説明

車体下部構造

【課題】車両走行時に車体下面の車幅方向両側付近を流れる空気がリアタイヤ、リアホイールハウスに当たることを低減して空気抵抗を低減することが車体下部構造を提供する。
【解決手段】前輪5a,5bが配設される左右のフロントホイールハウス4a,4bと後輪7a,7bが配設される左右のリアホイールハウス6a,6bとの間に設けられたフロントフロアパネル2の下面の車幅方向両側側に、車幅方向中央側から車幅方向外側へ向けて下方に傾斜した傾斜面2b,2cを、車両前後方向に沿って車両後方側へ延びるようにそれぞれ形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体下部構造に関し、詳しくは車両走行時に車体下面の車両前部から車両後方側へ空気がスムーズに流れるようにして空気抵抗を低減させるようにした車体下部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両走行時における車体下面での空気抵抗を低減させるために、従来より、フロアパネルの下面を覆うようにして車両前後方向に沿って略平面状に延びるアンダカバーを配設して、アンダカバー表面に沿って空気が車両後方側へスムーズに流れるようにする構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、前記特許文献1の発明では、フロアパネルの下面を覆うようにして配設したアンダカバーの車両後部側を上方に向けて傾斜させて空気の車両後方への抜けがよくなるようにしている。
【特許文献1】特開2001−10543号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献1のようにフロアパネルの下面にアンダカバーを配設した構造の場合、アンダカバーで覆われたフロアパネルの車幅方向中央領域では、車両走行時にフロントバンパー下からアンダカバー表面(車体下面)へ流れ込む空気は車両後方へ向けてそのままスムーズに流れる。ところで、車両走行時にフロントバンパー下からアンダカバー表面に沿って車両後方側へ流れる空気の流速よりも、車両の両側外側を車両後方側へ向けて流れる空気の流速の方が速いので、アンダカバー表面の車幅方向両側付近を車両後方側へ向けて流れる空気の一部は車両の両側外側へ向けて流れる。
【0005】
このため、車両走行時にアンダカバー表面の車幅方向両側付近を流れる空気の一部は、リアタイヤ、リアホイールハウスに当たり、これにより、リアタイヤ、リアホイールハウス付近で発生する乱流によって空気抵抗が増して空力性能が低下してしまう。
【0006】
なお、アンダーカバーを用いずにフロアパネルの下面を極力平らにした構造の車両においても同様に、車両走行時にフロアパネルの車幅方向両側付近を流れる空気の一部は、リアタイヤ、リアホイールハウスに当たり、これにより、リアタイヤ、リアホイールハウス付近で発生する乱流によって空気抵抗が増して空力性能が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、車両走行時に車体下面の車幅方向両側付近を流れる空気がリアタイヤ、リアホイールハウスに当たることを低減して空気抵抗を低減することが車体下部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明に係る車体下部構造は、前輪が配設される左右のフロントホイールハウスと後輪が配設される左右のリアホイールハウスとの間に設けられたフロアパネルの下面の車幅方向両側側に、車幅方向中央側から車幅方向外側へ向けて下方に傾斜した傾斜面を、車両前後方向に沿って車両後方側へ延びるようにそれぞれ形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る車体下部構造によれば、フロアパネルの下面の車幅方向両側側に車両後方側へ延びるように形成した傾斜面により、車両走行時にフロアパネルの車幅方向両側付近を流れる空気を、車幅方向中央側へ寄せるようにして車両後方側へ流すことができる。これにより、車両走行時に車幅方向両側付近を流れる空気が車両後方側のリアタイヤやリアホイールハウスに当たることが減少し、車体下面での空気抵抗を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
〈実施形態1〉
図1は、本発明の実施形態1に係る車体下部構造を有する車両(自動車)の下面を示す概略斜視図、図2は、図1のA−A線断面図である。
【0011】
