説明

車体前部構造

【課題】支持ブラケットの取付精度を簡単に確保でき、さらに、フロントサイドフレームの強度を簡単に確保することができる車体前部構造を提供する。
【解決手段】車体前部構造10は、左フロントサイドフレーム12および左アッパメンバー13でエンジンルーム20の骨格が形成されている。この車体前部構造10は、左フロントサイドフレーム12および左アッパメンバー13に傾斜状態で架け渡された閉断面状の連結部材16を備える。そして、連結部材16のうちエンジンルーム20側に対向する三角形外形部32に支持ブラケット18を3点で設け、支持ブラケット18でエンジン/トランスミッションユニット100を支えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントサイドフレームおよびアッパメンバーでエンジンルームの骨格を形成する車体前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部構造として、フロントサイドフレームとアッパメンバーとを連結部材で連結し、連結部材の鉛直部およびフロントサイドフレームの鉛直壁に支持ブラケットをボルト止めし、支持ブラケットでエンジン/トランスミッションユニットを支持するものが知られている。
【0003】
この車体前部構造によれば、連結部材を設けることで車体前部構造の強度を高めることができる。
さらに、連結部材を利用してエンジン/トランスミッションユニットを支持することで、エンジン/トランスミッションユニットを好適に支持することが可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−112175号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の車体前部構造は、連結部材の鉛直部およびフロントサイドフレームの鉛直壁に支持ブラケットがボルト止めされている。
このように、支持ブラケットが複数の部材に取り付けられているので、支持ブラケットの取付精度を確保するために比較的時間を要する。
【0005】
さらに、フロントサイドフレームの鉛直壁に支持ブラケットをボルト止めするので、鉛直壁に取付孔を開ける必要がある。
このため、フロントサイドフレームの強度を確保することが難しく、強度を確保するための検討に時間がかかる。
【0006】
本発明は、支持ブラケットの取付精度を簡単に確保でき、さらに、フロントサイドフレームの強度を簡単に確保することができる車体前部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、車体前部に車体前後方向に向けてフロントサイドフレームが設けられ、このフロントサイドフレームの外側上方にアッパメンバーが設けられ、前記フロントサイドフレームおよび前記アッパメンバーでエンジンルームの骨格が形成され、前記フロントサイドフレームおよび前記アッパメンバー間にホイールハウスが設けられた車体前部構造であって、前記フロントサイドフレームおよび前記アッパメンバーに架け渡され、前記エンジンルーム側に対向する部位に、末広がり状態で略三角形に形成された三角形外形部を有する閉断面状の連結部材と、前記三角形外形部に3点で設けられることにより、エンジン/トランスミッションユニットを3点支持で支える支持ブラケットと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
請求項2において、前記連結部材は、前記フロントサイドフレームおよび前記アッパメンバーに架け渡された外側連結部と、前記外側連結部の上面に沿って前記エンジンルーム側に対向させて設けられ、前記外側連結部に一体化されて閉断面を形成する内側連結部と、を有し、内側連結部は、前記アッパメンバーから前記外側連結部の上面に沿って前記外側連結部の略中央まで延出された内側上連結部と、前記外側連結部の略中央から前記外側連結部の上面に沿って前記フロントサイドフレームまで延出された前記三角形外形部と、に2分割されたことを特徴とする。
【0009】
ここで、フロントサイドフレームにアッパメンバーを組み付ける際に、フロントサイドフレームおよびアッパメンバーに連結部材を架け渡す必要がある。
ところで、連結部材には、エンジン/トランスミッションユニットを支える支持ブラケットが設けられている。このため、支持ブラケットをフロントサイドフレームに対して精度よく組み付ける必要がある。
