説明

車体側部構造

【課題】 車体が前方から衝撃を受けた際に、フードリッジレインフォースおよびピラーアウタでの衝撃エネルギ吸収を充分なものとする。
【解決手段】 フロントピラー3を構成するピラーアウタ12の車体前後方向前部に、車幅方向内側へ変位する段部33を形成し、この段部33の車幅方向外側面となる段部側面33aにフードリッジレインフォース45の車体前後方向後端45aを接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントピラーを構成するピラーアウタの車幅方向外側面に、車体前後方向に延びるフードリッジレインフォースの車体前後方向後端を接合してなる車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車体側部構造として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。これは、車体前後方向に延びるフードリッジレインフォースの車体前後方向後端を、フロントピラーを構成するピラーアウタの車幅方向外側面に接続している。
【特許文献1】特開平4−8678号公報(第1頁右欄第7行〜18行,第5図参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の車体側部構造では、フードリッジレインフォースの車体前後方向後端を、ピラーアウタの車幅方向外側面の平面上に単に接続しているだけであることから、車体が前方から衝撃を受け、フードリッジレインフォースのピラーアウタへの溶接接続部が破断した場合には、フードリッジレインフォースがそのまま後方へ移動してしまい、フードリッジレインフォースおよびピラーアウタで吸収できる衝撃エネルギ量が減少してしまう。
【0004】
そこで、本発明は、車体が前方から衝撃を受けた際に、フードリッジレインフォースおよびピラーアウタで吸収できる衝撃エネルギ量が減少してしまうことを防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、フロントピラーを構成するピラーアウタの車幅方向外側面に、車体前後方向に延びるフードリッジレインフォースの車体前後方向後端を接合してなる車体側部構造において、前記ピラーアウタの車幅方向外側面の車体前後方向前部を、車幅方向内側へ変位させて段部を形成し、この段部の車幅方向外側面に前記フードリッジレインフォースの車体前後方向後端を接合したことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、車体が前方から衝撃を受け、フードリッジレインフォースのピラーアウタへの溶接接続部が破断した場合であっても、ピラーアウタの車幅方向外側面に形成した段部の後面にフードリッジレインフォースの後端が当接してピラーアウタを変形させるので、フードリッジレインフォースおよびピラーアウタで吸収できる衝撃エネルギ量が減少してしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係わる車体側部構造を示すもので、自動車の車体左側部分における、フロントフェンダやドアを装着していない状態の側面図である図2のA−A断面図である。図3は、図1の車体側部構造部分の斜視図である。なお、各図中の矢印FRで示す方向が車体前方側で、同矢印UPRで示す方向が車体上方側である。
【0009】
図2に示すように、ボディサイドパネル1の車体前方側に位置するフロントピラー3の下部側は、図1に示すように車幅方向外側(図1中で下部側)にピラーアウタパネル5を、その内側にフロントピラーレインフォース7を、さらにその内側にヒンジプレート9を、それぞれ備えて構成される。そして、このフロントピラー3は、その車幅方向内側に位置するダッシュサイド10に溶接接合する。
【0010】
なお、上記したピラーアウタパネル5とフロントピラーレインフォース7とで、ピラーアウタ12を構成している。
【0011】
ピラーアウタパネル5は、車幅方向外側の側面部11と、車体前方側の前面部13と、車体後方側の後面部15と、車体前後両側のフランジ部17,19とを、それぞれ備えている。同様にしてフロントピラーレインフォース7も、車幅方向外側の側面部21と、車体前方側の前面部23と、車体後方側の後面部25と、車体前後両側のフランジ部27,29とを、それぞれ備えている。
【0012】
