説明

車体側部構造

【課題】側面衝突時のロッカの回転によるモーメントの影響を低減させて、側方荷重をアッパフロアクロスメンバへ効率的に伝達できるようにすることを目的とする。
【解決手段】車幅方向におけるセンターピラー26(車体側部)とアッパフロアクロスメンバ18(フロアクロスメンバ10)の端部18Cとの間に、第1荷重伝達部材11が配置されている。この第1荷重伝達部材11は、ロッカ12上に固設され、アッパフロアクロスメンバ18の端部18Cと近接対向した状態で配置されている。アッパフロアクロスメンバ18と第1荷重伝達部材11とが互いに固定されていないので、側面衝突時にロッカ12が車体正面視で回転変形しても、そのモーメントがアッパフロアクロスメンバ18へ伝達され難い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の側部中央において上下方向に伸びるロックピラーの下部と、リアシートクロスメンバとの間に渡ってガセットを取り付け、該ガセットに連なるようにしてロックピラー内部にピラー側補強材を取り付けた構造が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−280931号公報
【特許文献2】特開平8−216923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来例では、ガセットがロックピラーインナにボルト締結されると共に、フロアクロスメンバ(リヤシートクロスメンバ)にもボルト締結されているため、側面衝突時にロッカが車体正面視で回転変形すると、そのモーメントがガセットを介してフロアクロスメンバに伝達されてしまい、側方荷重(軸荷重)を該フロアクロスメンバに効率的に伝達することが難しかった。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、側面衝突時のロッカの回転によるモーメントの影響を低減させて、側方荷重をアッパフロアクロスメンバへ効率的に伝達できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、車体の下部において車幅方向に延設されたフロアクロスメンバと、前記車体の下部における車幅方向の両側において車体前後方向に延設されたロッカと、該ロッカ上に固設されると共に、車幅方向における車体側部と前記フロアクロスメンバの端部との間に、該端部と近接対向した状態で配置された第1荷重伝達部材と、を有することを特徴としている。
【0006】
請求項1に記載の車体側部構造では、ロッカ上に固設され車幅方向における車体側部とフロアクロスメンバの端部との間に配置された第1荷重伝達部材が、該フロアクロスメンバの端部と近接対向した状態で配置されており、該フロアクロスメンバと第1荷重伝達部材とが互いに固定されていないので、側面衝突時にロッカが車体正面視で回転変形しても、そのモーメントがフロアクロスメンバへ伝達され難く、該フロアクロスメンバへのモーメントの影響を低減させることができる。このため、側面衝突時に車体側部に入力された側方荷重を、フロアクロスメンバへ効率的に伝達することができる。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の車体側部構造において、前記第1荷重伝達部材の上面の高さは、前記フロアクロスメンバの上面の高さよりも高く設定されていることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の車体側部構造では、第1荷重伝達部材の上面の高さが、フロアクロスメンバの上面の高さよりも高く設定されているので、側面衝突時にロッカが車体正面視で回転変形し、該ロッカの回転変形に伴って第1荷重伝達部材が回転した場合、該第1荷重伝達部材は、フロアクロスメンバの端部の上面に対して係合するように当接する。このため、側面衝突時に、ロッカ及び第1荷重伝達部材の回転変形を抑制しつつ、側方荷重を該第1荷重伝達部材からフロアクロスメンバへより安定的に伝達することができる。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の車体側部構造において、前記車体側部内における前記第1荷重伝達部材の車幅方向外側位置に、第2荷重伝達部材が設けられていることを特徴としている。
【0010】
