車体後部構造
【課題】この発明は、リヤサイドフレームの剛性、強度の向上を図りつつ、リヤフロアパンを低い位置に配設することによって荷室深さを確保する一方で、リヤサブフレームの配置を可能にし、かつリヤフロアパン後部下方において消音器の容積を十分に確保することを可能にする車体後部構造を提供することを目的とする。
【解決手段】リヤサイドフレーム3、3の下面部32cに締結され車幅方向にわたるリヤサブフレーム40を備えるとともに、リヤサイドフレーム3は、断面凹状の上側パネル部材31と下側パネル部材32とが結合されて前後に延在する閉断面33をなしている。そして、その上下方向中間位置にはリヤフロアパン12の両端部が結合され、該リヤフロアパン12は、リヤサイドフレーム3に対応して後ろ下がりに傾斜し、その後部は略平坦とされて下方にマフラー22が車幅方向にわたって延在する。
【解決手段】リヤサイドフレーム3、3の下面部32cに締結され車幅方向にわたるリヤサブフレーム40を備えるとともに、リヤサイドフレーム3は、断面凹状の上側パネル部材31と下側パネル部材32とが結合されて前後に延在する閉断面33をなしている。そして、その上下方向中間位置にはリヤフロアパン12の両端部が結合され、該リヤフロアパン12は、リヤサイドフレーム3に対応して後ろ下がりに傾斜し、その後部は略平坦とされて下方にマフラー22が車幅方向にわたって延在する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体後方底部の左右位置を前後に延在する閉断面を有するリヤサイドフレームと、該リヤサイドフレームに両端部が結合されてその間の車体底部をなすリヤフロアパンとを含んでなる車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体後部構造としては、下記特許文献1に開示されているように、左右のリヤサイドフレームや該リヤサイドフレーム間において車体底部をなすリヤフロアパンを後下がりに傾斜するように配置したものが知られている。
【0003】
このように、リヤサイドフレームやリヤフロアパンを後下がりに傾斜して配置することにより、車体後部の前部では、リヤフロアパンの下方位置にて後輪サスペンション用のサブフレームを配設するためのスペースを確保しつつ、後部では、荷室深さを確保できるという利点がある。このような構成は、トランクリッドの高さに制限がある場合、特に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−107008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1では、リヤフロアパンの後部に凹所が形成されており、これがスペアタイヤを収容するためのスペアタイヤパンを構成している。
【0006】
しかしながら、近年では、タイヤのパンク等が発生した場合であっても、応急処置として使用される工具等の技術的な発達により、必ずしも車内にスペアタイヤを搭載することを要しない場合が増えてきており、故にスペアタイヤパンが必須の構成要素とされない傾向にある。
【0007】
また、スペアタイヤパンを備える場合、その底面の位置は、他のリヤフロアパンの部位よりも低く設定されるため、スペアタイヤパンの底面と走行路面との干渉を考慮した場合、リヤフロアパン全体の高さを下方に設定することができないという問題がある。このため、結果として荷室深さが十分に確保できないという問題が発生する。
【0008】
また、一般的に、車体後部下方には、車両の排気系を構成する消音器(いわゆるマフラー)がレイアウトされているが、リヤフロアパンの高さを下方に設定できなければ、消音器の設置スペース、つまりはその容積を確保することができないという問題もある。
【0009】
また、リヤフロアパンにスペアタイヤパンを形成したものにおいては、該スペアタイヤパンの底面に対して相対的にリヤフロアパンの左右両端部が高く設定されているために、該左右両端部の下方にはスペースが形成されている。そこで、前記リヤフロアパンの左右両端部の下面部に対し下方から断面ハット状の部材を結合させることによって閉断面を形成し、この閉断面部位をリヤサイドフレームとすることが多い。
【0010】
しかしながら、リヤサイドフレームをリヤフロアパンの一部で構成してしまうと、リヤフロアパンは、元々厚さ0.5〜0.6mm程度の薄板であるために、ハット状の部材を厚く(例えば厚さ1.2mm程度)形成しても、その剛性や、後突時の耐力等に関連する強度を向上させることが困難になるという欠点がある。
【0011】
この発明は、リヤサイドフレームの剛性、強度の向上を図りつつ、リヤフロアパンを低い位置に配設することによって荷室深さを確保する一方で、リヤサブフレームの配置を可能にし、かつリヤフロアパン後部下方において消音器の容積を十分に確保することを可能にする車体後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の車体後部構造は、車体後方底部の左右位置を前後に延在する閉断面を有し、車内側に膨出する後輪ホイールハウスと側面視で重複する位置から車体後端部に向けて後ろ下がりに傾斜する左右一対のリヤサイドフレームと、該リヤサイドフレームに両端部が結合されてその間の車体底部をなすリヤフロアパンと、前記左右のリヤサイドフレームの下面部に締結され車幅方向にわたる後輪サスペンション用のリヤサブフレームと、前記リヤフロアパンの下方に配置される消音器とを含んでなる車体後部構造であって、前記リヤサイドフレームは、共に断面凹状の上側部材と下側部材の両端部同士が結合されて前後に延在する閉断面をなし、前記リヤサイドフレームの上下方向中間位置にある車内側の結合部に、前記リヤフロアパンの両端部が結合され、該リヤフロアパンは、前記リヤサイドフレームの後ろ下がりの傾斜に対応して後ろ下がりに傾斜し、その後部は略平坦とされて下方に前記消音器が車幅方向にわたって延在するものである。
【0013】
この構成によれば、断面凹状をなす上側部材、下側部材を両端部で結合してリヤサイドフレームを形成したことにより、該リヤサイドフレームを、リヤフロアパンとは独立した閉断面体として構成することができる。このため、リヤサイドフレームの剛性及び強度を、リヤフロアパンの板厚に関わらず向上させることができる。
そして、リヤフロアパンをリヤサイドフレームの傾斜に対応して後下がりに傾斜させることにより、リヤフロアパンの前部下方では、リヤサブフレームの配置を可能にする一方、後部では、低いフロア位置を得ることができる。そして、リヤフロアパンの後部にスペアタイヤパンが形成されずこれが平坦とされていることで、リヤサイドフレームの上下方向中間位置にリヤフロアパンを配置することができ、さらに低いフロア位置を得ることができる。その結果、リヤフロアパンの後部において荷室深さを確保することができる。
そして、リヤフロアパンの後部が平坦とされていることにより、下方スペースを確保することができる。従って、消音器を左右のリヤサイドフレームにわたる薄い形状とすることで、その容積を十分に確保しながらこれをリヤフロアパンの後部下方に容易に配設することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記リヤサイドフレームの上面部が、前記後輪ホイールハウス位置から後端部まで車両側面視で直線状に後ろ下がり傾斜しているものである。
【0015】
この構成によれば、リヤサイドフレームの上面部において、車両側面視で屈曲点が形成されていないため、例えば、車両後突時等において後方から大きな荷重が作用した時、リヤサイドフレームが折れ曲がることを防止できる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記リヤサイドフレームの下面部が、前記後輪ホイールハウス位置から後端部までが略水平に形成されているものである。
【0017】
この構成によれば、上面部の傾斜との関係により、リヤサイドフレームの閉断面の断面積は、後端部から前方に向けて滑らかに拡大していくことになる。このため、後突発生時等には、リヤサイドフレームを後端部から圧縮変形するように潰すことができ、車体後部におけるエネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記リヤサイドフレームの上面部が、前記後輪ホイールハウス位置から後端部に向けて後ろ下がりに傾斜している傾斜角より、前記リヤサイドフレームへの結合部において前記リヤフロアパンの両端部が後ろ下がりに傾斜している傾斜角の方が小さく設定されているものである。
