説明

車体上部構造および車両のロールオーバー時の接地箇所検出方法

【課題】 ロールオーバー時に車体上部の接地箇所に対応して適正に乗員保護装置を作動できるようにした車体上部構造の提供を図る。
【解決手段】 車室内の左右両側にそれぞれ配置され乗員を緊急時に保護する複数の乗員保護装置1A,1Bと、ロールオーバー時にルーフRが接地する領域に配置した補強部材10と、補強部材10の適宜箇所に設けてこの補強部材10の変形状態を検出する変形検出手段20と、変形検出手段20からの情報によりロールオーバー時のルーフRの接地箇所を検知して、その変形箇所に応じて特定の乗員保護装置1Aまたは1Bを作動する保護装置作動手段30と、を設けたので、ロールオーバー時の実際のルーフRの接地箇所を精度良く検知して、ロールオーバー時の接地箇所に適正に対応した乗員保護装置1Aまたは1Bの作動を可能として乗員保護効果を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の車体上部構造および車両のロールオーバー時の接地箇所検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のロールオーバー(横転)時の乗員保護対策としては、次に示すような乗員保護装置の制御装置があり、これは車両のロール角度と同車両のロールレートとにより表される車両の状態が、ロール角度とロールレートとの関係を規定するスレッショルドラインにより定められたロールオーバー領域に入ったとき、または前記車両の状態が横方向加速度とロールレートとの関係を規定するスレッショルドラインにより定められたロールオーバー領域に入ったとき、同車両にロールオーバーは発生すると判定する。
【0003】
そして、横転側の乗員保護装置のみを作動させ、その後、車両が更に転動すると判定したとき、横転側でない車両保護装置を作動させることで、車両のロールオーバー時に適切に乗員保護装置を作動させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−200962号公報(第4〜6頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来の乗員保護装置の制御装置では、想定するロールオーバー領域の判断は横方向加速度センサやロール角センサからの検出信号に基づいて行われるが、
この制御装置では、ロールオーバー時にロール側から車体が順次接地していくという想定の元に成り立っている。
【0005】
ところが、車両がロールオーバーにより横転するとき、初期の接地は、ロールした側から接地する場合と、車両がバウンドしてロールした側と反対側から接地する場合と、車両のルーフの略中央付近で接地する場合の3通りの接地状態が考えられる。
【0006】
このように、ロールオーバー時の車体上面のルーフの接地箇所が必ずしもロールした側とは限らないため、前記従来の制御装置では乗員保護装置の作動を適切に行うことが困難になってしまう可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、ロールオーバー時に車体上部の接地箇所に対応して適正に乗員保護装置を作動できるようにした車体上部構造および車両のロールオーバー時の接地箇所検出方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の車体上部構造にあっては、車室内の左右両側にそれぞれ配置され乗員を緊急時に保護する複数の乗員保護装置と、
ロールオーバー時にルーフが接地する領域に配置した補強部材と、
補強部材の適宜箇所に設けてこの補強部材の変形状態を検出する変形検出手段と、
変形検出手段からの情報によりロールオーバー時のルーフの接地箇所を検知して、その変形箇所に応じて特定の乗員保護装置を作動する保護装置作動手段と、を備えたことを最も主要な特徴とする。
【0009】
また、本発明の車両のロールオーバー時の接地箇所検出方法は、ロールオーバー時にルーフが接地する領域に補強部材を配置して、この補強部材の適宜箇所に設けた変形検出手段によりロールオーバー時のルーフの接地箇所を検知し、その変形箇所に応じて複数の乗員保護装置のうちの特定の乗員保護装置を作動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車体上部構造および車両のロールオーバー時の接地箇所検出方法によれば、ロールオーバー時にルーフが接地する領域に補強部材を配置しておくことにより、ロールオーバーにより車両が横転した時にルーフの接地箇所に対応する補強部材が変形し、この変形状態を変形検出手段で検出することにより、ロールオーバー時の実際のルーフの接地箇所を精度良く検知することができる。
【0011】
従って、保護装置作動手段により検知した前記ルーフの変形箇所に応じて複数の乗員保護装置のうちの特定の乗員保護装置を作動することにより、ロールオーバー時の接地箇所に適正に対応した乗員保護装置の作動を可能として乗員保護効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0013】
図1〜図11は本発明の車体上部構造の第1実施形態を示し、図1は変形検出手段と乗員保護装置と保護装置作動手段の配置状態を示す車体側面図、図2は車体の骨格構造を示す全体斜視図、図3は補強部材の配置状態を示す平面図、図4はルーフ周囲の骨格構造を示す分解斜視図、図5は補強部材の拡大斜視図、図6は図5中A部の拡大斜視図、図7は変形検出手段の詳細図、図8は変形検出手段の性能を実験する説明図、図9は図8中の負荷Fα〜Fγによりそれぞれ発生する電圧の発生状態を(a)〜(c)に対応させて示す説明図、図10はロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図、図11はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【0014】
この第1実施形態の車体上部構造は、図1に示すように自動車Mの車室内の左右両側にそれぞれ配置されて乗員Cを緊急時に保護する複数の乗員保護装置としての左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bと、ロールオーバー時にルーフRが接地する領域、即ち本実施形態ではルーフRの略前半領域に配置した補強部材10と、補強部材10の適宜箇所に設けてこの補強部材10の変形状態を検出する変形検出手段としてのセンサ20と、このセンサ20からの情報によりロールオーバー時のルーフRの接地箇所を検知して、その変形箇所に応じて特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動する保護装置作動手段としてのコントローラ30と、を設けてある。
【0015】
本実施形態では、車両前部にロールオーバーを検知するRO検知センサ31が設けられ、このRO検知センサ31によるロールオーバー検知信号がコントローラ30に入力されるようになっている。
【0016】
また、本実施形態の車両のロールオーバー時の接地箇所検出方法は、ロールオーバー時にルーフRが接地する領域に補強部材10を配置して、この補強部材10の適宜箇所に設けた前記センサ20によりロールオーバー時のルーフRの接地箇所を検知し、その変形箇所に応じて左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動するようになっている。
【0017】
前記補強部材10は、図2,図3に示すように車両前方左側上端部(左側フロントピラー2Aの上端部)と車両上端部右側縁(右側ルーフサイドレール3B)の前後方向略中央部(右側センターピラー4Bの上端部)とを結ぶ第1補強フレーム10Aと、車両前方右側上端部(右側フロントピラー2Bの上端部)と車両上端部左側縁(左側ルーフサイドレール3A)の前後方向略中央部(左側センターピラー4Aの上端部)とを結ぶ第2補強フレーム10Bとで構成し、これら第1・第2補強フレーム10A,10Bを互いの交差部分で接合し、その交差接合部10Cを車幅方向中央部に配置するとともに、その交差接合部10Cに前記センサ20を配設してある。
【0018】
本実施形態では図3に示すように、前記第1・第2補強フレーム10A,10Bをそれぞれ略直線状に形成してX字状に配置するとともに、前記交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくし、かつ、前記センサ20を、第1・第2補強フレーム10A,10Bの応力/歪を検出する応力/歪検出センサとしての第1・第2センサ20A,20Bで構成して、これら第1・第2センサ20A,20Bを前記交差接合部10C内の中央部上下に設けてある。
【0019】
前記左右一対のルーフサイドレール3A,3Bは、図3に示すようにそれぞれの前端部間および後端部間に跨ってフロントルーフレール5およびリアルーフレール6が連結され、これらルーフサイドレール3A,3Bおよびフロント,リアルーフレール5,6により平面矩形状のルーフ骨格を成す。
【0020】
また、前記交差接合部10Cは、図3に示すように左側センターピラー4Aの上端と右側センターピラー4Bの上端とを結んだ直線L1の略中間と、フロントルーフレール5の車幅方向略中間とを結んだ直線L2上に位置させることにより、交差接合部10Cを車幅方向中央部に配置してある。
【0021】
前記第1・第2補強フレーム10A,10Bと、左・右側フロントピラー2A,2Bおよび左・右側センターピラー4A,4Bとの接続部分を含めたルーフR周囲の構造を自動車Mの左側に例をとって図4に示すと、第1・第2補強フレーム10A,10Bは、図5にも示すように下方に突出する逆ハット形断面に形成され、フロントピラー2A,2Bおよびセンターピラー4A,4Bは、それぞれピラーインナ2c,4cおよびピラーアウター2d,4dと、これらインナ,アウター部材間に配置されるピラーレインフォース2e,4eと、により3重構造に形成される。
【0022】
また、左・右側ルーフサイドレール3A,3Bにあっても、ルーフサイドレールインナ3c、ルーフサイドレールアウター3dおよびルーフサイドレールレインフォース3eの3重構造として形成される。
【0023】
ルーフサイドレールインナ3cの前端部には、フロントピラー2A,2Bのピラーインナ2cの上端部からルーフR中央側へ延長した方向にフロントピラー接合部3fを形成してあるとともに、ルーフサイドレールインナ3cの中央部には、センターピラー4A,4Bのピラーインナ4cの上端部からルーフ中央側へ延長した方向にセンターピラー接合部3gを形成してある。
【0024】
そして、第1補強フレーム10Aの前端部10Afをフロントピラー接合部3fに嵌合して重ね合わせ接合するとともに、第2補強フレーム10Bの後端部10Brをセンターピラー接合部3gに嵌合して重ね合わせ接合してある。
【0025】
一方、ルーフサイドレールインナ3cの前端部には、前記フロントピラー接合部3fと分岐するように車幅方向内側に向けてフロントルーフレール接合部3hを形成し、この接合部3hにフロントルーフレール5の車幅方向端部を接合してある。尚、リアルーフレール6にあってもフロントルーフレール5と同様の構造をもってルーフサイドレール3A,3Bに接合される。
【0026】
ところで、上述したルーフR左側の周辺構造は右側にあっても同様となり、第2補強フレーム10Bの前端部10Bfをフロントピラー接合部3fに嵌合して重ね合わせ接合するとともに、第1補強フレーム10Aの後端部10Arをセンターピラー接合部3gに嵌合して重ね合わせ接合してある。
【0027】
また、前記第1・第2補強フレーム10A,10Bおよびフロント,リアルーフレール5,6は、これらの両端部を結合する接合部3f,3g,3hを含めて、それぞれの逆ハット形断面となった上方開放側のフランジKにルーフパネルを接合することにより閉断面として構成される。
【0028】
前記第1・第2補強フレーム10A,10Bの交差接合部10Cは、図5に示すように第1・第2補強フレーム10A,10Bの逆ハット形断面が交差して矩形状若しくは菱形状の交差部分が形成され、この交差部分の内周を囲うようにその内周形状に沿った矩形状若しくは菱形状の補強リブ11を接合することにより、上述したように前記交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくしてある。