請求項3に記載の車体側部構造では、車体側部内における第1荷重伝達部材の車幅方向外側位置に、第2荷重伝達部材が設けられているので、側面衝突時に車体側部に入力された側方荷重は、より速やかに第1荷重伝達部材へ伝達され、更に該第1荷重伝達部材からフロアクロスメンバへ伝達される。このため、側面衝突時におけるフロアクロスメンバへの側方荷重の伝達をより早期に行うことができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項3に記載の車体側部構造において、前記第2荷重伝達部材の上面の高さは、前記第1荷重伝達部材の前記上面の高さよりも高く設定されていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載の車体側部構造では、第2荷重伝達部材の上面の高さが、第1荷重伝達部材の上面の高さよりも高く設定されているので、側面衝突時にロッカが車体正面視で回転変形し、該ロッカの回転変形に伴って第2荷重伝達部材が回転した場合、該第2荷重伝達部材は、第1荷重伝達部材の上面に対して係合するように当接する。このため、側面衝突時に、側方荷重を、第2荷重伝達部材から第1荷重伝達部材へより安定的に伝達することができる。
【0013】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車体側部構造において、前記フロアクロスメンバは、フロアパネルの上面側に設けられるアッパフロアクロスメンバと、該フロアパネルの下面側に設けられるロアフロアクロスメンバとを有して構成され、前記アッパフロアクロスメンバの端部が、前記第1荷重伝達部材と車幅方向に近接対向して配置されていることを特徴としている。
【0014】
請求項5に記載の車体側部構造では、フロアクロスメンバが、フロアパネルの上面側に設けられるアッパフロアクロスメンバと、該フロアパネルの下面側に設けられるロアフロアクロスメンバとを有して構成され、アッパフロアクロスメンバの端部が、第1荷重伝達部材と車幅方向に近接対向して配置されているので、側面衝突時における車体側部からアッパフロアクロスメンバへの効率的な荷重伝達を可能としつつ、フロアパネル及びアッパフロアクロスメンバの高さをより低い位置に設定することができる。このため、車室内空間をより広く確保することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明に係る請求項1に記載の車体側部構造によれば、側面衝突時のロッカの回転によるモーメントの影響を低減させて、側方荷重をアッパフロアクロスメンバへ効率的に伝達することができる、という優れた効果が得られる。
【0016】
請求項2に記載の車体側部構造によれば、側面衝突時に、ロッカ及び第1荷重伝達部材の回転変形を抑制しつつ、側方荷重を該第1荷重伝達部材からフロアクロスメンバへより安定的に伝達することができる、という優れた効果が得られる。
【0017】
請求項3に記載の車体側部構造によれば、側面衝突時におけるフロアクロスメンバへの側方荷重の伝達をより早期に行うことができる、という優れた効果が得られる。
【0018】
請求項4に記載の車体側部構造によれば、側面衝突時に、側方荷重を、第2荷重伝達部材から第1荷重伝達部材へより安定的に伝達することができる、という優れた効果が得られる。
【0019】
請求項5に記載の車体側部構造によれば、車室内空間をより広く確保することができる、という優れた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。図1において、本実施形態に係る車体側部構造Sは、フロアクロスメンバの一例たるフロアクロスメンバ10と、ロッカ12と、第1荷重伝達部材11と、第2荷重伝達部材21と、を有している。
【0021】
フロアクロスメンバ10は、車体14の下部において車幅方向に延設された、該車体14の骨格部材であって、フロアパネル16の上面側に設けられるアッパフロアクロスメンバ18と、該フロアパネル16の下面側に設けられるロアフロアクロスメンバ20とを有して構成されている。このロアフロアクロスメンバ20は、車体下方に凸となる略断面ハット形に形成されており、該ロアフロアクロスメンバ20の両端部は、ロッカ12におけるロッカインナパネル22に結合されている。
【0022】
図2に示されるように、ロアフロアクロスメンバ20には、一対のフランジ部20Aが車幅方向に延設されており、該フランジ部20Aの車幅方向端部には、該フランジ部20Aと連なる縦フランジ20Bと、該縦フランジ20Bと連なる下フランジ20Cとが設けられている。この縦フランジ20Bは、ロッカインナパネル22の縦壁部22Cと接合され、下フランジ20Cはロッカインナパネル22の下壁部22Dと接合されている。ロアフロアクロスメンバ20のフランジ部20A及びロッカインナパネル22の上壁部22Eの車体上側には、フロアパネル16の車幅方向の縁部16Aが接合され、これによって車体14のフロア34が構成されている。図1に示されるように、このフロア34上には、例えばシート取付け台座40が設けられ、該シート取付け台座40上に脚部36を介して車両用シート38が設置されている。
