説明

車体後部構造

【課題】 サイドメンバの補強に頼ることなくオフセット衝突に対する強度を確保することができる車体後部構造を得る。
【解決手段】 車体後部構造10は、それぞれ車体前後方向に長手とされた左右一対のリヤサイドメンバ12と、一対のリヤサイドメンバ12の後端間を架け渡すリヤバンパリインフォースメント18と、一対のサイドメンバ12をリヤバンパリインフォースメント18の前側で架け渡す枠状体Fとを備える。枠状体Fは、第2クロスメンバ30と、サスペンションメンバ32とで背面視で枠状に形成されている。枠状体Fと利やバンパリインフォースメント18との間に配設されたマフラ60は、リヤバンパリインフォースメント18に左右方向にオフセットして入力された荷重の一部を、枠状体Fを経由して左右方向の荷重入力側とは反対側のリヤサイドメンバ12に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヤバンパの前方に排気音低減用のマフラが配設されている車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車体後部構造として、リヤバンパの前方に配置したマフラを該リヤバンパへの衝撃入力に伴って下方に脱落させ、リヤバンパの変形ストロークを確保するようにした構成が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平3−26620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の如き従来の車体後部構造では、リヤバンパに入力した荷重を左右のサイドメンバで支持する構造であるため、オフセット衝突に対する強度を確保するためには左右のサイドメンバをそれぞれ補強する必要があった。
【0004】
本発明は、上記事実を考慮して、サイドメンバの補強に頼ることなくオフセット衝突に対する強度を確保することができる車体後部構造を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明に係る車体後部構造は、それぞれ車体前後方向に長手とされた左右一対のサイドメンバと、前記一対のサイドメンバの後端間を架け渡すリヤバンパ骨格部材と、前記一対のサイドメンバを前記リヤバンパ骨格部材の前側で架け渡す横骨格部材と、前記横骨格部材とリヤバンパ骨格部材との間に設けられ、該リヤバンパ骨格部材に左右方向にオフセットして入力された荷重の一部を、前記横骨格部材から左右方向の荷重入力側とは反対側の前記サイドメンバに分散させる荷重分散部材と、を備えている。
【0006】
請求項1記載の車体後部構造では、リヤバンパ骨格部材に左右方向中央に対し該左右方向にオフセットして前向きの衝撃荷重が入力すると、リヤバンパ骨格部材から荷重入力側のサイドメンバに荷重が伝達されると共に、荷重分散部材、横骨格部材を経由して荷重入力側とは反対側のサイドメンバにも荷重が伝達される。すなわち、オフセット衝突の場合に、衝撃荷重が左右のサイドメンバにバランス良く分散されて該荷重が支持される。
【0007】
このように、請求項1記載の車体後部構造では、サイドメンバの補強に頼ることなくオフセット衝突に対する強度を確保することができる。なお、荷重分散部材としては、例えば車体後部に配置される排気音低減用のマフラ等を用いることができる。このマフラのリヤバンパ骨格部材から入力する荷重に対する剛性を、横骨格部材の前向き荷重に対する剛性よりも低く設定しておけば、マフラの変形に伴う衝撃吸収を果たすことも可能である。
【0008】
上記目的を達成するために請求項2記載の発明に係る車体後部構造は、それぞれ車体前後方向に長手とされた左右一対のサイドメンバと、前記一対のサイドメンバの後端間を架け渡すリヤバンパ骨格部材と、車体後方から見て枠状に形成され、前記一対のサイドメンバを前記リヤバンパ骨格部材よりも前側で架け渡す横骨格部材と、前記横骨格部材とリヤバンパ骨格部材との間に、車体後方から見て少なくとも上下又は左右の各端部が前記横骨格部材にオーバラップするように配置された排気音低減用のマフラと、を備えている。
【0009】
