車両用駆動制御装置
【課題】ハイブリッド車両において、車両の燃費悪化を抑えつつ蓄電装置の充放電を適切に行うことができる車両用駆動制御装置を提供する。
【解決手段】充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合、すなわち車両8の駆動力を維持しつつその充電を行う場合には、電子制御装置58は、充電時のエンジン動作点がLTc基準範囲内に入るようにそのエンジン動作点を定める。また、充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合、すなわち車両8の駆動力を維持しつつその放電を行う場合には、電子制御装置58は、放電時のエンジン動作点がLTd基準範囲内に入るようにそのエンジン動作点を定める。従って、エンジン熱効率の悪化をある程度は抑えつつ蓄電装置57の充電又は放電を行うことができるので、燃費悪化を抑えつつ蓄電装置57の充放電を適切に行うことができる。
【解決手段】充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合、すなわち車両8の駆動力を維持しつつその充電を行う場合には、電子制御装置58は、充電時のエンジン動作点がLTc基準範囲内に入るようにそのエンジン動作点を定める。また、充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合、すなわち車両8の駆動力を維持しつつその放電を行う場合には、電子制御装置58は、放電時のエンジン動作点がLTd基準範囲内に入るようにそのエンジン動作点を定める。従って、エンジン熱効率の悪化をある程度は抑えつつ蓄電装置57の充電又は放電を行うことができるので、燃費悪化を抑えつつ蓄電装置57の充放電を適切に行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両において蓄電装置の充電または放電を行う際の走行制御に関する。
【背景技術】
【0002】
有段の自動変速機を備えたハイブリッド車両が、従来から知られている。例えば、そのハイブリッド車両を制御する車両用駆動制御装置が特許文献1に開示されている。その特許文献1の車両用駆動制御装置は、上記自動変速機(有段変速機)の変速の必要性があると判断した場合に、その変速に先立って充電量の増減量を算出し、その充電量の増減量に基づいてエンジンの動作点を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−096574号公報
【特許文献2】特開2010−275955号公報
【特許文献3】特開2006−090154号公報
【特許文献4】特開平6−048222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記自動変速機が変速された場合、その自動変速機の入力回転速度は変速前後で変化する。前記特許文献1の車両用駆動制御装置では、動力分配装置の制御により上記自動変速機の入力回転速度にエンジン動作点が拘束されないように制御し得るが、その動力分配装置を備えないハイブリッド車両では、エンジン動作点は上記自動変速機の入力回転速度に拘束される。その場合、自動変速機の変速によって、エンジン動作点が変速前と比較して燃費がかえって悪化するように変更されることが想定された。例えば、ハイブリッド車両が有する蓄電装置の充電量の増減を行うためにエンジン動作点が変更される場合に、自動変速機の変速を伴ってエンジン動作点が変更されるよりも、自動変速機の変速段を現状維持してエンジン動作点が変更される方が、燃費が良好になることがあり得ると想定された。なお、このような課題は未公知のことである。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ハイブリッド車両において、車両の燃費悪化を抑えつつ蓄電装置の充放電を適切に行うことができる車両用駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、(a)エンジンから駆動輪への動力伝達経路の一部を構成する有段の自動変速機と、その動力伝達経路に連結された電動機と、その電動機と電気的に接続された蓄電装置とを備えた車両において、前記蓄電装置の充電を行う場合にはエンジンパワーの一部を前記電動機に回生させる一方で、前記蓄電装置の放電を行う場合には前記電動機を駆動して電力を消費する車両用駆動制御装置であって、(b)前記車両の駆動力を維持しつつ前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合には、前記エンジンの動作点がそのエンジンの最高熱効率線に基づいて予め定められた目標エンジン動作範囲内に入るようにそのエンジンの動作点を定めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、エンジンの熱効率の悪化をある程度は抑えつつ前記蓄電装置の充電又は放電を行うことができるので、車両の燃費悪化を抑えつつ蓄電装置の充放電を適切に行うことができる。なお、燃費とは、例えば単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。逆に、燃費の低下(悪化)とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が短くなることであり、或いは、燃料消費率が大きくなることである。
【0008】
また、第2発明の要旨とするところは、前記第1発明の車両用駆動制御装置であって、前記車両の駆動力を維持しつつ前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合において、走行パワーと充電パワー又は放電パワーとから定まる前記エンジンの動作点が、前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲から外れる場合には、前記自動変速機を変速することにより前記エンジンの動作点をその目標エンジン動作範囲内に入れる一方で、前記エンジンの動作点が前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲内に入る場合には、前記自動変速機の現在の変速段を保持することを特徴とする。このようにすれば、前記蓄電装置の充電又は放電を行うことに伴ってエンジンの熱効率を悪化させるような自動変速機の変速は行われないことになるので、その自動変速機の変速に起因して燃費が悪化するという事態を避けることができる。すなわち、燃費悪化を抑えつつ蓄電装置の充放電を適切に行うことができる。
【0009】
また、第3発明の要旨とするところは、前記第2発明の車両用駆動制御装置であって、(a)前記自動変速機の変速を行うための変速線図が予め定められており、(b)前記走行パワーと前記充電パワー又は放電パワーとから定まる前記エンジンの動作点が前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲から外れる場合には、前記車両に対して要求される車両要求負荷量に、前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量を充電時を正方向として加えた合計負荷量に基づいて、前記変速線図から前記自動変速機の変速を行うか否かを判断することを特徴とする。このようにすれば、前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合もそうでない場合も、共通の上記変速線図を用いて自動変速機を変速することができ、制御負荷の軽減を図ることが可能である。
【0010】
また、第4発明の要旨とするところは、前記第3発明の車両用駆動制御装置であって、(a)前記変速線図は、車速とアクセル開度との二次元座標で構成されており、(b)前記車両要求負荷量は、実際のアクセル開度で表され、(c)前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量は、その充電パワー又は放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度で表されることを特徴とする。このようにすれば、自動変速機の変速を行うか否かの判断を車速とアクセル開度とに基づいて行うことができ、車速およびアクセル開度は何れもセンサ等により検出容易であるので、上記変速を行うか否かの判断を容易に行うことができる。
【0011】
また、第5発明の要旨とするところは、前記第2発明から前記第4発明の何れか一の車両用駆動制御装置であって、(a)前記蓄電装置の充電を行う場合に実行する前記自動変速機の変速はダウン変速であり、その蓄電装置の放電を行う場合に実行するその自動変速機の変速はアップ変速であることを特徴とする。このようにすれば、前記蓄電装置の充電を行う場合には、前記自動変速機のダウン変速により、その蓄電装置の充電に適した方向にエンジンの動作状態を変化させることができる。また、前記蓄電装置の放電を行う場合には、前記自動変速機のアップ変速により、その蓄電装置の放電に適した方向にエンジンの動作状態を変化させることができる。
【0012】
ここで、好適には、(a)前記目標エンジン動作範囲は、前記蓄電装置の充電を行う場合とその蓄電装置の放電を行う場合との各々に対して予め定められており、(b)前記蓄電装置の充電を行う場合における前記目標エンジン動作範囲は、エンジンパワーを維持しつつ前記自動変速機のダウン変速をしたと仮定した場合のそのダウン変速後のエンジンの動作点と比較して、そのエンジンの熱効率が同等以上となる前記ダウン変速前のエンジンの動作点が存在する範囲であり、(c)前記蓄電装置の放電を行う場合における前記目標エンジン動作範囲は、エンジンパワーを維持しつつ前記自動変速機のアップ変速をしたと仮定した場合のそのアップ変速後のエンジンの動作点と比較して、そのエンジンの熱効率が同等以上となる前記アップ変速前のエンジンの動作点が存在する範囲である。なお、前記自動変速機のダウン変速またはアップ変速にて前記エンジンパワーが維持されるとは、エンジンパワーが変速前後で同一であること、または、エンジンパワーが変速前後で同一であるとみなせる程度の範囲内でそのエンジンパワーが変動することである。
【0013】
また、好適には、前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合とは、その蓄電装置に対し予め設定されている充放電制限によりその蓄電装置の充電又は放電を強制的に行う場合である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド車両に係る駆動系統の構成を概念的に示す図である。
【図2】図1のハイブリッド車両において、エンジン熱効率と自動変速機のダウン変速との関係を説明するための図である。
【図3】図1のハイブリッド車両において、エンジン熱効率と自動変速機のアップ変速との関係を説明するための図である。
【図4】図1の電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。
【図5】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段において充電時想定エンジン動作点がLTc基準範囲内に入っている例を示した図である。
【図6】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段において充電時想定エンジン動作点がLTc基準範囲から外れている例を示した図である。
【図7】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段において放電時想定エンジン動作点がLTd基準範囲内に入っている例を示した図である。
【図8】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段において放電時想定エンジン動作点がLTd基準範囲から外れている例を示した図である。
【図9】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段から1段低速側にダウン変速することを判断するためのダウン変速線を、変速線図から抜粋した図である。
【図10】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段から1段高速側にアップ変速することを判断するためのアップ変速線を、変速線図から抜粋した図である。
【図11】図1の電子制御装置の制御作動の要部、すなわち、ハイブリッド車両の駆動力を維持しつつ蓄電装置の充放電を行う場合にエンジン熱効率を低下させないように自動変速機の変速判断を行う制御作動を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド車両8(以下、単に「車両8」ともいう)に係る駆動系統の構成を概念的に示す図である。この図1に示すハイブリッド車両8は、車両用駆動装置10(以下、「駆動装置10」という)と差動歯車装置21と左右1対の車軸22と左右1対の駆動輪24と油圧制御回路34とインバータ56と電子制御装置58とを備えている。そして、その駆動装置10は、走行用駆動力源として機能し公知のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であるエンジン12と、そのエンジン12の始動または停止やスロットル制御等のエンジン出力制御を行うエンジン出力制御装置14と、走行用駆動力源として機能する走行用電動機である電動機MGと、エンジン断続用クラッチK0と、トルクコンバータ16と、自動変速機18とを備えている。図1に示すように、車両8は、エンジン12と電動機MGとの一方または両方により発生させられた動力が、トルクコンバータ16、自動変速機18、差動歯車装置21、及び左右1対の車軸22をそれぞれ介して左右1対の駆動輪24へ伝達されるように構成されている。そのため、車両8は、エンジン12の動力で走行するエンジン走行と、エンジン12を停止させると共に専ら電動機MGの動力で走行するEV走行(モータ走行)とを択一的に選択して走行することができる。上記エンジン走行では、走行状態に応じて電動機MGがアシストトルクを発生させることがある。
【0017】
前記電動機MGは、エンジン12またはトルクコンバータ16から駆動輪24への動力伝達経路に連結されている。詳細には、その電動機MGのロータ30が、トルクコンバータ16の入力部材であるポンプ翼車16pに相対回転不能に連結されている。電動機MGは、例えば3相の同期電動機であって、動力を発生させるモータ(発動機)としての機能と反力を発生させるジェネレータ(発電機)としての機能とを有するモータジェネレータである。例えば電動機MGは、回生作動することで車両制動力を発生する。また、電動機MGはインバータ56を介して蓄電装置57に電気的に接続されており、電動機MGと蓄電装置57とは相互に電力授受可能な構成となっている。その蓄電装置57は、例えば、鉛蓄電池などのバッテリ(二次電池)又はキャパシタなどである。
【0018】
また、前記エンジン12とその電動機MGとの間の動力伝達経路には、一般的に知られた湿式多板型の油圧式摩擦係合装置で構成されるエンジン断続用クラッチK0が設けられており、そのエンジン断続用クラッチK0は、油圧制御回路34から供給される油圧で作動し、エンジン12と駆動輪24との間の動力伝達を選択的に遮断する動力断続装置として機能する。具体的には、エンジン12の出力部材であるエンジン出力軸26(例えばクランク軸)は、エンジン断続用クラッチK0が係合されることで電動機MGのロータ30に相対回転不能に連結され、エンジン断続用クラッチK0が解放されることで電動機MGのロータ30から切り離される。要するに、上記エンジン出力軸26は、エンジン断続用クラッチK0を介して電動機MGのロータ30に選択的に連結されるようになっている。従って、そのエンジン断続用クラッチK0は、前記エンジン走行では係合されており、前記モータ走行では解放されている。
【0019】
