説明

車両用Vベルト室冷却構造

【課題】強制的な冷却を行う構造を装備すると共に、他の装備品のレイアウトがし易く、冷却風の導入効率が良好な車両用Vベルト室冷却構造を提供する。
【解決手段】車体フレーム1にエンジン2が固定され、該エンジン2のVベルト室13に冷却風を導入する吸気通路を有する吸気ダクト16及び該Vベルト室13内の空気を外部に排出する排気通路を有する排気ダクト17が設けられたVベルト室13への冷却構造において、前記エンジン2は、前記車体フレーム1の略V字状の谷部に配置され、前記吸気ダクト16及び排気ダクト17は、該車体フレーム1の略V字状に沿って設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両のエンジンのVベルト変速機が配設されたVベルト室を冷却する構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動二輪車には、エンジン側にVベルト変速機が設けられたものがある。そして、スクータ型車両のようにエンジン・駆動系が一体のユニット構造の場合、Vベルト室に冷却風を通して冷却したものがある。かかるユニット構造の場合、P・S両シーブ間が長いことにより、Vベルトも長くなり、ベルト冷却時間も長くなることから、強制的に冷却風を導入して冷却する必要はない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、このような従来のものにあっては、モーターサイクルタイプの場合には、その逆に、P・S両シーブ間が短くなることにより、Vベルトも短くなり、ベルト冷却時間も短くなるため、より強制的な冷却が必要となる。
【0004】
そこで、この発明は、強制的な冷却を行う構造を装備すると共に、他の装備品のレイアウトがし易く、冷却風の導入効率が良好な車両用Vベルト室冷却構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、車体フレームにエンジンが固定され、該エンジンのVベルト室に冷却風を導入する吸気通路及び該Vベルト室内の空気を外部に排出する排気通路が設けられたVベルト室への冷却構造において、前記エンジンは、前記車体フレームの略V字状の谷部に配置され、前記吸気通路及び排気通路は、該車体フレームの略V字状に沿って設けた車両用Vベルト室冷却構造としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載された発明によれば、吸気・排気通路は車体フレームのV字状に沿って設けることにより、設け易いと共に、他の装備品のレイアウトがし易い。また、各通路は略直線上に延びているため、通気抵抗が小さいため、冷却風の導入効率を向上させることができる、という実用上有益な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】この発明の実施の形態に係る吸気・排気ダクト等の配索状態を示す自動二輪車の概略側面図である。
【図2】同実施の形態にエンジン側のVベルト室内等を示す平面図である。
【図3】同実施の形態に係るヘルメットボックス等を示す側面図である。
【図4】同実施の形態に係るヘルメットボックス等の車幅方向に沿う断面図である。
【図5】同実施の形態に係るヘルメット収納状態を示すシートの前側平面図である。
【図6】同実施の形態に係るフューエルタンク配設状態を示す自動二輪車の側面図である。
【図7】同実施の形態に係る図6のA−A線に沿う断面図である。
【図8】同実施の形態に係る図6のBーB線に沿う断面図である。
【図9】同実施の形態に係るフューエルタンクの上側に荷台が配置された自動二輪車の側面図である。
【図10】同実施の形態に係るバッテリーの配置状態を示す自動二輪車の側面図である。
【図11】同実施の形態に係るバッテリーの配置状態を示す自動二輪車の平面図である。
【図12】同実施の形態に係るシートカバー収納装置等を示す自動二輪車の側面図である。
【図13】同実施の形態に係るシートカバー収納装置等を示す自動二輪車の平面図である。
【図14】同実施の形態に係るシートカバー収納装置等の変形例を示す自動二輪車の側面図である。
【図15】同実施の形態に係るシートカバー収納装置等の変形例を示す自動二輪車の平面図である。