【0010】
しかし、フロントサイドフレームにアッパメンバーを組み付けた後、フロントサイドフレームおよびアッパメンバーに連結部材を架け渡すと、例えば、フロントサイドフレームおよびアッパメンバー間に設けられているホイールハウスなどが、連結部材を正規の位置に組み付ける妨げになることが考えられる。
【0011】
そこで、請求項2において、内側連結部を内側上連結部と三角形外形部(すなわち、内側下連結部)とに2分割し、内側下連結部に支持ブラケットを設けるようにした。
よって、アッパメンバーおよびフロントサイドフレームに、分割した部材をそれぞれ分けて組み付けることが可能になる。
具体的には、アッパメンバーに外側連結部および内側上連結部を予め組み付けておき、一方、フロントサイドフレームに三角形外形部を予め組み付けておくことが可能になる。
【0012】
請求項3において、前記三角形外形部は、前記ホイールハウスおよび前記フロントサイドフレームに渡って取り付けられた分岐部を有し、前記分岐部、前記ホイールハウスおよび前記フロントサイドフレームで閉断面を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明では、フロントサイドフレームおよびアッパメンバーに、閉断面状の連結部材を架け渡した。この連結部材のうち、エンジンルーム側に対向する部位に、末広がり状態で略三角形に形成された三角形外形部を設けた。
そして、三角形外形部に支持ブラケットを3点で設け、支持ブラケットでエンジン/トランスミッションユニットを3点支持するようにした。
【0014】
よって、エンジン/トランスミッションユニットを支える3点(全ての支持点)を三角形外形部の一部材に設けることができる。
これにより、エンジン/トランスミッションユニットを支える支持位置の精度を簡単に確保することができ、さらには支持位置の精度を向上させることができる。
【0015】
加えて、連結部材に支持ブラケットを設けたので、フロントサイドフレームに支持ブラケットをボルト止めする必要がない。
これにより、フロントサイドフレームに支持ブラケットを取り付けるための取付孔を開ける必要がないので、フロントサイドフレームの強度を簡単に確保することができる。
【0016】
請求項2に係る発明では、内側連結部を内側上連結部と内側下連結部とに2分割した。よって、アッパメンバーに外側連結部および内側上連結部を予め組み付けておき、フロントサイドフレームに三角形外形部を予め組み付けておくことが可能になる。
【0017】
これにより、フロントサイドフレームにアッパメンバーやホイールハウスを取り付ける前に、単体のフロントサイドフレームに三角形外形部を組み付けることが可能になる。
したがって、フロントサイドフレームに対して三角形外形部を容易に精度よく組み付けることができる。
【0018】
さらに、アッパメンバーに外側連結部および内側上連結部を予め組み付け、フロントサイドフレームに三角形外形部を予め組み付けておくことで、連結部材の各部材をそれぞれ個別に搬送する必要がない。
これにより、組立ラインにおける部品の取り扱いが容易になり、組立工程の簡素化を図ることができる。
【0019】
請求項3に係る発明では、三角形外形部は、ホイールハウスおよびフロントサイドフレームに渡って取り付けられた分岐部を有する。そして、分岐部、ホイールハウスおよびフロントサイドフレームで閉断面を形成した。
これにより、分岐部、ホイールハウスおよびフロントサイドフレームの閉断面でフロントサイドフレームを補強することができ、フロントサイドフレーム(車体前部構造)の強度を一層高めることができる。
【0020】
加えて、分岐部およびホイールハウスで閉断面を形成することで、分岐部の強度を十分に確保することができる。
これにより、分岐部を、支持ブラケットを取り付けるための部位として利用することで、三角形外形部に支持ブラケットを強固に取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」は作業者から見た方向にしたがい、前側をFr、後側をRr、左側をL、右側をRとして示す。
【0022】
図1は本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
