説明

車体前部構造

【課題】フロントバンパリインフォースメントの長手方向の両端部がフロントサイドメンバよりも車両幅方向外側へ片持ち支持状態で張り出された構造において、微小ラップ衝突性能を向上させることができる車体前部構造を得る。
【解決手段】フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aは、第1連結部材62乃至第4連結部材82を一体成形した連結体52によってアッパメンバ30、ラジエータサポートアッパ38、フロントサイドメンバ12、ラジエータサポートロア40と連結されている。従って、長手方向の端部24Aに衝突体が衝突するような微小ラップ衝突の場合に当該長手方向の端部24Aを支えて衝突荷重をボディー側へ伝達し、エネルギー吸収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部がフロントサイドメンバよりも車両幅方向外側へ片持ち支持状態で張り出された車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車体前部構造の一例が開示されている。簡単に説明すると、車体前部の両サイドには、左右一対のフロントサイドフレームが車両前後方向に沿って平行に配置されている。これらのフロントサイドフレームの各前端部は、車両幅方向を長手方向として配置された長尺状のフロントバンパリインフォースの両端部近に結合されている。平面視で見ると、フロントバンパリインフォースの長手方向の両端部は、フロントサイドメンバよりも車両幅方向外側へ張り出されており、片持ち支持された状態となっている。
【0003】
上記構成によれば、衝突体と前面衝突した場合、フロントバンパリインフォースからフロントサイドメンバへ入力された衝突荷重は、フロントサイドメンバからサブフレームに伝達された後、ロッカやフロアへと伝達されていく。また、この過程で所定のエネルギー吸収がなされる。
【特許文献1】特開2004−114814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記先行技術による場合、衝突体がフロントバンパリインフォースにおけるフロントサイドフレームから車両幅方向へ張り出した部分に衝突(微小ラップ衝突)した場合、当該張り出し部は片持ち支持されており、衝突荷重を受ける部材が存在しない。このため、張り出し部が衝突荷重を受けると、その衝突荷重をフロントサイドフレーム側へ充分に伝達することができない。従って、張り出し部をその根元から車両後方側へ変形させようとする曲げモーメントが大きくなる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、フロントバンパリインフォースメントの長手方向の両端部がフロントサイドメンバよりも車両幅方向外側へ片持ち支持状態で張り出された構造において、微小ラップ衝突性能を向上させることができる車体前部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明に係る車体前部構造は、車体前部の両サイドに車両前後方向に沿って配置された左右一対のフロントサイドメンバと、これらのフロントサイドメンバの前端部間に掛け渡されるように車両幅方向に沿って配置されると共に当該フロントサイドメンバの前端部とそれぞれ結合され、更に長手方向の両端部がフロントサイドメンバよりも車両幅方向外側へ片持ち支持状態で張り出されたフロントバンパリインフォースメントと、左右一対のフロントサイドメンバの上方側に離間して配置され車両前後方向に沿って延在するアッパメンバと、フロントバンパリインフォースメントの車両後方側に離間して配置され、長手方向の両端部がアッパメンバの前端部に結合された上縁部及び当該上縁部の車両下方側に略平行に配置された下縁部を含んで構成されたラジエータサポートと、を備えた車体前部に適用される車体前部構造であって、前記アッパメンバと前記フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第1連結部材、前記ラジエータサポートの上縁部と前記フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第2連結部材、前記フロントサイドメンバと前記フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第3連結部材、及び前記ラジエータサポートの下縁部と前記フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第4連結部材の少なくとも一つの要素を備えた、ことを特徴としている。
【0007】
請求項2記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項1記載の発明において、前記第1連結部材乃至前記第4連結部材の二以上の要素を一体成形品で構成した、ことを特徴としている。
