説明

車両

【課題】エアコンの作動が停止する車両停車状態において、ソーラパネルによって発電された電力を用いて、太陽光により温度上昇した車室内及び/又はバッテリを適切に冷却することを目的とする
【解決手段】 車両走行に用いられるバッテリと、ソーラパネルで発電された電力により動作する送風機と、外気を車室内に向けて導通させる第1の経路と、前記バッテリに向けて導通させる第2の経路と、を有する吸気管と、前記第1の経路と前記第2の経路との分岐位置に配置され、外気を前記第1の経路に向かわせる第1の位置と、前記第2の経路に向かわせる第2の位置との間で切り替わる切替弁と、を有する車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内などの温度を調節する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、通常、車室内の温度を調節するためのエアコンが搭載されている。このエアコンは、通常、車両のイグニッションスイッチがオフされた車両停車状態では作動しないため、車両外部の環境が高温である場合には、車両停車後に車室内の温度が徐々に上昇する。そして、車室内の温度が高温になりすぎた状態で乗員が乗車すると、乗員は車室内にこもった熱により不快感を受ける。
【0003】
特許文献1は、自動車に取り付けられる冷暖房システムであって、冷暖房手段としてのペルチェ素子と、これを作動させる太陽電池と、車室内の温度を検出する温度検出手段を備え、エンジン停止中に、太陽電池により発電した電力で、上記温度検出手段の検出信号にもとづきペルチェ素子を冷房または暖房作動させるようにしたことを特徴とする自動車用冷暖房システムを開示する。
【特許文献1】特開平11−034647号公報
【特許文献2】特開平8−148189号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、発電能力の低い太陽電池が発電した電力を用いてペルチェ素子を駆動しているため、室内温度を十分に下げられないおそれがある。具体的には、車室内の温度を下げるためには、1kW級の冷却能力が必要であるところ、車両の屋根に設置できるレベルの小サイズのソーラパネルでは、数十W規模の発電しかできないため、特許文献1の方法では室内を冷却する効果が低い。一方、ハイブリッド自動車などには、車両を走行させるモータを駆動するための電力を蓄電するバッテリが搭載されており、この種のバッテリは温度上昇により劣化する。しかしながら、特許文献1では、エンジン停止中にバッテリを過熱から保護する点が考慮されていない。
【0005】
本願発明は、ソーラパネルによって発電された電力を用いて、車室内及び/又はバッテリを適切に冷却することを第1の目的とする。また、本願発明は、ソーラパネルによって発電された電力を用いて、車室内及びバッテリの双方を適切に冷却することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記第1の目的を達成するために、本願発明に係る車両は、(1)車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する第1のバッテリと、ソーラパネルで発電された電力により動作する送風機と、前記送風機が動作することにより車外から供給される外気を車室内に向けて導通させる第1の経路と、前記第1のバッテリに向けて導通させる第2の経路と、を有する吸気管と、前記第1の経路と前記第2の経路との分岐位置に配置され、前記吸気管に導入された外気を前記第1の経路に向かわせる第1の位置と、前記第2の経路に向かわせる第2の位置との間で切り替わる切替弁と、を有する車両。
【0007】
(2)上記(1)の構成において、車室内の温度を調節するエアコンと、前記送風機及び前記切替弁の動作を制御するコントローラと、を有し、前記コントローラは、前記エアコンの作動が停止し、車室内の温度が車両外部からの熱によって温度上昇する車両停車状態において、前記送風機を動作させる換気制御を実行する。エアコンが停止し、外熱によって車室内の温度が上昇する車両停車状態において、車室内及び/又は第1のバッテリを冷却することができる。
【0008】
(3)上記(2)の構成において、前記切替弁の位置を乗員が選択するための選択部を有し、前記コントローラは、前記選択部における選択情報に基づき、前記換気制御を実行することができる。乗員の好みに応じて、車室内の換気を優先するか、或いは第1のバッテリの保護を優先するかを選択することができる。
【0009】
(4)上記(2)又は(3)の構成において、車両外部の温度に関する情報を取得する車外温度情報取得部と、車室内の温度に関する情報を取得する車室内温度情報取得部と、を有し、前記コントローラは、前記切替弁が前記第1の位置に位置する場合には、前記車外温度情報取得部及び前記車室内温度情報取得部の取得結果に基づき、車室内温度が車外温度以上であると判定した場合においてのみ、前記換気制御を実行する。これにより、車室内の温度を確実に下げることができる。
【0010】
(5)上記(2)〜(4)の構成において、前記第1のバッテリの温度に関する情報を取得するバッテリ温度情報取得部を有し、前記コントローラは、前記切替弁が前記第2の位置に位置する場合には、前記車外温度情報取得部及び前記バッテリ温度情報取得部の取得結果に基づき、前記第1のバッテリのバッテリ温度が車外温度以上であると判定した場合においてのみ、前記換気制御を実行する。これにより、第1のバッテリの温度を確実に下げることができる。
【0011】
(6)上記(2)〜(5)の構成において、前記ソーラパネルで発電された電力を蓄電する第2のバッテリを有し、前記送風機は、前記換気制御において前記第2のバッテリから電力の供給を受けることにより動作する。
【0012】
(7)上記(1)〜(6)の構成において、前記ソーラパネルは、車両の屋根に設けることができる。車両の屋根に設置できるような小サイズのソーラパネルであっても、車室内等を換気するのに十分な電力を得ることができる。
【0013】
上記第2の目的を達成するために、本願発明に係る車両は、(8)車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する第1のバッテリと、第1の送風機と、前記第1の送風機が作動した際に前記バッテリの内外で空気を循環させる循環経路と、第2の送風機と、
前記第2の送風機が作動した際に車室内に車両外部の空気を供給する供給経路と、前記循環経路の内部で循環する空気の熱を前記供給経路に排熱する排熱動作を行うペルチェ素子と、前記第1の送風機、前記第2の送風機及び前記ペルチェ素子のうち少なくとも一つは、ソーラパネルで発電された電力により動作することを特徴とする車両。
【0014】