図1に示すように、車両1の車体下面には、フロントフロアパネル2、リアフロアパネル3、左右のフロントホイールハウス4a,4bに配設された各前輪5a,5b、左右のリアホイールハウス6a,6bに配設された各後輪7a,7b等が設けられている。フロントフロアパネル2の車幅方向両側は、車両前後方向に延びる各サイドシル8a,8bの内側にそれぞれ接合されている。なお、この車両1は、車両前部(フロント)にエンジンを搭載し、前輪5a,5bを駆動するFF車である。
【0012】
左右のフロントホイールハウス4a,4bの間には、不図示のエンジン、トランスミッション、フロントサスペンション等が配設されたエンジンルーム9が設けられており、左右のリアホイールハウス6a,6bの間には、マフラー10、燃料タンク11、リアサスペンション(図示省略)等が配設されている。燃料タンク11は、一体に形成されているフロントフロアパネル2とリアフロアパネル3との間に形成された凹部に位置している。なお、エンジンルーム9の下面は、出っ張りがないように略平坦状に形成されている。
【0013】
また、フロントフロアパネル2の車幅方向中央には、車両前後方向に沿って凹状のフロアトンネル2aが形成されており、このフロアトンネル2aには、マニホールド(図示省略)とマフラー10間に接続された排気管12が配設されている。
【0014】
フロントフロアパネル2の車幅方向両側側には、車幅方向中央側から車幅方向外側へ向けて傾斜が徐々に大きくなるような傾斜面2b,2cが車両前後方向に沿って一体的にそれぞれ形成されている。傾斜面2b,2cの車両前部側の先端部2d,2eは、車両後方側へ向けて滑らかに傾斜しており、車両走行時に傾斜面2b,2cの先端部2d,2eに当たった空気が乱れることなく傾斜面2b,2cの表面に沿って車両後方側へ流れるようにしている。傾斜面2b,2cは、本実施形態では水平面(フロントフロアパネル2のパネル面)に対して下方側に約6度の傾斜角で車幅方向外側に傾斜している。
【0015】
なお、車両1の車体下面に配設されたエンジンルーム9の下面、フロントフロアパネル2(傾斜面2b,2cを除く)、燃料タンク11、リアフロアパネル3等は、出っ張りをなくして略平坦状になっている。
【0016】
次に、前記した本実施形態に係る車体下部構造の作用について説明する。
【0017】
前記した本実施形態に係る車体下部構造を有する車両1の走行時においては、図3に示すように、フロントバンパー12の下からエンジンルーム9の下面の車幅方向中央付近へ流れ込む空気a1は、その後方のフロントフロアパネル2とリアフロアパネル3の各車幅方向中央領域の下面に沿って車両後方へ向けてそのままスムーズに流れる。
【0018】
一方、フロントバンパー12の下からエンジンルーム9の下面の車幅方向両側付近へ流れ込む空気a2は、その後方のフロントフロアパネル2の各傾斜面2b,2cに沿って車両後方側へ流れていく。この際、傾斜面2b,2cは、車幅方向中央側から車幅方向外側へ向けて傾斜が徐々に大きくなるように形成されているので、フロントフロアパネル2の車幅方向両側付近へ流れ込んだ空気a2が車両1の側面外側へ流れようとするのを傾斜面2b,2cで抑えることができる。
【0019】
これにより、フロントフロアパネル2の車幅方向両側付近へ流れ込んだ空気a2は、傾斜面2b,2cにより車幅方向中央側へ寄せられ、その後方のリアフロアパネル3の車幅方向中央付近に沿って車両後方へ向けて流れる。
【0020】
ところで、傾斜面2b,2cの傾斜の角度(傾斜角)と空気抵抗低減効果(Cd)の関係を調べた結果、図4に示すように、傾斜面2b,2cの角度が水平面(フロントフロアパネル2のパネル面)に対して下方側に約4〜9度のときに良好な空気抵抗低減効果を得ることができ、より好ましくは約6度のときが最も良好な空気抵抗低減効果を得ることができた。なお、図4は、傾斜面2b,2cの角度(傾斜角)が0度の場合(即ち、傾斜面2b,2cを形成していない場合)を基準にした空気抵抗低減効果(Cd)である。
【0021】
傾斜面2b,2cの傾斜の角度(傾斜角)を大きくすると、フロントフロアパネル2から傾斜面が大きく突出して逆に空気抵抗が増加するので、前記したように傾斜面2b,2cの角度(傾斜角)を約4〜9度、より好ましくは約6度に設定する。
【0022】
このように、本実施形態に係る車体下部構造によれば、車両走行時にフロントフロアパネル2の車幅方向両側付近へ流れ込んだ空気a2を、フロントフロアパネル2に形成した傾斜面2b,2cにより車幅方向中央側へ寄せるようにして車両後方側へスムーズに流すことができる。
【0023】