前記自動変速機18は、エンジン12またはトルクコンバータ16から駆動輪24への動力伝達経路の一部を構成しており、エンジン12または電動機MGの動力を駆動輪24に伝達する。そして、自動変速機18は、予め設定された関係(変速線図)に従って変速を行う有段式の自動変速機である。換言すれば、その自動変速機18は、予め定められた複数の変速段(変速比)の何れかが択一的に成立させられる自動変速機構であり、斯かる変速を行うために、複数の遊星歯車装置と油圧制御回路34からの油圧で作動する複数のクラッチまたはブレーキとを備えて構成されている。
【0020】
トルクコンバータ16は、電動機MGと自動変速機18との間に介装された流体伝動装置である。トルクコンバータ16は、入力側回転要素であるポンプ翼車16pと、出力側回転要素であるタービン翼車16tと、ステータ翼車16sとを備えている。そして、トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16pに入力された動力をタービン翼車16tへ流体(作動油)を介して伝達する。ステータ翼車16sは、非回転部材であるトランスミッションケース36に一方向クラッチを介して連結されている。また、トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16pとタービン翼車16tとの間に、ポンプ翼車16p及びタービン翼車16tを選択的に相互に直結するロックアップクラッチLUを備えている。そのロックアップクラッチLUは、油圧制御回路34からの油圧で制御される。
【0021】
車両8においては、例えば前記モータ走行から前記エンジン走行への移行に際して、前記エンジン断続用クラッチK0の係合によりエンジン回転速度Neが引き上げられてエンジン12の始動が行われる。
【0022】
また、電子制御装置58は、蓄電装置57の充電残量SOCを、その蓄電装置57の耐久性を維持しつつ電動機MGの作動をできるだけ制限しないように予め実験的に定められた充電残量管理幅内に収まるように調節する。すなわち、その充電残量管理幅は蓄電装置57に対し予め設定されている充放電制限として機能する。例えば、電子制御装置58は、前記エンジン走行中において、蓄電装置57の充電残量SOCがその充電残量管理幅内に収まるようにするために蓄電装置57の充電を行う場合には、エンジンパワーPeの一部を電動機MGに回生させる。逆に、蓄電装置57の放電を行う場合には、電動機MGを駆動して蓄電装置57の電力を消費する。このようにエンジン走行中に蓄電装置57の充電または放電が行われる場合には、エンジンパワーPeが調節されることで車両8の駆動力は、上記充電または放電が行われない場合と変わらないように維持される。
【0023】
車両8は、その図1に例示するような制御系統を備えている。この図1に示す電子制御装置58は、エンジン12および電動機MGの駆動制御を行う車両用駆動制御装置としての機能を含んでおり、所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。図1に示すように、上記電子制御装置58には、前記ハイブリッド車両8に設けられた各センサにより検出される各種入力信号が供給されるようになっている。例えば、アクセル開度センサ60により検出されるアクセルペダル71の踏込量であるアクセル開度Accを表す信号、電動機回転速度センサ62により検出される前記電動機MGの回転速度(電動機回転速度)Nmgを表す信号、エンジン回転速度センサ64により検出される前記エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)Neを表す信号、タービン回転速度センサ66により検出される前記トルクコンバータ16のタービン翼車16tの回転速度(タービン回転速度)Ntを表す信号、車速センサ68により検出される車速Vを表す信号、スロットル開度センサ70により検出されるエンジン12のスロットル開度θthを表す信号、蓄電装置57から得られるその蓄電装置57の充電残量(充電状態)SOCを表す信号、及び、加速度センサ72により検出される車両8の前後方向の車両加速度を表す信号等が、上記電子制御装置58に入力される。ここで、電動機回転速度センサ62により検出される電動機回転速度Nmgは、前記トルクコンバータ16の入力回転速度であり、そのトルクコンバータ16におけるポンプ翼車16pの回転速度(ポンプ回転速度)Npに相当する。また、上記タービン回転速度センサ66により検出されるタービン回転速度Ntは、前記トルクコンバータ16の出力回転速度であり、前記自動変速機18における変速機入力軸19の回転速度Natinすなわち変速機入力回転速度Natinに相当する。また、自動変速機18の出力軸20(以下、変速機出力軸20という)の回転速度Natoutすなわち変速機出力回転速度Natoutは、前記車速Vに対応する。
【0024】
また、前記電子制御装置58から、車両8に設けられた各装置に各種出力信号が供給されるようになっている。
【0025】
図2は、エンジン12の熱効率(以下、エンジン熱効率という)と自動変速機18のダウン変速との関係を説明するための図である。図2は、エンジン回転速度Neを横軸としエンジントルクTeを縦軸とする二次元座標で構成されており、本実施例では、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとをパラメータとしてエンジン熱効率が予め実験的に求められ電子制御装置58に記憶されている。また、図2に示す破線L01,L02のようなエンジンパワーPe(単位は例えばkW)が等しいエンジン動作点の連なりである等パワー曲線上でエンジン熱効率が最高になるエンジン動作点をエンジンパワーPeを変化させて連ねた最高熱効率線Ltefが、電子制御装置58に予め記憶されている。また、図2に示す実線LTcも電子制御装置58に予め記憶されている。この実線LTcは、エンジンパワーPeが維持されつつ自動変速機18がダウン変速される等パワーダウン変速が1段低速側に向けて実行されたと仮定した場合に、その等パワーダウン変速後のエンジン熱効率と同等またはそれに近い値となる上記等パワーダウン変速前のエンジン動作点を連ねた曲線である。従って、図2の座標系でのエンジン熱効率の分布から定まる実線LTcは、そのエンジン熱効率の分布を代表する前記最高熱効率線Ltefを基準として定まっているとも言うことができ、実線LTcはその最高熱効率線Ltefに基づいて予め定められている曲線である。そして、実線LTcは自動変速機18の変速段毎にそれぞれ異なって設定されている。例えば、図2の実線LTcが自動変速機18が第3速であるときに採用されるものであると仮定して説明すると、等パワーダウン変速前のエンジン動作点すなわち第3速時のエンジン動作点が実線LTc上の点PT01bであり、上記等パワーダウン変速後のエンジン動作点すなわち第2速時のエンジン動作点が点PT01aであるとすれば、上記エンジン動作点PT01bが示すエンジン熱効率は上記エンジン動作点PT01aが示すエンジン熱効率と同等またはそれに近い値になる。このようなことから、前記実線LTc上を含み実線LTcから前記最高熱効率線Ltef側の範囲(以下、LTc基準範囲という)は、自動変速機18で1段低速側に前記等パワーダウン変速をしたと仮定した場合のそのダウン変速後のエンジン動作点と比較して、エンジン熱効率が同等以上となる上記ダウン変速前のエンジン動作点が存在する範囲であると言える。なお、前記エンジン熱効率とは、例えば、エンジン12に供給された燃料から得られる総熱量のうちエンジン12の仕事に変わった熱量の上記総熱量に対する割合である。
【0026】
図3は、エンジン熱効率と自動変速機18のアップ変速との関係を説明するための図である。図3は、前記図2と同様にエンジン回転速度Neを横軸としエンジントルクTeを縦軸とする二次元座標で構成されている。図3の破線L03,L04は何れも前記等パワー曲線であり、破線L04は破線L03よりも大きいエンジンパワーPeを表す等パワー曲線である。また、図3に示す最高熱効率線Ltefは図2のそれと同じである。電子制御装置58は、前述したように最高熱効率線Ltefと実線LTc(図2参照)とを予め記憶しているが、更に、図3に示す実線LTdも予め記憶している。この実線LTdは、エンジンパワーPeが維持されつつ自動変速機18がアップ変速される等パワーアップ変速が1段高速側に向けて実行されたと仮定した場合に、その等パワーアップ変速後のエンジン熱効率と同等またはそれに近い値となる上記等パワーアップ変速前のエンジン動作点を連ねた曲線である。従って、実線LTdも、前記実線LTcと同様に、前記最高熱効率線Ltefに基づいて予め定められている曲線であると言え、自動変速機18の変速段毎にそれぞれ異なって設定されている。例えば、図3の実線LTdが自動変速機18が第3速であるときに採用されるものであると仮定して説明すると、等パワーアップ変速前のエンジン動作点すなわち第3速時のエンジン動作点が実線LTd上の点PT03bであり、上記等パワーアップ変速後のエンジン動作点すなわち第4速時のエンジン動作点が点PT03aであるとすれば、上記エンジン動作点PT03bが示すエンジン熱効率は上記エンジン動作点PT03aが示すエンジン熱効率と同等またはそれに近い値になる。このようなことから、前記実線LTd上を含み実線LTdから前記最高熱効率線Ltef側の範囲(以下、LTd基準範囲という)は、自動変速機18で1段高速側に前記等パワーアップ変速をしたと仮定した場合のそのアップ変速後のエンジン動作点と比較して、エンジン熱効率が同等以上となる上記アップ変速前のエンジン動作点が存在する範囲であると言える。
【0027】
図4は、前記電子制御装置58に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。図4に示すように、電子制御装置58は、エンジン走行判断部としてのエンジン走行判断手段80と、充放電必要性判断部としての充放電必要性判断手段82と、エンジン動作点判断部としてのエンジン動作点判断手段84と、有段変速制御部としての有段変速制御手段86と、駆動制御部としての駆動制御手段88とを備えている。
【0028】
エンジン走行判断手段80は、車両8が前記エンジン走行中であるか否かを判断する。例えば、エンジン12が作動中であってエンジン断続用クラッチK0が係合されており、車両8が走行中である場合には、車両8がエンジン走行中であると判断する。
【0029】
充放電必要性判断手段82は、車両8が前記エンジン走行中であるとエンジン走行判断手段80により判断された場合において、蓄電装置57の充電または放電の必要性について判断する。具体的には、蓄電装置57の充電残量SOCを前記充電残量管理幅内に収めるために上記充電または放電を行う必要があるか否かを判断する。例えば、充放電必要性判断手段82は、前記充電残量SOCが前記充電残量管理幅の上限付近の所定範囲に入った場合には、蓄電装置57の放電を行う必要があると判断する。その一方で、前記充電残量SOCが前記充電残量管理幅の下限付近の所定範囲に入った場合には、蓄電装置57の充電を行う必要があると判断する。
【0030】
エンジン動作点判断手段84は、蓄電装置57の充電または放電を行う必要があると充放電必要性判断手段82により判断された場合において、自動変速機18の現在の変速段を維持し且つその充電または放電を行ったときのエンジン動作点と実線LTc(図2参照)または実線LTd(図3参照)との関係、言い換えれば、そのエンジン動作点と前記最高熱効率線Ltefとの関係について判断する。上記充電または放電を実際に開始する前に判断する。先ず、蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合ついて説明する。具体的に、エンジン動作点判断手段84は、蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合には、エンジン回転速度Neを検出し、そのエンジン回転速度Neを維持して上記充電を行ったとしたときのエンジン動作点(以下、充電時想定エンジン動作点という)を求める。すなわち、自動変速機18の現在の変速段において、車両走行に供される走行パワーと上記充電に供される充電パワーとから定まるエンジン動作点である充電時想定エンジン動作点を求める。その充電パワーの大きさは、予め一定値に定められていてもよいし、蓄電装置57の充電残量SOCに応じて変更されてもよい。また、上記走行パワーの大きさは、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて求めることができる。そして、エンジン動作点判断手段84は、その求めた充電時想定エンジン動作点が前記実線LTc上またはその実線LTcよりも前記最高熱効率線Ltef側に位置するか否か、すなわち、その充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入るか否かを判断する。このようにエンジン動作点判断手段84は、上記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入るか否かを判断することで、エンジン熱効率の向上の観点から、蓄電装置57の充電の際に自動変速機18のダウン変速を行わず現在の変速段を保持した方が良いか否かを判断している。そのLTc基準範囲は、蓄電装置57の充電を行う場合における本発明の目標エンジン動作範囲に対応する。そして、前記実線LTc(図2参照)は自動変速機18の変速段毎に設定されているので、その目標エンジン動作範囲であるLTc基準範囲も上記変速段毎に設定されていることになる。図5および図6を用いて、蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合ついて更に具体的に説明する。
【0031】
図5および図6は互いに異なる車両8の走行状態を表しており、図5は、自動変速機18の現在の変速段において前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入っている例を示しており、図6はその充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲から外れている例を示している。図5および図6において最高熱効率線Ltefおよび実線LTcは図2のものと同じであり、二点鎖線はエンジン熱効率が等しい点を連ねた等熱効率線である。また、蓄電装置57の充電時にはエンジンパワーPeの一部が蓄電装置57の充電に供されるので、エンジン走行中に蓄電装置57の充電を行ったとしたときのエンジンパワーPeは、走行パワーと充電パワーとを合計したものになる。すなわち、そのエンジンパワーPeは上記走行パワーである走行分パワーと上記充電パワーである充電分パワーとから構成される。図5の破線L05および図6の破線L07は上記走行分パワーを表す互いに異なる等パワー曲線であり、図5の破線L06および図6の破線L08は上記充電を行ったとしたときのエンジンパワーPeを表す互いに異なる等パワー曲線である。図5および図6において上記充電パワーの大きさは、予め一定値に定められていてもよいし、蓄電装置57の充電残量SOCに応じて変更されてもよい。上記走行パワーの大きさは、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて求めることができる。また、図5および図6において、N1eは現在のエンジン回転速度Neを意味し、Tcは実線LTc上でエンジン回転速度NeがN1eであるときのエンジン動作点が示すエンジントルクTeを意味し、Tθ0はエンジン回転速度NeがN1eであるときの前記走行分パワーに対応するエンジントルクTeを意味し、TΔθpcはエンジン回転速度NeがN1eであるときの前記充電分パワーに対応するエンジントルクTeを意味し、Tθ0+TΔθpcは、エンジントルクTeであるTθ0とTΔθpcとの和、すなわち、エンジン回転速度NeがN1eであり蓄電装置57の充電を行ったとしたときのエンジンパワーPeに対応するエンジントルクTeを意味している。これらN1e、Tc、Tθ0、TΔθpc、および、後述のTd、TΔθpdは、各図5〜8間で意味は同じであるが、値の大きさが同一というわけではない。
【0032】