【0008】
請求項3記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項2記載の発明において、前記一体成形品は前記第3連結部材を含んで構成されており、当該第3連結部材には、前記フロントサイドメンバの前端部と前記フロントバンパリインフォースメントとの間に介在されて所定値以上の荷重入力より軸圧縮塑性変形する筒型のエネルギー吸収部材の一部が一体に形成されている、ことを特徴としている。
【0009】
請求項4記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項2又は請求項3記載の発明において、前記一体成形される二以上の要素には、差厚結合による板厚差が設定されている、ことを特徴としている。
【0010】
請求項5記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記第1連結部材乃至前記第4連結部材の中で具備した要素を、対応する骨格部材に締結具を使って取り外し可能に固定した、ことを特徴としている。
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、フロントバンパリインフォースメントの長手方向の両端部は、フロントサイドメンバよりも車両幅方向外側へ片持ち支持された状態で張り出されている。
【0012】
ここで、本発明では、アッパメンバとフロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第1連結部材、ラジエータサポートの上縁部とフロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第2連結部材、フロントサイドメンバとフロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第3連結部材、及びラジエータサポートの下縁部とフロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第4連結部材の少なくとも一つの要素を備えているので、フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部に衝突体が前面衝突(微小ラップ衝突)した場合に、当該長手方向の端部に入力された衝突荷重は、これと連結された第1連結部材乃至第4連結部材の少なくとも一つの要素を経由して結合相手となる部材へと荷重を伝達する。従って、フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部の根元を起点とした曲げモーメントの発生量を抑制することができ、当該長手方向の端部の車両後方側への変形量を抑制することができる。
【0013】
請求項2記載の本発明によれば、第1連結部材乃至第4連結部材の二以上の要素を一体成形品で構成したので、各々の連結部材を独立の構成要素とする場合に比し、部品点数を減らすことができる。従って、部品点数が減った分、低速度域での前面衝突時の損傷部品を減らすことができる。つまり、部品点数が多ければ、それだけ低速度域での前面衝突時の損傷部品が増えるため、部品の交換作業も増えるが、幾つかの部品を一体成形しておくことで、交換が必要な部品数も減り、作業負担を減らすことができる。
【0014】
請求項3記載の本発明によれば、第3連結部材を含んで一体成形品が構成されており、当該第3連結部材にフロントサイドメンバの前端部とフロントバンパリインフォースメントとの間に介在されて所定値以上の荷重入力より軸圧縮塑性変形する筒型のエネルギー吸収部材の一部を一体に形成したので、前述した損傷部品の作業負担をより一層軽減することができる。
【0015】
すなわち、微小ラップ衝突時といえども、通常はフロントバンパリインフォースメントからエネルギー吸収部材に衝突荷重が入力されるため、エネルギー吸収部材は大なり小なり軸圧縮塑性変形しており、交換対象部品となる。従って、最初からエネルギー吸収部材が第3連結部材に一体成形されていれば、損傷した部品をまとめて交換することが可能となる。
【0016】
請求項4記載の本発明によれば、一体成形される二以上の要素に差厚結合による板厚差を設定したので、エネルギー吸収性能を要素ごとにコントロールすることができる。
【0017】