(9)上記(8)の構成において、車室内の温度を調節するエアコンと、前記第1の送風機、前記第2の送風機及び前記ペルチェ素子の駆動を制御するコントローラと、を有し、前記コントローラは、前記エアコンの作動が停止し、車室内の温度が車両外部からの熱によって温度上昇する車両停車状態において、前記第1の送風機、前記第2の送風機及び前記ペルチェ素子を動作させる換気制御を実行する。エアコンが停止し、外熱によって車室内の温度が上昇する車両停車状態において、車室内及び第1のバッテリを冷却することができる。
【0015】
(10)上記(9)の構成において、車両外部の温度に関する情報を取得する車外温度情報取得部と、前記第1のバッテリの温度に関する情報を取得するバッテリ温度情報取得部を有し、前記コントローラは、前記車外温度情報取得部及び前記バッテリ温度情報取得部の取得結果に基づき、前記第1のバッテリのバッテリ温度が外気温度以上であると判定した場合においてのみ、前記換気制御を実行する。より温度の低い外気により車室内が確実に換気され、さらに、第1のバッテリを冷却することができる。
【0016】
(11)上記(9)又は(10)の構成において、前記ソーラパネルで発電された電力を蓄電する第2のバッテリを有し、前記換気制御において、前記前記第1の送風機、前記第2の送風機及び前記ペルチェ素子のうち少なくとも一つは、前記第2のバッテリから電力の供給を受けることにより動作する。
【0017】
(12)上記(8)〜(11)の構成において、前記ソーラパネルは、車両の屋根に設けることができる。車両の屋根に設置できるような小サイズのソーラパネルであっても、車室内等を換気するのに十分な電力を得ることができる。
【0018】
(13)上記(8)〜(12)の構成において、前記ペルチェ素子を複数備えるペルチェモジュールを、前記循環経路及び前記供給経路に沿って配列したペルチェユニットを有する。ペルチェユニットにおける熱交換作用が高まり、循環経路を循環する空気を冷却する冷却効果を高めることができる。
【発明の効果】
【0019】
上記(1)の構成によれば、車室内及び/又は第1のバッテリを適切に冷却することができる。上記(8)の構成によれば、車室内及び第1のバッテリを適切に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】車両の斜視図である。
【図2】車室内前方を車両後方から視た斜視図である。
【図3】車室内又はバッテリを冷却する冷却システムの概略図である。
【図4】冷却システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】実施形態2の車両の斜視図である。
【図6】車室内及びバッテリを冷却する実施形態2の冷却システムの概略図である。
【図7】ペルチェユニットの斜視図である。
【図8】ペルチェユニットの断面図である。
【図9】実施形態2の冷却システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(第1実施形態)
図1を参照しながら、本実施形態に係る車両の概略構成について説明する。図1は、車両の斜視図であり、一部の要素を透視して図示する。図2は、車室内前方を車両後方から視た斜視図である。これらの図において、Frは車両の進行方向(前側方向)を示しており、Rrは車両の後進方向(後側方向)を示しており、Rhは車両の進行方向(Fr方向)に向かって右側の方向を示しており、Lhは車両の進行方向(Fr方向)に向かって左側の方向を示している。図3は、車室内又はバッテリを冷却する冷却システムの概略図である。
【0022】
車両100は、バッテリ12(第1のバッテリに相当する)の出力を用いてモータを駆動する第1の駆動経路と、エンジン2による第2の駆動経路とを有するハイブリッド車両である。ただし、車両100は、第1及び第2の駆動経路のうち第1の駆動経路のみを有する電気車両であってもよい。また、車両100は、第1及び第2の駆動経路を有すると共に、車両外部の外部電源を用いてバッテリ12を充電可能なプラグインハイブリッド車両であってもよい。
【0023】
車両100は、エアコン3を有する。エアコン3は、バッテリ12から電力の供給を受けることにより動作し、乗員が設定した設定温度に基づき、車室内の温度を調整する。したがって、一般的には、バッテリ12からエアコン3に対する電力の供給が断たれる車両停車状態(以下、単に、車両停車状態という)において、エアコン3の作動は停止する。例えば、車両のイグニッションスイッチがオフされると、バッテリ12とエアコン3との間に設けられたリレーがオフされるため、バッテリ12からエアコン3に対する電力の供給が断たれる。
【0024】
バッテリパック1は、バッテリケース11と、バッテリケース11の内部に収容されたバッテリ12とを含む。バッテリ12は、複数の単電池を直列に接続したり、或いは複数の単電池を並列に接続した電池ブロックを直列に接続することにより構成してもよい。単電池は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの二次電池、或いはキャパシタであってもよい。バッテリパック1は、例えば、車両100のリアシートのRr側に形成されたラゲージルームに設置することができる。
【0025】
バッテリパック1のバッテリケース11には、Lh側の端部に吸気管20が接続されており、Rh側の端部に排気管30が接続されている。吸気管20の端部には、車両外部から吸気管20の内部に外気を導入するための吸気口21が形成されている。吸気口21は、車両100のLh側の端部に形成されている。また、吸気管20の内部には、送風機22が設けられている。送風機22は、回転動作に応じて、吸気口21から吸気管20の内部に外気を引き込む。送風機22は、例えば、シロッコ式のファン、クロススロー式のファンであってもよい。
【0026】
排気管30は、図示しないクウォータベントを介して、排気口31に連通している。なお、図1では、図面を簡略化するために、排気管30の一部が省略されている。排気口31は、車両100のLh側のテールランプ36の近傍に設けられている。バッテリケース11から排気管30に排気された空気及び車室内の空気は、排気口31から車外に排出することができる。
【0027】
吸気管20には、車室内に向かって突出する換気口23が形成されている。吸気口21から取り込まれた外気は、換気口23を介して、車室内に取り込むことができる。吸気管20における送風機22の下流側には、切替弁24が設けられている。
【0028】
切替弁24は、吸気口21から取り込まれた外気を換気口23に向かわせる車室内換気位置(第1の位置に相当する)と、吸気口21から取り込まれた外気をバッテリケース11に向かわせるケース内換気位置(第2の位置に相当する)との間で動作する。切替弁24が車室内換気位置に位置することにより、車室内に向かって外気を導通させる第1の経路が形成される。切替弁24がケース内換気位置に位置することにより、バッテリ12に向かって外気を導通させる第2の経路が形成される。