例えば、図5および図6において、エンジン動作点判断手段84は、現在のエンジン回転速度Ne(=N1e)を検出し、そのエンジン回転速度Ne(=N1e)に基づいて、前記走行分パワーに対応するエンジントルクTe(=Tθ0)と前記充電分パワーに対応するエンジントルクTe(=TΔθpc)と前記実線LTc上でのエンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Tc)とを求める。更に、そのTθ0とTΔθpcとを合計して、蓄電装置57の充電を行ったとしたときのエンジンパワーPeに対応するエンジントルクTe(=Tθ0+TΔθpc)、すなわち、前記充電時想定エンジン動作点(図5及び図6の点PTch)が示すエンジントルクTeを算出する。そして、エンジン動作点判断手段84は、前記実線LTc上でのエンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Tc)と、前記充電時想定エンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Tθ0+TΔθpc)とを比較し、図5に示すように「Tc≧Tθ0+TΔθpc」であれば、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入ると判断する。その一方で、図6に示すように「Tc<Tθ0+TΔθpc」であれば、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲から外れると判断する。
【0033】
次に、蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合ついて説明する。具体的に、エンジン動作点判断手段84は、蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合には、エンジン回転速度Neを検出し、そのエンジン回転速度Neを維持して上記放電を行ったとしたときのエンジン動作点(以下、放電時想定エンジン動作点という)を求める。すなわち、自動変速機18の現在の変速段において、前記走行パワーと上記放電により出力される放電パワーとから定まるエンジン動作点である放電時想定エンジン動作点を求める。その放電パワーの大きさは、予め一定値に定められていてもよいし、蓄電装置57の充電残量SOCに応じて変更されてもよい。そして、エンジン動作点判断手段84は、その求めた放電時想定エンジン動作点が前記実線LTd(図3参照)上またはその実線LTdよりも前記最高熱効率線Ltef側に位置するか否か、すなわち、その放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入るか否かを判断する。このようにエンジン動作点判断手段84は、上記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入るか否かを判断することで、エンジン熱効率の向上の観点から、蓄電装置57の放電の際に自動変速機18のアップ変速を行わず現在の変速段を保持した方が良いか否かを判断している。そのLTd基準範囲は、蓄電装置57の放電を行う場合における本発明の目標エンジン動作範囲に対応する。すなわち、本発明の目標エンジン動作範囲は、蓄電装置57の充電を行う場合と蓄電装置57の放電を行う場合との各々に対して予め定められている。そして、前記実線LTd(図3参照)は自動変速機18の変速段毎に設定されているので、その目標エンジン動作範囲であるLTd基準範囲も上記変速段毎に設定されていることになる。図7および図8を用いて、蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合ついて更に具体的に説明する。
【0034】
図7および図8は互いに異なる車両8の走行状態を表しており、図7は、自動変速機18の現在の変速段において前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入っている例を示しており、図8はその放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲から外れている例を示している。図7および図8において最高熱効率線Ltefおよび実線LTdは図3のものと同じであり、二点鎖線はエンジン熱効率が等しい点を連ねた等熱効率線である。また、蓄電装置57の放電時にはエンジンパワーPeに電動機MGが出力する放電パワーが加えられたものが走行パワーになるので、エンジン走行中に蓄電装置57の放電を行ったとしたときのエンジンパワーPeは、走行パワーから放電パワーを差し引いたものになる。すなわち、上記走行パワー(走行分パワー)は、エンジンパワーPeと上記放電パワーである放電分パワーとから構成される。図7の破線L09および図8の破線L11は上記放電を行ったとしたときのエンジンパワーPeを表す互いに異なる等パワー曲線であり、図7の破線L10および図8の破線L12は上記走行分パワーを表す互いに異なる等パワー曲線である。図7および図8において上記放電パワーの大きさは、予め一定値に定められていてもよいし、蓄電装置57の充電残量SOCに応じて変更されてもよい。図7および図8において、N1e及びTθ0は、前記図5または図6で表すものと同じ意味であり、Tdは実線LTd上でエンジン回転速度NeがN1eであるときのエンジン動作点が示すエンジントルクTeを意味し、TΔθpdはエンジン回転速度NeがN1eであるときの前記放電分パワーに対応するエンジントルクTeを意味し、Tθ0−TΔθpdは、エンジントルクTeであるTθ0からTΔθpdを差し引いた差、すなわち、エンジン回転速度NeがN1eであり蓄電装置57の放電を行ったとしたときのエンジンパワーPeに対応するエンジントルクTeを意味している。
【0035】
例えば、図7および図8において、エンジン動作点判断手段84は、現在のエンジン回転速度Ne(=N1e)を検出し、そのエンジン回転速度Ne(=N1e)に基づいて、前記走行分パワーに対応するエンジントルクTe(=Tθ0)と前記放電分パワーに対応するエンジントルクTe(=TΔθpd)と前記実線LTd上でのエンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Td)とを求める。更に、そのTθ0からTΔθpdを差し引いて、蓄電装置57の放電を行ったとしたときのエンジンパワーPeに対応するエンジントルクTe(=Tθ0−TΔθpd)、すなわち、前記放電時想定エンジン動作点(図7及び図8の点PTdc)が示すエンジントルクTeを算出する。そして、エンジン動作点判断手段84は、前記実線LTd上でのエンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Td)と、前記放電時想定エンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Tθ0−TΔθpd)とを比較し、図7に示すように「Td≦Tθ0−TΔθpd」であれば、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入ると判断する。その一方で、図8に示すように「Td>Tθ0−TΔθpd」であれば、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲から外れると判断する。
【0036】
有段変速制御手段86は、自動変速機18の変速を行うために予め定められている前記変速線図に従って自動変速機18の変速を行うか否かを判断し、その自動変速機18の変速を実行する。そして、有段変速制御手段86は、エンジン動作点判断手段84により、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲から外れると判断された場合、または、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲から外れると判断された場合には、車両8に対して要求される車両要求負荷量に、前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量を充電時を正方向として加えた合計負荷量に基づいて、前記変速線図から自動変速機18の変速を行うか否かを判断する。その車両要求負荷量などの負荷量は、具体的に、スロットル開度θth、エンジン12の吸入空気量、または燃料噴射量などで表されてもよいが、本実施例の前記変速線図は、車速Vとアクセル開度Accとの二次元座標で構成されており、前記車両要求負荷量は実際のアクセル開度Accで表され、前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量は、その充電パワー又は放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Accで表される。その充電パワー又は放電パワーに相当するアクセル開度Accとは、その充電パワー又は放電パワーと同じ大きさのエンジンパワーPeを得るために必要なアクセル開度Accの大きさのことである。
【0037】
具体的に、エンジン動作点判断手段84により前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲から外れると判断された場合について図9を用いて説明する。図9は、自動変速機18の現在の変速段から1段低速側にダウン変速することを判断するためのダウン変速線を前記変速線図から抜粋した図である。図9のV1は車速センサ68により検出される現在の車速Vを示しており、θ0はアクセル開度センサ60により検出される実際のアクセル開度Accを示している。従って、図9の変速線図においてそのV1とθ0とを示す車両状態(点PT0c)のままでは、現在の変速段が保持される。有段変速制御手段86は、エンジン動作点判断手段84により前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲から外れると判断された場合には、実際のアクセル開度Acc(=θ0)に、充電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpc)を加えて得た値(=θ0+Δθpc)を、図9の縦軸のアクセル開度Accとして自動変速機18の変速を判断する。すなわち、図9のΔθcはΔθpcであるとして自動変速機18の変速を判断する。そうすると、図9の変速線図上では車両状態を表す点PT0cが点PT1cに変化しダウン変速線を横切るので、有段変速制御手段86は自動変速機18のダウン変速を実行する。そして、図6に示すように、蓄電装置57の充電開始後のエンジン動作点は上記ダウン変速が実行されなければ点PTchになるところ、そのダウン変速の実行により点PT1chになるので、上記ダウン変速が実行されない場合と比較してエンジン動作点が最高熱効率線Ltefに近付き、前記LTc基準範囲内に入ることになる。
【0038】
その一方で、有段変速制御手段86は、エンジン動作点判断手段84により前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入ると判断された場合には、実際のアクセル開度Acc(=θ0)に、充電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpc)を加えることをせず、その実際のアクセル開度Acc(=θ0)に基づいて自動変速機18の変速を判断する。すなわち、図9のΔθcは零であるとして自動変速機18の変速を判断する。そうすると、図9の変速線図上では車両状態は点PT0cのままであるので、有段変速制御手段86は自動変速機18の現在の変速段を保持する。そして、図5に示すように、エンジン動作点は、蓄電装置57の充電開始後には点PTchになり、前記LTc基準範囲内に入る。この場合、充電開始後のエンジン動作点が自動変速機18のダウン変速により最高熱効率線Ltefから離れるということが、そのダウン変速がなされないことで回避されている。
【0039】
次に、エンジン動作点判断手段84により前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲から外れると判断された場合について図10を用いて説明する。図10は、自動変速機18の現在の変速段から1段高速側にアップ変速することを判断するためのアップ変速線を前記変速線図から抜粋した図である。図10のV1、θ0はそれぞれ図9のV1、θ0と値の大きさが同じということではなく、図10のV1は、車速センサ68により検出される現在の車速Vを示しており、θ0はアクセル開度センサ60により検出される実際のアクセル開度Accを示している。従って、図10の変速線図においてそのV1とθ0とを示す車両状態(点PT0d)のままでは、現在の変速段が保持される。有段変速制御手段86は、エンジン動作点判断手段84により前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲から外れると判断された場合には、実際のアクセル開度Acc(=θ0)から、放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpd)を差し引いて得た値(=θ0−Δθpd)を、図10の縦軸のアクセル開度Accとして自動変速機18の変速を判断する。すなわち、図10のΔθdはΔθpdであるとして自動変速機18の変速を判断する。そうすると、図10の変速線図上では車両状態を表す点PT0dが点PT1dに変化しアップ変速線を横切るので、有段変速制御手段86は自動変速機18のアップ変速を実行する。そして、図8に示すように、蓄電装置57の放電開始後のエンジン動作点は上記アップ変速が実行されなければ点PTdcになるところ、そのアップ変速の実行により点PT1dcになるので、上記アップ変速が実行されない場合と比較してエンジン動作点が最高熱効率線Ltefに近付き、前記LTd基準範囲内に入ることになる。
【0040】
その一方で、有段変速制御手段86は、エンジン動作点判断手段84により前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入ると判断された場合には、実際のアクセル開度Acc(=θ0)から、放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpd)を差し引くことをせず、その実際のアクセル開度Acc(=θ0)に基づいて自動変速機18の変速を判断する。すなわち、図10のΔθdは零であるとして自動変速機18の変速を判断する。そうすると、図10の変速線図上では車両状態は点PT0dのままであるので、有段変速制御手段86は自動変速機18の現在の変速段を保持する。そして、図7に示すように、エンジン動作点は、蓄電装置57の放電開始後には点PTdcになり、前記LTd基準範囲内に入る。この場合、放電開始後のエンジン動作点が自動変速機18のアップ変速により最高熱効率線Ltefから離れるということが、そのアップ変速がなされないことで回避されている。
【0041】
駆動制御手段88は、車両走行中にエンジン12および電動機MGの駆動制御を行う。また、蓄電装置57の充電残量SOCを前記充電残量管理幅内に収めるために蓄電装置57の充電または放電を行う場合には、運転者に違和感を与えないように、車両8の駆動力を維持しつつその充電または放電を行う。具体的には、エンジン走行中において、駆動制御手段88は、充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合には、前記走行パワーに前記充電パワーを加えた大きさのエンジンパワーPeをエンジン12に発生させると共に、そのエンジンパワーPeの一部である充電パワーを電動機MGに回生させ、その充電パワーで蓄電装置57を充電する。その一方で、駆動制御手段88は、充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合には、前記走行パワーから前記放電パワーを差し引いた大きさのエンジンパワーPeをエンジン12に発生させると共にその放電パワーを電動機MGに発生させ、その放電パワーを発生させる電動機MGの電力消費により蓄電装置57の放電を行う。このような蓄電装置57の充電または放電を行うためのエンジン12および電動機MGの出力制御は、有段変速制御手段86による自動変速機18の変速を伴うことがあり、その場合、その充電または放電を行うためのエンジン12および電動機MGの出力制御は、例えば上記変速前に開始されても上記変速後に開始されてもよいし、或いは、その変速中に開始されてもよい。