【図16】同実施の形態に係るフートボードの配置状態を示す自動二輪車の側面図である。
【図17】同実施の形態に係るフートボードの配置状態を示す自動二輪車の平面図である。
【図18】同実施の形態に係るロック用ワイヤの巻取り装置の配置状態を示す自動二輪車の側面図である。
【図19】同実施の形態に係るロック用ワイヤの巻取り装置の配置状態を示す車幅方向に沿う概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0009】
図1乃至図19には、この発明の実施の形態を示す。
【0010】
この実施の形態の自動二輪車は、前後輪ブレーキを左右ハンドルレバーL,Rで操作できると共に、エンジン2のCVT変速が行えるアンダーボーン型自動二輪車であり、概略的には、車体フレーム1(以下「フレーム1」という)にエンジン2が固定されると共に、フレーム1の前部には前輪3が配置され、前記エンジン2の後方には後輪4が配置されている。そして、そのフレーム1等が複数のカバーで覆われている。
【0011】
その骨格であるフレーム1は、前方部にヘッドパイプ1dが設けられ、このヘッドパイプ1dから左右一対の前側傾斜部1aが斜め下方に向けて延長されると共に、この前側傾斜部1aから略水平な谷部1cが後方に向けて延長され、更に、この谷部1cの後方には後側傾斜部1bが後ろ上がりに延設されている。
【0012】
この前側傾斜部1a,谷部1c及び後側傾斜部1bで、略V字状に形成され、このV字状の谷部1cにブラケット6を介して前記エンジン2が支持され、このエンジン2の駆動力が、チェーン等を内蔵する駆動力伝達装置7により後輪4に伝達されるようになっている。この後輪4には、リヤクッション9の下端部9aが回動自在に取り付けられ、このリヤクッション9の上端部9bがフレーム1に固定されたブラケット10に回動自在に支持されている。
【0013】
また、そのエンジン2は、4サイクルエンジンで、そのシリンダ軸線が車両前後方向に沿うように略水平に配設されている。
【0014】
このエンジン2には、図1,図2等に示すように、クランクケース2a内にVベルト室13が設けられ、このVベルト室13の上部の前側に吸入口14が形成され、上部の後ろ側に排風口15が形成されている。そして、その吸入口14に冷却風を導入する吸気通路を形成する吸気ダクト16が接続され、排風口15にVベルト室13内の空気を外部に排出する排気通路を形成する排気ダクト17が接続されている。
【0015】
この吸気ダクト16は、フレーム1の略V字状の前側傾斜部1aに沿って、前方で、斜め上方に向けて延長されている。そして、この吸気ダクト16の上端部に形成された吸気開口16aがヘッドパイプ1dの前側で下向きに開口されている。
【0016】
また、排気ダクト17は、フレーム1の略V字状の後側傾斜部1bに沿って、後方で、斜め上方に向けて延長されている。そして、この排気ダクト17の上端部に形成された排気開口17bがシート21の下側でリヤクッション9の上端部9aの後ろ側で後方に向けて開口されている。
【0017】
そのVベルト室13内には、図2に示すように、Pシーブ23のVベルト24当り面と反対面側には、放熱フィンを兼ねた吸込みファン羽根23aが形成されている。この吸込みファン羽根23aの近傍には、円筒状の導風ガイド25が配設され、この導風ガイド25により上方に設けられた吸入口14側と吸込みファン羽根23a側とが連通されている。
【0018】
また、Sシーブ27の内側シーブ27aの更に内側方向には、軸流(プロペラ)ファン28が設置され、Vベルト室13内の空気を外部へ強制排送できるようになっている。この時には、排風は、軸流ファン28の外縁部にある排風ガイド29で導かれて排風口15へ送られ、この排風口15に接続されている排気ダクト17を通して、排気開口17aから車外へ送出されるようになっている。
【0019】
なお、そのVベルト室13下面には図示していないがワンウェイ水抜き機構が設けられている。
【0020】
このようなものにあっては、吸込みファン羽根23a及び軸流ファン28が回転されると共に、走行時のラム圧により、吸気ダクト16の吸気開口16aからこのダクト16内を通って冷却風がVベルト室13内に導入される。そして、このVベルト室13で熱交換された排風は、排気ダクト17を介して車外に排出され、Vベルト室13内の温度上昇が抑制される。