請求項5記載の本発明によれば、第1連結部材乃至前記第4連結部材の中で具備した要素を、対応する骨格部材に締結具を使って取り外し可能に固定したので、微小ラップ衝突により損傷した連結部材があった場合において、当該連結部材が締結具を使って対応する骨格部材に固定されている要素であれば、締結具を取り外せば、新しい連結部材と容易に交換することができる。従って、リペアビリティを向上させることができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、請求項1記載の車体前部構造は、アッパメンバとフロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第1連結部材、ラジエータサポートの上縁部と前記フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第2連結部材、フロントサイドメンバとフロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第3連結部材、及びラジエータサポートの下縁部とフロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第4連結部材の少なくとも一つの要素を備えているので、微小ラップ衝突時にフロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部へ入力される衝突荷重を効果的にボディー側に伝達することができ、その結果、微小ラップ衝突性能を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0019】
請求項2記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項1記載の発明において、第1連結部材乃至第4連結部材の二以上の要素を一体成形品で構成したので、各々の連結部材を独立の構成要素とする場合に比し、低速度域での前面衝突時の損傷部品を減らすことができ、その結果、損傷部品の交換作業負担を軽減することができるという優れた効果を有する。
【0020】
請求項3記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項2記載の発明において、第3連結部材を含んで一体成形品が構成されており、当該第3連結部材にフロントサイドメンバの前端部とフロントバンパリインフォースメントとの間に介在されて所定値以上の荷重入力より軸圧縮塑性変形する筒型のエネルギー吸収部材の一部を一体に形成したので、損傷部品をまとめて交換することができ、その結果、部品交換作業の効率化を図ることができるという優れた効果を有する。
【0021】
請求項4記載の本実施形態に係る車体前部構造は、請求項2又は請求項3記載の発明において、一体成形される二以上の要素に差厚結合による板厚差を設定したので、エネルギー吸収性能を要素ごとにコントロール(チューニング)することができ、その結果、所望のエネルギー吸収特性を容易に得ることができるという優れた効果を有する。
【0022】
請求項5記載の本発明に係る車体前部構造は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発明において、第1連結部材乃至第4連結部材の中で具備した要素を、対応する骨格部材に締結具を使って取り外し可能に固定したので、リペアビリティを向上させることができ、その結果、ユーザの負担を軽減することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図1〜図8を用いて、本発明に係る車体前部構造の実施形態について説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印OUTは車両幅方向外側を示している。
【0024】
図2には、本発明が適用された車体前部10の三面図が示されている。また、図1には、当該車体前部10の要部の組付状態の拡大斜視図が示されている。さらに、図3には、当該車体前部10の要部の分解斜視図が示されている。
【0025】
(周辺構造)
まず車体前部10の骨格部材の配置関係について概説すると、図1〜図3(主に図3)に示されるように、車体前部10の両サイドには、車両前後方向に沿って左右一対のフロントサイドメンバ12が配置されている。フロントサイドメンバ12は、断面ハット形状のフロントサイドメンバアウタ14と、当該フロントサイドメンバアウタ14の開口部分を閉止する長尺平板状のフロントサイドメンバインナ16と、によって閉断面構造に構成されている。これらのフロントサイドメンバ12の前端部には、筒状のクラッシュボックス18が車両前後方向に連続するように配設されている。クラッシュボックス18は、断面ハット形状のクラッシュボックスアウタ20と、当該クラッシュボックスアウタ20の開口部分を閉止する略矩形平板状のクラッシュボックスインナ22と、によって閉断面構造に構成されている。なお、クラッシュボックスインナ22の前端部22Aは、車両幅方向内側へ屈曲されている。
【0026】
さらに、左右のクラッシュボックス18の前端部間には、長尺状のフロントバンパリインフォースメント24が掛け渡されるように車両幅方向に沿って配置されている。フロントバンパリインフォースメント24は、車両後方側が開放された断面ハット形状に形成されている。さらに、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の両端部24Aは、平面視でフロントサイドメンバ12よりも車両幅方向外側へ片持ち支持された状態で張り出されている。
