説明

車両走行制御装置

【課題】異常が発生することで、異常な目標制御量に基づいて車速調整装置が制御されることを抑制することができる車両走行制御装置を提供すること。
【解決手段】車両走行制御装置1−1では、自動走行制御ECU7において車速Vが予め設定された目標車速Voとなるように目標駆動力Foを算出し、エンジンECU8においてエンジンECU8に出力された目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御する。エンジンECU8は、運転者による制動操作を検出した場合、自動走行制御ECU7において予め設定された車速Vを低速目標車速Volとすることができる低速上限値FL2以下となるように算出された目標駆動力FoがエンジンECU8において予め設定された車速Vを低速目標車速Volとすることができる基準低速上限値FL2´を超えると判定する場合、目標駆動力Fo制御量に基づいた自動走行制御を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行制御装置に関し、更に詳しくは、車両走行制御装置の異常を判定する車両走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両には、運転者による車両の運転操作を軽減するものとして、車両の車速が目標車速となるように一定車速制御を行う定速走行制御や、先行車両に対して自車両を追従走行させるように車速制御を行う追従走行制御、すなわちアダプティブクルーズコントロール(ACC)などの自動走行制御を行う車両走行制御装置が搭載されている。車両走行制御装置では、自動走行制御ECUにより車両の車速が目標車速となるように目標制御量として目標駆動力が算出され、算出された目標駆動力がエンジンECUに出力され、エンジンECUが目標駆動力に基づいて車両の車速を調整する車速調整装置であるエンジンを制御する。従来の車両走行制御装置では、運転者による制動操作があると、自動走行制御を停止することとしていた。
【0003】
ところで、近年、低車速、例えば10km/h程度で、自動走行制御を行う要望がある。従来の車両走行制御装置では、車両が自動走行制御によって低車速で坂路を自動走行中に、運転者による制動操作があると、自動走行制御が停止してしまうこととなる。車両が低車速で坂路を走行中に自動走行制御が停止してしまうと、運転者による制動操作により発生する制動力によって車両を坂路で停止させることができない場合、車両の位置を維持することができず、車両がずり下がるなど、車両の挙動が変化してしまう虞がある。
【0004】
そこで、従来の車両走行制御装置では、運転者による制動操作があっても、自動走行制御を停止させない技術が提案されている。例えば特許文献1では、運転者による制動操作があっても、自動走行制御を停止させず、自動走行制御ECUが目標車速を減少して、車速が減少した目標車速となるように目標駆動力を算出し、エンジンECUが自動走行制御ECUにより算出された目標駆動力に基づいてエンジンを制御することで、車速を小さくする技術が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−90679号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、急登坂路や荒れた路面を自動走行制御により車両が走行する場合、大きな駆動力をエンジンが出力する状況となる場合がある。この場合、自動走行制御ECUは、大きな目標駆動力を算出する。自動走行制御ECUに異常が発生すると、エンジンECUに出力される目標駆動力が自動走行制御ECUの正常時における目標駆動力と異なる虞がある。例えば、自動走行制御ECUに異常が発生し、正常な自動走行制御ECUが算出する目標駆動力よりも大きな目標駆動力が算出され、エンジンECUに出力される場合がある。自動走行制御ECUに異常が発生した際にエンジンECUに出力された大きな目標駆動力が正常な自動走行制御ECUからエンジンECUに出力されうる値である場合、エンジンECUに出力された目標駆動力が正常なものか異常なものかの判定をエンジンECUが行うことができない。従って、上記のように、自動走行制御ECUが目標車速を減少して、車速が減少した目標車速となるように目標駆動力を算出する際に、自動走行制御ECUが異常であると、減少した目標車速となるように目標駆動力を算出することができず、車両の車速が減少しない虞がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、異常が発生することで、異常な目標制御量に基づいて車速調整装置が制御されることを抑制することができる車両走行制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明では、目標制御量に基づいて車両の車速を調整する車速調整装置を制御する第1ECUと、制御開始トリガーに基づいて自動走行制御を開始し、前記車速が予め設定された目標車速となるように前記目標制御量を算出し、前記第1ECUに出力する第2ECUと、を備える車両走行制御装置において、前記第1ECUは、前記目標制御量、あるいは当該目標制御量に基づいて前記第2ECUにより算出された出力値が当該第1ECUで設定される異常判定条件を満たす場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする。
【0009】
また、本発明では、上記車両走行制御装置において、運転者による制動操作を検出する制動操作検出手段をさらに備え、前記第2ECUは、前記制動操作を検出すると、前記車速が予め設定された前記目標車速よりも低い低速目標車速となるように、前記目標制御量を算出するものであり、前記異常判定条件は、前記目標制御量が減少しているか否かであり、前記第1ECUは、前記目標制御量が減少していないと判定する場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする。
【0010】
また、本発明では、上記車両走行制御装置において、前記第2ECUは、前記目標制御量を予め設定された前記車速を前記低速目標車速とすることができる低速上限値以下となるように算出するものであり、前記異常判定条件は、前記目標制御量が前記第1ECUにおいて予め設定された前記車速を前記低速目標車速とすることができる基準低速上限値を超えるか否かであり、前記第1ECUは、前記目標制御量が前記基準低速上限値を超えると判定する場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする。
【0011】
また、本発明では、上記車両走行制御装置において、運転者による制動操作を検出する制動操作検出手段をさらに備え、前記第2ECUは、前記制動操作が検出され、前記車速が減少していない場合、前記目標制御量を少なくとも前回算出した前回目標制御量よりも減少して算出するものであり、前記異常判定条件は、前記第2ECUが算出した目標制御量が前記前回目標制御量以下であるか否かであり、前記第1ECUは、前記目標制御量が前記前回目標制御量を超えると判定する場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする。
【0012】
また、本発明では、上記車両走行制御装置において、運転者による制動操作量を検出する制動操作量検出手段をさらに備え、前記第2ECUは、前記検出された制動操作量が所定操作量を超える場合、前記目標制御量を予め設定された制動上限値以下に算出するものであり、前記異常判定条件は、前記第2ECUが算出した目標制御量が前記第1ECUにおいて予め設定された前記検出された制動操作量が所定操作量を超える場合における基準制動上限値を超えるか否かであり、前記第1ECUは、前記目標制御量が前記基準制動上限値を超えると判定する場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする。
【0013】
また、本発明では、上記車両走行制御装置において、前記車両が走行する路面の勾配を検出する勾配検出手段をさらに備え、前記目標制御量は、前記勾配で前記車両を停止することができる勾配目標制御量を含むものであり、異常判定条件は、前記第2ECUが前記検出された勾配に基づいて算出した勾配目標制御量が前記第1ECUが当該検出された勾配に基づいて算出した勾配基準値を超えるか否かであり、前記第1ECUは、前記勾配目標制御量が前記勾配基準値を超えると判定する場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする。
【0014】
また、本発明では、上記車両走行制御装置において、運転者による加速操作量を検出する加速操作量検出手段をさらに備え、前記第1ECUは、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わない場合、前記検出された加速操作量に基づいて前記車速調整装置を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる車両走行制御装置は、異常が発生することで、異常な目標制御量に基づいて車速調整装置が制御されることを抑制することができるという効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施の形態により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0017】
〔実施の形態1〕
図1は、実施の形態1にかかる車両走行制御装置の構成例を示す図である。同図に示すように、車両走行制御装置1−1は、図示しない車両に搭載されるものであり、車両の車速が目標車速となるように自動走行制御を行うものである。車両走行制御装置1−1は、自動走行制御スイッチ2と、車速センサ3と、Gセンサ4と、ブレーキスイッチ5と、アクセルセンサ6と、自動走行制御ECU7と、エンジンECU8と、ブレーキECU9とにより構成されている。なお、100は、車両の車速を調整する車速調整装置であり、エンジンECU8により目標制御量である目標駆動力Foに基づいて制御され、車両に駆動力を作用させるエンジンである。また、200は、ブレーキECU9により目標制動力Boに基づいて制御され、車両に制動力を作用させるブレーキ装置である。ここで、ブレーキ装置200は、運転者による制動操作、すなわち運転者による図示しないブレーキペダルを踏み込みに基づいて制動力を発生するものでもある。
【0018】
自動走行制御スイッチ2は、制御開始トリガーである。自動走行制御スイッチ2は、図示しない車両の室内に設けられており、運転者により操作されることでONされるものである。自動走行制御スイッチ2は、自動走行制御ECU7と接続されており、運転者によりONされるとON信号を自動走行制御ECU7に出力する。これにより、自動走行制御スイッチ2は、自動走行制御ECU7が自動走行制御を開始する制御開始トリガーとなる。
【0019】
車速センサ3は、図示しない車両の車速Vを検出するものである。車速センサ3は、自動走行制御ECU7と接続されており、検出された車両の車速Vが自動走行制御ECU7に出力される。ここで、車速センサ3は、例えば、車両の図示しない各車輪に設けられた車輪速センサである。この場合は、自動走行制御ECU7が各車輪に設けられた車速センサ3である車輪速センサからの各車輪の速度に基づいて、車両の車速Vを算出する。
【0020】
Gセンサ4は、勾配検出手段である。Gセンサ4は、図示しない車両の傾きを検出するものである。つまり、Gセンサ4は、車両が現在走行している路面の勾配θを検出するものである。Gセンサ4は、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8と接続されており、検出された勾配θが自動走行制御ECU7およびエンジンECU8に出力される。
【0021】
ブレーキスイッチ5は、制動操作検出手段である。ブレーキスイッチ5は、運転者による制動操作を検出するものである。ブレーキスイッチ5は、図示しない車両の室内に設けられているブレーキペダルが運転者により踏み込まれるとONされるものである。ブレーキスイッチ5は、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8と接続されており、運転者によりブレーキペダルが踏み込まれONされるとON信号を自動走行制御ECU7およびエンジンECU8に出力する。これにより、運転者による制動操作が行われたか否かが自動走行制御ECU7およびエンジンECU8に出力される。
【0022】