請求項2記載の車体後部構造では、リヤバンパ骨格部材に左右方向中央に対し該左右方向にオフセットして前向きの衝撃荷重が入力すると、リヤバンパ骨格部材から荷重入力側のサイドメンバに荷重が伝達されると共に、マフラ及び横骨格部材を経由して荷重入力側とは反対側のサイドメンバにも荷重が伝達される。すなわち、オフセット衝突の場合に、衝撃荷重が左右のサイドメンバにバランス良く分散されて該荷重が支持される。そして、横骨格部材が背面視で枠状に形成され(閉断面構造とされ)て高剛性であるため、マフラから入力する荷重に対する横骨格部材の変形が小さく、該荷重を確実にサイドメンバに分散させることができる。
【0010】
このように、請求項2記載の車体後部構造では、サイドメンバの補強に頼ることなくオフセット衝突に対する強度を確保することができる。
【0011】
請求項3記載の発明に係る車体後部構造は、請求項2記載の車体後部構造において、前記横骨格部材は、左右方向に長手とされ前記一対のサイドメンバを架け渡す上部と、左右方向に長手とされ前記上部の下側に離間して位置する下部と、それぞれ前記上部及び下部の左右方向に同じ側の端部を連結する一対の側部とを有し、かつ、前記横骨格部材の下部の長手方向両端と、前記サイドメンバにおける前記横骨格部材の上部との接続部分よりも前方に位置する車体骨格部とをそれぞれ連結する左右一対の連結部をさらに備える。
【0012】
請求項3記載の車体後部構造では、マフラから横骨格部材の上部及び下部、又は左右の両側部に荷重が入力し、この荷重は、横骨格部材の上部を経由してサイドメンバに入力される成分と、横骨格部材の下部を経由して連結部に入力される成分に分散され、車体骨格部で支持される。これにより、サイドメンバに作用する荷重を一層低減することができる。このため、例えば横骨格部材と車体骨格部との間に配設された部品が保護される。なお、車体骨格部は、例えば、サイドメンバにおける横骨格部材上部との接続部よりも前側部分でも良く、該サイドメンバが接続される他の骨格部材でも良い。
【0013】
請求項4記載の発明に係る車体後部構造は、請求項3記載の車体後部構造において、前記マフラは、車体後方から見て上下の各端部がそれぞれ前記横骨格部材の上部、下部にオーバラップして配置されている。
【0014】
請求項4記載の車体後部構造では、マフラにリヤバンパ骨格部材から前向きの荷重が作用すると、該マフラの上端部が横骨格部材の上部に荷重を伝達すると共に、該マフラの下端部が横骨格部材の下部に荷重を伝達する。このため、マフラから横骨格部材に入力される荷重を、左右のサイドメンバ及び左右の連結部に効果的に分散させることができる。
【0015】
請求項5記載の発明に係る車体後部構造は、請求項4記載の車体後部構造において、前記マフラは、前記マフラは、車体後方から見て上端側がリヤバンパ骨格部材とオーバラップすると共に、下端部と前記横骨格部材の下部との前後方向の隙間の大きさが上端部と該横骨格部材の上部との前後方向の隙間の大きさ以下となるように形成されている。
【0016】
請求項5記載の車体後部構造では、後突時にはリヤバンパ骨格部材からマフラの上端側に荷重が入力し、この荷重がマフラの上端部から横骨格部材の上部を経由してサイドメンバに、マフラの下端部から横骨格部材の下部を経由して連結部に分散される。マフラの下端部と横骨格部材の下部との隙間の大きさが、該マフラの上端部と横骨格部材の上部との隙間の大きさ以下であるため、マフラにおける荷重入力側(上端側)とは反対の下端部から横骨格部材の下部を経由して、確実に連結部に荷重を分散させることができる。
【0017】
請求項6記載の発明に係る車体後部構造は、請求項3乃至請求項5の何れか1項記載の車体後部構造において、前記マフラは、車体後方から見て左右の各端部がそれぞれ前記横骨格部材の側部にオーバラップして配置されている。
【0018】