【0042】
図11は、電子制御装置58の制御作動の要部、すなわち、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充放電を行う場合にエンジン熱効率を低下させないように自動変速機18の変速を判断する制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図11に示す制御作動は、車両8がエンジン走行中である場合に実行される。この図11に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。
【0043】
先ず、図11のステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、蓄電装置57の充電を行う必要があるか否かが判断される。具体的には、蓄電装置57に対し予め設定されている前記充放電制限により蓄電装置57の充電を強制的に行う必要があるか否かが判断される。このSA1の判断が肯定された場合、すなわち、蓄電装置57の充電を強制的に行う必要がある場合には、SA2に移る。一方、このSA1の判断が否定された場合には、SA5に移る。なお、SA1は充放電必要性判断手段82に対応する。
【0044】
エンジン動作点判断手段84に対応するSA2においては、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入るか否かが判断される。具体的には、図5または図6に示す前記Tc、Tθ0、およびTΔθpcから、「Tc−(Tθ0+TΔθpc)」が算出され、その算出値が零以上である場合には、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入ると判断される。このSA2の判断が肯定された場合、すなわち、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入る場合には、SA3に移る。一方、このSA2の判断が否定された場合には、SA4に移る。
【0045】
SA3においては、図9の縦軸のアクセル開度Accすなわち前記変速線図で変速判断に用いられるアクセル開度Accが実際のアクセル開度Acc(=θ0)とされて、自動変速機18の変速が判断される。従って、前記充放電制限による蓄電装置57の充電に起因した自動変速機18の変速は行われない。
【0046】
SA4においては、前記変速線図で変速判断に用いられるアクセル開度Accが、実際のアクセル開度Acc(=θ0)に、充電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpc)を加えて得た値(=θ0+Δθpc)とされて、自動変速機18の変速が判断される。従って、図9に示すように、変速線図上では車両状態を表す点PT0cが点PT1cに変化しダウン変速線を横切るので、自動変速機18のダウン変速が実行される。なお、SA3およびSA4は有段変速制御手段86に対応する。
【0047】
充放電必要性判断手段82に対応するSA5においては、蓄電装置57の放電を行う必要があるか否かが判断される。具体的には、蓄電装置57に対し予め設定されている前記充放電制限により蓄電装置57の放電を強制的に行う必要があるか否かが判断される。このSA5の判断が肯定された場合、すなわち、蓄電装置57の放電を強制的に行う必要がある場合には、SA6に移る。一方、このSA5の判断が否定された場合には、SA9に移る。
【0048】
エンジン動作点判断手段84に対応するSA6においては、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入るか否かが判断される。具体的には、図7または図8に示す前記Td、Tθ0、およびTΔθpdから、「Td−(Tθ0−TΔθpd)」が算出され、その算出値が零以下である場合には、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入ると判断される。このSA6の判断が肯定された場合、すなわち、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入る場合には、SA7に移る。一方、このSA6の判断が否定された場合には、SA8に移る。
【0049】
SA7においては、図10の縦軸のアクセル開度Accすなわち前記変速線図で変速判断に用いられるアクセル開度Accが実際のアクセル開度Acc(=θ0)とされて、自動変速機18の変速が判断される。従って、前記充放電制限による蓄電装置57の放電に起因した自動変速機18の変速は行われない。
【0050】
SA8においては、前記変速線図で変速判断に用いられるアクセル開度Accが、実際のアクセル開度Acc(=θ0)から、放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpd)を差し引いて得た値(=θ0−Δθpd)とされて、自動変速機18の変速が判断される。従って、図10に示すように、変速線図上では車両状態を表す点PT0dが点PT1dに変化しアップ変速線を横切るので、自動変速機18のアップ変速が実行される。
【0051】
SA9においては、前記変速線図で変速判断に用いられるアクセル開度Accが実際のアクセル開度Acc(=θ0)とされて、自動変速機18の変速が判断される。なお、SA7、SA8、およびSA9は有段変速制御手段86に対応する。
【0052】
上述した本実施例によれば、充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合、すなわち、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電を行う場合には、図5および図6に示すように、電子制御装置58は、充電時のエンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入るようにそのエンジン動作点を定める。また、充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合、すなわち、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の放電を行う場合には、図7および図8に示すように、電子制御装置58は、放電時のエンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入るようにそのエンジン動作点を定める。そして、前記LTc基準範囲は、蓄電装置57の充電を行う場合における、前記最高熱効率線Ltefに基づいて予め定められた前記目標エンジン動作範囲に対応し、前記LTd基準範囲は、蓄電装置57の放電を行う場合における前記目標エンジン動作範囲に対応する。要するに、電子制御装置58は、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電又は放電を行う場合には、エンジン動作点が前記最高熱効率線Ltefに基づいて予め定められた前記目標エンジン動作範囲内に入るようにそのエンジン動作点を定める。従って、エンジン熱効率の悪化をある程度は抑えつつ蓄電装置57の充電又は放電を行うことができるので、車両8の燃費悪化を抑えつつ蓄電装置57の充放電を適切に行うことができる。
【0053】
また、本実施例によれば、電子制御装置58は、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電を行う場合において、走行パワーと充電パワーとから定まるエンジン動作点(充電時想定エンジン動作点)が、自動変速機18の現在の変速段において前記LTc基準範囲から外れる場合には、図6に示すように、自動変速機18をダウン変速することによりエンジン動作点をそのLTc基準範囲内に入れる。その一方で、上記充電時想定エンジン動作点が自動変速機18の現在の変速段において前記LTc基準範囲内に入る場合には、その自動変速機18の現在の変速段を保持する。また、電子制御装置58は、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の放電を行う場合において、走行パワーと放電パワーとから定まるエンジン動作点(放電時想定エンジン動作点)が、自動変速機18の現在の変速段において前記LTd基準範囲から外れる場合には、図8に示すように、自動変速機18をアップ変速することによりエンジン動作点をそのLTd基準範囲内に入れる。その一方で、上記放電時想定エンジン動作点が自動変速機18の現在の変速段において前記LTd基準範囲内に入る場合には、その自動変速機18の現在の変速段を保持する。従って、蓄電装置57の充電又は放電を行うことに伴ってエンジン熱効率を悪化させるような自動変速機18の変速は行われないことになるので、その自動変速機18の変速に起因して燃費が悪化するという事態を避けることができる。すなわち、燃費悪化を抑えつつ蓄電装置57の充放電を適切に行うことができる。また、自動変速機18の変速段が、蓄電装置57の充電状態に応じて決定されるエンジンパワーPeに対して、燃費悪化抑制の観点から適切に選択される。
【0054】
また、本実施例によれば、前記充電時想定エンジン動作点が自動変速機18の現在の変速段において前記LTc基準範囲から外れる場合、または、前記放電時想定エンジン動作点が自動変速機18の現在の変速段において前記LTd基準範囲から外れる場合には、図9および図10に示すように、電子制御装置58は、車両8に対して要求される前記車両要求負荷量に、前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量を充電時を正方向として加えた前記合計負荷量に基づいて、前記変速線図から自動変速機18の変速を行うか否かを判断する。従って、蓄電装置57の充電又は放電を行う場合もそうでない場合も、共通の上記変速線図を用いて自動変速機18を変速することができ、制御負荷の軽減を図ることが可能である。
【0055】
また、本実施例によれば、図9および図10に示すように、前記変速線図は、車速Vとアクセル開度Accとの二次元座標で構成されており、前記車両要求負荷量は実際のアクセル開度Acc(=θ0)で表され、前記充電パワーに相当する負荷量は、その充電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpc)で表され、前記放電パワーに相当する負荷量は、その放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpd)で表される。従って、自動変速機18の変速を行うか否かの判断を車速Vとアクセル開度Accとに基づいて行うことができ、車速Vおよびアクセル開度Accは何れもセンサ68,60等により検出容易であるので、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電または放電を行う場合に自動変速機18の変速を行うか否かの判断を容易に行うことができる。
【0056】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0057】
例えば、前述の実施例において、自動変速機18は有段式の自動変速機であるが、係合要素の掴み替えによりクラッチ・ツゥ・クラッチ変速を行う自動変速機であってもよいし、ベルト式などのCVTであってそのCVTの変速比が段階的に変更されるものであっても差し支えない。
【0058】
また、前述の実施例の図1において、電動機MGはトルクコンバータ16のポンプ翼車16pに連結されているが、そのポンプ翼車16pにではなく、前記変速機出力軸20に連結されていても差し支えない。
【0059】
また、前述の実施例において、トルクコンバータ16はロックアップクラッチLUを備えているが、そのロックアップクラッチLUを備えていなくても差し支えない。また、トルクコンバータ16も必須ではない。
【0060】
また、前述の実施例において、車両用駆動装置10がエンジン断続用クラッチK0を備えているので、車両8は前記モータ走行を行うことができるが、そのモータ走行を行い得ることは必須ではないので、エンジン断続用クラッチK0が設けられておらずエンジン出力軸26が電動機MGのロータ30に相対回転不能に常時連結されていても差し支えない。
【0061】
また、前述の実施例において、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電又は放電を行う場合の充電パワーまたは放電パワーは、その充電又は放電の有無に拘らず上記車両8の駆動力が維持されるように、電動機MGなどの各要素の動力損失が考慮された上で決められるのが好ましい。
【0062】
また、前述の実施例において、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電を行う場合に実行される自動変速機18のダウン変速は、充電時のエンジン動作点がエンジン12の最高熱効率線Ltefに最も近付くまで複数回実行されても差し支えない。車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の放電を行う場合に実行される自動変速機18のアップ変速についても同様である。
【符号の説明】
【0063】
8:ハイブリッド車両(車両)
12:エンジン
18:自動変速機
24:駆動輪
57:蓄電装置
58:電子制御装置(車両用駆動制御装置)
MG:電動機
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両において蓄電装置の充電または放電を行う際の走行制御に関する。
【背景技術】
【0002】
有段の自動変速機を備えたハイブリッド車両が、従来から知られている。例えば、そのハイブリッド車両を制御する車両用駆動制御装置が特許文献1に開示されている。その特許文献1の車両用駆動制御装置は、上記自動変速機(有段変速機)の変速の必要性があると判断した場合に、その変速に先立って充電量の増減量を算出し、その充電量の増減量に基づいてエンジンの動作点を変更する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−096574号公報
【特許文献2】特開2010−275955号公報
【特許文献3】特開2006−090154号公報
【特許文献4】特開平6−048222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記自動変速機が変速された場合、その自動変速機の入力回転速度は変速前後で変化する。前記特許文献1の車両用駆動制御装置では、動力分配装置の制御により上記自動変速機の入力回転速度にエンジン動作点が拘束されないように制御し得るが、その動力分配装置を備えないハイブリッド車両では、エンジン動作点は上記自動変速機の入力回転速度に拘束される。その場合、自動変速機の変速によって、エンジン動作点が変速前と比較して燃費がかえって悪化するように変更されることが想定された。例えば、ハイブリッド車両が有する蓄電装置の充電量の増減を行うためにエンジン動作点が変更される場合に、自動変速機の変速を伴ってエンジン動作点が変更されるよりも、自動変速機の変速段を現状維持してエンジン動作点が変更される方が、燃費が良好になることがあり得ると想定された。なお、このような課題は未公知のことである。