【0027】
また、車体前部10の両サイドの上縁側には、長尺状のアッパメンバ30が車両前後方向に沿って配置されている。アッパメンバ30は、断面形状が略L字状とされたアッパメンバアウタ32と、断面形状がL字状に形成されてアッパメンバアウタ32とで矩形閉断面を形成するアッパメンバインナ34と、によって構成されている。なお、アッパメンバ30は、前述したフロントサイドメンバ12よりも車両幅方向外側でかつ車両上方側に概ね平行に配置されている。
【0028】
さらに、フロントバンパリインフォースメント24の車両後方側には、正面視で略矩形枠状に形成されたラジエータサポート36が所定距離だけ離間した位置に配置されている。ラジエータサポート36は、フロントバンパリインフォースメント24よりも車両上方側に配置されて車両幅方向に沿って延在する長尺状のラジエータサポートアッパ38と、フロントバンパリインフォースメント24よりも車両下方側でラジエータサポートアッパ38に対して平行に配置された長尺状のラジエータサポートロア40と、ラジエータサポートアッパ38の長手方向の両端部とラジエータサポートロア40の長手方向の両端部とを車両上下方向に繋ぐ左右一対のラジエータサポートサイド42と、ラジエータサポートアッパ38の長手方向の端部から車両後方側かつ車両上方側へ斜めに延びてアッパメンバ30の前端部30Aに結合されるラジエータサポートアッパサイド44と、によって構成されている。
【0029】
ラジエータサポートアッパ38及びラジエータサポートアッパサイド44は車両下方側が開放された断面ハット形状に形成されており、相互の端部が重合されている。ラジエータサポートロア40は、車両下方側が開放された断面ハット形状のラジエータサポートロアアッパメンバ46と、車両上方側が開放された断面ハット形状のラジエータサポートロアメンバ48とを上下に重ねて結合することにより、閉断面構造に構成されている。また、ラジエータサポートサイド42は車両幅方向外側が開放された断面コ字状に形成されており、その上端部42Cはラジエータサポートアッパ38の断面内方へ挿入されている。さらに、ラジエータサポートサイド42の下端部42Dは車両下方側が開放された断面ハット形状化されており、その内側の端部にラジエータサポートロアアッパメンバ46の長手方向の端部が被嵌されている。また、ラジエータサポートサイド42の前側の側壁42Aは後側の側壁42Bよりも高さ(車両幅方向に沿った寸法)が高く、更に前側の側壁42Aの上下方向中間部には、車両幅方向外側へ向けて膨出する略等脚台形状の取付座50が一体に形成されている。
【0030】
(要部構造)
次に、本実施形態に係る車体前部構造の要部構成について説明する。
【0031】
上述したフロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aは、鋼鈑をプレス成形することにより一体成形された連結体52によって上記骨格部材と相互に連結されている。以下、連結体52の構成について詳細に説明する。
【0032】
連結体52は、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aに当接状態で配置される略矩形平板状の取付座54を備えている。取付座54の裏面側四隅にはウエルドナット56が固着されている。これに対応してフロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aの上下のフランジ部には各々左右二箇所にボルト挿通孔58が形成されている。そして、フロントバンパリインフォースメント24の前方側からボルト60がボルト挿通孔58内へ挿通され、ウエルドナット56に螺合されることにより、連結体52の高さ方向略中間部に位置する取付座54がフロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aに面接触状態で固定されている。
【0033】
上記連結体52の取付座54の上縁側からは、車両斜め上方側かつ後方へ向けて長尺状の第1連結部材62が延出されている。第1連結部材62の上端部62Aはアッパメンバ30の前端部30Aに接続可能なように車両前後方向に屈曲されており、頂壁部と内側の側壁部にはボルト挿通孔64が形成されている。これに対応してアッパメンバ30の前端部30Aの頂壁部と内側の側壁部にはウエルドナット66が固着されている。さらに、ラジエータサポートアッパサイド44の外側の端部44Aの頂壁部及び内側の側壁部にもボルト挿通孔68が形成されている。
【0034】
そして、アッパメンバ30の前端部30Aに連結体52の第1連結部材62の上端部62Aが車両上方側から被嵌された後、更にラジエータサポートアッパサイド44の外側の端部44Aが車両上方側から被嵌され、ボルト70がボルト挿通孔68、64へこの順に挿通されてウエルドナット66に螺合されることにより、連結体52の第1連結部材62の上端部62Aがアッパメンバ30の前端部30Aに固定されている。上記構成により、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aとアッパメンバ30とが、第1連結部材62を介して相互に連結されている。