請求項6記載の車体後部構造では、マフラから枠状に形成され横骨格部材の左右の側部に荷重が入力されるため、リヤバンパ骨格部材に左右方向中央からオフセットして前向きの衝撃荷重が入力した場合でも、該衝撃荷重を効果的に左右のサイドメンバ及び連結部に分散させることができる。特に、マフラの上端部、下端部、左右両端部が、それぞれ背面視で横骨格部材の上部、下部、左右の側部にオーバラップする構成(請求項4、5に従属する構成)では、一層効果的に衝撃荷重を分散させることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように本発明に係る車体後部構造は、サイドメンバの補強に頼ることなくオフセット衝突に対する強度を確保することができるという優れた効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の第1の実施形態に係る車体後部構造10について、図1乃至図4に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印RE、矢印UP、矢印LO、矢印RI、及び矢印LEは、それぞれ車体後部構造10が適用された自動車車体Sの前方向(進行方向)、後方向、上方向、下方向、右方向、及び左方向を示しており、以下単に上下前後右左を示す場合は上記各矢印方向に対応している。
【0021】
図1には、車体後部構造10が適用された車体Sが底面図にて示されており、図2には、車体Sが側面図にて示されている。
【0022】
これらの図に示される如く、車体Sは、それぞれ車体前後方向に長手とされた左右一対のリヤサイドメンバ12を備えている。各リヤサイドメンバ12は、それぞれの前部を構成するリヤサイドメンバフロント14と、それぞれの後部を構成するリヤサイドメンバリヤ16とを有して構成されている。各リヤサイドメンバリヤ16の後端は、車幅方向(左右方向)に長手とされたリヤバンパ骨格部材としてのリヤバンパリインフォースメント18によって架け渡されている。このリヤバンパリインフォースメント18が図示しないリヤバンパカバーに被覆されてリヤバンパが構成されるようになっている。
【0023】
一方、各フロントサイドメンバフロント14は、それぞれの前部がそれぞれ車幅方向外向きに傾斜したキック部20とされており、該キック部20を含めて前端から後端に向けて上下方向の高さが徐々に減じられる側面視略三角形状に形成されている。この実施形態では、キック部20を含むリヤサイドメンバフロント14は、上面が略水平面とされると共に主に下面が傾斜面とされた片テーパ状に形成されている。
【0024】
そして、左右のキック部20の前端は、それぞれ略上下方向に長手とされたセンタピラー(Bピラー)22の下端部の近傍に接続されている。また、各センタピラー22の下端部は、それぞれ前後方向に長手とされたロッカ24の後端に接続されている。左右のロッカ24の後端間(又は左右のセンタピラー22の下端間)は、車幅方向に長手とされた第1クロスメンバ26によって連結されている。左右のロッカ24間には、フロアパネル28が配設されている。この実施形態では、各キック部20(リヤサイドメンバ12の前端部)、センタピラー22、各ロッカ24、第1クロスメンバ26が本発明における車体骨格部を構成している。
【0025】
また、図1に示される如く、左右のリヤサイドメンバリヤ16の前後方向の略中央部は、車幅方向に長手とされた第2クロスメンバ30にて連結されている。すなわち、第2クロスメンバ30が左右のリヤサイドメンバ12における第1クロスメンバ26(車体骨格部)よりも後方部分間を略同じ高さで架け渡している。この第2クロスメンバ30の下側には、サスペンションメンバ32の後端部が配設されている。サスペンションメンバ32は、左右一対のサスペンション支持部34と、左右のサスペンション支持部34の前端間を架け渡す前連結部材36と、左右のサスペンション支持部34の後端間を架け渡す後連結部材38とを有して構成されている。以下、具体的に説明する。
【0026】
左右のサスペンション支持部34は、図1及び図2に示される如く、リヤサイドメンバ12に対し車幅方向の若干内側に配置されると共に該リヤサイドメンバ12の下面形状に沿って湾曲した上側支持部40を有している。上側支持部40の前端は、リヤサイドメンバ12のキック部20の後端近傍に至っている。また、各サスペンション支持部34は、上側支持部40よりも車幅方向内側でかつ下方に配置された車体前後方向に長手の下側支持部42を有している。図2に示される如く、下側支持部42は、前端が上側支持部40の前端と略同位とされると共に、後端が前端よりも下方に位置するように水平面に対し若干傾斜している。各上側支持部40と下側支持部42とは、後端、前端、前方向中間部において、それぞれ後連結部44、前連結部46、中間連結部48にて連結されている。図3にも示される如く、各後連結部44は、それぞれ車幅方向内向きに凸となるように湾曲している。