【0019】
この構成によれば、リヤフロアパンの後部下方のスペースをより確実に確保することができ、その結果該スペースに配設される消音器の容積を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、断面凹状をなす上側部材、下側部材を両端部で結合してリヤサイドフレームを形成したことにより、該リヤサイドフレームを、リヤフロアパンとは独立した閉断面体として構成することができる。このため、リヤサイドフレームの剛性及び強度を、リヤフロアパンの板厚に関わらず向上させることができる。
そして、リヤフロアパンをリヤサイドフレームの傾斜に対応して後下がりに傾斜させることにより、リヤフロアパンの前部下方では、リヤサブフレームの配置を可能にする一方、後部では、低いフロア位置を得ることができる。そして、リヤフロアパンの後部にスペアタイヤパンが形成されずこれが平坦とされていることで、リヤサイドフレームの上下方向中間位置にリヤフロアパンを配置することができ、さらに低いフロア位置を得ることができる。その結果、リヤフロアパンの後部において荷室深さを確保することができる。
そして、リヤフロアパンの後部が平坦とされていることにより、下方スペースを確保することができる。従って、消音器を左右のリヤサイドフレームにわたる薄い形状とすることで、その容積を十分に確保しながらこれをリヤフロアパンの後部下方に容易に配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態に係る車体後部構造を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】図1のB−B線矢視断面図。
【図4】この発明の実施形態に係る車体後部構造を示す底面図。
【図5】掘り込み凹部にバッテリを収納した状態を示す斜視図。
【図6】リヤフロアパンとフロアボードとの間の空間に荷物を収納した状態を示す側断面図。
【図7】車両後突時における車体後部の変化を説明するための側断面図。
【図8】車両後突時における車体後部の変化を説明するための側断面図。
【図9】この発明の他の実施形態に係る車体後部構造を示すA−A線矢視相当の断面図。
【図10】この発明の他の実施形態に係る車体後部構造を示すB−B線矢視相当の断面図。
【図11】掘り込み凹部にバッテリを収納した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る車体後部構造を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る自動車の車体後部では、最後列となる後席シート1の後方にて荷室領域2が形成されている。この荷室領域2は、主に後席シート1の後端部と、車体後端部で車幅方向に延在しながら左右一対のリヤサイドフレーム3、3の後端部同士をフランジ4、クラッシュカン5を介して結合するリヤエンドパネル6と、左右の側壁部7又は後輪Wを覆うべく車内側に膨出するホイールハウス8とに囲われた領域となっている。
【0023】
荷室領域2においては、その底面部が、左右のリヤサイドフレーム3、3上に載置された剛性体のフロアボード9によって形成されている。このフロアボード9は、平板状をなしており、ホイールハウス8の後方位置においても平坦な底面を形成すべく車幅方向外側に進出した延設部9a、9aを有している。この延設部9a、9aは、リヤサイドフレーム3の車幅方向外側でかつホイールハウス8の後方に配設されたリヤエンドサイドプレート10、10の上面部に当接して載置されている。
【0024】
図2は、図1のA−A線矢視断面図である。フロアボード9が載置されるリヤサイドフレーム3は、図2に示すように、一部が上向きに隆起して断面凹状をなす上側パネル部材31と、一部が下向きに隆起して断面凹状をなす下側パネル部材32とにより構成されている。
【0025】
そして、これら上側パネル部材31と下側パネル部材32とを向き合わせ、車幅方向両端部にて形成された結合端部31aと32a、及び結合端部31bと32bとをそれぞれ溶接することにより、閉断面33が形成されており、リヤサイドフレーム3は、閉断面33が車体後方底部の左右位置を前後方向に延在する閉断面体とされている。
【0026】
また、閉断面33内においては、上側パネル部材31、下側パネル部材32の内周面に沿ってレインフォースメント34が溶接され、リヤサイドフレーム3全体の剛性向上が図られている。
【0027】
また、これら左右のリヤサイドフレーム3、3は、上述したようにその後端部同士がリヤエンドパネル6に結合される他、前端部が、図1に示すように後席シート1の直後位置で車幅方向に延在しているNo.4クロスメンバ11に連結されている。
【0028】
また、リヤサイドフレーム3は、その左右両側部が、側壁部7やホイールハウス8の下端部に結合されており、例えば、ホイールハウス8の側方位置では、結合端部31a、32aが、図2に示すようにそれぞれホイールハウス8の下端部に結合されている。
【0029】
ここで、フロアボード9は、その両端部がリヤサイドフレーム3を構成する上側パネル部材31の上面部31c、31cに当接して載置されており、荷室領域2において取外し自在とされている。
【0030】
また、左右一対のリヤサイドフレーム3、3の間には、その間において車体後部の底部を形成するリヤフロアパン12が配設されている。このリヤフロアパン12は、図1に示すように、左右のリヤサイドフレーム3、3、リヤエンドパネル6、及びNo.4クロスメンバ11に囲われた領域を覆っており、その前部には、下方に膨出した掘り込み凹部12a(後述)が形成される一方、その後部は略平坦とされている。
【0031】
ここで、リヤサイドフレーム3、3には、その車幅方向内側の上下方向中間部において、上下の結合端部31b、32bにより、車幅方向内向きに突出する溶接フランジ部35が形成されており、この溶接フランジ部35の上面側に、リヤフロアパン12の車幅方向両端部が結合されている。
【0032】
このように、本実施形態では、リヤフロアパン12の左右両端部が中間部の溶接フランジ部35にて結合される一方、フロアボード9の左右両端部が、溶接フランジ部35の上方に位置する上側パネル部材31の上面部31c上に載置されているため、フロアボード9は、リヤフロアパン12との間に空間Sを形成している。
【0033】
図3は、図1のB−B線矢視断面図である。リヤフロアパン12の、後席シート1の直後位置では、図3に示すように、後方かつ上方に傾斜するキックアップ部12bが形成されるとともに、このキックアップ部12bの上下各面には、車幅方向に延在する断面ハット状部材11a、11bの前後両端部が結合され、これにより閉断面が車幅方向に延在するNo.4クロスメンバ11が形成されている。
【0034】
ここで、No.4クロスメンバ11では、その上部を構成する上側の断面ハット状部材11aが、一部大きく上方に突出するように形成されている。
【0035】
なお、リヤフロアパン12においては、後席シート1のシートクッション1aの下方位置にも閉断面が形成されており、この閉断面によりNo.3クロスメンバ13が形成されている。
【0036】
さらに、No.4クロスメンバ11の後方では、リヤフロアパン12の下面部に対し上向きに開口する断面ハット状部材14aが結合されており、この断面ハット状部材14aとリヤフロアパン12下面部とにより車幅方向に延在する閉断面が形成され、これがいわゆるNo.5クロスメンバ14に設定されている。
【0037】
ところで、本実施形態では、リヤサイドフレーム3が、図3に示すように側面視でホイールハウス8と重複する位置から車体後端部に向けて後ろ下がり(前上がり)に傾斜しており、この傾斜に対応して、リヤフロアパン12も、傾斜角θ1を有して後ろ下がり(前上がり)に傾斜している。
【0038】
ここで、リヤサイドフレーム3の上側パネル部材31の上面部31cは、傾斜角θ2を有してその後端部からリヤサイドフレーム3とNo.4クロスメンバ11との結合部位に向けて前上がりに傾斜しており、特に、ホイールハウス8の位置から後端部までの範囲では、上面部31cが車両側面視で直線状に傾斜している。
【0039】