車体前部構造10は、車体前部に設けられた左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)12と、左フロントサイドフレーム12の外側上方に設けられた左アッパメンバー(アッパメンバー)13と、左アッパメンバー13の前端部近傍から車体前方に下り勾配で延出された左ロアメンバー14と、左フロントサイドフレーム12および左アッパメンバー13間に設けられた左ホイールハウス(ホイールハウス)15と、左フロントサイドフレーム12および左アッパメンバー13に架け渡された連結部材16と、連結部材16に設けられた支持ブラケット18とを備える。
左フロントサイドフレーム12および左アッパメンバー13でエンジンルーム20の骨格が形成されている。
【0023】
左フロントサイドフレーム12は、車体前部の左側に配置され、車体前後方向に延びるフレーム部材である。
左アッパメンバー13は、左フロントサイドフレーム12の上方で、かつ、左フロントサイドフレーム12の外側に設けられた部材である。
【0024】
左ホイールハウス15は、左フロントサイドフレーム12および左アッパメンバー13に渡って設けられ、頂部15aに左サスペンション(図示せず)を支持する部材である。この左サスペンションには左前輪(図示せず)が支持されている。
【0025】
図2は本発明に係る車体前部構造を示す分解斜視図、図3は図1の3−3線断面図である。
連結部材16は、左フロントサイドフレーム12および左アッパメンバー13に架け渡され、エンジンルーム20の外側に対向する外側連結部21と、外側連結部21の上面に沿って設けられ、エンジンルーム20に対向する内側連結部(エンジンルーム側に対向する部位)22とを有する。
【0026】
外側連結部21は、左フロントサイドフレーム12および左アッパメンバー13間に設けられた傾斜プレート24と、傾斜プレート24を左アッパメンバー13に連結する外折曲接合片25と、傾斜プレート24を左フロントサイドフレーム12に連結する内折曲接合片26と、傾斜プレート24の後辺を左ホイールハウス15に連結する後折曲接合片28とを有する。
【0027】
傾斜プレート24は、左アッパメンバー13から左フロントサイドフレーム12に向けて下り勾配で延出された部位である。
外折曲接合片25は、傾斜プレート24の外端部から左アッパメンバー13の内壁13aに沿って折り曲げられ、内壁13aに接合された部位である。
【0028】
内折曲接合片26は、傾斜プレート24の内端部から左フロントサイドフレーム12の外壁12aに沿って折り曲げられ、外壁12aに接合された部位である。
後折曲接合片28は、傾斜プレート24の後辺から左ホイールハウス15の前壁15bに沿って上向きに折り曲げられ、前壁15bに接合された部位である。
【0029】
内側連結部22は、左アッパメンバー13側に設けられた内側上連結部31と、左フロントサイドフレーム12側に設けられた三角形外形部(すなわち、内側下連結部)32とに2分割されている。
内側上連結部31および三角形外形部32は、外側連結部21の上面に沿ってエンジンルーム20側に対向するように設けられている。
内側上連結部31および三角形外形部32は、内側上連結部31の下端部31aと三角形外形部32の上端部51bとがスポット溶接されている。
【0030】
内側上連結部31は、左アッパメンバー13から外側連結部21の略中央まで延出された部材である。
この内側上連結部31は、左アッパメンバー13から外側連結部21の略中央21aまで延出された上傾斜隆起部34と、上傾斜隆起部34の上端部を左アッパメンバー13に連結する外折曲接合片35と、上傾斜隆起部34の前下辺を傾斜プレート24の前接合片24aに連結する前張出接合片36と、上傾斜隆起部34の後下辺を左ホイールハウス15に連結する後折曲接合片38とを有する。
【0031】
上傾斜隆起部34は、上方に向けて隆起するように断面略台形型に形成され(図5参照)、左アッパメンバー13から外側連結部21の略中央21aまで外側連結部21の上面に沿って延出された部位である。
外折曲接合片35は、上傾斜隆起部34の外端部から左アッパメンバー13の内壁13aに沿って上向きに折り曲げられた部位である。
外折曲接合片35は、外側連結部21の外折曲接合片25に重ね合わされ、外折曲接合片25とともに左アッパメンバー13の内壁13aに接合されている。
【0032】
前張出接合片36は、上傾斜隆起部34の前下辺から傾斜プレート24の前接合片24aに沿って車体前方に向けて張り出された部位である。