【0021】
P・S両シーブ23,27軸間距離が短いと、必然的にVベルト24が短くなるため、発熱に対してVベルト24の冷却時間が短くなると共に、エンジン構造上、Vベルト室13が発熱部(シリンダ、湿式遠心クラッチ油室)に隣接して配置されて温度上昇し易い。従って、Vベルト室13は熱影響を受け易く、温度が高くなり過ぎるため、上記のようにVベルト室13の冷却を強制的に行うことにより、Vベルト24の性能を維持しつつ、耐久性を向上させるようにしている。
【0022】
また、吸気・排気ダクト16,17を用いて各ダクト開口16a,17aを高い位置に設定することにより、低い位置で、冷却風の吸気及び排気を行う場合よりも、防水及び防塵効果を得ることができる。
【0023】
さらに、吸気・排気ダクト16,17はフレーム1のV字状に沿って配索することにより、配索し易いと共に、他の装備品の配設の邪魔にならず、当該他の装備品のレイアウトがし易い。また、各ダクト16,17は略直線上に延びているため、通気抵抗が小さいことから、冷却風の導入効率を向上させることができる。
【0024】
さらにまた、Vベルト室13に入った水は、ワンウェイ水抜き機構を介して排出されると共に、流動する冷却風で蒸発して除去される。
【0025】
なお、この発明の実施の形態では、吸気ダクト16及び排気ダクト17をフレーム1の略V字状に沿って配索しているが、これに限らず、中空のフレーム1の内部空間を吸気通路及び排気通路として利用することができる。
【0026】
一方、エンジン2と後輪4との間の谷間の部分にヘルメットボックス32が配置されている。このヘルメットボックス32は、内部に収納されるヘルメットHの径の大きい部分に対応した位置で、上側ボックス部33と下側ボックス部34とに上下に分割されている。
【0027】
この上側ボックス部33と下側ボックス部34との合わせ部が後ろ上がりとなるように形成されている。
【0028】
その下側ボックス部34は、上方が開放されて大径開口部34aが形成され、後部側に後部傾斜面34bが形成され、この後部傾斜面34bがリアフェンダ36の一部を兼ねた形状、つまり、この後部傾斜面34bの車幅方向中央部に後輪4の逃げ用の凹部34cが形成されている。また、この下側ボックス部34の底部34dは、ヘルメット形状に合わせて略球面形状に形成され、その底部34dの車幅方向の狭くなった部分の左右両側を、フレーム1の谷部1cが前後方向に沿って挿通されている。この部分付近で、下側ボックス部34がフレーム1にてマウントされて支持されている。これにより、前記下側ボックス部34は、略正立置きの前記ヘルメットHの後部側が収納されるボックス前部の深さL1が深く形成され、ボックス後部の深さL2が浅く形成されている。
【0029】
また、上側ボックス部33は、大径開口部33aを下方にして、ヘルメットHの一部が挿入されるように略球面形状に形成されており、上面はシート21の底板21aに接合され、この底板21aの一部が上側ボックス部33の一部を成している。勿論、反対に上側ボックス部33の一部で、底板21aの一部材を形成するようにすることもできる。
【0030】
この両ボックス部33,34で形成されるヘルメットボックス32には、図3等に示すように、ヘルメットHの頭挿入開口H1側が、下側ボックス部34の後部傾斜面34b側に位置し、ヘルメットHの後頭部側が下側ボックス部34の底部34d側に位置して収納されるようになっている。
【0031】
そして、前記上側ボックス部33が固定されたシート21は、運転者と同乗者が着座できる長さに形成され、上側ボックス部33の下部前端部と下側ボックス部34の上部前端部との間に設けられた前側のヒンジ38により開閉できるようになっている。
【0032】
このシート21を図3に示すように、ヒンジ38を中心に二点鎖線に示すように前方に回動させることにより、下側ボックス部34の大径開口部34aが開かれるようになっている。
【0033】