【0005】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ハイブリッド車両において、車両の燃費悪化を抑えつつ蓄電装置の充放電を適切に行うことができる車両用駆動制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための第1発明の要旨とするところは、(a)エンジンから駆動輪への動力伝達経路の一部を構成する有段の自動変速機と、その動力伝達経路に連結された電動機と、その電動機と電気的に接続された蓄電装置とを備えた車両において、前記蓄電装置の充電を行う場合にはエンジンパワーの一部を前記電動機に回生させる一方で、前記蓄電装置の放電を行う場合には前記電動機を駆動して電力を消費する車両用駆動制御装置であって、(b)前記車両の駆動力を維持しつつ前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合には、前記エンジンの動作点がそのエンジンの最高熱効率線に基づいて予め定められた目標エンジン動作範囲内に入るようにそのエンジンの動作点を定めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
このようにすれば、エンジンの熱効率の悪化をある程度は抑えつつ前記蓄電装置の充電又は放電を行うことができるので、車両の燃費悪化を抑えつつ蓄電装置の充放電を適切に行うことができる。なお、燃費とは、例えば単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。逆に、燃費の低下(悪化)とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が短くなることであり、或いは、燃料消費率が大きくなることである。
【0008】
また、第2発明の要旨とするところは、前記第1発明の車両用駆動制御装置であって、前記車両の駆動力を維持しつつ前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合において、走行パワーと充電パワー又は放電パワーとから定まる前記エンジンの動作点が、前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲から外れる場合には、前記自動変速機を変速することにより前記エンジンの動作点をその目標エンジン動作範囲内に入れる一方で、前記エンジンの動作点が前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲内に入る場合には、前記自動変速機の現在の変速段を保持することを特徴とする。このようにすれば、前記蓄電装置の充電又は放電を行うことに伴ってエンジンの熱効率を悪化させるような自動変速機の変速は行われないことになるので、その自動変速機の変速に起因して燃費が悪化するという事態を避けることができる。すなわち、燃費悪化を抑えつつ蓄電装置の充放電を適切に行うことができる。
【0009】
また、第3発明の要旨とするところは、前記第2発明の車両用駆動制御装置であって、(a)前記自動変速機の変速を行うための変速線図が予め定められており、(b)前記走行パワーと前記充電パワー又は放電パワーとから定まる前記エンジンの動作点が前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲から外れる場合には、前記車両に対して要求される車両要求負荷量に、前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量を充電時を正方向として加えた合計負荷量に基づいて、前記変速線図から前記自動変速機の変速を行うか否かを判断することを特徴とする。このようにすれば、前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合もそうでない場合も、共通の上記変速線図を用いて自動変速機を変速することができ、制御負荷の軽減を図ることが可能である。
【0010】
また、第4発明の要旨とするところは、前記第3発明の車両用駆動制御装置であって、(a)前記変速線図は、車速とアクセル開度との二次元座標で構成されており、(b)前記車両要求負荷量は、実際のアクセル開度で表され、(c)前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量は、その充電パワー又は放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度で表されることを特徴とする。このようにすれば、自動変速機の変速を行うか否かの判断を車速とアクセル開度とに基づいて行うことができ、車速およびアクセル開度は何れもセンサ等により検出容易であるので、上記変速を行うか否かの判断を容易に行うことができる。
【0011】
また、第5発明の要旨とするところは、前記第2発明から前記第4発明の何れか一の車両用駆動制御装置であって、(a)前記蓄電装置の充電を行う場合に実行する前記自動変速機の変速はダウン変速であり、その蓄電装置の放電を行う場合に実行するその自動変速機の変速はアップ変速であることを特徴とする。このようにすれば、前記蓄電装置の充電を行う場合には、前記自動変速機のダウン変速により、その蓄電装置の充電に適した方向にエンジンの動作状態を変化させることができる。また、前記蓄電装置の放電を行う場合には、前記自動変速機のアップ変速により、その蓄電装置の放電に適した方向にエンジンの動作状態を変化させることができる。
【0012】
ここで、好適には、(a)前記目標エンジン動作範囲は、前記蓄電装置の充電を行う場合とその蓄電装置の放電を行う場合との各々に対して予め定められており、(b)前記蓄電装置の充電を行う場合における前記目標エンジン動作範囲は、エンジンパワーを維持しつつ前記自動変速機のダウン変速をしたと仮定した場合のそのダウン変速後のエンジンの動作点と比較して、そのエンジンの熱効率が同等以上となる前記ダウン変速前のエンジンの動作点が存在する範囲であり、(c)前記蓄電装置の放電を行う場合における前記目標エンジン動作範囲は、エンジンパワーを維持しつつ前記自動変速機のアップ変速をしたと仮定した場合のそのアップ変速後のエンジンの動作点と比較して、そのエンジンの熱効率が同等以上となる前記アップ変速前のエンジンの動作点が存在する範囲である。なお、前記自動変速機のダウン変速またはアップ変速にて前記エンジンパワーが維持されるとは、エンジンパワーが変速前後で同一であること、または、エンジンパワーが変速前後で同一であるとみなせる程度の範囲内でそのエンジンパワーが変動することである。
【0013】
また、好適には、前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合とは、その蓄電装置に対し予め設定されている充放電制限によりその蓄電装置の充電又は放電を強制的に行う場合である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例であるハイブリッド車両に係る駆動系統の構成を概念的に示す図である。
【図2】図1のハイブリッド車両において、エンジン熱効率と自動変速機のダウン変速との関係を説明するための図である。
【図3】図1のハイブリッド車両において、エンジン熱効率と自動変速機のアップ変速との関係を説明するための図である。
【図4】図1の電子制御装置に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。
【図5】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段において充電時想定エンジン動作点がLTc基準範囲内に入っている例を示した図である。
【図6】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段において充電時想定エンジン動作点がLTc基準範囲から外れている例を示した図である。
【図7】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段において放電時想定エンジン動作点がLTd基準範囲内に入っている例を示した図である。
【図8】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段において放電時想定エンジン動作点がLTd基準範囲から外れている例を示した図である。
【図9】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段から1段低速側にダウン変速することを判断するためのダウン変速線を、変速線図から抜粋した図である。
【図10】図1のハイブリッド車両が有する自動変速機の現在の変速段から1段高速側にアップ変速することを判断するためのアップ変速線を、変速線図から抜粋した図である。
【図11】図1の電子制御装置の制御作動の要部、すなわち、ハイブリッド車両の駆動力を維持しつつ蓄電装置の充放電を行う場合にエンジン熱効率を低下させないように自動変速機の変速判断を行う制御作動を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【実施例】
【0016】
図1は、本発明の一実施例であるハイブリッド車両8(以下、単に「車両8」ともいう)に係る駆動系統の構成を概念的に示す図である。この図1に示すハイブリッド車両8は、車両用駆動装置10(以下、「駆動装置10」という)と差動歯車装置21と左右1対の車軸22と左右1対の駆動輪24と油圧制御回路34とインバータ56と電子制御装置58とを備えている。そして、その駆動装置10は、走行用駆動力源として機能し公知のガソリンエンジンやディーゼルエンジン等であるエンジン12と、そのエンジン12の始動または停止やスロットル制御等のエンジン出力制御を行うエンジン出力制御装置14と、走行用駆動力源として機能する走行用電動機である電動機MGと、エンジン断続用クラッチK0と、トルクコンバータ16と、自動変速機18とを備えている。図1に示すように、車両8は、エンジン12と電動機MGとの一方または両方により発生させられた動力が、トルクコンバータ16、自動変速機18、差動歯車装置21、及び左右1対の車軸22をそれぞれ介して左右1対の駆動輪24へ伝達されるように構成されている。そのため、車両8は、エンジン12の動力で走行するエンジン走行と、エンジン12を停止させると共に専ら電動機MGの動力で走行するEV走行(モータ走行)とを択一的に選択して走行することができる。上記エンジン走行では、走行状態に応じて電動機MGがアシストトルクを発生させることがある。
【0017】
前記電動機MGは、エンジン12またはトルクコンバータ16から駆動輪24への動力伝達経路に連結されている。詳細には、その電動機MGのロータ30が、トルクコンバータ16の入力部材であるポンプ翼車16pに相対回転不能に連結されている。電動機MGは、例えば3相の同期電動機であって、動力を発生させるモータ(発動機)としての機能と反力を発生させるジェネレータ(発電機)としての機能とを有するモータジェネレータである。例えば電動機MGは、回生作動することで車両制動力を発生する。また、電動機MGはインバータ56を介して蓄電装置57に電気的に接続されており、電動機MGと蓄電装置57とは相互に電力授受可能な構成となっている。その蓄電装置57は、例えば、鉛蓄電池などのバッテリ(二次電池)又はキャパシタなどである。
【0018】
また、前記エンジン12とその電動機MGとの間の動力伝達経路には、一般的に知られた湿式多板型の油圧式摩擦係合装置で構成されるエンジン断続用クラッチK0が設けられており、そのエンジン断続用クラッチK0は、油圧制御回路34から供給される油圧で作動し、エンジン12と駆動輪24との間の動力伝達を選択的に遮断する動力断続装置として機能する。具体的には、エンジン12の出力部材であるエンジン出力軸26(例えばクランク軸)は、エンジン断続用クラッチK0が係合されることで電動機MGのロータ30に相対回転不能に連結され、エンジン断続用クラッチK0が解放されることで電動機MGのロータ30から切り離される。要するに、上記エンジン出力軸26は、エンジン断続用クラッチK0を介して電動機MGのロータ30に選択的に連結されるようになっている。従って、そのエンジン断続用クラッチK0は、前記エンジン走行では係合されており、前記モータ走行では解放されている。
【0019】
前記自動変速機18は、エンジン12またはトルクコンバータ16から駆動輪24への動力伝達経路の一部を構成しており、エンジン12または電動機MGの動力を駆動輪24に伝達する。そして、自動変速機18は、予め設定された関係(変速線図)に従って変速を行う有段式の自動変速機である。換言すれば、その自動変速機18は、予め定められた複数の変速段(変速比)の何れかが択一的に成立させられる自動変速機構であり、斯かる変速を行うために、複数の遊星歯車装置と油圧制御回路34からの油圧で作動する複数のクラッチまたはブレーキとを備えて構成されている。
【0020】
トルクコンバータ16は、電動機MGと自動変速機18との間に介装された流体伝動装置である。トルクコンバータ16は、入力側回転要素であるポンプ翼車16pと、出力側回転要素であるタービン翼車16tと、ステータ翼車16sとを備えている。そして、トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16pに入力された動力をタービン翼車16tへ流体(作動油)を介して伝達する。ステータ翼車16sは、非回転部材であるトランスミッションケース36に一方向クラッチを介して連結されている。また、トルクコンバータ16は、ポンプ翼車16pとタービン翼車16tとの間に、ポンプ翼車16p及びタービン翼車16tを選択的に相互に直結するロックアップクラッチLUを備えている。そのロックアップクラッチLUは、油圧制御回路34からの油圧で制御される。
【0021】
車両8においては、例えば前記モータ走行から前記エンジン走行への移行に際して、前記エンジン断続用クラッチK0の係合によりエンジン回転速度Neが引き上げられてエンジン12の始動が行われる。
【0022】
また、電子制御装置58は、蓄電装置57の充電残量SOCを、その蓄電装置57の耐久性を維持しつつ電動機MGの作動をできるだけ制限しないように予め実験的に定められた充電残量管理幅内に収まるように調節する。すなわち、その充電残量管理幅は蓄電装置57に対し予め設定されている充放電制限として機能する。例えば、電子制御装置58は、前記エンジン走行中において、蓄電装置57の充電残量SOCがその充電残量管理幅内に収まるようにするために蓄電装置57の充電を行う場合には、エンジンパワーPeの一部を電動機MGに回生させる。逆に、蓄電装置57の放電を行う場合には、電動機MGを駆動して蓄電装置57の電力を消費する。このようにエンジン走行中に蓄電装置57の充電または放電が行われる場合には、エンジンパワーPeが調節されることで車両8の駆動力は、上記充電または放電が行われない場合と変わらないように維持される。
【0023】
車両8は、その図1に例示するような制御系統を備えている。この図1に示す電子制御装置58は、エンジン12および電動機MGの駆動制御を行う車両用駆動制御装置としての機能を含んでおり、所謂マイクロコンピュータを含んで構成されている。図1に示すように、上記電子制御装置58には、前記ハイブリッド車両8に設けられた各センサにより検出される各種入力信号が供給されるようになっている。例えば、アクセル開度センサ60により検出されるアクセルペダル71の踏込量であるアクセル開度Accを表す信号、電動機回転速度センサ62により検出される前記電動機MGの回転速度(電動機回転速度)Nmgを表す信号、エンジン回転速度センサ64により検出される前記エンジン12の回転速度(エンジン回転速度)Neを表す信号、タービン回転速度センサ66により検出される前記トルクコンバータ16のタービン翼車16tの回転速度(タービン回転速度)Ntを表す信号、車速センサ68により検出される車速Vを表す信号、スロットル開度センサ70により検出されるエンジン12のスロットル開度θthを表す信号、蓄電装置57から得られるその蓄電装置57の充電残量(充電状態)SOCを表す信号、及び、加速度センサ72により検出される車両8の前後方向の車両加速度を表す信号等が、上記電子制御装置58に入力される。ここで、電動機回転速度センサ62により検出される電動機回転速度Nmgは、前記トルクコンバータ16の入力回転速度であり、そのトルクコンバータ16におけるポンプ翼車16pの回転速度(ポンプ回転速度)Npに相当する。また、上記タービン回転速度センサ66により検出されるタービン回転速度Ntは、前記トルクコンバータ16の出力回転速度であり、前記自動変速機18における変速機入力軸19の回転速度Natinすなわち変速機入力回転速度Natinに相当する。また、自動変速機18の出力軸20(以下、変速機出力軸20という)の回転速度Natoutすなわち変速機出力回転速度Natoutは、前記車速Vに対応する。