【0023】
図1,図2において、アッパフロアクロスメンバ18は、ロアフロアクロスメンバ20の車両上方となるフロアパネル16の上面に車幅方向に延設されている。このアッパフロアクロスメンバ18は、車両上方に凸となる略断面ハット形に形成されており、一対のフランジ部18Aが車幅方向に延設されている。図2に示されるように、アッパフロアクロスメンバ18は、該フランジ部18Aにおいてフロアパネル16上に接合されている。このフランジ部18Aと、フロアパネル16と、ロアフロアクロスメンバ20のフランジ部20Aとは、例えば3枚重ねで接合されている。アッパフロアクロスメンバ18の車幅方向外側の端部18Cは、例えばロアフロアクロスメンバ20の縦フランジ20B付近の車体上方に位置している。
【0024】
ロッカ12は、車体14の下部における車幅方向の両側において車体前後方向に延設され、例えばロッカインナパネル22とロッカアウタパネル24とを接合して構成されている。このうちロッカインナパネル22は、車幅方向内側へ凸となる略断面ハット形に形成され、またロッカアウタパネル24は、車幅方向外側へ凸となる略断面ハット形に形成されている。ロッカインナパネル22及びロッカアウタパネル24は、車体上側のフランジ部22A,24Aと、車体下側のフランジ部22B,24Bにおいて、例えばスポット溶接により接合されて閉断面に構成されている。
【0025】
図1,図2に示される断面位置では、車体側部の一例たるセンターピラー26がロッカ12に結合されている。このセンターピラー26は、例えばピラーアウタパネル28とピラーインナパネル30とを有して構成されている。このうちピラーアウタパネル28の下部は、例えばロッカアウタパネル24における車体下側のフランジ部24Bに接合され、またピラーインナパネル30の下部は、例えばロッカインナパネル22とロッカアウタパネル24との間に挟まれて、車体上側のフランジ部22A,24Aと、車体下側のフランジ部22B,24Bにおいて接合されている。即ち、図1,図2に示される断面位置では、ロッカ12がピラーインナパネル30により補強されている。
【0026】
図2において、第1荷重伝達部材11は、ロッカ12上に固設されると共に、車幅方向におけるセンターピラー26とアッパフロアクロスメンバ18の端部18Cとの間に、該端部18Cと近接対向した状態で配置された部材である。ここで、第1荷重伝達部材11とアッパフロアクロスメンバ18の端部18Cとの近接対向状態には、該端部18Cと第1荷重伝達部材11とが突き当てられている状態も含まれる。
【0027】
具体的には、図3に示されるように、第1荷重伝達部材11は、例えば金属板を折曲げ加工することで、略ボックス状に形成された高強度部材であって、例えばアッパフロアクロスメンバ18の端部18Cと車幅方向に対向する車幅方向内側の荷重伝達面11Aと、上面11Bと、該上面11Bの前後の端縁から夫々車体下方に形成された縦壁部11C,11Dと、該前後の縦壁部11C,11Dの下縁に夫々設けられたフランジ部11Eとを有して構成されている。図2に示されるように、このフランジ部11Eは、車幅方向外側部がロッカインナパネル22の上壁部22Eに重なり、車幅方向内側部がフロアパネル16の縁部16A上に重なるため、段差上に形成されている。前後のフランジ部11Eの車幅方向外側部には、第1荷重伝達部材11をロッカインナパネル22に締結するボルト32を通すための貫通孔11Hが夫々設けられている。
【0028】
荷重伝達面11Aの車体前方側の端縁には、縦壁部11Cの車体前方面に被せて接合された接合部11Fが設けられている。同様に、荷重伝達面11Aの車体後方側の端縁には、縦壁部11Dの車体後方面に被せて接合された接合部11Gが設けられている。接合部11F,11Gにより荷重伝達面11Aと縦壁部11C,11Dを接合したのは、側面衝突により第1荷重伝達部材11の荷重伝達面11Aがアッパフロアクロスメンバ18の端部18Cに当接した際における、該荷重伝達面11Aの変形を抑制して、アッパフロアクロスメンバ18の荷重伝達効率を高めるためである。
【0029】