一方、リヤサイドフレーム3の下側パネル部材32の下面部32cでは、傾斜角が極めて小さく設定されており、これがホイールハウス8の位置から後端部まで略水平に形成されている。
【0040】
また、上面部31c上に載置されたフロアボード9は、上面部31cの傾斜に対応して前上がりに傾斜している。
【0041】
また、後席シート1は、図1、図3に示すように、リヤフロアパン12の上方に、シートクッション1aと、シートバック1bと、ヘッドレスト1cとを備えたシート部材であって、この後席シート1のシートバック1bが、リクライニング支点等の回動支点1d(図3参照)を中心として図3にて実線で示す通常使用状態から図中二点鎖線で示すように前伏して折畳み可能に構成されている。
【0042】
ここで、後席シート1のシートバック1bを前伏させた時には、上述したフロアボード9の前上がりの傾斜により、フロアボード9の前端部と前伏したシートバック1bの背面部とが略連続するように構成されている。
【0043】
なお、図3において二点鎖線で示す部位15〜18について、荷室領域2の上方に位置する部位15、16は、それぞれ車両のルーフパネル、リヤバンパフェイシャーであり、部位17は、荷室領域2の側壁部7の後端部、ルーフパネル15の後端部、及びリヤバンパフェイシャー16等により形成される荷室開口部18を開閉するリフトゲート(トランクリッドともいう)である。このリフトゲート17は、ルーフパネル15の後端部にて不図示のヒンジを介して回動自在に支持されており、この回動によって荷室開口部18は開閉可能とされている。
【0044】
図4は、本発明の実施形態に係る車体後部構造を示す底面図である。リヤフロアパン12の下方には、図1〜図4に示すように、後輪Wに駆動力を伝達するプロペラシャフト20やディファレンシャルギヤユニット(以下、デフギヤユニットと略記する。)21の他、エンジン(不図示)の排気系を構成する消音器としてのマフラー22が配設されている。
【0045】
本実施形態では、車両が四輪駆動車とされ、エンジンが車体前部に配置された場合を示している。この場合、エンジンの駆動力は、車両前後方向に延在するプロペラシャフト20を介して後輪W側に伝達され、プロペラシャフト20に伝達された出力の向きが、デフギヤユニット21によって後輪Wのドライブシャフト23の延在方向に変換される。
【0046】
また、No.3クロスメンバ13とNo.4クロスメンバ11との間の、後席シート1の下方には、図4に示すような燃料タンク24が配設されている。この燃料タンク24の車幅方向中央部には、他の部位よりも底面が上方に隆起したトンネル部24aが車両前後方向に延在するように形成されており、該トンネル部24aの凹部空間には、プロペラシャフト20や、排気系において後部排気通路を形成する排気管25が配設されている。
【0047】
排気管25は、車体前部からトンネル部24aを通って車体後方に延び、デフギヤユニット21を車幅方向片側(ここでは車体左側)に迂回しながらその下流端にてマフラー22に接続されている。なお、このマフラー22に接続されているパイプ部材はテールパイプ26である。
【0048】
マフラー22には、図1、図4に示すように、その四隅に側面視コ字状をなすブラケット27、27、…が取付けられている。そして、マフラー22は、後側両端でブラケット27に連結されたマウントラバー(弾性マウント)28、28、及びリヤエンドパネル6の左右両端部に固定された不図示の取付けブラケットを介して車体側(リヤエンドパネル6)に弾性支持されつつ、前側両端でブラケット27、27に連結されたマウントラバー28、28を介して車体側(No.5クロスメンバ14)に弾性支持されている。
【0049】
また、図4に示すように、左右一対のリヤサイドフレーム3、3の下面部32cには、車幅方向にわたって延在するリヤサブフレーム40(いわゆるリヤサスペンションクロスメンバ)がブッシュマウント29を介して締結固定されている。
【0050】
このリヤサブフレーム40は、車体の前後方向に延びる左右の側部クロスメンバ41、41と、前部において車幅方向に延び、側部クロスメンバ41、41の前部を連結する前部ラテラルメンバ42と、後部において車幅方向に延び、側部クロスメンバ41、41の後部を連結する後部ラテラルメンバ43とにより、平面視で略井桁状をなしている。そして、このリヤサブフレーム40には、リヤサスペンション装置50のアッパーアーム51、ロアアーム52、及び左右の後輪Wの開き具合を調整する役割を有するトーコントロールリンク53を介して、左右の後輪Wを懸架している。
【0051】
なお、図4に示すリヤサスペンション装置50の部位54は、前端がリヤサイドフレーム3に揺動自在に取付けられた状態で後輪Wを支持するトレーリングアーム54である。
【0052】
本実施形態では、上述したように、断面凹状をなす上側、下側パネル部材31、32を車幅方向両端部で溶接してリヤサイドフレーム3を形成したことにより、該リヤサイドフレーム3を、リヤフロアパン12とは独立した閉断面体として構成することができる。このため、リヤサイドフレーム3の剛性及び強度を、リヤフロアパン12の板厚に関わらず向上させることができる。
【0053】
但し、本実施形態では、専用の上側、下側パネル部材31、32により構成されたリヤサイドフレーム3に対し、リヤフロアパン12が、上下方向中間部をなす溶接フランジ部35の上面側に結合されており、その結果、リヤフロアパン12に対してリヤサイドフレーム3の上側パネル部材31が上方に多く突出した形状となっている。
【0054】
そこで、荷室領域2では、左右のリヤサイドフレーム3、3の上面部31cに当接するように剛性体のフロアボード9が載置されている。これにより、リヤサイドフレーム3の上側部分(ここでは上側パネル部材31)がリヤフロアパン12から上方に突出する構造となっても、荷室領域2において幅広く平坦な荷室底面部を得ることができ、両側壁部7(または両ホイールハウス8)の間において荷物を幅広く安定して載置することができる。
【0055】
また、リヤサイドフレーム3及びフロアボード9が、特に図3に示すように、側面視で前上がりに傾斜していることにより、リヤサイドフレーム3の前方位置の下方スペースを相対的に大きく確保することができる。このため、車体後部の下方における車載部材の設置スペースを確保することができる。
【0056】
例えば、車体に対する後輪Wの上下動に伴うドライブシャフト23の上下トラベル(上下揺動)を許容したり、燃料タンク24(図4参照)と、車体後部の側部に形成される燃料供給開口部(不図示)とを接続するフィラーパイプ(不図示)の配索スペースを確保したりすることができる。
【0057】
また、本実施形態では、リヤサブフレーム40の上方に、リヤフロアパン12の掘り込み凹部12aが位置している。この掘り込み凹部12aは、図2、図3に示すように、車幅方向において側部クロスメンバ41、41の間に位置するとともに、車両前後方向においては、前部、後部ラテラルメンバ42、43の間に位置しており、図4にて太い破線で示すように、リヤサブフレーム40の中央部に形成された空間部に向かって下方に膨出するように形成されている。
【0058】
このように、リヤサブフレーム40の中央空間部に掘り込み凹部12aを形成することで、これをリヤサブフレーム40と干渉することなく配設することができる。そして、リヤサイドフレーム3の前方位置の前上がりの傾斜により、掘り込み凹部12aの高さを高くすることができ、リヤフロアパン12において十分な高さを有する収納空間を形成することができる。
【0059】
この掘り込み凹部12aは、例えば、図5に示すように、バッテリBTやキャパシタ等、ある程度の高さを有する車載部材を安定的に収納するのに好適である。
【0060】
また、リヤサイドフレーム3に対応してフロアボード9を側面視で前上がりに傾斜させた場合、図3に示すように、後席シート1のシートバック1bを前伏させた時に、フロアボード9の前端部と前伏したシートバック1bの背面部とが略連続するように構成されることで、シートバック1bを前伏して荷室領域2を拡大しようとした時、フロアボード9とシートバック1bとの間に大きな段差のない、平坦な荷室底面部を得ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、フロアボード9とリヤフロアパン12との間に空間Sが形成されているが、この空間S内には、図6に示すように荷物Xを収納することが可能である。この場合、車両前突時等において、荷物Xが図中の太矢印及び二点鎖線で示すように前方に飛び出すことも考えられるが、上方に突出したNo.4クロスメンバ11により、荷物Xが前方に飛び出すことを阻止できる。このような構成は、図示のように空間Sの前方位置にある掘り込み凹部12a内に荷物Xが収納されている場合特に有効である。