アクセルセンサ6は、加速操作量検出手段である。アクセルセンサ6は、運転者による加速操作量Sを検出する。アクセルセンサ6は、図示しない車両の室内に設けられているアクセルペダルが運転者により踏み込まれた踏み込み量を加速操作量Sとして検出するものである。アクセルセンサ6は、エンジンECU8と接続されており、運転者による加速操作量SをエンジンECU8に出力する。
【0023】
自動走行制御ECU7は、第2ECUである。自動走行制御ECU7は、車速Vが予め設定された目標車速Voとなるように目標制御量である目標駆動力Foを算出し、エンジンECU8に出力するものである。また、自動走行制御ECU7は、車速Vが予め設定された目標車速Voとなるように目標制動力Boを算出し、ブレーキECU9に出力するものである。ここで、目標車速Voは、図示しない車両が低車速で走行することができる値であり、例えば10km/h程度である。また、目標車速Voは、例えば自動走行制御スイッチ2を運転者が操作することで可変とすることができる。
【0024】
自動走行制御ECU7は、エンジンECU8により目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御するとともに、ブレーキECU9により目標制動力Boに基づいてブレーキ装置200を制御するものである。つまり、自動走行制御ECU7は、エンジン100とブレーキ装置200とを車速Vが予め設定された目標車速Voとなるように協調制御するものである。自動走行制御ECU7は、自動走行制御判定部71と、駆動力算出部72と、制動力算出部73とを有する。ここで、自動走行制御ECU7のハード構成は、既に公知であるので説明は省略する。
【0025】
自動走行制御判定部71は、運転者による自動走行制御の開始の意志を判定するものである。自動走行制御判定部71は、自動走行制御スイッチ2が運転者により操作されることでONされたことでON信号が出力されたか否かにより、自動走行制御を開始するか否かを判定するものである。
【0026】
駆動力算出部72は、エンジン100に出力させる目標駆動力Foを算出するものである。駆動力算出部72では、車両の車速Vが予め設定されている目標車速Voとなるように、目標駆動力Foを算出する。
【0027】
また、駆動力算出部72では、目標駆動力Foに対して通常上限値FL1および低速上限値FL2が予め設定されている。ここで、通常上限値FL1は、例えば、図示しない車両の走行条件などに拘わらず、車両の車速を目標車速Voとなるように自動走行制御を行う際において目標駆動力Foとして算出されることはない固定値である。また、低速上限値FL2は、車両の車速を目標車速Voよりも低い低速目標車速Volとすることができる目標駆動力Foである。ここで、低速目標車速Volは、例えば0km/hである。低速上限値FL2は、Gセンサ4により検出され、自動走行制御ECU7に出力された勾配θと、予め設定されている車両の諸元に基づいて算出される。つまり、低速上限値FL2は、現在の勾配θにおいて車両の車速を低速目標車速Volとすることができる、すなわち現在の勾配θにおいて車両を停止することができる目標駆動力Foである。なお、低速上限値FL2は、運転者による制動操作量を検出する図示しない制動操作量検出手段により検出された制動操作量に応じてブレーキ装置200が車両に作用させる制動力を引いても良い。
【0028】
駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がOFFでありON信号が出力されないと、車両の車速Vが目標車速Voとなるように算出された目標駆動力Foが通常上限値FL1を超える場合に、目標駆動力Foを通常上限値FL1に置き換えて算出(Fo=FL1)し、エンジンECU8に出力する。一方、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がONとされON信号が出力される、すなわち運転者による制動操作を検出すると、車両の車速Vが目標車速Voとなるように算出された目標駆動力Foが低速上限値FL2を超える場合に、目標駆動力Foを低速上限値FL2に置き換えて(Fo=FL2)算出し、エンジンECU8に出力する。つまり、駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出しないと、車両の車速Vが目標車速Voとなるように目標駆動力Foを算出し、運転者による制動操作を検出すると、車両の車速Vが低速目標車速Volとなるように目標駆動力Foを算出することとなる。
【0029】
制動力算出部73は、ブレーキ装置200に出力させる目標制動力Boを算出するものである。制動力算出部73では、車両の車速Vが予め設定されている目標車速Voとなるように、目標制動力Boを算出する。制動力算出部73は、ブレーキスイッチ5がOFFでありON信号が出力されないと、車両の車速Vが目標車速Voとなるように算出された目標制動力BoをブレーキECU9に出力する。一方、制動力算出部73は、ブレーキスイッチ5がONとされON信号が出力される、すなわち運転者による制動操作を検出すると、車両の車速Vが目標車速Voとなるように算出された目標制動力BoをブレーキECU9に出力しない。
【0030】
エンジンECU8は、第1ECUである。エンジンECU8は、目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御するものである。エンジンECU8は、自動走行制御ECU7と接続されており、自動走行制御ECU7により算出され、出力された目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御する。エンジンECU8は、異常判定部81を有する。
【0031】
異常判定部81は、自動走行制御ECU7からの目標制御量、すなわち目標駆動トルクFoが異常であるか否かを判定するものである。異常判定部81は、自動走行制御ECU7において算出された目標駆動力FoがエンジンECU8で設定されている異常判定条件を満たすか否かを判定し、異常判定条件を満たす場合に自動走行制御ECU7からの目標駆動力Foが異常であると判定するものである。異常判定条件は、実施の形態1では、ブレーキスイッチ5がOFFでありON信号が出力されない場合、自動走行制御ECU7において算出された目標駆動力FoがエンジンECU8において予め設定された基準通常上限値FL1´を超えるか否かである。また、異常判定条件は、ブレーキスイッチ5がONとされON信号が出力される、すなわち運転者による制動操作を検出した場合、自動走行制御ECU7において算出された目標駆動力FoがエンジンECU8において予め設定された基準通常上限値FL1´よりも小さい基準低速上限値FL2´を超えるか否かである。つまり、異常判定条件は、運転者による制動操作を検出した際には、目標制御量である目標駆動力Foが減少しているか否かである。
【0032】
ここで、基準通常上限値FL1´は、例えば、図示しない車両の走行条件などに拘わらず、車両の車速を目標車速Voとなるように自動走行制御を行う際において目標駆動力Foとして算出されることはない固定値である。基準通常上限値FL1´は、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8がともに正常である場合、通常上限値FL1と同一値である。また、基準低速上限値FL2´は、車両の車速を目標車速Voよりも低い低速目標車速Volとすることができる目標駆動力Foである。基準低速上限値FL2´は、Gセンサ4により検出され、自動走行制御ECU7に出力された勾配θと、予め設定されている車両の諸元に基づいて算出される。つまり、基準低速上限値FL2´は、現在の勾配θにおいて車両の車速を低速目標車速Volとすることができる、すなわち低速目標車速Volが0km/hである場合に、現在の勾配θにおいて車両を停止することができる目標駆動力Foである。基準低速上限値FL2´は、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8がともに正常である場合、低速上限値FL2と同一値である。なお、基準低速上限値FL2´は、予め設定された固定値であっても良い。
【0033】
また、エンジンECU8は、異常判定部81により自動走行制御ECU7が異常であると判定すると、自動走行制御ECU7において算出された目標駆動力Foに基づいた自動走行制御を行わない、すなわち目標駆動力Foに基づいてエンジン100を作動させない。エンジンECU8は、目標駆動力Foに基づいた自動走行制御を行わない場合、アクセルセンサ6により検出された加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する。つまり、エンジンECU8は、目標駆動力Foに基づいた自動走行制御を行わない場合、自動走行制御が停止され、運転者の加速操作に基づいてエンジン100を運転制御する通常制御となる。
【0034】
ブレーキECU9は、目標制動力Boに基づいてブレーキ装置200を制御するものである。ブレーキECU9は、自動走行制御ECU7と接続されており、自動走行制御ECU7により算出され、出力された目標制動力Boに基づいてブレーキ装置200を制御する。
【0035】
次に、実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1を用いた自動走行制御について説明する。図2は、実施の形態1にかかる車両走行制御装置の自動走行制御ECUの動作フローを示す図である。図3は、実施の形態1にかかる車両走行制御装置のエンジンECUの動作フローを示す図である。図4は、実施の形態1にかかる自動走行制御の動作説明図である。ここでは、車両走行制御装置1−1を用いた自動走行制御のうち、自動走行制御ECU7とエンジンECU8との関係について説明する。なお、車両走行制御装置1−1による自動走行制御は、車両走行制御装置1−1の制御周期ごとに行われる。
【0036】
まず、自動走行制御ECU7の動作について説明する。まず、自動走行制御ECU7は、図2に示すように、入力処理を行う(ステップST101)。ここでは、自動走行制御ECU7は、自動走行制御スイッチ2のON/OFF状態、車速センサ3により検出され出力された車速V、Gセンサ4により検出された勾配θ、ブレーキスイッチ5のON/OFF状態などを取得する。
【0037】
次に、自動走行制御ECU7の自動走行制御判定部71は、自動走行制御スイッチ2がONであるか否かを判定する(ステップST102)。ここでは、自動走行制御判定部71は、上記取得した自動走行制御スイッチ2のON/OFF状態に基づいて、運転者による自動走行制御の開始の意志を判定するものである。
【0038】
次に、自動走行制御ECU7の駆動力算出部72は、自動走行制御スイッチ2がONであると判定される(ステップST102肯定)と、目標駆動力Foを算出する(ステップST103)。ここでは、駆動力算出部72は、上記取得された車速Vが目標車速Voとなるように目標駆動力Foを算出する。
【0039】
次に、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がONであるか否かを判定する(ステップST104)。ここでは、駆動力算出部72は、上記取得したブレーキスイッチ5のON/OFF状態に基づいて、運転者による制動操作を検出したか否かを判定するものである。
【0040】
次に、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がOFFであると判定される(ステップST104否定)と、上限値FLを通常上限値FL1とする(ステップST105)。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出していない場合は、通常の自動走行制御を維持するため、図示しない車両の走行条件などに拘わらず、車両の車速を目標車速Voとなるように自動走行制御を行う際において算出されない目標駆動力Foである通常上限値FL1を上限値FLに設定する(FL=FL1)。
【0041】
また、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がONであると判定される(ステップST104肯定)と、上限値FLを低速上限値FL2とする(ステップST106)。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出した場合は、図示しない車両の車速を低速目標車速Volとなるように自動走行制御するために、車両の車速を目標車速Voよりも低い低速目標車速Volとすることができる目標駆動力Foである低速上限値FL2を上記取得されたGセンサ4により検出され出力された勾配θと、予め設定されている車両の諸元に基づいて算出し、上限値FLに設定する(FL=FL2)とする。