【0024】
また、前記電子制御装置58から、車両8に設けられた各装置に各種出力信号が供給されるようになっている。
【0025】
図2は、エンジン12の熱効率(以下、エンジン熱効率という)と自動変速機18のダウン変速との関係を説明するための図である。図2は、エンジン回転速度Neを横軸としエンジントルクTeを縦軸とする二次元座標で構成されており、本実施例では、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとをパラメータとしてエンジン熱効率が予め実験的に求められ電子制御装置58に記憶されている。また、図2に示す破線L01,L02のようなエンジンパワーPe(単位は例えばkW)が等しいエンジン動作点の連なりである等パワー曲線上でエンジン熱効率が最高になるエンジン動作点をエンジンパワーPeを変化させて連ねた最高熱効率線Ltefが、電子制御装置58に予め記憶されている。また、図2に示す実線LTcも電子制御装置58に予め記憶されている。この実線LTcは、エンジンパワーPeが維持されつつ自動変速機18がダウン変速される等パワーダウン変速が1段低速側に向けて実行されたと仮定した場合に、その等パワーダウン変速後のエンジン熱効率と同等またはそれに近い値となる上記等パワーダウン変速前のエンジン動作点を連ねた曲線である。従って、図2の座標系でのエンジン熱効率の分布から定まる実線LTcは、そのエンジン熱効率の分布を代表する前記最高熱効率線Ltefを基準として定まっているとも言うことができ、実線LTcはその最高熱効率線Ltefに基づいて予め定められている曲線である。そして、実線LTcは自動変速機18の変速段毎にそれぞれ異なって設定されている。例えば、図2の実線LTcが自動変速機18が第3速であるときに採用されるものであると仮定して説明すると、等パワーダウン変速前のエンジン動作点すなわち第3速時のエンジン動作点が実線LTc上の点PT01bであり、上記等パワーダウン変速後のエンジン動作点すなわち第2速時のエンジン動作点が点PT01aであるとすれば、上記エンジン動作点PT01bが示すエンジン熱効率は上記エンジン動作点PT01aが示すエンジン熱効率と同等またはそれに近い値になる。このようなことから、前記実線LTc上を含み実線LTcから前記最高熱効率線Ltef側の範囲(以下、LTc基準範囲という)は、自動変速機18で1段低速側に前記等パワーダウン変速をしたと仮定した場合のそのダウン変速後のエンジン動作点と比較して、エンジン熱効率が同等以上となる上記ダウン変速前のエンジン動作点が存在する範囲であると言える。なお、前記エンジン熱効率とは、例えば、エンジン12に供給された燃料から得られる総熱量のうちエンジン12の仕事に変わった熱量の上記総熱量に対する割合である。
【0026】
図3は、エンジン熱効率と自動変速機18のアップ変速との関係を説明するための図である。図3は、前記図2と同様にエンジン回転速度Neを横軸としエンジントルクTeを縦軸とする二次元座標で構成されている。図3の破線L03,L04は何れも前記等パワー曲線であり、破線L04は破線L03よりも大きいエンジンパワーPeを表す等パワー曲線である。また、図3に示す最高熱効率線Ltefは図2のそれと同じである。電子制御装置58は、前述したように最高熱効率線Ltefと実線LTc(図2参照)とを予め記憶しているが、更に、図3に示す実線LTdも予め記憶している。この実線LTdは、エンジンパワーPeが維持されつつ自動変速機18がアップ変速される等パワーアップ変速が1段高速側に向けて実行されたと仮定した場合に、その等パワーアップ変速後のエンジン熱効率と同等またはそれに近い値となる上記等パワーアップ変速前のエンジン動作点を連ねた曲線である。従って、実線LTdも、前記実線LTcと同様に、前記最高熱効率線Ltefに基づいて予め定められている曲線であると言え、自動変速機18の変速段毎にそれぞれ異なって設定されている。例えば、図3の実線LTdが自動変速機18が第3速であるときに採用されるものであると仮定して説明すると、等パワーアップ変速前のエンジン動作点すなわち第3速時のエンジン動作点が実線LTd上の点PT03bであり、上記等パワーアップ変速後のエンジン動作点すなわち第4速時のエンジン動作点が点PT03aであるとすれば、上記エンジン動作点PT03bが示すエンジン熱効率は上記エンジン動作点PT03aが示すエンジン熱効率と同等またはそれに近い値になる。このようなことから、前記実線LTd上を含み実線LTdから前記最高熱効率線Ltef側の範囲(以下、LTd基準範囲という)は、自動変速機18で1段高速側に前記等パワーアップ変速をしたと仮定した場合のそのアップ変速後のエンジン動作点と比較して、エンジン熱効率が同等以上となる上記アップ変速前のエンジン動作点が存在する範囲であると言える。
【0027】
図4は、前記電子制御装置58に備えられた制御機能の要部を説明するための機能ブロック線図である。図4に示すように、電子制御装置58は、エンジン走行判断部としてのエンジン走行判断手段80と、充放電必要性判断部としての充放電必要性判断手段82と、エンジン動作点判断部としてのエンジン動作点判断手段84と、有段変速制御部としての有段変速制御手段86と、駆動制御部としての駆動制御手段88とを備えている。
【0028】
エンジン走行判断手段80は、車両8が前記エンジン走行中であるか否かを判断する。例えば、エンジン12が作動中であってエンジン断続用クラッチK0が係合されており、車両8が走行中である場合には、車両8がエンジン走行中であると判断する。
【0029】
充放電必要性判断手段82は、車両8が前記エンジン走行中であるとエンジン走行判断手段80により判断された場合において、蓄電装置57の充電または放電の必要性について判断する。具体的には、蓄電装置57の充電残量SOCを前記充電残量管理幅内に収めるために上記充電または放電を行う必要があるか否かを判断する。例えば、充放電必要性判断手段82は、前記充電残量SOCが前記充電残量管理幅の上限付近の所定範囲に入った場合には、蓄電装置57の放電を行う必要があると判断する。その一方で、前記充電残量SOCが前記充電残量管理幅の下限付近の所定範囲に入った場合には、蓄電装置57の充電を行う必要があると判断する。
【0030】
エンジン動作点判断手段84は、蓄電装置57の充電または放電を行う必要があると充放電必要性判断手段82により判断された場合において、自動変速機18の現在の変速段を維持し且つその充電または放電を行ったときのエンジン動作点と実線LTc(図2参照)または実線LTd(図3参照)との関係、言い換えれば、そのエンジン動作点と前記最高熱効率線Ltefとの関係について判断する。上記充電または放電を実際に開始する前に判断する。先ず、蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合ついて説明する。具体的に、エンジン動作点判断手段84は、蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合には、エンジン回転速度Neを検出し、そのエンジン回転速度Neを維持して上記充電を行ったとしたときのエンジン動作点(以下、充電時想定エンジン動作点という)を求める。すなわち、自動変速機18の現在の変速段において、車両走行に供される走行パワーと上記充電に供される充電パワーとから定まるエンジン動作点である充電時想定エンジン動作点を求める。その充電パワーの大きさは、予め一定値に定められていてもよいし、蓄電装置57の充電残量SOCに応じて変更されてもよい。また、上記走行パワーの大きさは、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて求めることができる。そして、エンジン動作点判断手段84は、その求めた充電時想定エンジン動作点が前記実線LTc上またはその実線LTcよりも前記最高熱効率線Ltef側に位置するか否か、すなわち、その充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入るか否かを判断する。このようにエンジン動作点判断手段84は、上記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入るか否かを判断することで、エンジン熱効率の向上の観点から、蓄電装置57の充電の際に自動変速機18のダウン変速を行わず現在の変速段を保持した方が良いか否かを判断している。そのLTc基準範囲は、蓄電装置57の充電を行う場合における本発明の目標エンジン動作範囲に対応する。そして、前記実線LTc(図2参照)は自動変速機18の変速段毎に設定されているので、その目標エンジン動作範囲であるLTc基準範囲も上記変速段毎に設定されていることになる。図5および図6を用いて、蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合ついて更に具体的に説明する。
【0031】
図5および図6は互いに異なる車両8の走行状態を表しており、図5は、自動変速機18の現在の変速段において前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入っている例を示しており、図6はその充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲から外れている例を示している。図5および図6において最高熱効率線Ltefおよび実線LTcは図2のものと同じであり、二点鎖線はエンジン熱効率が等しい点を連ねた等熱効率線である。また、蓄電装置57の充電時にはエンジンパワーPeの一部が蓄電装置57の充電に供されるので、エンジン走行中に蓄電装置57の充電を行ったとしたときのエンジンパワーPeは、走行パワーと充電パワーとを合計したものになる。すなわち、そのエンジンパワーPeは上記走行パワーである走行分パワーと上記充電パワーである充電分パワーとから構成される。図5の破線L05および図6の破線L07は上記走行分パワーを表す互いに異なる等パワー曲線であり、図5の破線L06および図6の破線L08は上記充電を行ったとしたときのエンジンパワーPeを表す互いに異なる等パワー曲線である。図5および図6において上記充電パワーの大きさは、予め一定値に定められていてもよいし、蓄電装置57の充電残量SOCに応じて変更されてもよい。上記走行パワーの大きさは、アクセル開度Accと車速Vとに基づいて求めることができる。また、図5および図6において、N1eは現在のエンジン回転速度Neを意味し、Tcは実線LTc上でエンジン回転速度NeがN1eであるときのエンジン動作点が示すエンジントルクTeを意味し、Tθ0はエンジン回転速度NeがN1eであるときの前記走行分パワーに対応するエンジントルクTeを意味し、TΔθpcはエンジン回転速度NeがN1eであるときの前記充電分パワーに対応するエンジントルクTeを意味し、Tθ0+TΔθpcは、エンジントルクTeであるTθ0とTΔθpcとの和、すなわち、エンジン回転速度NeがN1eであり蓄電装置57の充電を行ったとしたときのエンジンパワーPeに対応するエンジントルクTeを意味している。これらN1e、Tc、Tθ0、TΔθpc、および、後述のTd、TΔθpdは、各図5〜8間で意味は同じであるが、値の大きさが同一というわけではない。
【0032】
例えば、図5および図6において、エンジン動作点判断手段84は、現在のエンジン回転速度Ne(=N1e)を検出し、そのエンジン回転速度Ne(=N1e)に基づいて、前記走行分パワーに対応するエンジントルクTe(=Tθ0)と前記充電分パワーに対応するエンジントルクTe(=TΔθpc)と前記実線LTc上でのエンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Tc)とを求める。更に、そのTθ0とTΔθpcとを合計して、蓄電装置57の充電を行ったとしたときのエンジンパワーPeに対応するエンジントルクTe(=Tθ0+TΔθpc)、すなわち、前記充電時想定エンジン動作点(図5及び図6の点PTch)が示すエンジントルクTeを算出する。そして、エンジン動作点判断手段84は、前記実線LTc上でのエンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Tc)と、前記充電時想定エンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Tθ0+TΔθpc)とを比較し、図5に示すように「Tc≧Tθ0+TΔθpc」であれば、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入ると判断する。その一方で、図6に示すように「Tc<Tθ0+TΔθpc」であれば、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲から外れると判断する。
【0033】
次に、蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合ついて説明する。具体的に、エンジン動作点判断手段84は、蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合には、エンジン回転速度Neを検出し、そのエンジン回転速度Neを維持して上記放電を行ったとしたときのエンジン動作点(以下、放電時想定エンジン動作点という)を求める。すなわち、自動変速機18の現在の変速段において、前記走行パワーと上記放電により出力される放電パワーとから定まるエンジン動作点である放電時想定エンジン動作点を求める。その放電パワーの大きさは、予め一定値に定められていてもよいし、蓄電装置57の充電残量SOCに応じて変更されてもよい。そして、エンジン動作点判断手段84は、その求めた放電時想定エンジン動作点が前記実線LTd(図3参照)上またはその実線LTdよりも前記最高熱効率線Ltef側に位置するか否か、すなわち、その放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入るか否かを判断する。このようにエンジン動作点判断手段84は、上記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入るか否かを判断することで、エンジン熱効率の向上の観点から、蓄電装置57の放電の際に自動変速機18のアップ変速を行わず現在の変速段を保持した方が良いか否かを判断している。そのLTd基準範囲は、蓄電装置57の放電を行う場合における本発明の目標エンジン動作範囲に対応する。すなわち、本発明の目標エンジン動作範囲は、蓄電装置57の充電を行う場合と蓄電装置57の放電を行う場合との各々に対して予め定められている。そして、前記実線LTd(図3参照)は自動変速機18の変速段毎に設定されているので、その目標エンジン動作範囲であるLTd基準範囲も上記変速段毎に設定されていることになる。図7および図8を用いて、蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合ついて更に具体的に説明する。
【0034】