【0027】
各サスペンション支持部34は、それぞれの上側支持部40が前端及び前後方向中間部に設けられた接合部Jにおいて、リヤサイドメンバ12に固定されている。また、各上側支持部40の後端(後連結部44の上端)は、図3に示す締結手段50(ボルト及び第2クロスメンバ30に設けた図示しないウェルドナット)によって、第2クロスメンバ30の下側に固定されている。そして、各サスペンション支持部34は、左右の下側支持部42の前端間が上記した前連結部材36にて架け渡されて連結されると共に、左右の下側支持部42の後端(後連結部44の下端)間が後連結部材38によって連結されている。
【0028】
これにより、車体後部構造10では、図3に示される如く背面視で、第2クロスメンバ30、後連結部材38、及び左右の後連結部44によって枠状を成す枠状体Fが形成されている。この枠状体Fが本発明における横骨格部材に相当する。すなわち、第2クロスメンバ30、後連結部材38、及び左右の後連結部44がそれぞれ本発明における横骨格部材の上部、下部、側部に相当する。また、広義には、第2クロスメンバ30が単体で本発明における横骨格部材に相当すると把握することも可能である。
【0029】
さらに、車体後部構造10は、左右のサスペンション支持部34の前端と、左右同じ側のセンタピラー22の下端とをそれぞれ連結する左右一対のブレース52を備えている。したがって、この実施形態では、下側支持部42、前連結部46、上側支持部40におけるリヤサイドメンバ12との前端接合部Jが本発明における連結部に相当し、及び/又は、下側支持部42及びブレース52が本発明における連結部に相当する。
【0030】
以上説明したサスペンションメンバ32における左右のサスペンション支持部34間には、ディファレンシャルギヤ装置56が配設されている。したがって、この実施形態では、車体Sは少なくとも後輪が駆動輪となる場合がある自動車の車体である。ディファレンシャルギヤ装置56は、その接続部56Aがサスペンションメンバ32の左右の下側支持部42に固定されることで、車体Sに対し支持されている。
【0031】
また、図1及び図2に想像線にて示される如く、主に左右のリヤサイドメンバ12のキック部20の間、すなわち上側支持部40の前端側傾斜部の直前方には、燃料タンク58がディファレンシャルギヤ装置56及び後述する排気管62を跨ぐようにして配設されている。燃料タンク58は、その前端が左右のセンタピラー22の前後方向中間まで至ると共に、上下端はキック部20の上下端にそれぞれ略一致している。
【0032】
そして、車体後部構造10では、リヤバンパリインフォースメント18と枠状体Fを構成する第2クロスメンバ30との間に、荷重分散部材としてのマフラ60が配設されている。マフラ60は、図示しないエンジンから排気管62を通じて導入された排気ガスを、消音しながら排出するようになっている。このマフラ60は、平面視で左右方向に長手の扁平筒状に形成されたマフラ基部64と、マフラ基部64の車幅方向中央部から下側に突き出したマフラ突出部66とを有して構成されており、排気量が比較的大きなエンジンの排気音を低減可能とされている。
【0033】
このマフラ60は、図示しないサポートロッド及びサポートゴム等から成る少なくとも3つ箇所以上の支持部によって、直接的又は間接的にリヤサイドメンバ12に吊り下げ支持されている。この状態で、マフラ60は、図3に示される如く背面視で、上下及び左右の各端部が枠状体Fにオーバラップしている。具体的には、マフラ60は、マフラ基部64が第2クロスメンバ30及び左右の後連結部44の上部(車幅方向外端部)にオーバラップすると共に、マフラ突出部66が後連結部材38及び後連結部44の下部(車幅方向内端部)にオーバラップしている。
【0034】