【0035】
また、上記連結体52の取付座54の内縁側からは、車両斜め後方かつ車両幅方向内側へ向けて延在する略等脚台形状の側壁部72が一体に形成されている。側壁部72の後端部72Aは、車両幅方向内側へ折り曲げられている。また、側壁部72の上部及び下部には三角形状の肉抜き用の開口部74、76が上下に離間して形成されている。これにより、側壁部72は、上側の開口部74の上方側に車両斜め後方上側に沿って延在する第2連結部材78と、上下の開口部74、76間に車両後方側に沿って延在する第3連結部材80と、下側の開口部76の下方側に車両斜め後方下側に沿って延在する第4連結部材82と、が一体に形成されている。
【0036】
補足すると、第2連結部材78は第1連結部材62の根元付近から車両斜め後方かつ車両幅方向内側へ延びる部分も含んで構成されており、又第4連結部材82は取付座54の下縁側から車両斜め後方下側へ延びる部分も含んで構成されている。
【0037】
上記側壁部72の後端部72Aの上縁部側には、ボルト挿通孔84が形成されている。これに対応してラジエータサポートアッパ38の外側の端部38Aの前壁部にはボルト挿通孔86が形成され、更にラジエータサポートサイド42の前側の側壁42Aの上端部裏面にはウエルドナット88が固着されている。また、ラジエータサポートアッパサイド44の内側の端部44Bの前側の側壁にもボルト挿通孔90が形成されている。
【0038】
そして、ラジエータサポートサイド42の上端部42Cにラジエータサポートアッパ38の外側の端部38A及びラジエータサポートアッパサイド44の内側の端部44Bがこの順に車両上方側から被嵌されて、ボルト92がボルト挿通孔90、84、86の順に挿通されてウエルドナット88に螺合されることにより、連結体52の第2連結部材78の後端部がラジエータサポートサイド42の上端部42Cに固定されている。上記構成により、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aとラジエータサポートアッパ38の外側の端部38Aとが、第2連結部材78を介して相互に連結されている。
【0039】
また、側壁部72の後端部72Aの高さ方向中間部には車両幅方向内側へ膨出する膨出部94が一体に形成されており、当該膨出部94には上下二個ずつ合計四個のボルト挿通孔96が形成されている。これに対応して、ラジエータサポートサイド42の前側の側壁42Aに形成された前述の取付座50の裏面側には、ボルト挿通孔96と同軸上となる位置に合計四個のウエルドナット100が固着されている。
【0040】
そして、連結体52の側壁部72の後端部72Aをラジエータサポートサイド42の前側の側壁42Aに当接させてボルト102をボルト挿通孔96内へ挿通させてウエルドナット100へ螺合させることにより、第3連結部材80の後端部がラジエータサポートサイド42に固定されている。
【0041】
さらに、前記第3連結部材80の車両幅方向内側には前述したクラッシュボックスアウタ20が一体に形成されている。このクラッシュボックスアウタ20の開放部分には、前述したように略矩形平板状のクラッシュボックスインナ22がスポット溶接により結合されている。クラッシュボックスインナ22の前端部22Aには上下一対のボルト挿通孔104が形成されており、これに対応してフロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aの車両幅方向内側には、ボルト挿通孔104と同軸上となる位置にボルト挿通孔106が形成されている。
【0042】
そして、クラッシュボックス18の前端部がフロントバンパリインフォースメント24の断面内包へ挿入されて、ボルト108がボルト挿通孔106、104の順に挿通されてラジエータサポートサイド42のウエルドナット4に螺合されることにより、クラッシュボックス18がフロントバンパリインフォースメント24とラジエータサポートサイド42との間に固定されている。
【0043】
さらに、前記ラジエータサポートサイド42の膨出部98の後方側には、前述したフロントサイドメンバ12の前端部が当接状態で配置されて結合されている。従って、組付状態では、フロントサイドメンバ12とクラッシュボックス18とは車両前後方向に一直線上に配置されている。上記構成により、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aとフロントサイドメンバ12とが、第3連結部材80を介して相互に連結されている。
【0044】