【0029】
そして、図6に示すように前記補強リブ11で囲まれた交差接合部10Cに前記第1・第2センサ20A,20Bを配置して、その交差接合部10Cの底板10Cbの上面に第1センサ20Aを取り付けるとともに、その底板10Cbの下面に第2センサ20Bを取り付けてある。
【0030】
このとき、第1センサ20Aは第1補強フレーム10Aの長手方向に対して直角に配置し、また、第2センサ20Bは第2補強フレーム10Bの長手方向に対して直角に配置してある。
【0031】
第1補強フレーム10Aは、交差接合部10Cから左側フロントピラー2Aのフロントピラー接合部3fまでが前方フレーム10A1となり、交差接合部10Cから右側センターピラー4Bのセンターピラー接合部3gまでが後方フレーム10A2となり、また、第2補強フレーム10Bは、交差接合部10Cから右側フロントピラー2Bのフロントピラー接合部3fまでが前方フレーム10B1となり、交差接合部10Cから左側センターピラー4Aのセンターピラー接合部3gまでが後方フレーム10B2となる。
【0032】
そして、前記第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2は、それぞれの断面積の大きさを等しくしてある。
【0033】
前記第1・第2センサ20A,20Bは、図7に示すように磁性体20mに銅線20cを巻き付けて構成され、発生する磁場Mfの変化により生ずる電圧の値を出力するようになっている。
【0034】
即ち、一般的に応力/歪検出センサSの特徴としては、例えば図8に示すように梁Bの中間部分に取り付けて、その梁Bの自由端部に垂直方向の負荷Fαと、軸方向の負荷Fβと、斜め方向の負荷Fγとを作用させた場合、図9(a)に示すように負荷Fαの場合は、この負荷Fαの曲げ応力の影響を受けたセンサ信号波形Wαのピーク電圧Wαpは、時間軸において図9(b)に示す負荷Fβの軸応力の影響を受けたセンサ信号波形Wβのピーク電圧Wβpよりも概ね遅れて伝達される。また、このときのピーク電圧Wαpの値は、ピーク電圧Wβpの値よりも低くなっている。
【0035】
一方、曲げ応力と軸応力の2つの成分を持つ負荷Fγのセンサ信号波形Wγのピーク電圧は、時間軸において、先に軸応力の影響を受けたピーク電圧Wγpが発生し、次に曲げ応力の影響を受けたピーク電圧Wγp′が発生する。また、このときの応力/歪検出センサSの配置は、梁Bに伝達される応力波に対して直交するように配される。
【0036】
従って、自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地する場合、その接地箇所に応じて第1・第2補強フレーム10A,10Bが部分的に変形し、これを第1・第2センサ20A,20Bで検出して電圧信号を出力するようになっており、ロールオーバー時に、ルーフRの左側から接地する場合、ルーフRの右側から接地する場合、ルーフRの略中央から接地する場合のそれぞれの信号波形を図10に示す。
【0037】
(1)ルーフ左側から接地する場合の第1・第2センサ20A,20Bの信号波形W1は、図10(a)に示すように第1センサ20Aの第1ピーク電圧WpA1の方が、第2センサ20Bの第1ピーク電圧WpB1よりも高く、かつ、第2センサ20Bの第2ピーク電圧WpB2の方が、第1センサ20Aの第2ピーク電圧WpA2よりも高くなっている。
【0038】
(2)ルーフ右側から接地する場合の第1・第2センサ20A,20Bの信号波形W2は、図10(b)に示すように第2センサ20Bの第1ピーク電圧WpB1の方が、第1センサ20Aの第1ピーク電圧WpA1よりも高く、かつ、第1センサ20Aの第2ピーク電圧WpA2の方が、第2センサ20Bの第2ピーク電圧WpB2よりも高くなっている。
【0039】
(3)ルーフ略中央から接地する場合の第1・第2センサ20A,20Bの信号波形W3は、図10(c)に示すように第1センサ20Aの第1ピーク電圧WpA1と第2センサ20Bの第1ピーク電圧WpB1とは略等しく、かつ、第1センサ20Aの第2ピーク電圧WpA2と第2センサ20Bの第2ピーク電圧WpB2とは略等しくなる。
【0040】
従って、前記第1・第2センサ20A,20Bから出力される電圧の信号波形を読み取ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図11のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させるようになっている。
【0041】
即ち、前記アルゴリズムは、ステップS1でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS2およびステップS3で第1センサ20Aおよび第2センサ20Bからそれぞれ電圧信号を出力する。
【0042】
そして、それぞれの信号はステップS4によりコントローラ30に入力されて、第1センサ20Aの第1ピーク電圧WpA1が第2センサ20Bの第1ピーク電圧WpB1よりも高く、かつ、第2センサ20Bの第2ピーク電圧WpB2が第1センサ20Aの第2ピーク電圧WpA2よりも高いとき、ステップS5により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの左側と判断し、ステップS6により左側カーテンエアバッグ1Aを最初に作動・展開させ、次にステップS7により所定時間の経過後に右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開させる。
【0043】
また、第2センサ20Bの第1ピーク電圧WpB1が第1センサ20Aの第1ピーク電圧WpA1よりも高く、かつ、第1センサ20Aの第2ピーク電圧WpA2が第2センサ20Bの第2ピーク電圧WpB2よりも高いとき、ステップS8により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの右側と判断し、ステップS9により右側カーテンエアバッグ1Bを最初に作動・展開させ、次にステップS10により所定時間の経過後に左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開させる。
【0044】
更に、第1センサ20Aの第1ピーク電圧WpA1と第2センサ20Bの第1ピーク電圧WpB1とが略等しく、かつ、第1センサ20Aの第2ピーク電圧WpA2と第2センサ20Bの第2ピーク電圧WpB2とが略等しいとき、ステップS11で初期接地をルーフRの略中央であると判断し、ステップS12により左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開させる。
【0045】
以上の構成によりこの第1実施形態の車体上部構造およびロールオーバー時の接地箇所検出方法によれば、ロールオーバー時に自動車MのルーフRが接地する領域に補強部材10を配置して、ロールオーバーにより自動車Mが横転した時にルーフRの接地箇所に対応する補強部材10が変形し、この変形状態をセンサ20で検出することにより、ロールオーバー時の実際のルーフRの接地箇所をコントローラ30で精度良く検知することができる。
【0046】
従って、コントローラ30により、検知した前記ルーフRの変形箇所に応じて複数のカーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定の乗員保護装置1Aまたは1Bを作動することにより、ロールオーバー時の接地箇所に適正に対応したカーテンエアバッグ1Aまたは1Bのいち早い作動を可能として乗員保護効果を高めることができる。
【0047】
また、本実施形態では前記作用効果に加えて、前記補強部材10は、左側フロントピラー2Aの上端部と右側センターピラー4Bの上端部とを結ぶ第1補強フレーム10Aと、右側フロントピラー2Bの上端部と左側センターピラー4Aの上端部とを結ぶ第2補強フレーム10Bとで構成し、これら第1・第2補強フレーム10A,10Bを互いの交差部分で接合し、その交差接合部10Cを車幅方向中央部に配置するとともに、その交差接合部10Cに前記センサ20を配設したので、ロールオーバー時に自動車Mが横転した際の初期接地箇所を、第1・第2補強フレーム10A,10Bに入力される負荷による変形として確実に捉えることができ、そして、その変形を交差接合部10Cに配設したセンサ20で精度良く検出することができる。
【0048】
更に、第1・第2補強フレーム10A,10Bをそれぞれ略直線状に形成するとともに、交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくし、かつ、前記センサ20を、第1・第2補強フレーム10A,10Bの応力/歪を検出する第1・第2センサ20A,20Bとして形成して、この第1・第2センサ20A,20Bを前記交差接合部10Cの中央部上下の2箇所に設けたので、交差接合部10Cの曲げ強度を高くしたことにより、この交差接合部10Cに配設した第1・第2センサ20A,20Bによる第1・第2補強フレーム10A,10Bの変形を感度良く検出することができ、ひいてはより正確な信号を出力することができる。
【0049】
また、センサ20として応力/歪を検出できる第1・第2センサ20A,20Bを用いたので、短時間(従来の加速度センサの約1/3)で信号波形を出力することが可能となり、カーテンエアバッグ1A,1Bを作動・展開する応答性をより高めることができる。
【0050】
更に、応力/歪を検出できる第1・第2センサ20A,20Bは、軸応力と曲げ応力で信号波形の伝達速度が異なる特徴があるため、第1・第2補強フレーム10A,10Bを単純な直線状の構造とすることで、軸応力と曲げ応力を伝達し易くするとともに、センサの少ない数で信号波形処理を行い易くできる。
【0051】
図12〜図17は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図12は補強部材の配置状態を示す平面図、図13はルーフ周囲の骨格構造を示す分解斜視図、図14は補強部材の拡大斜視図、図15は図14中B部の拡大斜視図、図16はロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図、図17はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【0052】
この第2実施形態の車体上部構造は、基本的に第1実施形態と略同様の構成となり、図12に示すようにロールオーバー時にルーフRが接地する領域に補強部材10を配置し、この補強部材10の適宜箇所に変形検出手段としてのセンサ21を設けて補強部材10の変形状態を検出するようになっており、そして、図1に示したようにセンサ20に代わるセンサ21からの情報により、ロールオーバー時のルーフRの接地箇所を検知して、その変形箇所に応じて特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動するコントローラ30およびロールオーバーを検知するRO検知センサ31を備えている。
【0053】
また、本実施形態にあっても前記補強部材10は、図12に示すように左側フロントピラー2Aの上端部(車両前方左側上端部)と右側センタピラー4Bの上端部(車両上端部右側縁の前後方向略中央部)とを結ぶ第1補強フレーム10Aと、右側フロントピラー2Bの上端部(車両前方右側上端部)と左側センタピラー4Aの上端部(車両上端部左側縁の前後方向略中央部)とを結ぶ第2補強フレーム10Bとで構成し、これら第1・第2補強フレーム10A,10Bを互いの交差部分で接合し、その交差接合部10Cを車幅方向中央部に配置するとともに、その交差接合部10Cに前記センサ21を配設してある。
【0054】