前張出接合片36は、外側連結部21の前接合片24aに重ね合わされた状態で接合されている。
【0033】
後折曲接合片38は、上傾斜隆起部34の後下辺から左ホイールハウス15の前壁15bに沿って上向きに折り曲げられた部位である。
後折曲接合片38は、外側連結部21の後折曲接合片28に重ね合わされ、後折曲接合片28とともに左ホイールハウス15の前壁15bに接合されている。
【0034】
図4は本発明に係る車体前部構造の内側下連結部を示す斜視図である。
三角形外形部32は、外形が末広がり状態で略三角形状に形成されるとともに中央に開口部41が形成された部材である。
三角形外形部32は、末広がり形状を呈し、外側連結部21の略中央21a(図3参照)から左フロントサイドフレーム12まで延出された下前連結部43と、下前連結部43の上端部から車体後方に分岐された分岐部44と、分岐部44および下前連結部43を連結する連結プレート45とを有する。
【0035】
下前連結部43は、外側連結部21の略中央21aから左フロントサイドフレーム12まで延出された下前隆起部51と、下前隆起部51の前辺から車体前方に向けて張り出された前張出部52と、下前隆起部51の後辺から車体後方に向けて張り出された後張出部53と、下前隆起部51の上端部51b後辺から上向きに折り曲げられた上折曲接合部54と、下前隆起部51の下端部51cから張り出された下張出接合部55とを有する。
下張出接合部55は、左フロントサイドフレーム12の上壁12cに接合される水平部56と、左フロントサイドフレーム12の内壁12bに接合される鉛直部57とを有する。
【0036】
下前隆起部51は、上方に向けて隆起するように断面略台形型に形成され(図6参照)、外側連結部21の略中央21aから左フロントサイドフレーム12まで延出された部位である。
【0037】
下前隆起部51の上端部51bに、第1取付孔61および第1溶接ナット65が同軸上に設けられている。
下前隆起部51の下端部51cに、第2取付孔62および第2溶接ナット66が同軸上に設けられている。
図6に示すように、前張出部52が外側連結部21の前接合片24aに接合されている。
【0038】
分岐部44は、左ホイールハウス15および左フロントサイドフレーム12に渡って取り付けられている。
この分岐部44は、左ホイールハウス15および左フロントサイドフレーム12間に配置された分岐隆起部71と、分岐隆起部71の前下辺から車体前方に向けて張り出された前張出部72と、分岐隆起部71の上端部から張り出された上張出接合部73と、分岐隆起部71の下端部から張り出された下張出接合部74とを有する。
【0039】
前張出部72は、下前連結部43の後張出部53と連結する部材である。
下張出接合部74は、左フロントサイドフレーム12の上壁12cに接合される水平部75と、左フロントサイドフレーム12の内壁12bに接合される鉛直部76とを有する。
【0040】
分岐隆起部71は、上方に向けて隆起するように形成され(図8も参照)、左ホイールハウス15および左フロントサイドフレーム12間に配置された部位である。
分岐隆起部71に、第3取付孔63および第3溶接ナット67が同軸上に設けられている。
【0041】
下前連結部43の下張出接合部55と分岐部44の下張出接合部74とは、連結プレート45で連結されている。
連結プレート45は、左フロントサイドフレーム12の上壁12cに接合される水平部78と、左フロントサイドフレーム12の内壁12bに接合される鉛直部79とを有する。
【0042】
以上説明したように、下前連結部43、分岐部44および連結プレート45で三角形外形部32が末広がり状態で略三角形状に形成されている。そして、一部材である三角形外形部32に、第1取付孔61および第1溶接ナット65、第2取付孔62および第2溶接ナット66、第3取付孔63および第3溶接ナット67が設けられている。
これにより、一部材である三角形外形部32に、支持ブラケット18を3点で設けることができる。
【0043】
図5は図1の5−5線断面図である。
連結部材16は、外側連結部21の後折曲接合片28および内側上連結部31の後折曲接合片38が左ホイールハウス15の前壁15bにスポット溶接され、外側連結部21の前接合片24aおよび内側上連結部31の前張出接合片36がスポット溶接されている。
これにより、外側連結部21および内側上連結部31が一体化されて閉断面に形成されている。
