に伝わる振動(音)は迫力のある重低音となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による車両用防振装置の基本原理を示す模式図である。
【図2】サスペンションメンバにおける振動検出部と加振ユニットの異なる配置パターンを示す模式図である。
【図3】本発明による車両用防振装置を自動車用懸架装置に適用した実施形態を示す斜視図である。
【図4】加振ユニットの断面図である。
【図5】制御ユニットの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明による車両用防振装置の具体的な実施形態を説明する前に、図1を用いてこの防振装置の基本的な原理を説明する。図1は、自動車などの駆動車両におけるタイヤに生じたタイヤ振動が、懸架装置を介して車体に固体伝導音として伝達し、車体から車内空気中を空気伝導音として伝達して運転者に騒音として感じさせたり、直接シートやハンドルを介して振動として感じさせたりする様子を模式的に説明している。ここでは、タイヤと車体との間に配置された懸架装置は、サスペンションメンバ11と振動調整部材から構成されている。振動調整部材とは、ショックアブソーバ、スプリング、サスペンションリンクなどである。タイヤ振動は、実質的にはサスペンションメンバ11を経て振動調整部材で何らかの振動調整を受けて、車体に伝達される。なお、サスペンションメンバ11にはエンジンの振動も直接あるいは駆動系を介して伝達される。また、タイヤ振動はステアリングギヤ機構を介して車内のハンドルに伝達される。いずれにせよ、サスペンションメンバ11は懸架装置におけるタイヤ振動の入力部とみなすことができる。
【0013】
このように、サスペンションメンバ11は実質的には車内に持ち込まれる振動の最初の伝達部材であるので、本発明では、このサスペンションメンバ11の振動をいわゆるアクティブノイズキャンセラ(消音スピーカ)の原理を採用して低減する。このため、サスペンションメンバ11には、このサスペンションメンバ11の振動を検出する振動検出部5と、このサスペンションメンバ11に振動を付与する加振ユニット4とが配置されている。さらに、必ずしもサスペンションメンバ11領域に配置する必要はないが、振動検出部5によって検出されたサスペンションメンバ11の振動を示す検出信号に対して逆位相の駆動信号を生成して、加振ユニット4に出力する制御ユニットが備えられている。
【0014】
この構成により、懸架装置におけるタイヤ振動の入力部としてのサスペンションメンバ11の振動を低減することができるので、車内に持ち込まれる振動が低減される。従って、車内振動や車内騒音が抑制される。また、振動調整部材に伝達される振動も弱められているので、振動調整部材による振動吸収や振動振幅の抑制といった振動調整の負担が小さくなる。
【0015】
なお、サスペンションメンバ11における振動検出部5と加振ユニット4の配置位置は種々の形態が可能である。例えば、図2(a)では、振動検出部5が加振ユニット4に内蔵又は外付けされて一体化され、左右車輪(タイヤ)にわたって延びているサスペンショメンバの中央領域に配置されている。この構成の場合、左右の各タイヤからの振動がサスペンショメンバの中央領域で合成するが、その合成された振動は振動検出部5によって検出され、加振ユニット4によって励起する振動によって低減される。
図2(b)では、振動検出部5が加振ユニット4に内蔵又は外付けされて一体化され、それぞれ左右車輪(タイヤ)の近くのサスペンショメンバ端部に配置されている。この構成の場合、左右の各タイヤからの振動が個別に検出され、低減されることになる。
図2(c)では、振動検出部5と加振ユニット4とが別体で分離しており、加振ユニット4を各タイヤに近接したサスペンショメンバ端部に配置し、加振ユニット4を各タイヤ振動が合流する領域に配置している。サスペンショメンバが左右車輪(タイヤ)にわたって延びている場合は、加振ユニット4はサスペンショメンバの中央領域に配置されることになる。サスペンショメンバに伝播してくる箇所でその振動を検出することで精度のよいタイヤ振動検出が可能となる。なお、加振ユニット4を複数用意し、サスペンショメンバに分布配置させることで大きな防振効果を図ることも可能である。
【0016】
また、この車両用防振装置は、車体をスーパーウーファ振動体として機能させることができる。その際、図1では点線で付加されているが、直接あるいは制御ユニットを介して加振ユニット4に音楽の低音信号(音声信号)を入力して、サスペンションメンバ11に生じている振動を相殺する逆位相の駆動信号に重畳して、加振ユニット4を駆動する。これにより、低音振動が車体に伝達され、そこから空中伝導音として車内に伝播することで、豊かな低音音響が実現する。
【0017】
上述した原理に基づく本発明の車両用防振装置の実施形態の一つを図面に基づいて説明する。