上記したピラーアウタパネル5,フロントピラーレインフォース7の車体後方側の各フランジ部19,29は、その車体後方側の端部を、車幅方向内側(図1中で上部側)に僅かに屈曲させて、接合部19a,29aを形成する。そして、フロントピラーレインフォース7の接合部29aを前記したダッシュサイド10に当接させ、さらにこの接合部29a上にピラーアウタパネル5の接合部19aを重ね合わせた上で、これら三者をスポット溶接にて互いに接合する。
【0013】
一方、ピラーアウタパネル5,フロントピラーレインフォース7の車体前方側の各フランジ部17,27は、これらの順でダッシュサイド10に重ね合わせた状態で、これら三者をスポット溶接にて互いに接合する。
【0014】
なお、ダッシュサイド10のピラーアウタ12を接合した部分のピラーアウタ12側には、ダッシュサイドレインフォース31を接合してある。
【0015】
ピラーアウタパネル5の車幅方向外側面(側面部11)の車体前後方向前部は、車幅方向内側へ変位させて段部33を形成している。段部33は、側面部11とほぼ平行となる、段部33の車幅方向外側面に相当する段部側面33aと、段部側面33aから車幅方向外側に立ち上がる段部後面33bとをそれぞれ有し、これら相互は曲面部33cにて連続している。また、段部側面33aと前面部13とは、角部曲面部33dにて連続している。
【0016】
上記ピラーアウタパネル5の段部33に対応してフロントピラーレインフォース7も、車幅方向外側面の車体前後方向前部にレインフォース段部35を形成し、レインフォース段部35とピラーアウタパネル5の段部33との間には、段部隙間37を形成している。また、ピラーアウタパネル5,フロントピラーレインフォース7の各前面部13,23相互間にも、段部隙間37に連続する前方隙間39を形成している。
【0017】
さらに、ピラーアウタパネル5,フロントピラーレインフォース7の各後面部15,25相互間および、各フランジ部19,29相互間においても、後方隙間41およびフランジ隙間43をそれぞれ形成している。
【0018】
そして、上記したピラーアウタパネル5における段部33の段部側面33aには、車体前後方向に延びるフードリッジレインフォース45の車体前後方向後端45aを、重ね合わせた状態でアーク溶接によって溶接接合する。このアーク溶接作業は、例えば炭酸ガスアーク溶接を行い、その溶接トーチ47の先端を段部後面33b付近に当接させた状態で行う。すなわち、段部後面33b付近の段部33は、ピラーアウタパネル5とフードリッジレインフォース45とを溶接接合する際の溶接トーチ47を接触させてガイドするトーチガイド部を構成している。
【0019】
上記したフードリッジレインフォース45は、図3に示すように、車幅方向外側に位置する外壁45bと、外壁45bの上下両端からそれぞれ車幅方向内側に延びてダッシュサイド10に接続される上壁45c,下壁45dとをそれぞれ備えている。
【0020】
上壁45cは、車幅方向内側および車体前後方向後方側に、互いに連続している接合フランジ45e,45fをそれぞれ設け、接合フランジ45eをダッシュサイド10に、接合フランジ45fをピラーアウタ12にそれぞれ溶接接合する。下壁45dも同様に、車幅方向内側および車体前後方向後方側に、互いに連続している接合フランジ45g,45hをそれぞれ設け、接合フランジ45gをダッシュサイド10に、接合フランジ45hをピラーアウタ12にそれぞれ溶接接合する。
【0021】
ヒンジプレート9は、図示しないドア取付用のヒンジを、ピラーアウタパネル5の外側に設置した状態で固定するもので、その固定部となる車幅方向外側面としての側面部9aを有し、この側面部9aをフロントピラーレインフォース7の側面部21の車体前後方向中間部分に接続する。
【0022】
ヒンジプレート9は、側面部9aの車体前方側を、内側へ屈曲させて前方傾斜部9bを形成し、前方傾斜部9bからさらに内側に屈曲させて前方接続部9cを形成し、前方接続部9cをフロントピラーレインフォース7のフランジ部27近傍の車体前方面としての前面部23に接続する。すなわち、ヒンジプレート9の車体前方側は、ピラーアウタ12の車体前方面の車幅方向内側寄りに接続している。これにより、ヒンジプレート9とピラーアウタ12との間に衝撃吸収空間49を形成する。
【0023】
また、ヒンジプレート9は、側面部9aの車体後方側を、内側へ屈曲させて後方傾斜部9dを形成し、後方傾斜部9dからさらに内側に屈曲させて後方接続部9eを形成し、後方接続部9eをフロントピラーレインフォース7の後面部25に接続する。後方傾斜部9dとフロントピラーレインフォース7の角部との間には隙間51を形成している。
【0024】