【0042】
次に、駆動力算出部72は、算出された目標駆動力Foが上記設定された上限値FLを超えるか否かを判定する(ステップST107)。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出していない場合、算出された目標駆動力Foが通常上限値FL1を超えるか否かを判定し、運転者による制動操作を検出した場合、算出された目標駆動力Foが低速上限値FL2を超えるか否かを判定する。
【0043】
次に、駆動力算出部72は、算出された目標駆動力Foが上記設定された上限値FLを超えると判定される(ステップST107肯定)と、算出された目標駆動力Foを上限値FLに置き換える(Fo=FL)(ステップST108)。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出していない場合、算出された目標駆動力Foを通常上限値FL1に置き換え(Fo=FL1)、運転者による制動操作を検出した場合、算出された目標駆動力Foを低速上限値FL2に置き換える(Fo=FL2)。また、駆動力算出部72は、算出された目標駆動力Foが上記設定された上限値FL以下であると判定される(ステップST107否定)と、算出された目標駆動力Foを維持する。
【0044】
また、駆動力算出部72は、自動走行制御スイッチ2がOFFであると判定される(ステップST102否定)と、目標駆動力Foを0に算出する(Fo=0)(ステップST109)。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による自動走行制御の開始の意志がない場合、すなわち自動走行制御が行われていない場合、エンジンECU8が目標駆動力Foにより駆動力を出力しないように、目標駆動力Foを0とする。
【0045】
次に、自動走行制御ECU7は、目標駆動力FoをエンジンECU8に出力する(ステップST110)。ここでは、自動走行制御ECU7は、算出された目標駆動力Foが上記設定された上限値FLを超えていない場合、車両の車速を目標車速Voとすることができる目標駆動力FoをエンジンECU8に出力することとなる。また、自動走行制御ECU7は、運転者による制動操作を検出していない場合、算出された目標駆動力Foが通常上限値FL1を超えると通常上限値FL1をエンジンECU8に出力することとなる。また、自動走行制御ECU7は、運転者による制動操作を検出した場合、算出された目標駆動力Foが低速上限値FL2を超えると低速上限値FL2をエンジンECU8に出力することとなる。また、自動走行制御ECU7は、自動走行制御が行われていない場合、0の目標駆動力FoをエンジンECU8に出力することとなる。なお、自動走行制御ECU7は、目標駆動力FoをエンジンECU8に出力すると現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0046】
次に、エンジンECU8の動作について説明する。まず、エンジンECU8は、図3に示すように、入力処理を行う(ステップST111)。ここでは、エンジンECU8は、エンジンECU8に自動走行制御ECU7から出力された目標駆動力Fo、Gセンサ4により検出された勾配θ、ブレーキスイッチ5のON/OFF状態、アクセルセンサ6により検出された加速操作量Sなどを取得する。
【0047】
次に、エンジンECU8の異常判定部81は、異常フラグHが0であるか否かを判定する(ステップST112)。ここでは、異常判定部81は、自動走行制御ECU7が異常である場合に1となる異常フラグHが0であるか否かを判定することで、自動走行制御ECU7からの目標駆動力Foがすでに異常であるか否かを判定する。
【0048】
次に、異常判定部81は、異常フラグHが0であると判定する(ステップST112肯定)と、目標駆動力Foが0であるか否かを判定する(ステップST113)。ここでは、異常判定部81は自動走行制御ECU7が異常でないと判定されると、自動走行制御が行われているか否かを判定する。
【0049】
次に、異常判定部81は、目標駆動力Foが0でないと判定される(ステップST113否定)と、ブレーキスイッチ5がONであるか否かを判定する(ステップST114)。ここでは、異常判定部81は、上記取得したブレーキスイッチ5のON/OFF状態に基づいて、運転者による制動操作を検出したか否かを判定するものである。
【0050】
次に、異常判定部81は、ブレーキスイッチ5がOFFであると判定される(ステップST114否定)と、基準上限値FL´を基準通常上限値FL1´とする(ステップST115)。ここでは、異常判定部81は、運転者による制動操作を検出していない場合は、自動走行制御ECU7により通常の自動走行制御が維持されるため、図示しない車両の走行条件などに拘わらず、車両の車速を目標車速Voとなるように自動走行制御を行う際において算出されない目標駆動力Foである基準通常上限値FL1´を基準上限値FL´に設定する(FL´=FL1´)とする。
【0051】
また、異常判定部81は、ブレーキスイッチ5がONであると判定される(ステップST114肯定)と、基準上限値FL´を基準低速上限値FL2´とする(ステップST116)。ここでは、異常判定部81は、運転者による制動操作を検出した場合は、図示しない車両の車速を低速目標車速Volとなるように自動走行制御するために、車両の車速を目標車速Voよりも低い低速目標車速Volとすることができる目標駆動力Foである基準低速上限値FL2´を上記取得されたGセンサ4により検出され出力された勾配θと、予め設定されている車両の諸元に基づいて算出し、基準上限値FL´に設定する(FL´=FL2´)とする。
【0052】
次に、異常判定部81は、算出された目標駆動力Foが上記設定された基準上限値FL´を超えるか否かを判定する(ステップST117)。ここでは、異常判定部81は、運転者による制動操作を検出していない場合、自動走行制御ECU7により算出された目標駆動力FoがエンジンECU8において予め設定された基準通常上限値FL1´を超えるか否かを判定し、運転者による制動操作を検出した場合、自動走行制御ECU7により算出された目標駆動力FoがエンジンECU8において予め設定された基準低速上限値FL2´を超えるか否かを判定する。
【0053】
ここで、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8が正常であれば、自動走行制御ECU7により算出された通常上限値FL1とエンジンECU8により算出された基準通常上限値FL1´とは、同じ値となり、自動走行制御ECU7により算出された低速上限値FL2とエンジンECU8により算出された基準低速上限値FL2´とは、同じ値となる。従って、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8が正常であれば、運転者による制動操作を検出していない場合、算出された目標駆動力Foは、基準通常上限値FL1´を超えることがない。また、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8が正常であれば、運転者による制動操作を検出した場合、算出された目標駆動力Foは、基準低速上限値FL2´を超えることがない。つまり、運転者による制動操作を検出していない場合で、算出された目標駆動力Foが基準通常上限値FL1´を超えることは、異常が発生しているからである。また、運転者による制動操作を検出した場合で、算出された目標駆動力Foが基準低速上限値FL2´を超えることは、異常が発生しているからである。
【0054】
次に、異常判定部81は、算出された目標駆動力Foが上記設定された基準上限値FL´を超えると判定する(ステップST117肯定)と、異常フラグHを1とする(ステップST118)。ここでは、異常判定部81は、算出された目標駆動力Foが運転者による制動操作を検出していない場合に基準通常上限値FL1´を超える、あるいは運転者による制動操作を検出した場合に基準低速上限値FL2´を超えると、自動走行制御ECU7が異常であると判定する。
【0055】
次に、エンジンECU8は、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する(ステップST119)。ここでは、エンジンECU8は、異常判定部81が自動走行制御ECU7により算出された目標駆動力Foが異常判定条件を満たす場合は、算出された目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御しない。つまり、エンジンECU8は、算出された目標駆動力Foに基づいた自動走行制御を行わない。なお、エンジンECU8は、異常フラグHが1であると判定(ステップST112否定)しても、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する。つまり、既に自動走行制御ECU7からの目標駆動力Foが異常であると判定されている場合は、継続して算出された目標駆動力Foに基づいた自動走行制御を行わない。また、エンジンECU8は、目標駆動力Foが0であると判定(ステップST113肯定)しても、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する。つまり、自動走行制御が行われていない場合は、運転者の加速操作に基づいてエンジン100の制御を行う。
【0056】
また、エンジンECU8は、算出された目標駆動力Foが上記設定された基準上限値FL´以下であると判定される(ステップST117否定)と、算出された目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御する(ステップST120)。ここでは、エンジンECU8は、算出された目標駆動力Foが運転者による制動操作を検出していない場合に基準通常上限値FL1´以下、あるいは運転者による制動操作を検出した場合に基準低速上限値FL2´以下であると、自動走行制御ECU7が正常であると判定され、正常である自動走行制御ECU7により算出された目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御する。
【0057】
従って、実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1による自動走行制御は、図4に示すように、運転者による制動操作を検出しない場合は、通常上限値FL1を上限値として、車速Vが目標車速Voとなるように算出された目標駆動力Foに基づいて行われることで、図示しない車両の車速Vを目標車速とすることができる。そして、運転者による制動操作を検出した場合(同図に示すt1)は、低速上限値FL2を上限値として算出された目標駆動力Foに基づいて自動走行制御が行われることで、図示しない車両の車速Vを低速目標車速Volとすることができる。
【0058】
以上のように、実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1による自動走行制御では、自動走行制御ECU7により算出された目標駆動力FoがエンジンECU8において予め設定された基準上限値FL´(自動走行制御ECUが正常であれば自動走行制御ECU7において予め設定された上限値FLと同一値)を超える場合に、自動走行制御ECU7からの目標駆動力Foが異常であると判定し、エンジンECU8により算出された目標駆動力Foに基づいたエンジン100の制御を行わない。従って、例えば自動走行制御ECU7のハード構成、例えばROMやRAMなどの異常、自動走行制御ECU7とエンジンECU8との通信ノイズ、通信異常などの異常が発生することで、異常な目標制御量に基づいてエンジン100が制御されることを抑制することができる。実施の形態1では、自動走行制御中、運転者による制動操作を検出した場合には、目標車速Voが小さくなり、車速Vが減少する。従って、異常が発生することで、目標車速Foが減少しない目標駆動力FoがエンジンECU8に出力されても、エンジンECU8により算出された目標駆動力Foに基づいたエンジン100の制御を行わないので、運転者による制動操作を検出した場合に目標車速Voが小さくならないことを抑制でき、図示しない車両の車速Vが減少しないことを抑制することができる。
【0059】