【0029】
図2を参照して、車両100のインストルメントパネルには、選択スイッチ(選択部)41が設けられている。乗員が選択スイッチ41を操作することにより、切替弁24を車室内換気位置とケース内換気位置との間で動作させることができる。なお、選択スイッチ41は、押しボタン式、或いはタッチパネル式であってもよい。また、車両100の特殊な動作に伴い、切替弁24の位置を選択できるようにしてもよい。例えば、切替弁24のデフォルト位置を車室内換気位置に設定するとともに、車両100のブレーキを所定時間以上踏みながら、アクセルの所定時間以上の踏み込みを所定回数以上行うなど通常の乗員が行わない特殊な操作が行われた場合に限って、切替弁24をケース内換気位置に移動させてもよい。この場合、アクセルとブレーキとが協同することにより、選択部が実現される。
【0030】
ここで、車両停車状態で車両100が炎天下に放置されている場合には、エアコン3の作動が停止しているため、車室内の温度は、徐々に上昇して、車外の温度よりも高くなる。この場合、切替弁24を車室内換気位置に位置させる(以下、切替弁24が車室内換気位置に位置する場合を、車室内換気モードという場合がある)ことにより、吸気口21から取り込まれた外気を全て車室内に流入させることができる。これにより、車室内にこもった熱を排熱することができるため、車両100に再び乗車した乗員が受ける不快感を軽減することができる。
【0031】
また、車両停車状態で車両100が炎天下に放置されている場合には、エアコン3の作動が停止しているため、バッテリケース11の内部の温度は、徐々に上昇して、車外の温度よりも高くなる。この場合、切替弁24をケース内換気位置に位置させる(以下、切替弁24がケース内換気位置に位置する場合を、ケース内換気モードという場合がある)ことにより、吸気口21から取り込まれた外気を全てバッテリケース11の内部に流入させることができる。これにより、バッテリ12の温度が下がり、バッテリ12の温度上昇による劣化を抑制できる。
【0032】
次に、図1乃至図3を参照しながら、車両の構成について更に詳細に説明する。ここで、図3において点線の矢印は信号が流れる方向を示しており、実線の矢印は電力が供給される方向を示しており、太い黒色の矢印は空気が流れる方向を示している。
【0033】
車両100は、上記構成に加えて、さらに、コントローラ10、ソーラパネル40、ソーラ用バッテリ50(第2のバッテリに相当する)、補機バッテリ60、電源切替スイッチ70、車外温度センサ71(車外温度情報取得部に相当する)、車室内温度センサ(車室内温度情報取得部に相当する)72、吸気温度センサ73及びバッテリ温度センサ(バッテリ温度情報取得部に相当する)74を備える。
【0034】
車外温度センサ71は、車両100の外部の温度に関する情報を取得し、この取得した情報をコントローラ10に出力する。温度に関する情報は、サーミスタの抵抗値であってもよい。この場合、コントローラ10は、サーミスタの抵抗値の変化から、車室外の温度を算出する。ここで、車外温度センサ71は、図1に図示するように、車両100のFr方向の端部に配置することができる。コントローラ10は、車外温度センサ71による取得結果を用いて、後述するフローチャートにおける換気制御を実行する。
【0035】
車室内温度センサ72は、車室内の温度に関する情報を取得し、この取得した情報をコントローラ10に出力する。温度に関する情報は、サーミスタの抵抗値であってもよい。この場合、コントローラ10は、サーミスタの抵抗値の変化から、車室内の温度を算出する。ここで、車室内温度センサ72は、図2に図示するように、インストルメントパネルに設けることができる。コントローラ10は、車室内温度センサ72による取得結果を用いて、後述するフローチャートにおける換気制御を実行する。
【0036】
吸気温度センサ73は、バッテリ12に導入される空気の温度(つまり、吸気温度)に関する情報を取得し、この取得した情報をコントローラ10に出力する。温度に関する情報は、サーミスタの抵抗値であってもよい。この場合、コントローラ10は、サーミスタの抵抗値の変化から、吸気温度を算出する。ここで、コントローラ10は、吸気温度を正確に取得するために、吸気温度チェック制御を実行してもよい。吸気温度チェック制御とは、吸気温度取得時に一次的、或いは間欠的に送風機22を作動させ、吸気管20の内部に滞留する空気を排気した後、吸気温度を検出する制御のことである。
【0037】
バッテリ温度センサ74は、バッテリ12の温度に関する情報を取得し、この取得した情報をコントローラ10に出力する。温度に関する情報は、サーミスタの抵抗値であってもよい。また、温度に関する情報は、バッテリ12を構成する個々の単電池から取得してもよいし、或いは複数の単電池を纏めた電池ブロックから取得してもよい。ここで、コントローラ10は、バッテリ温度センサ74から取得した情報を用いて、バッテリ12の蓄電量を推定したり、バッテリ12の冷却制御を行ったり、或いは、後述するフローチャートにおける換気制御を実行する。
【0038】
ここで、バッテリ12の冷却制御とは、充放電により発熱したバッテリ12を適正な温度に維持するために送風機22を作動させる制御のことである。この場合、電源切替スイッチ70は補機バッテリ60に接続され、送風機22は、補機バッテリ60から電力の供給を受けることにより作動する。このバッテリ12の冷却制御は、バッテリ12の充放電中において行われるため、車両停車状態においては行われない。なお、冷却制御において、バッテリ12から供給される電力により送風機22を作動させてもよい。
【0039】
コントローラ10は、車両100の種々の制御を行う。コントローラ10は、CPU、MPUであってもよいし、或いはこれらのCPUなどにおいて行われる少なくとも一部の処理を回路的に実行するASIC回路を含んでいてもよい。また、CPUなどの個数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。したがって、例えば、バッテリ12の充放電を制御するCPUと、送風機22の駆動を制御するCPUとが、異なっていてもよい。
【0040】
ソーラパネル40は、図1に図示するように、車両100の屋根を構成するムーンルーフガラスに内蔵されている。ソーラパネル40は、複数のソーラセルを含む。ソーラセルは、多結晶シリコンからなる半導体の1種で、光エネルギを直接電気に変換する。N型半導体及びP型半導体の2種の材料から構成されているソーラセルに太陽光が照射されると、ソーラセルからマイナス電荷(電子)とプラス電荷(孔)が生成される。マイナス電荷はN型半導体に集まり、プラス電荷はP型半導体に集められる。ソーラパネル40で得られた電力は、ソーラ用バッテリ50に蓄電される。ソーラ用バッテリ50は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの二次電池、或いはキャパシタであってもよい。