【0044】
図6は図4の6−6線断面図である。
連結部材16は、外側連結部21の前接合片24aおよび下前連結部43の前張出部52がスポット溶接されている。
これにより、外側連結部21および下前連結部43が一体化されて閉断面に形成されている。
【0045】
図5、図6に示すように、左フロントサイドフレーム12および左アッパメンバー13に架け渡した連結部材16を閉断面状に形成した。
これにより、閉断面状の連結部材16で左フロントサイドフレーム12や左アッパメンバー13を補強することができ、車体前部構造10の強度を高めることができる。
【0046】
図7は図4の7−7線断面図である。
連結部材16は、下前連結部43の下張出接合部55が左フロントサイドフレーム12の上壁12cおよび内壁12bにスポット溶接されている。
これにより、下前隆起部51の下端部51cに支持ブラケット18の第2脚部87(後述する)をボルト止めした状態において、下前隆起部51の下端部51cで第2脚部87を十分に支持することができる。
【0047】
図8は図4の8−8線断面図である。
なお、図4の8−8線断面では支持ブラケット18がボルト止めされていないが、図8では構成の理解を容易にするために支持ブラケット18をボルト止めした状態で示す。
連結部材16は、分岐部44の上張出接合部73が左ホイールハウス15の内壁15cにスポット溶接され、分岐部44の下張出接合部74が左フロントサイドフレーム12の上壁12cおよび内壁12bにスポット溶接されている。
【0048】
よって、分岐部44、左ホイールハウス15および左フロントサイドフレーム12で閉断面が形成されている。
これにより、分岐部44、左ホイールハウス15および左フロントサイドフレーム12の閉断面で左フロントサイドフレーム12を補強することができ、左フロントサイドフレーム12(すなわち、車体前部構造10)の強度を一層高めることができる。
【0049】
加えて、分岐部44および左ホイールハウス15で閉断面を形成することで、分岐部44の強度を十分に確保することができる。
これにより、分岐部44を、支持ブラケット18を取り付けるための部位として利用することが可能になり、支持ブラケット18を三角形外形部32に取り付ける部位を3箇所に増やすことができる。
このように、分岐部44を、支持ブラケット18を取り付けるための部位として利用することで、三角形外形部32に支持ブラケット18を強固に取り付けることができる。
【0050】
図2に戻って、三角形外形部32に支持ブラケット18が設けられている。支持ブラケット18は、三角形外形部32にボルト止めされたブラケット部81と、ブラケット部81に取り付けられたラバー部材82とを有する。
ブラケット部81は、ラバー部材82を支える環状部84と、環状部84から放射状に突出させた第1〜第3の脚部86〜88とを有する。
第1〜第3の脚部86〜88には取付孔91〜93がそれぞれ形成されている。
【0051】
第1脚部86の取付孔91および下前連結部43の第1取付孔61に第1ボルト95が差し込まれ、第1ナット65にねじ結合されている。
第2脚部87の取付孔92および下前連結部43の第2取付孔62に第2ボルト96が差し込まれ、第2ナット66にねじ結合されている。
【0052】
第3脚部88の取付孔93および下前連結部43の第3取付孔63に第3ボルト97が差し込まれ、第3ナット67にねじ結合されている。
これにより、支持ブラケット18が三角形外形部32に第1〜第3のボルト95〜97で取り付けられている。
すなわち、三角形外形部32に支持ブラケット18を3点で設け、支持ブラケット18でエンジン/トランスミッションユニットを3点支持することができる。
【0053】
よって、エンジン/トランスミッションユニット100を支える3点(全ての支持点)を三角形外形部32の一部材に設けることができる。
これにより、エンジン/トランスミッションユニット100を支える支持位置の精度を簡単に確保することができ、さらには支持位置の精度を向上させることができる。
【0054】
このように、下前連結部43(すなわち、連結部材16)に支持ブラケット18を設けたので、左フロントサイドフレーム12に支持ブラケット18をボルト止めする必要がない。
よって、左フロントサイドフレーム12に支持ブラケット18を取り付けるための取付孔を開ける必要がない。
これにより、左フロントサイドフレーム12の強度を簡単に確保することができる。