また、エンジンECU8のブレーキスイッチ5のON/OFF状態を判定する部分に異常が発生しても、自動走行制御ECU7により運転者による制動操作が検出されている場合は、目標駆動力Foの上限値FLが小さくなることで、算出された目標駆動力Foが小さくなる。従って、エンジンECU8に異常が発生することで、運転者による制動操作を検出した場合に目標車速Voが小さくならないことを抑制でき、運転者による制動操作が行われても、図示しない車両の車速Vが減少しないことを抑制することができる。
【0060】
なお、上記実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1では、低速上限値FL2および基準低速上限値FL2´を図示しない車両の車速Vが低速目標車速Volとなるように、勾配θと、車両の諸元とに基づいて算出されるが、本発明はこれに限定されるものではなく一定であっても良い。例えば、低速上限値FL2および基準低速上限値FL2´は、車両に対する最大の下り勾配(整地された路面)において、運転者の体格などにかかわらず、運転者による制動操作によりブレーキ装置200が発生することができる制動力によって車両を停止することができる駆動力であっても良い。勾配により車両にかかる力をFs、制動力をBとすると、低速上限値FL2および基準低速上限値FL2´は、B−Fsとなる。なお、この場合は、Gセンサ4は、自動走行制御ECU7のみと接続されていればよい。
【0061】
〔実施の形態2〕
次に、実施の形態2にかかる車両走行制御装置について説明する。図5は、実施の形態2にかかる車両走行制御装置の構成例を示す図である。実施の形態2にかかる車両走行制御装置1−2が、実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1と異なる点は、エンジンECU8は、運転者による制動操作が検出され、図示しない車両の車速Vが減少していない場合に、自動走行制御ECU7により算出された目標制御量が前回目標制御量を超えると判定されると、目標制御量に基づいた自動走行制御を行わない点である。ここで、実施の形態2にかかる車両走行制御装置1−2の基本的構成は、図5に示すように、実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1の基本的構成と同一部分は、その説明を省略する。
【0062】
車速センサ3は、図示しない車両の車速Vを検出するものである。車速センサ3は、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8と接続されており、検出された車両の車速Vが自動走行制御ECU7およびエンジンECU8に出力される。なお、Gセンサ4は、自動走行制御ECU7のみと接続されていれば良い。
【0063】
駆動力算出部72は、目標制御量であるエンジン100に出力させる目標駆動力Foを算出するものである。駆動力算出部72では、図示しない車両の車速Vが予め設定されている目標車速Voとなるように、目標駆動力Foを算出する。実施の形態2では、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がOFFでありON信号が出力されないと、車両の車速Vが目標車速Voとなるように目標駆動力Foを算出し、エンジンECU8に出力する。一方、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がONとされON信号が出力される、すなわち運転者による制動操作を検出すると、車両の車速Vが減少するように目標駆動力Foを算出し、エンジンECU8に出力する。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出し、車速センサ3により検出された車速Vが減少(停止も含む)していないと、前回算出された前回目標駆動力である目標駆動力Fo(n−1)よりも小さい値を今回の目標駆動力Fo(n)として算出する。つまり、車両の車速Vが減少するように目標駆動力Foを算出する。例えば、自動走行制御ECU7は、今回算出された目標駆動力Fo(n)を、前回算出された目標駆動力Fo(n−1)よりも所定値α(自動走行制御ECU7に予め設定されている値)だけ小さい値とする(Fo(n)=Fo(n−1)−α)。ここで、所定値αは、例えばノイズを考慮したものであり、運転者による制動操作量に応じて変化させても良いし、固定値であっても良い。
【0064】
異常判定部81は、自動走行制御ECU7からの目標制御量、すなわち目標駆動トルクFoが異常であるか否かを判定するものである。異常判定部81は、自動走行制御ECU7において算出された目標駆動力FoがエンジンECU8で設定されている異常判定条件を満たすか否かを判定し、異常判定条件を満たす場合に自動走行制御ECU7からの目標駆動力Foが異常であると判定するものである。異常判定条件は、実施の形態2では、ブレーキスイッチ5がONとされON信号が出力される、すなわち運転者による制動操作を検出し、車速センサ3により検出された車速Vが減少(停止も含む)していない場合、自動走行制御ECU7において今回算出されエンジンECU8に出力された目標駆動力Fo(n)が自動走行制御ECU7において前回算出されエンジンECU8に出力され、エンジンECU8において記憶されている目標駆動力Fo(n−1)以下であるか否かである。例えば、今回算出された目標駆動力Fo(n)がエンジンECU8において記憶されている前回の目標駆動力Fo(n−1)から所定値α(エンジンECU8に予め設定されている自動走行制御ECU7に設定されている値と同一値)を引いた値以下であるか否かである。
【0065】
次に、実施の形態2にかかる車両走行制御装置1−2を用いた自動走行制御について説明する。図6は、実施の形態2にかかる車両走行制御装置の自動走行制御ECUの動作フローを示す図である。図7は、実施の形態2にかかる車両走行制御装置のエンジンECUの動作フローを示す図である。ここでは、車両走行制御装置1−2を用いた自動走行制御のうち、自動走行制御ECU7とエンジンECU8との関係について説明する。なお、実施の形態2にかかる車両走行制御装置1−2を用いた自動走行制御のうち、実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1を用いた自動走行制御と同一箇所は、簡略化して説明する。また、車両走行制御装置1−2による車両走行制御は、この車両走行制御装置1−2の制御周期ごとに行われる。
【0066】
まず、自動走行制御ECU7の動作について説明する。まず、自動走行制御ECU7は、図6に示すように、入力処理を行う(ステップST201)。
【0067】
次に、自動走行制御ECU7の自動走行制御判定部71は、自動走行制御スイッチ2がONであるか否かを判定する(ステップST202)。
【0068】
次に、自動走行制御ECU7の駆動力算出部72は、自動走行制御スイッチ2がONであると判定される(ステップST202肯定)と、目標駆動力Fo(n)を算出する(ステップST203)。ここでは、駆動力算出部72は、上記取得された車速Vが目標車速Voとなるように目標駆動力Fo(n)を算出する。
【0069】
次に、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がONであるか否かを判定する(ステップST204)。
【0070】
次に、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がONであると判定される(ステップST204肯定)と、車速センサ3により検出され、今回取得された車速V(n)が前回取得された車速V(n−1)未満であるか否かを判定する(ステップST205)。ここでは、駆動力算出部72は、図示しない車両の車速Vが減少しているか否かを判定する。また、図示しない車両の車速Vが減少しているか否かの判定には、図示しない車両が停止しているか否かを含むものである。つまり、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がONであると判定される(ステップST204肯定)と、車速センサ3により検出され、今回取得された車速V(n)が0であるか否かをも判定する。
【0071】
次に、駆動力算出部72は、今回取得された車速V(n)が前回取得された車速V(n−1)以上であると判定する(ステップST205否定)と、今回算出された目標駆動力Fo(n)が前回算出された目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値を超えるか否かを判定する(ステップST206)。ここでは、駆動力算出部72は、自動走行制御ECU7において今回算出された目標駆動力Fo(n)が自動走行制御ECU7おいて前回算出され、記憶されていた目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値を超えるか否かを判定する。
【0072】
次に、駆動力算出部72は、今回算出された目標駆動力Fo(n)が前回取得された目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値を超えると判定される(ステップST206肯定)と、前回取得された目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値を今回算出された目標駆動力Fo(n)とする(ステップST207)。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出し、図示しない車両の車速Vが減少していない場合、車両の車速Vを減少するために、今回算出された目標駆動力Fo(n)を前回取得された目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値を置き換える。従って、置き換えられた今回算出された目標駆動力Fo(n)に基づいてエンジンECU8によりエンジン100を制御することで、車両の車速Vが減速することになる。これにより、車両の車速Vが最終的に0となり、車両を停止させることができる。
【0073】
次に、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEを1とする(ステップST208)。ここでは、自動走行制御ECU7は、自動走行制御スイッチ2がONであると判定される(ステップST202肯定)と、自動走行制御が開始されたと判定し、自動走行制御フラグEを1とする。また、自動走行制御ECU7は、ブレーキスイッチ5がOFFであると判定される(ステップST204否定)と、自動走行制御フラグEを1とする。また、自動走行制御ECU7は、今回取得された車速V(n)が前回取得された車速V(n−1)未満であると判定される(ステップST205肯定)と、自動走行制御フラグEを1とする。また、自動走行制御ECU7は、今回算出された目標駆動力Fo(n)が前回取得された目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値以下と判定される(ステップST206否定)と、自動走行制御フラグEを1とする。
【0074】
また、駆動力算出部72は、自動走行制御スイッチ2がOFFであると判定される(ステップST202否定)と、目標駆動力Fo(n)を0に算出する(Fo(n)=0)(ステップST209)。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による自動走行制御の開始の意志がない場合、すなわち自動走行制御が行われていない場合、エンジンECU8が目標駆動力Fo(n)により駆動力を出力しないように、目標駆動力Fo(n)を0とする。
【0075】
次に、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEを0とする(ステップST210)。ここでは、自動走行制御ECU7は、自動走行制御スイッチ2がOFFであると判定される(ステップST202否定)と、自動走行制御が行われていないと判定し、自動走行制御フラグEを0とする。
【0076】