また、側壁部72の後端部72Aの下端部には上下一対のボルト挿通孔110が形成されている。これに対応して、ラジエータサポートサイド42の前側の側壁42Aの下端部には、ボルト挿通孔110と同軸上にウエルドナット112が固着されている。
【0045】
そして、ボルト114をボルト挿通孔110内へ挿通させウエルドナット112に螺合させることにより、第4連結部材82の後端部がラジエータサポートサイド42の下端部42Dひいてはラジエータサポートロア40の外側の端部40Aに固定されている。上記構成により、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aとラジエータサポートロア40の外側の端部40Aとが、第4連結部材82を介して相互に連結されている。
【0046】
図4は、上記本実施形態の要部を構成する連結体52を模式図化したものである。この図に示されるように、本実施形態に係る車体前部構造では、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aが第1連結部材62を介してアッパメンバ30に連結されており、第2連結部材78を介してラジエータサポートアッパ38に連結されており、第3連結部材80を介してフロントサイドメンバ12に連結されており、第4連結部材82を介してラジエータサポートロア40に連結されている。
【0047】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0048】
<微小ラップ衝突した場合>
図5には、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24A、即ちフロントサイドメンバ12よりも車両幅方向外側に位置する部位に衝突体116が衝突(微小ラップ衝突)した状態の概略平面図が示されている。
【0049】
仮に本実施形態の連結体52が存在しなかったとすれば、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aは、フロントサイドメンバ12よりも車両幅方向外側へ片持ち支持状態で配置されることになる。従って、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aはフロントサイドメンバ12の前端部を起点として車両後方側へ変形し、他のボディー部分へ荷重を伝達することが困難になる。
【0050】
しかし、本実施形態のように、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aを連結体52を介してアッパメンバ30、ラジエータサポートアッパ38、フロントサイドメンバ12、及びラジエータサポートロア(ロアクロスメンバ)40の4つの骨格部材(要素)に連結して4点支持したので、衝突荷重をこれらの4部材に分散して伝達(エネルギー吸収)することができる。従って、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aの根元を起点とした曲げモーメントの発生量を抑制することができ、当該長手方向の端部24Aの車両後方側への変形量を抑制することができる。その結果、本実施形態によれば、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の両端部24Aがフロントサイドメンバ12よりも車両幅方向外側へ片持ち支持状態で張り出された構造において、微小ラップ衝突性能を向上させることができる。
【0051】
<フロントサイドメンバ12のの内側に衝突した場合>
図6には、衝突体116がフロントバンパリインフォースメント24におけるフロントサイドメンバ12よりも車両幅方向内側に衝突(ハーフラップ衝突)した状態の概略平面図が示されている。
【0052】
この場合も前述した微小ラップ衝突した場合と同様に、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の端部24Aに入力された荷重については、連結体52を介してアッパメンバ30、ラジエータサポートアッパ38、フロントサイドメンバ12、及びラジエータサポートロア(ロアクロスメンバ)40の4つの骨格部材(要素)に流されてエネルギー吸収量が増加するため、その分、クラッシュボックス18のクラッシュストロークが減少する効果が得られる。
【0053】
さらに、連結体52を構成する第1連結部材62乃至第4連結部材82は冷却系118やヘッドランプ120、フードパネル前端122よりも車両前方側に配置されているため、これらの部品・部材が損傷するのを防止することができる。すなわち、本実施形態に係る車体前部構造によれば、特に低速度域でのダメージャビリティ性能を向上させることができる。
【0054】
<フルラップ衝突した場合>
図7(A)、(B)には、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の略全面に衝突体116が衝突(フルラップ衝突)した状態の概略平面図が示されている。
【0055】