そして、図1に示される如く、マフラ60のマフラ基部64と枠状体Fとの前後方向の隙間G1、マフラ基部64とリヤバンパリインフォースメント18との前後方向の隙間G2、及びマフラ基部64の左右両端と近い側のリヤサイドメンバ12との左右方向の隙間G3は、それぞれ例えばマフラ60の組付け・走行に伴う振動による他との干渉回避等の制約による要求に対する必要最小限度の大きさとされている。したがって、車体後部構造では、リヤバンパリインフォースメントの所定値以上の荷重が入力すると、この荷重(の一部)がマフラ60を介して枠状体Fに伝達される構成である。
【0035】
また、マフラ60のマフラ突出部66の下端部には、さらに前側に突出した前突出部68が形成されており、図2に示される如く、前突出部68と枠状体F(後連結部材38)との前後方向の隙間G4は、上記隙間G1と同等以下(G4≦G1)とされている。この実施形態では、隙間G4は隙間G1よりも若干小とされている。
【0036】
さらに、枠状体Fにおける締結手段50による締結部位、すなわち第2クロスメンバ30とサスペンションメンバ32との連結部位は、他の接合部分よりも強度が低い設定とされており、マフラ60から入力する荷重によって最初に破断するようになっている。
【0037】
次に、本実施形態の作用について説明する。なお、以下の説明では、左右一対の部材を区別して説明する場合には、左側の部材には符号に「A」を付加し、右側の部材には符号に「B」を付加することとする。したがって、例えば、左側のリヤサイドメンバ12をリヤサイドメンバ12Aといい、右側のリヤサイドメンバ12をリヤサイドメンバ12Bという。また、この「A」「B」を付した符号は、図4にのみ示すこととする。
【0038】
上記構成の車体後部構造10が適用された車体Sでは、衝突体である他の車両が後方からリヤバンパにオフセット衝突すると、この衝突荷重は、リヤバンパリインフォースメント18からオフセット衝突側のリヤサイドメンバ12に入力される。具体的には、図4(A)に示される如く追突車両Scが左側にオフセットして衝突した場合には、リヤバンパリインフォースメント18に入力した衝突荷重は、図4(A)に矢印Aにして示す如く、直接的にリヤサイドメンバ12Aに伝達され、さらにロッカ24Aに伝達支持される。
【0039】
また、リヤバンパリインフォースメント18は、変形して当接したマフラ60のマフラ基部64を前向きに押圧し、マフラ60のマフラ基部64及びマフラ突出部66は、当接した枠状体Fを前向きに押圧する。すると、リヤバンパリインフォースメント18に入力した衝突荷重は、図4(A)に矢印Bにして示す如く、マフラ60のマフラ基部64、第2クロスメンバ30を経由してリヤサイドメンバ12Bに伝達されると共に、図4(A)に矢印Cにして示す如く、マフラ60のマフラ突出部66、サスペンションメンバ32の左右の下側支持部42A、42B(後連結部材38)に伝達される。
【0040】
すなわち、リヤバンパリインフォースメント18に入力した衝突荷重は、左右のリヤサイドメンバ12A、12B、左右の下側支持部42A、42Bにバランス良く分散され、これらは、車体Sの高剛性(高強度)部位であるセンタピラー22、ロッカ24、第1クロスメンバ26の結合部位に伝達されて支持される。このとき、内部が空洞であるマフラ60は、車体骨格部材である枠状体Fに対し低剛性であるため、潰れ変形して衝撃エネルギを吸収しながら枠状体Fに荷重を伝達する。このため、枠状体Fに作用する衝撃荷重すなわち車体Sの支持荷重が緩和される。
【0041】
さらに、衝突荷重が大きい場合には、枠状体Fにおける締結手段50による結合部位が破断し、該枠状体Fの下部すなわち後連結部材38又は後連結部44の下部がディファレンシャルギヤ装置56に当接する。このため、図4(A)及び図4(B)に矢印Dにて示される如く、リヤバンパリインフォースメント18、マフラ60、サスペンションメンバ32、ディファレンシャルギヤ装置56の荷重分散経路が形成される。したがって、衝突荷重がさらに分散される。このとき、サスペンションメンバ32は、主に下側支持部42が屈曲するか、又は全体として下側に落下することで、前方への移動が抑えられる。
【0042】