【0062】
また、本実施形態では、リヤフロアパン12をリヤサイドフレーム3の傾斜に対応して後下がりに傾斜させることにより、リヤフロアパン12の前部下方では、リヤサブフレーム40の配置を可能にする一方、後部では、低いフロア位置が得られるようになっている。
【0063】
そして、従来の構造とは異なり、リヤフロアパン12にはスペヤタイヤパンが形成されておらず、その後部は平坦とされている。このため、リヤサイドフレーム3の上下方向中間位置にリヤフロアパン12を配置することが可能になっており、さらに低いフロア位置を得られるようになっている。その結果、リヤフロアパン12の後部において荷室領域2の荷室深さを確保することができる。
【0064】
ここで、両側壁部7(または両ホイールハウス8)の間において荷物を幅広く載置する必要がない場合には、フロアボード9を取外すことが可能であるが、この時、上述したように荷室領域2における荷室深さが確保されていることにより、リフトゲート17(図3参照)の高さ位置が一定の高さに制限された車種であっても、背の高い荷物を荷室領域2内に収納することができる。
【0065】
そして、リヤフロアパン12の後部では、これが平坦とされていることにより、下方スペースを確保することができ、該スペースには図1、図3、図4に示すように車幅方向にわたって延在するマフラー22を配設することが可能になっている。
【0066】
ここで、マフラー22を、図示のように左右のリヤサイドフレーム3、3にわたる薄い形状とすることで、その容積を十分に確保しながらこれをリヤフロアパン12の後部下方に容易に配設することができる。
【0067】
また、リヤサイドフレーム3の上側パネル部材31の上面部31cが、ホイールハウス8の位置から後端部まで、車両側面視で屈曲点が形成されておらず、直線状に後下がりに傾斜していることにより、例えば、車両後突時等において後方から大きな荷重が作用した時には、先ずリヤエンドパネル6が押圧されてクラッシュカン5が図7中二点鎖線で示すように圧縮変形するように潰れることとなるが、その後、リヤサイドフレーム3が、図7中二点鎖線で示すように折れ曲がることを防止できる。
【0068】
また、リヤサイドフレーム3の下側パネル部材32の下面部32cが、ホイールハウス8の位置から後端部まで略水平とされていることにより、上面部31cの傾斜との関係により、リヤサイドフレーム3の閉断面33(図2参照)の断面積は、後端部から前方に向けて滑らかに拡大していくことになる。このため、後突発生時等には、先ずクラッシュカン5が圧縮変形した後、図8中二点鎖線で示すように、リヤサイドフレーム3を後端部から圧縮変形するように潰すことができる。従って、後突時等における衝撃エネルギーを、リヤサイドフレーム3で適切に吸収することができ、車両後部におけるエネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、リヤサイドフレーム3の後下がりの傾斜に対応して、リヤフロアパン12も傾斜するように構成されているが、ここで、リヤサイドフレーム3に結合されているリヤフロアパン12の両端部の傾斜角θ1(図3参照)は、リヤサイドフレーム3の上側パネル部材31の上面部31cの傾斜角θ2(図3参照)よりも小さく設定されている。
【0070】
これにより、リヤフロアパン12の後部下方のスペースをより確実に確保することができ、その結果該スペースに配設されるマフラー22の容積を確保することができる。
【0071】
ところで、図1〜図8に示す実施形態では、四輪駆動車に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、二輪駆動車に本発明を適用してもよい。
【0072】
図9〜図11に示す実施形態は、二輪駆動車に本発明を適用した場合を示すものであり、駆動形式は、エンジンを車体前部に配置して前輪(不図示)を駆動するいわゆるフロントエンジンフロントドライブ(FF)とされている。なお、図9〜図11において、図1〜図8に示す最初の実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0073】
図9〜図11に示す実施形態では、図1〜図8に示す四輪駆動車の場合と異なり、後輪Wにエンジンの駆動力を伝達するプロペラシャフト20やデフギヤユニット21が不要であるため、リヤフロアパン12の前方位置の下方スペースが大きく確保されることになる。この場合、図9〜図11に示す掘り込み凹部112aのように、下方への膨出量を大きく設定することができ、その収納空間の高さをさらに高くすることができる。
【0074】
従って、図1〜図8に示す最初の実施形態では、バッテリBT等ある程度の高さを有する車載部材を収納する場合、その上方への突出量を考慮して、図5に示すようにフロアボード9を取外す必要があるが、本実施形態の場合、掘り込み凹部112aの収納空間の高さが高く設定されるため、図11に示すように、バッテリBTを掘り込み凹部112aに収納したとしても、その上方への突出量を抑制することができる。このため、フロアボード9をバッテリBT等と干渉なく配置することができ、荷室領域2において平坦な荷室底面を形成することができる。
【0075】
なお、車両が二輪駆動車の場合、上述したようにプロペラシャフト20やデフギヤユニット21が不要とされることから、例えば、リヤフロアパン12の前部をさらに低く設定し、かつ特開2006−327457号公報に開示されているように、シートクッション1aとシートバック1bとをリンクで連結して、シートバック1bの前伏に伴いシートクッション1aが下方に沈み込むように構成してもよい。
【0076】
なお、その他の作用効果は、上述した最初の実施形態と同様である。例えば、リヤサイドフレーム3に結合されているリヤフロアパン12の両端部の傾斜角θ1′(図10参照)と、リヤサイドフレーム3の上側パネル部材31の上面部31cの傾斜角θ2′(図10参照)との関係は、図3における傾斜角θ1、θ2(図3参照)の関係と同様である。
【0077】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、上側部材は、上側パネル部材31に対応し、
以下同様に、
下側部材は、下側パネル部材32に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0078】
3…リヤサイドフレーム
8…ホイールハウス
12…リヤフロアパン
22…マフラー
31…上側パネル部材
31c…上面部
32…下側パネル部材
32c…下面部
33…閉断面
40…リヤサブフレーム
【技術分野】
【0001】
この発明は、車体後方底部の左右位置を前後に延在する閉断面を有するリヤサイドフレームと、該リヤサイドフレームに両端部が結合されてその間の車体底部をなすリヤフロアパンとを含んでなる車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車体後部構造としては、下記特許文献1に開示されているように、左右のリヤサイドフレームや該リヤサイドフレーム間において車体底部をなすリヤフロアパンを後下がりに傾斜するように配置したものが知られている。
【0003】
このように、リヤサイドフレームやリヤフロアパンを後下がりに傾斜して配置することにより、車体後部の前部では、リヤフロアパンの下方位置にて後輪サスペンション用のサブフレームを配設するためのスペースを確保しつつ、後部では、荷室深さを確保できるという利点がある。このような構成は、トランクリッドの高さに制限がある場合、特に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−107008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記特許文献1では、リヤフロアパンの後部に凹所が形成されており、これがスペアタイヤを収容するためのスペアタイヤパンを構成している。
【0006】