【0041】
補機バッテリ60は、図2に図示するオーディオ機器92に電力を供給したり、或いは上述したバッテリ12の冷却制御を行う際に、送風機22に対して作動電力を供給する。補機バッテリ60は、バッテリ12から電力の供給を受けることにより蓄電される。
【0042】
ソーラ用バッテリ50及び補機バッテリ60は、電源切替スイッチ70を介して送風機22に接続されている。コントローラ10は、電源切替スイッチ70に対して駆動信号(例えば、High/Low信号)を出力することにより、電源切替スイッチ70をソーラ用バッテリ50から送風機22に対する電力の供給を許容する位置と、補機バッテリ60から送風機22に対する電力の供給を許容する位置との間で動作する。
【0043】
次に、図4のフローチャートを参照しながら、コントローラが行う換気制御について説明する。ステップS101において、コントローラ10は、イグニッションスイッチをオフすると、内部タイマを作動させる。ステップ102において、コントローラ10は、内部タイマのカウント値に基づき、イグニッションスイッチがオフされてから5分(待機時間)が経過したか否かを判定する。
【0044】
ここで、待機時間を5分とした理由は、イグニッションスイッチをオフする前は、エアコン3が作動することによる冷却が行われているため、イグニッションスイッチをオフした直後は、車室内に冷気が残っており、高温状態に至っていないと考えられるからである。したがって、待機時間は、5分に限定されるものではなく、例えば10分であってもよい。
【0045】
待機時間が5分に達した場合(ステップS102のYES)、コントローラ10は、ステップS103において、図2に図示する選択スイッチ41が、車室内換気位置を選択する側に操作されたか否かを判定する。なお、待機時間が5分に達した場合、コントローラ10は、内部タイマのカウント値を0にする。
【0046】
選択スイッチ41が車室内換気位置を選択する側に操作された場合(ステップS103のYES)、コントローラ10は、ステップS104において、電源切替スイッチ70をソーラ用バッテリ50に接続するとともに、切替弁24を車室内換気位置に動作させる。なお、初期状態において、切替弁24が既に車室内換気位置に位置する場合には、コントローラ10は、切替弁24を動作させない。
【0047】
選択スイッチ41がケース内換気位置を選択する側に操作された場合(ステップS103のNO)、コントローラ10は、ステップS105において、電源切替スイッチ70をソーラ用バッテリ50に接続するとともに、切替弁24をケース内換気位置に動作させる。なお、初期状態において、切替弁24が既にケース内換気位置に位置する場合には、コントローラ10は、切替弁24を動作させない。
【0048】
ステップS104において切替弁24が車室内換気位置に動作すると、コントローラ10は、ステップS106において、車外温度センサ71及び車室内温度センサ72の取得結果に基づき、外気温度が車室内温度以下であるか否かを判定する。
【0049】
外気温度が車室内温度以下である場合(ステップS106のYES)、コントローラ10は、ステップS107において、送風機22を駆動する。送風機22が駆動されると、吸気口21から導入された空気が換気口23を介して車室内に流入する。外気が車室内に流入するのに応じて、車室内の温度は、徐々に下がり、外気温度に近づく。外気温度が車室内温度以下でない場合(ステップS106のNO)、ステップS102に戻る。
【0050】
コントローラ10は、ステップS108において、車外温度センサ71及び車室内温度センサ72の取得結果に基づき、車室内温度が外気温度と同じ温度になったか否かを判定する。車室内温度が外気温度と同じ温度になった場合(ステップS108のYES)、コントローラ10は、ステップS109において送風機22の駆動を停止して、ステップS110に進む。車室内温度が依然として外気温度以上である場合(ステップS108のNO)、コントローラ10は、ステップS107に戻り、送風機22の駆動を継続する。
【0051】
コントローラ10は、ステップS110においてイグニッションスイッチがオンされたか否かを判定する。イグニッションスイッチがオンされた場合(ステップS110のYES)、コントローラ10は、このフローチャートを終了する。イグニッションスイッチがオンされていない場合(ステップS110のNO)、コントローラ10は、ステップS102に戻って、再び待機時間をカウントする。
【0052】
このように、炎天下に車両100を駐車する際に、乗員の選択に応じて、切替弁24を車室内換気位置に動作させるとともに、送風機22を駆動して車室内に外気を引き込むだけで、車室内の温度を外気温度と同一の温度にまで下げることができる。したがって、乗員が車両100に再び乗り込んだ時に、車室内のもやつきによって受ける不快感を軽減することができる。
【0053】
コントローラ10は、ステップS111において、車外温度センサ71及びバッテリ温度センサ74の取得結果に基づき、外気温度がバッテリ温度以下であるか否かを判定する。
【0054】
外気温度がバッテリ温度以下である場合(ステップS111のYES)、コントローラ10は、ステップS112において、送風機22を駆動する。送風機22が駆動されると、吸気口21から導入された空気が吸気管20を介してバッテリケース11の内部に流入する。外気がバッテリケース11の内部に流入するのに応じて、バッテリケース11の内部の温度は、徐々に下がり、外気温度に近づく。外気温度がバッテリ温度以下でない場合(ステップS111のNO)、ステップS102に戻る。
【0055】
コントローラ10は、ステップS113において、車外温度センサ71及びバッテリ温度センサ74の取得結果に基づき、バッテリ温度が外気温度と同じ温度になったか否かを判定する。バッテリ温度が外気温度と同じ温度になった場合(ステップS113のYES)、コントローラ10は、ステップS109において送風機22の駆動を停止する。バッテリ温度が依然として外気温度以上である場合(ステップS113のNO)、コントローラ10は、ステップS112に戻り、送風機22の駆動を継続する。
【0056】
このように、炎天下に車両100を駐車する際に、乗員の選択に応じて、切替弁24をケース内換気位置に動作させるとともに、送風機22を作動させることにより、バッテリケース11の内部を換気でき、バッテリ温度を外気温度と同一の温度にまで下げることができる。したがって、バッテリ12の寿命を優先したい乗員、或いは車両停車状態後に夜になり車室内の温度が下がってからしか車両100に乗りこまない乗員は、ケース内換気モードを選択することにより、バッテリ12の寿命を長くすることができる。