以上により、車体後部構造10が適用された車体Sでは、後方からのオフセット衝突の際に、車室及び燃料タンク58の変形が防止又は抑制される。
【0043】
ここで、車体後部構造10では、マフラ60をリヤバンパリインフォースメント18と枠状体Fとの間に配設したため、上記オフセットの場合に衝突荷重を車幅方向における衝突側とは反対側のリヤサイドメンバ12に分散することができる。このため、オフセット衝突の際に主に衝突側のリヤサイドメンバ12が荷重を伝達、支持する構成と比較して、該リヤサイドメンバ12の燃料タンク58を保護しているキック部20の補強、開扉性を確保するためのセンタピラー22の補強を小さくすることができる。換言すれば、キック部20及びセンタピラー22の補強に頼ることなく、オフセット衝突の際に燃料タンク58の保護、及び開扉性を確保することができる。
【0044】
特に、第2クロスメンバ30とサスペンションメンバ32の後端部とで形成された枠状体Fは、単なる梁状部材と比較して強固な構造体であるため、自らの変形が抑制されてマフラ60からの荷重を効率良く左右のリヤサイドメンバ12、下側支持部42に分散させることができる。
【0045】
また、マフラ60は、マフラ基部64とマフラ突出部66とを有し、前後左右の端部がそれぞれ枠状体Fに当接して荷重を伝達するため、リヤバンパリインフォースメント18からの荷重を効果的に分散させることができる。そして、マフラ60から枠状体Fの下部である後連結部材38に入力され荷重が、下側支持部42によってリヤサイドメンバ12における第2クロスメンバ30との接続部より前方の高剛性側に伝達されるため、サスペンションメンバ32の後部を支持するリヤサイドメンバリヤ16に作用する荷重(応力)が効果的に緩和される)。特に、燃料タンク58と枠状体Fとの下側の隙間G4が上側の隙間G1よりも小であるため、上側のマフラ基部64にリヤバンパリインフォースメント18からの荷重が入力したマフラ60は、下側のマフラ突出部66から枠状体Fの下部に確実に荷重を伝達することができる。
【0046】
このように、本実施形態に係る車体後部構造10では、リヤサイドメンバ12(の特にキック部20)の補強に頼ることなく、オフセット衝突に対する強度を確保することができる。
【0047】
また、車体後部構造10では、後方からのフルラップ衝突の場合には、左右のリヤサイドメンバ12A、12Bによる荷重伝達経路の他に、マフラ60、サスペンションメンバ32の下側支持部42を経由する荷重伝達経路(図4(A)の矢印C参照)が形成され、リヤサイドメンバ12(の主にリヤサイドメンバリヤ16)に作用する荷重を緩和することができる。また、フルラップ衝突時において衝撃荷重が大きい場合には、図4に矢印Dにて示す荷重伝達経路も形成されるため、車室及び燃料タンクの変形が防止又は抑制される。
【0048】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。なお、上記第1の実施形態又は前出の構成と基本的に同一の部品・部分については、上記第1の実施形態、前出の構成と同一の符号を付して説明を省略する。
【0049】
(第2の実施形態)
図5(A)には第2の実施形態に係る車体後部構造70が底面図にて示されており、図5(B)には車体後部構造70が背面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体後部構造70は、マフラ60に代えてマフラ72を備えている。マフラ72は、背面視で略V字状に形成されており、枠状体Fにおける第2クロスメンバ30の長手方向中央部を除く部分にオーバラップしている。
【0050】
車体後部構造70の他の構成は、車体後部構造10の対応する構成と同じである。したがって、第2の実施形態に係る車体後部構造70によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
(第3の実施形態)