図7および図8は互いに異なる車両8の走行状態を表しており、図7は、自動変速機18の現在の変速段において前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入っている例を示しており、図8はその放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲から外れている例を示している。図7および図8において最高熱効率線Ltefおよび実線LTdは図3のものと同じであり、二点鎖線はエンジン熱効率が等しい点を連ねた等熱効率線である。また、蓄電装置57の放電時にはエンジンパワーPeに電動機MGが出力する放電パワーが加えられたものが走行パワーになるので、エンジン走行中に蓄電装置57の放電を行ったとしたときのエンジンパワーPeは、走行パワーから放電パワーを差し引いたものになる。すなわち、上記走行パワー(走行分パワー)は、エンジンパワーPeと上記放電パワーである放電分パワーとから構成される。図7の破線L09および図8の破線L11は上記放電を行ったとしたときのエンジンパワーPeを表す互いに異なる等パワー曲線であり、図7の破線L10および図8の破線L12は上記走行分パワーを表す互いに異なる等パワー曲線である。図7および図8において上記放電パワーの大きさは、予め一定値に定められていてもよいし、蓄電装置57の充電残量SOCに応じて変更されてもよい。図7および図8において、N1e及びTθ0は、前記図5または図6で表すものと同じ意味であり、Tdは実線LTd上でエンジン回転速度NeがN1eであるときのエンジン動作点が示すエンジントルクTeを意味し、TΔθpdはエンジン回転速度NeがN1eであるときの前記放電分パワーに対応するエンジントルクTeを意味し、Tθ0−TΔθpdは、エンジントルクTeであるTθ0からTΔθpdを差し引いた差、すなわち、エンジン回転速度NeがN1eであり蓄電装置57の放電を行ったとしたときのエンジンパワーPeに対応するエンジントルクTeを意味している。
【0035】
例えば、図7および図8において、エンジン動作点判断手段84は、現在のエンジン回転速度Ne(=N1e)を検出し、そのエンジン回転速度Ne(=N1e)に基づいて、前記走行分パワーに対応するエンジントルクTe(=Tθ0)と前記放電分パワーに対応するエンジントルクTe(=TΔθpd)と前記実線LTd上でのエンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Td)とを求める。更に、そのTθ0からTΔθpdを差し引いて、蓄電装置57の放電を行ったとしたときのエンジンパワーPeに対応するエンジントルクTe(=Tθ0−TΔθpd)、すなわち、前記放電時想定エンジン動作点(図7及び図8の点PTdc)が示すエンジントルクTeを算出する。そして、エンジン動作点判断手段84は、前記実線LTd上でのエンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Td)と、前記放電時想定エンジン動作点が示すエンジントルクTe(=Tθ0−TΔθpd)とを比較し、図7に示すように「Td≦Tθ0−TΔθpd」であれば、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入ると判断する。その一方で、図8に示すように「Td>Tθ0−TΔθpd」であれば、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲から外れると判断する。
【0036】
有段変速制御手段86は、自動変速機18の変速を行うために予め定められている前記変速線図に従って自動変速機18の変速を行うか否かを判断し、その自動変速機18の変速を実行する。そして、有段変速制御手段86は、エンジン動作点判断手段84により、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲から外れると判断された場合、または、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲から外れると判断された場合には、車両8に対して要求される車両要求負荷量に、前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量を充電時を正方向として加えた合計負荷量に基づいて、前記変速線図から自動変速機18の変速を行うか否かを判断する。その車両要求負荷量などの負荷量は、具体的に、スロットル開度θth、エンジン12の吸入空気量、または燃料噴射量などで表されてもよいが、本実施例の前記変速線図は、車速Vとアクセル開度Accとの二次元座標で構成されており、前記車両要求負荷量は実際のアクセル開度Accで表され、前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量は、その充電パワー又は放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Accで表される。その充電パワー又は放電パワーに相当するアクセル開度Accとは、その充電パワー又は放電パワーと同じ大きさのエンジンパワーPeを得るために必要なアクセル開度Accの大きさのことである。
【0037】
具体的に、エンジン動作点判断手段84により前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲から外れると判断された場合について図9を用いて説明する。図9は、自動変速機18の現在の変速段から1段低速側にダウン変速することを判断するためのダウン変速線を前記変速線図から抜粋した図である。図9のV1は車速センサ68により検出される現在の車速Vを示しており、θ0はアクセル開度センサ60により検出される実際のアクセル開度Accを示している。従って、図9の変速線図においてそのV1とθ0とを示す車両状態(点PT0c)のままでは、現在の変速段が保持される。有段変速制御手段86は、エンジン動作点判断手段84により前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲から外れると判断された場合には、実際のアクセル開度Acc(=θ0)に、充電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpc)を加えて得た値(=θ0+Δθpc)を、図9の縦軸のアクセル開度Accとして自動変速機18の変速を判断する。すなわち、図9のΔθcはΔθpcであるとして自動変速機18の変速を判断する。そうすると、図9の変速線図上では車両状態を表す点PT0cが点PT1cに変化しダウン変速線を横切るので、有段変速制御手段86は自動変速機18のダウン変速を実行する。そして、図6に示すように、蓄電装置57の充電開始後のエンジン動作点は上記ダウン変速が実行されなければ点PTchになるところ、そのダウン変速の実行により点PT1chになるので、上記ダウン変速が実行されない場合と比較してエンジン動作点が最高熱効率線Ltefに近付き、前記LTc基準範囲内に入ることになる。
【0038】
その一方で、有段変速制御手段86は、エンジン動作点判断手段84により前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入ると判断された場合には、実際のアクセル開度Acc(=θ0)に、充電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpc)を加えることをせず、その実際のアクセル開度Acc(=θ0)に基づいて自動変速機18の変速を判断する。すなわち、図9のΔθcは零であるとして自動変速機18の変速を判断する。そうすると、図9の変速線図上では車両状態は点PT0cのままであるので、有段変速制御手段86は自動変速機18の現在の変速段を保持する。そして、図5に示すように、エンジン動作点は、蓄電装置57の充電開始後には点PTchになり、前記LTc基準範囲内に入る。この場合、充電開始後のエンジン動作点が自動変速機18のダウン変速により最高熱効率線Ltefから離れるということが、そのダウン変速がなされないことで回避されている。
【0039】
次に、エンジン動作点判断手段84により前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲から外れると判断された場合について図10を用いて説明する。図10は、自動変速機18の現在の変速段から1段高速側にアップ変速することを判断するためのアップ変速線を前記変速線図から抜粋した図である。図10のV1、θ0はそれぞれ図9のV1、θ0と値の大きさが同じということではなく、図10のV1は、車速センサ68により検出される現在の車速Vを示しており、θ0はアクセル開度センサ60により検出される実際のアクセル開度Accを示している。従って、図10の変速線図においてそのV1とθ0とを示す車両状態(点PT0d)のままでは、現在の変速段が保持される。有段変速制御手段86は、エンジン動作点判断手段84により前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲から外れると判断された場合には、実際のアクセル開度Acc(=θ0)から、放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpd)を差し引いて得た値(=θ0−Δθpd)を、図10の縦軸のアクセル開度Accとして自動変速機18の変速を判断する。すなわち、図10のΔθdはΔθpdであるとして自動変速機18の変速を判断する。そうすると、図10の変速線図上では車両状態を表す点PT0dが点PT1dに変化しアップ変速線を横切るので、有段変速制御手段86は自動変速機18のアップ変速を実行する。そして、図8に示すように、蓄電装置57の放電開始後のエンジン動作点は上記アップ変速が実行されなければ点PTdcになるところ、そのアップ変速の実行により点PT1dcになるので、上記アップ変速が実行されない場合と比較してエンジン動作点が最高熱効率線Ltefに近付き、前記LTd基準範囲内に入ることになる。
【0040】
その一方で、有段変速制御手段86は、エンジン動作点判断手段84により前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入ると判断された場合には、実際のアクセル開度Acc(=θ0)から、放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpd)を差し引くことをせず、その実際のアクセル開度Acc(=θ0)に基づいて自動変速機18の変速を判断する。すなわち、図10のΔθdは零であるとして自動変速機18の変速を判断する。そうすると、図10の変速線図上では車両状態は点PT0dのままであるので、有段変速制御手段86は自動変速機18の現在の変速段を保持する。そして、図7に示すように、エンジン動作点は、蓄電装置57の放電開始後には点PTdcになり、前記LTd基準範囲内に入る。この場合、放電開始後のエンジン動作点が自動変速機18のアップ変速により最高熱効率線Ltefから離れるということが、そのアップ変速がなされないことで回避されている。
【0041】
駆動制御手段88は、車両走行中にエンジン12および電動機MGの駆動制御を行う。また、蓄電装置57の充電残量SOCを前記充電残量管理幅内に収めるために蓄電装置57の充電または放電を行う場合には、運転者に違和感を与えないように、車両8の駆動力を維持しつつその充電または放電を行う。具体的には、エンジン走行中において、駆動制御手段88は、充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合には、前記走行パワーに前記充電パワーを加えた大きさのエンジンパワーPeをエンジン12に発生させると共に、そのエンジンパワーPeの一部である充電パワーを電動機MGに回生させ、その充電パワーで蓄電装置57を充電する。その一方で、駆動制御手段88は、充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合には、前記走行パワーから前記放電パワーを差し引いた大きさのエンジンパワーPeをエンジン12に発生させると共にその放電パワーを電動機MGに発生させ、その放電パワーを発生させる電動機MGの電力消費により蓄電装置57の放電を行う。このような蓄電装置57の充電または放電を行うためのエンジン12および電動機MGの出力制御は、有段変速制御手段86による自動変速機18の変速を伴うことがあり、その場合、その充電または放電を行うためのエンジン12および電動機MGの出力制御は、例えば上記変速前に開始されても上記変速後に開始されてもよいし、或いは、その変速中に開始されてもよい。
【0042】
図11は、電子制御装置58の制御作動の要部、すなわち、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充放電を行う場合にエンジン熱効率を低下させないように自動変速機18の変速を判断する制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図11に示す制御作動は、車両8がエンジン走行中である場合に実行される。この図11に示す制御作動は、単独で或いは他の制御作動と並列的に実行される。
【0043】
先ず、図11のステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、蓄電装置57の充電を行う必要があるか否かが判断される。具体的には、蓄電装置57に対し予め設定されている前記充放電制限により蓄電装置57の充電を強制的に行う必要があるか否かが判断される。このSA1の判断が肯定された場合、すなわち、蓄電装置57の充電を強制的に行う必要がある場合には、SA2に移る。一方、このSA1の判断が否定された場合には、SA5に移る。なお、SA1は充放電必要性判断手段82に対応する。
【0044】
エンジン動作点判断手段84に対応するSA2においては、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入るか否かが判断される。具体的には、図5または図6に示す前記Tc、Tθ0、およびTΔθpcから、「Tc−(Tθ0+TΔθpc)」が算出され、その算出値が零以上である場合には、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入ると判断される。このSA2の判断が肯定された場合、すなわち、前記充電時想定エンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入る場合には、SA3に移る。一方、このSA2の判断が否定された場合には、SA4に移る。
【0045】
SA3においては、図9の縦軸のアクセル開度Accすなわち前記変速線図で変速判断に用いられるアクセル開度Accが実際のアクセル開度Acc(=θ0)とされて、自動変速機18の変速が判断される。従って、前記充放電制限による蓄電装置57の充電に起因した自動変速機18の変速は行われない。
【0046】
SA4においては、前記変速線図で変速判断に用いられるアクセル開度Accが、実際のアクセル開度Acc(=θ0)に、充電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpc)を加えて得た値(=θ0+Δθpc)とされて、自動変速機18の変速が判断される。従って、図9に示すように、変速線図上では車両状態を表す点PT0cが点PT1cに変化しダウン変速線を横切るので、自動変速機18のダウン変速が実行される。なお、SA3およびSA4は有段変速制御手段86に対応する。
【0047】
充放電必要性判断手段82に対応するSA5においては、蓄電装置57の放電を行う必要があるか否かが判断される。具体的には、蓄電装置57に対し予め設定されている前記充放電制限により蓄電装置57の放電を強制的に行う必要があるか否かが判断される。このSA5の判断が肯定された場合、すなわち、蓄電装置57の放電を強制的に行う必要がある場合には、SA6に移る。一方、このSA5の判断が否定された場合には、SA9に移る。
【0048】