しかしながら、近年では、タイヤのパンク等が発生した場合であっても、応急処置として使用される工具等の技術的な発達により、必ずしも車内にスペアタイヤを搭載することを要しない場合が増えてきており、故にスペアタイヤパンが必須の構成要素とされない傾向にある。
【0007】
また、スペアタイヤパンを備える場合、その底面の位置は、他のリヤフロアパンの部位よりも低く設定されるため、スペアタイヤパンの底面と走行路面との干渉を考慮した場合、リヤフロアパン全体の高さを下方に設定することができないという問題がある。このため、結果として荷室深さが十分に確保できないという問題が発生する。
【0008】
また、一般的に、車体後部下方には、車両の排気系を構成する消音器(いわゆるマフラー)がレイアウトされているが、リヤフロアパンの高さを下方に設定できなければ、消音器の設置スペース、つまりはその容積を確保することができないという問題もある。
【0009】
また、リヤフロアパンにスペアタイヤパンを形成したものにおいては、該スペアタイヤパンの底面に対して相対的にリヤフロアパンの左右両端部が高く設定されているために、該左右両端部の下方にはスペースが形成されている。そこで、前記リヤフロアパンの左右両端部の下面部に対し下方から断面ハット状の部材を結合させることによって閉断面を形成し、この閉断面部位をリヤサイドフレームとすることが多い。
【0010】
しかしながら、リヤサイドフレームをリヤフロアパンの一部で構成してしまうと、リヤフロアパンは、元々厚さ0.5〜0.6mm程度の薄板であるために、ハット状の部材を厚く(例えば厚さ1.2mm程度)形成しても、その剛性や、後突時の耐力等に関連する強度を向上させることが困難になるという欠点がある。
【0011】
この発明は、リヤサイドフレームの剛性、強度の向上を図りつつ、リヤフロアパンを低い位置に配設することによって荷室深さを確保する一方で、リヤサブフレームの配置を可能にし、かつリヤフロアパン後部下方において消音器の容積を十分に確保することを可能にする車体後部構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明の車体後部構造は、車体後方底部の左右位置を前後に延在する閉断面を有し、車内側に膨出する後輪ホイールハウスと側面視で重複する位置から車体後端部に向けて後ろ下がりに傾斜する左右一対のリヤサイドフレームと、該リヤサイドフレームに両端部が結合されてその間の車体底部をなすリヤフロアパンと、前記左右のリヤサイドフレームの下面部に締結され車幅方向にわたる後輪サスペンション用のリヤサブフレームと、前記リヤフロアパンの下方に配置される消音器とを含んでなる車体後部構造であって、前記リヤサイドフレームは、共に断面凹状の上側部材と下側部材の両端部同士が結合されて前後に延在する閉断面をなし、前記リヤサイドフレームの上下方向中間位置にある車内側の結合部に、前記リヤフロアパンの両端部が結合され、該リヤフロアパンは、前記リヤサイドフレームの後ろ下がりの傾斜に対応して後ろ下がりに傾斜し、その後部は略平坦とされて下方に前記消音器が車幅方向にわたって延在するものである。
【0013】
この構成によれば、断面凹状をなす上側部材、下側部材を両端部で結合してリヤサイドフレームを形成したことにより、該リヤサイドフレームを、リヤフロアパンとは独立した閉断面体として構成することができる。このため、リヤサイドフレームの剛性及び強度を、リヤフロアパンの板厚に関わらず向上させることができる。
そして、リヤフロアパンをリヤサイドフレームの傾斜に対応して後下がりに傾斜させることにより、リヤフロアパンの前部下方では、リヤサブフレームの配置を可能にする一方、後部では、低いフロア位置を得ることができる。そして、リヤフロアパンの後部にスペアタイヤパンが形成されずこれが平坦とされていることで、リヤサイドフレームの上下方向中間位置にリヤフロアパンを配置することができ、さらに低いフロア位置を得ることができる。その結果、リヤフロアパンの後部において荷室深さを確保することができる。
そして、リヤフロアパンの後部が平坦とされていることにより、下方スペースを確保することができる。従って、消音器を左右のリヤサイドフレームにわたる薄い形状とすることで、その容積を十分に確保しながらこれをリヤフロアパンの後部下方に容易に配設することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、前記リヤサイドフレームの上面部が、前記後輪ホイールハウス位置から後端部まで車両側面視で直線状に後ろ下がり傾斜しているものである。
【0015】
この構成によれば、リヤサイドフレームの上面部において、車両側面視で屈曲点が形成されていないため、例えば、車両後突時等において後方から大きな荷重が作用した時、リヤサイドフレームが折れ曲がることを防止できる。
【0016】
この発明の一実施態様においては、前記リヤサイドフレームの下面部が、前記後輪ホイールハウス位置から後端部までが略水平に形成されているものである。
【0017】
この構成によれば、上面部の傾斜との関係により、リヤサイドフレームの閉断面の断面積は、後端部から前方に向けて滑らかに拡大していくことになる。このため、後突発生時等には、リヤサイドフレームを後端部から圧縮変形するように潰すことができ、車体後部におけるエネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0018】
この発明の一実施態様においては、前記リヤサイドフレームの上面部が、前記後輪ホイールハウス位置から後端部に向けて後ろ下がりに傾斜している傾斜角より、前記リヤサイドフレームへの結合部において前記リヤフロアパンの両端部が後ろ下がりに傾斜している傾斜角の方が小さく設定されているものである。
【0019】
この構成によれば、リヤフロアパンの後部下方のスペースをより確実に確保することができ、その結果該スペースに配設される消音器の容積を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、断面凹状をなす上側部材、下側部材を両端部で結合してリヤサイドフレームを形成したことにより、該リヤサイドフレームを、リヤフロアパンとは独立した閉断面体として構成することができる。このため、リヤサイドフレームの剛性及び強度を、リヤフロアパンの板厚に関わらず向上させることができる。
そして、リヤフロアパンをリヤサイドフレームの傾斜に対応して後下がりに傾斜させることにより、リヤフロアパンの前部下方では、リヤサブフレームの配置を可能にする一方、後部では、低いフロア位置を得ることができる。そして、リヤフロアパンの後部にスペアタイヤパンが形成されずこれが平坦とされていることで、リヤサイドフレームの上下方向中間位置にリヤフロアパンを配置することができ、さらに低いフロア位置を得ることができる。その結果、リヤフロアパンの後部において荷室深さを確保することができる。
そして、リヤフロアパンの後部が平坦とされていることにより、下方スペースを確保することができる。従って、消音器を左右のリヤサイドフレームにわたる薄い形状とすることで、その容積を十分に確保しながらこれをリヤフロアパンの後部下方に容易に配設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施形態に係る車体後部構造を示す斜視図。
【図2】図1のA−A線矢視断面図。
【図3】図1のB−B線矢視断面図。
【図4】この発明の実施形態に係る車体後部構造を示す底面図。
【図5】掘り込み凹部にバッテリを収納した状態を示す斜視図。
【図6】リヤフロアパンとフロアボードとの間の空間に荷物を収納した状態を示す側断面図。
【図7】車両後突時における車体後部の変化を説明するための側断面図。
【図8】車両後突時における車体後部の変化を説明するための側断面図。
【図9】この発明の他の実施形態に係る車体後部構造を示すA−A線矢視相当の断面図。
【図10】この発明の他の実施形態に係る車体後部構造を示すB−B線矢視相当の断面図。
【図11】掘り込み凹部にバッテリを収納した状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を詳述する。
図1は、本発明の実施形態に係る車体後部構造を示す斜視図である。図1に示すように、本実施形態に係る自動車の車体後部では、最後列となる後席シート1の後方にて荷室領域2が形成されている。この荷室領域2は、主に後席シート1の後端部と、車体後端部で車幅方向に延在しながら左右一対のリヤサイドフレーム3、3の後端部同士をフランジ4、クラッシュカン5を介して結合するリヤエンドパネル6と、左右の側壁部7又は後輪Wを覆うべく車内側に膨出するホイールハウス8とに囲われた領域となっている。