図4に示されるように、第1荷重伝達部材11の荷重伝達面11Aは、例えばロッカインナパネル22の縦壁部22C付近の車体上方に位置している。言い換えれば、第1荷重伝達部材11は、車幅方向におけるロッカ12の範囲内に配置されており、アッパフロアクロスメンバ18だけでなく、ロアフロアクロスメンバ20とも車体上下方向にラップしていない。これは、側面衝突時にロッカ12が紙面半時計回りに回転変形した際に、第1荷重伝達部材11からアッパフロアクロスメンバ18へのモーメントM(図5)の伝達をより低減させるためである。
【0030】
図4に示されるように、第1荷重伝達部材の上面11Bの高さは、アッパフロアクロスメンバ18の上面18Bの高さよりも高く設定されている。ここでいうアッパフロアクロスメンバ18の上面18Bとは、第1荷重伝達部材11の荷重伝達面11Aと車幅方向に近接対向する端部18Cの近傍の上面である。これに加えて、図2に示されるように、第1荷重伝達部材11の荷重伝達面11Aは、アッパフロアクロスメンバ18の端部18Cのうち、フランジ部18Aの端部を除く領域(コ字状部)よりも大きく構成されている。側面衝突時における第1荷重伝達部材11からアッパフロアクロスメンバ18への荷重伝達を効率的に行うことができるようにするためである。なお、第1荷重伝達部材11のうちピラーインナパネル30と車幅方向に対向する部分、即ち第1荷重伝達部材11の車幅方向外側の端部11Jに、荷重受け面を設けてもよい。
【0031】
図1,図2,図4に示されるように、第2荷重伝達部材21は、センターピラー26内における第1荷重伝達部材11の車幅方向外側位置に設けられた部材である。具体的には、図3に示されるように、第2荷重伝達部材21は、例えば金属板を折曲げ加工することで、車幅方向外側が開口した略ボックス状に構成されている。これにより、第2荷重伝達部材21は、ピラーインナパネル30と対向する荷重伝達面21Aの四辺を折曲げ部とした上面21B、前後の縦壁部21C及び下壁部21Dを有している。
【0032】
縦壁部21Cの上縁には、上面21Bの裏面側へ折り曲げられて該上面21Bと接合された接合部が設けられている。下壁部21Dの前縁及び後縁には、縦壁部21Cの裏面側へ折り曲げられて該縦壁部21Cと接合された接合部が設けられている。このように、第2荷重伝達部材21は、上面21Bと縦壁部21C、及び該縦壁部21Cと下壁部21Dとを夫々接合することで、車幅方向外側が開口した略ボックス状に構成されている。
【0033】
上面21B及び縦壁部21Cの車幅方向外側の端縁には、フランジ部21H,21Gが夫々設けられている。第2荷重伝達部材21は、該フランジ部21H,21Gにおいてピラーアウタパネル28の車幅方向内側面に接合されている。図4に示されるように、第2荷重伝達部材21の荷重伝達面21Aは、通常時はピラーインナパネル30から離間した状態となっておいる。また第2荷重伝達部材21の荷重伝達面21Aは、ピラーインナパネル30を挟んで第1荷重伝達部材11の端部11Jと対向しているが、上面21Bの高さは、第1荷重伝達部材11の上面11Bの高さよりも高く設定されている。
【0034】
図4に示されるように、本実施形態では、第2荷重伝達部材21の上面21Bの高さが、車幅方向位置により異なっているが、このような場合には、該上面21Bのうち車幅方向内側の端部における高さが、第1荷重伝達部材11の上面11Bの高さよりも高くなっていればよい。言い換えれば、第2荷重伝達部材21の荷重伝達面21Aが、第1荷重伝達部材11の上面11Bの高さよりも高い位置まで設けられていればよい。このようにして、アッパフロアクロスメンバ18、第1荷重伝達部材11及び第2荷重伝達部材21は、車幅方向に一直線上に配置されており、またその上面18B,11B,21Bは、車幅方向外側へ向かって段階的に高くなっている。
【0035】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図5において、車体側部構造Sでは、車体側部、例えばセンターピラー26及びロッカ12に対して相手車両等の衝突体42が側面衝突し、ピラーアウタパネル28に側方荷重Fが入力されると、該側方荷重Fは、ピラーアウタパネル28が車幅方向内側へ変形してロッカアウタパネル24に当接することで、ロッカ12へ伝達される。このロッカ12は、ロッカインナパネル22及びロッカアウタパネル24により閉断面に構成されると共に、該ロッカインナパネル22及びロッカアウタパネル24の間に挟み込まれたピラーインナパネル30により補強されているので、車幅方向に潰れ変形し難い。またロッカインナパネル22の車幅方向内側には、ロアフロアクロスメンバ20が結合されているので、側方荷重Fは、ロッカ12からロアフロアクロスメンバ20へ、例えば矢印A方向に伝達される。