次に、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEの状態および今回算出された目標駆動力Fo(n)をエンジンECU8に出力する(ステップST211)。ここでは、自動走行制御ECU7は、今回算出された目標駆動力Foが運転者による制動操作を検出していない場合、車両の車速Vを目標車速Voとすることができる目標駆動力FoをエンジンECU8に出力することとなる。また、自動走行制御ECU7は、今回取得された車速V(n)が前回取得された車速V(n−1)未満である場合、すでに車両の車速Vが減少するように目標駆動力Foを算出しているので、今回算出された目標駆動力Fo(n)をエンジンECU8に出力することとなる。また、自動走行制御ECU7は、今回算出された目標駆動力Fo(n)が前回取得された目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値以下である場合、すでに車両の車速Vが減少するように目標駆動力Foを算出しているので、今回算出された目標駆動力Fo(n)をエンジンECU8に出力することとなる。また、自動走行制御ECU7は、自動走行制御が行われていない場合、0の目標駆動力Fo(n)をエンジンECU8に出力することとなる。なお、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEの状態および今回算出された目標駆動力Fo(n)をエンジンECU8に出力すると現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0077】
次に、エンジンECU8の動作について説明する。まず、エンジンECU8は、図7に示すように、入力処理を行う(ステップST212)。ここでは、エンジンECU8は、エンジンECU8に自動走行制御ECU7から出力された自動走行制御フラグEの状態および目標駆動力Fo(n)、ブレーキスイッチ5のON/OFF状態、アクセルセンサ6により検出された加速操作量Sなどを取得する。
【0078】
次に、エンジンECU8の異常判定部81は、異常フラグHが0であるか否かを判定する(ステップST213)。
【0079】
次に、異常判定部81は、異常フラグHが0であると判定する(ステップST213肯定)と、自動走行制御フラグEが0であるか否かを判定する(ステップST214)。ここでは、異常判定部81は自動走行制御ECU7が異常でないと判定されると、自動走行制御が行われているか否かを判定する。
【0080】
次に、異常判定部81は、自動走行制御フラグEが0でないと判定される(ステップST214否定)と、ブレーキスイッチ5がONであるか否かを判定する(ステップST215)。
【0081】
次に、異常判定部81は、ブレーキスイッチ5がONであると判定される(ステップST215肯定)と、車速センサ3により検出され、今回取得された車速V(n)が前回取得された車速V(n−1)未満であるか否かを判定する(ステップST216)。ここでは、異常判定部81は、図示しない車両の車速Vが減少しているか否かを判定する。また、図示しない車両の車速Vが減少しているか否かの判定には、図示しない車両が停止しているか否かを含むものである。つまり、異常判定部81は、ブレーキスイッチ5がONであると判定される(ステップST215肯定)と、車速センサ3により検出され、今回取得された車速V(n)が0であるか否かをも判定する。なお、車両が停止しているか否かを判定する場合には、運転者の制動操作を検出した後、所定期間経過後に、今回取得された車速V(n)が0であるか否かを判定しても良い。
【0082】
次に、異常判定部81は、今回取得された車速V(n)が前回取得された車速V(n−1)以上であると判定する(ステップST216否定)と、今回算出された目標駆動力Fo(n)が前回算出された目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値以下であるか否かを判定する(ステップST217)。ここでは、異常判定部81は、自動走行制御ECU7において今回算出された目標駆動力Fo(n)が自動走行制御ECU7において前回算出されエンジンECU8に出力されて、エンジンECU8において記憶されている目標駆動力Fo(n−1)以下であるか否かを判定する。例えば、自動走行制御ECU7において今回算出された目標駆動力Fo(n)がエンジンECU8において記憶されている前回の目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値以下であるか否かである。ここで、運転者による制動操作を検出し、車速Vが減少していない場合は、車速が減少するように目標駆動力Foが算出される。従って、運転者による制動操作を検出し、車速Vが減少していない場合で、今回算出された目標駆動力Fo(n)が前回算出された目標駆動力Fo(n−1)を超えることは、異常が発生しているからである。
【0083】
次に、異常判定部81は、自動走行制御ECU7において今回算出された目標駆動力Fo(n)が上記エンジンECU8において記憶された前回算出された目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値を超えると判定する(ステップST217否定)と、異常フラグHを1とする(ステップST218)。ここでは、異常判定部81は、運転者による制動操作を検出し、車速Vが減少している場合に、車速Vが減少するように目標駆動力Foが算出されていないと、自動走行制御ECU7が異常であると判定する。
【0084】
次に、エンジンECU8は、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する(ステップST219)。ここでは、エンジンECU8は、異常判定部81が自動走行制御ECU7により今回算出された目標駆動力Fo(n)が異常判定条件を満たす場合は、今回算出された目標駆動力Fo(n)に基づいてエンジン100を制御しない。つまり、エンジンECU8は、今回算出された目標駆動力Fo(n)に基づいた自動走行制御を行わない。なお、エンジンECU8は、異常フラグHが1であると判定(ステップST213否定)しても、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する。つまり、既に自動走行制御ECU7からの今回算出された目標駆動力Fo(n)が異常であると判定されている場合は、継続して今回算出された目標駆動力Fo(n)に基づいた自動走行制御を行わない。また、エンジンECU8は、自動走行制御フラグEが0であると判定(ステップST214肯定)しても、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する。つまり、自動走行制御が行われていない場合は、運転者の加速操作に基づいてエンジン100の制御を行う。
【0085】
また、エンジンECU8は、自動走行制御ECU7において今回算出された目標駆動力Fo(n)が上記エンジンECU8において記憶された前回算出された目標駆動力Fo(n−1)から所定値αを引いた値を以下であると判定する(ステップST217肯定)と、今回算出された目標駆動力Fo(n)に基づいてエンジン100を制御する(ステップST220)。ここでは、エンジンECU8は、運転者による制動操作を検出し、車速Vが減少していない場合に、車速Vが減少するように目標駆動力Foが算出されていると、自動走行制御ECU7が正常であると判定され、正常である自動走行制御ECU7により今回算出された目標駆動力Fo(n)に基づいてエンジン100を制御する。なお、エンジンECU8は、ブレーキスイッチ5がOFFであると判定される(ステップST215否定)と、今回算出された目標駆動力Fo(n)に基づいてエンジン100を制御する。また、エンジンECU8は、今回取得された車速V(n)が前回取得された車速V(n−1)未満である場合、すでに車両の車速Vが減少するように目標駆動力Foを算出しているので、今回算出された目標駆動力Fo(n)に基づいてエンジン100を制御する。
【0086】
以上のように、実施の形態2にかかる車両走行制御装置1−2による自動走行制御では、自動走行制御ECU7により今回算出された目標駆動力Fo(n)が運転者による制動操作を検出し、車速Vが減少していない場合に、エンジンECU8において記憶されている前回の目標駆動力Fo(n−1)以上である場合に、自動走行制御ECU7からの今回の目標駆動力Fo(n)が異常であると判定し、エンジンECU8により算出された目標駆動力Foに基づいたエンジン100の制御を行わない。従って、異常が発生することで、異常な目標制御量に基づいてエンジン100が制御されることを抑制することができる。実施の形態2では、自動走行制御中、運転者による制動操作を検出し、車速Vが減少していない場合には、目標駆動力Foが小さくなり、車速Vが減少する。従って、異常が発生することで、車速Vが減少しない目標駆動力FoがエンジンECU8に出力されても、エンジンECU8により算出された目標駆動力Foに基づいたエンジン100の制御を行わないので、運転者による制動操作を検出した場合に、図示しない車両の車速Vが減少しないことを抑制することができる。
【0087】
なお、上記実施の形態2では、エンジンECU8における所定値αは、自動走行制御ECU7における所定値αと同一値としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばノイズを考慮して、自動走行制御ECU7における所定値αよりも小さくしても良い。
【0088】
〔実施の形態3〕
次に、実施の形態3にかかる車両走行制御装置について説明する。図8は、実施の形態3にかかる車両走行制御装置の構成例を示す図である。実施の形態3にかかる車両走行制御装置1−3が、実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1と異なる点は、エンジンECU8は、検出された制動操作量が所定操作量を超える場合に、目標制御量を予め設定された制動上限値以下に算出し、自動走行制御ECU7により算出された目標制御量FがエンジンECU8において予め設定された基準制動上限値を超えると判定されると、目標制御量に基づいた自動走行制御を行わない点である。ここで、実施の形態3にかかる車両走行制御装置1−3の基本的構成は、図8に示すように、実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1の基本的構成と同一部分は、その説明を省略する。
【0089】
マスタシリンダ圧センサ10は、制動操作量検出手段である。マスタシリンダ圧は、運転者による制動操作量としてマスタシリンダ圧Pを検出するものである。ここで、ブレーキ装置200は、ブレーキオイルの油圧に応じて制動力が変化するものであり、運転者により図示しないブレーキペダルを踏み込んだ際の踏力に応じてブレーキオイルを加圧する図示しないマスタシリンダが備えられている。マスタシリンダ圧センサ10は、ブレーキ装置200のマスタシリンダの油圧を検出することで、運転者による制動操作量を検出するものである。マスタシリンダ圧センサ10は、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8と接続されており、検出されたマスタシリンダ圧Pを自動走行制御ECU7およびエンジンECU8に出力する。
【0090】
駆動力算出部72は、目標制御量であるエンジン100に出力させる目標駆動力Foを算出するものである。駆動力算出部72では、図示しない車両の車速Vが予め設定されている目標車速Voとなるように、目標駆動力Foを算出する。実施の形態3では、駆動力算出部72は、検出された運転者による制動操作量が所定操作量以下の場合、すなわち検出されたマスタシリンダ圧Pが所定圧P1以下の場合、車両の車速Vが目標車速Voとなるように目標駆動力Foを算出し、エンジンECU8に出力する。一方、駆動力算出部72は、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超える場合、すなわち検出されたマスタシリンダ圧Pが所定圧P1を超える場合、予め設定された制動上限値以下となるように、目標駆動力Foを算出し、エンジンECU8に出力する。例えば、駆動力算出部72は、検出されたマスタシリンダ圧Pが所定圧P1を超える場合、目標駆動力Foを予め設定された制動上限値で算出し、エンジンECU8に出力する。つまり、駆動力算出部72は、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超える場合、車両の車速Vが減少するように目標駆動力Foを算出することとなる。ここで、所定圧P1とは、例えば運転者が自動走行制御中の車両を停止させたい場合に、運転者が図示しないブレーキペダルを踏み込むことによる踏力に応じて発生するマスタシリンダ圧である。また、制動上限値とは、エンジン100より図示しない車両に駆動力を作用させない値である。制動上限値は、例えば−10000Nである。
【0091】