このように、ヘルメットボックス32は、エンジン2と後輪4との間の谷間の部分に配置され、収納されるヘルメットHの径の大きい部分に対応した位置で、上側ボックス部33と下側ボックス部34とに上下に分割され、この下側ボックス部33は、ボックス前部の深さL1が深く形成され、ボックス後部の深さL2が浅く形成され、且つ、シート21はいわゆる前ヒンジであるため、ヘルメットHを取り出すときに、後方で、斜め上方(図3中矢印P方向)に向けて持ち上げるようにすれば簡単に取り出すことができ、ヘルメットボックス32からのヘルメットHの出入れ性を向上させることができる。
【0034】
しかも、その下側ボックス部34の凹部34c(ヘルメットボックス32内側から見れば凸部)をヘルメットHの頭挿入開口H1にはめ込んでも、下側ボックス部34の大径開口部34aは斜めに開口し、ボックス後部の深さL2が浅く形成されているため、図3中矢印P方向にヘルメットHを引き上げ易い。
【0035】
また、ヘルメットボックス32の後部傾斜面34bをリアフェンダ36の一部として流用し、更に、後輪4外周部に対応する箇所に凹部34cを設けたため、ヘルメットボックス32を極力後方に配置することができ、いわゆるまえぐり空間を広くでき、足抜け性を確保することができる。
【0036】
さらに、上側ボックス部33が逆円錐形状のため、シート底板21aとの接合面は、前方の左右幅を狭くできることから、図5に示すように、シート21前半分の幅h1を着座、着地性を損なわない長さとすることができる。
【0037】
さらにまた、上側ボックス部33の外面を精度良く仕上げてデザイン部品とすることで、サイドカバー40を上方に延長して上側ボックス部33の周囲を覆う必要がないため、サイドカバー40の小型化を図ることができると共に、別部品で上側ボックス部33の周囲を覆う必要もなく部品点数の削減を図ることができる。
【0038】
また、ヘルメットボックス32は、収納されるヘルメットHの径の大きい部分に対応した位置で、上側ボックス部33と下側ボックス部34とに上下に分割されているため、両ボックス部33,34の型抜き性が良好である。
【0039】
しかも、上側ボックス部33と下側ボックス部34との合わせ部が、アンダーボーン上縁部に沿っているため、外観品質が良好である。
【0040】
一方、そのヘルメットボックス32の後方には、図6乃至図8に示すように、後輪4の上方に、フューエルタンク42がフレーム1に吊り下げられるようにして支持されて配置されている。このフューエルタンク42は、タンク本体42aとこのタンク本体42aから両側に膨出した膨出部42bとを有し、ヘルメットボックス32の後方から斜め後ろ上がりに延びている。
【0041】
そのタンク本体42aは、前端部42cがヘルメットボックス32の後部傾斜面34bに略接するように配置され、上部側が、後輪軸上方で略水平方向に沿う左右一対のリヤフレーム1eの間に位置している。このタンク本体42aは、前端部42cが、前方に配設されたヘルメットボックス32の形状に沿った(後ろ上がり傾斜)形状に形成され、下面はフューエルタンク42側方に配置されているサイドカバー40の下端ラインよりも上側となるように配置され、又、タンク本体42a下面中央部は、スイングアーム揺動で上下する後輪4を受容するように上方に凹む凹部42dが形成されている(図7及び図8参照)。
【0042】
また、このタンク本体42aには、上面の高い位置に注油口42eが設けられ、注油に際しては、シート21を開くことにより、フューエルタンク42上面が開放されて、注油できるようになっている。
【0043】
さらに、膨出部42bは、リヤフレーム1eより車幅方向外側に張り出し、外方にあるサイドカバー40の内幅近くまで突出されて容積が確保されるようになっている(図8参照)。
【0044】
なお、図9に示すように、シート21の長さが短いいわゆるシングルシートで、このシート21の後ろ側に荷台44がヒンジ45を介して回動自在に設けられ、この荷台44に収納箱46が設けられたものにおいては、この荷台44をヒンジ45を中心に回動させることにより、フューエルタンク42上面が開放されて注油できるようになっている。
【0045】
また、タンク本体前端部42cとヘルメットボックス後部傾斜面34bとは、弾性体を介して結合することもでき、又、リヤフェンダ36、サイドカバー40を弾性体を介してフューエルタンク42側壁面に接合することもできる。
【0046】