【0055】
図3に戻って、連結部材16が左アッパメンバー13から左フロントサイドフレーム12に向けて下り勾配(傾斜状態)で設けられている。
よって、三角形外形部32は、外側連結部21の略中央21aおよび左フロントサイドフレーム12間に、エンジンルーム20側に臨むように下り勾配で配置されている。
【0056】
エンジンルーム20側に対向するように傾斜させた三角形外形部32に、支持ブラケット18が第1〜第3のボルト95〜97(第2〜第3のボルト96〜97は図2参照)で取り付けられている。
【0057】
これにより、支持ブラケット18を傾斜させた状態で簡単に配置することができる。
この支持ブラケット18のラバー部材82に、エンジン/トランスミッションユニット100の取付ブラケット102がボルト104・ナット105で取り付けられている。
支持ブラケット18を傾斜状態にすることで、例えば、エンジン/トランスミッションユニット100の取付高さを低く抑えることができる。
【0058】
つぎに、車体前部構造10を組み付ける工程を図9〜図10に基づいて説明する。
図9(a),(b)は本発明に係る連結部材の外側連結部および内側上連結部をアッパメンバーに溶接する例を説明する図である。
(a)において、まず、左ホイールハウス15に左ロアメンバー14をスポット溶接する。
つぎに、連結部材16の外側連結部21を左ホイールハウス15の前壁15bにスポット溶接する。ついで、外側連結部21の上面に内側上連結部31をスポット溶接する。
その後、左ホイールハウス15および左ロアメンバー14の上端部に左アッパメンバー13を矢印Aの如く重ね合わせる。
【0059】
(b)において、左ホイールハウス15および左ロアメンバー14の上端部14aに左アッパメンバー13をスポット溶接する。
よって、連結部材16の外側連結部21および内側上連結部31を左アッパメンバー13側に予め一体に組み付けておくことができる。
これにより、外側連結部21および内側上連結部31を単体で個別に取り扱う(搬送する)必要がなくなる。
【0060】
図10(a),(b)は本発明に係る連結部材を左フロントサイドフレームおよび左アッパメンバー間に設ける例を説明する図である。
(a)において、左フロントサイドフレーム12に連結部材16の三角形外形部32をスポット溶接する。
よって、連結部材16の三角形外形部32を左フロントサイドフレーム12に予め一体に組み付けておくことができる。
これにより、三角形外形部32を単体で個別に取り扱う(搬送する)必要がなくなる。
【0061】
(b)において、左フロントサイドフレーム12に左ホイールハウス15を矢印Bの如くスポット溶接するとともに、左フロントサイドフレーム12に左ロアメンバー14の前端部14bを矢印Cの如くスポット溶接する。
同時に、内側上連結部31の下端部31aを三角形外形部32に矢印Dの如くスポット溶接するとともに、外側連結部21の上面を三角形外形部32にスポット溶接する。
【0062】
これにより、図1に示すように、左フロントサイドフレーム12および左アッパメンバー13に渡って連結部材16を組み付けることができる。
その後、図1に示すように、三角形外形部32に支持ブラケット18をボルト95〜97で取り付ける。
【0063】
図9、図10で説明したように、連結部材16を外側連結部21と内側連結部22とに2分割し、さらに、内側連結部22を内側上連結部31と三角形外形部32とに2分割した。
よって、左アッパメンバー13側に外側連結部21および内側上連結部31を予め組み付けておき、左フロントサイドフレーム12に三角形外形部32を予め組み付けておくことが可能になる。
【0064】
これにより、左フロントサイドフレーム12に左アッパメンバー13や左ホイールハウス15を取り付ける前に、単体の左フロントサイドフレーム12に三角形外形部32を組み付けることが可能になる。
したがって、左フロントサイドフレーム12に対して三角形外形部32を容易に精度よく組み付けることができる。
三角形外形部32を精度よく組み付けることで、三角形外形部32に支持ブラケット18(図1参照)を容易に精度よく組み付けることができる。
【0065】
さらに、左アッパメンバー13に外側連結部21および内側上連結部31を予め組み付け、左フロントサイドフレーム12に三角形外形部32を予め組み付けておくことで、連結部材16の各部材21,31,32をそれぞれ個別に搬送する必要がない。