異常判定部81は、自動走行制御ECU7からの目標制御量、すなわち目標駆動トルクFoが異常であるか否かを判定するものである。異常判定部81は、自動走行制御ECU7において算出された目標駆動力FoがエンジンECU8で設定されている異常判定条件を満たすか否かを判定し、異常判定条件を満たす場合に自動走行制御ECU7からの目標駆動力Foが異常であると判定するものである。異常判定条件は、実施の形態3では、検出されたマスタシリンダ圧Pが所定圧P1を超える場合、自動走行制御ECU7において算出されエンジンECU8に出力された目標駆動力Foが自動走行制御ECU7において検出された運転者による制動操作量が予め設定された所定操作量を超える場合、すなわちマスタシリンダ圧Pが所定圧P1を超える場合における基準制動上限値を超えるか否かである。ここで、基準制動上限値は、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8がともに正常である場合、制動上限値と同一値である。従って、基準制動上限値は、例えば−10000Nである。
【0092】
次に、実施の形態3にかかる車両走行制御装置1−3を用いた自動走行制御について説明する。図9は、実施の形態3にかかる車両走行制御装置の自動走行制御ECUの動作フローを示す図である。図10は、実施の形態3にかかる車両走行制御装置のエンジンECUの動作フローを示す図である。ここでは、車両走行制御装置1−3を用いた自動走行制御のうち、自動走行制御ECU7とエンジンECU8との関係について説明する。なお、実施の形態3にかかる車両走行制御装置1−3を用いた自動走行制御のうち、実施の形態1および実施の形態2にかかる車両走行制御装置1−1,1−2を用いた自動走行制御と同一箇所は、簡略化して説明する。また、車両走行制御装置1−3による車両走行制御は、この車両走行制御装置1−3の制御周期ごとに行われる。
【0093】
まず、自動走行制御ECU7の動作について説明する。まず、自動走行制御ECU7は、図9に示すように、入力処理を行う(ステップST301)。ここでは、自動走行制御ECU7は、自動走行制御スイッチ2のON/OFF状態、車速センサ3により検出され出力された車速V、Gセンサ4により検出された勾配θ、マスタシリンダ圧センサ10により検出され出力されたマスタシリンダ圧Pなどを取得する。
【0094】
次に、自動走行制御ECU7の自動走行制御判定部71は、自動走行制御スイッチ2がONであるか否かを判定する(ステップST302)。
【0095】
次に、自動走行制御ECU7の駆動力算出部72は、自動走行制御スイッチ2がONであると判定される(ステップST302肯定)と、上記取得されたマスタシリンダ圧Pが所定圧P1を超えるか否かを判定する(ステップST303)。ここでは、駆動力算出部72は、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超えるか否かを判定する。
【0096】
次に、駆動力算出部72は、マスタシリンダ圧Pが所定圧P1以下であると判定する(ステップST303否定)と、目標駆動力Foを算出する(ステップST304)。ここでは、駆動力算出部72は、上記取得された車速Vが目標車速Voとなるように目標駆動力Foを算出する。
【0097】
また、駆動力算出部72は、マスタシリンダ圧Pが所定圧P1を超えると判定する(ステップST303肯定)と、目標駆動力Foを−10000Nで算出する(ステップST305)。ここでは、駆動力算出部72は、検出されたマスタシリンダ圧Pが所定圧P1を超える場合、予め設定された制動上限値以下となるように、目標駆動力Foを算出する。従って、−10000Nに置き換えられた目標駆動力Foに基づいてエンジンECU8によりエンジン100を制御することで、車両の車速Vが減速することになる。これにより、車両の車速Vが最終的に0となり、車両を停止させることができる。
【0098】
次に、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEを1とする(ステップST306)。ここでは、自動走行制御ECU7は、自動走行制御スイッチ2がONであると判定される(ステップST302肯定)と、自動走行制御が開始されたと判定し、自動走行制御フラグEを1とする。
【0099】
また、駆動力算出部72は、自動走行制御スイッチ2がOFFであると判定される(ステップST302否定)と、目標駆動力Foを−10000Nで算出する(ステップST307)。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による自動走行制御の開始の意志がない場合、すなわち自動走行制御が行われていない場合、エンジンECU8が目標駆動力Foにより駆動力を出力しないように、目標駆動力Foを−10000Nとする。
【0100】
次に、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEを0とする(ステップST308)。ここでは、自動走行制御ECU7は、自動走行制御スイッチ2がOFFであると判定される(ステップST303否定)と、自動走行制御が行われていないと判定し、自動走行制御フラグEを0とする。
【0101】
次に、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEの状態および算出された目標駆動力FoをエンジンECU8に出力する(ステップST309)。ここでは、自動走行制御ECU7は、運転者による制動操作量が所定操作量以下である場合、車両の車速Vを目標車速Voとすることができる目標駆動力FoをエンジンECU8に出力することとなる。また、自動走行制御ECU7は、運転者による制動操作量が所定操作量を超える場合、−10000Nを目標駆動力Foとして、エンジンECU8に出力することとなる。なお、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEの状態および算出された目標駆動力FoをエンジンECU8に出力すると現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0102】
次に、エンジンECU8の動作について説明する。まず、エンジンECU8は、図10に示すように、入力処理を行う(ステップST310)。ここでは、エンジンECU8は、エンジンECU8に自動走行制御ECU7から出力された自動走行制御フラグEの状態および目標駆動力Fo、アクセルセンサ6により検出された加速操作量S、マスタシリンダ圧センサ10により検出され出力されたマスタシリンダ圧Pなどを取得する。
【0103】
次に、エンジンECU8の異常判定部81は、異常フラグHが0であるか否かを判定する(ステップST311)。
【0104】
次に、異常判定部81は、異常フラグHが0であると判定する(ステップST311肯定)と、自動走行制御フラグEが0であるか否かを判定する(ステップST312)。ここでは、異常判定部81は自動走行制御ECU7が異常でないと判定されると、自動走行制御が行われているか否かを判定する。
【0105】
次に、異常判定部81は、自動走行制御フラグEが0ないと判定される(ステップST312否定)と、上記取得されたマスタシリンダ圧Pが所定圧P1を超えるか否かを判定する(ステップST313)。ここでは、異常判定部81は、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超えるか否かを判定する。
【0106】
次に、異常判定部81は、取得されたマスタシリンダ圧Pが所定圧P1を超えると判定する(ステップST313肯定)と、算出された目標駆動力Foが−10000Nであるか否かを判定する(ステップST314)。ここでは、異常判定部81は、自動走行制御ECU7において算出された目標駆動力FoがエンジンECU8において予め設定されている基準制動上限値を超えるか否かを判定する。ここで、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8が正常であれば、制動操作量と基準制動操作量とは、同じ値の−10000Nとなる。従って、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8が正常であれば、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超える場合、目標駆動力Foは制動上限値である−10000Nを超えることがない。つまり、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超える場合で、算出された目標駆動力Foが基準制動上限値を超えることは、異常が発生しているからである。
【0107】
次に、異常判定部81は、自動走行制御ECU7において算出された目標駆動力Foが−10000Nでないと判定する(ステップST314否定)と、異常フラグHを1とする(ステップST315)。ここでは、異常判定部81は、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超える場合に、車速Vが減少するように目標駆動力Foが算出されていないと、自動走行制御ECU7が異常であると判定する。
【0108】
次に、エンジンECU8は、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する(ステップST316)。ここでは、エンジンECU8は、異常判定部81が自動走行制御ECU7により算出された目標駆動力Foが異常判定条件を満たす場合は、算出された目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御しない。つまり、エンジンECU8は、算出された目標駆動力Foに基づいた自動走行制御を行わない。なお、エンジンECU8は、異常フラグHが1であると判定(ステップST311否定)しても、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する。つまり、既に自動走行制御ECU7からの目標駆動力Foが異常であると判定されている場合は、継続して算出された目標駆動力Foに基づいた自動走行制御を行わない。また、エンジンECU8は、自動走行制御フラグEが0であると判定(ステップST312肯定)しても、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する。つまり、自動走行制御が行われていない場合は、運転者の加速操作に基づいてエンジン100の制御を行う。
【0109】
また、エンジンECU8は、自動走行制御ECU7において算出された目標駆動力Foが−10000Nであると判定する(ステップST314肯定)と、算出された目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御する(ステップST317)。ここでは、エンジンECU8は、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超え、車速Vが減少するように目標駆動力Fo(Fo=−10000N)が算出されていると、自動走行制御ECU7が正常であると判定され、正常である自動走行制御ECU7により算出された目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御する。なお、エンジンECU8は、取得されたマスタシリンダ圧Pが所定圧P1以下であると判定する(ステップST313否定)と、算出された目標駆動力Foに基づいてエンジン100を制御する。
【0110】
以上のように、実施の形態3にかかる車両走行制御装置1−3による自動走行制御では、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超える場合に、自動走行制御ECU7により算出された目標駆動力Fo(n)がエンジンECU8において予め記憶されている基準制動上限値を超える場合に、自動走行制御ECU7からの目標駆動力Foが異常であると判定し、エンジンECU8により算出された目標駆動力Foに基づいたエンジン100の制御を行わない。従って、異常が発生することで、異常な目標制御量に基づいてエンジン100が制御されることを抑制することができる。実施の形態3では、自動走行制御中、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超える場合には、目標駆動力Foが小さくなり、車速Vが減少する。従って、異常が発生することで、車速Vが減少しない目標駆動力FoがエンジンECU8に出力されても、エンジンECU8により算出された目標駆動力Foに基づいたエンジン100の制御を行わないので、検出された運転者による制動操作量が所定操作量を超える場合に、図示しない車両の車速Vが減少しないことを抑制することができる。
【0111】