このような車体側部構造によれば、車体が前方から衝撃を受け、フードリッジレインフォース45のピラーアウタパネル5への溶接接続部が破断した場合であっても、ピラーアウタパネル5に形成した段部33の段部後面33bに、フードリッジレインフォース45の車体前後方向後端45aが当接するので、車体が前方から衝撃を受けた際の、フードリッジレインフォース45およびピラーアウタ12で吸収できる衝撃エネルギ量が減少してしまうことを防止できる。
【0025】
また、ヒンジプレート9の前方傾斜部9bとピラーアウタ12との間に衝撃吸収空間49を形成しているので、上記したような車体が前方から衝撃を受けた際の衝撃吸収作用が格段に向上する。
【0026】
また、フードリッジレインフォース45の車体前後方向後端45aを、ピラーアウタパネル5における段部33の段部側面33aにアーク溶接により接合する際に、溶接トーチ47の先端を段部後面33b付近に接触させてガイドするようにしたので、溶接作業が容易となる。
【0027】
さらに、上記のようにフードリッジレインフォース45とピラーアウタパネル5との接合をアーク溶接により行うことで、スポット溶接により行う場合に比較して、段部側面33aの車体前後方向長さを短くでき、この結果、段部側面33aと前面部13との境界部分である角部曲面部33dのR(アール)形状を大きな曲率とすることができ、ピラーアウタパネル5のプレス成形性が向上する。
【0028】
なお、フードリッジレインフォース45をピラーアウタパネル5に接合した後に、ピラーアウタ12をダッシュサイド10にスポット溶接により接合することから、ピラーアウタパネル5,フロントピラーレインフォース7の車体前方側の各フランジ部17,27に対応する位置のフードリッジレインフォース45には、スポット溶接用の電極を挿入するための作業孔45iを設けてある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係わる車体側部構造を示す、図2のA−A断面図である。
【図2】図1の車体側部構造を備えた自動車の車体左側部分の側面図である。
【図3】図1の車体側部構造部分の斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
3 フロントピラー
5 ピラーアウタパネル
9 ヒンジプレート
9a ヒンジプレートの側面部(車幅方向外側面)
11 ピラーアウタパネルの側面部(ピラーアウタの車幅方向外側面)
23 フロントピラーレインフォースの前面部(ピラーアウタの車体前方面)
33 段部(トーチガイド部)
33a 段部側面(段部の車幅方向外側面)
45 フードリッジレインフォース
45a フードリッジレインフォースの車体前後方向後端
47 溶接トーチ
49 衝撃吸収空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントピラーを構成するピラーアウタの車幅方向外側面に、車体前後方向に延びるフードリッジレインフォースの車体前後方向後端を接合してなる車体側部構造において、前記ピラーアウタの車幅方向外側面の車体前後方向前部を、車幅方向内側へ変位させて段部を形成し、この段部の車幅方向外側面に前記フードリッジレインフォースの車体前後方向後端を接合したことを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記段部を、前記ピラーアウタと前記フードリッジレインフォースとを溶接接合する際の溶接トーチを接触させてガイドするトーチガイド部としたことを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記ピラーアウタの内側に、ドア取付用のヒンジを固定するヒンジプレートを設け、このヒンジプレートの車幅方向外側面を、前記ピラーアウタの車幅方向内側面の車体前後方向中間部分に接続するとともに、前記ヒンジプレートの車体前方側を前記ピラーアウタの車体前方面の車幅方向内側寄りに接続し、前記ヒンジプレートと前記ピラーアウタとの間に、車体前方からの衝撃を吸収する衝撃吸収空間を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−76603(P2007−76603A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270249(P2005−270249)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】