ここで、本実施形態が第1実施形態と特に異なる点は、図12に示すように第1・第2補強フレーム10A,10Bの交差接合部10Cよりも車両後方となるそれぞれの後方フレーム10A2,10B2を車幅方向に直線状に配置するとともに、第1・第2補強フレーム10A,10Bの交差接合部10Cよりも車両前方となるそれぞれの前方フレーム10A1,10B1を略直線状に配置して全体的にK字状とし、かつ、前記交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分よりも大きくし、そして、センサ21を、第1・第2補強フレーム10A,10Bの応力/歪を検出する応力/歪検出センサとしての第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cで構成し、図15に示すようにこれら第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cを、前記交差接合部10C内で第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1に対向する部位と、それぞれの後方フレーム10A2,10B2間に設けてある。
【0055】
即ち、本実施形態の第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cは応力/歪検出センサであり、第1実施形態に用いた第1・第2センサ20A,20Bと同様のものが用いられ、各センサ21A,21B,21Cを交差接合部10Cの底板10Cbの上面にそれぞれ取り付けてある。
【0056】
勿論、第1センサ21Aは第1補強フレーム10Aの前方フレーム10A1の長手方向に対して直角に配置され、第2センサ21Bは第2補強フレーム10Bの前方フレーム10B1の長手方向に対して直角に配置され、第3センサ21Cは第1・第2補強フレーム10A,10Bの後方フレーム10A2,10B2に対して直角に配置される。
【0057】
また、本実施形態では第1・第2補強フレーム10A,10Bの後方フレーム10A2,10B2を車幅方向に直線状に配置した場合にも、ルーフR周囲の構造は図13に示すようになっている。
【0058】
即ち、第1・第2補強フレーム10A,10Bは、図14にも示すように第1実施形態と同様に下方に突出する逆ハット形断面に形成され、第1補強フレーム10Aの前端部10Afを左側センターピラー2Aのフロントピラー接合部3fに嵌合して重ね合わせ接合するとともに、第1補強フレーム10Aの後端部10Arを右側ルーフサイドレール3Bのセンターピラー接合部3gに嵌合して重ね合わせ接合してある。
【0059】
また、第2補強フレーム10Bの前端部10Bfを右側センターピラー2Bのフロントピラー接合部3fに嵌合して重ね合わせ接合するとともに、第2補強フレーム10Bの後端部10Brを左側ルーフサイドレール3Aのセンターピラー接合部3gに嵌合して重ね合わせ接合してある。
【0060】
更に、第1実施形態と同様にフロントピラー2A,2Bおよびセンターピラー4A,4Bは、それぞれピラーインナ2c,4c、ピラーアウター2d,4dおよびピラーレインフォース2e,4eにより3重構造に形成されるとともに、左・右側ルーフサイドレール3A,3Bは、ルーフサイドレールインナ3c、ルーフサイドレールアウター3dおよびルーフサイドレールレインフォース3eにより3重構造に形成される。
【0061】
また、本実施形態にあっても第1・第2補強フレーム10A,10Bおよびフロント,リアルーフレール5,6は、これらの両端部を結合する接合部3f,3g,3hを含めて、それぞれの逆ハット形断面となった上方開放側のフランジKにルーフパネルを接合することにより閉断面として構成される。
【0062】
本実施形態では第1・第2補強フレーム10A,10Bの後方フレーム10A2,10B2を車幅方向に直線状に配置したことにより、図14,図15に示すように第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cを配置した交差接合部10Cは、その平面形状が五角形状となっており、その周囲を第1実施形態と同様に補強リブ11aで囲繞してあり、この五角形状の補強リブ11aの中央部に後方フレーム10A2,10B2の車両前方のフランジKが連続してリブ12となって配置され、このリブ12に対して車両前方に第3,第4センサ21A,21Bが配置されるとともに、車両後方に第5センサ21Cが配置される。
【0063】
自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地する場合の接地箇所に応じた第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cの検出信号を図16に示す。
【0064】
(1)ルーフ左側から接地する場合の第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cの信号波形W4は、図16(a)に示すように各センサ21A,21B,21Cの第1ピーク電圧WpA1,WpB1,WpC1では、第3センサ21Aの第1ピーク電圧WpA1が最も高く、次に第4センサ21Bの第1ピーク電圧WpB1、第5センサ21Cの第1ピーク電圧WpC1の順に高く、かつ、各センサ21A,21B,21Cの第2ピーク電圧WpA2,WpB2,WpC2では、第5センサ21Cの第2ピーク電圧WpC2が最も高く、次に第3センサ21Aの第2ピーク電圧WpA2、第4センサ21Bの第2ピーク電圧WpB2の順に高くなっている。
【0065】
(2)ルーフ右側から接地する場合の第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cの信号波形W5は、図16(b)に示すように各センサ21A,21B,21Cの第1ピーク電圧WpA1,WpB1,WpC1では、第4センサ21Bの第1ピーク電圧WpB1が最も高く、次に第3センサ21Aの第1ピーク電圧WpA1、第5センサ21Cの第1ピーク電圧WpC1の順に高く、かつ、各センサ21A,21B,21Cの第2ピーク電圧WpA2,WpB2,WpC2では、第5センサ21Cの第2ピーク電圧WpC2が最も高く、次に第4センサ21Bの第2ピーク電圧WpB2、第3センサ21Aの第2ピーク電圧WpA2の順に高くなっている。
【0066】
(3)ルーフ略中央から接地する場合の第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cの信号波形W6は、図16(c)に示すように各センサ21A,21B,21Cの第1ピーク電圧WpA1,WpB1,WpC1では、第3センサ21Aの第1ピーク電圧WpA1と第4センサ21Bの第1ピーク電圧WpB1が共に最も高く、次に第5センサ21Cの第1ピーク電圧WpC1が高く、かつ、各センサ21A,21B,21Cの第2ピーク電圧WpA2,WpB2,WpC2では、第5センサ21Cの第2ピーク電圧WpC2が最も高く、次に第3センサ21Aの第2ピーク電圧WpA2と第4センサ21Bの第2ピーク電圧WpB2が共に高くなっている。
【0067】
従って、本実施形態にあっても前記第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cから出力される電圧の信号波形を読み取ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図17のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させるようになっている。
【0068】
即ち、前記アルゴリズムは、ステップS20でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS21、ステップS22およびステップS23で第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cからそれぞれ電圧信号を出力する。
【0069】
そして、それぞれの信号はステップS24によりコントローラ30に入力されて、第1ピーク電圧WpA1,WpB1,WpC1が第3センサ21A、第4センサ21B,第5センサ21Cの順に高く、かつ、第2ピーク電圧WpA2,WpB2,WpC2が第5センサ21C,第3センサ21A,第4センサ21Bの順に高いとき、ステップS25により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの左側と判断し、ステップS26により左側カーテンエアバッグ1Aを最初に作動・展開させ、次にステップS27により所定時間の経過後に右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開させる。
【0070】
また、第1ピーク電圧WpA1,WpB1,WpC1が第4センサ21B、第3センサ21A、第5センサ21Cの順に高く、かつ、第2ピーク電圧WpA2,WpB2,WpC2が第5センサ21C、第4センサ21B,第3センサ21Aの順に高いとき、ステップS28により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの右側と判断し、ステップS29により右側カーテンエアバッグ1Bを最初に作動・展開させ、次にステップS30により所定時間の経過後に左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開させる。
【0071】
更に、第3センサ21Aと第4センサ21Bの第1ピーク電圧WpA1,WpB1が共に等しくて最も高く、かつ、第5センサ21Cの第2ピーク電圧WpC2が最も高いとき、ステップS31で初期接地をルーフRの略中央であると判断し、ステップS32により左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開させる。
【0072】
以上の構成によりこの第2実施形態の車体上部構造によれば、第1実施形態と同様にロールオーバーにより自動車Mが横転した時にルーフRの接地箇所に対応する補強部材10が変形し、この変形状態をセンサ21で検出することにより、ロールオーバー時の実際のルーフRの接地箇所をコントローラ30で精度良く検知することができる。
【0073】
従って、コントローラ30により、検知した前記ルーフRの変形箇所に応じて複数のカーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定の乗員保護装置1Aまたは1Bを作動することにより、ロールオーバー時の接地箇所に適正に対応したカーテンエアバッグ1Aまたは1Bのいち早い作動を可能として乗員保護効果を高めることができる。
【0074】
ところで、本実施形態では第1・第2補強フレーム10A,10Bのそれぞれの後方フレーム10A2,10B2を車幅方向に直線状に配置するとともに、第1・第2補強フレーム10A,10Bのそれぞれの前方フレーム10A1,10B1を略直線状に配置したので、交差接合部10Cに配設した第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cが、軸応力と曲げ応力で信号波形の伝達速度が異なる応力/歪検出センサであって、このような応力/歪検出センサを用いた場合にも、前記後方フレーム10A2,10B2および前記前方フレーム10A1,10B1がそれぞれ直線状となっていることにより、軸応力と曲げ応力を伝達し易くするとともに、車両直上から見た荷重入力角度とそれぞれの第1・第2補強フレーム10A,10Bの角度が略同じになるような構造となっているため、軸応力と曲げ応力の伝達効率を更に向上して、信号波形処理の精度をより高めることができ、ひいては、カーテンエアバッグ1A,1Bを作動・展開する応答性をより高めることができる。
【0075】
また、本実施形態にあっても、前記交差接合部10Cの曲げ強度を、補強リブ11を設けることにより第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分よりも大きくしたので、交差接合部10Cに配設した第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cによる第1・第2補強フレーム10A,10Bの変形を感度良く検出することができ、ひいてはより正確な信号を出力することができる。
【0076】
更に、第1実施形態と同様にセンサ21として応力/歪を検出できる第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cを用いたので、短時間(従来の加速度センサの約1/3)で信号波形を出力することが可能となり、カーテンエアバッグ1A,1Bを作動・展開する応答性をより高めることができる。