なお、上記実施の形態3では、エンジンECU8における所定圧P1は、自動走行制御ECU7における所定圧P1と同一値としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばノイズを考慮して、自動走行制御ECU7における所定圧P1よりも大きくしても良い。また、検出された運転者による制動操作量としてマスタシリンダ圧Pを用いるがマスタシリンダ圧Pを微分した微分値を用いても良い。また、制動操作量検出手段として、マスタシリンダ圧センサ10を用いるが、本発明はこれに限定されるものではなく、運転者による制動操作量を検出できるものであれば良い。例えば、運転者が図示しないブレーキペダルを踏み込む際の踏力を検出する踏力センサや、ブレーキペダルのストローク量を検出するストロークセンサなどであっても良い。
【0112】
〔実施の形態4〕
次に、実施の形態4にかかる車両走行制御装置について説明する。図11は、実施の形態4にかかる車両走行制御装置の構成例を示す図である。実施の形態4にかかる車両走行制御装置1−4が、実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1と異なる点は、目標制御量は、勾配で車両を停止することができる勾配目標制御量を含み、自動走行制御ECU7により算出された勾配目標制御量がエンジンECU8により算出された勾配基準値を超えると判定されると、目標制御量に基づいた自動走行制御を行わない点である。ここで、実施の形態4にかかる車両走行制御装置1−4の基本的構成は、図11に示すように、実施の形態1にかかる車両走行制御装置1−1の基本的構成と同一部分は、その説明を省略する。
【0113】
駆動力算出部72は、目標制御量であるエンジン100に出力させる目標駆動力を算出するものである。実施の形態4では、駆動力算出部72は、図示しない車両が走行している路面の勾配θに基づいた勾配目標駆動力Foiと、車速センサ3により検出された車速Vに基づいたフィードバック目標駆動力Fofとの合計を目標駆動力として算出するものである。ここで、勾配目標駆動力Foiは、勾配目標制御量であり、エンジン100が出力することで現在の勾配θで車両を停止することができる駆動力である。勾配目標駆動力Foiは、Gセンサ4により検出され、自動走行制御ECU7に出力された勾配θと、予め設定されている車両の諸元に基づいて算出される。なお、勾配目標駆動力Foiは、運転者による制動操作量を検出する図示しない制動操作量検出手段により検出された制動操作量に応じてブレーキ装置200が車両に作用させる制動力を引いても良い。また、フィードバック目標駆動力Fofは、現在の車速Vを予め設定されている目標車速Voとなるように算出された駆動力から上記算出された勾配目標駆動力Foiを引いたものである。つまり、駆動力算出部72では、合計の値が車両の車速Vが予め設定されている目標車速Voとなるように、勾配目標駆動力Foiおよびフィードバック目標駆動力Fofを算出する。また、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がONとされON信号が出力される、すなわち運転者による制動操作を検出すると、車両の車速Vが減少するように目標駆動力を算出し、エンジンECU8に出力する。駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出すると、車両の車速Vが減少するようにフィードバック目標駆動力Fofを算出する。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出すると、フィードバック目標駆動力Fofを0以下とする。例えば、駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出した直後に、フィードバック目標駆動力Fofを0とし、フィードバック目標駆動力Fofを車速Vが0となるまで0からさらに減少させ続ける。これにより、エンジンECU8により目標駆動力に基づいてエンジン100を制御することでエンジン100が出力する駆動力が車両に作用することで、現在の勾配θにおいて(登り勾配において)車両を停止させることができる。
【0114】
異常判定部81は、自動走行制御ECU7からの目標制御量、すなわち目標駆動トルクFoが異常であるか否かを判定するものである。異常判定部81は、自動走行制御ECU7において算出された目標駆動力FoがエンジンECU8で設定されている異常判定条件を満たすか否かを判定し、異常判定条件を満たす場合に自動走行制御ECU7からの目標駆動力Foが異常であると判定するものである。異常判定条件は、実施の形態4では、自動走行制御ECU7において算出されエンジンECU8に出力された勾配目標駆動力Foiが自動走行制御ECU7において算出された勾配基準値FBを超えるか否かである。ここで、勾配基準値FBは、図示しない車両が走行している路面の勾配θに基づいたものであり、エンジン100が出力することで現在の勾配θで車両を停止することができる駆動力である。従って、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8が正常であれば、自動走行制御ECU7により算出された勾配目標駆動力FoiとエンジンECU8により算出された勾配基準値FBとは同じ値となる。これにより、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8が正常であれば、算出された勾配目標駆動力Foiは、勾配基準値FBを超えることがない。つまり、算出された勾配目標駆動力Foiは、勾配基準値FBを超えることは、異常が発生しているからである。
【0115】
次に、実施の形態4にかかる車両走行制御装置1−4を用いた自動走行制御について説明する。図12は、実施の形態4にかかる車両走行制御装置の自動走行制御ECUの動作フローを示す図である。図13は、実施の形態4にかかる車両走行制御装置のエンジンECUの動作フローを示す図である。図14は、実施の形態4にかかる自動走行制御の動作説明図である。ここでは、車両走行制御装置1−4を用いた自動走行制御のうち、自動走行制御ECU7とエンジンECU8との関係について説明する。なお、実施の形態4にかかる車両走行制御装置1−4を用いた自動走行制御のうち、実施の形態1〜実施の形態3にかかる車両走行制御装置1−1〜1−3を用いた自動走行制御と同一箇所は、簡略化して説明する。また、車両走行制御装置1−4による車両走行制御は、この車両走行制御装置1−4の制御周期ごとに行われる。
【0116】
まず、自動走行制御ECU7の動作について説明する。まず、自動走行制御ECU7は、図12に示すように、入力処理を行う(ステップST401)。
【0117】
次に、自動走行制御ECU7の駆動力算出部72は、勾配目標駆動力Foiを算出する(ステップST402)。ここでは、駆動力算出部72は、取得された勾配θと、予め設定されている図示しない車両の諸元に基づいて、エンジン100が出力し、車両に作用することで現在の勾配θで車両を停止保持することができる駆動力である勾配目標駆動力Foiを算出する。
【0118】
次に、自動走行制御ECU7の自動走行制御判定部71は、自動走行制御スイッチ2がONであるか否かを判定する(ステップST403)。
【0119】
次に、駆動力算出部72は、自動走行制御スイッチ2がONであると判定される(ステップST403肯定)と、ブレーキスイッチ5がONであるか否かを判定する(ステップST404)。
【0120】
次に、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がOFFであると判定される(ステップST404否定)と、フィードバック目標駆動力Fofを算出する(ステップST405)。ここでは、駆動力算出部72は、上記取得された車速Vを目標車速Voとなるように目標駆動力Foを算出し、算出された目標駆動力Foから算出された勾配目標駆動力Foiを引いた値をフィードバック目標駆動力Fofとして算出する。
【0121】
また、駆動力算出部72は、ブレーキスイッチ5がONであると判定される(ステップST404肯定)と、フィードバック目標駆動力Fofを0以下に算出する(ステップST406)。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による制動操作を検出すると、フィードバック目標駆動力Fofを0以下とする。従って、勾配目標駆動力Foiと0以下に算出されたフィードバック目標駆動力Fofとの合計である目標駆動力Fo、すなわち勾配目標駆動力Foi以下の目標駆動力Foに基づいてエンジンECU8によりエンジン100を制御することで、車両の車速Vが減速することになる。これにより、車両の車速Vが最終的に0となり、車両を停止させることができる。
【0122】
次に、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEを1とする(ステップST407)。ここでは、自動走行制御ECU7は、自動走行制御スイッチ2がONであると判定される(ステップST403肯定)と、自動走行制御が開始されたと判定し、自動走行制御フラグEを1とする。
【0123】
また、駆動力算出部72は、自動走行制御スイッチ2がOFFであると判定される(ステップST403否定)と、勾配目標駆動力Foiを0およびフィードバック目標駆動力Fofを0とする(ステップST408)。ここでは、駆動力算出部72は、運転者による自動走行制御の開始の意志がない場合、すなわち自動走行制御が行われていない場合、エンジンECU8が目標駆動力Foにより駆動力を出力しないように、目標駆動力Foが0となるようにする。
【0124】
次に、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEを0とする(ステップST409)。ここでは、自動走行制御ECU7は、自動走行制御スイッチ2がOFFであると判定される(ステップST403否定)と、自動走行制御が行われていないと判定し、自動走行制御フラグEを0とする。
【0125】
次に、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEの状態および算出された勾配目標駆動力Foiおよびフィードバック目標駆動力FofをエンジンECU8に出力する(ステップST410)。ここでは、自動走行制御ECU7は、運転者による制動操作を検出していない場合、車両の車速Vを目標車速Voとすることができる駆動力から算出された勾配目標駆動力Foiを引いた値を算出されたフィードバック目標駆動力FofとしてエンジンECU8に出力することとなる。また、自動走行制御ECU7は、運転者による制動操作を検出した場合、車両の車速Vが減少するように、0以下に算出されたフィードバック目標駆動力FofをエンジンECU8に出力することとなる。また、自動走行制御ECU7は、自動走行制御が行われていない場合、0である勾配目標駆動力Foiおよび0であるフィードバック目標駆動力FofをエンジンECU8に出力することとなる。なお、自動走行制御ECU7は、自動走行制御フラグEの状態および算出された勾配目標駆動力Foiおよびフィードバック目標駆動力FofをエンジンECU8に出力すると現在の制御周期を終了し、次の制御周期に移行する。
【0126】
次に、エンジンECU8の動作について説明する。まず、エンジンECU8は、図13に示すように、入力処理を行う(ステップST411)。ここでは、エンジンECU8は、エンジンECU8に自動走行制御ECU7から出力された自動走行制御フラグEの状態、勾配目標駆動力Foiおよびフィードバック目標駆動力Fof、アクセルセンサ6により検出された加速操作量Sなどを取得する。
【0127】
次に、エンジンECU8の異常判定部81は、異常フラグHが0であるか否かを判定する(ステップST412)。
【0128】
次に、異常判定部81は、異常フラグHが0であると判定する(ステップST412肯定)と、自動走行制御フラグEが0であるか否かを判定する(ステップST413)。ここでは、異常判定部81は自動走行制御ECU7が異常でないと判定されると、自動走行制御が行われているか否かを判定する。
【0129】
次に、異常判定部81は、自動走行制御フラグEが0ないと判定される(ステップST413否定)と、算出された勾配目標駆動力Foiが算出された勾配基準値FBを超えるか否かを判定する(ステップST414)。ここでは、異常判定部81は、自動走行制御ECU7により算出された勾配目標駆動力FoiがエンジンECU8において算出された勾配基準値FBを超えるか否かを判定する。ここで、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8が正常であれば、勾配目標駆動力Foiと勾配基準値FBとは、同じ値となる。従って、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8が正常であれば、勾配目標駆動力Foiは勾配基準値FBを超えることがない。つまり、算出された勾配目標駆動力Foiが勾配基準値FBを超えることは、異常が発生しているからである。