【0023】
荷室領域2においては、その底面部が、左右のリヤサイドフレーム3、3上に載置された剛性体のフロアボード9によって形成されている。このフロアボード9は、平板状をなしており、ホイールハウス8の後方位置においても平坦な底面を形成すべく車幅方向外側に進出した延設部9a、9aを有している。この延設部9a、9aは、リヤサイドフレーム3の車幅方向外側でかつホイールハウス8の後方に配設されたリヤエンドサイドプレート10、10の上面部に当接して載置されている。
【0024】
図2は、図1のA−A線矢視断面図である。フロアボード9が載置されるリヤサイドフレーム3は、図2に示すように、一部が上向きに隆起して断面凹状をなす上側パネル部材31と、一部が下向きに隆起して断面凹状をなす下側パネル部材32とにより構成されている。
【0025】
そして、これら上側パネル部材31と下側パネル部材32とを向き合わせ、車幅方向両端部にて形成された結合端部31aと32a、及び結合端部31bと32bとをそれぞれ溶接することにより、閉断面33が形成されており、リヤサイドフレーム3は、閉断面33が車体後方底部の左右位置を前後方向に延在する閉断面体とされている。
【0026】
また、閉断面33内においては、上側パネル部材31、下側パネル部材32の内周面に沿ってレインフォースメント34が溶接され、リヤサイドフレーム3全体の剛性向上が図られている。
【0027】
また、これら左右のリヤサイドフレーム3、3は、上述したようにその後端部同士がリヤエンドパネル6に結合される他、前端部が、図1に示すように後席シート1の直後位置で車幅方向に延在しているNo.4クロスメンバ11に連結されている。
【0028】
また、リヤサイドフレーム3は、その左右両側部が、側壁部7やホイールハウス8の下端部に結合されており、例えば、ホイールハウス8の側方位置では、結合端部31a、32aが、図2に示すようにそれぞれホイールハウス8の下端部に結合されている。
【0029】
ここで、フロアボード9は、その両端部がリヤサイドフレーム3を構成する上側パネル部材31の上面部31c、31cに当接して載置されており、荷室領域2において取外し自在とされている。
【0030】
また、左右一対のリヤサイドフレーム3、3の間には、その間において車体後部の底部を形成するリヤフロアパン12が配設されている。このリヤフロアパン12は、図1に示すように、左右のリヤサイドフレーム3、3、リヤエンドパネル6、及びNo.4クロスメンバ11に囲われた領域を覆っており、その前部には、下方に膨出した掘り込み凹部12a(後述)が形成される一方、その後部は略平坦とされている。
【0031】
ここで、リヤサイドフレーム3、3には、その車幅方向内側の上下方向中間部において、上下の結合端部31b、32bにより、車幅方向内向きに突出する溶接フランジ部35が形成されており、この溶接フランジ部35の上面側に、リヤフロアパン12の車幅方向両端部が結合されている。
【0032】
このように、本実施形態では、リヤフロアパン12の左右両端部が中間部の溶接フランジ部35にて結合される一方、フロアボード9の左右両端部が、溶接フランジ部35の上方に位置する上側パネル部材31の上面部31c上に載置されているため、フロアボード9は、リヤフロアパン12との間に空間Sを形成している。
【0033】
図3は、図1のB−B線矢視断面図である。リヤフロアパン12の、後席シート1の直後位置では、図3に示すように、後方かつ上方に傾斜するキックアップ部12bが形成されるとともに、このキックアップ部12bの上下各面には、車幅方向に延在する断面ハット状部材11a、11bの前後両端部が結合され、これにより閉断面が車幅方向に延在するNo.4クロスメンバ11が形成されている。
【0034】
ここで、No.4クロスメンバ11では、その上部を構成する上側の断面ハット状部材11aが、一部大きく上方に突出するように形成されている。
【0035】
なお、リヤフロアパン12においては、後席シート1のシートクッション1aの下方位置にも閉断面が形成されており、この閉断面によりNo.3クロスメンバ13が形成されている。
【0036】
さらに、No.4クロスメンバ11の後方では、リヤフロアパン12の下面部に対し上向きに開口する断面ハット状部材14aが結合されており、この断面ハット状部材14aとリヤフロアパン12下面部とにより車幅方向に延在する閉断面が形成され、これがいわゆるNo.5クロスメンバ14に設定されている。
【0037】
ところで、本実施形態では、リヤサイドフレーム3が、図3に示すように側面視でホイールハウス8と重複する位置から車体後端部に向けて後ろ下がり(前上がり)に傾斜しており、この傾斜に対応して、リヤフロアパン12も、傾斜角θ1を有して後ろ下がり(前上がり)に傾斜している。
【0038】
ここで、リヤサイドフレーム3の上側パネル部材31の上面部31cは、傾斜角θ2を有してその後端部からリヤサイドフレーム3とNo.4クロスメンバ11との結合部位に向けて前上がりに傾斜しており、特に、ホイールハウス8の位置から後端部までの範囲では、上面部31cが車両側面視で直線状に傾斜している。
【0039】
一方、リヤサイドフレーム3の下側パネル部材32の下面部32cでは、傾斜角が極めて小さく設定されており、これがホイールハウス8の位置から後端部まで略水平に形成されている。
【0040】
また、上面部31c上に載置されたフロアボード9は、上面部31cの傾斜に対応して前上がりに傾斜している。
【0041】
また、後席シート1は、図1、図3に示すように、リヤフロアパン12の上方に、シートクッション1aと、シートバック1bと、ヘッドレスト1cとを備えたシート部材であって、この後席シート1のシートバック1bが、リクライニング支点等の回動支点1d(図3参照)を中心として図3にて実線で示す通常使用状態から図中二点鎖線で示すように前伏して折畳み可能に構成されている。
【0042】
ここで、後席シート1のシートバック1bを前伏させた時には、上述したフロアボード9の前上がりの傾斜により、フロアボード9の前端部と前伏したシートバック1bの背面部とが略連続するように構成されている。
【0043】
なお、図3において二点鎖線で示す部位15〜18について、荷室領域2の上方に位置する部位15、16は、それぞれ車両のルーフパネル、リヤバンパフェイシャーであり、部位17は、荷室領域2の側壁部7の後端部、ルーフパネル15の後端部、及びリヤバンパフェイシャー16等により形成される荷室開口部18を開閉するリフトゲート(トランクリッドともいう)である。このリフトゲート17は、ルーフパネル15の後端部にて不図示のヒンジを介して回動自在に支持されており、この回動によって荷室開口部18は開閉可能とされている。
【0044】
図4は、本発明の実施形態に係る車体後部構造を示す底面図である。リヤフロアパン12の下方には、図1〜図4に示すように、後輪Wに駆動力を伝達するプロペラシャフト20やディファレンシャルギヤユニット(以下、デフギヤユニットと略記する。)21の他、エンジン(不図示)の排気系を構成する消音器としてのマフラー22が配設されている。
【0045】
本実施形態では、車両が四輪駆動車とされ、エンジンが車体前部に配置された場合を示している。この場合、エンジンの駆動力は、車両前後方向に延在するプロペラシャフト20を介して後輪W側に伝達され、プロペラシャフト20に伝達された出力の向きが、デフギヤユニット21によって後輪Wのドライブシャフト23の延在方向に変換される。
【0046】
また、No.3クロスメンバ13とNo.4クロスメンバ11との間の、後席シート1の下方には、図4に示すような燃料タンク24が配設されている。この燃料タンク24の車幅方向中央部には、他の部位よりも底面が上方に隆起したトンネル部24aが車両前後方向に延在するように形成されており、該トンネル部24aの凹部空間には、プロペラシャフト20や、排気系において後部排気通路を形成する排気管25が配設されている。
【0047】
排気管25は、車体前部からトンネル部24aを通って車体後方に延び、デフギヤユニット21を車幅方向片側(ここでは車体左側)に迂回しながらその下流端にてマフラー22に接続されている。なお、このマフラー22に接続されているパイプ部材はテールパイプ26である。