このように、フルフェイス型ヘルメットHを収納するボックス配置のため、その隣接スペースとしての後方に、フレーム1側方へ張り出す膨出部42bを形成すると共に、後輪4と干渉する部分を凹状とし、又、ヘルメットボックス32壁面に沿わす等、スペースを活用することでタンク容量が確保できる。しかも、タンク本体42aの前端部42cをヘルメットボックス32の後部傾斜面34bの凹部34cに挿入するようにすれば、タンク容量を一層増加できると共に、タンク本体42aの前端部42cを斜め下方に延長することにより、低重心化が図られる。
【0047】
また、サイドカバー40等で側方を覆うことにより、フューエルタンク42の保護を行うと共に、シート21等で上方を覆うことにより、注油口42eのキーを不用にでき、又、任意のサイドカバー40造形で全体デザインを表現しながら、タンク造形の自由度を確保することができる。
【0048】
一方、前記ヘルメットボックス32の前側には、図10及び図11に示すように、バッテリー48が配設されている。詳しくは、懸架されているエンジン2のクランクケース2a前部からシリンダ部2bの上方で、左右一対のフレーム谷部1c間にバッテリ収納容器49が配設されている。このバッテリ収納容器49の底面49aとエンジン2との間には、シリンダ冷却風の流れの支障とならないように、空間が確保されて配置されている。また、導風効果を高めるため、そのバッテリ収納容器49の底面49aは多少前上がりとなっている。勿論、導風効果を高めるために、別途ガイドプレート等の付設したり、又、停車時シリンダ部2bよりの断熱のために断熱シートをバッテリ収納容器49の底面49aに貼り付けることもできる。また、そのバッテリ収納容器49内には、バッテリー48の他に関連電装品を収納する場合もある。
【0049】
このバッテリ収納容器49の両サイド、上面はセンターカバー51、レッグシールド69等のデザインカバーで覆われて、メンテナンスが容易であると共に、美観及び遮水性が図られている。
【0050】
このようにバッテリー48を配置すれば、空スペースを活用しながら、底重心化を図ることができると共に、シート21下が大型ヘルメットH用の容積を占め、機能部品が後方配置になり易いが、ヘルメットボックス32の前側にバッテリー48を配置することで車両前後の重量配分を良好に行うことができ、冷却風を効率的に導入することができる。
【0051】
ちなみに、シート21下にヘルメットボックス32が配置されていないアンダーボーン型自動二輪車では、シート21下付近に十分なスペースがあるため、機能部品の配置が、この部分で行われている。よって、バッテリー48等も高い位置となり重心が高くなる傾向にある。また、スクータ型車両で、この位置にフューエルタンク42を配置したものも見受けられるが、エンジンは後輪4側に配置されたユニットスイング式であり、形態が相違するものである。
【0052】
さらに、図12及び図13に示すように、シート21後端の後方で、リヤボディカバー54上方には、シート21の上方を覆うシートカバー56を収納するシートカバー収納装置55が配置されている。
【0053】
このシートカバー収納装置55の収納ケース57は、上面に細長いスリット状の開口部57aがあり、この開口部57aからシートカバー56が出し入れされるようになっている。このシートカバー56は、収納ケース57内の巻取り軸58に引出し自在に巻回され、シートカバー56の先端部に設けられたシートカバーエンド係着具56aで、前記開口部57aが蓋をされるようになっており、シートカバー56を巻き戻した状態(シートカバー56が巻き取られた状態)で、雨水、ホコリの浸入が防止されるようになっている。また、この収納ケース57の底部には、図示省略の水抜き孔が形成されている。
【0054】
また、シートカバーエンド係着具56aには、フック56bが配設され、シートカバー56を引き出してシート底板21aの前端にあるフック止め具21bに引掛けることにより、シート21上面が覆われるようになっている(図11参照)。
【0055】
さらに、図14及び図15に示すように、グラブバー61の一部を張り出させ、この張出し部61aを収納ケース57の両側に設けられたフラッシャランプ59の側方に位置させることで、フラッシャランプ59を保護することができる。