【0077】
更にまた、応力/歪を検出できる第3・第4・第5センサ21A,21B,21Cは、軸応力と曲げ応力で信号波形の伝達速度が異なる特徴があるため、第1・第2補強フレーム10A,10Bを単純な直線状の構造とすることで、軸応力と曲げ応力を伝達し易くするとともに、センサの少ない数で信号波形処理を行い易くできる。
【0078】
図18〜図25は本発明の第3実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図18は補強部材の配置状態を示す平面図、図19は補強部材の拡大斜視図、図20は(a)に図19中C−C線と(b)に図19中D−D線とにそれぞれ沿った断面図、図21は図19中E部の拡大斜視図、図22は図21中F−F線に沿った断面図、図23はセンサの作動状態を(a),(b)に順を追って示す断面図、図24はロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図、図25はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【0079】
この第3実施形態の車体上部構造は、基本的に第1実施形態と略同様の構成となり、図18に示すようにロールオーバー時にルーフRが接地する領域に補強部材10を配置し、この補強部材10の適宜箇所に変形検出手段としてのセンサ22を設けて補強部材10の変形状態を検出するようになっており、そして、図1に示したようにセンサ20に代わるセンサ22からの情報により、ロールオーバー時のルーフRの接地箇所を検知して、その変形箇所に応じて特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動するコントローラ30およびロールオーバーを検知するRO検知センサ31を備えている。
【0080】
また、前記補強部材10は、図18に示すように左側フロントピラー2Aの上端部(車両前方左側上端部)と右側センターピラー4Bの上端部(車両上端部右側縁の前後方向略中央部)とを結ぶ第1補強フレーム10Aと、右側フロントピラー2Bの上端部(車両前方右側上端部)と左側センターピラー4Aの上端部(車両上端部左側縁の前後方向略中央部)とを結ぶ第2補強フレーム10Bとで構成し、これら第1・第2補強フレーム10A,10Bを互いの交差部分で接合し、その交差接合部10Cを車幅方向中央部に配置するとともに、その交差接合部10Cに前記センサ22を配設してある。
【0081】
ここで、本実施形態では第1実施形態と同様に第1・第2補強フレーム10A,10Bをそれぞれ略直線状に形成してX字状に配置し、交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくし、かつ、図19に示すように第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の交差接合部側端部10A1c,10B1c,10A2c,10B2cをそれぞれ閉断面構造とし、また、図21に示すように前記センサ22を、押されることにより電気信号を出力するスイッチ型センサとしての第6センサ22A,第7センサ22B,第8センサ22C,第9センサ22Dで構成し、これら第6〜第9センサ22A〜22Dを前記各閉断面構造内にスイッチとしてのスイッチボタン22nの作動方向を上下に配置してある。
【0082】
前記交差接合部側端部10A1c,10B1c,10A2c,10B2cの閉断面構造は、図19に示すように、逆ハット形断面に形成された前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の上側に、十字状の閉塞板13を接合することにより形成してあり、図21に示すようにそれぞれ閉断面となった交差接合部側端部10A1c,10B1c,10A2c,10B2c内に前記第6〜第9センサ22A〜22Dを配置してある。
【0083】
即ち、第6センサ22Aは第1補強フレーム10Aの交差接合部側端部10A1cに、第7センサ22Bは第2補強フレーム10Bの交差接合部側端部10B2cに、第8センサ22Cは第2補強フレーム10Bの交差接合部側端部10B1cに、そして、第9センサ22Dは第1補強フレーム10Aの交差接合部側端部10A2cに配置してある。
【0084】
前記第6〜第9センサ22A〜22Dは、図21,図22に示すように本体22mの上側から出没自在にスイッチボタン22nが突出し、このスイッチボタン22nの押し込みによって電圧が発生するようになっており、これら第6〜第9センサ22A〜22Dは台座14を介して各交差接合部側端部10A1c,10B1c,10A2c,10B2cの底面10Ab,10Bbに取り付けられ、スイッチボタン22nが前記閉塞板13の下面に近接して対向している。
【0085】
従って、図23(a)に示すように前記第6〜第9センサ22A〜22Dを補強部材10(第1・第2補強フレーム10A,10B)に取り付けた状態で、この補強部材10の交差接合部10Cと反対側端部に負荷Fが作用すると、図23(b)に示すように補強部材10が閉塞板13とともに撓み変形し、この閉塞板13がスイッチボタン22nを押圧することにより電気信号を出力するようになっている。
【0086】
また、本実施形態にあっても前記交差接合部10Cは矩形状若しくは菱形状の交差部分となっており、この交差部分の内周を囲うようにその内周形状に沿った矩形状若しくは菱形状の補強リブ11を接合することにより、交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくしてある。
【0087】
自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地する場合の接地箇所に応じた第6〜第9センサ22A〜22Dの検出信号を図24に示す。
【0088】
(1)ルーフ左側から接地する場合の第6〜第9センサ22A〜22Dの信号波形W7は、図24(a)に示すように第6センサ22Aにより発生する電圧W7Aが、第7センサ22Bにより発生する電圧W7Bよりも先行して立ち上がり、かつ、第8センサ22Cの電圧W7Cおよび第9センサ22Dの電圧W7Dは略零となる。
【0089】
(2)ルーフ右側から接地する場合の第6〜第9センサ22A〜22Dの信号波形W8は、図24(b)に示すように第8センサ22Cにより発生する電圧W8Cが、第9センサ22Dにより発生する電圧W8Dよりも先行して立ち上がり、かつ、第6センサ22Aの電圧W8Aおよび第7センサ22Bの電圧W8Bは略零となる。
【0090】
(3)ルーフ略中央から接地する場合の第6〜第9センサ22A〜22Dの信号波形W9は、図24(c)に示すように第6センサ22Aにより発生する電圧W9Aと第8センサ22Cにより発生する電圧W9Cは略同時に立ち上がり、これらに遅れて第7センサ22Bにより発生する電圧W9Bと第9センサ22Dにより発生する電圧W9Dが略同時に立ち上がる。
【0091】
従って、本実施形態にあっても前記第6〜第9センサ22A〜22Dから出力される電圧信号を読み取ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図25のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させるようになっている。
【0092】
即ち、前記アルゴリズムは、ステップS40でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS41で第6〜第9センサ22A〜22Dからそれぞれ電圧信号を出力する。
【0093】
そして、それぞれの信号はステップS42によりコントローラ30に入力されて、第6センサ22Aの電圧W7Aが最初に発生し、続いて第7センサ22Bの電圧W7Bが発生し、かつ、第8センサ22Cの電圧W7Cおよび第9センサ22Dの電圧W7Dが略零となるとき、ステップS43により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの左側と判断し、ステップS44により左側カーテンエアバッグ1Aを最初に作動・展開させ、次にステップS45により所定時間の経過後に右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開させる。
【0094】
また、第8センサ22Cの電圧W8Cが最初に発生し、続いて第9センサ22Dの電圧W8Dが発生し、かつ、第6センサ22Aの電圧W8Aおよび第7センサ22Bの電圧W8Bが略零となるとき、ステップS46により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの右側と判断し、ステップS47により右側カーテンエアバッグ1Bを最初に作動・展開させ、次にステップS48により所定時間の経過後に左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開させる。
【0095】
更に、第6センサ22Aの電圧W9Aと第8センサ22Cの電圧W9Cが略同時に最初に立ち上がり、これらに遅れて第7センサ22Bの電圧W9Bと第9センサ22Dの電圧W9Dが略同時に立ち上がるとき、ステップS49で初期接地をルーフRの略中央であると判断し、ステップS50により左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開させる。
【0096】
以上の構成によりこの第3実施形態の車体上部構造によれば、第1実施形態と同様にロールオーバーにより自動車Mが横転した時にルーフRの接地箇所に対応する補強部材10が変形し、この変形状態をセンサ22で検出することにより、ロールオーバー時の実際のルーフRの接地箇所をコントローラ30で精度良く検知することができる。
【0097】
従って、コントローラ30により検知した前記ルーフRの変形箇所に応じて複数のカーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定の乗員保護装置1Aまたは1Bを作動することにより、ロールオーバー時の接地箇所に適正に対応したカーテンエアバッグ1Aまたは1Bのいち早い作動を可能として乗員保護効果を高めることができる。
【0098】
ところで、本実施形態では第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の交差接合部側端部10A1c,10B1c,10A2c,10B2cをそれぞれ閉断面構造としたので、これら閉断面構造内に配置するセンサとしてスイッチ型の第6〜第9センサ22A〜22Dを用いることができるので、これらスイッチ型センサは簡素な構造であるためコストダウンを達成できるにもかかわらず、短時間に電気信号を出力して接地箇所の判断を迅速に行うことができ、ひいては、カーテンエアバッグ1A,1Bを作動・展開する応答性をより高めることができる。
【0099】
また、本実施形態にあっても、前記交差接合部10Cの曲げ強度を、補強リブ11を設けることにより第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分よりも大きくしたので、交差接合部10Cに配設した第6〜第9センサ22A〜22Dによる第1・第2補強フレーム10A,10Bの変形を感度良く検出することができ、ひいてはより正確な信号を出力することができる。
【0100】
図26〜図31は本発明の第4実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図26は補強部材の配置状態を示す平面図、図27は補強部材の拡大斜視図、図28は図27中G部の拡大斜視図、図29はセンサの作動状態を(a),(b)に順を追って示す断面図、図30はロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図、図31はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【0101】