【0048】
マフラー22には、図1、図4に示すように、その四隅に側面視コ字状をなすブラケット27、27、…が取付けられている。そして、マフラー22は、後側両端でブラケット27に連結されたマウントラバー(弾性マウント)28、28、及びリヤエンドパネル6の左右両端部に固定された不図示の取付けブラケットを介して車体側(リヤエンドパネル6)に弾性支持されつつ、前側両端でブラケット27、27に連結されたマウントラバー28、28を介して車体側(No.5クロスメンバ14)に弾性支持されている。
【0049】
また、図4に示すように、左右一対のリヤサイドフレーム3、3の下面部32cには、車幅方向にわたって延在するリヤサブフレーム40(いわゆるリヤサスペンションクロスメンバ)がブッシュマウント29を介して締結固定されている。
【0050】
このリヤサブフレーム40は、車体の前後方向に延びる左右の側部クロスメンバ41、41と、前部において車幅方向に延び、側部クロスメンバ41、41の前部を連結する前部ラテラルメンバ42と、後部において車幅方向に延び、側部クロスメンバ41、41の後部を連結する後部ラテラルメンバ43とにより、平面視で略井桁状をなしている。そして、このリヤサブフレーム40には、リヤサスペンション装置50のアッパーアーム51、ロアアーム52、及び左右の後輪Wの開き具合を調整する役割を有するトーコントロールリンク53を介して、左右の後輪Wを懸架している。
【0051】
なお、図4に示すリヤサスペンション装置50の部位54は、前端がリヤサイドフレーム3に揺動自在に取付けられた状態で後輪Wを支持するトレーリングアーム54である。
【0052】
本実施形態では、上述したように、断面凹状をなす上側、下側パネル部材31、32を車幅方向両端部で溶接してリヤサイドフレーム3を形成したことにより、該リヤサイドフレーム3を、リヤフロアパン12とは独立した閉断面体として構成することができる。このため、リヤサイドフレーム3の剛性及び強度を、リヤフロアパン12の板厚に関わらず向上させることができる。
【0053】
但し、本実施形態では、専用の上側、下側パネル部材31、32により構成されたリヤサイドフレーム3に対し、リヤフロアパン12が、上下方向中間部をなす溶接フランジ部35の上面側に結合されており、その結果、リヤフロアパン12に対してリヤサイドフレーム3の上側パネル部材31が上方に多く突出した形状となっている。
【0054】
そこで、荷室領域2では、左右のリヤサイドフレーム3、3の上面部31cに当接するように剛性体のフロアボード9が載置されている。これにより、リヤサイドフレーム3の上側部分(ここでは上側パネル部材31)がリヤフロアパン12から上方に突出する構造となっても、荷室領域2において幅広く平坦な荷室底面部を得ることができ、両側壁部7(または両ホイールハウス8)の間において荷物を幅広く安定して載置することができる。
【0055】
また、リヤサイドフレーム3及びフロアボード9が、特に図3に示すように、側面視で前上がりに傾斜していることにより、リヤサイドフレーム3の前方位置の下方スペースを相対的に大きく確保することができる。このため、車体後部の下方における車載部材の設置スペースを確保することができる。
【0056】
例えば、車体に対する後輪Wの上下動に伴うドライブシャフト23の上下トラベル(上下揺動)を許容したり、燃料タンク24(図4参照)と、車体後部の側部に形成される燃料供給開口部(不図示)とを接続するフィラーパイプ(不図示)の配索スペースを確保したりすることができる。
【0057】
また、本実施形態では、リヤサブフレーム40の上方に、リヤフロアパン12の掘り込み凹部12aが位置している。この掘り込み凹部12aは、図2、図3に示すように、車幅方向において側部クロスメンバ41、41の間に位置するとともに、車両前後方向においては、前部、後部ラテラルメンバ42、43の間に位置しており、図4にて太い破線で示すように、リヤサブフレーム40の中央部に形成された空間部に向かって下方に膨出するように形成されている。
【0058】
このように、リヤサブフレーム40の中央空間部に掘り込み凹部12aを形成することで、これをリヤサブフレーム40と干渉することなく配設することができる。そして、リヤサイドフレーム3の前方位置の前上がりの傾斜により、掘り込み凹部12aの高さを高くすることができ、リヤフロアパン12において十分な高さを有する収納空間を形成することができる。
【0059】
この掘り込み凹部12aは、例えば、図5に示すように、バッテリBTやキャパシタ等、ある程度の高さを有する車載部材を安定的に収納するのに好適である。
【0060】
また、リヤサイドフレーム3に対応してフロアボード9を側面視で前上がりに傾斜させた場合、図3に示すように、後席シート1のシートバック1bを前伏させた時に、フロアボード9の前端部と前伏したシートバック1bの背面部とが略連続するように構成されることで、シートバック1bを前伏して荷室領域2を拡大しようとした時、フロアボード9とシートバック1bとの間に大きな段差のない、平坦な荷室底面部を得ることができる。
【0061】
また、本実施形態では、フロアボード9とリヤフロアパン12との間に空間Sが形成されているが、この空間S内には、図6に示すように荷物Xを収納することが可能である。この場合、車両前突時等において、荷物Xが図中の太矢印及び二点鎖線で示すように前方に飛び出すことも考えられるが、上方に突出したNo.4クロスメンバ11により、荷物Xが前方に飛び出すことを阻止できる。このような構成は、図示のように空間Sの前方位置にある掘り込み凹部12a内に荷物Xが収納されている場合特に有効である。
【0062】
また、本実施形態では、リヤフロアパン12をリヤサイドフレーム3の傾斜に対応して後下がりに傾斜させることにより、リヤフロアパン12の前部下方では、リヤサブフレーム40の配置を可能にする一方、後部では、低いフロア位置が得られるようになっている。
【0063】
そして、従来の構造とは異なり、リヤフロアパン12にはスペヤタイヤパンが形成されておらず、その後部は平坦とされている。このため、リヤサイドフレーム3の上下方向中間位置にリヤフロアパン12を配置することが可能になっており、さらに低いフロア位置を得られるようになっている。その結果、リヤフロアパン12の後部において荷室領域2の荷室深さを確保することができる。
【0064】
ここで、両側壁部7(または両ホイールハウス8)の間において荷物を幅広く載置する必要がない場合には、フロアボード9を取外すことが可能であるが、この時、上述したように荷室領域2における荷室深さが確保されていることにより、リフトゲート17(図3参照)の高さ位置が一定の高さに制限された車種であっても、背の高い荷物を荷室領域2内に収納することができる。
【0065】
そして、リヤフロアパン12の後部では、これが平坦とされていることにより、下方スペースを確保することができ、該スペースには図1、図3、図4に示すように車幅方向にわたって延在するマフラー22を配設することが可能になっている。
【0066】
ここで、マフラー22を、図示のように左右のリヤサイドフレーム3、3にわたる薄い形状とすることで、その容積を十分に確保しながらこれをリヤフロアパン12の後部下方に容易に配設することができる。
【0067】
また、リヤサイドフレーム3の上側パネル部材31の上面部31cが、ホイールハウス8の位置から後端部まで、車両側面視で屈曲点が形成されておらず、直線状に後下がりに傾斜していることにより、例えば、車両後突時等において後方から大きな荷重が作用した時には、先ずリヤエンドパネル6が押圧されてクラッシュカン5が図7中二点鎖線で示すように圧縮変形するように潰れることとなるが、その後、リヤサイドフレーム3が、図7中二点鎖線で示すように折れ曲がることを防止できる。
【0068】