エンジン動作点判断手段84に対応するSA6においては、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入るか否かが判断される。具体的には、図7または図8に示す前記Td、Tθ0、およびTΔθpdから、「Td−(Tθ0−TΔθpd)」が算出され、その算出値が零以下である場合には、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入ると判断される。このSA6の判断が肯定された場合、すなわち、前記放電時想定エンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入る場合には、SA7に移る。一方、このSA6の判断が否定された場合には、SA8に移る。
【0049】
SA7においては、図10の縦軸のアクセル開度Accすなわち前記変速線図で変速判断に用いられるアクセル開度Accが実際のアクセル開度Acc(=θ0)とされて、自動変速機18の変速が判断される。従って、前記充放電制限による蓄電装置57の放電に起因した自動変速機18の変速は行われない。
【0050】
SA8においては、前記変速線図で変速判断に用いられるアクセル開度Accが、実際のアクセル開度Acc(=θ0)から、放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpd)を差し引いて得た値(=θ0−Δθpd)とされて、自動変速機18の変速が判断される。従って、図10に示すように、変速線図上では車両状態を表す点PT0dが点PT1dに変化しアップ変速線を横切るので、自動変速機18のアップ変速が実行される。
【0051】
SA9においては、前記変速線図で変速判断に用いられるアクセル開度Accが実際のアクセル開度Acc(=θ0)とされて、自動変速機18の変速が判断される。なお、SA7、SA8、およびSA9は有段変速制御手段86に対応する。
【0052】
上述した本実施例によれば、充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の充電を行う必要があると判断された場合、すなわち、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電を行う場合には、図5および図6に示すように、電子制御装置58は、充電時のエンジン動作点が前記LTc基準範囲内に入るようにそのエンジン動作点を定める。また、充放電必要性判断手段82により蓄電装置57の放電を行う必要があると判断された場合、すなわち、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の放電を行う場合には、図7および図8に示すように、電子制御装置58は、放電時のエンジン動作点が前記LTd基準範囲内に入るようにそのエンジン動作点を定める。そして、前記LTc基準範囲は、蓄電装置57の充電を行う場合における、前記最高熱効率線Ltefに基づいて予め定められた前記目標エンジン動作範囲に対応し、前記LTd基準範囲は、蓄電装置57の放電を行う場合における前記目標エンジン動作範囲に対応する。要するに、電子制御装置58は、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電又は放電を行う場合には、エンジン動作点が前記最高熱効率線Ltefに基づいて予め定められた前記目標エンジン動作範囲内に入るようにそのエンジン動作点を定める。従って、エンジン熱効率の悪化をある程度は抑えつつ蓄電装置57の充電又は放電を行うことができるので、車両8の燃費悪化を抑えつつ蓄電装置57の充放電を適切に行うことができる。
【0053】
また、本実施例によれば、電子制御装置58は、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電を行う場合において、走行パワーと充電パワーとから定まるエンジン動作点(充電時想定エンジン動作点)が、自動変速機18の現在の変速段において前記LTc基準範囲から外れる場合には、図6に示すように、自動変速機18をダウン変速することによりエンジン動作点をそのLTc基準範囲内に入れる。その一方で、上記充電時想定エンジン動作点が自動変速機18の現在の変速段において前記LTc基準範囲内に入る場合には、その自動変速機18の現在の変速段を保持する。また、電子制御装置58は、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の放電を行う場合において、走行パワーと放電パワーとから定まるエンジン動作点(放電時想定エンジン動作点)が、自動変速機18の現在の変速段において前記LTd基準範囲から外れる場合には、図8に示すように、自動変速機18をアップ変速することによりエンジン動作点をそのLTd基準範囲内に入れる。その一方で、上記放電時想定エンジン動作点が自動変速機18の現在の変速段において前記LTd基準範囲内に入る場合には、その自動変速機18の現在の変速段を保持する。従って、蓄電装置57の充電又は放電を行うことに伴ってエンジン熱効率を悪化させるような自動変速機18の変速は行われないことになるので、その自動変速機18の変速に起因して燃費が悪化するという事態を避けることができる。すなわち、燃費悪化を抑えつつ蓄電装置57の充放電を適切に行うことができる。また、自動変速機18の変速段が、蓄電装置57の充電状態に応じて決定されるエンジンパワーPeに対して、燃費悪化抑制の観点から適切に選択される。
【0054】
また、本実施例によれば、前記充電時想定エンジン動作点が自動変速機18の現在の変速段において前記LTc基準範囲から外れる場合、または、前記放電時想定エンジン動作点が自動変速機18の現在の変速段において前記LTd基準範囲から外れる場合には、図9および図10に示すように、電子制御装置58は、車両8に対して要求される前記車両要求負荷量に、前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量を充電時を正方向として加えた前記合計負荷量に基づいて、前記変速線図から自動変速機18の変速を行うか否かを判断する。従って、蓄電装置57の充電又は放電を行う場合もそうでない場合も、共通の上記変速線図を用いて自動変速機18を変速することができ、制御負荷の軽減を図ることが可能である。
【0055】
また、本実施例によれば、図9および図10に示すように、前記変速線図は、車速Vとアクセル開度Accとの二次元座標で構成されており、前記車両要求負荷量は実際のアクセル開度Acc(=θ0)で表され、前記充電パワーに相当する負荷量は、その充電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpc)で表され、前記放電パワーに相当する負荷量は、その放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度Acc(=Δθpd)で表される。従って、自動変速機18の変速を行うか否かの判断を車速Vとアクセル開度Accとに基づいて行うことができ、車速Vおよびアクセル開度Accは何れもセンサ68,60等により検出容易であるので、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電または放電を行う場合に自動変速機18の変速を行うか否かの判断を容易に行うことができる。
【0056】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【0057】
例えば、前述の実施例において、自動変速機18は有段式の自動変速機であるが、係合要素の掴み替えによりクラッチ・ツゥ・クラッチ変速を行う自動変速機であってもよいし、ベルト式などのCVTであってそのCVTの変速比が段階的に変更されるものであっても差し支えない。
【0058】
また、前述の実施例の図1において、電動機MGはトルクコンバータ16のポンプ翼車16pに連結されているが、そのポンプ翼車16pにではなく、前記変速機出力軸20に連結されていても差し支えない。
【0059】
また、前述の実施例において、トルクコンバータ16はロックアップクラッチLUを備えているが、そのロックアップクラッチLUを備えていなくても差し支えない。また、トルクコンバータ16も必須ではない。
【0060】
また、前述の実施例において、車両用駆動装置10がエンジン断続用クラッチK0を備えているので、車両8は前記モータ走行を行うことができるが、そのモータ走行を行い得ることは必須ではないので、エンジン断続用クラッチK0が設けられておらずエンジン出力軸26が電動機MGのロータ30に相対回転不能に常時連結されていても差し支えない。
【0061】
また、前述の実施例において、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電又は放電を行う場合の充電パワーまたは放電パワーは、その充電又は放電の有無に拘らず上記車両8の駆動力が維持されるように、電動機MGなどの各要素の動力損失が考慮された上で決められるのが好ましい。
【0062】
また、前述の実施例において、車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の充電を行う場合に実行される自動変速機18のダウン変速は、充電時のエンジン動作点がエンジン12の最高熱効率線Ltefに最も近付くまで複数回実行されても差し支えない。車両8の駆動力を維持しつつ蓄電装置57の放電を行う場合に実行される自動変速機18のアップ変速についても同様である。
【符号の説明】
【0063】
8:ハイブリッド車両(車両)
12:エンジン
18:自動変速機
24:駆動輪
57:蓄電装置
58:電子制御装置(車両用駆動制御装置)
MG:電動機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンから駆動輪への動力伝達経路の一部を構成する有段の自動変速機と、該動力伝達経路に連結された電動機と、該電動機と電気的に接続された蓄電装置とを備えた車両において、前記蓄電装置の充電を行う場合にはエンジンパワーの一部を前記電動機に回生させる一方で、前記蓄電装置の放電を行う場合には前記電動機を駆動して電力を消費する車両用駆動制御装置であって、
前記車両の駆動力を維持しつつ前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合には、前記エンジンの動作点が該エンジンの最高熱効率線に基づいて予め定められた目標エンジン動作範囲内に入るように該エンジンの動作点を定める
ことを特徴とする車両用駆動制御装置。
【請求項2】
前記車両の駆動力を維持しつつ前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合において、走行パワーと充電パワー又は放電パワーとから定まる前記エンジンの動作点が、前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲から外れる場合には、前記自動変速機を変速することにより前記エンジンの動作点を該目標エンジン動作範囲内に入れる一方で、前記エンジンの動作点が前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲内に入る場合には、前記自動変速機の現在の変速段を保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動制御装置。
【請求項3】
前記自動変速機の変速を行うための変速線図が予め定められており、
前記走行パワーと前記充電パワー又は放電パワーとから定まる前記エンジンの動作点が前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲から外れる場合には、前記車両に対して要求される車両要求負荷量に、前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量を充電時を正方向として加えた合計負荷量に基づいて、前記変速線図から前記自動変速機の変速を行うか否かを判断する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動制御装置。
【請求項4】
前記変速線図は、車速とアクセル開度との二次元座標で構成されており、
前記車両要求負荷量は、実際のアクセル開度で表され、
前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量は、該充電パワー又は放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度で表される
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用駆動制御装置。
【請求項5】
前記蓄電装置の充電を行う場合に実行する前記自動変速機の変速はダウン変速であり、該蓄電装置の放電を行う場合に実行する該自動変速機の変速はアップ変速である
ことを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の車両用駆動制御装置。
【請求項1】
エンジンから駆動輪への動力伝達経路の一部を構成する有段の自動変速機と、該動力伝達経路に連結された電動機と、該電動機と電気的に接続された蓄電装置とを備えた車両において、前記蓄電装置の充電を行う場合にはエンジンパワーの一部を前記電動機に回生させる一方で、前記蓄電装置の放電を行う場合には前記電動機を駆動して電力を消費する車両用駆動制御装置であって、
前記車両の駆動力を維持しつつ前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合には、前記エンジンの動作点が該エンジンの最高熱効率線に基づいて予め定められた目標エンジン動作範囲内に入るように該エンジンの動作点を定める
ことを特徴とする車両用駆動制御装置。
【請求項2】
前記車両の駆動力を維持しつつ前記蓄電装置の充電又は放電を行う場合において、走行パワーと充電パワー又は放電パワーとから定まる前記エンジンの動作点が、前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲から外れる場合には、前記自動変速機を変速することにより前記エンジンの動作点を該目標エンジン動作範囲内に入れる一方で、前記エンジンの動作点が前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲内に入る場合には、前記自動変速機の現在の変速段を保持する
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用駆動制御装置。
【請求項3】
前記自動変速機の変速を行うための変速線図が予め定められており、
前記走行パワーと前記充電パワー又は放電パワーとから定まる前記エンジンの動作点が前記自動変速機の現在の変速段において前記目標エンジン動作範囲から外れる場合には、前記車両に対して要求される車両要求負荷量に、前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量を充電時を正方向として加えた合計負荷量に基づいて、前記変速線図から前記自動変速機の変速を行うか否かを判断する
ことを特徴とする請求項2に記載の車両用駆動制御装置。
【請求項4】
前記変速線図は、車速とアクセル開度との二次元座標で構成されており、
前記車両要求負荷量は、実際のアクセル開度で表され、
前記充電パワー又は放電パワーに相当する負荷量は、該充電パワー又は放電パワーに相当する仮想的なアクセル開度で表される
ことを特徴とする請求項3に記載の車両用駆動制御装置。
【請求項5】
前記蓄電装置の充電を行う場合に実行する前記自動変速機の変速はダウン変速であり、該蓄電装置の放電を行う場合に実行する該自動変速機の変速はアップ変速である
ことを特徴とする請求項2から4の何れか1項に記載の車両用駆動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−71467(P2013−71467A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209522(P2011−209522)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】
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