【0036】
また、車体側部構造Sでは、側方荷重Fがセンターピラー26に入力されると、該センターピラー26を構成するピラーアウタパネル28及びピラーインナパネル30が、車幅方向内側へ変形する。しかしながら、センターピラー26における第1荷重伝達部材11の車幅方向外側位置には、第2荷重伝達部材21が設けられているので、センターピラー26の余分な潰れ変形は該第2荷重伝達部材21により抑制される。このため、側面衝突後速やかに、第2荷重伝達部材21の荷重伝達面21Aがピラーインナパネル30に当接し、更に該ピラーインナパネル30が第1荷重伝達部材11の端部11Jに当接した状態となる。即ち、センターピラー26内に第2荷重伝達部材21を設けることで、車体側部に入力された側方荷重Fを、該センターピラー26及びピラーインナパネル30を介して、より速やかに第1荷重伝達部材11へ伝達することができる。
【0037】
この第1荷重伝達部材11は、ロッカ12のロッカインナパネル22上に固設され、車幅方向におけるセンターピラー26とアッパフロアクロスメンバ18の端部18Cとの間に配置されているので、第2荷重伝達部材21からピラーインナパネル30を介して伝達された側方荷重Fは、第1荷重伝達部材11の荷重伝達面11Aがアッパフロアクロスメンバ18の端部18Cに当接することにより、該アッパフロアクロスメンバ18へ矢印B方向に伝達される。このように、車体側部構造Sでは、第1荷重伝達部材11及び第2荷重伝達部材21を設けることで、側面衝突時におけるアッパフロアクロスメンバ18への側方荷重Fの伝達をより早期に行うことができる。
【0038】
ここで、図4に示されるように、第1荷重伝達部材11の荷重伝達面11Aは、通常時にはアッパフロアクロスメンバ18の端部18Cと近接対向した状態で配設されており、該アッパフロアクロスメンバ18と第1荷重伝達部材11とが互いに固定されていないので、図5に示されるように、側面衝突時にロッカ12が紙面反時計回りに回転変形しても、衝突初期段階ではそのモーメントMがアッパフロアクロスメンバ18へ伝達され難い。このため、該アッパフロアクロスメンバ18へのモーメントMの影響を低減させることができる。
【0039】
また図6に示されるように、車体側部構造Sでは、第2荷重伝達部材21の上面21Bの高さが、第1荷重伝達部材11の上面11Bの高さよりも高く設定されているので、側面衝突時にロッカ12及びセンターピラー26が紙面反時計回りに回転変形し、該回転変形に伴って第2荷重伝達部材21が回転した場合、該第2荷重伝達部材21は、ピラーインナパネル30を介して第1荷重伝達部材11の上面11Bに対して係合するように当接する。具体的には、第2荷重伝達部材21の荷重伝達面21Aのうち、第1荷重伝達部材11の上面11Bよりも高い部位が、あまり潰れ変形せずに該上面11Bに乗り上げることで、係合状態となる。
【0040】
更に、車体側部構造Sでは、第1荷重伝達部材11の上面11Bの高さが、アッパフロアクロスメンバ18の上面18Bの高さよりも高く設定されているので、ロッカ12の回転変形に伴って第1荷重伝達部材11が回転した場合、該第1荷重伝達部材11は、アッパフロアクロスメンバ18の端部18Cの上面18Bに対して係合するように当接する。具体的には、第1荷重伝達部材11の荷重伝達面11Aの上部のうち、アッパフロアクロスメンバ18の上面18Bよりも高い部位が、あまり潰れ変形せずに該上面18Bに乗り上げることで、係合状態となる。このように、第2荷重伝達部材21、第1荷重伝達部材11及びアッパフロアクロスメンバ18が、順に係合状態となることで、側面衝突時におけるセンターピラー26の倒れ変形やロッカ12の回転変形を抑制しつつ、側方荷重Fを第2荷重伝達部材21から第1荷重伝達部材11へ、更に該第1荷重伝達部材11からアッパフロアクロスメンバ18へ、より安定的に伝達することができる。
【0041】
更に、車体側部構造Sでは、フロアクロスメンバ10が、フロアパネル16の上面側に設けられるアッパフロアクロスメンバ18と、該フロアパネル16の下面側に設けられるロアフロアクロスメンバ20とを有して構成され、アッパフロアクロスメンバ18の端部18Cが、第1荷重伝達部材11と車幅方向に近接対向して配置されているので、側面衝突時における車体側部からアッパフロアクロスメンバ18への効率的な荷重伝達を可能としつつ、フロアパネル16及びアッパフロアクロスメンバ18の高さをより低い位置に設定することができる。このため、フロアパネル16の下面側に設けられるロアフロアクロスメンバ20を、第1荷重伝達部材11と車幅方向に対向させた場合と比較して、車室内空間をより広く確保することができる。