また、リヤサイドフレーム3の下側パネル部材32の下面部32cが、ホイールハウス8の位置から後端部まで略水平とされていることにより、上面部31cの傾斜との関係により、リヤサイドフレーム3の閉断面33(図2参照)の断面積は、後端部から前方に向けて滑らかに拡大していくことになる。このため、後突発生時等には、先ずクラッシュカン5が圧縮変形した後、図8中二点鎖線で示すように、リヤサイドフレーム3を後端部から圧縮変形するように潰すことができる。従って、後突時等における衝撃エネルギーを、リヤサイドフレーム3で適切に吸収することができ、車両後部におけるエネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、リヤサイドフレーム3の後下がりの傾斜に対応して、リヤフロアパン12も傾斜するように構成されているが、ここで、リヤサイドフレーム3に結合されているリヤフロアパン12の両端部の傾斜角θ1(図3参照)は、リヤサイドフレーム3の上側パネル部材31の上面部31cの傾斜角θ2(図3参照)よりも小さく設定されている。
【0070】
これにより、リヤフロアパン12の後部下方のスペースをより確実に確保することができ、その結果該スペースに配設されるマフラー22の容積を確保することができる。
【0071】
ところで、図1〜図8に示す実施形態では、四輪駆動車に本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、本発明は必ずしもこれに限定されるものではなく、二輪駆動車に本発明を適用してもよい。
【0072】
図9〜図11に示す実施形態は、二輪駆動車に本発明を適用した場合を示すものであり、駆動形式は、エンジンを車体前部に配置して前輪(不図示)を駆動するいわゆるフロントエンジンフロントドライブ(FF)とされている。なお、図9〜図11において、図1〜図8に示す最初の実施形態と同様の構成要素については、同一の番号を付して説明を省略する。
【0073】
図9〜図11に示す実施形態では、図1〜図8に示す四輪駆動車の場合と異なり、後輪Wにエンジンの駆動力を伝達するプロペラシャフト20やデフギヤユニット21が不要であるため、リヤフロアパン12の前方位置の下方スペースが大きく確保されることになる。この場合、図9〜図11に示す掘り込み凹部112aのように、下方への膨出量を大きく設定することができ、その収納空間の高さをさらに高くすることができる。
【0074】
従って、図1〜図8に示す最初の実施形態では、バッテリBT等ある程度の高さを有する車載部材を収納する場合、その上方への突出量を考慮して、図5に示すようにフロアボード9を取外す必要があるが、本実施形態の場合、掘り込み凹部112aの収納空間の高さが高く設定されるため、図11に示すように、バッテリBTを掘り込み凹部112aに収納したとしても、その上方への突出量を抑制することができる。このため、フロアボード9をバッテリBT等と干渉なく配置することができ、荷室領域2において平坦な荷室底面を形成することができる。
【0075】
なお、車両が二輪駆動車の場合、上述したようにプロペラシャフト20やデフギヤユニット21が不要とされることから、例えば、リヤフロアパン12の前部をさらに低く設定し、かつ特開2006−327457号公報に開示されているように、シートクッション1aとシートバック1bとをリンクで連結して、シートバック1bの前伏に伴いシートクッション1aが下方に沈み込むように構成してもよい。
【0076】
なお、その他の作用効果は、上述した最初の実施形態と同様である。例えば、リヤサイドフレーム3に結合されているリヤフロアパン12の両端部の傾斜角θ1′(図10参照)と、リヤサイドフレーム3の上側パネル部材31の上面部31cの傾斜角θ2′(図10参照)との関係は、図3における傾斜角θ1、θ2(図3参照)の関係と同様である。
【0077】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の、上側部材は、上側パネル部材31に対応し、
以下同様に、
下側部材は、下側パネル部材32に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【符号の説明】
【0078】
3…リヤサイドフレーム
8…ホイールハウス
12…リヤフロアパン
22…マフラー
31…上側パネル部材
31c…上面部
32…下側パネル部材
32c…下面部
33…閉断面
40…リヤサブフレーム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体後方底部の左右位置を前後に延在する閉断面を有し、車内側に膨出する後輪ホイールハウスと側面視で重複する位置から車体後端部に向けて後ろ下がりに傾斜する左右一対のリヤサイドフレームと、
該リヤサイドフレームに両端部が結合されてその間の車体底部をなすリヤフロアパンと、
前記左右のリヤサイドフレームの下面部に締結され車幅方向にわたる後輪サスペンション用のリヤサブフレームと、
前記リヤフロアパンの下方に配置される消音器とを含んでなる車体後部構造であって、
前記リヤサイドフレームは、共に断面凹状の上側部材と下側部材の両端部同士が結合されて前後に延在する閉断面をなし、
前記リヤサイドフレームの上下方向中間位置にある車内側の結合部に、前記リヤフロアパンの両端部が結合され、
該リヤフロアパンは、前記リヤサイドフレームの後ろ下がりの傾斜に対応して後ろ下がりに傾斜し、その後部は略平坦とされて下方に前記消音器が車幅方向にわたって延在する
車体後部構造。
【請求項2】
前記リヤサイドフレームの上面部は、前記後輪ホイールハウス位置から後端部まで車両側面視で直線状に後ろ下がり傾斜している
請求項1記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記リヤサイドフレームの下面部は、前記後輪ホイールハウス位置から後端部までが略水平に形成されている
請求項2記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記リヤサイドフレームの上面部が、前記後輪ホイールハウス位置から後端部に向けて後ろ下がりに傾斜している傾斜角より、前記リヤサイドフレームへの結合部において前記リヤフロアパンの両端部が後ろ下がりに傾斜している傾斜角の方が小さく設定されている
請求項2または3記載の車体後部構造。
【請求項1】
車体後方底部の左右位置を前後に延在する閉断面を有し、車内側に膨出する後輪ホイールハウスと側面視で重複する位置から車体後端部に向けて後ろ下がりに傾斜する左右一対のリヤサイドフレームと、
該リヤサイドフレームに両端部が結合されてその間の車体底部をなすリヤフロアパンと、
前記左右のリヤサイドフレームの下面部に締結され車幅方向にわたる後輪サスペンション用のリヤサブフレームと、
前記リヤフロアパンの下方に配置される消音器とを含んでなる車体後部構造であって、
前記リヤサイドフレームは、共に断面凹状の上側部材と下側部材の両端部同士が結合されて前後に延在する閉断面をなし、
前記リヤサイドフレームの上下方向中間位置にある車内側の結合部に、前記リヤフロアパンの両端部が結合され、
該リヤフロアパンは、前記リヤサイドフレームの後ろ下がりの傾斜に対応して後ろ下がりに傾斜し、その後部は略平坦とされて下方に前記消音器が車幅方向にわたって延在する
車体後部構造。
【請求項2】
前記リヤサイドフレームの上面部は、前記後輪ホイールハウス位置から後端部まで車両側面視で直線状に後ろ下がり傾斜している
請求項1記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記リヤサイドフレームの下面部は、前記後輪ホイールハウス位置から後端部までが略水平に形成されている
請求項2記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記リヤサイドフレームの上面部が、前記後輪ホイールハウス位置から後端部に向けて後ろ下がりに傾斜している傾斜角より、前記リヤサイドフレームへの結合部において前記リヤフロアパンの両端部が後ろ下がりに傾斜している傾斜角の方が小さく設定されている
請求項2または3記載の車体後部構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−173392(P2010−173392A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−16154(P2009−16154)
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月28日(2009.1.28)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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