図6(A)には第3の実施形態に係る車体後部構造74が底面図にて示されており、図6(B)には車体後部構造74が背面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体後部構造74は、マフラ60に代えてマフラ76を備えている。マフラ76は、全体として背面視で略T字状に形成されている。具体的には、マフラ76は、背面視で第2クロスメンバ30及び後連結部材38の各車幅方向中央部にそれぞれオーバラップするマフラ中央部78と、第2クロスメンバ30及び右側の後連結部44の各右端部にそれぞれオーバラップするマフラ右部80と、第2クロスメンバ30及び左側の後連結部44の各左端部にそれぞれオーバラップするマフラ左部82と、マフラ中央部78とマフラ右部80及びマフラ中央部78とマフラ左部82とをそれぞれ連通する一対の連通パイプ84とを有して構成されている。このマフラ76は、マフラ60、72と比較して小容量とされており、比較的小型のエンジン排気音の消音用とされる。
【0052】
車体後部構造74の他の構成は、車体後部構造10の対応する構成と同じである。したがって、第3の実施形態に係る車体後部構造74によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(第4の実施形態)
図7(A)には第4の実施形態に係る車体後部構造86が底面図にて示されており、図7(B)には車体後部構造86が背面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体後部構造86は、マフラ60に代えてマフラ88を備えている。マフラ88は、全体として背面視で略T字状に形成されている。具体的には、マフラ76は、マフラ右部80と、マフラ左部82と、下部において後連結部材38の各車幅方向中央部にのみオーバラップするマフラ中央部90とを有している。マフラ右部80、マフラ左部82、及びマフラ中央部90は、それぞれ背面視で略T字状に形成された連通ダクト92の異なる端部に接続されて互いに連通している。このマフラ76は、マフラ60、72と比較して小容量とされており、比較的小型のエンジン排気音の消音用とされる。
【0054】
車体後部構造86の他の構成は、車体後部構造10の対応する構成と同じである。したがって、第4の実施形態に係る車体後部構造86によっても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0055】
(第5の実施形態)
図8(A)には第5の実施形態に係る車体後部構造94が底面図にて示されており、図8(B)には車体後部構造94が背面図にて示されている。これらの図に示される如く、車体後部構造94は、マフラ60に代えてマフラ96を備えている。マフラ96は、マフラ右部80と、マフラ左部82と、これらを連通する車幅方向に長手の連通ダクト98とを有して構成されている。マフラ76、88と比較しても小容量とされており、小型のエンジン排気音の消音用とされる。
【0056】
車体後部構造94の他の構成は、車体後部構造10の対応する構成と同じである。この第4の実施形態に係る車体後部構造86では、上記各実施形態と同様に、オフセット衝突時に荷重入力側と反対側のリヤサイドメンバ12に荷重を分散させることができる。なお、この車体後部構造94では、マフラ96が枠状体Fの下部すなわちサスペンションメンバ32の後連結部材38とはオーバラップしないため、第1乃至第4の実施形態と比較すると該後連結部材38から下側支持部42への荷重分散性が劣ることとなる。
【0057】
なお、本発明は、上記各実施形態におけるマフラの形状に限定されることはなく、本発明の範囲内で各種形状のマフラを採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る車体後部構造の底面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る車体後部構造の側面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る車体後部構造の背面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る車体後部構造における後面オフセット衝突時の荷重経路を示す図であって、(A)は底面図、(B)は背面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る車体後部構造を示す図であって、(A)は底面図、(B)は背面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る車体後部構造を示す図であって、(A)は底面図、(B)は背面図である。