この第4実施形態の車体上部構造は、基本的に第1実施形態と略同様の構成となり、図26に示すようにロールオーバー時にルーフRが接地する領域に補強部材10を配置し、この補強部材10の適宜箇所に変形検出手段としてのセンサ23を設けて補強部材10の変形状態を検出するようになっており、そして、図1に示したようにセンサ20に代わるセンサ23からの情報により、ロールオーバー時のルーフRの接地箇所を検知して、その変形箇所に応じて特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動するコントローラ30およびロールオーバーを検知するRO検知センサ31を備えている。
【0102】
また、前記補強部材10は、図26に示すように左側フロントピラー2Aの上端部(車両前方左側上端部)と右側センターピラー4Bの上端部(車両上端部右側縁の前後方向略中央部)とを結ぶ第1補強フレーム10Aと、右側フロントピラー2Bの上端部(車両前方右側上端部)と左側センターピラー4Aの上端部(車両上端部左側縁の前後方向略中央部)とを結ぶ第2補強フレーム10Bとで構成し、これら第1・第2補強フレーム10A,10Bを互いの交差部分で接合し、その交差接合部10Cを車幅方向中央部に配置するとともに、その交差接合部10Cに前記センサ23を配設してある。
【0103】
ここで、本実施形態では第1実施形態と同様に第1・第2補強フレーム10A,10Bをそれぞれ略直線状に形成してX字状に配置し、交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくし、かつ、第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の一般部分10An,10Bnをそれぞれ閉空間構造とし、前記センサ23を、圧力変化を検出する圧力検出センサとしての第10〜第13センサ23A〜23Dで構成し、これら第10〜第13センサ23A〜23Dを前記各閉空間構造内に設けてある。
【0104】
前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の一般部分10An,10Bnの閉空間構造は、図27に示すように逆ハット形断面に形成された前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の略全長に亘って、それぞれの内側に断面矩形状の第1〜第4密閉中空部材15a〜15dを配置することにより構成される。
【0105】
即ち、第1密閉中空部材15aは第1補強フレーム10Aの前方フレーム10A1内に配置され、第2密閉中空部材15bは第2補強フレーム10Bの後方フレーム10B2内に配置され、第3密閉中空部材15cは第2補強フレーム10Bの前方フレーム10B1内に配置され、第4密閉中空部材15dは第1補強フレーム10Aの後方フレーム10A2内に配置される。
【0106】
一方、前記第10〜第13センサ23A〜23Dはピエゾ圧電素子で形成され、第10センサ23Aを前記第1密閉中空部材15aの車体中央側(交差接合部10C側)端部内に配置し、第11センサ23Bを前記第2密閉中空部材15bの車体中央側(交差接合部10C側)端部内に配置し、第12センサ23Cを前記第3密閉中空部材15cの車体中央側(交差接合部10C側)端部内に配置し、第13センサ23Dを前記第4密閉中空部材15dの車体中央側(交差接合部10C側)端部内に配置してある。
【0107】
従って、図29(a)に示すように前記第10〜第13センサ23A〜23Dを補強部材10(第1・第2補強フレーム10A,10B)に取り付けた状態で、この補強部材10の交差接合部10Cと反対側端部に負荷Fが作用すると、図29(b)に示すように補強部材10が密閉中空部材15a〜15dとともに撓み変形し、このとき撓み変形した密閉中空部材15a〜15d内の内部圧力変化を第10〜第13センサ23A〜23Dで検知して、電気信号に置き換えるようになっている。
【0108】
また、本実施形態にあっても前記交差接合部10Cは矩形状若しくは菱形状の交差部分となっており、この交差部分の内周を囲うようにその内周形状に沿った矩形状若しくは菱形状の補強リブ11を接合することにより、交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくしてある。
【0109】
自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地する場合の接地箇所に応じた第10〜第13センサ23A〜23Dの検出信号を図30に示す。
【0110】
(1)ルーフ左側から接地する場合の第10〜第13センサ23A〜23Dの信号波形W10は、図30(a)に示すように第10センサ23Aにより発生する電圧W10Aが、第11センサ23Bにより発生する電圧W10Bよりも先行して立ち上がり、かつ、第12センサ23Cの電圧W10Cおよび第13センサ23Dの電圧W10Dは、前記第10センサ23Aの電圧W10Aおよび第11センサ23Bの電圧W10Bよりも十分に低い。
【0111】
(2)ルーフ右側から接地する場合の第10〜第13センサ23A〜23Dの信号波形W11は、図30(b)に示すように第12センサ23Cにより発生する電圧W11Cが、第13センサ23Dにより発生する電圧W11Dよりも先行して立ち上がり、かつ、第10センサ23Aの電圧W11Aおよび第11センサ23Bの電圧W11Bは、前記第12センサ23Cの電圧W11Cおよび第13センサ23Dの電圧W11Dよりも十分に低い。
【0112】
(3)ルーフ略中央から接地する場合の第10〜第13センサ23A〜23Dの信号波形W12は、図30(c)に示すように第10センサ23Aにより発生する電圧W12Aと第12センサ23Cにより発生する電圧W12Cは略同時にかつ略等しく高い電圧をもって立ち上がり、これらに遅れて第11センサ23Bにより発生する電圧W12Bと第13センサ23Dにより発生する電圧W12Dが略同時に低い電圧をもって立ち上がる。
【0113】
従って、本実施形態にあっても前記第10〜第13センサ23A〜23Dから出力される電圧信号を読み取ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図31のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させるようになっている。
【0114】
即ち、前記アルゴリズムは、ステップS60でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS61で第10〜第13センサ23A〜23Dからそれぞれ電圧信号を出力する。
【0115】
そして、それぞれの信号はステップS62によりコントローラ30に入力されて、第10センサ23Aの電圧W10Aが最初に発生し、続いて第11センサ23Bの電圧W10Bが発生し、かつ、第12センサ23Cの電圧W10Cおよび第13センサ23Dの電圧W10Dが、第10センサ23Aの電圧W10Aおよび第11センサ23Bの電圧W10Bより低いとき、ステップS63により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの左側と判断し、ステップS64により左側カーテンエアバッグ1Aを最初に作動・展開させ、次にステップS65により所定時間の経過後に右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開させる。
【0116】
また、第12センサ23Cの電圧W11Cが最初に発生し、続いて第13センサ23Dの電圧W11Dが発生し、かつ、第10センサ23Aの電圧W11Aおよび第11センサ23Bの電圧W11Bが、第12センサ23Cの電圧W11Cおよび第13センサ23Dの電圧W11Dよりも低いとき、ステップS66により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの右側と判断し、ステップS67により右側カーテンエアバッグ1Bを最初に作動・展開させ、次にステップS68により所定時間の経過後に左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開させる。
【0117】
更に、第10センサ23Aの電圧W12Aと第12センサ23Cの電圧W12Cが略同時かつ略同出力で最初に立ち上がり、これらに遅れて第11センサ23Bの電圧W12Bと第13センサ23Dの電圧W12Dが略同出力で発生し、かつ、第10センサ23Aの電圧W12Aと第12センサ23Cの電圧W12Cは、第11センサ23Bの電圧W12Bと第13センサ23Dの電圧W12Dよりも低いとき、ステップS69で初期接地をルーフRの略中央であると判断し、ステップS70により左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開させる。
【0118】
以上の構成によりこの第4実施形態の車体上部構造によれば、第1実施形態と同様にロールオーバーにより自動車Mが横転した時にルーフRの接地箇所に対応する補強部材10が変形し、この変形状態をセンサ23で検出することにより、ロールオーバー時の実際のルーフRの接地箇所をコントローラ30で精度良く検知することができる。
【0119】
従って、コントローラ30により検知した前記ルーフRの変形箇所に応じて複数のカーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定の乗員保護装置1Aまたは1Bを作動することにより、ロールオーバー時の接地箇所に適正に対応したカーテンエアバッグ1Aまたは1Bのいち早い作動を可能として乗員保護効果を高めることができる。
【0120】
ところで、本実施形態では第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の一般部分10An,10Bnに第1〜第4密閉中空部材15a〜15dを配置して閉空間構造としたことにより、センサ23として圧力変化を検出する第10〜第13センサ23A〜23Dを用いることが可能となり、これら第10〜第13センサ23A〜23Dをピエゾ圧電素子などの簡単な構造のセンサを用いてコストダウンを達成できるにもかかわらず、短時間に電気信号を出力して接地箇所の判断を迅速に行うことができ、ひいては、カーテンエアバッグ1A,1Bを作動・展開する応答性をより高めることができる。
【0121】
また、本実施形態にあっても、前記交差接合部10Cの曲げ強度を、補強リブ11を設けることにより第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分よりも大きくしたので、交差接合部10Cに配設した第10〜第13センサ23A〜23Dによる第1・第2補強フレーム10A,10Bの変形を感度良く検出することができ、ひいてはより正確な信号を出力することができる。
【0122】
図32〜図37は本発明の第5実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図32は補強部材の配置状態を示す平面図、図33は補強部材の拡大斜視図、図34は図33中H部の拡大斜視図、図35はセンサの作動状態を(a),(b)に順を追って示す断面図、図36はロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図、図37はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【0123】
この第5実施形態の車体上部構造は、基本的に第1実施形態と略同様の構成となり、図32に示すようにロールオーバー時にルーフRが接地する領域に補強部材10を配置し、この補強部材10の適宜箇所に変形検出手段としてのセンサ24を設けて補強部材10の変形状態を検出するようになっており、そして、図1に示したセンサ20に代わるセンサ24からの情報により、ロールオーバー時のルーフRの接地箇所を検知して、その変形箇所に応じて特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動するコントローラ30およびロールオーバーを検知するRO検知センサ31を備えている。
【0124】