従来構造を現す図7(A)では、フロントバンパリインフォースメント24の主部24B(長手方向の両端部24Aを除いた部分)が衝突荷重Fの受圧面となるため、長手方向の両端部24Aは車両後方側へ変形する可能性がある。
【0056】
これに対し、本実施形態に係る車体前部構造を示した図7(B)では、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の両端部24Aが連結体52によって支持されるため、フロントバンパリインフォースメント24の長手方向の主部24Bだけでなく、長手方向の両端部24Aも衝突荷重Fの受圧面となる。すなわち、従来構造に比し、受圧面積を増加させることができる。このため、本実施形態によれば、フルラップ衝突した際に、エネルギー吸収量の増加によるクラッシュボックス18のクラッシュストロークが減少するだけでなく、単位面積当たりの入力荷重の大きさが減少する。従って、衝突体116へ与える荷重反力も減少し、コンパチビリティ性能を向上させることができる。
【0057】
<その他の効果>
本実施形態に係る車体前部構造では、第1連結部材62乃至第4連結部材82を一体成形品として構成したので、第1連結部材62乃至第4連結部材82の各々を独立の構成要素とする場合に比し、部品点数を減らすことができる。従って、部品点数が減った分、低速度域での前面衝突時の損傷部品を減らすことができる。つまり、部品点数が多ければ、それだけ低速度域での前面衝突時の損傷部品が増えるため、部品の交換作業も増えるが、本実施形態のように一部品で構成されていると、連結体52を交換すれば済む。従って、交換が必要な部品数も減り、損傷部品の交換作業負担を軽減することができる。
【0058】
また、本実施形態に係る車体前部構造では、連結体52にクラッシュボックスアウタ20をも一体成形したので、前述した損傷部品の作業負担をより一層軽減することができる。すなわち、微小ラップ衝突時といえども、通常はフロントバンパリインフォースメント24からクラッシュボックス18に衝突荷重が入力されるため、クラッシュボックス18は大なり小なり軸圧縮塑性変形しており、交換対象部品となる。従って、最初からクラッシュボックス18が連結体52の第3連結部材80に一体成形されていれば、損傷した部品をまとめて交換することが可能となる。その結果、本実施形態によれば、部品交換作業の効率化を図ることができる。
【0059】
さらに、本実施形態に係る車体前部構造では、連結体52をボルト60、……及びウエルドナット56、……といった締結具を用いてボディー側に固定したので、ボルト60、……を取り外せば、連結体52を容易にボディー側から取り外すことができる。従って、リペアビリティを向上させることができる。その結果、本実施形態によれば、ユーザの負担を軽減することができる。
【0060】
(他の実施形態)
図8には、別の実施形態に係る連結体130の斜視図が示されている。この連結体130では、第1連結部材62乃至第4連結部材82に相当する部分を区分けして、各々を構成する第1板材132乃至第4板材138の板厚を任意に設定しておき、それらの第1板材132乃至第4板材138をレーザー溶接で接合してからプレス成形することにより、一体構成の連結体130を構成している。なお、図8に一点鎖線で示した部分が第1板材132乃至第4板材138の境界線である。
【0061】
因みに、この例では、第1板材132の板厚を最も厚く設定し、第2板材134、第4板材138の板厚を通常の厚さに設定し、第3板材136の板厚を中くらいの厚さに設定している。
【0062】
上記構成の差厚結合構造による連結体130によれば、エネルギー吸収性能を第1連結部材62乃至第4連結部材82の各要素ごとにコントロール(チューニング)することができ、その結果、所望のエネルギー吸収特性の連結体130を容易に得ることができる。
【0063】
〔実施形態の補足説明〕
なお、上述した本実施形態では、第1連結部材62乃至第4連結部材82を一体に成形して連結体52、130を製作したが、これに限らず、第1連結部材62乃至第4連結部材82の少なくとも一つの要素を備えていればよい。従って、第1連結部材62から第3連結部材80までの三つの要素を一体成形した連結体を用いてもよいし、第1連結部材62と第2連結部材78の二つの要素を一体成形した連結体を用いてもよい。
【0064】
また、上述した本実施形態では、第1連結部材62乃至第4連結部材82のすべての要素を一体に成形したが、これに限らず、各々の要素が別個独立に設定(図4のような構成)されていても差し支えない。
【0065】
さらに、上述した本実施形態では、リペアビリティ性能向上のため、ボルト60、……及びウエルドナット56、……といった締結具で取り外し可能にボディー側に固定したが、これに限らず、溶接等によってボディー側に固定してもよい。また、必ずしもウエルドナット56、……にしなくても、通常のナットを使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態に係る車体前部構造の要部の組付状態を示す拡大斜視図である。