【0056】
このように収納ケース57からシートカバー56を引き出して、フック56bをシート底板21a前端にあるフック止め具21bに引っ掛けることにより、シート21上面が覆われることとなる。これにより、シート21が濡れないようにすることができると共に、熱くなるのを防止できる。
【0057】
また、収納ケース57をシート21の後ろ側に配置し、この収納ケース57の両端部にフラッシャランプ59を設け、又、背面57cにハイマウントストップランプ付設等を行うことにより、収納ケース57を単機能のみでなく、ケース特有のマイナス要因(高位置、幅広)を、従来の自動二輪車以上の視認性向上等、プラス要因に転向することができる。
【0058】
一方、図16及び図17に示すように、足載せ台であるフートボード63がエンジン2の上側を覆うようにフレーム1又はエンジン2に固定されて張り出した図示省略のブラケットにより片側2ヶ所以上で支えられている。
【0059】
このフートボード63には、運転者用足載せ部63aと、この運転者用足載せ部63aから後方に延長された同乗者用足載せ部63bとが形成され、この運転者用足載せ部63aと同乗者用足載せ部63bとの間で、前記エンジン2の後方位置に切欠き部63cが形成されている。
【0060】
その運転者用足載せ部63aは、図16に示すように、エンジン2のクランクセンタの下方で、クランクケース2aの中央部付近を水平に前後方向に向けて延び、途中より後方部が後ろ上がりとなり、同乗者用足載せ部63bの後端部が後輪4の軸中心の上方を通り、エキゾーストパイプ73及びマフラー74の上方に位置している。
【0061】
また、このフートボード63は、図17に示すように、キックアーム65が設けられた側が、運転者用足載せ部63aと同乗者用足載せ部63bとに前後に分割されている。そして、この同乗者用足載せ部63bは、略水平方向に沿う水平板部63dと、この水平板部63dの車両中央寄りの側縁から上方に立ち上げられた立上げ壁63eとを有し、エンジン2の後端部からリヤクッション9まで渡る長さに形成されている。
【0062】
かかる同乗者用足載せ部63bは、図16に示すように、エンジン2側に固定されたフートボードステー66に数カ所でネジ67止めされている。
【0063】
そして、かかるフートボード63の運転者用足載せ部63aは、前端部がレッグシールド69の下端部に接続され、このフートボード63の運転者用足載せ部63aの前端部の車幅方向の幅は、レッグシールド69の下端部の車幅方向の幅と略同じに形成されている。この前端部から後方に向けてフートボード63の運転者用足載せ部63aの外縁は外側に広がり、その後、切欠き部63cが形成され、この切欠き部63cの後方の同乗者用足載せ部63bは、張出し量が運転者用足載せ部63aより少なく、更に、後端部側は、車両中央に向けて指向させて後方からの衝突に対し、より安全な形とされている。
【0064】
また、フートボード63の内縁形状は、運転者用足載せ部63aにエンジン2等を逃げた逃げ部が形成され、又、同乗者用足載せ部63bに、揺動するリヤアーム71、駆動力伝達装置7を逃げた逃げ部が形成されている。
【0065】
このように、フートボード63でフレーム1に固定されたエンジン2を覆うことにより、エンジン2の熱気が乗員側に伝わるのを防止できる。
【0066】
また、フートボード63のエンジン2後方位置に切欠き部63cが形成されているため、この切欠き部63cを介してエンジン2の熱気を抜くことができると共に、その切欠き部63cを介して乗員は足を付くことができ、足つき性を向上させることができる。さらに、キックアーム65が配設されているときには、その回動スペースとしても利用することができる。
【0067】
さらに、レッグシールド69とフートボード63とを連続させることにより、前方で跳ね上げられた泥水等を遮ることができる。また、レッグシールド69とフートボード63とを連続させることにより、走行風をフートボード63の下に配置されたエンジン2に導き易く、冷却性能を向上させることができると共に、冷却した走行風をその切欠き部63cを介して排出することができるため、冷却効率を向上させることができる。
【0068】