また、前記補強部材10は、図32に示すように左側フロントピラー2Aの上端部(車両前方左側上端部)と右側センターピラー4Bの上端部(車両上端部右側縁の前後方向略中央部)とを結ぶ第1補強フレーム10Aと、右側フロントピラー2Bの上端部(車両前方右側上端部)と左側センターピラー4Aの上端部(車両上端部左側縁の前後方向略中央部)とを結ぶ第2補強フレーム10Bとで構成し、これら第1・第2補強フレーム10A,10Bを互いの交差部分で接合し、その交差接合部10Cを車幅方向中央部に配置するとともに、その交差接合部10Cに前記センサ24を配設してある。
【0125】
ここで、本実施形態では第1実施形態と同様に第1・第2補強フレーム10A,10Bをそれぞれ略直線状に形成してX字状に配置し、交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくし、かつ、図33に示すように第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の交差接合部10C近傍にそれぞれ脆弱部としての切欠部16を形成し、前記センサ24を、第1・第2補強フレーム10A,10Bの歪を検出する第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dで構成し、これら歪ゲージ24A〜24Dを前記切欠部16の形成位置に跨って前記前方フレーム10A1,10B1および前記後方フレーム10A2,10B2にそれぞれ対応させて設けてある。
【0126】
前記切欠部16は、図34にも示すように前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2のそれぞれのフランジKが交差接合部10Cで互いに結合する角部に形成される。
【0127】
また、本実施形態にあっても交差結合部10Cには、これの内周を囲うようにその内周形状に沿った矩形状若しくは菱形状の補強リブ11を接合することにより、交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくしてあり、前記補強リブ11の各壁面が前記切欠部16の略形成位置となる。
【0128】
前記第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dは前記補強リブ11の4面下部を貫通した状態で、各前方フレーム10A1,10B1および各後方フレーム10A2,10B2の底面10Ab,10Bbに取り付けられる。
【0129】
即ち、第1歪ゲージ24Aを第1補強フレーム10Aの前方フレーム10A1と交差接合部10Cに跨って配置し、第2歪ゲージ24Bを第2補強フレーム10Bの後方フレーム10B2と交差接合部10Cに跨って配置し、第3歪ゲージ24Cを第2補強フレーム10Bの前方フレーム10B1と交差接合部10Cに跨って配置し、第4歪ゲージ24Dを第1補強フレーム10Aの後方フレーム10A2と交差接合部10Cに跨って配置してある。
【0130】
従って、図35(a)に示すように前記第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dを補強部材10(第1・第2補強フレーム10A,10B)に取り付けた状態で、この補強部材10の交差接合部10Cと反対側端部に負荷Fが作用すると、交差接合部10C近傍に切欠部16を形成してあるため、図35(b)に示すように第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dの取付部分に変形が発生し易くなり、そのときに生ずる歪を第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dで検知することにより、補強部材10の変形を電気信号に置き換えるようになっている。
【0131】
自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地する場合の接地箇所に応じた第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dの検出信号を図36に示す。
【0132】
(1)ルーフ左側から接地する場合の第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dの信号波形W13は、図36(a)に示すように第1歪ゲージ24Aにより発生する電圧W13Aが、第2歪ゲージ24Bにより発生する電圧W13Bよりも先行して立ち上がり、かつ、第3歪ゲージ24Cの電圧W13Cおよび第4歪ゲージ24Dの電圧W13Dは、前記第1歪ゲージ24Aの電圧W13Aおよび第2歪ゲージ24Bの電圧W13Bよりも十分に低い。
【0133】
(2)ルーフ右側から接地する場合の第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dの信号波形W14は、図36(b)に示すように第3歪ゲージ24Cにより発生する電圧W14Cが、第4歪ゲージ24Dにより発生する電圧W14Dよりも先行して立ち上がり、かつ、第1歪ゲージ24Aの電圧W14Aおよび第2歪ゲージ24Bの電圧W14Bは、前記第3歪ゲージ24Cの電圧W14Cおよび第4歪ゲージ24Dの電圧W14Dよりも十分に低い。
【0134】
(3)ルーフ略中央から接地する場合の第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dの信号波形W15は、図36(c)に示すように第1歪ゲージ24Aにより発生する電圧W15Aと第3歪ゲージ24Cにより発生する電圧W15Cは略同時にかつ略等しく高い電圧をもって立ち上がり、これらに遅れて第2歪ゲージ24Bにより発生する電圧W15Bと第4歪ゲージ24Dにより発生する電圧W15Dが略同時に低い電圧をもって立ち上がる。
【0135】
従って、本実施形態にあっても前記第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dから出力される電圧信号を読み取ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図37のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させるようになっている。
【0136】
即ち、前記アルゴリズムは、ステップS80でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS81で第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dからそれぞれ電圧信号を出力する。
【0137】
そして、それぞれの信号はステップS82によりコントローラ30に入力されて、第1歪ゲージ24Aの電圧W13Aが最初に発生し、続いて第2歪ゲージ24Bの電圧W13Bが発生し、かつ、第3歪ゲージ24Cの電圧W13Cおよび第4歪ゲージ24Dの電圧W13Dが、第1歪ゲージ24Aの電圧W13Aおよび第2歪ゲージ24Bの電圧W13Bより低いとき、ステップS83により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの左側と判断し、ステップS84により左側カーテンエアバッグ1Aを最初に作動・展開させ、次にステップS85により所定時間の経過後に右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開させる。
【0138】
また、第3歪ゲージ24Cの電圧W14Cが最初に発生し、続いて第4歪ゲージ24Dの電圧W14Dが発生し、かつ、第1歪ゲージ24Aの電圧W14Aおよび第2歪ゲージ24Bの電圧W14Bが、第3歪ゲージ24Cの電圧W14Cおよび第4歪ゲージ24Dの電圧W14Dよりも低いとき、ステップS86により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの右側と判断し、ステップS87により右側カーテンエアバッグ1Bを最初に作動・展開させ、次にステップS88により所定時間の経過後に左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開させる。
【0139】
更に、第1歪ゲージ24Aの電圧W15Aと第3歪ゲージ24Cの電圧W15Cが略同時かつ略同出力で最初に立ち上がり、これらに遅れて第2歪ゲージ24Bの電圧W15Bと第4歪ゲージ24Dの電圧W15Dが略同出力で発生し、かつ、第1歪ゲージ24Aの電圧W15Aと第3歪ゲージ24Cの電圧W15Cは、第2歪ゲージ24Bの電圧W15Bと第4歪ゲージ24Dの電圧W15Dよりも低いとき、ステップS89で初期接地をルーフRの略中央であると判断し、ステップS90により左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開させる。
【0140】
以上の構成によりこの第5実施形態の車体上部構造によれば、第1実施形態と同様にロールオーバーにより自動車Mが横転した時にルーフRの接地箇所に対応する補強部材10が変形し、この変形状態をセンサ24で検出することにより、ロールオーバー時の実際のルーフRの接地箇所をコントローラ30で精度良く検知することができる。
【0141】
従って、コントローラ30により検知した前記ルーフRの変形箇所に応じて複数のカーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定の乗員保護装置1Aまたは1Bを作動することにより、ロールオーバー時の接地箇所に適正に対応したカーテンエアバッグ1Aまたは1Bのいち早い作動を可能として乗員保護効果を高めることができる。
【0142】
ところで、本実施形態では第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の交差接合部10C近傍に切欠部16を形成したので、ロールオーバー時に第1・第2補強フレーム10A,10Bを切欠部16から変形し易くできるため、センサ24として歪ゲージ24A〜24Dを用いることができるようになり、簡単な構造のセンサを用いてコストダウンを達成できるにもかかわらず、短時間に電気信号を出力して接地箇所の判断を迅速に行うことができ、ひいては、カーテンエアバッグ1A,1Bを作動・展開する応答性をより高めることができる。
【0143】
また、本実施形態にあっても、前記交差接合部10Cの曲げ強度を、補強リブ11を設けることにより第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分よりも大きくしたので、第1〜第4歪ゲージ24A〜24Dを配置した交差接合部10Dと各前方フレーム10A1,10B1および各後方フレーム10A2,10B2との間により効率良く歪を発生させることができ、ひいては、第1・第2補強フレーム10A,10Bの変形を感度良く検出してより正確な信号を出力することができる。
【0144】
図38〜図44は本発明の第6実施形態を示し、前記各実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べるものとし、図38は補強部材の配置状態を示す平面図、図39は補強部材の拡大斜視図、図40は(a)に図39中I−I線と(b)に図39中J−J線とにそれぞれ沿った断面図、図41は図39中K部の拡大斜視図、図42はセンサの作動状態を(a),(b)に順を追って示す断面図、図43はロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図、図44はロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【0145】
この第6実施形態の車体上部構造は、基本的に第1実施形態と略同様の構成となり、図38に示すようにロールオーバー時にルーフRが接地する領域に補強部材10を配置し、この補強部材10の適宜箇所に変形検出手段としてのセンサ25を設けて補強部材10の変形状態を検出するようになっており、そして、図1に示したセンサ20に代わるセンサ25からの情報により、ロールオーバー時のルーフRの接地箇所を検知して、その変形箇所に応じて特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを作動するコントローラ30およびロールオーバーを検知するRO検知センサ31を備えている。