【0042】
本実施形態では、フロアクロスメンバ10(アッパフロアクロスメンバ18及びロアフロアクロスメンバ20)、第1荷重伝達部材11、第2荷重伝達部材21が、センターピラー26に対応する車体前後方向位置にあるものとして説明したが、これに限られず、車体前後方向における例えば複数箇所に、同様のフロアクロスメンバ10、第1荷重伝達部材11、第2荷重伝達部材21を設けるようにしてもよい。
【0043】
また車体側部の一例として、センターピラー26を挙げて説明したが、車体側部はセンターピラー26に限られるものではなく、例えば図示しない車両用ドアであってもよい。更に、車体14の軽量化を考慮して、第2荷重伝達部材21の装着を省略することも可能である。また車体側部構造Sは、モノコック車両及びフレーム付きの車両の双方に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】車体側部構造を示す断面図である。
【図2】車体側部構造を示す部分破断拡大斜視図である。
【図3】アッパフロアクロスメンバ、第1荷重伝達部材、及び第2荷重伝達部材を示す分解斜視図である。
【図4】車体側部構造を示す拡大断面図である。
【図5】側面衝突初期において、ロッカに入力された側方荷重がロアフロアクロスメンバへ伝達されると共に、センターピラーに入力された側方荷重が第2荷重伝達部材及び第1荷重伝達部材を介してアッパフロアクロスメンバへ伝達されている状態を示す拡大断面図である。
【図6】アッパフロアクロスメンバの上面に第1荷重伝達部材が係合すると共に、該第1荷重伝達部材の上面に第2荷重伝達部材の上面が係合することで、ロッカ及びセンターピラーの回転変形が抑制されている状態を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10 フロアクロスメンバ
11 第1荷重伝達部材
11B 上面
12 ロッカ
14 車体
16 フロアパネル
18 アッパフロアクロスメンバ(フロアクロスメンバ)
18B 上面
18C 端部
20 ロアフロアクロスメンバ(フロアクロスメンバ)
21 第2荷重伝達部材
21B 上面
26 センターピラー(車体側部)
S 車体側部構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の下部において車幅方向に延設されたフロアクロスメンバと、
前記車体の下部における車幅方向の両側において車体前後方向に延設されたロッカと、
該ロッカ上に固設されると共に、車幅方向における車体側部と前記フロアクロスメンバの端部との間に、該端部と近接対向した状態で配置された第1荷重伝達部材と、
を有することを特徴とする車体側部構造。
【請求項2】
前記第1荷重伝達部材の上面の高さは、前記フロアクロスメンバの上面の高さよりも高く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の車体側部構造。
【請求項3】
前記車体側部内における前記第1荷重伝達部材の車幅方向外側位置に、第2荷重伝達部材が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体側部構造。
【請求項4】
前記第2荷重伝達部材の上面の高さは、前記第1荷重伝達部材の前記上面の高さよりも高く設定されていることを特徴とする請求項3に記載の車体側部構造。
【請求項5】
前記フロアクロスメンバは、フロアパネルの上面側に設けられるアッパフロアクロスメンバと、該フロアパネルの下面側に設けられるロアフロアクロスメンバとを有して構成され、
前記アッパフロアクロスメンバの端部が、前記第1荷重伝達部材と車幅方向に近接対向して配置されていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の車体側部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−254550(P2008−254550A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−98131(P2007−98131)
【出願日】平成19年4月4日(2007.4.4)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】