図3は、車両用防振装置が自動車の懸架装置10に適用されている例を示している。この懸架装置10は、ここでは模式的にしか示されていない車体2と連結固定されているとともに、左右前輪(以下タイヤと呼ぶ)2を懸架している。懸架装置10は、よく知られているようにサスペンションメンバ11などの構造部材、スプリング12などの衝撃緩衝部材、ショックアブソーバ13などのエネルギー吸収部材、およびスタビライザ14などの姿勢制御部材から構成されている。なお、図3では、スプリング12とショックアブソーバ13が一体となったストラット形式のものが図示されている。本出願では、衝撃緩衝部材、エネルギー吸収部材、姿勢制御部材を振動調整部材と呼ぶことにしている。この出願でのサスペンションメンバ11は、一般的な用語よりは広い意味で用いられており、厳密な自動車用語としてのサスペンションメンバ以外に、タイヤからのタイヤ振動を振動調整部材に伝達する位置に配置されているリンク15、図示されていないがアームやブラケットなども含まれる。つまり、サスペンションメンバ11は、固体伝導音としてのタイヤ振動の伝播に関して振動調整部材よりタイヤ側、つまり上流側に位置して、振動調整部材にタイヤ振動を伝達する構造部材の総称として用いられている。
【0018】
図3の懸架装置10は自体はよく知られているものであり、本発明は懸架装置10の構造を限定していない。例えば、図3の懸架装置10は独立懸架式であるが、車軸懸架式であっても本発明の適用に関しては同様である。
【0019】
図3では模式的に示されているだけであるが、サスペンションメンバ11の中央部上面に、サスペンションメンバ11の振動を検出する振動検出部5と、サスペンションメンバ11に振動を与える加振ユニット4とが取り付けられている。なお、この実施形態では、図4に示すように、振動検出部5は加振ユニット4に内蔵されている。
【0020】
加振ユニット4は、中空碗状に形成されたハウジング40と、このハウジング40に収容された可動部4Aと加振部4Bとを備えており、ハウジング40はブラケット11aによってサポートメンバ11にボルト連結で取り付けられている。加振部4Bは、ケーシング41、電磁ソレノイド42、固定ヨーク43、ボビン44を備えており、加振部4Bと相互作用する可動部4Aは、円板状の永久磁石45、可動ヨーク46、センタロッド47を備えている。
【0021】
加振部4Bのケーシング41は、ハウジング40の内周面に密着固定されている。電磁ソレノイド42は、表面に絶縁皮膜を有した線状の導体をコイル状に巻回した形態でボビン44に挿入されている。さらに、電磁ソレノイド42の軸心X側となるケーシング41の内周壁にリング状の固定ヨーク43が装着されている。
【0022】
電磁ソレノイド42は、本実施形態では、ハウジング40の軸方向に沿って2つ並べて設けられる。これら2つの電磁ソレノイド42は駆動信号の供給時に逆方向に電流が流れるように、互いに逆向きに巻回される。これにより、駆動信号の供給時には上側の電磁ソレノイド42の上側と、下側の電磁ソレノイド42の下側とに同じ極性の磁極が現れる。
【0023】
可動部4Aの永久磁石45は、ケーシング41の径方向内側には、上面と下面とに異なる磁極(一方がN極、他方がS極)が現れるように配置されておいる。可動部4Aの可動ヨーク46は、永久磁石45の上面と下面とに密着状態で配置される鉄等の円板状磁性体である。センタロッド47は、永久磁石45との可動ヨーク46に形成された軸方向に延びた中心貫通孔に挿通されている、永久磁石45との可動ヨーク46を固定している。この実施形態では、センタロッド47は貫通ボルトとして構成されている。このような構成により、永久磁石45と、可動ヨーク46と、ケーシング41の固定ヨーク43と、電磁ソレノイド42とで磁気回路が形成される。
【0024】
可動部4Aの軸方向両端部、つまり可動ヨーク46の軸方向の上下の自由端部には、板状バネ部材48が設けられている。このバネ部材48にも中心孔が設けられており、この中心孔を貫通するボルトであるセンタロッド47によって挟み込み固定されている。バネ部材48は、鋼板等のバネ材料を円板状に成形すると共に、弾性変形を容易に行われるためのスリット(図示せず)が渦巻き状や放射状に形成されている。また、板状バネ部材48は、径方向外側がケーシング41の内周面に埋設固定されている。これにより、センタロッド47の軸方向両端部が、ハウジング40の内壁部40aに固定された一対の板状バネ部材48で弾性支持されることになり、永久磁石45及び可動ヨーク46は、軸心Xに沿って上下動(揺動)が可能である。板状バネ部材48及びケーシング41との固定はねじ固定などの固定法を採用してもよい。尚、この円状の板状バネ部材48に代えて、帯状の板バネや、コイル状のバネを用いても良い。
【0025】
振動検出部5は、振動誘導体としての板状部材50と、この板状部材50の真ん中に取り付けられた振動検出センサとしての加速度センサ51とからなる。板状部材50は、この実施形態では、その表面が可動体4Aの移動方向に直交する方向、つまり軸心Xの径方向に延びる姿勢でハウジング40の内周面またはブラケット11a、あるいはその両方に固定される。この振動検出部5は、サスペンションメンバ11の振動を検出することが目的であるので、構造的に可能な場合はサスペンションメンバ11に直接固定するとよい。板状部材50は、サスペンションメンバ11の振動をそのまま伝達できるような構造が好ましい。
【0026】
次に、電磁ソレノイド42への通電について説明する。電磁ソレノイド42への通電は、制御ユニット6により行われる。図5は、制御ユニット6を模式的に示した図である。制御ユニット6は、振動判定部61と通電部62とを備えて構成される。振動判定部61は、振動検出部5の検出データが伝達される。振動判定部61は、振動検出部5の検出データに基づいて、振動の周波数、振動の位相、振動のレベルが判定される。この判定結果は、通電部62に伝達される。