【0146】
また、前記補強部材10は、図38に示すように左側フロントピラー2Aの上端部(車両前方左側上端部)と右側センターピラー4Bの上端部(車両上端部右側縁の前後方向略中央部)とを結ぶ第1補強フレーム10Aと、右側フロントピラー2Bの上端部(車両前方右側上端部)と左側センターピラー4Aの上端部(車両上端部左側縁の前後方向略中央部)とを結ぶ第2補強フレーム10Bとで構成し、これら第1・第2補強フレーム10A,10Bを互いの交差部分で接合し、その交差接合部10Cを車幅方向中央部に配置するとともに、その交差接合部10Cに前記センサ25を配設してある。
【0147】
ここで、本実施形態では第1実施形態と同様に第1・第2補強フレーム10A,10Bをそれぞれ略直線状に形成してX字状に配置し、交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくし、かつ、図39に示すように第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の長さ方向の略中央部に易変形部17を形成し、前記センサ25を、第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の長さの変化を検出する1つのポテンショメータで構成し、このポテンショメータ25Pを前記交差接合部10Cに設けてある。
【0148】
前記易変形部17は、図39に示すように第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の断面積を、図40(a)に示すそれぞれの両端部に対して、図40(b)に示すようにそれぞれ中央部に向かって徐々に減少させて形成してある。
【0149】
また、本実施形態にあっても交差結合部10Cには、これの内周を囲うようにその内周形状に沿った矩形状若しくは菱形状の補強リブ11を接合することにより、交差接合部10Cの曲げ強度を第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分10An,10Bnよりも大きくしてある。
【0150】
前記ポテンショメータ25Pは、4点までの距離を測定できる構成となり、前記交差結合部10Cの補強リブ11内に配置してあり、このポテンショメータ25Pで第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の長さ変化を測定するようになっている。
【0151】
即ち、ポテンショメータ25Pには、四方に第1〜第4ワイヤ25A〜25Dが出没可能に設けられ、これらワイヤ25A〜25Dは引き出されることによりプラス方向の電圧が発生する一方、引き込まれることによりマイナス方向の電圧が発生するようになっており、これら電圧の変化により長さ変化を測定できる。
【0152】
前記第1〜第4ワイヤ25A〜25Dは、図41に示すようにそれぞれが補強リブ11の4面に形成した孔11aに挿通されて、前記第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2内に配索される。
【0153】
図39,図40に示すように、第1ワイヤ25Aは、第1補強フレーム10Aの前方フレーム10A1内を通って、その先端部が左側のフロントピラー接合部3fに緊張状態で結合されるとともに、第2ワイヤ25Bは、第2補強フレーム10Bの後方フレーム10B2内を通って、その先端部が左側のセンターピラー接合部3gに緊張状態で結合され、かつ、第3ワイヤ25Cは、第2補強フレーム10Bの前方フレーム10B1内を通って、その先端部が右側のフロントピラー接合部3fに緊張状態で結合されるとともに、第4ワイヤ25Dは、第1補強フレーム10Aの後方フレーム10A2内を通って、その先端部が右側のセンターピラー接合部3gに緊張状態で結合される。
【0154】
従って、前記ポテンショメータ25Pは、図42(a)に示すように補強部材10(第1・第2補強フレーム10A,10B)の交差接合部10C側と反対側の端部に負荷Fが作用して補強部材10が変形すると、その変形により生ずる折れ部Eは上方を向くので、ワイヤ25A〜25Dはポテンショメータ25Pから伸びる方向に引き出されて、ポテンショメータ25Pからプラスの電圧が発生する。
【0155】
また、図42(b)に示すように補強部材10の交差接合部10Cと端部との間の中央部に負荷Fが作用したとき、補強部材10の変形により生ずる折れ部Eは下方を向くので、ワイヤ25A〜25Dはポテンショメータ25Pに戻る方向に引き込まれて、ポテンショメータ25Pからマイナスの電圧が発生する。
【0156】
従って、前記ポテンショメータ25Pは補強部材10の変形を電気信号に置き換え、かつ、その変形モードを電気信号のプラスとマイナスの符号に置き換えることができる。
【0157】
自動車MがロールオーバーしてルーフRが接地する場合の接地箇所に応じたポテンショメータ25Pの第1〜第4ワイヤ25A〜25Dを介して取り出される検出信号を図43に示す。
【0158】
(1)ルーフ左側から接地する場合の第1〜第4ワイヤ25A〜25Dを介してポテンショメータ25Pで発生する信号波形W16は、図43(a)に示すように第1ワイヤ25Aを介して発生する電圧W16Aが、第2ワイヤ25Bを介して発生する電圧W16Bよりも先行して立ち上がり、かつ、第3ワイヤ25Cを介して発生する電圧W16Cおよび第4ワイヤ25Dを介して発生する電圧W16Dは、前記第1ワイヤ25Aを介して発生する電圧W16Aおよび第2ワイヤ25Bを介して発生する電圧W16Bよりも十分に低い。尚、この場合に発生する電圧は全てプラスとなる。
【0159】
(2)ルーフ右側から接地する場合の第1〜第4ワイヤ25A〜24dの信号波形W17は、図43(b)に示すように第3ワイヤ25Cを介して発生する電圧W17Cが、第4ワイヤ25Dを介して発生する電圧W17Dよりも先行して立ち上がり、かつ、第1ワイヤ25Aを介して発生する電圧W17Aおよび第2ワイヤ25Bを介して発生する電圧W17Bは、前記第3ワイヤ25Cを介して発生する電圧W17Cおよび第4ワイヤ25Dを介して発生する電圧W17Dよりも十分に低い。尚、この場合に発生する電圧は全てプラスとなる。
【0160】
(3)ルーフ略中央から接地する場合の第1〜第4ワイヤ25A〜24Dの信号波形W18は、図43(c)に示すように第1ワイヤ25Aを介して発生する電圧W18Aと第3ワイヤ25Cを介して発生する電圧W18Cは略同時に高い電圧をもってマイナスの電圧を発生し、または、第2ワイヤ25Bを介して発生する電圧W18Bと第4ワイヤ25Dを介して発生する電圧W18Dが略同時に低い電圧をもってマイナスの電圧を発生する。
【0161】
従って、本実施形態にあっても前記第1〜第4ワイヤ25A〜24Dから出力される電圧信号を読み取ることにより、ロールオーバー時のルーフRの最初の接地箇所を検知することが可能となり、本実施形態では図43のアルゴリズムにより複数の左・右側カーテンエアバッグ1A,1Bのうち特定のカーテンエアバッグ1Aまたは1Bを選択して作動・展開させるようになっている。
【0162】
即ち、前記アルゴリズムは、ステップS100でRO検知センサ31によりロールオーバーを検知し、ルーフRが接地したとき、ステップS101で第1〜第4ワイヤ25A〜24Dを介して得られた距離変化からポテンショメータ25Pが電圧信号を出力する。
【0163】
そして、それぞれの信号はステップS102によりコントローラ30に入力されて、第1ワイヤ25Aを介して発生するプラスの電圧W16Aが、第2ワイヤ25Bを介して発生するプラスの電圧W16Bよりも先行して立ち上がり、かつ、第3ワイヤ25Cを介して発生するプラスの電圧W16Cおよび第4ワイヤ25Dを介して発生するプラスの電圧W16Dが、第1ワイヤ25Aを介して発生する前記電圧W16Aおよび第2ワイヤ25Bを介して発生する前記電圧W16Bよりも十分に低いとき、ステップS103により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの左側と判断し、ステップS104により左側カーテンエアバッグ1Aを最初に作動・展開させ、次にステップS85により所定時間の経過後に右側カーテンエアバッグ1Bを作動・展開させる。
【0164】
また、第3ワイヤ25Cを介して発生するプラスの電圧W17Cが、第4ワイヤ25Dを介して発生するプラスの電圧W17Dよりも先行して立ち上がり、かつ、第1ワイヤ25Aを介して発生する電圧W17Aおよび第2ワイヤ25Bを介して発生する電圧W17Bが、前記第3ワイヤ25Cを介して発生する電圧W17Cおよび第4ワイヤ25Dを介して発生する電圧W17Dよりも十分に低いとき、ステップS106により前記コントローラ30は初期接地をルーフRの右側と判断し、ステップS107により右側カーテンエアバッグ1Bを最初に作動・展開させ、次にステップS108により所定時間の経過後に左側カーテンエアバッグ1Aを作動・展開させる。
【0165】
更に、第1ワイヤ25Aを介して発生する電圧W18Aと第3ワイヤ25Cを介して発生する電圧W18Cが共にマイナス電圧であるとき、または、第2ワイヤ25Bを介して発生する電圧W18Bと第4ワイヤ25Dを介して発生する電圧W18Dが共にマイナス電圧であるとき、ステップS109で初期接地をルーフRの略中央であると判断し、ステップS110により左側カーテンエアバッグ1Aと右側カーテンエアバッグ1Bとを同時に作動・展開させる。
【0166】
以上の構成によりこの第6実施形態の車体上部構造によれば、第1実施形態と同様にロールオーバーにより自動車Mが横転した時にルーフRの接地箇所に対応する補強部材10が変形し、この変形状態をポテンショメータ25Pで検出することにより、ロールオーバー時の実際のルーフRの接地箇所をコントローラ30で精度良く検知することができる。
【0167】
従って、コントローラ30により検知した前記ルーフRの変形箇所に応じて複数のカーテンエアバッグ1A,1Bのうちの特定の乗員保護装置1Aまたは1Bを作動することにより、ロールオーバー時の接地箇所に適正に対応したカーテンエアバッグ1Aまたは1Bのいち早い作動を可能として乗員保護効果を高めることができる。
【0168】
ところで、本実施形態では第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の長さ方向の略中央部に易変形部17を形成したので、これら前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の中央部で変形し易くなるため、変形を検出するセンサとして2点間の距離の変化を検出するポテンショメータ25Pを用いることができる。
【0169】
このため、そのポテンショメータ25Pからの信号により変形モードを特定することが可能となり、このようにセンサ信号の特徴のみでなく変形モードも用いることができることにより、接地箇所の判断をより正確に行うことが可能となり、ひいては、カーテンエアバッグ1A,1Bをより適切なタイミングで作動・展開させることが可能となり、乗員保護効果の更なる向上を図ることができる。
【0170】
また、本実施形態にあっても、前記交差接合部10Cの曲げ強度を、補強リブ11を設けることにより第1・第2補強フレーム10A,10Bの一般部分よりも大きくしたので、ポテンショメータ25Pを配置した交差接合部10Dと各前方フレーム10A1,10B1および各後方フレーム10A2,10B2との間をより効率良く変形させることができ、ひいては、第1・第2補強フレーム10A,10Bの変形を感度良く検出してより正確な信号を出力することができる。
【0171】
図45,図46は第6実施形態の変形例を示し、図45は補強部材の拡大斜視図、図46は図45中L部の拡大斜視図であり、易変形部をビード18で形成したものである。
【0172】
前記ビード18は、図45に示すように第1・第2補強フレーム10A,10Bの前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の長さ方向の略中央部の底面10Ab,10Bbにそれぞれ形成してある。
【0173】