さらにまた、同乗者用足載せ部63bは、単独で後方に延長されているため、強度を如何に確保するかが問題となるが、この同乗者用足載せ部63bには、立上げ壁63eを形成して水平板部63dとで断面略L字型とすることにより、強度を確保することができる。また、この立上げ壁63eにより、後輪4側を覆うことができるため、揺動するリヤアーム71や後輪4との接触を防止することができる。
【0069】
なお、同乗者用足載せ部63bの水平板部63dを上方に折り畳むことができるようにすれば、同乗者がいないときなどには、この水平板部63dを上方に折り畳むことにより、キックアーム65踏込み時等に邪魔になることがない。勿論、キックアーム65が配設されていない側も、前後分割式とすることもできる。
【0070】
ちなみに、かかる自動二輪車は、前後輪ブレーキを左右ハンドルレバーL,Rで操作できると共に、エンジン2のCVT変速が行えるため、フートボード63には、リヤブレーキペダル用孔、チェンジレバー逃げ用切欠き等が不用となる。
【0071】
なお、同乗者用足載せ部63bに補助キャリアを付設し、荷物の積載機能を付加することもできる。荷物としては、アタッシュケース等の幅の薄い物が好適である。
【0072】
さらに、図18及び図19に示すように、フューエルタンク42の後ろ側で、後輪4の上方のサイドカバー40内には、ロック用ワイヤ76の巻取り装置77が配設されている。この巻取り装置77は、フレーム1等に固着された収納箱78内に巻取り軸79が巻き取り方向に付勢されて配設され、この巻取り軸79にロック用ワイヤ76の元端が固定され、先端には鈎形状のフック部76aが設けられ、このフック部76aが、収納箱78の引出開口78aの周縁部に当接した状態で、底面部から下方に突出している。この状態では、巻取り軸79が巻き取り方向に付勢されているため、フック部76aが収納箱78の引出開口78aの周縁部に押し付けられるようにして当接していることからガタ付きが防止されている。
【0073】
このフック部76aを持って引っ張ることにより、ロック用ワイヤ76を収納箱78から引き出し、サイドカバー40とその内側にあるリアフェンダ36との間を通して下方に引き出すことができるようになっている。そして、このフック部76a及びロック用ワイヤ76を、後輪4のリム4a内を通した後、リヤフレーム71に固定された係止部材80の係止孔80aに挿入し、施錠機構部81にてロックされるようになっている。この施錠機構部81は、キー操作やリモートコントロールにより、施錠又は開錠ができるようになっている。
【0074】
なお、そのフック部76aの代わりに、手錠のような鍵付きキャッチ機構を設けることもできる。
【0075】
このように巻取り装置77をサイドカバー40内に配置することにより、ロック不使用時はロック用ワイヤ76が収納箱78内に収納されて外部に露出することがないため、外観品質が良好となる。
【符号の説明】
【0076】
1 車体フレーム
1a 前側傾斜部
1b 後側傾斜部
1c 谷部
2 エンジン
3 前輪
4 後輪
13 Vベルト室
16 吸気ダクト(吸気通路)
17 排気ダクト(排気通路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体フレームにエンジンが固定され、該エンジンのVベルト室に冷却風を導入する吸気通路及び該Vベルト室内の空気を外部に排出する排気通路が設けられたVベルト室への冷却構造において、
前記エンジンは、前記車体フレームの略V字状の谷部に配置され、前記吸気通路及び排気通路は、該車体フレームの略V字状に沿って設けたことを特徴とする車両用Vベルト室冷却構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−280380(P2010−280380A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−166818(P2010−166818)
【出願日】平成22年7月26日(2010.7.26)
【分割の表示】特願2000−325888(P2000−325888)の分割
【原出願日】平成12年10月25日(2000.10.25)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】