これにより、車両走行時に車幅方向両側付近を流れる空気が車両1の後方両側のリアタイヤ7a,7bやリアホイールハウス6a,6bに当たって発生する乱流を低減することができるので、車体下面での空気抵抗を低減することができ、かつ車両後部に発生する揚力も低減することができる。
【0024】
また、フロントフロアパネル2の下面に傾斜面2b,2cを一体に形成することにより、同様の傾斜面を形成したアンダーカバーをフロントフロアパネル2の下面に配設する場合に比べて、コストの低減を図ることができ、更に、重量の増加を抑えることができる。
【0025】
更に、フロントフロアパネル2の下面に傾斜面2b,2cを一体に形成することにより、リアホイールハウス6a,6bの手前側にディフレクターを設置することなく、リアタイヤ7a,7bやリアホイールハウス6a,6bに当たる空気を低減させることができる。
【0026】
〈実施形態2〉
図5は、本発明の実施形態2に係る車体下部構造を有する車両(自動車)の下面を示す概略斜視図である。なお、図1に示した実施形態1と同一部材には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0027】
本実施形態では、図5に示すように、車両1aのフロントフロアパネル2の車幅方向両側側に形成された傾斜面2b,2cは、その車幅方向内側が、車両前側の車幅方向外側から車両前後方向に沿って車幅方向中央側に向けて直線的に延びるような三角形状であり、車両前後方向後方側に向けて傾斜面2b,2cの車幅方向の幅が広くなっている。他の構成は図1に示した実施形態1と同様である。
【0028】
本実施形態においても実施形態1と同様に、車両走行時にフロントフロアパネル2の車幅方向両側付近へ流れ込んだ空気を、フロントフロアパネル2に形成した三角形状の傾斜面2b,2cにより車幅方向中央側へ寄せるようにして車両後方側へスムーズに流すことができる。
【0029】
これにより、車両走行時に車幅方向両側付近を流れる空気が車両1aの後方両側のリアタイヤ7a,7bやリアホイールハウス6a,6bに当たって発生する乱流を低減することができるので、車体下面での空気抵抗を低減することができ、かつ車両後部に発生する揚力も低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施形態1に係る車体下部構造を有する車両の下面を示す概略斜視図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】本発明の実施形態1に係る車体下部構造を有する車両の車体下面での空気の流れを示す図。
【図4】傾斜面の角度と空気抵抗低減効果との関係を示す図。
【図5】本発明の実施形態2に係る車体下部構造を有する車両の下面を示す概略斜視図。
【符号の説明】
【0031】
1、1a 車両
2 フロントフロアパネル
2b,2c 傾斜面
3 リアフロアパネル
4a,4b フロントホイールハウス
5a,5b 前輪
6a,6b リアホイールハウス
7a,7b 後輪
8a,8b サイドシル
9 エンジンルーム
10 マフラー
11 燃料タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪が配設される左右のフロントホイールハウスと後輪が配設される左右のリアホイールハウスとの間に設けられたフロアパネルの下面の車幅方向両側側に、車幅方向中央側から車幅方向外側へ向けて下方に傾斜した傾斜面を、車両前後方向に沿って車両後方側へ延びるようにそれぞれ形成した、
ことを特徴とする車体下部構造。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記フロアパネルのパネル面に対して下方側に4〜9度の角度で傾斜している、
ことを特徴とする請求項1に記載の車体下部構造。
【請求項3】
前記傾斜面は、その車幅方向内側が車両前側の車幅方向外側から車両前後方向に沿って車幅方向中央側に向けて直線的に延びるようにして三角形状に形成されており、車両前後方向後方側に向けて前記傾斜面の車幅方向の幅が広くなっている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車体下部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−29334(P2009−29334A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−197259(P2007−197259)
【出願日】平成19年7月30日(2007.7.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】