【0027】
通電部62は、振動判定部61の判定結果に基づいて電磁ソレノイド42に供給する駆動信号を設定する。駆動信号は、駆動信号と供給周期とからなる。したがって、通電部62は、駆動信号生成手段として機能する。また、通電部62は、設定した駆動信号を増幅する。この増幅は、公知の増幅器により行うことができる。したがって、通電部62は、増幅手段としても機能する。より、具体的には、通電部62は、駆動信号として交流のように流れる方向が正逆に切り換わる電流を通電する。この駆動信号により電磁ソレノイド42が交互に作り出す磁極との引力と斥力とが順次切り換わり、結果として、駆動信号の周波数と同期した周期で、駆動信号に対応した振幅で振動軸線の方向に沿ってセンタロッド47が往復作動し、この振動によってサスペンションメンバ11の振動を抑制する。つまり、この駆動信号は、サスペンションメンバ11の振動を抑制する相殺振動駆動信号である。
【0028】
この実施形態では、加振ユニット4を用いて車体2をスーパーウーファとして利用する構成を採用している。従って、制御ユニット6には、スーパーウーファ駆動信号生成部63が付加されている。このスーパーウーファ駆動信号生成部63は、外部音声信号から加振ユニット4に送る重低音駆動信号を生成する。外部音声信号は、車両に搭載されているカーオーディオ機器71の音声出力からクロスオーバ回路72によって取り出された重低音信号である。クロスオーバ回路72から出力される重低音信号以外の音声信号は車載スピーカに送られる。重低音駆動信号は加振ユニット4において相殺振動駆動信号と合成され、電磁ソレノイド42を駆動し、サスペンションメンバ11の振動を抑制する相殺振動を生み出すとともに、重低音振動成分はサスペンションメンバ11から車体2に伝播し、車体2を通じて重低音として車内に響かせる。
【0029】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、センタロッド47の軸方向両側部が、ケーシング41の内壁部41aに固定された一対の板状バネ部材48で支持されている。しかしながら本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。センタロッド47の軸方向の一方の端部のみを板状バネ部材48で支持する構成としてもよい。また、センタロッド47の軸方向中央部を板状バネ部材48で支持してもよい。なお、板状バネ部材48は、適用箇所に応じて種々の形状に変更可能である。さらに、板状バネ部材48に代えてその他の弾性部材を用いても良い。
【0030】
本発明は、車両の懸架装置10を介して車体に入力される振動を防振する車両用防振装置に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0031】
2:車体
10:懸架装置
11:サスペンションメンバ
12:スプリング(振動調整部材)
13:ショックアブソーバ(振動調整部材)
14:スタビライザ(振動調整部材)
4:加振ユニット(スピーカ駆動体)
4A:可動部
4B:加振部
40:ハウジング
41:ケーシング
48:板状バネ部
5:振動検出部
6:制御ユニット
61:振動判定部
62:通電部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ振動を受けるサスペンションメンバと、当該サスペンションメンバに取り付けられる振動調整部材とを含む懸架装置から当該懸架装置を介してタイヤに支持されている車体に伝達される振動を抑制する車両用防振装置であって、
前記サスペンションメンバに設けられるとともに前記サスペンションメンバの振動を検出する振動検出部と、
前記サスペンションメンバに設けられるとともに前記サスペンションメンバに振動を付与する加振ユニットと、
前記振動検出部からの検出信号を入力するとともに、前記振動検出部で検出された振動を相殺する相殺振動を前記加振ユニットが励起するように前記加振ユニットに振動駆動信号を出力する制御ユニットとを備える車両用防振装置。
【請求項2】
対応する前記加振ユニットと前記振動検出部とが独立懸架された各車輪に割り当て配置されている請求項1に記載の車両用防振装置。
【請求項3】
前記加振ユニットと前記振動検出部が前記サスペンションメンバにおける同じ位置に配置されている請求項1または2に記載の車両用防振装置。
【請求項4】
前記サスペンションメンバの一方端部が右側タイヤと接続しているとともに他方端部が左側タイヤと接続しており、前記振動検出部は前記一方端部の側と前記他方端部の側とに配置され、当該振動検出部の間に前記加振ユニットが配置されている請求項1または2に記載の車両用防振装置。
【請求項5】
前記加振ユニットには音楽の低音部信号が入力され、当該低音部信号によって駆動された前記加振ユニットの振動が前記車体に伝達され、前記車体をスーパーウーファ振動体として機能させる請求項1から4のいずれか一項に記載の車両用防振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210836(P2012−210836A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−76572(P2011−76572)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】