【0057】
また、炎天下に車両100を駐車した場合には、ソーラパネル40において発電が行われるため、ソーラ用バッテリ50を確実に充電することができる。したがって、バッテリケース11内又は車室内の換気中に、送風機22が電力不足により停止するのを抑制できる。
【0058】
また、換気制御において、送風機22は、車外の空気をバッテリケース11の内部又は車室内に引き込む動作を行うだけであるため、必要な駆動エネルギは少なくてよい。具体的には、この駆動エネルギは、エアコン3を用いて車室内を冷却するのに必要なエネルギと比べて十分に小さい。したがって、車両100の屋根に設置できるような小サイズのソーラパネル40であっても、送風機22を換気制御において駆動するのに十分なエネルギを得ることができる。
【0059】
また、ケース内換気モードが設定された場合、このケース内換気モードを採用しない車両と比べて、バッテリの寿命が約6.25年から約8年(試算)に延びた。
【0060】
(変形例1)
上述のフローチャートでは、ステップS106において、車室内の温度と外気温度とを対比したが、これに限られるものではなく、車室内の温度と吸気温度とを対比してもよい。同様に、ステップS111において、バッテリ温度と外気温度とを対比したが、これに限られるものではなく、バッテリ温度と吸気温度とを対比してもよい。これらの場合、コントローラ10は、上述した吸気温度チェック制御を実行し、正確な吸気温度を取得するとよい。
【0061】
(変形例2)
上述の実施形態では、車室内換気モード及びケース内換気モードの選択を乗員が行っているが、これに限るものではなく、例えば、車両停車状態において、コントローラ10が、車室内換気モードとケース内換気モードとを所定周期で自動的に切り替えるように制御してもよい。
【0062】
(変形例3)
上述の実施形態では、外気温度、車室内温度及びバッテリ温度の大小関係に基づき、車両停車状態における換気制御を行ったが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、車両停車状態でのソーラパネル40の発電量をモニタし、この発電量が閾値を超えたときに、送風機22を作動させることにより、換気制御を行ってもよい。車両停車状態において、発電量が閾値を超えた場合には、車室内の温度等が高温になっているものと予測されるため、適切なタイミングで、車室内又はバッテリケース11の内部を換気することができる。
【0063】
(変形例4)
上述の実施形態では、ソーラパネル40が車両100に搭載されているが、本願発明はこれに限られるものではなく、車両外部に設けられたソーラパネルから供給される電力により送風機22を駆動してもよい。例えば、充電スタンドでバッテリ12を充電する場合、通常、車両100のエアコン3は停止しているため、充電スタンドに設けられた太陽光パネルから供給される電力を用いて送風機22を作動させ、車両停車状態におけるバッテリ12及び/又は車室内の温度上昇を抑制してもよい。つまり、本願発明は、ソーラパネル40を有しない車両に対しても適用することができる。
【0064】
(実施形態2)
図5を参照しながら、本実施形態に係る車両の概略構成について説明する。図5は、車両の斜視図であり、一部の要素を透視して図示する。Frは車両の進行方向(前側方向)を示しており、Rrは車両の後進方向(後側方向)を示しており、Rhは車両の進行方向(Fr方向)に向かって右側の方向を示しており、Lhは車両の進行方向(Fr方向)に向かって左側の方向を示している。実施形態1と機能が共通する要素には、同一符合を付している。図6は、車室内及びバッテリを冷却する冷却システムの概略図である。
【0065】
車両200は、バッテリ12(第1のバッテリに相当する)の出力を用いてモータを駆動する第1の駆動経路と、エンジン2による第2の駆動経路とを有するハイブリッド車両である。ただし、車両200は、第1及び第2の駆動経路のうち第1の駆動経路のみを有する電気車両であってもよい。また、車両200は、第1及び第2の駆動経路を有すると共に、車両外部の外部電源を用いてバッテリ12を充電可能なプラグインハイブリッド車両であってもよい。
【0066】
バッテリパック1は、バッテリケース11と、バッテリケース11の内部に収容された
バッテリ12とを含む。バッテリ12は、複数の単電池を直列に接続したり、或いは複数の単電池を並列に接続した電池ブロックを直列に接続することにより構成してもよい。単電池は、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池などの二次電池、或いはキャパシタであってもよい。バッテリパック1は、例えば、車両200のリアシートのRr側に形成されたラゲージルームに設置することができる。
【0067】
バッテリパック1のバッテリケース11には、車両Lh側の端部に循環ダクト26(循環経路に相当する)が接続されており、車両Rh側の端部に循環ブロワ27(第1の送風機に相当する)が設けられている。循環ブロワ27が作動すると、循環ダクト26を介して、バッテリケース11の内外において空気を循環させることができる。循環ダクト26は、ペルチェユニット25の吸熱側に接続されている。循環ダクト26の内部を循環する空気は、ペルチェユニット25の吸熱側を通過することにより冷却される。これにより、冷却された空気を用いてバッテリ12を冷却できるため、バッテリ12の劣化を抑制できる。
【0068】
吸気管20(供給経路に相当する)の内部には、換気ファン28(第2の送風機に相当する)が設けられている。吸気管20の終端部には、車室内に向かって突出する換気口23が形成されている。吸気管20は、ペルチェユニット25の排熱側に接続されている。換気ファン28が作動すると、吸気口21から取り込まれた外気は、排熱側を通過した際に温度上昇し、換気口23から車室内に取り込まれる。
【0069】
ここで、車両停車状態で車両200が炎天下に放置されている場合には、エアコン3の作動が停止しているため、車室内及びバッテリケース11の内部の温度は徐々に上昇して、車外の温度よりも高くなる。例えば、車外の温度が40℃である場合、車室内の温度は50〜60℃になることもある。この場合、換気ファン28を作動させることにより、吸気管20を介して、車室内に外気を取り込み、車室内を換気することができる。
【0070】
ここで、吸気管20には、ペルチェユニット25における熱交換作用により循環ダクト26から排熱があるため、この排熱によって吸気管20に取り込まれた外気は温度上昇する。しかしながら、ペルチェユニット25から排熱される熱の熱量は非常に小さいため、吸気管20にとり込まれた外気は、僅か1〜2℃しか温度上昇しない。したがって、吸気管20を介して取り込まれた外気によって、車室内を十分に換気することができる。これにより、車室内にこもった熱を排熱することができるため、車両200に再び乗車した乗員が受ける不快感を軽減することができる。