【0130】
次に、異常判定部81は、算出された勾配目標駆動力Foiが上記算出された勾配基準値FBを超えると判定する(ステップST414肯定)と、異常フラグHを1とする(ステップST415)。ここでは、異常判定部81は、算出された勾配目標駆動力Foiが上記算出された勾配基準値FBを超える場合に自動走行制御ECU7が異常であると判定する。
【0131】
次に、エンジンECU8は、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する(ステップST416)。ここでは、エンジンECU8は、異常判定部81が自動走行制御ECU7により算出された勾配目標駆動力Foiが異常判定条件を満たす場合は、算出された勾配目標駆動力Foiおよびフィードバック目標駆動力Fofに基づいてエンジン100を制御しない。つまり、エンジンECU8は、算出された目標駆動力に基づいた自動走行制御を行わない。なお、エンジンECU8は、異常フラグHが1であると判定(ステップST412否定)しても、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する。つまり、既に自動走行制御ECU7からの目標駆動力が異常であると判定されている場合は、継続して算出された目標駆動力に基づいた自動走行制御を行わない。また、エンジンECU8は、自動走行制御フラグEが0であると判定(ステップST413肯定)しても、加速操作量Sに基づいてエンジン100を制御する。つまり、自動走行制御が行われていない場合は、運転者の加速操作に基づいてエンジン100の制御を行う。
【0132】
また、エンジンECU8は、算出された勾配目標駆動力Foiが上記算出された勾配基準値FB以下であると判定する(ステップST414否定)と、算出された勾配目標駆動力Foiおよびフィードバック目標駆動力Fofの合計、すなわち目標駆動力に基づいてエンジン100を制御する(ステップST417)。従って、実施の形態4にかかる車両走行制御装置1−4による自動走行制御は、図14に示すように、運転者による制動操作を検出しない場合は、エンジン100が出力することで現在の勾配θで車両を停止することができる駆動力に算出された勾配目標駆動力Foiおよび車速Vを目標車速Voとすることができる駆動力から算出された勾配目標駆動力Foiを引いた値に算出されたフィードバック目標駆動力Fofに基づいて行われることで、車両の車速Vを目標車速Voとすることができる。そして、運転者による制動操作を検出した場合(同図に示すt2)は、エンジン100が出力することで現在の勾配θで車両を停止することができる駆動力に算出された勾配目標駆動力Foiおよびエンジン100が出力することで現在の勾配θで車両を停止することができる所定駆動力Fof1に算出されたフィードバック目標駆動力Fofに基づいて自動走行制御が行われることで、図示しない車両の車速Vを0、すなわち車両を勾配に拘わらず停止することができる。
【0133】
以上のように、実施の形態4にかかる車両走行制御装置1−4による自動走行制御では、自動走行制御ECU7により算出された勾配目標駆動力FoiがエンジンECU8において算出された勾配基準値FBを超える場合に、自動走行制御ECU7からの目標駆動力が異常であると判定し、エンジンECU8により算出された目標駆動力に基づいたエンジン100の制御を行わない。従って、異常が発生することで、異常な目標制御量に基づいてエンジン100が制御されることを抑制することができる。実施の形態4では、自動走行制御中、運転者による制動操作を検出した場合には、フィードバック目標駆動力Fofが小さくなり、車速Vが減少し、車両が停止する。従って、異常が発生することで、車速Vが減少しない勾配目標駆動力FoiがエンジンECU8に出力されても、運転者による制動操作を検出した場合に、図示しない車両の車速Vが減少せず、車両が停止しないことを抑制することができる。
【0134】
なお、上記実施の形態4では、自動走行制御ECU7からエンジンECU8に、勾配目標駆動力Foiおよびフィードバック目標駆動力Fofを出力するようにしているが本発明はこれに限定されるものではなく、勾配目標駆動力Foiおよび勾配目標駆動力Foiとフィードバック目標駆動力Fofとの合計である目標駆動力を出力しても良い。また、勾配目標駆動力Foiおよび勾配基準値FBは、車両が前進する場合にプラス、後進する場合にマイナスとしても良い。また、勾配基準値FBは、自動走行制御ECU7およびエンジンECU8が正常であれば勾配目標駆動力Foiと同一値としているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばノイズを考慮して所定値増加しても良い。
【0135】
また、上記実施の形態1〜4では、エンジンECU8が異常判定部81が自動走行制御ECU7により算出された目標駆動力Foが異常判定条件を一定時間継続して満たす場合に、異常フラグHを1、すなわち自動走行制御ECUの異常と判定しても良い。
【0136】
また、自動走行制御ECU7は目標駆動力を算出し、エンジンECU8は目標駆動力に基づいてエンジン100を制御するが、自動走行制御ECU7は目標駆動トルクを算出し、エンジンECU8は目標駆動トルクに基づいてエンジン100を制御しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0137】
以上のように、本発明にかかる車両走行制御装置は、車両走行制御装置の異常を判定する車両走行制御装置に有用であり、特に、異常が発生することで、異常な目標制御量に基づいて車速調整装置が制御されることを抑制するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】実施の形態1にかかる車両走行制御装置の構成例を示す図である。
【図2】実施の形態1にかかる車両走行制御装置の自動走行制御ECUの動作フローを示す図である。
【図3】実施の形態1にかかる車両走行制御装置のエンジンECUの動作フローを示す図である。
【図4】実施の形態1にかかる自動走行制御の動作説明図である。
【図5】実施の形態2にかかる車両走行制御装置の構成例を示す図である。
【図6】実施の形態2にかかる車両走行制御装置の自動走行制御ECUの動作フローを示す図である。
【図7】実施の形態2にかかる車両走行制御装置のエンジンECUの動作フローを示す図である。
【図8】実施の形態3にかかる車両走行制御装置の構成例を示す図である。
【図9】実施の形態3にかかる車両走行制御装置の自動走行制御ECUの動作フローを示す図である。
【図10】実施の形態3にかかる車両走行制御装置のエンジンECUの動作フローを示す図である。
【図11】実施の形態4にかかる車両走行制御装置の構成例を示す図である。
【図12】実施の形態4にかかる車両走行制御装置の自動走行制御ECUの動作フローを示す図である。
【図13】実施の形態4にかかる車両走行制御装置のエンジンECUの動作フローを示す図である。
【図14】実施の形態4にかかる自動走行制御の動作説明図である。
【符号の説明】
【0139】
1−1〜1−4 車両走行制御装置
2 自動走行制御スイッチ
3 車速センサ(車速検出手段)
4 Gセンサ(勾配検出手段)
5 ブレーキスイッチ(制動操作検出手段)
6 アクセルセンサ(加速操作量検出手段)
7 自動走行制御ECU
71 自動走行制御判定部
72 駆動力算出部
73 制動力算出部
8 エンジンECU
81 異常判定部
9 ブレーキECU
10 マスタシリンダ圧センサ(制動操作量検出手段)
100 エンジン
200 ブレーキ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目標制御量に基づいて車両の車速を調整する車速調整装置を制御する第1ECUと、
制御開始トリガーに基づいて自動走行制御を開始し、前記車速が予め設定された目標車速となるように前記目標制御量を算出し、前記第1ECUに出力する第2ECUと、
を備える車両走行制御装置において、
前記第1ECUは、前記目標制御量が当該第1ECUで設定される異常判定条件を満たす場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする車両走行制御装置。
【請求項2】
運転者による制動操作を検出する制動操作検出手段をさらに備え、
前記第2ECUは、前記制動操作を検出すると、前記車速が前記目標車速よりも低い低速目標車速となるように、前記目標制御量を算出するものであり、
前記異常判定条件は、前記制動操作を検出した際に前記目標制御量が減少している否かであり、
前記第1ECUは、前記目標制御量が減少していないと判定する場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項3】
前記第2ECUは、前記目標制御量を予め設定された前記車速を前記低速目標車速とすることができる低速上限値以下となるように算出するものであり、
前記異常判定条件は、前記目標制御量が前記第1ECUにおいて予め設定された前記車速を前記低速目標車速とすることができる基準低速上限値を超えるか否かであり、
前記第1ECUは、前記目標制御量が前記基準低速上限値を超えると判定する場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする請求項2に記載の車両走行制御装置。
【請求項4】
運転者による制動操作を検出する制動操作検出手段をさらに備え、
前記第2ECUは、前記制動操作が検出され、前記車速が減少していない場合、前記目標制御量を少なくとも前回算出した前回目標制御量よりも減少して算出するものであり、
前記異常判定条件は、前記第2ECUが算出した目標制御量が前記前回目標制御量以下であるか否かであり、
前記第1ECUは、前記目標制御量が前記前回目標制御量を超えると判定する場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項5】
運転者による制動操作量を検出する制動操作量検出手段をさらに備え、
前記第2ECUは、前記検出された制動操作量が所定操作量を超える場合、前記目標制御量を予め設定された制動上限値以下に算出するものであり、
前記異常判定条件は、前記第2ECUが算出した目標制御量が前記第1ECUにおいて予め設定された前記制動上限値に対応した検出された制動操作量が所定操作量を超える場合における基準制動上限値を超えるか否かであり、
前記第1ECUは、前記目標制御量が前記基準制動上限値を超えると判定する場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項6】
前記車両が走行する路面の勾配を検出する勾配検出手段をさらに備え、
前記目標制御量は、前記勾配で前記車両を停止することができる勾配目標制御量を含むものであり、
異常判定条件は、前記第2ECUが前記検出された勾配に基づいて算出した勾配目標制御量が前記第1ECUが当該検出された勾配に基づいて算出した勾配基準値を超えるか否かであり、
前記第1ECUは、前記勾配目標制御量が前記勾配基準値を超えると判定する場合、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わないことを特徴とする請求項1に記載の車両走行制御装置。
【請求項7】
運転者による加速操作量を検出する加速操作量検出手段をさらに備え、
前記第1ECUは、前記目標制御量に基づいた自動走行制御を行わない場合、前記検出された加速操作量に基づいて前記車速調整装置を制御することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の車両走行制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−61940(P2009−61940A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232068(P2007−232068)
【出願日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(301065892)株式会社アドヴィックス (1,291)
【Fターム(参考)】