即ち、前記ビード18は前方フレーム10A1,10B1および後方フレーム10A2,10B2の底面10Ab,10Bbに、上方に突出するように幅方向に凹設して形成され、ロールオーバーにより負荷が作用することにより、図42に示したものと同様に前記ビード18を折れ部Eとして変形することになり、この変形例にあっても前記第6実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0174】
ところで、本発明の車体上部構造は前記第1〜第6実施形態に例をとって説明したが、これら実施形態に限ることなく本発明の要旨を逸脱しない範囲で他の実施形態を各種採用することができ、例えば、乗員保護装置はカーテンエアバッグ1A,1Bに限ることなく、シートベルトやその他の装置であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の第1実施形態における変形検出手段と乗員保護装置と保護装置作動手段の配置状態を示す車体側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態における車体の骨格構造を示す全体斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態における補強部材の配置状態を示す平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態におけるルーフ周囲の骨格構造を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態における補強部材の拡大斜視図である。
【図6】図5中A部の拡大斜視図である。
【図7】本発明の第1実施形態における変形検出手段の詳細図である。
【図8】本発明の第1実施形態における変形検出手段の性能を実験する説明図である。
【図9】本発明の第1実施形態における図8中の負荷Fα〜Fγによりそれぞれ発生する電圧の発生状態を(a)〜(c)に対応させて示す説明図である。
【図10】本発明の第1実施形態におけるロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図である。
【図11】本発明の第1実施形態におけるロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【図12】本発明の第2実施形態における補強部材の配置状態を示す平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態におけるルーフ周囲の骨格構造を示す分解斜視図である。
【図14】本発明の第2実施形態における補強部材の拡大斜視図である。
【図15】図14中B部の拡大斜視図である。
【図16】本発明の第2実施形態におけるロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図である。
【図17】本発明の第2実施形態におけるロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【図18】本発明の第3実施形態における補強部材の配置状態を示す平面図である。
【図19】本発明の第3実施形態における補強部材の拡大斜視図である。
【図20】(a)に図19中C−C線と(b)に図19中D−D線とにそれぞれ沿った断面図である。
【図21】図19中E部の拡大斜視図である。
【図22】図21中F−F線に沿った断面図である。
【図23】本発明の第3実施形態におけるセンサの作動状態を(a),(b)に順を追って示す断面図である。
【図24】本発明の第3実施形態におけるロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図である。
【図25】本発明の第3実施形態におけるロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【図26】本発明の第4実施形態における補強部材の配置状態を示す平面図である。
【図27】本発明の第4実施形態における補強部材の拡大斜視図である。
【図28】図27中G部の拡大斜視図である。
【図29】本発明の第4実施形態におけるセンサの作動状態を(a),(b)に順を追って示す断面図である。
【図30】本発明の第4実施形態におけるロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図である。
【図31】本発明の第4実施形態におけるロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【図32】本発明の第5実施形態における補強部材の配置状態を示す平面図である。
【図33】本発明の第5実施形態における補強部材の拡大斜視図である。
【図34】図33中H部の拡大斜視図である。
【図35】本発明の第5実施形態におけるセンサの作動状態を(a),(b)に順を追って示す断面図である。
【図36】本発明の第5実施形態におけるロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図である。
【図37】本発明の第5実施形態におけるロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【図38】本発明の第6実施形態における補強部材の配置状態を示す平面図である。
【図39】本発明の第6実施形態における補強部材の拡大斜視図である。
【図40】(a)に図39中I−I線と(b)に図39中J−J線とにそれぞれ沿った断面図である。
【図41】図39中K部の拡大斜視図である。
【図42】本発明の第6実施形態におけるセンサの作動状態を(a),(b)に順を追って示す断面図である。
【図43】本発明の第6実施形態におけるロールオーバー時のセンサの電圧波形を(a)にルーフ左側から接地した場合と(b)にルーフ右側から接地した場合と(c)にルーフ略中央から接地した場合とをそれぞれ示す説明図である。
【図44】本発明の第6実施形態におけるロールオーバーの検知から乗員保護装置を作動するまでのアルゴリズムを示す説明図である。
【図45】本発明の第6実施形態の変形例における補強部材の拡大斜視図である。
【図46】図45中L部の拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0176】
1A,1B カーテンエアバッグ(乗員保護装置)
10 補強部材
10A 第1補強フレーム
10An 一般部分
10A1 前方フレーム
10A1c 交差結合部側端部
10A2 後方フレーム
10A2c 交差結合部側端部
10B 第2補強フレーム
10Bn 一般部分
10B1 前方フレーム
10B1c 交差結合部側端部
10B2 後方フレーム
10B2c 交差結合部側端部
10C 交差結合部
17 易変形部
18 ビード(易変形部)
20,21,22,23,24,25 センサ(変形検出手段)
20A,20B 第1,第2センサ(応力/歪検出センサ)
21A〜21C 第3〜第5センサ(応力/歪検出センサ)
22A〜22D 第6〜第9センサ(スイッチ型センサ)
23A〜23D 第10〜第13センサ(圧力検出センサ)
24A〜24D 第1〜第4歪ゲージ
25P ポテンショメータ(センサ)
30 コントローラ(保護装置作動手段)
M 自動車(車両)
R ルーフ
C 乗員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の左右両側にそれぞれ配置され乗員を緊急時に保護する複数の乗員保護装置と、
ロールオーバー時にルーフが接地する領域に配置した補強部材と、
補強部材の適宜箇所に設けてこの補強部材の変形状態を検出する変形検出手段と、
変形検出手段からの情報によりロールオーバー時のルーフの接地箇所を検知して、その変形箇所に応じて特定の乗員保護装置を作動する保護装置作動手段と、を備えたことを特徴とする車体上部構造。
【請求項2】
補強部材を、車両前方左側上端部と車両上端部右側縁の前後方向略中央部とを結ぶ第1補強フレームと、
車両前方右側上端部と車両上端部左側縁の前後方向略中央部とを結ぶ第2補強フレームと、で構成し、
これら第1・第2補強フレームを互いの交差部分で接合し、その交差接合部を車幅方向中央部に配置するとともに、その交差接合部に前記変形検出手段を配設したことを特徴とする請求項1に記載の車体上部構造。
【請求項3】
第1・第2補強フレームをそれぞれ略直線状に形成するとともに、前記交差接合部の曲げ強度を第1・第2補強フレームの一般部分よりも大きくし、
変形検出手段は、第1・第2補強フレームの応力/歪を検出する応力/歪検出センサであり、この応力/歪検出センサを前記交差接合部の中央部上下に設けたことを特徴とする請求項2に記載の車体上部構造。
【請求項4】
第1・第2補強フレームの前記交差接合部よりも車両後方となるそれぞれの後方フレームを車幅方向に直線状に配置するとともに、第1・第2補強フレームの前記交差接合部よりも車両前方となるそれぞれの前方フレームを略直線状に配置し、かつ、前記交差接合部の曲げ強度を第1・第2補強フレームの一般部分よりも大きくし、
変形検出手段は、第1・第2補強フレームの応力/歪を検出する応力/歪検出センサであり、この応力/歪検出センサを前記交差接合部で第1・第2補強フレームの前方フレームに対向する部位と、それぞれの後方フレーム間に設けたことを特徴とする請求項2に記載の車体上部構造。
【請求項5】
第1・第2補強フレームをそれぞれ略直線状に形成するとともに、前記交差接合部の曲げ強度を第1・第2補強フレームの一般部分よりも大きくし、かつ、第1・第2補強フレームの前方フレームおよび後方フレームの交差接合部側端部をそれぞれ閉断面構造とし、
変形検出手段は、押されることにより電気信号を出力するスイッチ型センサであり、このスイッチ型センサを前記各閉断面構造内にスイッチの作動方向を上下に配置して設けたことを特徴とする請求項2に記載の車体上部構造。
【請求項6】
第1・第2補強フレームをそれぞれ略直線状に形成するとともに、前記交差接合部の曲げ強度を第1・第2補強フレームの一般部分よりも大きくし、かつ、第1・第2補強フレームの前方フレームおよび後方フレームの一般部分をそれぞれ閉空間構造とし、
変形検出手段は、圧力変化を検出する圧力検出センサであり、この圧力検出センサを前記各閉空間構造内に設けたことを特徴とする請求項2に記載の車体上部構造。
【請求項7】
第1・第2補強フレームをそれぞれ略直線状に形成するとともに、前記交差接合部の曲げ強度を第1・第2補強フレームの一般部分よりも大きくし、かつ、第1・第2補強フレームの前方フレームおよび後方フレームの交差接合部近傍にそれぞれ脆弱部を形成し、
変形検出手段は、第1・第2補強フレームの歪を検出する歪ゲージであり、この歪ゲージを前記脆弱部の形成位置に跨って前記前方フレームおよび前記後方フレームにそれぞれ対応させて設けたことを特徴とする請求項2に記載の車体上部構造。
【請求項8】
第1・第2補強フレームをそれぞれ略直線状に形成するとともに、前記交差接合部の曲げ強度を第1・第2補強フレームの一般部分よりも大きくし、かつ、第1・第2補強フレームの前方フレームおよび後方フレームの長さ方向の略中央部に易変形部を形成し、
変形検出手段は、第1・第2補強フレームの前方フレームおよび後方フレームの長さの変化を検出するポテンショメータであり、このポテンショメータを前記交差接合部に設けたことを特徴とする請求項2に記載の車体上部構造。
【請求項9】
ロールオーバー時にルーフが接地する領域に補強部材を配置して、この補強部材の適宜箇所に設けた変形検出手段によりロールオーバー時のルーフの接地箇所を検知し、その変形箇所に応じて複数の乗員保護装置のうちの特定の乗員保護装置を作動することを特徴とする車両のロールオーバー時の接地箇所検出方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate

【図46】
image rotate


【公開番号】特開2006−142951(P2006−142951A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−334801(P2004−334801)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】