【図7】本発明の第4の実施形態に係る車体後部構造を示す図であって、(A)は底面図、(B)は背面図である。
【図8】本発明の第5の実施形態に係る車体後部構造を示す図であって、(A)は底面図、(B)は背面図である。
【符号の説明】
【0059】
10 車体後部構造
12 リヤサイドメンバ(サイドメンバ)
18 リヤバンパリインフォースメント(リヤバンパ骨格部材)
22 センタピラー(車体骨格部)
24 ロッカ(車体骨格部)
26 クロスメンバ(車体骨格部)
30 クロスメンバ(横骨格部材、横骨格部材の上部)
32 サスペンションメンバ(横骨格部材)
38 後連結部材(横骨格部材の下部)
42 下側支持部(連結部)
44 後連結部(横骨格部材の側部)
60 マフラ(荷重分散部材)
70・74・86・94 車体後部構造
72・76・88・96 マフラ(荷重分散部材)
F 枠状体(横骨格部材)
S 車体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ車体前後方向に長手とされた左右一対のサイドメンバと、
前記一対のサイドメンバの後端間を架け渡すリヤバンパ骨格部材と、
前記一対のサイドメンバを前記リヤバンパ骨格部材の前側で架け渡す横骨格部材と、
前記横骨格部材とリヤバンパ骨格部材との間に設けられ、該リヤバンパ骨格部材に左右方向にオフセットして入力された荷重の一部を、前記横骨格部材から左右方向の荷重入力側とは反対側の前記サイドメンバに分散させる荷重分散部材と、
を備えた車体後部構造。
【請求項2】
それぞれ車体前後方向に長手とされた左右一対のサイドメンバと、
前記一対のサイドメンバの後端間を架け渡すリヤバンパ骨格部材と、
車体後方から見て枠状に形成され、前記一対のサイドメンバを前記リヤバンパ骨格部材よりも前側で架け渡す横骨格部材と、
前記横骨格部材とリヤバンパ骨格部材との間に、車体後方から見て少なくとも上下又は左右の各端部が前記横骨格部材にオーバラップするように配置された排気音低減用のマフラと、
を備えた車体後部構造。
【請求項3】
前記横骨格部材は、左右方向に長手とされ前記一対のサイドメンバを架け渡す上部と、左右方向に長手とされ前記上部の下側に離間して位置する下部と、それぞれ前記上部及び下部の左右方向に同じ側の端部を連結する一対の側部とを有し、
かつ、前記横骨格部材の下部の長手方向両端と、前記サイドメンバにおける前記横骨格部材の上部との接続部分よりも前方に位置する車体骨格部とをそれぞれ連結する左右一対の連結部をさらに備える請求項2記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記マフラは、車体後方から見て上下の各端部がそれぞれ前記横骨格部材の上部、下部にオーバラップして配置されている請求項3記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記マフラは、車体後方から見て上端側がリヤバンパ骨格部材とオーバラップすると共に、下端部と前記横骨格部材の下部との前後方向の隙間の大きさが上端部と該横骨格部材の上部との前後方向の隙間の大きさ以下となるように形成されている請求項4記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記マフラは、車体後方から見て左右の各端部がそれぞれ前記横骨格部材の側部にオーバラップして配置されている請求項3乃至請求項5の何れか1項記載の車体後部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−232030(P2006−232030A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−47606(P2005−47606)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】