【0071】
次に、図5及び図6を参照しながら、車両の構成について更に詳細に説明する。図6において、点線の矢印は信号が流れる方向を示しており、実線の矢印は電力が供給される方向を示している。また、太い黒色の矢印は空気が流れる方向を示している。
【0072】
車両200は、上記構成に加えて、さらに、コントローラ10、ソーラパネル40、ソーラ用バッテリ50(第2のバッテリに相当する)、補機バッテリ60、電源切替スイッチ70、車外温度センサ71(車外温度情報取得部に相当する)、車室内温度センサ72、バッテリ温度センサ74(バッテリ温度情報取得部に相当する)、スイッチ75,76、ペルチェ用スイッチ77を備える。
【0073】
車外温度センサ71は、車両200の外部の温度に関する情報を取得し、この取得した情報をコントローラ10に出力する。温度に関する情報は、サーミスタの抵抗値であってもよい。この場合、コントローラ10は、サーミスタの抵抗値の変化から、車外の温度を算出する。ここで、車外温度センサ71は、図5に図示するように、車両200のFr方向の端部に配置することができる。コントローラ10は、車外温度センサ71の取得結果を用いて、後述するフローチャートにおける換気制御を実行する。
【0074】
車室内温度センサ72は、車室内の温度に関する情報を取得し、この取得した情報をコントローラ10に出力する。温度に関する情報は、サーミスタの抵抗値であってもよい。この場合、コントローラ10は、サーミスタの抵抗値の変化から、車室内の温度を算出する。ここで、車室内温度センサ72は、図2に図示するように、インストルメントパネルに設けることができる。
【0075】
バッテリ温度センサ74は、バッテリ12の温度に関する情報を取得し、この取得した情報をコントローラ10に出力する。温度に関する情報は、サーミスタの抵抗値であってもよい。また、温度に関する情報は、バッテリ12を構成する個々の単電池から取得してもよいし、或いは複数の単電池を纏めた電池ブロックから取得してもよい。ここで、コントローラ10は、バッテリ温度センサ74から取得した情報を用いて、バッテリ12の蓄電量を推定したり、バッテリ12の冷却制御を行ったり、或いは後述するフローチャートにおける換気制御を実行する。
【0076】
ここで、バッテリ12の冷却制御とは、充放電により発熱したバッテリ12を適正な温度に維持するために循環ブロワ27、換気ファン28及びペルチェユニット25を作動させる制御のことである。この場合、電源切替スイッチ27が補機バッテリ60に接続され、循環ブロワ27、換気ファン28及びペルチェユニット25は、補機バッテリ60から電力の供給を受けることにより作動する。このバッテリ12の冷却制御は、バッテリ12の充放電中に行われ、車両停止状態では行われない。なお、冷却制御において、バッテリ12から供給される電力により送風機22を作動させてもよい。
【0077】
コントローラ10は、車両200の種々の制御を行う。コントローラ10は、CPU、MPUであってもよいし、或いはこれらのCPUなどにおいて行われる少なくとも一部の処理を回路的に実行するASIC回路を含んでいてもよい。また、CPUなどの個数は、単数であってもよいし、複数であってもよい。したがって、例えば、バッテリ12の充放電を制御するCPUと、換気ファン28、循環ブロワ27等の駆動を制御するCPUとが、異なっていても良い。
【0078】
ソーラパネル40は、図5に図示するように、車両200の屋根を構成するムーンルーフガラスに内蔵されている。ソーラパネル40は、複数のソーラセルを含む。ソーラセルは、多結晶シリコンからなる半導体の1種で、光エネルギを直接電気に変換する。N型半導体及びP型半導体の2種の材料から構成されているソーラセルに太陽光が照射されると、ソーラセルからマイナス電荷(電子)とプラス電荷(孔)が生成される。マイナス電荷はN型半導体に集まり、プラス電荷はP型半導体に集められる。ソーラパネル40で得られた電力は、ソーラ用バッテリ50に蓄電される。ソーラ用バッテリ50は、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池などの二次電池、或いはキャパシタであってもよい。
【0079】
補機バッテリ60は、図2に図示するオーディオ機器92に電力を供給したり、或いは上述したバッテリ12の冷却制御を行う際に、循環ブロワ27等に対して作動電力を供給する。補機バッテリ60は、バッテリ12から供給される電力により蓄電してもよい。
【0080】
ソーラ用バッテリ50及び補機バッテリ60は、電源切替スイッチ70を介して換気ファン28、循環ブロワ27及びペルチェユニット25に接続されている。コントローラ10は、電源切替スイッチ70に対して駆動信号(例えば、High/Low信号)を出力することにより、ソーラ用バッテリ50から換気ファン28、循環ブロワ27及びペルチェユニット25に対する電力の供給を許容する位置と、補機バッテリ60から換気ファン28、循環ブロワ27及びペルチェユニット25に対する電力の供給を許容する位置との間で動作する。
【0081】
スイッチ75は、コントローラ10からの駆動信号に基づき、オンとオフとの間で切り替わる。スイッチ75がオンになると、ソーラ用バッテリ50又は補機バッテリ60から循環ブロワ27に対する電力の供給が許容される。スイッチ75がオフになると、ソーラ用バッテリ50及び補機バッテリ60から循環ブロワ27に対する電力の供給が禁止される。
【0082】
スイッチ76は、コントローラ10からの駆動信号に基づき、オンとオフとの間で切り替わる。スイッチ76がオンになると、ソーラ用バッテリ50又は補機バッテリ60から換気ファン28に対する電力の供給が許容される。スイッチ76がオフになると、ソーラ用バッテリ50及び補機バッテリ60から換気ファン28に対する電力の供給が禁止される。
【0083】
ペルチェユニット25と電源切替スイッチ70との間には、コントローラ10からの駆動信号に基づき、オンとオフとの間で切り替わるペルチェ用スイッチ77が設けられている。ペルチェ用スイッチ77がオンになると、ソーラ用バッテリ50又は補機バッテリ60からペルチェユニット25に対する電力の供給が許容される。ペルチェ用スイッチ77がオフになると、ソーラ用バッテリ50及び補機バッテリ60からペルチェユニット25に対する電力の供給が禁止される。
【0084】