これにより、組立ラインにおける部品の取り扱いが容易になり、組立工程の簡素化を図ることができる。
【0066】
なお、前記実施の形態では、車体前部構造10の左側部材に連結部材16を適用した例について説明したが、これに限らないで、車体前部構造10の右側部材に連結部材16を適用することも可能である。
【0067】
また、前記実施の形態で例示した内側連結部22、内側上連結部31、三角形外形部32および分岐部44などの形状は車両に合わせて適宜変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の車体前部構造は、フロントサイドフレームおよびアッパメンバーでエンジンルームの骨格を形成する自動車への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る車体前部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る車体前部構造を示す分解斜視図である。
【図3】図1の3−3線断面図である。
【図4】本発明に係る車体前部構造の内側下連結部を示す斜視図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】図4の7−7線断面図である。
【図8】図4の8−8線断面図である。
【図9】本発明に係る連結部材の外側連結部および内側上連結部をアッパメンバーに溶接する例を説明する図である。
【図10】本発明に係る連結部材を左フロントサイドフレームおよび左アッパメンバー間に設ける例を説明する図である。
【符号の説明】
【0070】
10…車体前部構造、12…左フロントサイドフレーム(フロントサイドフレーム)、13…左アッパメンバー(アッパメンバー)、15…左ホイールハウス(ホイールハウス)、16…連結部材、18…支持ブラケット、20…エンジンルーム、21…外側連結部、21a…外側連結部の略中央、22…内側連結部(エンジンルーム側に対向する部位)、31…内側上連結部、32…三角形外形部、44…分岐部、100…エンジン/トランスミッションユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に車体前後方向に向けてフロントサイドフレームが設けられ、このフロントサイドフレームの外側上方にアッパメンバーが設けられ、前記フロントサイドフレームおよび前記アッパメンバーでエンジンルームの骨格が形成され、前記フロントサイドフレームおよび前記アッパメンバー間にホイールハウスが設けられた車体前部構造であって、
前記フロントサイドフレームおよび前記アッパメンバーに架け渡され、前記エンジンルーム側に対向する部位に、末広がり状態で略三角形に形成された三角形外形部を有する閉断面状の連結部材と、
前記三角形外形部に3点で設けられることにより、エンジン/トランスミッションユニットを3点支持で支える支持ブラケットと、
を備えたことを特徴とする車体前部構造。
【請求項2】
前記連結部材は、
前記フロントサイドフレームおよび前記アッパメンバーに架け渡された外側連結部と、
前記外側連結部の上面に沿って前記エンジンルーム側に対向させて設けられ、前記外側連結部に一体化されて閉断面を形成する内側連結部と、
を有し、
内側連結部は、
前記アッパメンバーから前記外側連結部の上面に沿って前記外側連結部の略中央まで延出された内側上連結部と、
前記外側連結部の略中央から前記外側連結部の上面に沿って前記フロントサイドフレームまで延出された前記三角形外形部と、
に2分割されたことを特徴とする請求項1記載の車体前部構造。
【請求項3】
前記三角形外形部は、前記ホイールハウスおよび前記フロントサイドフレームに渡って取り付けられた分岐部を有し、
前記分岐部、前記ホイールハウスおよび前記フロントサイドフレームで閉断面を形成したことを特徴とする請求項2記載の車体前部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−1036(P2009−1036A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−161012(P2007−161012)
【出願日】平成19年6月19日(2007.6.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】