【図2】(A)は図1に示される車体前部構造の要部の平面図、(B)は同正面図、(C)は同側面図である。
【図3】本実施形態に係る車体前部構造の要部の分解斜視図である。
【図4】連結体を模式化した図1に対応する拡大斜視図である。
【図5】本実施形態に係る車体前部構造の作用(微小ラップ衝突の場合)を説明するための平面図である。
【図6】本実施形態に係る車体前部構造の作用(ハーフラップ衝突の場合)を説明するための平面図である。
【図7】本実施形態に係る車体前部構造の作用(フルラップ衝突の場合)を従来構造との対比において説明するための平面図である。
【図8】差厚結合を利用した別の実施形態に係る連結体を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0067】
10 車体前部
12 フロントサイドメンバ
18 クラッシュボックス(エネルギー吸収部材、フロントサイドメンバの前端部)
20 クラッシュボックスアウタ(エネルギー吸収部材の一部)
24 フロントバンパリインフォースメント
24A 長手方向の端部
30 アッパメンバ
36 ラジエータサポート
38 ラジエータサポートアッパ(上縁部)
40 ラジエータサポートロア(下縁部)
44 ラジエータサポートアッパサイド(上縁部)
52 連結体
56、66、88、100、112 ウエルドナット(締結具)
60、70、92、102、108、114 ボルト(締結具)
62 第1連結部材
78 第2連結部材
80 第3連結部材
82 第4連結部材
116 衝突体
130 連結体
132 第1板材
134 第2板材
136 第3板材
138 第4板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部の両サイドに車両前後方向に沿って配置された左右一対のフロントサイドメンバと、
これらのフロントサイドメンバの前端部間に掛け渡されるように車両幅方向に沿って配置されると共に当該フロントサイドメンバの前端部とそれぞれ結合され、更に長手方向の両端部がフロントサイドメンバよりも車両幅方向外側へ片持ち支持状態で張り出されたフロントバンパリインフォースメントと、
左右一対のフロントサイドメンバの上方側に離間して配置され車両前後方向に沿って延在するアッパメンバと、
フロントバンパリインフォースメントの車両後方側に離間して配置され、長手方向の両端部がアッパメンバの前端部に結合された上縁部及び当該上縁部の車両下方側に略平行に配置された下縁部を含んで構成されたラジエータサポートと、
を備えた車体前部に適用される車体前部構造であって、
前記アッパメンバと前記フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第1連結部材、前記ラジエータサポートの上縁部と前記フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第2連結部材、前記フロントサイドメンバと前記フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第3連結部材、及び前記ラジエータサポートの下縁部と前記フロントバンパリインフォースメントの長手方向の端部とを連結する第4連結部材の少なくとも一つの要素を備えた、
ことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記第1連結部材乃至前記第4連結部材の二以上の要素を一体成形品で構成した、
ことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記一体成形品は前記第3連結部材を含んで構成されており、
当該第3連結部材には、前記フロントサイドメンバの前端部と前記フロントバンパリインフォースメントとの間に介在されて所定値以上の荷重入力より軸圧縮塑性変形する筒型のエネルギー吸収部材の一部が一体に形成されている、
ことを特徴とする請求項2記載の車体前部構造。
【請求項4】
前記一体成形される二以上の要素には、差厚結合による板厚差が設定されている、
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の車体前部構造。
【請求項5】
前記第1連結部材乃至前記第4連結部材の中で具備した要素を、対応する骨格部材に締結具を使って取り外し可能に固定した、
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−290224(P2006−290224A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115659(P2005−115659)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】