次に、図6乃至図8を参照しながら、ペルチェユニットについて詳細に説明する。図7は、ペルチェユニットの斜視図である。図8は、ペルチェユニットをX1−X2面で切断した断面図である。ペルチェユニット25は、吸熱ケース81、排熱ケース82及びペルチェモジュール83を含む。ペルチェモジュール83は、吸熱ケース81及び排熱ケース82に挟まれており、吸熱ケース81の長手方向に沿って所定間隔で配列されている。ペルチェモジュール83の個数は、適宜変更することができる。ペルチェモジュール83は、モジュール本体83A、複数の吸熱側フィン83B及び複数の排熱側フィン83Cを含む。
【0085】
モジュール本体83Aは、X−Y面を含む面内に配列される複数のP型熱電半導体及びN型熱電半導体と、これらの熱電半導体のZ軸方向の両端部にそれぞれ接合される銅電極とを含む。吸熱側フィン83Bは、吸熱ケース81と向き合う一方の銅電極に形成されており、排熱側フィン83Cは、排熱ケース82と向き合う他方の銅電極に形成されている。
【0086】
モジュール本体83Aと吸熱ケース81との間に吸熱側フィン83Bが介在することにより、循環ダクト26の一部が形成される。モジュール本体83Aと排熱ケース82との間に排熱側フィン83Cが介在することにより、吸気管20の一部が形成される。
【0087】
N型熱電半導体からP型熱電半導体に向かって直流電流を流すと、吸熱ケース81に対向する一方の銅電極から、排熱ケース82に対向する他方の銅電極に向かって放熱が行われる。したがって、モジュール本体83Aの銅電極に対して直流電流を流すことにより、循環ダクト26の内部を流れる空気を冷却することができる。また、モジュール本体83Aに対して複数の吸熱側フィン83Bが設けられることにより、循環ダクト26の内部を流れる空気に対する受熱面積が増大するため、冷却効果を高めることができる。同様に、モジュール本体83Aに対して複数の排熱側フィン83Cが設けられることにより、吸気管20の内部を流れる外気に対する放熱面積が増大するため、放熱効果を高めることができる。
【0088】
次に、図9のフローチャートを参照しながら、コントローラ10が行う換気制御について説明する。ステップS201において、コントローラ10は、イグニッションスイッチをオフすると、内部タイマを作動させる。ステップ202において、コントローラ10は、内部タイマのカウント値に基づき、イグニッションスイッチがオフされてから5分(待機時間)が経過したか否かを判定する。
【0089】
ここで、待機時間を5分とした理由は、イグニッションスイッチをオフする前は、エアコン3が作動することによる冷却が行われているため、イグニッションスイッチをオフした直後は、車室内に冷気が残っており、高温状態には至っていないと考えられるからである。したがって、待機時間は、5分に限定されるものではなく、例えば10分であってもよい。
【0090】
待機時間が5分に達した場合(ステップS202のYES)、コントローラ10は、ステップS203において、車外温度センサ71及びバッテリ温度センサ74の取得結果に基づき、外気温度がバッテリ温度以下であるか否かを判定する。
【0091】
外気温度がバッテリ温度以下である場合(ステップS203のYES)、コントローラ10は、ステップS204において、電源切替スイッチ70をソーラ用バッテリ50に接続するとともに、スイッチ75,76及びペルチェ用スイッチ77をオンにして、ペルチェユニット25、換気ファン28及び循環ブロワ27を動作させる。これにより、循環ダクト26の内部を循環する空気が冷却され、冷却された空気を用いてバッテリ12を冷却することができる。また、吸気管20に引き込まれた外気を用いて、車室内を換気することができる。
【0092】
コントローラ10は、ステップS205において、バッテリ温度が外気温度と同じ温度になったか否かを判定する。バッテリ温度が外気温度と同じ温度になった場合(ステップS205のYES)、コントローラ10は、ステップS206において、スイッチ75,76及びペルチェ用スイッチ77をオフにするとともに、ペルチェユニット25、換気ファン28及び循環ブロワ27の動作を停止して、ステップS207に進む。
【0093】
バッテリ温度が外気温度と同じ温度になっていない場合(ステップS205のNO)、コントローラ10は、ステップS204に戻り、ペルチェユニット25、換気ファン28及び循環ブロワ27の動作を継続する。
【0094】
ステップS207において、コントローラ10は、イグニッションスイッチがオンされたか否かを判別する。イグニッションスイッチがオンされた場合(ステップS207のYES)、このフローを終了し、イグニッションスイッチがオンされていない場合(ステップS207のNO)、ステップS202に戻る。
【0095】
このように、炎天下に車両200を駐車する際に、換気ファン28を作動して外気を引き込むだけで、車室内の温度を下げることができる。これにより、乗員が車両200に再び乗り込んだ時に、車室内のもやつきによって受ける不快感を軽減することができる。
【0096】
また、炎天下に車両200を駐車する際に、循環ブロワ27及びペルチェユニット25を作動して、循環ダクト26の内部を循環する空気を冷却することによりバッテリ温度を外気温度と同じ温度にまで下げることができる。したがって、バッテリ12の劣化を抑制することができる。
【0097】
また、換気制御において、ペルチェユニット25、換気ファン28及び循環ブロワ27を作動させるために必要なエネルギは、エアコン3を用いて車室内を冷却するのに必要なエネルギと比べて十分に小さい。したがって、車両200の屋根に設置できるような小サイズのソーラパネル40であっても、ペルチェユニット25、換気ファン28及び循環ブロワ27を換気制御において駆動するのに十分なエネルギを得ることができる。
【0098】
(変形例5)
上述のフローチャートでは、ステップS203において、バッテリ温度と外気温度とを対比したが、これに限られるものではなく、バッテリ温度と吸気温度とを対比してもよい。この場合、コントローラ10は、上述した吸気温度チェック制御を実行し、正確な吸気温度を取得するとよい。
【0099】
(変形例6)
上述の実施形態では、外気温度及びバッテリ温度の大小関係に基づき、車両停車状態における換気制御を行ったが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、車両停車状態でのソーラパネル40の発電量をモニタし、この発電量が閾値を超えたときに、ペルチェユニット25、換気ファン28及び循環ブロワ27を作動させることにより、換気制御を行ってもよい。車両停車状態において、発電量が閾値を超えた場合には、車室内の温度等が高温になっているものと予測されるため、適切なタイミングで、車室内の換気とバッテリ12の冷却とを行うことができる。
【0100】
(変形例7)
上述の実施形態では、ソーラパネル40が車両200に搭載されているが、本願発明はこれに限られるものではなく、車両外部に設けられたソーラパネルから供給される電力に基づきペルチェユニット25、換気ファン28及び循環ブロワ27を駆動してもよい。例えば、充電スタンドにおいてバッテリ12を充電する場合、通常、車両200のエアコン3は停止しているため、充電スタンドに設けられた太陽光パネルから供給される電力を用いてペルチェユニット25、換気ファン28及び循環ブロワ27を作動させることにより、車両停車状態におけるバッテリ12及び車室内の温度上昇を抑制してもよい。つまり、本願発明は、ソーラパネル40を有しない車両に対しても適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 バッテリパック 2 エンジン 3 エアコン 10 コントローラ
11 バッテリケース 12 バッテリ 20 吸気管 21 吸気口
22 送風機 23 排気口 24 切替弁 25 ペルチェユニット
26 循環ダクト 27 循環ブロワ 28 換気ファン 30 排気管
31 排気口 40 ソーラパネル 41 選択スイッチ
50 ソーラ用バッテリ 60 補機バッテリ 70 電源切替スイッチ
71 車外温度センサ 72 車室内温度センサ 73 吸気温度センサ
74 バッテリ温度センサ 75,76 スイッチ 77 ペルチェ用スイッチ
81 吸熱ケース 82 排熱ケース 83 ペルチェモジュール
83A モジュール本体 83B 吸熱側フィン 83C 排熱側フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する第1のバッテリと、
ソーラパネルで発電された電力により動作する送風機と、
前記送風機が動作することにより車外から供給される外気を車室内に向けて導通させる第1の経路と、前記第1のバッテリに向けて導通させる第2の経路と、を有する吸気管と、
前記第1の経路と前記第2の経路との分岐位置に配置され、前記吸気管に導入された外気を前記第1の経路に向かわせる第1の位置と、前記第2の経路に向かわせる第2の位置との間で切り替わる切替弁と、
を有する車両。
【請求項2】
車室内の温度を調節するエアコンと、
前記送風機及び前記切替弁の動作を制御するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、前記エアコンの作動が停止し、車室内の温度が車両外部からの熱によって温度上昇する車両停車状態において、前記送風機を動作させる換気制御を実行することを特徴とする請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記切替弁の位置を乗員が選択するための選択部を有し、
前記コントローラは、前記選択部における選択情報に基づき、前記換気制御を実行することを特徴とする請求項2に記載の車両。
【請求項4】
車両外部の温度に関する情報を取得する車外温度情報取得部と、
車室内の温度に関する情報を取得する車室内温度情報取得部と、を有し、
前記コントローラは、前記切替弁が前記第1の位置に位置する場合には、前記車外温度情報取得部及び前記車室内温度情報取得部の取得結果に基づき、車室内温度が車外温度以上であると判定した場合においてのみ、前記換気制御を実行することを特徴とする請求項2又は3に記載の車両。
【請求項5】
前記第1のバッテリの温度に関する情報を取得するバッテリ温度情報取得部を有し、
前記コントローラは、前記切替弁が前記第2の位置に位置する場合には、前記車外温度情報取得部及び前記バッテリ温度情報取得部の取得結果に基づき、前記第1のバッテリのバッテリ温度が車外温度以上であると判定した場合においてのみ、前記換気制御を実行することを特徴とする請求項2乃至4のうちいずれか一つに記載の車両。
【請求項6】
前記ソーラパネルで発電された電力を蓄電する第2のバッテリを有し、
前記送風機は、前記換気制御において前記第2のバッテリから電力の供給を受けることにより動作することを特徴とする請求項2乃至5のうちいずれか一つに記載の車両。
【請求項7】
前記ソーラパネルは、車両の屋根に設けられていることを特徴とする請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載の車両。
【請求項8】
車両を走行させるモータに供給される電力を蓄電する第1のバッテリと、
第1の送風機と、
前記第1の送風機が作動した際に前記バッテリの内外で空気を循環させる循環経路と、
第2の送風機と、
前記第2の送風機が作動した際に車室内に車両外部の空気を供給する供給経路と、
前記循環経路の内部で循環する空気の熱を前記供給経路に排熱する排熱動作を行うペルチェ素子と、
前記第1の送風機、前記第2の送風機及び前記ペルチェ素子のうち少なくとも一つは、ソーラパネルで発電された電力により動作することを特徴とする車両。
【請求項9】
車室内の温度を調整するエアコンと、
前記第1の送風機、前記第2の送風機及び前記ペルチェ素子の駆動を制御するコントローラと、を有し、
前記コントローラは、前記エアコンの作動が停止し、車室内の温度が車両外部からの熱によって温度上昇する車両停車状態において、前記第1の送風機、前記第2の送風機及び前記ペルチェ素子を動作させる換気制御を実行することを特徴とする請求項8に記載の車両。
【請求項10】
車両外部の温度に関する情報を取得する車外温度情報取得部と、
前記第1のバッテリの温度に関する情報を取得するバッテリ温度情報取得部を有し、
前記コントローラは、前記車外温度情報取得部及び前記バッテリ温度情報取得部の取得結果に基づき、前記第1のバッテリのバッテリ温度が車外温度以上であると判定した場合においてのみ、前記換気制御を実行することを特徴とする請求項9に記載の車両。
【請求項11】
前記ソーラパネルで発電された電力を蓄電する第2のバッテリを有し、
前記換気制御において、前記前記第1の送風機、前記第2の送風機及び前記ペルチェ素子のうち少なくとも一つは、前記第2のバッテリから電力の供給を受けることにより動作することを特徴とする請求項9又は10に記載の車両。
【請求項12】
前記ソーラパネルは、車両の屋根に設けられていることを特徴とする請求項8乃至11のうちいずれか一つに記載の車両。
【請求項13】
前記ペルチェ素子を複数備えるペルチェモジュールを、前記循環経路及び前記供給経路
に沿って配列したペルチェユニットを有することを特徴とする請求項8乃至12のうちいずれか一つに記載の車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−107554(P2013−107554A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−255500(P2011−255500)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】